説明

油性固形化粧料

【課題】 しっかり付着した密着感を持ちながら、ゲル状のものを塗布するような、柔らかくて、滑らかな伸びのある使用感が得られるとともに、ツヤ、化粧持ちが良好で、形状保持性、安定性に優れる油性固形化粧料を提供する。
【解決手段】次の成分(a)〜(c);(a)エチレンプロピレンコポリマー、(b)特定構造のイソステアリン酸とグリセリンおよび/またはジグリセリンとのエステル化合物、(c)煙霧状シリカとを含有する事を特徴とする油性固形化粧料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性固形化粧料に関し、詳しくは化粧持ちが良好で、ツヤおよび使用感に優れ、形状保持、安定性が良好である油性固形化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油性固形化粧料は、固形の形状を保つため、固形油、半固形油、液体油等の配合成分の選択や、配合量を変えることについて検討がなされてきた。(例えば、特許文献1、特許文献2参照)また、形状を保持し、更に液体油が表面に染み出てくる発汗現象等の経時的な変化を抑制するため、ゲル化剤を用いる技術も検討されてきた。(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。
このように形状の安定性を検討する一方、油性化粧料の特徴である、光沢感、使用感という外観や化粧効果を充分に活かすために、粉体や油剤を検討することがなされてきている。(例えば、特許文献5、特許文献6参照)
さらには、従来の油の構造を限定することにより、膜感、コク等の使用感を向上させる技術(例えば、特許文献7参照)が検討されてきた。
【0003】
【特許文献1】特許第2821693号公報
【特許文献2】特許第3073869号公報
【特許文献3】特許第2858020号公報
【特許文献4】特許第3338057号公報
【特許文献5】特開2002−3340号公報
【特許文献6】特開2003−212719号公報
【特許文献7】特許第3316499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記の固形の形状安定性のために用いるゲル化剤はツヤを低下させる傾向にあり、特に塗布後の経時においてツヤが顕著に減少することがあった。特にツヤに関しては、以前に比べかなり高いものが要求されるようになってきた。
加えて、使用感に対しても、従来の固形状化粧料の特徴である、芯がありつるつるとした使用感ではなく、しっかり付着した密着感を持ちながら、ゲル状のものを塗布するような、柔らかくて、滑らかな使用感が要求されるようになってきた。しかし、従来の技術では、固形でこのような使用感を得ることはできなかった。
そこで、化粧持ち、ツヤ及びその持続性、しっかり付着した密着感を持ちながら、ゲル状のものを塗布するような、柔らかくて、滑らかな使用感に優れ、形状保持性、経時安定性が良好である油性固形化粧料の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる実情において、本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定固化剤、油剤、ゲル化剤を用いることにより、従来のゲル化構造とは異なり固形状でありながらゲル状の使用感を持ち、ツヤも優れた油性固形化粧料が得られ、化粧持ち、形状保持性、経時安定性も良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、次の成分(a)〜(c);
(a)エチレンプロピレンコポリマー
(b)下記化学式(1)に示すイソステアリン酸とグリセリンおよび/またはジグリセリンとのエステル化合物
【0006】
【化2】

【0007】
(c)煙霧状シリカ
を含有する油性固形化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の油性固形化粧料は、しっかり付着した密着感を持ちながら、ゲル状のものを塗布するような、柔らかくて、滑らかな伸びのある使用感が得られるとともに、ツヤ、化粧持ちが良好で、形状保持性、安定性に優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に用いられる、成分(a)のエチレンプロピレンコポリマーは、主炭素数として35付近を有し、直鎖以外に分岐しているものも含まれる合成炭化水素ワックスであり、また、その中でも分子量が500〜700の範囲にあるものが好ましい。また、その融点は、特に80℃〜110℃のものが形状保持性の観点より好ましい。市販品として、EP−700、EP−1100(いずれもニューフェーズテクノロジー社製)、TRILENE CP−40、TRILENE CP−80(いずれもユニロイヤルケミカル社製)、EPSワックス(日本ナチュラルプロダクツ社製)等が例示できる。
成分(a)の含有量は、特に限定されないが、1〜40質量%(以下、単に「%」と略す。)が好ましく、特に、3〜30%がより好ましい。この範囲で含有させると、使用性が良好で、ツヤに優れるとともに、形状保持性がより向上するものとなる。
【0010】
本発明に用いられる、成分(b)は、下記化学式(1)に示すイソステアリン酸とグリセリンおよび/またはジグリセリンとのエステル化合物である。下記化学式(1)に示すイソステアリン酸は側鎖を有するα−オレフィンを出発物質とするアルドール縮合反応で合成されるものであるが、(1)に示される構造を有するものであれば合成方法は限定されるものではない。
例えば、無触媒または触媒存在化、常圧溶剤還流もしくは減圧下において脱水反応することによりエステル化反応を行い、エステル化反応終了後、必要に応じて、反応混合物を脱色剤により脱色、脱臭精製するか、真空蒸留による精製を行うことによって得ることができる。
【0011】
【化3】

【0012】

エステル化の度合いは特に限定されないが、トリエステルである、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリルが、使用感の点で特に好ましい。
市販品としては、前記化学式(1)に示すイソステアリン酸とグリセリンのトリエステルであるコスモール3318、前記化学式(1)に示すイソステアリン酸とジグリセリンのトリエステルであるコスモール43N(ともに日清オイリオグループ社製)等が挙げられる。
成分(b)の含有量は、特に限定されないが、5〜90%が好ましく、特に、10〜70%がより好ましい。この範囲で含有させると、化粧持ちが良好で、ツヤに優れるものとなる。
【0013】
本発明に用いられる、成分(c)の煙霧状シリカは、例えば、四塩化ケイ素を水素と酸素炎中で加水分解して得られる煙霧状無水ケイ酸が挙げられ、その市販品の例としては、AEROSIL50、AEROSIL130、AEROSIL200、AEROSIL200V、AEROSIL200CF、AEROSIL200FAD、AEROSIL300、AEROSIL300CF、AEROSIL380(日本アエロジル社製)等が挙げられる。これら無水ケイ酸は必要に応じて1種又は2種以上を使用することができる。また、これらの煙霧状無水ケイ酸の一次粒径は50nm以下が好ましく、20nm以下が特に好ましい。
なお、上記煙霧状無水ケイ酸として、前記煙霧状無水ケイ酸を疎水化処理した疎水化煙霧状無水ケイ酸を利用しても良く、その疎水化処理の方法としては、トリメチルシリルクロライドやヘキサメチルジシラザンによるトリメチルシロキシ処理、オクチルシラン化処理、メチルハイドロジェンポリシロキサンを用いたコーティング焼き付け処理、金属石鹸によるコーティング等が挙げられる。市販品の疎水化煙霧状無水ケイ酸の例としては、AEROSILR−972、AEROSILR−972V、AEROSILR−972CF、AEROSILR974、AEROSILRX200、AEROSILRY200、AEROSILR202、AEROSILR805、AEROSILR812、AEROSILRA200H(ともに日本アエロジル社製)、タラノックス500(タルコ社製)、キャボジルTS―530(キャボット社製)等が挙げられる。
これら成分は、何れも必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
成分(c)の煙霧状シリカの含有量は、特に限定されるものでないが、0.1〜10%が好ましく、特に、0.5〜5%が好ましい。この範囲であれば、形状保持性、安定性、使用性に優れながら、ツヤ、化粧持ちが良好なものが得られる。
【0014】
本発明の油性固形化粧料には、上記必須成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、油性ゲル化剤を適宜配合できる。例えば、12−ヒドロキシステアリン酸、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、金属石鹸、および有機変性粘土鉱物等が挙げられる。
デキストリン脂肪酸エステルは、油溶性のもので炭素数8〜24(好ましくは14〜18)の直鎖または分枝鎖の飽和または不飽和脂肪酸と平均重合度10〜50(好ましくは20〜30)のデキストリンとのエステル化合物である。具体例としてはパルミチン酸デキストリン、パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、パルミチン酸/ステアリン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、イソパルミチン酸デキストリン、イソステアリン酸デキストリン等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。市販品としてはパルミチン酸デキストリン(レオパールKL、レオパールTL)やパルミチン酸/2-エチルヘキサン酸デキストリン(レオパールTT)(いずれも千葉製粉(株)製)等が挙げられる。
また、ショ糖脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸スクロースや酢酸ステアリン酸スクロース等があり、具体的には、シュガーワックスS−10E、DKエステルS−160、シュガーワックスA−10E(共に「第一工業製薬社製」)等が挙げられる。
さらに、金属石鹸としてはイソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウムなどが挙げられ、有機変性粘土鉱物としては、水膨潤性粘土鉱物を四級アルキルアンモニウム塩で処理したもの等が挙げられ、市販品の例としては、「ベントン38」、「ベントン27」(共に「NLインダストリー」社製)などが挙げられる。
【0015】
また、本発明において、更に油剤を配合することにより、硬さや塗布時の感触を調整できる。ここで用いる油剤としては、通常化粧料に用いられる油分であれば特に制約なく使用することができ、動物油、植物油、合成油等の起源や、成分(a)以外の固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等を利用することができる。具体的には、流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、α−オレフィンオリゴマー、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン、セレシンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、オゾケライトワックス等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油、モクロウ等の油脂類、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ、モンタンワックス等のロウ類、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、ホホバ油等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、アルコキシ変性ポリシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体等が挙げられる。
【0016】
本発明の油性固形化粧料の製造方法は特に限定されず、例えば、上記成分(a)、(b)を均一に加熱溶解したのち(c)を加えて均一に分散する方法が挙げられるが、更に必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、前記必須成分以外の各種成分、例えば、粉体、紫外線吸収剤、保湿剤、皮膜形成剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、ラメ剤、香料などを各種の効果を付与するために適宜配合することができる。
【0017】
粉体としては、球状、板状、針状等の形状や煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、あるいは多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等を使用することがでる。具体的な粉体としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、スメクタイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の白色体質粉体、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等の光輝性粉体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、N−アシルリジン等の有機低分子性粉体、澱粉、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等を例示することができる。これら粉体はその1種又は2種以上を用いることができ、更に複合化したものを用いても良い。なお、これら粉体は、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤等の1種又は2種以上を用いて表面処理を施してあっても良い。
【0018】
また、界面活性剤は粉体の分散性向上の目的で用いることができ、化粧品一般に用いられている界面活性剤であれば特に制約はなく、非イオン界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が使用される。更に、紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系等の紫外線吸収剤や、4−tert−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられ、保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等が挙げられる。
更にまた、水性成分はモイスチャー効果を付与する目的で用いることができ、水及び水に可溶な成分であれば何れでもよく、水の他に、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液が挙げられる。
また更に、酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等が、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等が、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等がそれぞれ挙げられる。
【0019】
本発明の油性固形化粧料は、メイクアップ化粧料、スキンケア化粧料、毛髪化粧料等特に限定されず、具体的には、アイクリーム、口紅、リップグロス、リップクリーム、ファンデーション、頬紅、アイシャドウ等が挙げられ、その形状はスティック状、皿状等が挙げられる。
【0020】
次に実施例をもって本発明をより詳細に説明する。本発明はこれらにより、何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0021】
(製造例1)
トリイソステアリン酸グリセリルの調製
前記化学式(1)で示すイソステアリン酸とグリセリンとを攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管、水分離管を備えた4つ口フラスコに仕込み、触媒として塩化スズを、還流剤としてキシレンを一緒に加え、200〜250℃で15時間、反応させた。反応終了後、活性白土を用いて脱色し、常法にて脱臭を行い、トリイソステアリン酸グリセリルを分取した。
【0022】
(製造例2)
トリイソステアリン酸ジグリセリルの調製
製造例1で用いたイソステアリン酸とジグリセリンを製造例1と同様にエステル化反応し、トリイソステアリン酸ジグリセリルを分取した。
【0023】
(実施例1〜5及び比較例1〜5)
スティック状口紅の調製
表1に示す処方のスティック状口紅を下記の製造方法にて製造し、得られた各スティック状口紅について、折れ荷重値の応力値より形状保持性を評価し、官能評価により、使用感、ツヤ及びツヤの持続性、化粧持ちを評価し、さらに高温下における安定性評価を実施した評価し、その結果を表1にあわせて示す。
【0024】
【表1】

【0025】
*1:トリイソステアリン酸ジグリセリル
下記化学式(2)に示すイソステアリン酸とジグリセリンとのエステル化合物
【0026】
【化4】

【0027】
*2:シュガーワックスA−10E(第一工業製薬社製)
*3:AEROJILR−976S(日本アエロジール社製)
*4:パーフルオロアルキルリン酸5%処理(大東化成工業社製)
*5:ジメチコン3%処理(三好化成社製)
(製造方法)
A.成分(1)〜(14)を110〜120℃にて加熱溶解後、成分(15)〜(21)を加えて、均一混合する。
B.Aに成分(22)〜(25)を加えて均一に混合する。
C.Bに成分(26)を加えて加熱し、脱泡後、型に流し込み充填し、0℃に冷却して成型する。
【0028】
(評価)
1.折れ強度
サンプルを35℃の恒温槽に1時間セットし、レオメーターNRM―2002J(レオテック社製)にて、歯型押し棒により、応力値を測定する。その測定値を下記の基準により判断し、充分な形状保持を有するものから困難なものまで、◎〜××の5段階にて評価し、(ニ)形状保持性とした。
250g以上 ;非常に良好;◎
200g以上250g未満;良好 ;○
150g以上200g未満;やや良好 ;△
100g以上150g未満;不良 ;×
100g未満 ;非常に不良;××
【0029】
2.官能評価
(イ)の使用感、(ロ)のツヤ及びその持続、(ハ)の化粧持ちについて、専門パネル20名による使用テストを行い、パネル各人が下記絶対評価にて7段階に評価し評点を付け、各試料毎にパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
なお、(イ)の使用感については、芯がなく、柔らかく崩れ、密着性に優れるといった観点から評価した。(ロ)のツヤ及びツヤの持続性、(ハ)の化粧持ちについては、各試料を唇に塗布し、パネルに通常の生活をしてもらい、3時間後のツヤと化粧効果について評価した。
(絶対評価)
(評点):(評価)
6:非常に良い
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
0:非常に悪い
(判定基準)
(評点平均値) :(判定)
5点を超える :非常に良好:◎
3点を超えて5点以下 :良好 :○
1点を超えて3点以下 :やや不良 :△
1点以下 :不良 :×
【0030】
3.安定性評価
50℃の恒温槽に1ヶ月間、放置し、外観を目視観察し、異常のないもの(発汗していないもの)から、著しく発汗しているものまで、◎〜××の5段階で評価し、(ホ)経時安定性とした。
(評価) :(判定)
全く変化なし :◎
わずかに発汗しているが使用に支障なし :○
やや発汗しているため :△
発汗している :×
著しい発汗が見られる :××
【0031】
表1から明らかなごとく、本発明のスティック状口紅は、折れ強度が高く、形状保持性、安定性に優れ、さらには、塗布時の使用感、ツヤ及びその持続性、化粧持ちが良好であった。これに対して成分(a)が含有されていない比較例1では使用感および形状保持の点で、また、成分(b)が含有されていない比較例2ではツヤと化粧持ちの点で、さらに、成分(c)が含有されていない比較例3では安定性と化粧持ちの点で、成分(a)、(b)および(c)が含有されていない比較例4では、全ての点で、満足いくものが得られなかった。また、成分(b)の替わりに脂肪酸構造の異なるトリイソステアリン酸ジグリセリルを含有させた比較例5では、ツヤおよび化粧持ちの点で満足いくものが得られなかった。
【0032】
(実施例6)
皿状口紅
(成分) (%)
1.エチレンプロピレンコポリマー 3
2.パラフィンワックス 3
3.ミツロウ 3
4.デキストリン脂肪酸エステル*6 3
5.煙霧状シリカ*7 2
6.ワセリン 10
7.トリイソステアリン酸グリセリル(製造例1) 15
8.重質流動イソパラフィン 15
9.ジカプリン酸プロピレングリコール 10
10.テトライソステアリン酸ジグリセリル 10
11.紫外線吸収剤(パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル) 0.1
12.酸化防止剤(天然ビタミンE) 0.1
13.リンゴ酸ジイソステアリル 残量
14.酸化チタン被覆ガラス末*8 1
*6:レオパールKL(千葉製粉社製)
*7:AEROSIL300(日本アエロジール社製)
*8:メタシャイン1080RC−R
(製造方法)
A.成分(1)〜(13)を110〜120℃に加熱し均一に混合した後、成分(14)を加え、均一に混合する。
B.Aを脱泡後、皿に流し込み室温まで冷却して製品とする。
本実施例で得られた皿状口紅は、滑らかな使用感であるとともに、ツヤ及びその持続性、化粧持ちに優れ、発汗等もなく、経時安定性が良好なものであった。一方、成分7のトリイソステアリン酸グリセリルに替えて、トリオクタン酸グリセリルを用いたところ、ツヤおよび化粧持ちの点で良くないものであった。
【0033】
(実施例7)
皿状アイシャドウ
(成分) (%)
1.エチレンプロピレンコポリマー 5
2.12−ヒドロキシステアリン酸*9 2
3.有機変性ベントナイト*10 2
4.煙霧状シリカ*11 5
5.ジメチルポリシロキサン 10
6.トリイソステアリン酸ジグリセリル(製造例2) 20
7.ポリブテン 10
8.紫外線吸収剤(オキシベンゾン) 0.1
9.酸化防止剤
(2,6−ジ−ターシャリーブチル−パラクレゾール) 0.1
10.トリオクタン酸グリセリル 10
11.マイカ 残量
12.赤色酸化鉄 0.5
13.酸化チタン 1
14.雲母チタン 10
*9:12−ヒドロキシステアリン酸(伊藤製油社製)
*10:ベントン27(NLインダストリー社製)
*11:キャボジルTS―530(キャボット社製)
(製造方法)
A.成分(1)〜(10)を110〜120℃に加熱し均一に混合する。
B.Aに成分(11)〜(14)を加え、均一に分散する。
C.Bを脱泡後、皿に流し込み室温まで冷却して製品とする。
本実施例で得られた皿状アイシャドウは、滑らかな使用感であるとともに、ツヤ及びその持続性、化粧持ちに優れ、発汗等もなく、経時安定性が良好なものであった。
【0034】
(実施例8)
スティック状ファンデーション
(成分) (%)
1.エチレンプロピレンコポリマー 5
2.オゾケライトワックス 3
3.ポリエチレンワックス 3
4.キャンデリラワックス 3
5.カルナウバワックス 3
6.トリイソステアリン酸グリセリル(製造例1) 10
7.トリイソステアリン酸ジグリセリル(製造例2) 10
8.ワセリン 5
9.煙霧状シリカ*12 2
10.紫外線吸収剤
(4−ターシャリーブチル−4‘−メトキシジベンゾイルメタン) 0.1
11.酸化防止剤(酢酸トコフェロール) 0.1
12.イソオクタン酸セチル 20
13.酸化チタン 10
14.マイカ 20
15.タルク 残量
16.赤色酸化鉄 0.5
17.黄色酸化鉄 2.5
18.黒色酸化鉄 0.1
*12:タラノックス500(タルコ社製)
(製造方法)
A.成分(1)〜(12)を110〜120℃に加熱し均一に混合する。
B.Aに成分(13)〜(18)を加え、均一に分散する。
C.Bを脱泡後、容器に充填し、室温に冷却して製品とする。
本実施例で得られたスティック状ファンデーションは、滑らかな使用感であるとともに、化粧持ちに優れ、発汗等もなく、経時安定性が良好なものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(c);
(a)エチレンプロピレンコポリマー
(b)下記化学式(1)に示すイソステアリン酸とグリセリンおよび/またはジグリセリンとのエステル化合物
【化1】

(c)煙霧状シリカ
を含有することを特徴とする油性固形化粧料。
【請求項2】
成分(a)の含有量が、3〜30質量%、成分(b)の含有量が、3〜70質量%、成分(c)の含有量が、0.1〜10質量%含有されていることを特徴とする請求項1記載の油性固形化粧料。
【請求項3】
成分(b)のエステル化合物が、トリエステルであることを特徴とする請求項1または2記載の油性固形化粧料。

【公開番号】特開2006−69933(P2006−69933A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253466(P2004−253466)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】