説明

油温脱水装置

【課題】、熱エネルギーの回収を図ることによりエネルギー効率を向上させることができる脱水処理装置を提供する。
【解決手段】被処理物と処理用油とを収容してこの処理用油を加熱することにより被処理物を脱水する処理槽と、この処理槽の熱源となる蒸気を生成する蒸気生成手段を備えた油温脱水装置であって、特に、蒸気生成手段は、被処理物の脱水にともなって処理槽から放出された蒸気から蒸気を生成する。蒸気生成手段は、被処理物の脱水にともなって処理槽から放出された蒸気を回収して凝縮水を分離する分離用タンクと、蒸気を生成するボイラーと、このボイラーで生成した蒸気と分離用タンクで凝縮水が分離された蒸気とを合流させて処理槽に送気する合流器を有する。または、蒸気生成手段は、被処理物の脱水にともなって処理槽から放出された蒸気の熱を用いて蒸気を生成する熱交換器を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油温脱水装置に関するものであり、特に油温脱水装置における処理槽の熱源として蒸気を用いるものであって、この蒸気の一部として処理槽での処理にともなって発生した蒸気を用いるようにした油温脱水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、多量の水分を含有した被処理物の脱水処理装置として、処理用油を貯留した処理槽を備えた脱水処理装置が知られている。このような脱水処理装置では、処理槽で処理用油を加熱するとともに、加熱した処理用油中に被処理物を投入することにより被処理物をいわゆる天ぷら状態として水分を蒸散させることにより脱水処理を行っているものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、脱水処理装置を用いて被処理物を脱水処理するだけでなく、たとえば処理槽に海水を投入することにより大量の蒸気を生じさせ、この蒸気を回収することによってミネラルウォータを生成することも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
このような脱水処理装置における処理槽の熱源は、通常、蒸気を用いており、ボイラーなどによって生成した蒸気を処理槽に送気して加熱を行っている。
【0005】
さらに、このような脱水処理装置は、一般的にバッチ処理によって処理を行うようにしており、処理槽に投入した被処理物の加熱開始時には、被処理物が含有している水分の蒸発潜熱が非常に大きいことによって多大な熱量が必要である一方で、脱水がある程度進行することにより必要となる熱量が少なくなるので、加熱制御を行いながら効率よく脱水を進行させることが行われている。
【特許文献1】特開平02−163071号公報
【特許文献2】特開2002−121019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した脱水処理装置では、処理槽の熱源として蒸気を用いる一方で、処理にともなって処理槽の内部で生じた蒸気はコンデンサなどによって凝縮された後に排気処理及び廃水処理されており、熱エネルギーの利用効率が極めて低く、稼働コストの低減が困難であるという問題を有していた。
【0007】
特に、上記した脱水処理装置では、処理槽の内部が沸騰温度に達した直後において比較的大量の蒸気が発生するため、この大量の蒸気を廃棄処理するためにコンデンサ、排気処理設備、及び廃水処理設備が大型化し、脱水処理装置の製造コストが増大するという問題もあった。
【0008】
本発明者は、処理槽での被処理物の処理にともなって多量の蒸気が発生することに着目し、この蒸気を処理槽の熱源として再利用化を図ることによって熱エネルギーのエネルギー効率を向上させるとともに、排気処理及び廃水処理の容量を低減させてコンパクト化、及びコンパクト化にともなう製造コストの低減を可能とした脱水処理装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の油温脱水装置では、被処理物と処理用油とを収容してこの処理用油を加熱することにより被処理物を脱水する処理槽と、この処理槽の熱源となる蒸気を生成する蒸気生成手段を備えた油温脱水装置において、蒸気生成手段は、被処理物の脱水にともなって処理槽から放出された蒸気から加熱用熱源となる蒸気を生成しているものである。
【0010】
さらに、以下の点にも特徴を有するものである。すなわち、
(1)蒸気生成手段は、被処理物の脱水にともなって処理槽から放出された蒸気を回収して凝縮水を分離する分離用タンクと、蒸気を生成するボイラーと、このボイラーで生成した蒸気と分離用タンクで凝縮水が分離された蒸気とを合流させて処理槽に送気する合流器を有すること。
(2)分離用タンクで分離した凝縮水をボイラーに送給して蒸気を生成し、この蒸気を合流器に合流させること。
(3)分離用タンクで凝縮水が分離された蒸気を、ボイラーで再加熱していること。
(4)処理槽に投入する被処理物と処理用油とをあらかじめ混合して所定温度に加熱する予備加熱槽を設け、この予備加熱槽の排気ガスから凝縮水を分離した後の排気ガスをボイラーで燃焼させていること。
(5)処理槽で脱水された被処理物と処理用油とを収容して減圧しながら被処理物の脱水を行う減圧脱水槽を設け、この減圧脱水槽の排気ガスから凝縮水を分離した後の排気ガスをボイラーで燃焼させていること。
【0011】
また、本発明の油温脱水装置では、以下の点にも特徴を有するものである。すなわち、
(6)蒸気生成手段は、被処理物の脱水にともなって処理槽から放出された蒸気の熱を用いて蒸気を生成する熱交換器を有すること。
(7)蒸気生成手段は、処理槽から放出された蒸気を加熱するボイラーを有していること。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、被処理物と処理用油とを収容してこの処理用油を加熱することにより被処理物を脱水する処理槽と、この処理槽の熱源となる蒸気を生成する蒸気生成手段を備えた油温脱水装置において、蒸気生成手段は、被処理物の脱水にともなって処理槽から放出された蒸気から加熱用熱源となる蒸気を生成していることによって、熱エネルギーを回収することができるのでエネルギー効率を向上させることができる。また、比較的に大量に発生する蒸気を再利用することによって、従来であればこの蒸気の廃棄処理用として必要であった排気処理設備及び廃水処理設備を小型化することができ、油温脱水装置を小型化・コンパクト化して製造コストの低減を図ることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の油温脱水装置において、蒸気生成手段は、被処理物の脱水にともなって処理槽から放出された蒸気を回収して凝縮水を分離する分離用タンクと、蒸気を生成するボイラーと、このボイラーで生成した蒸気と分離用タンクで凝縮水が分離された蒸気とを合流させて処理槽に送気する合流器を有することによって、熱エネルギーの回収を行いながら必要量の蒸気を確実に供給できる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の油温脱水装置において、分離用タンクで分離した凝縮水をボイラーに送給して蒸気を生成し、この蒸気を合流器に合流させることによって、凝縮水の再利用を図ることができ、蒸気の生成に必要となる水の量を削減できるので、稼働コストの低減を図ることができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の油温脱水装置において、分離用タンクで凝縮水が分離された蒸気をボイラーで再加熱していることによって、ボイラーの熱を効果的に利用して蒸気の熱量を高めることができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、請求項3または請求項4に記載の油温脱水装置において、処理槽に投入する被処理物と処理用油とをあらかじめ混合して所定温度に加熱する予備加熱槽を設け、この予備加熱槽の排気ガスから凝縮水を分離した後の排気ガスをボイラーで燃焼用空気として燃焼させていることによって、比較的臭気の強い蒸気をあらかじめ除去することができ、しかも蒸気中の臭気成分をボイラーで燃焼処理することができるので、臭気の低減を図ることができる。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、請求項3〜5のいずれか1項に記載の油温脱水装置において、処理槽で脱水された被処理物と処理用油とを収容して減圧しながら被処理物の脱水を行う減圧脱水槽を設け、この減圧脱水槽の排気ガスから凝縮水を分離した後の排気ガスをボイラーで燃焼用空気として燃焼させていることによって、減圧脱水にともなって放出された比較的臭気の強い蒸気中の臭気成分をボイラーで燃焼処理することができるので、臭気の低減を図ることができる。
【0018】
特に、請求項5または請求項6記載の発明によれば、臭気成分をボイラーで燃焼処理していることによって、従来、これらの強臭気の排気ガスの処理のために別に設けられていた臭気燃焼炉を不要とすることができ、しかも、強臭気の排気ガスの燃焼処理用として新たな燃料を必要とすることなく処理できるので、熱エネルギーの効率向上を図ることができる。
【0019】
請求項7記載の発明によれば、請求項1記載の油温脱水装置において、蒸気生成手段は、被処理物の脱水にともなって処理槽から放出された蒸気の熱を用いて蒸気を生成する熱交換器を有することによって、処理槽から放出された蒸気の熱の再利用化を極めて容易に行うことができる。
【0020】
請求項8記載の発明によれば、請求項7記載の油温脱水装置において、蒸気生成手段は、処理槽から放出された蒸気を加熱するボイラーを有していることによって、熱交換器での熱交換効率を向上させることができ、必要量の蒸気を確実に生成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の油温脱水装置は、被処理物と処理用油とを収容してこの処理用油を加熱することにより被処理物を脱水する処理槽と、この処理槽の熱源となる蒸気を生成する蒸気生成手段を備えた油温脱水装置であって、特に、蒸気生成手段は、被処理物の脱水にともなって処理槽から放出された蒸気から加熱用熱源となる蒸気を生成しているものである。
【0022】
したがって、処理槽での処理に基づいて生成された蒸気で処理槽を加熱することにより、熱エネルギーの利用効率を向上させることができ、稼働コストの低減を図ることができる。
【0023】
特に、一実施形態として、被処理物の脱水にともなって処理槽から放出された蒸気を回収して凝縮水を分離する分離用タンクと、蒸気を生成するボイラーと、このボイラーで生成した蒸気と分離用タンクで凝縮水が分離された蒸気とを合流させて処理槽に送気する合流器とで蒸気生成手段を構成した場合には、熱エネルギーの回収と同時に必要量の蒸気を確実に供給でき、油温脱水装置を安定的に稼働させることができる。
【0024】
さらに、分離用タンクは、処理槽における加熱手段であるジャケットとドレーン用配管を介して連通連結し、ジャケット内に送給された蒸気のドレーンを分離用タンクに排出可能として、ドレーン中の蒸気も分離して合流器に送気可能としている。以下において、ドレーンは加熱に用いた蒸気及びその凝縮水を指すものとし、処理槽の内部で蒸散されて発生した蒸気及びその凝縮水と区別する場合に、「ドレーン」の語を用いることとする。
【0025】
合流器は、ボイラーで生成した蒸気が送給される配管に、分離用タンクで凝縮水が分離された蒸気を送給する配管を連通連結させた連結部であってもよいし、スチームヘッダーなどを用いてもよい。
【0026】
このように、処理槽から放出された蒸気をそのまま排出処理するのではなく、再利用を図ることによって、排出処理において必要な排気処理設備及び廃水処理設備を小型化することができるので、油温脱水装置自体の小型化を図ることができ、油温脱水装置自体のコスト低減を図ることができる。
【0027】
しかも、分離用タンクで分離した凝縮水をボイラーで再加熱することにより蒸気を生成し、この蒸気も合流器に合流させることによって、蒸気の元となる水の使用量を低減させることができるので、より低コストで稼働させることができる。
【0028】
また、ボイラーでは、分離用タンクで凝縮水が分離された蒸気を再加熱することによって、より高温の蒸気を生成することができ、エネルギー効率をさらに向上させることができる。
【0029】
油温脱水装置では、1台の処理槽だけで被処理物を処理するのではなく、処理槽に投入する被処理物と処理用油とをあらかじめ混合して所定温度に加熱する予備加熱槽を設けている。
【0030】
このように予備加熱槽を設けて被処理物と処理用油とをあらかじめ混合して加熱することにより、加熱初期に比較的大量に放出される臭気混じりの蒸気を除去することができるので、処理槽において放出される蒸気の臭気を低減させることができ、この蒸気を再利用した場合に臭気の影響が生じないようにすることができる。
【0031】
特に、予備加熱槽において放出された蒸気は、凝縮水の分離後の臭気成分混じりの空気をボイラーで燃焼用空気として燃焼させることにより、臭気成分を分解することができ、臭気の低減を図ることができる。
【0032】
また、処理槽での加熱脱水後には、被処理物と処理用油とを減圧脱水槽に投入し、この減圧脱水槽において減圧脱水槽内を減圧しながら被処理物の脱水を行うことにより含水率のさらなる低減を図っている。
【0033】
特に、減圧脱水槽による減圧脱水の際には、被処理物から蒸散された蒸気を吸引することとなるので蒸気中に臭気が混入しやすく、そのため減圧脱水槽の排気ガスから凝縮水を分離した後の排気ガスをボイラーで燃焼用空気として燃焼させることにより、臭気成分を分解することができ、臭気の低減を図ることができる。
【0034】
このように、加熱用の蒸気を生成するボイラーで強臭気の排気ガスを燃焼用空気として燃焼処理することにより、排気ガスの処理用の臭気燃焼炉を設けることなく強臭気の排気ガスの処理を行うことができ、燃焼処理に用いる燃料の削減を図って稼働コストの低減を図ることができる。
【0035】
他の実施形態の油温脱水装置として、被処理物の脱水にともなって処理槽から放出された蒸気の熱を用いて蒸気を生成する熱交換器で蒸気生成手段を構成することもできる。
【0036】
このように、熱交換器で蒸気生成手段を構成することによって、処理槽から放出された蒸気の熱の再利用化を極めて容易に行うことができる。
【0037】
特に、蒸気生成手段には、処理槽から放出された蒸気を加熱するボイラーを設けることにより、熱交換器での熱交換効率を向上させることができ、必要量の蒸気を確実に生成できる。
【0038】
以下において、図面に基づいて本発明の油温脱水装置の実施形態を詳説する。図1は、本実施形態の油温脱水装置の概略模式図である。
【0039】
本実施形態の油温脱水装置は、被処理物を処理用油とともに順次投入して被処理物を脱水する予備加熱槽10と、処理槽20と、減圧脱水槽30を備えており、さらに、減圧脱水槽30で脱水処理された被処理物が投入される常圧調整槽40を備えている。
【0040】
また、油温脱水装置は、常圧調整槽40から送給された被処理物から処理用油を分離する油分離機51とデカンター52を備えており、この油分離機51とデカンター52で被処理物から分離された処理用油を貯留する油用貯留槽61を備え、この油用貯留槽61内の処理用油を予備加熱槽10に投入するために送給する油供給ポンプ62を備えている。
【0041】
図1中、63は油分離機51とデカンター52で処理用油が分離された被処理物を冷却しながら移送する冷却移送機である。
【0042】
予備加熱槽10、処理槽20、減圧脱水槽30、常圧調整槽40、油用貯留槽61は、いずれも蒸気が送給されるジャケットを備えており、このジャケットに蒸気を送気することにより各槽内を間接加熱可能としている。また、予備加熱槽10、処理槽20、減圧脱水槽30、常圧調整槽40、油用貯留槽61にはいずれも内容物を攪拌する攪拌翼を設けており、各駆動モータで攪拌翼を回転させるようにしている。
【0043】
予備加熱槽10、処理槽20、減圧脱水槽30、常圧調整槽40、油用貯留槽61のうち、処理槽20のみは後述するように常圧(大気圧)よりも加圧状態で使用するために耐圧構造としており、本実施形態では水平方向に伸延した略円筒形状としている。また、減圧脱水槽30は、後述するように内部を減圧するために、減圧可能な耐圧構造としている。予備加熱槽10と、常圧調整槽40と、油用貯留槽61はそれぞれ常圧状態で使用するものであり、特別な耐圧構造は設けていない。
【0044】
予備加熱槽10、処理槽20、減圧脱水槽30、常圧調整槽40、油用貯留槽61に送給する加熱用の蒸気は、ボイラー70で生成しており、このボイラー70で生成した蒸気は他の蒸気と合流させる合流器71を介して各槽に送給されるようにしている。本実施形態では、合流器71はスチームヘッダーで構成しているが、スチームヘッダーに限定するものではなく、合流させた蒸気同士を混合させるような混合空間を設けているだけでもよい。
【0045】
ボイラー70には、貯水タンク72から給水ポンプ73によって熱源となる蒸気の圧力としながら水を送給し、ボイラー70で加熱して所要の蒸気を生成している。ここで、本実施形態では、蒸気の圧力を約0.7MPaG.程度としている。図1中、74は蒸気となる水を供給する給水管である。給水管74は、ボイラー70の加熱部分を横断するようにして、給水管74の内部の水を蒸気としている。
【0046】
こうして生成された蒸気は、合流器71を介して各槽のジャケットに送給され、各槽内を加熱可能としている。
【0047】
以下において本発明の要部の説明を行う。本発明の油温脱水装置では、処理槽20での脱水処理にともなって蒸散された蒸気を回収して凝縮水を分離する分離用タンク75を備えており、この分離用タンク75で凝縮水が分離された蒸気を加熱用の熱源として合流器71に送給し、再利用しているものである。図1中、22は処理槽20から分離用タンク75に処理槽20内で被処理物から蒸散された蒸気を回収する蒸気回収管である。
【0048】
しかも、分離用タンク75には、処理槽20での脱水処理にともなって放出された蒸気だけでなく、予備加熱槽10、処理槽20、減圧脱水槽30、常圧調整槽40、油用貯留槽61の各ジャケットから排出された熱源としては使用済みのドレーンも送給して蒸気を分離し、ドレーンから分離された蒸気と処理槽20から回収された蒸気とを混合して再利用している。
【0049】
さらに、分離用タンク75内において凝縮水が分離された蒸気は、分離用タンク75に連通連結した蒸気送給管76を介して合流器71に送給するようにしており、特に、蒸気送給管76は中途部においてボイラー70を横断するように配置して、ボイラー70によって蒸気送給管76内の蒸気を再加熱し、熱エネルギーを向上させた蒸気を合流器71に送給している。図1中、77は蒸気を加圧・圧縮するためのコンプレッサーである。蒸気送給管76は、ボイラー70の200〜400℃程度の温度部分を横断するようにしている。
【0050】
ボイラー70で再加熱された蒸気は、コンプレッサー77によって所定の圧力にまで加圧・圧縮して合流器71に供給している。
【0051】
このように、比較的大量の蒸気が発生する処理槽20の蒸気を回収して予備加熱槽10、処理槽20、減圧脱水槽30、常圧調整槽40、油用貯留槽61のジャケットにそれぞれ送給することによって、処理槽20の加熱に用いた熱エネルギーを回収でき、熱効率の向上を図ることができる。
【0052】
しかも、分離用タンク75で分離された蒸気から分離された凝縮水及びドレーンは貯水タンク72に送給して、この貯水タンク72からボイラー70に送給されて各槽を加熱する蒸気を生成可能としている。
【0053】
このように、凝縮水を再加熱して利用することにより、所定量の蒸気の生成に必要となる水の量を削減することができる。しかも、蒸気から分離された凝縮水あるいはドレーンは温水となっているので、この温水を加熱して蒸気とするために必要となる熱エネルギーの低減を図ることができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0054】
また、ボイラー70では、真空ポンプ31によって減圧脱水槽30から吸引してコンデンサ32で凝縮水が分離された排ガス、及び予備加熱槽10、常圧調整槽40、油用貯留槽61の各槽に設けた排気管と連通連結したベントコンデンサ93で凝縮水が分離された排気ガスを燃焼させている。
【0055】
したがって、排気ガスに含まれている臭気成分をボイラー70での燃焼によって分解することができるので、臭気の低減を図ることができる。
【0056】
特に、従来では、臭気を含む排気ガスを処理するための専用の焼却炉を設けていたが、この焼却炉をボイラー70で兼用することにより排気ガスの焼却処分用の燃料使用を抑制でき、稼働コストの低減を図ることができる。
【0057】
最後に、本実施形態の油温脱水装置での脱水処理について簡単に説明する。本実施形態では、被処理物は汚泥であり、処理用油は植物油、動物油、鉱物油のいずれか1つまたはこれらの混合物としている。
【0058】
予備加熱槽10には、フィーダ11によって汚泥を投入するとともに、油用貯留槽61に貯留された処理用油を油供給ポンプ62によって投入し、攪拌翼で攪拌しながら所定温度に加熱している。
【0059】
予備加熱槽10は、汚泥投入口部分での臭気散逸を防止するために、予備加熱槽10の内部で発生した蒸気とともに予備加熱槽10の空気を排気ファンによって排気管に強制排気している。
【0060】
排気管に送給された排気ガスは、図1に示すようにベントコンデンサ93に送給され、このベントコンデンサ93で凝縮水の分離が行われた排気ガスをボイラー70に送給し、このボイラー70で焼却処理することにより臭気成分を分解して無臭化している。図94は、排気ガスを吸引するための排気ガス用吸引ファンである。ベントコンデンサ93で蒸気から分離された凝縮水は、排水処理設備90で所要の処理が実施されて廃棄可能な排水としている。
【0061】
予備加熱槽10内で所定温度に加温された汚泥と処理用油は、容積式の送給ポンプ21によって処理槽20に送給している。
【0062】
処理槽20では、内部を大気圧よりも若干高い圧力に維持しながら加熱することにより汚泥中の水分を沸騰させて蒸散させている。
【0063】
処理槽20で放出された蒸気は、上記したように蒸気回収管22を介して分離用タンク75に送給され、ボイラー70を用いて熱エネルギーの高い蒸気を生成して合流器71に送給し、各槽のジャケットに送給される。
【0064】
本実施形態では、処理槽20は1槽だけであるが、処理量に応じて複数の処理槽20を設けてもよい。
【0065】
処理槽20において所定の脱水状態とした後、汚泥と処理用油を減圧脱水槽30に送給する。減圧脱水槽30への汚泥と処理用油の移送は、減圧脱水槽30の槽内を大気圧よりも小さい状態とすることにより、この圧力差を利用して汚泥と処理用油とを吸引することによって行っている。
【0066】
減圧脱水槽30では、減圧脱水槽30に連通連結した真空ポンプ31によって減圧脱水槽30の内部を減圧し、かつ減圧脱水槽30の内部を加熱して汚泥の脱水を行っており、真空圧は10kPaA.以下で、温度は110℃以上としている。図1中、33はコンデンサ32で分離された凝縮水を排水する排水用ポンプであり、この排水用ポンプ33によって排水される凝縮水を排水処理設備90に送給している。
【0067】
真空ポンプ31によって減圧脱水槽30から吸引され、コンデンサ32で凝縮水が分離された排気ガスはボイラー70に送給され、ベントコンデンサ81から送給された排気ガスとともにボイラー70で焼却処理することにより臭気成分を分解して無臭化している。
【0068】
減圧脱水槽30において所定の脱水状態とした後、汚泥と処理用油を常圧調整槽40に送給する。このとき、圧力調整槽34を介して圧力を調整しながら汚泥と処理用油を常圧調整槽40に送給している。
【0069】
常圧調整槽40では、攪拌翼によって乾燥汚泥と処理用油とを均等に攪拌して、その後、汚泥と処理用油とを油分離機51とデカンター52に順次送給して処理用油を分離し、脱水処理された汚泥を冷却移送機63で冷却しながら移送している。
【0070】
排水処理設備90では、分離用タンク75で分離された余分な凝縮水も処理するようにしており、ブローダウンポンプ91によって分離用タンク75から排水処理設備90に送水可能としている。図1中、92は、分離用タンク75から排水処理設備90に送水される水を冷却する冷却器である。
【0071】
図2は、他の実施形態の油温脱水装置の概略模式図である。本実施形態の油温脱水装置では、上記した図1の実施形態の油温脱水装置と上記の発生手段が異なるだけであり、それ以外は図1の実施形態の油温脱水装置と同じであるので、同一の構成部分については同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0072】
本実施形態の油温脱水装置も、被処理物を処理用油とともに順次投入して被処理物を脱水する予備加熱槽10と、処理槽20と、減圧脱水槽30を備えており、さらに、減圧脱水槽30で脱水処理された被処理物が投入される常圧調整槽40、常圧調整槽40から送給された被処理物から処理用油を分離する油分離機51とデカンター52、この油分離機51とデカンター52で被処理物から分離された処理用油を貯留する油用貯留槽61、この油用貯留槽61内の処理用油を予備加熱槽10に投入するために送給する油供給ポンプ62を備えている。
【0073】
本実施形態の油温脱水装置もボイラー70'を備えているが、本実施形態の油温脱水装置のボイラー70'は、各槽のジャケットに送給される蒸気を生成するためのものではなく、熱交換器80で蒸気を生成するための補助として用いるものである。
【0074】
すなわち、熱交換器80では、蒸気回収管22を介して処理槽20から送給された蒸気の熱を利用して蒸気を生成し、生成した蒸気を各槽のジャケットに送給可能としており、ボイラー70'は、蒸気回収管22を介して送給された蒸気を加熱して熱交換器80に送給している。図2中、78は、ボイラー70'で加熱された蒸気を加圧・圧縮して熱交換器80に送給するためのコンプレッサーである。
【0075】
さらに、ボイラー70'には給水配管81を送通させて、ボイラー70'の排熱を回収しながら給水配管81内の水またはお湯を加熱して高温のお湯または蒸気を生成し、このお湯または蒸気を各槽のジャケットから送給されたドレーンとともにドレーン分離タンク83に送給し、このドレーン分離タンク83においてお湯と蒸気に分離している。
【0076】
ドレーン分離タンク83内の蒸気は、蒸気補給管84を介して蒸気回収管22に送給し、蒸気回収管22を介して所定量の蒸気を送給可能としている。
【0077】
一方、ドレーン分離タンク83内のお湯は、給湯ポンプ86によって給湯配管85を介して熱交換器80に送給され、この熱交換器80で蒸気となって各槽のジャケットに送給可能としている。なお、図示しないが、熱交換器80で生成された蒸気はスチームヘッダーを介して送給可能としてもよい。
【0078】
このように、処理槽20から送給された蒸気の熱を熱源として蒸気を生成することにより、熱エネルギーの再利用化を極めて容易に行うことができる。
【0079】
特に、処理槽20から送給された蒸気をボイラー70'で加熱することにより、より熱エネルギーを高めた蒸気を利用して熱交換器80により蒸気を生成できるので、熱交換器80での熱交換効率を向上させることができ、必要量の蒸気を確実に生成できる。
【0080】
さらに、ボイラー70'には、真空ポンプ31によって減圧脱水槽30から吸引してコンデンサ32で凝縮水が分離された排ガス、及び予備加熱槽10、常圧調整槽40、油用貯留槽61の各槽に設けた排気管と連通連結したベントコンデンサ93で凝縮水が分離された排気ガスを送給して燃焼させているので、排気ガスに含まれている臭気成分をボイラー70での燃焼によって分解することができ、臭気の低減を図ることができる。
【0081】
本実施形態の油温脱水装置では、処理槽20から送給された蒸気は熱交換器80を送通された後、冷却器92で冷却されて排水処理設備90で処理することにより、各槽の加熱に用いる蒸気に臭気が混入するおそれを完全に解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施形態に係る油温脱水装置の概略模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る油温脱水装置の概略模式図である。
【符号の説明】
【0083】
10 予備加熱槽
11 フィーダ
20 処理槽
21 送給ポンプ
22 蒸気回収管
30 減圧脱水槽
31 真空ポンプ
32 コンデンサ
33 排水用ポンプ
34 圧力調整槽
40 常圧調整槽
51 油分離機
52 デカンター
61 油用貯留槽
62 油供給ポンプ
63 冷却移送機
70 ボイラー
71 合流器
72 貯水タンク
73 給水ポンプ
74 給水管
75 分離用タンク
76 蒸気送給管
77 コンプレッサー
90 排水処理設備
91 ブローダウンポンプ
92 冷却器
93 ベントコンデンサ
94 排気ガス用吸引ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物と処理用油とを収容してこの処理用油を加熱することにより前記被処理物を脱水する処理槽と、
この処理槽の熱源となる蒸気を生成する蒸気生成手段
を備えた油温脱水装置において、
前記蒸気生成手段は、前記被処理物の脱水にともなって前記処理槽から放出された蒸気から蒸気を生成していることを特徴とする油温脱水装置。
【請求項2】
前記蒸気生成手段は、
前記被処理物の脱水にともなって前記処理槽から放出された蒸気を回収して凝縮水を分離する分離用タンクと、
蒸気を生成するボイラーと、
このボイラーで生成した蒸気と前記分離用タンクで凝縮水が分離された蒸気とを合流させて前記処理槽に送気する合流器
を有することを特徴とする請求項1記載の油温脱水装置。
【請求項3】
前記分離用タンクで分離した凝縮水を前記ボイラーに送給して蒸気を生成し、この蒸気を前記合流器に合流させることを特徴とする請求項3記載の油温脱水装置。
【請求項4】
前記分離用タンクで凝縮水が分離された蒸気を、前記ボイラーで再加熱していることを特徴とする請求項3記載の油温脱水装置。
【請求項5】
前記処理槽に投入する前記被処理物と前記処理用油とをあらかじめ混合して所定温度に加熱する予備加熱槽を設け、この予備加熱槽の排気ガスから凝縮水を分離した後の排気ガスを前記ボイラーで燃焼させていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の油温脱水装置。
【請求項6】
前記処理槽で脱水された前記被処理物と処理用油とを収容して減圧しながら前記被処理物の脱水を行う減圧脱水槽を設け、この減圧脱水槽の排気ガスから凝縮水を分離した後の排気ガスを前記ボイラーで燃焼させていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の油温脱水装置。
【請求項7】
前記蒸気生成手段は、前記被処理物の脱水にともなって前記処理槽から放出された蒸気の熱を用いて蒸気を生成する熱交換器を有することを特徴とする請求項1記載の油温脱水装置。
【請求項8】
前記蒸気生成手段は、前記処理槽から放出された蒸気を加熱するボイラーを有していることを特徴とする請求項7記載の油温脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−17096(P2007−17096A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199886(P2005−199886)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(505044820)
【出願人】(505043638)
【出願人】(505044831)
【出願人】(505044853)
【出願人】(505044842)
【出願人】(505043650)
【Fターム(参考)】