説明

治療用4−フェニル酪酸制御放出製剤

4−フェニル酪酸ナトリウム又は薬剤として許容される他の塩、エステル若しくはプロドラッグと制御放出材料とを含み、腫よう性疾患及び神経変性疾患を含めた疾患及び障害の治療に使用する、制御放出製剤及び剤形。本製剤は、持続放出性及び長い半減期をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−フェニル酪酸並びに薬剤として許容されるその塩、溶媒和化合物、エステル及びプロドラッグの治療用制御放出薬剤を提供する。制御放出4−フェニル酪酸製剤は、癌(例えば、前立腺癌)及び神経変性疾患(例えば、脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症)を含めて、様々な障害の治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
フェニル酪酸ナトリウム(4−フェニル酪酸、ナトリウム塩)(4−PBA)は低分子量芳香族カルボン酸である。1987年に、4−PBAは、子供における尿素サイクル障害の治療用に米国で承認された(Brusilow SW, Maestri NE. ”Urea cycle disorders:Diagnosis, pathophysiology, and therapy” Adv. Pediatr.(1996) 43:127−170)。4−PBAは、尿素サイクル障害の治療において、毒性物質を体から排除するアンモニア捕捉剤として機能する。4−PBAは希用薬(Orphan Drug)に分類され、500mg錠剤として製造されている(Buphenyl(登録商標);Medicis)。
【0003】
Brusilow他の国際公開第85/04805号は、4−フェニル酪酸塩を治療有効量で投与する、ヒトにおける廃棄窒素を除去する方法を記載している。米国特許第4,457,942号を参照されたい。
【0004】
4−PBAは、様々な他の障害の治療候補としても試験されてきた。4−PBAの抗癌効果はフェーズI/II臨床試験で評価されている(Gilbert J. et al., “A phase I dose escalation and bioavailability study of oral sodium phenylbutyrate in patients with refractory solid tumor malignancies Clin Cancer Res. (2001) (8):2292−300);Gore SD, et al., ”Impact of the putative differentiating agent sodium phenylbutyrate on myelodysplastic syndromes and acute myeloid leukemia.“ Clin Cancer Res. (2001) 7(8):2330−9;Chang SM et al., “Phase II study of Phenylacetate in patients with recurrent malignant glimoa:a North American Brain Tumor Consortium report”. J. Clin. Oncol., (1999) 17:984−990及びSung MW and Waxman S. “Chemodifferentiation Therapy with Fluorouracil (FU) and Phenylbutyrate (PB) in Advanced Colorectal Cancer:A Phase I Trial” Proceedings of the AACR (1999)。
【0005】
4−PBAは、ある種の血液疾患の治療薬としても評価されている(Fibach E, Prasanna P, Rodgers GP, Samid D. ”Enhanced fetal hemoglobin production by phenylacetate and 4−phenylbutyrate in erythroid precursors derived from normal donors and patients with sickle cell anemia and beta−thalassemia” Blood. (1993) 82(7):2203−9;Resar LM et al., ”Induction of fetal hemoglobin synthesis in children with sickle cell anemia on low−dose oral sodium phenylbutyrate therapy” J Pediatr Hematol Oncol. (2002) 24(9):737−41;MacMillan et al., ”Treatment of Two Infants with Cooley’s Anemia with Sodium Phenylbutyrate” Ann N Y Acad Sci.(1998) 850:452−4及びCollins AF et al., ”Oral sodium phenylbutyrate therapy in homozygous beta thalassemia:a clinical trial” Blood (1995) 85:43−49)。
【0006】
Samid他の米国特許第5,661,179号、同5,710,178号及び同5,654,333号は、癌治療と、貧血、重度のβ鎖異常血色素症及びAIDSを含めた幾つかの病態の予防との両方にフェニル酢酸誘導体を用いる組成物及び方法を開示している。
【0007】
Remiszewski他の米国特許出願第2004/0024067号は、増殖抑制性を有するとされるデアセチラーゼ阻害剤であるヒドロキサム酸塩化合物を開示している。フェニル酪酸ナトリウムを含めて、酪酸及びその誘導体は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤として記載され、ヒトの結腸癌、白血病及び網膜芽腫の各細胞系においてインビトロでアポトーシスを引き起こすと述べられている。
【0008】
Steffan他の米国特許出願第2004/0142859号は、1種類以上のデアセチラーゼ阻害剤の治療有効量を治療が必要な患者に投与することによって、ハンチントン病などのポリグルタミン伸長病、神経変性症(neurological degeneration)、精神障害、タンパク質凝集の障害及び疾患を含めて、様々な疾患及び障害を治療する方法を開示している。フェニル酪酸ナトリウムは、デアセチラーゼ阻害剤として開示されている。神経変性疾患は、例えばケネディ病(球脊髄性筋萎縮症)も開示されている。
【0009】
欧州特許出願第1 206 936号A2は、高コレステロール血症及び高トリグリセリド血症を治療又は予防し、患者LDLコレステロールレベルを低下させ、進展期のアテローム性動脈硬化症及びアンギナ、脳卒中、心臓発作などの関連症例の可能性を低下させる、4−フェニル酪酸ナトリウム組成物を含めた、フェニル酢酸薬剤組成物を記載している。
【0010】
4−フェニル酪酸ナトリウムを臨床に使用することは、この化合物の生理的半減期が短いので妨げられている。4−PBAは、体内でフェニル酢酸に急速に分解し、細胞から迅速に除去され、排せつされる。その結果、治療効果を得るためにはきわめて高濃度が必要とされる(例えば、最高50グラム/日)。このような多量の4−PBAを治療に使用することは、高コスト、治療を数ヵ月又は数年続ける必要性、及び患者の服薬遵守の問題(すなわち、50グラムは100錠/日に等しい。)を含めて、幾つかの理由で問題がある。
【0011】
Walsh他の米国特許第6,207,195号は、CFTR遺伝子療法による嚢胞性線維症の治療への、また、腫よう、尿素サイクル障害及びある種の血液疾患を含めた他の障害の治療への、4−フェニル酪酸塩含有ナノスフェアの使用を記載している。その明細書によれば、4−フェニル酪酸塩のナノスフェア製剤は、架橋反応によってナノ粒子を形成するように、ゼラチン又はゼラチンと類似の他の重合体陽イオンと核酸を複合化することによって形成される。重合体陽イオンは、19,000から30,000の分子量を有するとされ、ポリ−1−リジン及びキトサンが特に好ましい。ナノ粒子は、様々な方法で投与することができ、4−フェニル酪酸の投与量を削減することができるとされている。望ましい投与量は、単一又は分割用量で10から100μg/日の範囲とされている。1μgから20mgの範囲の投与量を使用することができると述べられている。国際公開第98/56370号及び同00/18294号(Johns Hopkins University)も参照されたい。
【0012】
Chaturvedi他(Vertex Pharmaceuticals)の国際公開第00/56153号は、β異常血色素症、嚢胞性線維症及び癌を改善するのに使用される、経口用低用量酪酸塩及び酪酸塩アナログ組成物並びに方法を記載している。その明細書によれば、10−200μMの血清酪酸塩血中濃度を1から8時間生じることができる、経口用酪酸塩のプロドラッグ又は塩と薬剤として許容される担体との組成物を調製することができる。化合物1モル当たり酪酸塩又は酪酸塩アナログ1モルを放出する酪酸塩プロドラッグ化合物では、量は500mgから10グラムである。この出願は、上記血清酪酸塩血中濃度を維持するのに十分な酪酸塩のプロドラッグ、塩又はアナログを用いて患者を2から6日間毎日治療し、次いでかかる治療を再開するまで15から30日間連続してかかる治療を休止することを含む、疾患を治療する方法も対象とする。
【0013】
ForTe Beheer,B.V.の欧州特許出願第1 232 746号A1は、薬理活性物質、ゲル化剤又は増粘剤及び少なくとも1種類のキサンタンガムを含み、特定の粒径分布を有する、懸濁可能な乾燥粉末混合組成物を記載している。この乾燥粉末混合組成物は、活性物質の懸濁液の調製に使用され、それによって液体又は半液体の薬剤組成物を形成することができる。この液体組成物は、飲むことなどによって経口投与することが好ましい。この技術の商業上の実施形態は、ForTe Beheer BV(オランダ)によって市販されているフェニル酪酸ナトリウムの経口粉末分包である。
【0014】
幾つかの他の研究は、酪酸塩及び様々にプロドラッグ改変された誘導体の薬物動態学を調査している。Desmet,G.らは、酪酸キシリトールエステルの排せつプロファイルを調査し、かかるプロドラッグは排せつ速度が遅く、全身的代謝を抑制することを見出した(Eur. J. Drug. Metabol. Pharmacokinet (1991) 3:348−351)。単糖由来のエステル(Pouillart, P., et al., Int. J. Cancer (1991) 49:89−95;Pouillart, P., et al., J. Pharm. Sci.(1992) 81:241−244)及び固体脂質ナノスフェア中の酪酸コレステリルなどのコレステロール(Pellizzaro, C, Anticancer Res. (1999) 19:3921−3925)酪酸トリグリセリド(Planchon, P., et al., J. Pharm. Sci. (1993) 82:1046−1048)及びZn2+キレート化し、モチーフに繋がれた、フェニル酪酸塩の短鎖脂肪酸(Lu, Q., et al., J. Med. Chem. (2004) 47:467−474)を含めて、酪酸及び4−フェニル酪酸塩などの酪酸誘導体の幾つかの他のプロドラッグエステルが調査され、様々な結果が得られた。
【0015】
Lunamed AGの国際公開第03/022253号A1は、活性成分を長期間放出し、1日1回又は2回の経口投与によって様々な疾患、特に癌を緩和及び治癒させるのに適切な、4−フェニル酪酸塩の治療有効量を含む単位投与剤形を記載している。長期放出剤形は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のマトリックス及び4−フェニル酪酸塩並びに薬剤として許容される他の賦形剤である。米国特許出願第2004/0180962号も参照されたい。
【0016】
Perlmutterの米国特許第6,403,646号は、フェニル酪酸誘導体の投与によるプロテアーゼ阻害剤タイプZ変異によって引き起こされるアルファ−1−抗トリプシン欠乏症の治療方法を開示している。この明細書は、経口投与用固体剤形(例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤及び顆粒剤)が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース中の活性化合物の分散体として提供することができる、制御放出製剤を含むことができると述べている。米国特許第5,939,455号及び米国特許出願第2003/0195256号も参照されたい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の一目的は、4−フェニル酪酸の新しい制御放出組成物、及び患者における疾患又は障害の治療にかかる制御放出組成物を使用する方法を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、4−フェニル酪酸(phenylbutryric acid)の全用量を標準治療よりも低減することができる、新しい制御放出組成物及び方法を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、4−フェニル酪酸血中濃度の変動を抑制する、新しい制御放出組成物及び方法を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、治療に役立つ4−フェニル酪酸血中濃度を長期間もたらす、新しい制御放出組成物及び方法を提供することである。
【0021】
さらに別の目的は、従来の4−フェニル酪酸(phenylbutryic acid)療法のコストを実質的に削減する、新しい制御放出組成物及び方法を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、治療に対する患者の遵守を高める、4−フェニル酪酸の新しい制御放出組成物及びかかる制御放出組成物を使用する方法を提供することである。
【0023】
本発明の特定の一目的は、癌及び神経変性疾患の治療用の4−フェニル酪酸の新しい制御放出製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、4−フェニル酪酸並びに薬剤として許容されるその塩、溶媒和化合物、エステル及びプロドラッグの新しい制御放出製剤である。本発明は、さらに、癌(例えば、前立腺癌)及び神経変性疾患(例えば、脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症)の治療を含めた治療用途における、4−フェニル酪酸並びに薬剤として許容されるその塩、溶媒和化合物、エステル及びプロドラッグの制御放出製剤の使用方法を含む。本発明は、ある期間にわたって所望の治療効果を維持する4−フェニル酪酸の治療有効量を低減することができ、1日当たりの投与回数が減少して、患者の服薬遵守を高め、治療コストが削減される。
【0025】
従って、本発明の一態様は、ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含み、ポリマーマトリックスがコポリマー又はターポリマーを含む、制御放出組成物である。本発明の一実施形態においては、コポリマー又はターポリマーはヒドロキシプロピルメチルセルロースコポリマー又はターポリマーである。
【0026】
一実施形態においては、本発明は、ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含み、ポリマーマトリックスがポリマーブレンドを含む、制御放出組成物である。
【0027】
ポリマーブレンド中に含まれるポリマーは変わり得る。一実施形態においては、ポリマーブレンドは、少なくとも1種類の親水性ポリマーを含む。別の特定の実施形態においては、ポリマーブレンドは2種類以上の親水性ポリマーを含む。代表的非限定的親水性ポリマーとしては、セルロース誘導体(例えば、セルロースエーテル)、非セルロース多糖、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、アクリル酸コポリマーなどが挙げられる。
【0028】
特定の一実施形態においては、本発明は、ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含み、ポリマーマトリックスが(i)ヒドロキシプロピルメチルセルロースと(ii)メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシ−メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース又は微結晶セルロースとのブレンドを含む、制御放出組成物である。
【0029】
別の実施形態においては、ポリマーブレンドは、疎水性ポリマーなどの非親水性ポリマーと組み合わせた親水性ポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を含む。
【0030】
本発明の別の態様は、ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含み、ポリマーマトリックスが、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種類のセルロースエーテルポリマーを含む、制御放出組成物を提供する。
【0031】
本発明のさらに別の態様は、ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含み、ポリマーマトリックスが、非セルロース多糖、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール及びアクリル酸コポリマーからなる群から選択される少なくとも1種類の親水性ポリマーを含む、制御放出組成物を提供する。
【0032】
4−フェニル酪酸塩は、本発明の制御放出製剤に使用するのに適切である。4−フェニル酪酸塩は多様であり、例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、置換アンモニウム塩又は酸付加塩である。好ましい一実施形態においては、4−フェニル酪酸塩はナトリウム塩又はフェニル酪酸ナトリウムである。
【0033】
本発明の一実施形態においては、制御放出組成物は、4−フェニル酪酸に加えて第2の治療薬を含むこともできる。適切な第2の治療薬としては、化学療法剤、神経変性疾患の治療に使用する薬剤などが挙げられるが、これらだけに限定されない。代表的非限定的化学療法剤としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、抗腫よう抗生物質、ホルモン剤などが挙げられる。神経変性疾患の治療用薬剤としては、例えば、2−アミノ−6−(トリフルオロメトキシ)ベンゾチアゾール、バルプロ酸、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、ヒドロキシ尿素、アクラルビシン、クアンゾリン、テトラサイクリン誘導体、アミノ配糖体、インドプロフェン、クレアチン、リルゾール及びカルニチンが挙げられる。
【0034】
本発明の別の態様は、本発明の制御放出組成物を用いて、治療を要する対象(例えば、ヒト)における疾患又は障害を治療する方法を提供する。
【0035】
一実施形態においては、本発明は、ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含む制御放出組成物を、治療を要する対象に投与することによって、疾患又は障害を治療する方法を提供する。ここで、ポリマーマトリックスはコポリマー、ターポリマー又はポリマーブレンドを含む。本方法の特定の一実施形態においては、コポリマー、ターポリマー又はポリマーブレンドはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
【0036】
別の実施形態においては、本発明は、親水性ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含む制御放出組成物を、治療を要する対象に投与することによって、疾患又は障害を治療する方法を提供する。ここで、親水性ポリマーは、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキソメチルセルロース、ヘミセルロース及びメチルセルロースからなる群から選択されるセルロース誘導体である。
【0037】
さらなる一実施形態においては、本発明は、親水性ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含む制御放出組成物を、治療を要する対象に投与することによって、疾患又は障害を治療する方法を提供する。ここで、親水性ポリマーは、非セルロース多糖、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール及びアクリル酸コポリマーからなる群から選択される。
【0038】
本発明による方法は、腫よう性疾患(例えば、前立腺癌)、神経変性疾患(例えば、脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症)、尿素サイクル障害、血液疾患、感染症、嚢胞性線維症及びタンパク質の局在化又は凝集障害を含めて、但しこれらだけに限定されない様々な疾患及び障害の治療に使用することができる。
【0039】
本方法の一実施形態においては、制御放出組成物は、4−PBAに加えてさらに第2の治療薬を含む。第2の治療薬としては、例えば、化学療法剤又は神経変性疾患の治療用薬剤が挙げられる。
【0040】
本方法の特定の一実施形態においては、制御放出組成物は4−フェニル酪酸ナトリウム(すなわち、フェニル酪酸ナトリウム)を含む。
【0041】
好ましい一実施形態においては、本発明は、ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含む制御放出組成物を、治療を要する対象に投与することによって、脊髄性筋萎縮症を治療する方法を提供する。一実施形態においては、ポリマーマトリックスは親水性ポリマーマトリックスである。親水性ポリマーは、例えば、セルロースエーテルなどのセルロース誘導体、非セルロース多糖、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール又はアクリル酸コポリマーとすることができる。好ましい一実施形態においては、ポリマーマトリックスはヒドロキシメチルセルロースマトリックスである。制御放出組成物は、バルプロ酸、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、ヒドロキシ尿素、アクラルビシン、クアンゾリン(quanzoline)、テトラサイクリン誘導体、アミノ配糖体、インドプロフェン、クレアチン、リルゾール、カルニチンなどの第2の治療薬を含んでいてもよい。好ましい一実施形態においては、4−フェニル酪酸塩はフェニル酪酸ナトリウムである。
【0042】
別の好ましい実施形態においては、本発明は、ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含む制御放出組成物を、治療を要する対象に投与することによって、筋萎縮性側索硬化症を治療する方法を提供する。ポリマーマトリックスは、例えば、親水性ポリマーマトリックスとすることができる。親水性ポリマーマトリックスに使用するのに適切な代表的非限定的親水性ポリマーとしては、セルロース誘導体、非セルロース多糖、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、アクリル酸コポリマーなどが挙げられる。好ましい一実施形態においては、親水性ポリマーマトリックスはヒドロキシプロピルメチルセルロースマトリックスである。制御放出組成物は、2−アミノ−6−(トリフルオロメトキシ)ベンゾチアゾールなどの第2の治療薬を含んでいてもよい。好ましい一実施形態においては、4−フェニル酪酸ナトリウムはフェニル酪酸ナトリウムである。
【0043】
さらに別の好ましい一実施形態においては、本発明は、ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含む制御放出組成物を、治療を要する対象に投与することによって、腫よう性疾患又は障害を治療する方法を提供する。ここで、ポリマーマトリックスはコポリマー、ターポリマー又はポリマーブレンドを含む。特定の一実施形態においては、ポリマーマトリックスは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを混合したポリマーブレンドである。
【0044】
さらに好ましい一実施形態においては、本発明は、親水性ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含む制御放出組成物を、治療を要する対象に投与することによって、腫よう性疾患又は障害を治療する方法を提供する。ここで、親水性ポリマーは、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択されるセルロースエーテルである。
【0045】
さらに別の好ましい実施形態においては、本発明は、親水性ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含む制御放出組成物を、治療を要する対象に投与することによって、腫よう性疾患又は障害を治療する方法を提供する。ここで、親水性ポリマーは、非セルロース多糖、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール及びアクリル酸コポリマーからなる群から選択される。
【0046】
一実施形態においては、本発明による方法をヒトの腫よう性疾患の治療に使用する。腫よう性疾患は、例えば、ぼうこう癌、乳癌、結腸癌、子宮体癌、腎癌、白血病、肺癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、すい癌、前立腺癌、皮膚癌又は甲状腺癌であり得る。好ましい一実施形態においては、腫よう性疾患は前立腺癌である。
【0047】
本発明による方法は、腫よう性疾患(例えば、前立腺癌)の治療に有用である第2の治療薬をさらに含む制御放出組成物の投与を含んでいてもよい。第2の治療薬の非限定的例としては、化学療法剤、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH−RH)作動物質及び抗アンドロゲン剤が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
本発明は、半減期の長い、4−フェニル酪酸並びに薬剤として許容されるその塩、エステル及びプロドラッグの制御放出製剤を記述する。制御放出製剤は、腫よう性疾患(例えば、前立腺癌)及び神経変性疾患(例えば、SMA、ALS)を含めて、対象における様々な障害の治療に有用である。
【0049】
制御放出薬剤組成物は、少なくとも4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグと少なくとも1種類の放出速度調節剤(例えば、ポリマー)とを含む。本組成物は、薬剤として許容される1種類以上の担体、賦形剤又は希釈剤を含んでいてもよい。一実施形態においては、本組成物は、4−PBAに加えて1種類以上の治療薬を含むことができる。
【0050】
A. 定義
「治療有効量」という用語は、所望の効果をもたらす化合物量を指す。かかる化合物の毒性及び治療効力は、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)及びED50(集団の50%に治療上有効な用量)を求める場合、細胞培養物又は実験動物において標準の薬学手順によって求めることができる。毒作用と治療効果の用量比は治療指数であり、ED50に対するLD50の比として表される。高い治療指数(すなわち、有効量よりも十分高い中毒量)を示す化合物が好ましい。得られたデータは、ヒト用の投与量範囲を公式化するのに使用することができる。かかる化合物の投与量は、ED50を含めて殆ど又は全く毒性がない循環濃度範囲内にあることが好ましい。投与量は、使用剤形及び利用する投与経路に応じてこの範囲内で変えることができる。
【0051】
「薬剤として許容される」という句は、本明細書では、ヒト及び動物の組織と接触して使用するのに、過剰な毒性、刺激作用、アレルギー性応答又は他の問題若しくは障害がなく、妥当な利点/リスク比に相応して、健全な医学的判断の範囲内で適切である化合物、材料、組成物及び/又は剤形を意味するものとする。
【0052】
本明細書では「放出速度調節剤」という用語は、本発明による薬剤からの治療薬放出速度を調節する物質又は構造を指す。放出速度調節剤は、治療薬の制御放出を助け、製剤中の他の成分と一緒になって治療薬の遅延送達、持続性送達、時間指定送達、pH依存性送達、標的送達又はさらに制御された送達をもたらすことができる。
【0053】
本明細書では「制御放出」とは、治療上有利な医薬品血中濃度(但し、毒性レベル未満)を長期間維持し、例えば、6時間、12時間又は24時間剤形をもたらすように制御された速度での治療に有効な薬剤の製剤からの放出を指す。
【0054】
本明細書では「プロドラッグ」という用語は、例えば加水分解によって、本発明の化合物に体内で変換される化合物を指す。プロドラッグの設計は、Hardma et al.(Eds.), Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 9th ed., pp. 11−16(1996)で全般的に考察されている。Higuchi, et al., Prodrugs as Novel Delivery Systems. Vol. 14. ASCD Symposium Series及びRoche(ed.), Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press(1987)でもさらに考察されている。典型的には、薬物の投与に続いて体からの排出又はある生体内変換が起こり、それによって薬物の生物活性が低下し、又は消失する。或いは、生体内変換プロセスによって、最初に投与した薬物よりも活性である、又は最初に投与した薬物と同等に活性である代謝副生物が生じ得る。これらの生体内変換プロセスの理解を深めることによって、生体内変換後にその変化した状態で生理的により活性になる、いわゆる「プロドラッグ」を設計することが可能になる。従って、本開示の範囲内で使用するプロドラッグは、何らかの手段によって薬理学的に活性な代謝物に転化される化合物を包含する。
【0055】
「薬剤として許容される塩」という用語は、ヒト及び下等動物の組織と接触して使用するのに、過剰な毒性、刺激作用、アレルギー性応答などがなく、健全な医学的判断の範囲内で適切であり、妥当な利点/リスク比に相応した塩を意味する。薬剤として許容される塩は当分野でよく知られている。
【0056】
本明細書では「単位剤形」という用語は、活性成分のある量と希釈剤又は担体とを含む、単回又は複数回投与剤形を意味するのに使用する。前記量は、単一の治療投与に1回以上の所定の単位が通常必要であるような量である。液体、割線入り錠剤などの複数回投与剤形の場合には、前記所定の単位は、複数回投与剤形の割線入り錠剤の半分又は1/4などの1断片である。任意の患者に対する具体的用量レベルは、治療する適応症、用いる治療薬、治療薬の活性、適応症の重症度、患者の健康、年齢、性別、体重、食事及び薬理反応、用いる具体的剤形並びに他のかかる要因を含めて、様々な要因によって決まることを理解されたい。
【0057】
本明細書では「対象」という用語は、本明細書に記載の非癌性疾患又は障害に関連する諸特性を示す、細胞又は生物を指す。対象は、典型的には脊椎動物、好ましくは哺乳動物である。本開示における対象又は患者としての哺乳動物は、霊長目、食肉目、長鼻目、奇蹄目、偶蹄目、げっ歯目及びウサギ目のファミリーに由来することが好ましい。本発明の哺乳類脊椎動物は、Canis familiaris(イヌ)、Felis catus(ネコ)、Elephas maximus(ゾウ)、Equus caballus(ウマ)、Sus domesticus(ブタ)、Camelus dromedarious(ラクダ)、Cervus axis(シカ)、Giraffa camelopardalis(キリン)、Bos taunts(ウシ/雌ウシ)、Capra hircus(ヤギ)、Ovis aries(ヒツジ)、Mus musculus(マウス)、Lepus brachyurus(ウサギ)、Mesocricetus auratus(ハムスター)、Cavia porcellus(モルモット)、Meriones unguiculatus(スナネズミ)及びホモ サピエンス(ヒト)であることがさらに好ましい。最も好ましくは、本発明内で用いられる対象又は患者はホモ サピエンス(ヒト)である。
【0058】
B. 化合物
薬剤組成物は、4−フェニル酪酸(I)及び薬剤として許容されるその塩(例えば、Xは、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属陽イオン、アンモニウム又は置換アンモニウムを含む、但しこれらだけに限定されない陽イオンである。)、エステル及びプロドラッグを含むことができる。
【0059】
【化1】

【0060】
4−フェニル酪酸及び薬剤として許容される塩、エステル及びプロドラッグ(produg)は、当分野で公知の方法によって調製することができ、体液から単離することができ、又は商業供給源から入手することができる。一実施形態においては、4−フェニル酪酸塩及び4−フェニル酪酸塩誘導体は、Jones, et al (J. Chem. Soc, pp. 1997−1999(1938))に記載の通り、ジアゾメタンと酸化銀及びチオ硫酸ナトリウムを用いて、アルント−アイシュテルト反応によって調製することができる。或いは、4−フェニル酪酸は、Blicke, F.F, et al. (J. Am. Chem. Soc., 70, pp.3768−3769(1948))に記載の通り、チアナフテン(thianapthene)−2−酢酸及びチアナフテン(thianapthene)−3−酢酸を用いて調製することができる。フェニル酪酸は、単離収率が16.1%ではあるが、塩化ベンジルマグネシウムを用いたグリニャール反応によっても合成することができる(Gresham, E.L., et al., J. Am. Chem. Soc, 71, p.2807−2808(1949))。
【0061】
4−フェニル酪酸及び適切なその薬剤塩は、米国特許第6,372,938号に記載のBurzynski他の方法によって合成することもできる。この特許によれば、芳香族化合物をブチロラクトンと反応させ、続いて塩基で中和する。反応は、触媒の存在下又は非存在下で実施することができるが、AlCl、BF、ZnClなどのルイス酸触媒の使用が好ましいと報告されている。4−フェニル酪酸は、収率約94%で単離されると報告されている。
【0062】
4−フェニル酪酸及び塩は、様々な商業供給源から入手することもできる。例えば、フェニル酪酸ナトリウムは、Triple Crown America, Inc.(Perkasie, PA, USA)からtriButyrate(登録商標)として、Pharmaceutics International, Inc.(Hunt Valley, CA, USA)若しくはUcycld Pharma Inc.(Hunt Valley, CA)からBuphenyl(登録商標)として、又はPackPharm Ltd.(Norwich, Norfolk, UK)からAMMONAPS(商標)として入手することができる。
【0063】
(i)薬剤として許容される塩
薬剤に含まれる治療用化合物は、無機酸又は有機酸から誘導される、薬剤として許容される塩の形で使用することができる。総説として、P.H. Stahl, et al. “Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties, Selection, and Use”(Wiley VCH, Zurich, Switzerland:2002)を参照されたい。
【0064】
本発明で使用するのに適切な4−フェニル酪酸塩は、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、置換アンモニウム塩又は酸付加塩とすることができる。好ましくは、酸性塩はアルカリ金属塩であり、上記一般式中の「X」は、リチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウムからなる群から選択される。
【0065】
アルカリ金属塩は、当業者に周知の手段によって遊離酸から調製することができる(例えば、適切な溶媒中での遊離カルボン酸とアルカリ金属水酸化物又はアルコキシドとの反応。)。4−フェニル酪酸の適切な酸付加塩は、4−フェニル酪酸の遊離塩基型と適切な、無毒の、薬剤として許容される酸の1当量との反応と、続いて、必要に応じて、反応に使用した溶媒の蒸発及び塩の再結晶とによって、4−フェニル酪酸の遊離塩基型から生成することができる。本発明の制御放出製剤に使用する化合物の酸付加塩の形成に適切な酸としては、酢酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、酒石酸、臭化水素酸、塩化水素酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、乳酸、リンゴ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、パモン酸(pamoic)、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸などが挙げられるが、これらだけに限定されない。無毒の、薬剤として許容される塩の形成に適切な酸のクラスは、薬剤技術の従事者にはよく知られており、例えばStahl, P.H., et al., “Handbook of Pharmaceutical Salts”, Wiley−VCH, Weinheim:Germany(2002)に記載されている。4−フェニル酪酸の遊離塩基は、必要に応じて、その酸付加塩と炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなど適切な塩基を含む塩水溶液との反応によって、その酸付加塩から回収することができる。
【0066】
塩は、本発明の化合物の最終単離及び精製中にその場で調製することができ、又は遊離塩基基を適切な有機酸と反応させることによって別個に調製することができる。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩(camphorsufonate)、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、1/2硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩化水素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イソチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、炭酸水素塩、p−トルエンスルホン酸塩及びウンデカン酸塩などが挙げられるが、これらだけに限定されない。また、塩基性窒素含有基は、メチル、エチル、プロピル及びブチルの塩化物、臭化物、ヨウ化物などの低級ハロゲン化アルキル;ジメチル、ジエチル、ジブチル及びジアミルの硫酸塩のようなジアルキル硫酸塩;デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリルの塩化物、臭化物、ヨウ化物などの長鎖ハロゲン化物;ベンジル及びフェネチルの臭化物のようなハロゲン化アリールアルキルなどの試薬を用いて第四級化することができる。それによって水溶性、油溶性又は分散性の生成物が得られる。薬剤として許容される酸付加塩を形成するのに使用することができる酸の例としては、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸及びシュウ酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸などの有機酸が挙げられる。
【0067】
塩基付加塩は、カルボン酸含有部分を、薬剤として許容される金属陽イオンの水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩などの適切な塩基と、又はアンモニア、有機第一級、第二級若しくは第三級アミンと、反応させることによって、本発明の化合物の最終単離及び精製中にその場で調製することができる。薬剤として許容される塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム塩などのアルカリ金属又はアルカリ土類金属に基づく陽イオン並びにアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミンを含めた無毒の第四級アンモニア及びアミン陽イオンなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。塩基付加塩の形成に有用である他の代表的な有機アミンとしては、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジンなどが挙げられる。本発明の化合物の好ましい塩としては、リン酸塩、トリス(tris)、酢酸塩などが挙げられる。
【0068】
薬剤として許容される塩は、当分野で周知の標準手順によって、例えば、アミンなどの十分に塩基性の化合物を、生理学的に許容される陰イオンを与える適切な酸と反応させることによって、得ることもできる。カルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム又はリチウム)塩又はアルカリ土類金属(例えばカルシウム又はマグネシウム)塩も調製することができる。
【0069】
C. 制御放出製剤
制御放出は、薬物血しょう中濃度の変動の抑制、全用量の削減、副作用の極小化、治療コストの削減及び患者の服薬遵守の向上を含めて、多数の利点をもたらす。本発明は、制御放出、遅延放出又は遅延と制御の複合放出のプロファイルを有する薬剤を含む。或いは、製剤は、即時放出製剤と制御放出製剤の組み合わせとすることができる。
【0070】
4−フェニル酪酸の制御放出は、所望の結果を得るのに適切な任意の方法で制御することができる。4−PBAの送達に適切な制御送達方法を記載した本としては、Robert S. Langer, Donald L. Wise, editors;Medical applications of controlled release (Volumes 1 and 2);Boca Raton, FL:CRC Press, 1984、William J. M. Hrushesky, Robert Langer and Felix Theeuwes, editors;Temporal control of drug delivery (series);New York:New York Academy of Sciences, 1991などが挙げられる。
【0071】
制御放出システムの好都合な分類は、当該物質の放出を制御する機構に基づいている。本発明に包含される代表的非限定的システムとしては、拡散制御システム、溶媒制御システム、化学的制御システムなどが挙げられる。これらのカテゴリーは絶対的なものではなく、すなわち、ある種の制御放出製剤は、2つ以上のシステムの態様を含むことができる。例えば、本発明の特定の一実施形態においては、制御放出システムは、一体型ポリマーマトリックス中に分散された4−PBAを含み、ポリマーマトリックスからの薬物の放出は、ポリマーマトリックスからの薬物の拡散によって、ポリマーの(分解による)侵食によって、又は2つの機構の組み合わせによって起こる。
【0072】
(i)拡散制御システム
本発明の一実施形態においては、拡散制御システムを用いて4−PBAを制御放出させる。拡散制御システムの2つの基本タイプが本発明での使用に適切である。第1のタイプは貯蔵装置であり、薬物は、薬物放出速度が拡散障壁の薬物透過によって制御されるように、装置内に封入される。貯蔵システムの代表的非限定的例としては、膜、カプセル、マイクロカプセル、リポソーム及び中空繊維が挙げられる。
【0073】
本発明での使用に適切な拡散制御システムの第2のタイプは、活性薬剤が速度制御マトリックス(例えば、ポリマーマトリックス)中に分散又は溶解している一体型(マトリックス)装置である。4−PBAは速度制御マトリックス全体に均一に分散し、薬物放出速度は、マトリックスを通る拡散によって制御される。
【0074】
拡散制御システムの両タイプからの4−BPAの放出は、拡散のフィックの法則によって支配され、拡散流束(JD)は、薬物分子の負の濃度勾配×薬物分子の拡散係数(D)と関係がある。貯蔵システムにおいては、拡散障壁は、本質的に均一であり、厚さが不変であるので、4−PBAの拡散速度は、送達システムの寿命を通してかなり安定に保つことができる。一体型マトリックスタイプのシステムにおいては、濃度勾配は、時間に依存し、時間の経過につれ拡散経路が厚くなるのに応じて次第に減少する。
【0075】
(a)貯蔵装置
本発明の一実施形態においては、貯蔵装置を用いて4−PBAを制御放出させる。この設計では、貯蔵器(例えば、固体薬物、希薄溶液又は高度に濃縮された薬液)は、少なくとも一部が速度制御材料によって形成された拡散障壁で包囲されている。この実施形態において4−PBAの放出を効果的に制限する唯一の構造は、貯蔵器を包囲する拡散障壁である。貯蔵システム剤形は、単一の大きな貯蔵器を含む錠剤の場合のように大きい場合もあれば、個々に膜で被覆された複数の貯蔵器粒子を含むカプセル剤の場合のように多粒子(multiparticulate)の場合もある。膜は、4−PBAに対して透過性のある非多孔質とすることができ、又は多孔質とすることができる。貯蔵装置としては、例えば、経口システム、移植可能なシステム又は経皮システムが挙げられる。
【0076】
様々な材料を使用して、薬物貯蔵器を包囲する拡散障壁を製作することができる。装置の拡散障壁を製作するのに適切な材料は、一般に、4−PBAが拡散又は拡散流のプロセスによって制御放出速度で通過することができる、孔のある、又は孔のない、壁を形成することができる材料である。拡散障壁の形成に適切な材料は、天然材料又は合成材料であり、好ましくは、体液、組織又は器官に生物学的に適合し、装置が接触する体液に本質的に不溶である材料である。一般に、体液に急速に溶解する材料又は極めて可溶性である材料の使用は避けるべきである。というのは、装置の障壁又は壁の溶解は、長期間の何らかの使用に対して、4−PBA放出の定常性、並びに所定の位置にシステムが残留する能力に影響を及ぼすからである。
【0077】
一態様においては、本発明は、薬剤のコアを覆うフィルムコート又は膜を提供する。ここで、コアは、4−PBAを含み、薬剤として許容される1種類以上の賦形剤を含んでいてもよい。本発明の特定の一実施形態においては、フィルムコート又は膜は1種類以上のポリマーを含む。(特にポリマー及びその添加剤に関した)フィルムコーティングの総説については、Kala H., Dittgen M., Moldenhauer H., Zessin G., On the Pharmaceutical Technology of Film Coating. Pharmazie, 34(11), 1979.(CBDE Translation.)を参照されたい。本発明での使用に適切なポリマーとしては、例えば、セルロースエステル、セルロースエーテル、アクリルポリマー又はポリマー混合物が挙げられる。好ましい材料としては、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロースなどが挙げられる。生物学的に適合し、薬物に悪影響を及ぼさない他の重合体膜を使用することもできる。
【0078】
本発明の特定の一実施形態においては、重合体フィルムコーティングは腸溶性重合体フィルムコーティングであり、被覆された固体がそのまま胃を通って小腸に達することができ、そこで薬物が放出され、腸管粘膜からヒトの体内に吸収され、その薬理効果を発揮することができる。腸溶性ポリマーの非限定的例としては、セルロース、ビニル及びアクリル誘導体が挙げられる。
【0079】
本発明の一実施形態においては、4−PBAの徐放性をマイクロカプセル化によって実施する。本明細書では「マイクロカプセル」という用語は、シェル又はコーティングで包囲された4−PBAを含む小粒子(すなわち、微粒子)を指す。本発明のマイクロカプセルの直径は、数ミクロンから数ミリメートルの範囲とすることができる。ナノカプセルという用語は、1ミクロン未満のカプセルを指すのに使用する。マイクロカプセル及びマクロカプセルという用語は、それぞれ、1から1000ミクロンのカプセル及び1000ミクロンを超えるカプセルを指すのに使用する。特定の一実施形態においては、マイクロカプセルはナノカプセルではない。
【0080】
本発明のマイクロカプセル化薬物送達システムは、タンパク質、多糖、デンプン、ワックス、脂肪、ポリマー、樹脂を含めて、但しこれらだけに限定されない様々な保護壁又は被覆材料を利用することができる。ポリマーは、天然ポリマー、合成ポリマー又は合成によって改変された天然ポリマーとすることができる。代表的非限定的ポリマーとしては、ゼラチン、魚のコラーゲン、アラビアゴム(rubber arrabicum)、シリコン(silicon)ゴム卵白、フィブリノーゲン、カゼイン、ヘモグロビン、ゼイン、アルギナート、ナイロン、ナイロン−ポリエチレンイミン カラゲーン、寒天、キトサン、アラビノガラクタン、ジェラン(gelan)、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクロレイン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸ポリアミド、ポリエチレングリコール、エチルスチロールマレイン酸無水物(ethyl Styrolmaleinacidanhydride)コポリマー、硫酸セルロース−ポリ(ジメチルジアリル)−塩化アンモニウム、ヒドロキシ−メタクリル酸エチル−メタクリル酸メチル、キトサン−カルボキシメチル−セルロース及びアルギナート−ポリリジン−アルギナートなどが挙げられる。
【0081】
本発明の特定の一実施形態においては、本発明のマイクロカプセル(microcapsulate)は、マイクロカプセルからの薬物放出速度を拡大するために実質的に水不溶のポリマーを利用する。代表的非限定的水不溶性ポリマーとしては、水溶液に不溶である、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)などが挙げられる。従って、その中に含まれる薬剤は、マトリックスを通した単純な拡散によってのみ放出され、又はポリマーの分解後にのみ放出され、従って薬物の急速な送達や加速度的な送達ではなく、数週間、さらには数ヵ月などある期間にわたってその中に含まれる薬物が制御放出される。例えば、米国特許第6,051,259号を参照されたい。
【0082】
4−PBAは、様々な方法によって微粒子の形で封入することができる。マイクロカプセル化技術の総説としては、Arshady R., Microspheres and Microcapsules:A Survey of Manufacturing Techniques. 1:Suspension and Crosslinking., Polym. Eng. Sci., 30(15), 1746−1758, 1989;Arshady R., Microspheres and Microcapsules:A Survey of Manufacturing Techniques. 2:Coacervation., Polym. Eng. Sci., 30(15), 905−914, 1990;Arshady R., Microspheres and Microcapsules:A Survey of Manufacturing Techniques. 3:Solvent Evaporation., Polym. Eng. Sci., 30(15), 915−924, 1990)を参照されたい。本発明によるマイクロカプセル化に適切な代表的非限定的技術としては、複合コアセルベーション、界面重合、in situ重合、ポリマー−ポリマー相分離、脱溶媒和、押し出し、(例えば、熱的、イオン性)ゲル化などが挙げられる。生物活性物質を可逆的に封入する幾つかの方法も本発明での使用に適切である。例えば、Wheatley他の米国特許第4,900,556号 “System for Delayed and Pulsed Release of Biologically−Active Substances”を参照されたい。
【0083】
本発明のマイクロカプセルは、球状のシェルで包囲された液体コア材料の単純な液滴から、連続ポリマーシェルマトリックス中に分散したコア材料の小さな液滴を含む不規則形状の粒子まで多種多様な構造を有することができる。非限定的なマイクロカプセル構造としては、例えば、単核球状、多核球状、多核不規則、封入単核カプセル及び二重壁マイクロカプセル(microcapsulate)が挙げられる。明確なコーティング及びコア領域は認められないが、類似の用語は、微粒子、ミクロスフェア、ミクロマトリックス及びミクロビーズである。
【0084】
目的投与経路に適切な直径を有するマイクロカプセルを製造する。例えば、血管内投与では直径0.5から8ミクロン、皮下又は筋肉内投与では直径1−100ミクロン、消化管又は他の管腔への送達用の経口投与では直径0.5から5mmである。肺系への好ましい投与サイズは、空気力学的径が1から3ミクロンであり、実際の直径が5ミクロン以上である。
【0085】
本発明の一実施形態においては、凝集体を用いて4−PBAの制御放出を実施し、又は4−PBAのノンパレイル(non−pareil)顆粒剤をPH感応性、腸溶性又は徐放性コーティングで被覆する。次いで、この顆粒剤をカプセルに詰めるか、又は追加の賦形剤と一緒に圧縮して錠剤を形成する。剤形は、被覆又は遅延放出ペレットを含む、2つの部分から成るシェルの堅いカプセルとすることができる。
【0086】
(b)一体型マトリックス装置
本発明の別の実施形態においては、一体型マトリックス装置を用いて4−PBAを制御放出させる。4−PBAは速度制御マトリックス又はネットワーク全体に均一に分散し、薬物放出速度は、マトリックス又はネットワークを通る拡散によって制御される。本発明の特定の一実施形態においては、マトリックス又はネットワークはポリマーマトリックス又はネットワークである。放出が続くにつれ、このタイプのシステムでは、活性薬剤の移動距離が次第に長くなり、従って放出するのにより長い拡散時間を必要とするので、放出速度は通常減少する。一体型装置の放出特性は、ポリマーマトリックス中の薬物の溶解性に依存する。マトリックスが多孔質の場合には、放出は、粒子の細孔ネットワーク内に溜まった溶液(sink solution)への溶解性に依存し、ネットワークの曲折は、薬物がポリマーに分散しているか、又はポリマーに溶解しているかによって決まる。Singh P et al. J. Pharm. Sci. (1968) 57(2):217−226, 1968を参照されたい。
【0087】
マトリックス調合物に薬物を分散又は溶解させた後に剤形設計(form design)が続く。複合溶液、懸濁液又は固体に形状又は形態を与えなければならない。錠剤形成は、制御放出剤形を設計する一方法である。一実施形態においては、マトリックスを圧縮して錠剤にする。
【0088】
本発明の一体型マトリックスシステム中の放出速度調節材料として様々なポリマーを使用することができる。一実施形態においては、このシステムは、単なる拡散制御システムであり、生物環境において基本的に安定であり、膨潤又は分解によってそのサイズを変えない。本発明のこの実施形態においては、送達システムを生物環境に導入すると、ポリマーマトリックス成分によって、4−BPAは、ポリマー自体に何ら変化を起こさずにポリマーの細孔又は巨大分子構造を通って拡散することができる。本発明の別の実施形態においては、ポリマーマトリックスは、下記「溶媒制御システム」及び「化学的制御システム」でさらに説明する通り、適切な生物環境に置かれるまで、その薬剤を放出することができない。
【0089】
本発明の一実施形態においては、一体型マトリックス装置は単一のポリマータイプを含む。単一のポリマータイプはホモポリマー(すなわち、単一の単量体単位を組み入れた)とすることができ、又はこれらの単量体単位の2種類以上のコポリマー若しくはターポリマーとすることができ、単量体の順序は無作為、交互、ブロック又はグラフトである。ポリマーは線状、分枝又は架橋とすることができる。
【0090】
本発明の別の実施形態においては、一体型マトリックス装置は2種類以上のポリマータイプを含む(すなわち、ポリマーブレンド)。これらのポリマー、コポリマー又はターポリマーの物理的組み合わせ又は混合物も使用することができる。ポリマーブレンドを開示した代表的な米国特許としては、米国特許第5,128、143号(Baichwal et al.)“Sustained Release Excipient and Tablet Formation”、米国特許第4,842,866号(Horder et al)“Slow Release Solid Preparation”、米国特許第5,811,126号(Krishnamurthy)“Controlled Release Matrix for Pharmaceuticals”、米国特許第3,965,256号(Leslie)“Slow Release Pharmaceutical Composition”及び米国特許第4,235,870号(Leslie)“Slow Release Pharmaceutical Compositions”などが挙げられる。ポリマーブレンドにおいては、様々なポリマータイプの互いの比は同等でも、異なっていてもよい。例えば、2種類の異なるポリマーを含むポリマーブレンドにおいては、第1のポリマータイプと第2のポリマータイプとの比は、例えば10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1又は1:1とすることができる。
【0091】
本発明の一体型マトリックス装置に使用するのに適切なポリマーとしては、天然ポリマー、合成ポリマー、合成によって改変された天然ポリマーなどが挙げられる。本装置の一体型マトリックス装置は、ポリマー誘導体を含むこともできる。本明細書では「誘導体」としては、化学基、例えば、アルキル、アルキレンの置換、付加を含み、ヒドロキシル化、酸化及び当業者によって常法に従って成される他の改変を含む、ポリマーなどが挙げられる。
【0092】
マトリックス中の完成した製剤の総重量の重量によって表されるポリマー量は、例えば1%から3%、3から5%、5%から7%、7%から10%、10%から15%、15%から20%、21%から30%、31%から40%、41%から50%、51%から60%、61%から70%、71%から80%、81%から90%及び91%から99%の範囲である。拡散制御システムにおいては、薬物濃度に対してポリマー濃度が増加すると、薬物放出速度を遅くすることができる(R.Bkader, Ed. Controlled Release of Biologically Active Agents (John Wiley & Sons, New York, New York USA, 1988)中のR. Baker, Introduction, pp 1−21参照)。本発明の特定の一実施形態においては、重量で表されるポリマー量は約51%から約99%である。充填レベルは、例えば0−5%(v/v)、5−10%、10−15%、15−20%、20−25%又は25%を超える範囲とすることができる。一般に、充填レベルが増加すると、一体型分散体の複雑さが増す。
【0093】
2%水溶液について20℃で測定したポリマーの粘度は変動し得る。ポリマーの粘度は約15から約150,000cpsの範囲とすることができる。特定の一実施形態においては、ポリマーの粘度は、約15−50cps、50−100cps、100−500cps、500−1000cps、1000−5000cps、5000−10,0000cps、10,000−25,000cps、25,000−50,000cps、50,000−75,000cps、75,000−100,000cps、100,000−125,000cps又は125,000−150,000cpsである。ポリマーの粘度増加は、ポリマー分子量の増加、ポリマーの枝分れの増加又はポリマーの置換度の増加に対応し得ることが一般に認められている。
【0094】
本発明の一実施形態においては、4−PBAは、プラスチックマトリックスシステム中で送達される。化学的に不活性であり、良好な薬物埋め込み能力を有する不溶性又は骨格マトリックスを形成するプラスチックマトリックスシステム中のポリマー。水に不溶又は実質的に不溶であるという前提で本発明での使用に適切な任意の重合体プラスチック材料としては酢酸セルロース(酢酸酪酸セルロース、プロピオン酸酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロースなど)、メチル、エチル及びプロピルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリカルボナート;ポリスチレン;ポリメタクリル酸メチル、ポリエチルエタクリラート、ポリエチレン、ポリエチレンメタクリラート、他のアクリル酸低級アルキルなどのアクリル酸アルキル;酢酸ビニル/塩化ビニル、アクリル酸メチル/メタクリル酸メチルビニルポリマー;ポリ塩化ビニル ポリウレタン;ポリアクリロニトリル並びにその混合物、組み合わせ及びマルチポリマー(コポリマー、ターポリマーなど)などが挙げられる。
【0095】
疎水性ポリマーも本発明での使用に適切である。疎水性蝋状材料は潜在的に侵食性であり、細孔拡散及び侵食によって薬物の放出を制御する(一般に、Lachman L:Lieberman H A and Kanig J L(eds), The Theory and Practice of Industrial Pharmacy. 3rd ed., Varghese Publishing House, Bombay中のLordi, N.G., Sustained Release Dosage Forms, pp 430−456, 1990を参照されたい。)。親油性マトリックスは、グリセリド(例えば、ステアリン、パルミチン(palnitin)、ラウリン、ミリスチン、水添ヒマシ油又は綿実油、プレシロール(precirol)などのモノ、ジ又はトリグリセリド)、脂肪酸及びアルコール(例えば、ステアリン酸、パルミチン酸又はラウリン酸;ステアリル、セチル又はセトステアリルアルコール)、脂肪酸エステル(例えば、プロピレングリコールモノステアラート、スクロースモノステアラート、スクロースジステアラート)及びワックス(例えば、白蝋、マッコウクジラの蝋)を含めて、脂肪賦形剤を含むことができる。本発明での使用に適切な他の疎水性材料としては、例えば、水添ヒマシ油(HCO)、エチルセルロース及びカルナウバロウが挙げられる。親油性材料のさらなる例としては、パルミトステアリン酸グリセリン(glyceryl palmitosterate)(PRECIROL ATO 5)、ベヘン酸グリセリン(COMPRITOL 888 ATO)及び水添ヒマシ油(CUTINA HR)が挙げられる。
【0096】
本発明の一体型マトリックス装置の形成に使用するポリマーは、非分解性とすることができる。非分解性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリラート、エチレン酢酸ビニールポリマー 他のアシル置換酢酸セルロース、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、非分解性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルフェノール、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホナート(hlorosulphonate) ポリオレフィン、ポリエチレンオキシド、これらのブレンド及びコポリマーが挙げられる。
並びにこれらのコポリマー及び混合物。
【0097】
4−PBAの制御放出は、4−PBAを含まないポリマーで被覆されたポリマー/4−PBAマトリックスからなる複合装置を用いて実施することもできる。例えば、Bodmeier R and Paeratakul O. “Drug Release from Laminated Polymeric Films Prepared from Aqueous Latexes” J. Pharm. Sci. (1990) 79(1):32−36;Laghoueg N., Paulet J.L., Taverdet J.L., Vergnaud J.M. “Oral Polymer−Drug Devices with a Core and an Erodible Shell for Constant Drug Delivery. Int.” J. Pharm. (1989) 50:133−139, 1989を参照されたい。
【0098】
本発明での使用に適切なコーティングポリマーとしては、例えば、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリメチル−アクリル酸メチル(olymethyl−methylacrylate)、アクリル酸エチル、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリラート、スチレン/マレイン酸コポリマー、酢酸セルロースpthahate、酢酸セルロース(dellulose)pthahate/PEGブレンド、微結晶セルロース、ポリデキストロース、ラクトース及びシェラックが挙げられる。
【0099】
(ii)溶媒活性化システム
一実施形態においては、本発明の薬物送達システムは、溶媒活性化システムなどの適切な生物環境に置かれるまで、4−PBAを放出することができない。溶媒活性化システムは、(i)膨潤性制御放出システムと(ii)浸透システム(すなわち、半透膜を通る水の輸送を含む)を備える。
【0100】
(a)膨潤性マトリックスシステム
本発明の一実施形態においては、制御放出は、膨潤性制御放出システムにおいて実施される。膨潤制御装置においては、4−PBAは、膨潤性マトリックス中に分散している。薬物送達装置を水系環境に置くと、水がマトリックスに浸透し、膨潤が起こり始める。ヒドロゲルは、過剰の水中に置かれたときに膨潤する材料である。ヒドロゲルは、急速に膨潤し、その膨潤した構造中に多量の水を保持することができる。この材料は、水に溶解せず、3次元ネットワークを維持する。ヒドロゲルは、通常、化学結合又はイオン性相互作用、水素結合、疎水性相互作用などの他の凝集力によって架橋した親水性ポリマー分子でできている。ヒドロゲルは、きわめて長時間変形した後でもこのシステムが元に戻る記憶された基準形態が存在するという意味で弾性固体である。
【0101】
本発明の特定の一実施形態においては、マトリックスは親水性ポリマーマトリックスである。本明細書では「親水性」という用語は、水と一般に容易に会合し得る、組成物、物質又は材料、例えば、ポリマーを指す。本発明に使用することができる親水性ポリマーは、様々なタイプのドメイン、例えば、より親水性であるドメイン及びより疎水性であるドメインを有することができる。親水性ポリマーの総合的な性質は、好ましくは親水性である。この親水性は、比較的高い親水性から比較的低い親水性まで連続して変わり得る。
【0102】
本発明の膨潤性ポリマーマトリックスシステムは、膨潤の目的で水又は他の流体を吸収することができる。薬物は、通常、ガラス状(乾燥状態)のヒドロゲルポリマー中に混合される。次いで、重合体鎖ネットワークは、水系媒体に導入すると膨潤する。膨潤によって、製剤中の水系溶媒含量及びポリマー網目サイズが増大し、薬物がゲルを通って外部環境に拡散することができる。(総説として、Pedley D.G., Skelly P.J., Tighe B.J., Hydrogels in Biomedical Applications., Br. Polym. J., 12, 99−110, 1980;Hydrogels for Medical and Related Applications. ACS Symp. Ser.中のRatner B.D., Hoffman A.S., Synthetic Hydrogels for Biomedical Applications., Ch.1, 31, 1−35, 1976を参照されたい。)。
【0103】
ポリマーマトリックスに使用するのに適切な代表的非限定的親水性ポリマーとしては、セルロース誘導体、非セルロース多糖、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、アクリル酸コポリマーなどが挙げられる。セルロース誘導体としては、例えば、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(高、中及び低分子量)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などのセルロースエーテルが挙げられる。セルロースエーテルの総説としては、Salsa T, Veiga F, Pina ME. Oral controlled−release dosage forms. I. Cellulose ether polymers in hydrophilic matrices. Drug Dev Ind Pharm. (1997) 23:929−938;Alderman DA. A review of cellulose ethers in hydrophilic matrices for oral controlled−release dosage form, Int. J. Pharm. Tech. & Prod. Mfr. (1984) 5, 1−9を参照されたい。他の適切なセルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキソメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヘミセルロースなどが挙げられる。非セルロース多糖の非限定的例としては、ガラクトマンナン、ガーゴム、イナゴマメゴム、アラビアゴム、ステルクリアゴム、寒天及びアルギン酸塩(例えば、アルギン酸カリウム、アルギン酸ナトリウム)が挙げられる。アクリル酸ポリマーの代表的非限定的例としては、carbopol 934P及び974P、EUDRAGIT LD 35、Noveon又はポリカルボフィルが挙げられる。
【0104】
他の親水性ポリマーとしては、トラガカントゴム、イナゴマメゴム、カラヤゴムなどの1種類以上の天然親水性ゴム、部分若しくは全合成親水性ゴム;ペクチンなどのタンパク質物質及びカルボキシポリメチレン、ゼラチン、カゼイン、ゼイン、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カーボマー、ズーグラン(zooglan)、多糖、Amazio 721A(American Maize Products)、プルラン(Hayashibara BiochemicalLaboratories, Inc.)などの加工デンプン誘導体などの他の親水性ポリマーなどが挙げられる。
【0105】
本発明の一実施形態においては、ポリマーマトリックスとしては、単一の親水性ポリマータイプ(すなわち、単一のホモポリマー コポリマー又はターポリマー)、親水性ポリマーブレンド(すなわち、2種類以上の異なる親水性ポリマー)などが挙げられる。親水性ポリマーブレンドの一例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとヒドロキシプロピルセルロースの混合物が挙げられる。本発明の別の実施形態においては、ポリマーマトリックスとしては、親水性ポリマーと疎水性ポリマーなどの異なるポリマータイプとのポリマーブレンドなどが挙げられる。
【0106】
本発明のヒドロゲルとしては、親水性ビニル及びアクリルポリマー、アルギン酸カルシウムなどの多糖、ポリ(エチレンオキシド)などが挙げられる。例えば、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(N−ビニル−2−ピロリジノン(pyrolidinone))、ポリ(ビニルアルコール)、これら相互のコポリマー、メタクリル酸メチル、酢酸ビニルなどの疎水性モノマーとのコポリマーなど。大きいポリ(エチレンオキシド)ブロックを含む親水性ポリウレタンも使用することができる。ヒドロゲルは、付加重合又は縮合重合によって形成することができる、ポリマーの相互貫通網目構造によっても形成することができる。ヒドロゲルの各成分は、列挙したものなどの親水性及び疎水性モノマーを含むことができる。
【0107】
本発明の別の実施形態においては、4−PBAは環境感応性ヒドロゲルによって送達される。このタイプのシステムにおいては、膨潤は、送達システムを包囲する環境の変化によって引き起こされる。環境感応性ヒドロゲルは、例えば、pH感応性ヒドロゲル(例えば、酸性又は塩基性ヒドロゲル);熱感応性ヒドロゲル;光感応性ヒドロゲル;リガンド活性化ヒドロゲル;イオン性ヒドロゲル;グルコース感応性ヒドロゲル;電気的ヒドロゲル(例えば、高分子電解質ヒドロゲル);超音波照射感応性ヒドロゲル(例えば、エチレン−ビニルアルコールヒドロゲル);磁気感応性ヒドロゲル(例えば、アリジネート(aligenate)ミクロスフェア中に分散した磁性粒子)、化学種感応性ヒドロゲル(例えば、電子求引基を含むヒドロゲル)又は酵素基質感応性ヒドロゲル(例えば、固定化酵素を含むヒドロゲル)とすることができる。
【0108】
より高いpH環境(例えば、腸)における徐放性を改善するために、より高いpHでのみ溶解するポリマーを、単独で、又は親水性ポリマーと組み合わせて、使用することが有利である場合がある。より高いpHで溶解するポリマーの代表的非限定的例としては、アクリル樹脂、アクリルラテックス分散体、酢酸フタル酸セルロース及びフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。腸溶コーティングはpH感応性ポリマーからなる。典型的には、pH感応性ポリマーは、カルボキシル化されており、低pHでは水と殆ど相互作用(膨潤)せず、一方、高pHではポリマーはイオン化して、膨潤し、又は溶解する。従って、コーティングは、胃の酸性環境においては(この環境から薬物を又は薬物から胃を保護して)完全なままであるが、腸のよりアルカリ性の環境においては溶解するように設計することができる。
【0109】
一実施形態においては、ポリマーマトリックスはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)マトリックスである。(一般に、Hogan JE. Hydroxypropyimethylcelluose sustained release technology, Drug Dev. Ind. Pharm. (1989) 15, 975−999を参照されたい。)。HPMCマトリックスは、HPMCホモポリマー、コポリマー又はターポリマーを含むことができる。単一のHPMC又は異なる分子量及び構造のHPMCの混合物を使用することができる。HPMCは単独で使用することができ、又は第2のポリマータイプと組み合わせてポリマーブレンドを形成することができる。
【0110】
本発明の特定の一実施形態においては、マトリックスは、HPMCと1種類以上の追加の親水性ポリマーとのブレンドである。一実施形態においては、マトリックスは、(i)HPMC/メチルセルロース、(ii)HPMC/ヒドロキシエチルセルロース、(iii)HPMC/ヒドロキシ−エチルメチルセルロース、(iv)HPMC/カルボキシメチルセルロース、(v)HPMC/エチルセルロース、(vi)HPMC/ヒドロキシプロピルセルロース及び(vii)HPMC/(コロイド状)微結晶セルロースのブレンドである。
【0111】
別の実施形態においては、マトリックスは、HPMC/疎水性ポリマーブレンドなどのHPMCと1種類以上の非親水性ポリマーとのブレンドである。
【0112】
様々な化学構造及び組成の市販ヒドロキシプロピルメチルセルロースが利用可能であり、メトキシル含量は約16.5から30重量%であり、ヒドロキシプロポキシル含量は4から32重量%であり、その各々は、様々な粘度のものが利用可能である。HPMCの市販名は、“Handbook of Methocel Cellulose Ether Products” (The Dow Chemical Co., 1974)中のデータから計算して、10,000未満から150,000を超える範囲の数平均分子量を表す。一実施形態においては、ポリマーは、2208 USP XXIIタイプのHPMCであり、分子量約20,000−250,000、好ましくは20,000−120,000であり、好ましくは100−1500cpsの粘度を有する。特に適切なものは、最も速く膨潤するMethocel(登録商標)Kタイプ、例えばMethocel(登録商標)K100M Premium(Prochem Chemical Company)、Methocel(登録商標)K100LV、Methocell(登録商標)K4M及びMethocel(登録商標)K15M(商品名、Dow Chemical Company)又は実質的に等価なMetolose(登録商標)90SHタイプ、例えばMetolose(登録商標)90SH100、Metolose(登録商標)90SH4,000及びMetolose(登録商標)90SH15,000(商品名、Shin−Etsu Chemical Co. Ltd)である。一実施形態においては、錠剤又はカプセル剤充填の最終重量で約5−50重量%、好ましくは10−40重量%のHMPCを使用する。一実施形態においては、ポリマーはHPMCであり、粘度は約5から100,000cps(mPa.sec)の範囲である。特定の一実施形態においては、HPMCポリマーは、HPMC K100M(粘度100,000cps)又はHMPC K15M(粘度15,000cps)である。
【0113】
ポリマー粘度が増加するにつれ、フェニル酪酸塩の放出速度も増加する。驚くべきことに、HPMCの粘度が15,000から100,000に増加すると、フェニル酪酸塩の送達速度及び送達されるフェニル酪酸塩の全量も増加する。制御放出マトリックス中の成分の送達速度は、放出速度調節剤の粘度が増加すると減少することが当分野では一般に予想されるので、この挙動はまったく予想外である(Wan LSC,. Heng PWS, Wong LF. “Relationship between polymer viscosity and drug release from a matrix system” Pharm. Res. (1992) 9, 1510−1514. s.。従って、本発明の一実施形態は、薬物放出速度がポリマー粘度に依存するようにするのに十分な量でポリマーが存在する制御放出製剤を提供する。
【0114】
(b)浸透圧制御システム
浸透圧的に制御されたシステムも本発明での使用に適切である。この実施形態においては、4−PBAを含む区画に水系流体を引き寄せ、4−PBAを送達させるように浸透圧勾配を設ける。浸透送達システムは、4−PBAを含む区画と、区画の壁を通して水系流体を引き寄せて浸透剤を膨潤させ、4−PBAを送達させる浸透剤とを含む。
【0115】
本発明の浸透送達システムは、有益な薬剤と浸透剤の両方を含む単一の区画を含むことができる。この装置は、壁の透過性と壁を横切る浸透圧勾配とによって決まる速度で区画壁を通して流体が吸収されるようにすることによって4−PBAを放出する。装置に吸収された流体は、治療薬と混ざって水溶液を形成する。水溶液は装置の出口通路を通って分配される。例えば、米国特許第3,845,770号及び同3,916,899号を参照されたい。
【0116】
別の実施形態においては、1個を超える区画が存在する。例えば、第2の浸透区画からフィルム又はピストンによって分離された第1の治療薬区画が存在する。この実施形態においては、4−PBAは、装置の壁を通して流体を浸透区画に吸収することによって送達される。浸透区画が流体で満たされると、区画内の浸透剤が膨潤し、4−PBAに対してフィルム又はピストンを移動させ、4−PBAを送達する推進力として作用する。例えば、米国特許第4,111,202号、同4,111,203号及び同4,203,439号を参照されたい。米国特許第5,728,396号、同6,464,688号、同6,632,217号、同6,840,931号も参照されたい。
【0117】
4−BPAは、使用する浸透材料、壁の透過性及び送達装置の物理的配置を含めて、多数の要因に応じて変化させることができる制御速度で送達することができる。壁は、例えば、半透膜とすることができる。浸透剤は、オスマジェン(osmagent)、オスモポリマー(osmopolymer)又は両者の混合物とすることができる。オスマジェンは、水の浸透流入を推進する浸透勾配(osmotic radiant)を生成する、水に可溶な不揮発性種であり、多種多様である。例は当分野でよく知られており、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、d−マンニトール、ソルビトール、イノシトール、尿素、コハク酸マグネシウム、酒石酸、ラフィノース並びにスクロース、グルコース、ラクトース、フルクトース、デキストランなどの様々な単糖、オリゴ糖及び多糖並びにこれらの様々な種のいずれかの混合物が挙げられる。オスモポリマーは、植物若しくは動物起源とすることができ、又は合成起源とすることができる。オスモポリマーの例は当分野でよく知られている。例としては、分子量30,000から5,000,000のポリ(メタクリル酸ヒドロキシアルキル)、分子量10,000から360,000のポリ(ビニルピロリドン)、陰イオン性及び陽イオン性ヒドロゲル、高分子電解質複合体、(グリオキサール、ホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒドで架橋していてもよく、重合度200から30,000の)アセタート残渣の少ないポリ(ビニルアルコール)、メチルセルロース混合物、架橋寒天及びカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物、N−ビニルラクタムポリマー、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンゲル、ポリオキシブチレン−ポリエチレンブロック共重合体ゲル、イナゴマメゴム、ポリアクリルゲル、ポリエステルゲル、ポリ尿素ゲル、ポリエーテルゲル、ポリアミドゲル、ポリペプチドゲル、ポリアミノ酸ゲル、ポリセルロースゲル、分子量250,000から4,000,000のcarbopol酸性カルボキシポリマー、Cyanamerポリアクリルアミド、架橋インデン−無水マレイン酸ポリマー、分子量80,000から200,000のGood−Riteポリアクリル酸、分子量100,000から5,000,000のPolyoxポリエチレンオキシドポリマー、デンプングラフトコポリマー及びAqua−Keepsアクリラートポリマー多糖が挙げられる。
【0118】
(iii)化学的制御システム
本発明の一実施形態においては、薬物送達システムは化学的制御システムである。化学的制御は、例えば、生侵食性(bioerodable)ポリマー又はペンダント鎖を用いて実施することができる。生侵食性ポリマー又はペンダント鎖を用いて実施。生分解性システムの1つの利点は、生侵食性(bioerodible)装置が最終的に体によって吸収され、従って外科的に除去する必要がないことである。ペンダント鎖システムでは、薬物はポリマーと共有結合し、水又は酵素によって結合が切断されて放出される。溶媒活性化制御システムでは、活性薬剤は、重合体マトリックス内に溶解又は分散し、マトリックスを通して拡散することができない。
【0119】
(a)侵食に基づくシステム
本発明の一実施形態においては、生分解性一体型ポリマーマトリックスを用いて4−PBAを制御放出させる。このタイプのシステムにおいては、生物活性薬剤は、一体型システムと同様に、理想的にはポリマー全体に均一に分布する。
【0120】
生物学的に分解可能なポリマーは、体内の化学物質によってより小さな断片に分解するポリマーである。一般に、生物学的に分解可能なポリマーは(i)生分解性ポリマー又は(ii)生体吸収性ポリマーである。生分解性ポリマーは、酵素によってより小さな断片に分解するのに対して、生体吸収性ポリマーは、体内の他の化学物質の存在下で分解する。
【0121】
拡散法と同様に、薬物は、生分解性高分子膜又はマトリックス内に含まれる。ポリマーが分解すると、薬物は体内に放出される。ポリマーの分解は、3つの主要な機序によって起こる。一般に、Langer, R., Accounts of Chemical Research, 1993, 26, 537−542を参照されたい。第1の機序においては、水溶性ポリマーは架橋によって不溶性になる。体内のどこかで架橋が壊れるとポリマーは溶解する。第2の機序においては、水不溶性ポリマーは、側鎖の加水分解又はイオン化によって可溶性になる。第3の機序においては、不溶性ポリマーは開裂して可溶性モノマーになる。これらの機序は、単独で、又は組み合わせて、使用することができる。侵食プロセスは、バルクで(マトリックスは均一に分解する。)又はポリマー表面で(それによって、放出速度はポリマー表面積と関係がある。)起こる。
【0122】
生分解性ポリマーとしては、(i)天然ポリマー、(ii)改変天然ポリマー(すなわち、化学的又は酵素的に改変されたポリマー)、(iii)合成ポリマーなどが挙げられる。代表的非限定的な天然の生分解性ポリマーとしては、単独の、又は合成ポリマーと組み合わせた、アルギナート、デキストリン、セルロース、コラーゲン、キトサン及びアルブミン、ゼインなどのタンパク質、これらのコポリマー及びブレンドなどが挙げられる。一般に、これらの材料は、酵素加水分解又はインビボでの水への暴露、表面又はバルク侵食によって分解する。
【0123】
天然ポリマーは、例えば、化学基、例えば、アルキル、アルキレンの置換、付加、ヒドロキシル化、酸化及び当業者によって常法に従って成される他の改変によって改変することができる。天然ポリマーの化学修飾の非限定的例としては、例えば、ホルムアルデヒドを用いたゼラチンの架橋、グルタルアルデヒドを用いたキトサンの架橋、及び酢酸セルロースを生成するセルロースの化学修飾が挙げられる。天然ポリマーの代表的な酵素改変としては、西洋ワサビペルオキシダーゼを用いたリグニンの改変、チロシンを用いたキトサンの改変などが挙げられる。
【0124】
合成生分解性ポリマーとしては、例えば、ポリ無水物、ポリエステル、ポリアクリル酸 ポリウレタン、ポリリン酸エステル及びポリホスファゼン及びポリ(メタクリル酸メチルが挙げられる。好ましい生分解性ポリマーとしては、乳酸、グリコール酸などのヒドロキシ酸のポリマー及びPEG、ポリ無水物、ポリ(オルソ)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)との各コポリマー、これらのブレンド及びコポリマーなどが挙げられる。他の合成生分解性ポリマーとしては、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(butic酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、これらのブレンド及びコポリマーなどが挙げられる。
【0125】
Holland et al. Controlled Release. 4, 155, 1986によるポリエステルの使用を促した、架橋ゼラチン、ヒアルロン酸(della Valle et al. 米国特許第4,987,744号及び米国特許第4,957,744号)及びポリアミノ酸(Miyake et al., 1974)、閉鎖装置(縫合糸及び止め金)から薬物送達システム(Smith et al. 米国特許第4,741,337;Spilizeqski et al. J. Control. Rel. 2, 197, 1985)にまで及ぶ適用例に依然として最も広く用いられている生分解性材料であるアルファ(alph)−ヒドロキシ酸(すなわち乳酸及びグリコール酸)など、天然の材料に分解する幾つかのポリマーも記述されている。表面分解システムに使用されるポリマーは、通常、極めて疎水性であるが、それでも水に不安定な結合を含む。Langer, R., Science (1990):249, 1527−1533を参照されたい。
【0126】
本発明に有用である他の生分解性ポリマーとしては、デンプン−ポリエステルアロイ;スチレン−無水マレイン酸コポリマー;ポリ(メチルビニルエーテル−マレイン酸);デンプン;デンプン−PCLブレンド;ポリ乳酸(PLA)−デンプンブレンド;ポリ乳酸;ポリ(乳酸−グリコール酸)コポリマー;ポリラクチド、ポリグリコリド;ポリラクチド(polyactide)コ−グリコリドPCL;セルロースエステル;酢酸酪酸セルロース;デンプンエステル;デンプンエステル−脂肪族ポリエステルブレンド;改変コーンスターチ;ポリカプロラクトン;ポリ(メタクリル酸n−アミル);エチルセルロース;ウッドロジン;ポリビニルアルコール(PVOH);ポリヒドロキシブチラート−バレラート(PHBV);生分解性脂肪族ポリエステル;ポリヒドロキシブチラート(PHB)及びポリヒドロキシ酸などが挙げられる。
【0127】
ラクチド系ポリマー及び一般に全ての加水分解性ポリマーの分解は、(i)化学組成、(ii)結晶化度及び(iii)親水性に左右される。一般に、ポリマーの分解速度は、ポリマー上の分解性結合のタイプによって決まる(例えば、無水物>エステル>アミド)。結晶化度(cystallinity)が高いほど、分解速度は遅い。ポリ乳酸のうち、DL−PLAは、結晶化度がより低いので、L−PLAよりも速く分解する。ポリマーが疎水性であるほど、分解速度は遅い。例えば、ポリラクチド(Polyactide)は、PLGAよりも疎水性であり、より遅く分解する。疎水性末端がキャップされたPLGAポリマーは、カルボキシル末端PLGAよりも速く分解する。)生分解性ポリマーの放出速度にあてはまる他の一般的原理としては以下が挙げられる。(i)骨格にヘテロ原子を有するポリマー>C−C骨格を有するポリマー。(ii)高分子量ポリマーは低分子量ポリマーよりも遅く分解する。(iii)合成段階成長(step−growth)又は縮合ポリマーは一般に生分解性である。
【0128】
別の実施形態においては、細孔形成ワックスを用いて4−PBAを制御放出させる。このタイプのシステムにおいては、4−PBAを錠剤化によってワックス基剤(例えば、パラフィン)に混合する。4−PBAの放出速度は、侵食速度に応じて決まる。この実施形態においては、4−PBA及び水溶性賦形剤(例えば、ポリマー又は塩)をワックス又はワックス状化合物に導入し、次いで水溶性ポリマーをワックスから溶出させて細孔を形成するために水系環境に置く。胃腸液と接触すると、細孔は、ワックスの侵食とそれに続く4−PBAの放出を促進する。
【0129】
別の実施形態においては、ペンダント装置を用いて4−PBAを制御放出させる。例えば、Chafi N., Montheard J.P., Vergnaud J.M. “Release of 2−Aminothiazole from Polymeric Carriers” Int. J. Pharm. (1992):67(3):265−274;Chafi N., Kolli M., Vergnaud J.M., Montheard J.P., “Amines Release from Schiff Bases Polymers and Diffusion from Dosage Forms with Eudragit RL in Acidic Medium” J. Appl. Polym. Sci. (1991) 43(10):1837−1847)を参照されたい。ペンダント鎖システムでは、4−PBAはポリマーと共有結合し、水又は酵素によって結合が切断されて放出される。4−PBAとポリマーの化学結合は、合成方法、すなわち、(a)予め形成されたポリマー上での反応、(b)天然ポリマー上での反応、(c)活性成分を含むビニルモノマーの重合及び(d)段階成長重合に基づく幾つかの一般的方法で実施することができるScholsky K.M., Fitch R.M., Controlled Release of Pendant Bioactive Materials from Acrylic Polymer Colloids., J. Controlled Release (1986) 3:87−108も参照されたい。
【0130】
(iv)幾何学的物理的システム
別の実施形態においては、幾何学的物理的システムを用いて4−PBAを制御放出させる。このタイプのシステムは、4−PBAを層又はコアに組み入れ、次いで、ペレットに成形し、剤形の速度、侵食又は溶解を達成し、制御するために物理的手段によって変化させる。表面積改変によって、バースト放出を遅延させ、又は拡散限界を有する錠剤コアからの4−PBAの放出度を増加させる。次いで、物理的に変化させたペレットを、単独で、又は他の改変ペレット及び賦形剤と組み合わせて、カプセル剤又は錠剤に組み込む。代表的な幾何学的物理的システムとしては、腸溶性錠剤、改変コア錠剤システム(例えば、Procise(登録商標)、GlaxoSmithKline;Smartrix(登録商標)、Smartrix Technologies)などが挙げられる。
【0131】
(v)徐放性を実現する他の技術
4−PBAの送達に適切な他の制御放出戦略としては、例えば、電気刺激放出装置(例えば、Yuk S.H., Cho S.H., Lee H.B. “Electric Current−Sensitive Drug Delivery Systems Using Sodium Alginate/Polyacrylic Acid Composites” Pharm. Res. (1992) 9(7):955−957);マイクロバルーン及びマイクロスポンジ(Kawashima Y., Niwa T., Takeuchi H., Hino T., Itoh Y., “Hollow Macrospheres for use as a Floating Controlled Drug Delivery System in the Stomach” J. Pharm. Sci. (1992) 82(2):135−140;Kawashima Y., Niwa T., Takeuchi H., Hino T., Itoh Y., “Control of Prolonged Drug Release and Compression Properties of Ibuprofen Microsponges with Acrylic Polymer, Eudragit RS, by changing their Intraparticle Density” Chem. Pharm. Bull. (1992) 40(1):196−201)などが挙げられる。
【0132】
イオン交換/複合体形成システムも、本発明による4−PBAの徐放性を実現するために企図される。これらのイオン交換樹脂−薬物システム又は複合体−薬物システムは、胃又は腸におけるイオン交換を介してpH制御放出によって薬物を送達する。勾配マトリックスシステムも本発明での使用に適切である。このタイプのシステムにおいては、ヒドロゲルは、球状膜を横切る勾配濃度によって0次の動力学を与えることができる。多層錠剤も本発明において使用することができる。
【0133】
制御放出製剤を記載した米国特許の非限定的例は、Laurencin他の米国特許第5,356,630号(Delivery System for Controlled Release of Bioactive Factors);;Santini, Jr.他の米国特許第5,797,898号(Microchip Drug Delivery Devices);Edwards他の米国特許第5,874,064号(Aerodynamically Light Particles for Pulmonary Drug Delivery);Kim他の米国特許第5,548,035号(Biodegradable Copolymer as Drug Delivery Matrix Comprising Polyethyleneoxide and Aliphatic Polyester Blocks);Savage他の米国特許第5,532,287号(Radiation Cured Drug Release Controlling Membrane);Kahl他の米国特許第5,284,831号(Drug Delivery Porphyrin Composition and Methods);Agrawal他の米国特許第5,741,329号(Methods of Controlling the pH in the Vicinity of Biodegradable Implants);Tice他の米国特許第5,820,883号(Methods for Delivering Bioactive Agents into and Through the Mucosally−Associated Lymphoid Tissues and Controlling Their Release);Gouin他の米国特許第5,955,068号(Biodegradable polyanhydrides Derived from Dimers of Bile Acids and Use Thereof as Controlled Drug Release Systems);Coombes他の米国特許第6,001,395号(Polymeric Lamellar Substrate Particles for Drug Delivery);Athanasiou他の米国特許第6,013,853号(Continuous Release Polymeric Implant Carriers);Hubbell他の米国特許第6,060,582号(Photopolymerizable Biodegradable Hydrogels as Tissue Contacting Materials and Controlled Release Carriers);Okada他の米国特許第6,113,943号(Sustained−Release Preparation Capable of Releasing a Physiologically Active Substance)及びOh他の国際公開第99/59548号(Controlled Drug Delivery System Using the Conjugation of Drug to Biodegradable Polyester);米国特許第6,123,861号(Fabrication of Microchip Drug Delivery Devices);米国特許第6,060,082号(Polymerized Liposomes Targeted to M cells and Useful for Oral or Mucosal Drug Delivery);米国特許第6,041,253号(Effect of Electric Field and Ultrasound for Transdermal Drug Delivery);米国特許第6,018,678号(Transdermal protein delivery or measurement using low−frequency sonophoresis);米国特許第6,007,845号 Nanoparticles And Microparticles Of Non−Linear Hydrophilic−Hydrophobic Multiblock Copolymers;米国特許第6,004,534号 Targeted Polymerized Liposomes For Improved Drug Delivery;米国特許第6,002,961号 Transdermal Protein Delivery Using Low−Frequency Sonophoresis;米国特許第5,985,309号 Preparation Of Particles For Inhalation;米国特許第5,947,921号 Chemical And Physical Enhancers And Ultrasound For Transdermal Drug Delivery;米国特許第5,912,017号 Multiwall Polymeric Microspheres;米国特許第5,911,223号 Introduction Of Modifying Agents Into Skin By Electroporation;米国特許第5,874,064号 Aerodynamically Light Particles For Pulmonary Drug Delivery;米国特許第5,855,913号 Particles Incorporating Surfactants For Pulmonary Drug Delivery;米国特許第5,846,565号 Controlled Local Delivery Of Chemotherapeutic Agents For Treating Solid Tumors;米国特許第5,837,752号 Semi−Interpenetrating Polymer Networks;米国特許第5,814,599号 Transdermal Delivery Of Encapsulated Drugs;米国特許第5,804,178号 Implantation Of Cell−Matrix Structure Adjacent Mesentery, Omentum Or Peritoneum Tissue;米国特許第5,797,898号 Microchip Drug Delivery Devices;米国特許第5,770,417号 Three−Dimensional Fibrous Scaffold Containing Attached Cells For Producing Vascularized Tissue In vivo;米国特許第5,770,193号 Preparation Of Three−Dimensional Fibrous Scaffold For Attaching Cells To Produce Vascularized Tissue In vivo;米国特許第5,762,904号 Oral Delivery Of Vaccines Using Polymerized Liposomes;米国特許第5,759,830号 Three−Dimensional Fibrous Scaffold Containing Attached Cells For Producing Vascularized Tissue In vivo;米国特許第5,749,847号 Delivery Of Nucleotides Into Organisms By Electroporation;米国特許第5,736,372号 Biodegradable Synthetic Polymeric Fibrous Matrix Containing Chondrocyte For In vivo Production Of A Cartilaginous Structure;米国特許第5,718,921号 Microspheres Comprising Polymer And Drug Dispersed There Within;米国特許第5,696,175号 Preparation Of Bonded Fiber Structures For Cell Implantation;米国特許第5,667,491号 Method For Rapid Temporal Control Of Molecular Transport Across Tissue;米国特許第5,654,381号 Functionalized Polyester Graft Copolymers;米国特許第5,651,986号 Controlled Local Delivery Of Chemotherapeutic Agents For Treating Solid Tumors;米国特許第5,629,009号 Delivery System For Controlled Release Of Bioactive Factors;米国特許第5,626,862号 Controlled Local Delivery Of Chemotherapeutic Agents For Treating Solid Tumors;米国特許第5,593,974号 Localized Oligonucleotide Therapy;米国特許第5,578,325号 Nanoparticles And Microparticles Of Non−Linear Hydrophilic−Hydrophobic Multiblock Copolymers;米国特許第5,562,099号 Polymeric Microparticles Containing Agents For Imaging;米国特許第5,545,409号 Delivery−System For Controlled Release Of Bioactive Factors;米国特許第5,543,158号 Biodegradable Injectable Nanoparticles;米国特許第5,514,378号 Biocompatible Polymer Membranes And Methods Of Preparation Of Three Dimensional Membrane Structures;米国特許第5,512,600号 Preparation Of Bonded Fiber Structures For Cell Implantation;米国特許第5,500,161号 Method For Making Hydrophobic Polymeric Microparticles;米国特許第5,487,390号 Gas−filled polymeric microbubbles for ultrasound imaging;米国特許第5,399,665号 Biodegradable polymers for cell transplantation;米国特許第5,356,630号 Delivery system for controlled release of bioactive factors;米国特許第5,330,768号 Controlled drug delivery using polymer/pluronic blends;米国特許第5,286,763号 Bioerodible polymers for drug delivery in bone;米国特許第5,149,543号 Ionically cross−linked polymeric microcapsules;米国特許第5,128,420号 Method of making
hydroxamic acid polymers from primary amide polymers;米国特許第5,122,367号 Polyanhydride bioerodible controlled release implants for administration of stabilized growth hormone;米国特許第5,100,668号 Controlled release systems containing heparin and growth factors;米国特許第5,019,379号 Unsaturated polyanhydrides;米国特許第5,010,167号 Poly(amide−and imide−co−anhydride) for biological application;米国特許第(.S. Patent No.)4,948,587号 Ultrasound enhancement of transbuccal drug delivery;米国特許第4,946,929号 Bioerodible articles useful as implants and prostheses having predictable degradation rates;米国特許第4,933,431号 One step preparation of poly(amide−anhydride);米国特許第4,933,185号 System for controlled release of biologically active compounds;米国特許第4,921,757号 System for delayed and pulsed release of biologically active substances;米国特許第4,916,204号 Pure polyanhydride from dicarboxylic acid and coupling agent;米国特許第4,906,474号 Bioerodible polyanhydrides for controlled drug delivery;米国特許第4,900,556号 System for delayed and pulsed release of biologically active substances;米国特許第4,898,734号 Polymer composite for controlled release or membrane formation;米国特許第4,891,225号 Bioerodible polyanhydrides for controlled drug delivery;米国特許第4,888,176号 Controlled drug delivery high molecular weight polyanhydrides;米国特許第(.S. Patent No.)4,886,870号 Bioerodible articles useful as implants and prostheses having predictable degradation rates;米国特許第4,863,735号 Biodegradable polymeric drug delivery system with adjuvant activity;米国特許第4,863,611号 Extracorporeal reactors containing immobilized species;米国特許第4,861,627号 Preparation of multiwall polymeric microcapsules;米国特許第4,857,311号 Polyanhydrides with improved hydrolytic degradation properties;米国特許第4,846,786号 Bioreactor containing suspended, immobilized species;米国特許第4,806,621号 Biocompatible, bioerodible, hydrophobic, implantable polyimino carbonate article;米国特許第4,789,724号 Preparation of anhydride copolymers;米国特許第4,780,212号 Ultrasound enhancement of membrane permeability;米国特許第4,779,806号 Ultrasonically modulated polymeric devices for delivering compositions;米国特許第4,767,402号 Ultrasound enhancement of transdermal drug delivery;米国特許第4,757,128号 High molecular weight polyanhydride and preparation thereof;米国特許第4,657,543号 Ultrasonically modulated polymeric devices for delivering compositions;米国特許第4,638,045号 Non−peptide polyamino acid bioerodible polymers;米国特許第4,591,496号 Process for making systems for the controlled release of macromoleculesである。
【0134】
本発明による制御放出薬物送達システムでの使用に適切な他のポリマーの非限定的例としては、ゼラチン、魚のコラーゲン、アラビアゴム、シリコンゴム卵白、フィブリノーゲン、カゼイン、ヘモグロビン、ゼイン、アルギナート、ナイロン、ナイロン−ポリエチレンイミン カラゲーン、寒天、キトサン、アラビノガラクタン、ジェラン、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクロレイン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸ポリアミド、ポリエチレングリコール、エチルスチロールマレイン酸無水物コポリマー、硫酸セルロース−ポリ(ジメチルジアリル)−塩化アンモニウム、ヒドロキシ−メタクリル酸エチル−メタクリル酸メチル、キトサン−カルボキシメチル−セルロース、アルギナート−ポリリジン−アルギナート、セルロースエステル、セルロースエーテル、アクリルポリマー、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、シリコーン、ポリスチレン 低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカルボナート、ポリオルソカルボナート、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシブチラート、ポリヒドロキシバレラート吉草酸塩、ポリシュウ酸アルキレン、ポリコハク酸アルキレン、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ヒドログリセリド(例えば、ステアリン、パルミチン(palnitin)、ラウリン、ミリスチン、水添ヒマシ油又は綿実油、precirolなどのモノ、ジ又はトリグリセリド)、脂肪酸及びアルコール(例えば、ステアリン酸、パルミチン酸又はラウリン酸;ステアリル、セチル又はセトステアリルアルコール)、脂肪酸エステル(例えば、プロピレングリコールモノステアラート、スクロースモノステアラート、スクロースジステアラート)、ワックス(例えば、白蝋、マッコウクジラの蝋)、水添ヒマシ油(HCO)、エチルセルロース、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリアミド、ポリカルボナート、ポリアルキレン、ポリエチレン及びポリプロピレン、ポリアルキレングリコール、ポリ(エチレングリコール)、ポリアルキレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド)、ポリアルキレンテレフタレート(terepthalate)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリ(ジメチルシリコーン) ポリメタクリラート、ポリメタクリル酸メチル、ポリハロゲン化ビニル、ポリ(塩化ビニル)、ポリビニルピロリドン、ポリシロキサン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(エチレン/酢酸ビニル) ポリスチレン、ポリウレタン、誘導体化(derivativized)セルロース、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシルエチルセルロース、三酢酸セルロース、セルロース硫酸ナトリウム、アクリル酸、メタクリル酸のポリマー、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、ポリ(アクリル酸オクタデシル)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリホスファゼン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアミド、ポリカルボナート、ポリアクリラート、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリアクリラート、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)及びポリ(アクリル酸オクタデシル)、アルブミン、プロラミン、セルロース(ellulose)、デキストラン、ポリヒアルロン(polyhylauronic)酸、ポリヒドロキシアルカノアート、ポリヒドロキシブチラート、アルキル(lkyl)セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、三酢酸セルロース、セルロース(ellulose)硫酸ナトリウム、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ(oly)メチルメチルアクリラート、アクリル酸エチル、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリラート、スチレン/マレイン酸コポリマー、酢酸セルロースpthahate、酢酸セルロース(dellulose)pthahate/PEGブレンド、微結晶セルロース、ポリデキストロース、ラクトース、シェラック、セルロース誘導体、非セルロース多糖、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、アクリル酸コポリマーメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(高、中及び低分子量)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキソメチルセルロース、ヘミセルロース、メチルセルロース、ガラクトマンナン、ガーゴム、イナゴマメゴム、アラビアゴム、ステルクリアゴム、寒天、アルギナート、carbopol 934P及び974P、ポリビニルアルコール(PVA)/ポリビニルピロリドン(PVP)、トラガカントゴム、イナゴマメゴム、カラヤゴム、タンパク質物質(例えば、ペクチン、カラギーン(carragee)) カルボキシポリメチレン、ゼラチン、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カーボマー、ズーグラン(zooglan)、多糖、加工デンプン誘導体(例えば、Amazio 721A)、親水性ビニル(viny)、アクリルポリマー、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(N−ビニル−2−ピロリジノン(pyrolidinone))、ポリ(ビニルアルコール)ポリ無水物、ポリエステル、ポリアクリル酸ポリウレタン、ポリリン酸エステル及びポリホスファゼン及びポリ(メタクリル酸メチル、ポリ無水物、ポリ(オルソ)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(butic酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリ無水物、デンプン−ポリエステルアロイ;スチレン−無水マレイン酸コポリマー、ポリ(メチルビニルエーテル−マレイン酸)、デンプン、デンプン−PCLブレンド、ポリ乳酸(PLA)−デンプンブレンド、ポリ乳酸、ポリ(乳酸−グリコール酸)コポリマー、ポリラクチド、ポリグリコリド;ポリラクチド(actide)コ−グリコリドPC、デンプンエステル、デンプンエステル−脂肪族ポリエステルブレンド、改変コーンスターチ、ポリカプロラクトン、ポリ(メタクリル酸n−アミル)、エチルセルロース、ウッドロジン、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリヒドロキシブチラート−バレラート(PHBV)、生分解性脂肪族ポリエステル、ポリヒドロキシブチラート(PHB)及びポリヒドロキシ酸が挙げられる。
【0135】
(vi)賦形剤
制御放出製剤は、幾つかの他の賦形剤及び希釈剤を含むこともできる。「賦形剤」という用語は、完成剤形中に通常含まれる物質を指し、ビヒクル、結合剤、崩壊剤、充填剤(希釈剤)、潤滑剤、流動化剤(流動促進剤)、圧縮助剤、顔料(color)、香料 甘味料、防腐剤、懸濁剤/分散剤、膜形成剤/コーティング、印刷インキなどが挙げられる。
【0136】
潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、粉末ステアリン酸、硬化植物油、タルク、ポリエチレングリコール及び鉱油が挙げられる。
【0137】
崩壊剤としては、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、そのアルファ化及び加工デンプンなどのデンプン、Ac−di−solなどのセルロース剤、モンモリロナイト(montmorrilonite)クレイ、架橋PVP、甘味料、ベントナイト及びVEEGUM(商標)、微結晶セルロース、アルギナート、デンプングリコール酸ナトリウム、寒天、ガー、イナゴマメ、カラヤ、ペクチン、トラガカントなどのゴムなどが挙げられる。
【0138】
本製剤は、香料(flavorant)又は甘味剤を含むことができる。本明細書では、「香料」という用語は、好ましい匂い、多くは香りを薬剤に付与するのに用いる化合物を意味するものとする。香料は、天然でも、合成でも、これらの組み合わせでもよい。香料としては、例えば、桂皮油、冬緑油、ハッカ油、クローブ油、ベイ油、アニス油、ユーカリ、サイム油、ニオイヒバ油(cedar leave oil)、ニクズク油、セージ油、苦へん桃油、カッシア油、バニラ、レモン、オレンジ、ブドウ、ライム及びグレープフルーツを含めた柑橘油及びリンゴ、セイヨウナシ、モモ、イチゴ、キイチゴ、サクランボ、プラム、パイナップル、アンズなどを含めた果実エキスが挙げられる。香味料の量は、所望の感覚刺激効果を含めて、幾つかの要因に応じて決まり得る。甘味剤としては、例えば、アスパルテーム、デキストロース、グリセリン、マンニトール、サッカリンナトリウム、ソルビトール、スクロースなどが挙げられる。
【0139】
本発明の4−フェニル酪酸含有薬剤は、適切な制御放出製品を得るために特定の結合剤を必要とし得る。適切な疎水性結合剤としては、酢酸酪酸セルロース、プロピオン酸酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース高分子量(200,000)、プロピオン酸セルロース中分子量(75,000)、プロピオン酸セルロース低分子量(25,000)、酢酸セルロース、硝酸セルロース、エチルセルロース、ポリ酢酸ビニルなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。適切な親水性結合剤としては、ポリビニルピロリドン、ビニルアルコールポリマー、ポリエチレンオキシド、水溶性又は水膨潤性のセルロース及びデンプン誘導体、当業者に公知の他の結合剤などが挙げられる。
【0140】
使用に適切な他の結合剤としては、例えば、アラビアゴム、トラガカント、ゼラチン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース材料、アルギン酸及びその塩、ポリエチレングリコール、ガーゴム、多糖、糖(例えば、ラクトース、スクロース)、転化糖、poloxomer(PLURONIC(商標)F68、PLURONIC(商標)F127)、コラーゲン、アルブミン、ゼラチン、非水溶媒中のセルロース化合物、アルファ化デンプン、デンプンのり、これらの組み合わせなどが挙げられる。他の結合剤としては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリプロピレンコポリマー、ポリエチレンエステル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンソルビタンエステル、ポリエチレンオキシド又はこれらの組み合わせ、当業者に公知の他の結合剤が挙げられる。
【0141】
本発明の薬剤は、希釈剤を含むこともできる。希釈剤という用語は、錠剤及びカプセル剤の調製において所望のバルク特性、流動性及び圧縮特性を得るために充填剤として用いる不活性物質を意味するものとする。かかる化合物としては、例として、リン酸水素カルシウム、カオリンクレイ、フルクトース、スクロース、デキストロース、ラクトース、マンニトール、微結晶セルロース、粉末セルロース、沈降炭酸カルシウム、ソルビトール、硫酸カルシウム、デンプンなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0142】
製剤は着色剤を含むことができる。かかる化合物としては、例として、FD&C Red No.3、FD&C Red No.20、FD&C Yellow No.6、FD&C Blue No.2、D&C Green No.5、FD&C Orange No.5、D&C Red No.8、カラメル、酸化鉄(III)などが挙げられるが、これらだけに限定されない。着色剤としては、二酸化チタン、ブドウの皮の抽出物、赤ビート色素粉末、ベータカロテン、アナート(annato)、カルミン、ウコン、パプリカなどの天然着色剤なども挙げられる。
【0143】
錠剤、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティング、薬剤処方技術において周知の他のコーティングなどのコーティング、フィルム又はシェルを用いて調製することができる。コーティングは、糖衣、フィルムコーティング又は腸溶コーティングを含めて、様々なタイプとすることができる。糖衣は、水性であり、形成された錠剤の周囲を厚く覆う。糖衣錠は、一般に、腸のより高いpH値で溶解する。フィルムコートは、形成された錠剤又はビーズの周囲の薄い覆いである。腸溶コーティングでない限り、フィルムコートは胃の中で溶解する。腸溶錠又はビーズは、胃を通過し、腸で分解する。
【0144】
フィルムコーティングは、中性フィルムコーティング又は活性成分の放出を遅延させるフィルムコーティングとすることができる。遅延作用のないフィルムコーティングは、例えば、フィルム形成剤、顔料、抗接着剤及び可塑剤からなる。このフィルム形成剤は、溶解の速い構成要素からなることができる。一実施形態においては、フィルム形成剤は、低粘度ヒドロプロピルメチルセルロースタイプ2910 USP XXII、例えば、Methocel E5又はE15(Dow Chemical Ltd)又はPharmacoat 606(Shin Etsu)である。
【0145】
遅延作用を有するフィルムコーティングは、水不溶性であるが水透過性であるポリマーからなることができる。このポリマーは、拡散障壁として、始めに遅延時間を生じるだけでなく、初期に変化した水透過の結果として、コアの膨潤挙動にも長期間影響を及ぼす。好ましい水不溶性ポリマーは、Eudragit(登録商標)RS又はRL、Eudragit(登録商標)NE(商品名、rohm Pharma GmbH)、これらの混合物などのメタクリル酸、例えば、アクリル酸メチル/エチルの水不溶性誘導体である。
【0146】
他の代表的なフィルム形成剤としては、酢酸酪酸セルロース、プロピオン酸酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、HPMC、カラゲナン、硝酸セルロース、親水性セルロース剤、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ポリ酢酸ビニル及びラテックス分散液、ポリ酸、腸溶性ポリマー、多糖、アラビアゴム、トラガカント、ガーゴム、ゼラチン、タンパク質、アルブミン、ポリ乳酸、生分解性ポリマー、ポリグルタミン酸、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0147】
フィルムコーティングは、光保護顔料、例えば約40−80%の酸化鉄又は約100−150%の酸化チタン、約50−200%の抗接着剤、例えばタルク、及びEudragit(登録商標)RS若しくはRL、Eudragit(登録商標)NEなどのメチルアクリル酸誘導体を主体とするフィルムの場合にはポリエチレングリコールシリーズ、例えばPEG 400若しくはPEG 6,000又はクエン酸トリエチルの、ポリマーに対応した、約30−60%の適切な可塑剤(plasticier)などのフィルムコーティング手順において通例の賦形剤を含むこともできる(各場合における百分率は、乾燥コーティング物質に基づく。)。Eudragit(登録商標)タイプの水系分散液を使用するときには、例えば、Tween 80が凝集阻害剤として必要である。
【0148】
本発明の製剤は、不透明化剤(opaquant)を含むことができる。本明細書では、「不透明化剤」という用語は、カプセル剤又は錠剤のコーティングを不透明にするのに使用する化合物を意味するものとする。不透明化剤は、単独で、又は着色剤と組み合わせて、使用することができる。かかる化合物としては、例として、二酸化チタンなどが挙げられるが、これだけに限定されない。
【0149】
本発明の製剤は、腸管のある一部においてのみ、又は腸管のある一部において優先的に、活性成分を遅延放出することもできる。使用することができる埋め込み組成物の例としては重合体物質及びワックスが挙げられる。
【0150】
本発明に適切な剤形の調製を助けるために様々な成分又は化合物を使用することができる。かかる成分又は化合物としては、酸性化剤、アルカリ化剤、吸着剤、抗真菌性防腐剤、抗酸化剤、緩衝剤、着色剤、封入剤、香料、剛化剤、坐剤基剤、甘味剤、錠剤抗粘着剤、錠剤結合剤、錠剤及びカプセル剤の希釈剤、錠剤コーティング剤、錠剤直接圧縮賦形剤、錠剤崩壊剤、錠剤流動化剤(glidant)、錠剤潤滑剤、錠剤/カプセル剤の不透明化剤、錠剤研磨剤などが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0151】
本明細書では「酸性化剤」という用語は、生成物の安定性のために酸性媒体を与えるのに使用する化合物を意味するものとする。かかる化合物としては、例として、酢酸、クエン酸、フマル酸、塩酸、硝酸などが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0152】
本明細書では「アルカリ化剤」という用語は、生成物の安定性のためにアルカリ性媒体を与えるのに使用する化合物を意味するものとする。かかる化合物としては、例として、アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化カリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、トロラミンなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0153】
本明細書では「吸着剤」という用語は、物理的又は化学的(化学吸着)手段によって他の分子をその表面に保持することができる薬剤を意味するものとする。かかる化合物としては、例として、木炭粉末、活性炭などが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0154】
本明細書では「防腐剤」という用語は、微生物の増殖を防止するのに使用する化合物を意味するものとする。かかる化合物としては、例として、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメロサールなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0155】
本明細書では「抗酸化剤」という用語は、酸化を阻害し、従って酸化的プロセスによって調製物が劣化するのを防止するのに使用する薬剤を意味するものとする。かかる化合物としては、例として、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテート、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、次亜リン酸(hypophophorous acid)、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0156】
本明細書では「緩衝剤」という用語は、酸又はアルカリの希釈又は添加によるpH変化に対抗するのに使用する化合物を意味するものとする。かかる化合物としては、例として、メタリン酸カリウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムの無水物及び二水和物などが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0157】
本明細書では、「錠剤直接圧縮賦形剤」という用語は、直接圧縮錠剤に使用する化合物を意味するものとする。かかる化合物としては、例として、リン酸水素カルシウム(例えば、Ditab)、噴霧乾燥リン(phosphor spray dried)、又は無水ラクトース、微結晶セルロース、(AVICEL(商標))、デキストラン(EMDEX(商標))、スクロース(NUTAB(商標))、当業者に公知の他の化合物などが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0158】
本明細書では「錠剤流動化剤」という用語は、錠剤圧縮中の摩擦を抑制するために錠剤及びカプセル剤において使用する薬剤を意味するものとする。かかる化合物としては、例として、コロイド状シリカ、ヒュームドシリカ、ステアリン酸マグネシウム、コーンスターチ、タルクなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。他の流動化剤又は潤滑剤としては、ステアリン酸カルシウム、鉱油、ステアリン酸、硬化植物油、安息香酸、ポリ(エチレングリコール)、NaCl、PRUV(商標)、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。
【0159】
本明細書では「錠剤抗粘着剤」という用語は、製造中に打錠機の穿孔器及びダイにテーブル(table)製剤成分が粘着するのを防止する薬剤を意味するものとする。かかる化合物としては、例として、ステアリン酸マグネシウム、コーンスターチ、シリコーン(silicone)ジオキシド、タルクなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0160】
本明細書では「錠剤研磨剤」という用語は、コート錠に魅力的な光沢を付与するのに使用する化合物を意味するものとする。かかる化合物としては、例として、カルナウバロウ、白蝋などが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0161】
本明細書では「錠剤結合剤」という用語は、テーブル(table)の顆粒化において粉体粒子を接着するのに使用する物質を意味するものとする。かかる化合物としては、例として、アラビアゴム、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、圧縮できる糖(例えば、NuTab)、エチルセルロース、ゼラチン、液体グルコース、メチルセルロース、ポビドン、アルファ化デンプンなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。これらの結合剤の融点及び/又は軟化点温度は、通常、その分子量の増加と伴に上昇する。約150℃を超える融点又は軟化点温度を有する結合剤は、結合剤の融点又は軟化点温度が150℃未満に低下するように、適切な剤形の調製中に可塑剤を使用する必要がある場合がある。結合剤は、一般に、粉体、顆粒、薄片又は熱溶融液体の形態である。
【0162】
可塑剤は、製剤中で有用となり得る。本明細書では「可塑剤」という用語は、結合剤を可塑化することができる全ての化合物を含む。可塑剤は、結合剤の融解温度又はガラス転移温度(軟化点温度)を低下できるようにすべきである。低分子量PEGなどの可塑剤は、一般に、結合剤の平均分子量を広げ、それによってそのガラス転移温度又は軟化点を低下させる。可塑剤は、一般に、ポリマーの粘度も低下させる。可塑剤は、本発明の製剤に特に有利な何らかの物性を付与することも可能である。
【0163】
可塑剤としては、例として、低分子量ポリマー、オリゴマー、コポリマー、オイル、小さな有機分子、脂肪族ヒドロキシルを有する低分子量ポリオール、エステル型可塑剤、グリコールエーテル、ポリ(プロピレングリコール)、マルチブロックポリマー、単一ブロックポリマー、低分子量ポリ(エチレングリコール)、クエン酸エステル、トリアセチン、プロピレングリコールフタル酸エステル、リン酸エステル、セバシン酸エステル、グリコール誘導体、脂肪酸エステル及びグリセリンが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0164】
かかる可塑剤は、エチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、スチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及び他のポリ(エチレングリコール)化合物、モノプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、乳酸ソルビトール、乳酸エチル、乳酸ブチル、グリコール酸エチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレシル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、アセチル化モノグリセリド、鉱油、ヒマシ油、三酢酸グリセリン、ステアリン酸ブチル、モノステアリン酸グリセリン、ステアリン酸ブトキシエチル、ステアリルアルコール、シクロヘキシルエチルフタレート、シクロヘキシルメチルジブチルフタレート、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジオクチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル及びグリコール酸アリルとすることもできる。かかる可塑剤は全てAldrich、Sigma Chemical Co.、Morflex, Inc.などの供給源から市販されている。可塑剤の組み合わせを本製剤に使用できることが企図され、本発明の範囲内である。
【0165】
制御放出剤形がポリマーマトリックスであるときには、マトリックス生成中のマトリックス空隙率及び細孔形成を増加させるために、細孔形成剤を0.01%から90%重量/体積の量で含むことができる。
【0166】
好ましい製剤は、少なくとも4−フェニル酪酸ナトリウム又はそのエステル、水和物若しくはプロドラッグと、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、ラクトースとを含む。上述したものなどのさらなる添加剤を、本発明によって所望の製剤を得るために必要な量で添加することができる。
【0167】
D. 剤形
本発明の化合物及び製剤は、固体剤形、半固体剤形又は液体剤形及びこれらの剤形の各々の下位範ちゅうを含めて、但しこれらだけに限定されない当分野で標準的な公知の剤形のいずれかで投与することができる。
【0168】
経口投与用固体剤形としては、カプセル剤、カプレット剤、錠剤、丸剤、散剤、舐剤、顆粒剤などが挙げられる。本明細書では「錠剤」という用語は、圧縮錠剤、コート錠、マトリックス錠剤、浸透錠剤及び上でより詳細に述べた当分野で公知の他の剤形を含むものとする。本明細書では「カプセル剤」という用語は、カプセル剤本体が摂取後に崩壊して、所望の徐放性挙動を示す粒子内容物を放出するカプセル剤を含み、カプセル剤本体がGI管中にある間に実質的に完全なままであるカプセル剤も含むものとする。剤形が多数の粒子を含み、その総量が、意図された、治療上有用である4−PBA用量である、多粒子剤形も企図される。
【0169】
かかる固体剤形においては、活性化合物を、クエン酸ナトリウム、リン酸二カルシウムなど薬剤として許容される少なくとも1種類の不活性な賦形剤若しくは担体及び/又はa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、サリチル酸などの充填剤若しくは増量剤、b)カルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、アラビアゴムなどの結合剤、c)グリセリンなどの湿潤剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のシリカート、炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶解遅延剤、f)第4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)セチルアルコール、モノステアリン酸グリセリンなどの湿潤剤、h)カオリン、ベントナイト粘土などの吸収剤並びにi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、これらの混合物などの潤滑剤と混合する。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合には、剤形は緩衝剤を含むこともできる。
【0170】
錠剤は、1種類以上の補助成分と場合によっては一緒に、圧縮又はモールディングすることによって調製することができる。圧縮錠剤は、結合剤、潤滑剤(lubricant)、不活性希釈剤、潤滑剤(lubricating)、表面活性剤又は分散剤と混合されていてもよい、散剤、顆粒剤などの易流動性活性成分を適切な機械で圧縮することによって調製することができる。モールディングされた錠剤は、不活性希釈液で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械でモールディングすることによって製造することができる。錠剤は、被覆されていても、刻み目が入れられていてもよく、その中の活性成分の徐放又は制御放出をもたらすように処方することができる。
【0171】
直腸又は膣投与用組成物は、カカオ脂、ポリエチレングリコール、坐剤ワックスなどの適切な非刺激性の賦形剤又は担体を本発明の化合物と混合することによって調製することができる坐剤であることが好ましい。これらの賦形剤又は担体は、周囲温度では固体であるが体温では液体であり、従って直腸又は膣腔内で溶融して活性化合物を放出する。
【0172】
半液体剤形としては、構造が柔らか過ぎて固体とみなすことができないが、液体とみなすには濃すぎる剤形などが挙げられる。半液体剤形としては、クリーム剤、ペースト剤、軟膏剤、ゲル剤、ローション剤、本発明の活性化合物を含む他の半固体乳濁液剤などが挙げられる。
【0173】
軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤及びゲル剤は、本発明の活性な化合物に加えて、動物性脂肪、植物性脂肪、オイル、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、酸化亜鉛、これらの混合物などの賦形剤を含むことができる。
【0174】
経口投与用液体剤形としては、薬剤として許容される乳濁液剤、マイクロエマルジョン剤、液剤、懸濁液剤、シロップ剤、エリキシル剤などが挙げられる。液体剤形は、活性化合物に加えて、例えば水、他の溶媒などの当分野で一般に使用される不活性希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚種油、オリーブ油、ひまし油及びゴマ油)、グリセリン、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、これらの混合物などの可溶化剤及び乳化剤を含むことができる。
【0175】
本発明の化合物の局所又は経皮投与用剤形としては、分解性又は非分解性ポリマーと混合されていてもよい、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、液剤、スプレー剤、吸入剤、貼付剤などが挙げられる。活性成分は、薬剤として許容される担体及び任意の必要な防腐剤又は必要になり得る緩衝剤と無菌条件下で混合される。眼用製剤、点耳剤、眼軟膏剤、散剤及び液剤も本発明の範囲内であると考えられる。
【0176】
本発明の化合物を含む製剤は、皮膚貼付剤などの用具によって皮膚を通して投与することができる。貼付剤は、ポリアクリルアミド、ポリシロキサン、これら両方などのマトリックスと、材料を皮膚に送達する速度を制御するのに適切なポリマーでできた半透膜とで構成することができる。他の適切な皮膚貼付剤及び形状(configuration)は、米国特許第5,296,222号及び同5,271,940号並びにSatas, D., et al, ”Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology, 2nd Ed.”, Van Nostrand Reinhold, 1989:Chapter 25, pp.627−642に記載されている。
【0177】
散剤及びスプレー剤は、本発明の化合物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ポリアミド粉体、これらの物質の混合物などの賦形剤を含むことができる。スプレー剤は、さらに、クロロフルオロ炭化水素などの通例の噴霧剤を含むことができる。
【0178】
本製剤は、薬学分野で周知の方法のいずれかによって調製することができる。全ての方法は、本発明の化合物又は薬剤として許容されるその塩若しくは溶媒和化合物(「活性成分」)を、1種類以上の副成分を構成する担体と会合させる段階を含む。一般に、本製剤は、液体担体、細かく粉砕した固形担体、又はその両方と活性成分を均一かつ十分に会合させ、次いで、必要に応じて、生成物を所望の製剤に成形することによって調製される。
【0179】
本製剤に組み入れる治療用化合物の量は、薬学、臨床医学及び薬理学の公知の原理に従って選択する。治療用化合物の治療有効量は、特定の目的を持って企図される。「治療有効量」という用語は、例えば薬剤に関して、薬剤として有効な量を企図すると理解される。薬剤として有効な量は、必要な又は所望の治療反応を誘発するのに十分な薬物又は薬剤活性物質の量又は数量であり、換言すれば、患者に投与するとかなりの生物学的反応を誘発するのに十分な量である。
【0180】
本発明の制御放出製剤に添加する4−フェニル酪酸ナトリウムの量は、約0.01μgから約1,000gとすることができ、約0.01mg、約0.1mg、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、約450mg、約475mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1,000mgの量及び本明細書に示す値のいずれかの間の量(例えば、約20mgから約800mgまでの量)などであるが、これらだけに限定されない。示した量は、調製した1錠又は1服当たりの量である。一実施形態においては、4−フェニル酪酸ナトリウム又はそのエステル、水和物又はプロドラッグの量は、1錠又は1服当たり約50mgから約800mgである。
【0181】
治療用化合物は、溶解速度を増大させるために、微粉の形態で、すなわち散剤又は顆粒剤として一般に使用される。溶解速度を増大させるために、治療用微粉化合物を使用することが好ましい。治療用化合物は、その80%以上、望ましくは90%以上が100メッシュ(150ミクロン)のふるいを通過できることがより好ましい。組み入れる治療用化合物の量は、通常、組成物に基づいて約0.1から50%、好ましくは約1から25重量%であり、この比率は、用いる治療用化合物に応じて適切に変更することができる。
【0182】
一実施形態においては、本発明の制御放出製剤に添加するヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の量及びタイプとしては、任意の適切な、市販されている、又は容易に合成されるタイプ(例えば、100又は400cpsの2208、USP XXII)などが挙げられるが、これらだけに限定されない。本発明の制御放出製剤に添加するHPMCの量は、本発明の所望の緩効性(持続放出性)、持効性(long action)製剤が得られる適切な任意の量とすることができる。従って、本明細書に記載の製剤に添加するHPMCの量は、1錠又は1服当たり約0.1mgから約1000mgなどであるが、これだけに限定されない。本明細書に記載の製剤に添加するHPMCの量は、約0.1mg、約0.2mg、約0.3mg、約0.4mg、約0.5mg、約1.0mg、約2.0mg、約3.0mg、約4.0mg、約5.0mg、約6.0mg、約7.0mg、約8.0mg、約9.0mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg及び約1,000mg並びに本明細書に示す値のいずれかの間の量(例えば、約120mgから約180mgまでの量)などであるが、これらだけに限定されない。
【0183】
一実施形態によれば、本発明の制御放出製剤に添加するラクトースの量及びタイプとしては、薬剤に使用するのに適切なラクトースの任意の市販されている、又は容易に合成されるタイプなどであるが、これらだけに限定されない。本発明の制御放出製剤に添加するラクトースの量は、本発明の所望の緩効性(持続放出性)、持効性製剤が得られる適切な任意の量とすることができる。従って、本明細書に記載の製剤に添加するラクトースの量は、1錠又は1服当たり約0.1mgから約1000mgなどであるが、これだけに限定されない。本明細書に記載の製剤に添加するラクトースの量は、1錠又は1服当たり、約0.1mg、約0.2mg、約0.3mg、約0.4mg、約0.5mg、約1.0mg、約2.0mg、約3.0mg、約4.0mg、約5.0mg、約6.0mg、約7.0mg、約8.0mg、約9.0mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1,000mgなどであり、本明細書に示す値のいずれかの間の量(例えば、約120mgから約180mgまでの量)などであるが、これらだけに限定されない。
【0184】
本発明の特定の一実施形態においては、4−フェニル酪酸ナトリウムの制御放出錠剤は、1錠又は1服当たり、4−フェニル酪酸ナトリウムの少なくとも約150から約275mgと、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なくとも約100mgから約200mgと、ラクトースの少なくとも約200mgから約300mgとを含む。場合によっては、Avicel(登録商標)PH 102などの微結晶セルロース、硬化植物油(例えば、滑石)、ステアリン酸マグネシウム及び/又は二酸化ケイ素の任意又は全ての組み合わせを含めて、薬剤技術において公知の上述したものなどの添加剤を、錠剤又は服用製剤(dose formulation)に含めることができる。かかる実施形態においては、本発明によれば、添加することができる微結晶セルロースの量は1錠又は1服当たり約10mgから約500mgであり、添加硬化植物油の量は1錠又は1服当たり約1mgから約100mgとすることができ、ステアリン酸マグネシウムなどの添加潤滑剤の量は1錠又は1服当たり約0.5mgから約100mgとすることができ、添加してもよい二酸化ケイ素(SiO)の量は1錠又は1服当たり約0.1mgから約100mgとすることができる。
【0185】
本発明による制御放出錠剤又は服用製剤の一例においては、フェニル酪酸ナトリウム又は他の適切なその塩、エステル及びプロドラッグ約1mgから約1000mgと、ヒドロキシプロピルメチルセルロース約1mgから約1,000mgと、ラクトース約0(すなわち、無添加)から約1,000mgと、微結晶セルロース約0.1から約500mgと、硬化植物油約1mgから約100mgと、ステアリン酸マグネシウム約0.5mgから約100mgと、高分散二酸化ケイ素約0.1mgから約100mgとを含む錠剤を調製する。
【0186】
本製剤に組み込む材料は、顆粒を形成するように前処理することができる。このプロセスは顆粒化として知られている。一般に定義されている通り、「顆粒化」は、小さな粒子が集合してより大きな恒久的凝集体となり、適切な密度(consistency)を有する易流動性組成物を生成する造粒プロセスである。かかる顆粒化組成物は、乾燥砂の密度と類似した密度を有することができる。顆粒化は、混合装置における撹拌によって、又は圧縮、押し出し若しくは凝集によって、実施することができる。
【0187】
E. 投与
本発明の化合物は、任意の適切な投与経路、例えば、経口、非経口、静脈内、皮内、筋肉内、皮下、舌下、経皮、気管支、咽喉、鼻腔内、クリーム剤又は軟膏剤などによる局所、直腸、関節内、大槽内、鞘内、腟内、腹腔内、眼内、吸入、頬(bucally)によって、又は経口スプレー若しくは鼻腔用スプレーとして投与することが好ましい。しかし、投与経路は、糖尿病性血管疾患又は眼球炎症の症状及び重症度に応じて変えることができる。
【0188】
宿主又は患者に投与する正確な化合物量は、主治医の責務である。しかし、用いる用量は、患者の年齢及び性別、治療する正確な障害及びその重症度を含めて、幾つかの要因に応じて決まる。本発明の組成物によれば、約0.001mg/kg/日から約2500mg/kg/日の用量範囲が典型的である。好ましくは、用量範囲は、約0.1mg/kg/日から約1000mg/kg/日である。より好ましくは、用量範囲は、1mg/kg、2mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg、kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、100mg/kg、200mg/kg、300mg/kg、400mg/kg、500mg/kg/日及びこの範囲の値の任意の2個の間の値を含めて、約0.1mg/kg/日から約500mg/kg/日である。
【0189】
ヒトに対する用量範囲は、一般に、約0.005mgから100g/日である。或いは、本発明による用量範囲は、本発明の化合物の血清レベルが約0.01μMから約100μM、好ましくは約0.1μMから約100μMになるような範囲である。本発明による適切な血清レベル値は、約0.01μM、約0.1μM、約0.5μM、約1μM、約5μM、約10μM、約15μM、約20μM、約25μM、約30μM、約35μM、約40μM、約45μM、約50μM、約55μM、約60μM、約65μM、約70μM、約75μM、約80μM、約85μM、約90μM、約95μM、約100μM、これらの値の任意の2個の間の血清レベル(例えば、約10μMから約60μM)などであるが、これらだけに限定されない。個別の単位で与えられる錠剤又は他の剤形は、かかる投与量範囲又はこれらの範囲内の範囲で有効である、本発明の化合物の1種類以上の量を好都合には含むことができる。
【0190】
本発明の薬剤は、治療上有益な4−PBA血中濃度を長期間維持する。適切な制御放出時間としては、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約31時間、約32時間、これらの期間のいずれかの間の時間などが挙げられるが、これらだけに限定されない。一実施形態においては、薬剤は、治療上有益な4−PBA血中濃度を約6時間もたらす。別の実施形態においては、薬剤は、治療上有益な4−PBA血中濃度を約12時間もたらす。さらに別の実施形態においては、薬剤は、治療上有益な4−PBA血中濃度を約24時間もたらす。
【0191】
本発明の一実施形態によれば、1日2回の投与による有効量は約40から約2,000mg/日である。好ましくは、1日2回の投与による有効量は約500mg/日である。
【0192】
F. 治療上の使用
本製剤は、放出制御剤と薬剤として許容される4−フェニル酪酸の塩、エステル及びプロドラッグを含めた4−フェニル酪酸化合物とを含み、幾つかの治療用途に使用することができる。特に、本発明の制御放出製剤は、尿素サイクル障害、フェニルケトン尿症、アルファ−1−抗トリプシン欠乏症、血液学/血液関連障害及び疾患、腫よう性疾患、ウイルス疾患、ヒストン脱アセチル化疾患又は障害、癌又は腫よう性疾患、ベータグロビン障害並びにCNS疾患又は障害などの神経系の疾患又は障害を含めて、様々な疾患及び障害の治療に使用することができる。
【0193】
(i)尿素サイクル障害
尿素サイクル障害は、血流からアンモニアを除去する役割を担う、尿素回路中の酵素の1種類が欠損していることによって引き起こされる遺伝性疾患である。尿素回路は、タンパク質代謝の老廃物である窒素を血液から除去して尿素に転化する一連の生化学的段階である。通常、尿素は尿に移行し、体から除去される。尿素サイクル障害においては、窒素は、毒性の極めて高い物質であるアンモニアの形で蓄積し、体から除去されない。次いで、アンモニアは、血液を介して脳に達し、そこで不可逆的脳損傷及び/又は死をもたらす。
【0194】
尿素サイクル障害は、先天性代謝異常のカテゴリーに含まれる。本発明による制御放出製剤によって治療することができる尿素サイクル障害としては、カルバミルリン酸合成酵素(CPS)欠損症、N−アセチルグルタミン酸合成酵素(NAGS)欠損症、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症、アルギニノコハク酸合成酵素欠損症(ASD;シトルリン血症)、アルギニノスクシナーゼ酸リアーゼ欠損症(ALD:アルギニノコハク酸尿症)、アルギナーゼ(AG)欠損症などが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0195】
(ii)フェニルケトン尿症
フェニルケトン尿症、すなわちPKUは、肉、牛乳、乳児用調整乳、母乳などのタンパク質含有食物中に一般に存在するアミノ酸であるフェニルアラニンの消化に必要な肝酵素(フェニルアラニン水酸化酵素)の欠乏によって引き起こされる遺伝病である。これらのフェニルアラニン欠損症関連障害には、フェニルケトン尿症(PKU)に加えて、非PKU高フェニルアラニン血症(非PKU HPA)及び変種のPKUが含まれる。古典的なPKUは、フェニルアラニン水酸化酵素活性の完全な、又はほぼ完全な欠損によるものであり、フェニルアラニンの食事制限なしでは、PKUに罹った大部分の子供は、深刻な不可逆的精神遅滞を起こす。非PKU HPAは、治療なしでは、極めて低い認知発達障害リスクと関連があった。変種のPKUは、PKUと非PKU HPAの中間である。本発明の制御放出製剤を用いて治療することができるPKU障害としては、古典的フェニルケトン尿症、変種のフェニルケトン尿症、非フェニルケトン尿症高フェニルアラニン血症などが挙げられる。
【0196】
(iii)アルファ−1−抗トリプシン欠乏症
本発明は、対象におけるアルファ−1−抗トリプシン欠乏症の治療において、本明細書に記載した4−フェニル酪酸及び薬剤として許容されるその誘導体(塩、エステル及びプロドラッグ)の制御放出製剤を使用する方法にも関する。アルファ−1−抗トリプシン欠乏症は、血流中のタンパク質アルファ−1−抗トリプシンの欠乏に起因する疾患及び障害である。本発明の制御放出製剤を用いて適切に治療、予防又は抑制することができるこの障害には、PiZ(プロテアーゼ阻害剤タイプZ)の変異によって引き起こされるアルファ−1−抗トリプシン欠乏症を含めて、アルファ−1−抗トリプシン欠乏症と関連する、又はアルファ−1−抗トリプシン欠乏症によって引き起こされる、肝疾患が含まれる。また、本発明は、PiZの変異によって引き起こされるアルファ−1−抗トリプシン欠乏症を含めたアルファ−1−抗トリプシン欠乏症の患者における気腫及び/又は(肺の弾性損失などの)肺損傷を治療、抑制及び/又は予防する方法も提供する。
【0197】
本発明の制御放出製剤の投与によって対象におけるアルファ−1−抗トリプシン欠乏症を治療する方法は、本明細書に記載の制御放出製剤中の4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグのアルファ−1−抗トリプシン分泌刺激量をアルファ−1−抗トリプシン欠乏症患者に投与することを含むと予見される。対象におけるアルファ−1−抗トリプシン欠乏症の存在を検出し、本明細書に記載の制御放出製剤中の4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグのアルファ−1−抗トリプシン刺激量を投与してアルファ−1−抗トリプシンの分泌を刺激し、治療中及び治療後のアルファ−1−抗トリプシンレベルを監視することによって、アルファ−1−抗トリプシン欠乏症を治療する方法を提供することも本発明のこの態様に含まれる。最後に、アルファ−1−抗トリプシン欠乏症に関する本発明のさらに別の態様は、プロテアーゼ阻害剤タイプZ変異を含む細胞を、本明細書に記載の制御放出製剤中の4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグのアルファ−1−抗トリプシン分泌刺激量と接触させ、治療中及び治療後のアルファ−1−抗トリプシンレベルを監視することによって、アルファ−1−抗トリプシンの分泌を細胞によって刺激する方法である。
【0198】
(iv)血液学的障害(Hematology disorder)/血液疾患
本発明の制御放出製剤組成物の投与方法は、好ましくは、異常血色素症(例えば、鎌状赤血球貧血、地中海貧血)などの血液疾患、ウイルス性悪性腫よう(例えば、潜在性ウイルス感染)などの細胞増殖性障害、並びに赤血球貧血、白血球貧血、白血球減少症、好中球減少症及び血小板減少症を含めた血球減少症の治療にも使用される。
【0199】
本発明の別の実施形態は、少なくとも4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグを含む1種類以上の本発明の制御放出組成物/製剤の投与によって血液疾患患者を治療する方法を対象とする。投与する組成物は、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容される(フェニル酪酸ナトリウムなどの)その塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量と放出制御剤とを含む。治療有効量は、障害の1つ以上の症候を緩和することによって、又は若年の死亡率を単に抑制することによって、患者に有益な効果を有する量である。例えば、有益な効果は、とう痛の減少、発症の期間、頻度又は強度の減少、ヘマトクリットの増加、赤血球形成の改善、キレート療法の必要性の低減又は解消、網状赤血球数の増加、末梢血流の増加、溶血の減少、疲労の減少、体力の強化などである。治療量は、胚若しくは胎児のグロビンなどの非成体のグロビンの発現又は胚、胎児若しくは成体のグロビン発現細胞の増殖を刺激し、又は促進する化学物質若しくは化学薬品の量であることが好ましい。持続療法の治療有効量は、典型的には、パルス状療法(pulsed therapy)において有効な治療量よりも多い。
【0200】
(v)感染症
本発明の別の実施形態は、4−フェニル酪酸(又は薬剤として許容されるその塩、エステル及びプロドラッグ)と放出制御剤との制御放出製剤の治療上有効な組成物を投与することによって、感染症又は障害の患者を治療する方法を対象とする。
【0201】
治療可能な感染症としては、敗血症、肺炎などの細菌感染症、例えば、ニューモコッカス(Pneumococci)、ストレプトコッカス(Streptococci)、スタフィロコッカス(Staphylococci)、ナイセリア(Neisseria)、クラミジア(Chlamydia)、マイコバクテリア(Mycobacteria)、アクチノミセテス(Actinomycetes)、腸内バチルス(Bacilli)などの腸内微生物などの細菌病原体によって引き起こされる感染症;例えば、肝炎ウイルス、HIVなどのレトロウイルス、インフルエンザウイルス、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス(HSV I、HSV II、EBV)、ポリオーマウイルス、遅発性ウイルス、パラミクソウイルス及びコロナウイルスによって引き起こされるウイルス感染症;例えば、マラリア、トリパノソーマ症、リーシュマニア(leishmania)、アメーバ症、トキソプラスマ症、サルコシスティス、ニューモシスティス、住血吸虫症、象皮症(elephantitis)などの寄生虫症及びカンジダ症、フェオフィホ真菌症、アスペルギルス症、ムコール症、クリプトコッカス症、ブラストミセス症、パラコクシジオイデス症(paracoccidiodomycosis)、コクシジウム症、ヒストマイコシス、放線菌症、ノカルジア症、黒色真菌感染症などの真菌感染症などが挙げられる。
【0202】
(vi)腫よう性疾患
本発明の別の実施形態は、4−フェニル酪酸(又は薬剤として許容されるその塩、エステル及びプロドラッグ)の制御放出製剤の治療上有効な組成物を投与することによって、腫よう性疾患の患者を治療する方法を対象とする。
【0203】
腫よう性疾患は、新生物、腫よう、悪性腫よう、癌、又は細胞の比較的自律的な増殖をもたらす疾患として特徴づけることができる、疾患又は疾病などである。本発明の組成物によって予防治療可能な、又は治療可能な、腫よう性疾患としては、小細胞肺癌及び他の肺癌、横紋筋肉腫、じゅう毛癌、多形性膠芽腫(脳腫よう)、腸及び胃の癌腫、白血病、ぼうこう癌、卵巣癌、前立腺癌、骨肉腫、転移癌などが挙げられる。これらの組成物によって治療可能な免疫系疾患としては、ろ胞性リンパ腫、バーキット(Burlitt’s)リンパ腫、成人T細胞白血病及びリンパ腫、有毛細胞白血病、急性骨髄性、リンパ芽球性又は他の白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群を含めた非ホジキンリンパ腫などが挙げられる。本組成物によって治療可能なさらに別の疾患としては、ウイルス病原体がEBV、HPV、HIV、CMV、HTLV−I又はHBVであるウイルス性癌、乳房細胞癌腫、黒色腫及び血液学的黒色腫(hematologic melanoma)、すい癌、肝臓癌、胃癌、結腸癌、骨癌、へん平上皮癌、神経線維腫、精巣細胞癌腫及び腺癌、子宮体癌、腎癌、白血病、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚癌、甲状腺癌などが挙げられる。
【0204】
好ましい一実施形態においては、本発明の組成物及び方法は、治療又は予防又は前立腺癌に有用である。前立腺には幾つかの細胞タイプが存在するが、前立腺癌の99%以上は腺細胞から発生する(すなわち、腺癌)。本発明は、全ての病期における前立腺癌の治療又はその進行の抑制に使用することができる。一般に、前立腺癌は、限局性(localized)、局所性(regional)又は転移性として特徴づけられる。限局性前立腺癌は、(i)病期I若しくはA若しくはT1(触ることのできない(触知不可能)腫よう)又は(ii)病期II若しくはB若しくはT2(触ることができる(触診可能)が、前立腺に限局している腫よう)などである。局所性前立腺癌は、(i)病期III若しくはC若しくはT3(前立腺被膜を通って、おそらくは精嚢に増殖した腫よう)又は(ii)T4(近傍の筋肉及び器官に増殖した腫よう)と記述される。転移性前立腺癌は、典型的には、病期IV又はD及びN+又はM+:局所(骨盤)リンパ節(N+)又は体のより遠位にある部分(M+)に転移した腫ようと記述される。
【0205】
本発明の制御放出製剤を用いて治療することができる腫よう性疾患としては、ウイルス性腫よう、悪性腫よう、癌、又は細胞の比較的自律的な増殖をもたらす疾患なども挙げられる。腫よう性疾患としては、白血病、リンパ腫、肉腫、へん平上皮癌などの癌腫、神経細胞腫、精上皮腫、黒色腫、胚細胞腫よう、未分化腫よう、(一部では癌腫ともみなされている)神経芽細胞腫、混合型腫よう、他の悪性腫ようなどが挙げられる。
【0206】
抗腫よう活性としては、例えば、白血病、リンパ腫、肉腫、神経細胞腫、へん平上皮癌、精上皮腫、黒色腫、神経芽細胞腫、混合型腫よう、胚細胞腫よう、未分化腫よう、感染症(例えば、ヒトパピローマウイルス、単純ヘルペスウイルスタイプI若しくはIIを含めたヘルペスウイルス又はエプスタインバーウイルス、肝炎ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、別のレトロウイルスなどのウイルス感染症)による新生物及び他の悪性腫ようを含めた癌腫を含む細胞を含めて、形質転換細胞の分化を誘導する能力が挙げられる。分化すると、これらの細胞は、その攻撃的な性質を失い、もはや転移せず、もはや増殖性ではなく、最終的に死滅し、及び/又は患者の免疫系のT細胞、ナチュラルキラー細胞及びマクロファージによって除去される。細胞分化プロセスは、例えば、遺伝子特異的転写の刺激及び/又は阻害によって刺激され、又は開始される。ある種の遺伝子産物は、細胞分化に直接関与し、活性な分裂細胞を増殖能力を失った細胞又は増殖能力の低下した細胞に転換することができる。関連する細胞遺伝子発現パターンの変化を観察することができる。このプロセスを制御することは、悪性度を逆転させる能力を含む。本発明の組成物の存在下で転写調節が変化する遺伝子としては、癌遺伝子myc、ras、myb、jun、fos、abl、srcなどが挙げられる。これらの遺伝子産物の活性及び他の癌遺伝子の活性は、J.D. Slamon, et al.(Science, 224:pp.256−62(1984))に記載されている。
【0207】
抗腫よう活性の他の例としては、細胞の生活環の調節能力、因子の活性、産生若しくは放出の遮断若しくは抑制による血管新生若しくは組織再生の抑制能力、転写若しくは翻訳の調節能力、又は血管新生、増殖因子若しくはホルモン制御下の遺伝子転写の調整能力が挙げられる。これらの活性は、特に前立腺腫瘍形成及び乳癌に対して有効な治療である。さらに別の抗腫よう活性としては、例えばS期、M期、G期又はG期における時間を生み出し、これらを通過させることによる細胞周期調節能力、細胞内cAMPレベルを増大させる能力、ヒストンアセチル化の阻害又は刺激能力、核酸をメチル化する能力、抗腫よう剤の細胞内濃度を維持又は増加させる能力などが挙げられる。
【0208】
本発明の別の実施形態においては、組成物を他の抗腫よう剤又は療法と組み合わせて投与して組成物の効果を相加的又は相乗的に最大にすることができる。本組成物と組み合わせて有効となり得るサイトカインとしては、B細胞増殖因子(BCGF)、線維芽細胞由来増殖因子(FDGF)などの増殖因子、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF) 神経成長因子(NGF)、幹細胞因子(SCF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)などが挙げられる。これらの増殖因子と組成物は、さらに、細胞の分化及び/又はある種のMHC抗原若しくは腫よう特異性抗原の発現を刺激することができる。例えば、BCGFと組成物は、ある種のB細胞白血病の治療に有効となり得る。NGFと組成物は、ある種の神経芽細胞腫及び/又は神経細胞腫ようの治療に有用となり得る。同様に、分化剤(differentiating agent)などの他の薬剤は、組成物と組み合わせて腫よう性疾患を予防又は治療するのに有用となり得る。他の分化剤としては、B細胞分化因子(BCDF)、エリスロポイエチン(EPO)、造血幹細胞因子、アクチビン、インヒビン、骨形成タンパク質(BMP)、レチノイン酸又はレチノールなどのレチノイン酸誘導体、プロスタグランジン、TPAなどが挙げられる。
【0209】
或いは、組成物と組み合わせた他のサイトカイン及び関連抗原も、新形成の治療又は予防に有用となり得る。潜在的に有用であるサイトカインとしては、腫よう壊死因子(TNF)、インターロイキン(IL−1、IL−2、IL−3など)、インターフェロンタンパク質(IFN)IFN−α、IFN−β及びIFN−γ、ジブチリル環状AMPを含めたサイクリックAMP、ヘミン、ヒドロキシ尿素、ヒポキサンチン、グルココルチコイドホルモン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、シトシンアラビノシド、アシクロビル、gemciclovirなどの抗ウイルス薬などが挙げられる。これらの薬剤の組み合わせを用いた療法は、悪性腫よう及び癌の他の形態に対して安全で有効である。パルス状組成物(pulsed composition)と放射線療法、毒素又は薬物と複合化された、形質転換細胞に対するモノクローナル又はポリクローナル抗体を用いた抗体治療、遺伝子療法、特異的アンチセンス療法などの療法の組み合わせも、腫よう又は癌の他の形態の軽減又は除去に有効となり得る。効果は相加的、対数的又は相乗的であり、療法の組み合わせを含む方法は、同時プロトコル、間欠的プロトコル又は経験的に決定されるプロトコルとすることができる。
【0210】
本発明の別の実施形態は、従来の化学療法、放射線療法、抗体療法及び他の療法形態を改良することによって、腫よう性疾患を治療するための本発明の制御放出組成物の投与方法を提供する。化学療法剤と組み合わせて化学物質を含む組成物は、化学療法剤単独の効果を増大させる。組成物は、化学療法剤の細胞内濃度を低下させる原因であるタンパク質の発現又は活性を減少させる。薬物及び他の薬剤に対する耐性の原因タンパク質である多剤耐性(MDR)タンパク質としては、mdr−1遺伝子によってコードされたP−糖タンパク質(Pgp)などが挙げられる。その結果、腫よう性疾患の従来の治療用薬物は、より高濃度でより長期間蓄積し、本明細書の組成物と併用するとより有効である。本発明の組成物との併用療法に有用である従来の化学療法剤としては、アルキル化剤などのシクロホスファミド、メルカプトプリンなどのプリン及びピリミジンアナログ、ビンカ及びビンカ様アルカロイド、エトポシド又はエトポシド様薬物、デオキシルボシン(deoxyrubocin)、ブレオマイシンなどの抗生物質、コルチコステロイド、ニトロソ尿素などの変異誘発物質、メトトレキセートを含めた代謝拮抗剤、白金系細胞毒、抗インスリン、抗アンドロゲンなどのホルモン拮抗物質、タモキシフェンなどの抗エストロゲン、ドキソルビシン、1−アスパラギナーゼ、ダカルバジン(DTIC)、アムサクリン(mAMSA)、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、ミトキサントロンなどの他の薬剤などが挙げられる。化学療法剤は、本発明の化合物と同時に投与することができ、又は薬物の効果を最大にするが、患者の体に対する毒性を最小限にするように設計されたプロトコルによって規定された通りに投与することができる。
【0211】
(vii)ヒストン脱アセチル化障害
ヒストン脱アセチル化酵素は、活性部位に亜鉛を含む金属酵素である。例えば、ヒドロキサム酸基などの亜鉛結合部分を有する化合物は、ヒストン脱アセチル化酵素を阻害することができる。ヒストン脱アセチル化酵素阻害は、腫よう抑制に関係する遺伝子の発現を含めて遺伝子発現を抑制することができる。従って、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害は、血液疾患、例えば異常血色素症並びに遺伝子に関係する代謝障害、例えば嚢胞性線維症及び副腎白質萎縮症に代替経路を提供することができる。
【0212】
本発明の一態様においては、本明細書に記載の制御放出製剤中の4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグのヒストン脱アセチル化酵素刺激量を、嚢胞性線維症(CF)、神経変性疾患、癌などのヒストン脱アセチル化疾患又は障害の対象に投与することを含む、本発明の制御放出製剤の投与によって対象におけるヒストン脱アセチル化に関係する疾患又は障害を治療する方法を提供する。やはり本発明のこの態様に含まれるのは、対象におけるヒストン脱アセチル化酵素阻害の存在を検出し、本明細書に記載の制御放出製剤中の4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグのヒストン脱アセチル化酵素刺激量を投与してヒストン脱アセチル化酵素の分泌を刺激し、治療中及び治療後のヒストン脱アセチル化酵素レベルを監視することによって、ヒストン脱アセチル化酵素障害を治療する方法を提供することである。
【0213】
(vii)タンパク質の異常な局在化又は凝集障害
本発明の別の実施形態は、4−フェニル酪酸(又は薬剤として許容されるその塩、エステル及びプロドラッグ)と放出制御剤の制御放出製剤の治療上有効な組成物を投与することによって、タンパク質の異常な局在化及び/又は凝集を特徴とする障害の患者を治療する方法を対象とする。
【0214】
遺伝による広範囲な病的症状は、アルファ−1−抗トリプシン欠乏症、アルツハイマー病、プリオン疾患、家族性パーキンソン症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳疾患、リソソーム蓄積症の家族型を含めて、中心成分としてのタンパク質の異常な局在化及び/又は凝集を含む。
【0215】
後天性疾患は、凝集タンパク質が組織傷害の一因ともなり得る後天性虚血性症状などのタンパク質凝集も含むことができる。も提案された。
(ix)ベータグロビン障害
ベータグロビンは、血液中の本質的な酸素担体であるヘモグロビンAのポリペプチドサブユニットである。ベータグロブリン障害として知られ、異常なベータグロビン又はヘモグロビン中の2本のベータグロビン鎖の1本の産生を特徴とする、或いはベータグロビン及びヘモグロビンAの非産生又は不十分な量の産生を特徴とする、疾患及び障害。本発明に記載の方法及び4−フェニル酪酸(又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグ)の制御放出製剤によって治療することができるベータグロブリン障害としては、鎌状赤血球貧血、ベータ地中海貧血症及び関係する地中海貧血症、高リポタンパク血症などが挙げられる。
【0216】
(x)神経系疾患
「神経系疾患」という用語は、本明細書に記載の化合物によって発症、寛解、阻止又は除去される神経系疾患を含むものとする。神経系疾患タイプの例としては、脱髄性疾患、髄鞘形成障害性疾患及び変性疾患が挙げられる。疾患が生ずる及び/又は存在する対象の又は対象内の場所の例としては、中心部位と末梢部位の両方が挙げられる。「疾患」という用語を本明細書において使用するときには、神経系の新生物病態及び腫よう、神経系の虚血性傷害及びウイルス感染を除外し、神経系の新生物病態及び腫よう、神経系の虚血性傷害及びウイルス感染と異なる疾病のみを包含すると理解される。本発明の方法及び化合物による治療に適切な疾患タイプの例を以下に詳細に考察する。
【0217】
神経系疾患は、2つの一般的カテゴリー、すなわち、(a)神経系と他の器官の両方で見られる感染、外傷及び新生物などの病理過程と(b)ミエリンの疾患及びニューロンの全身的変性を含む神経系に独特な疾患とに分類される。
【0218】
神経学者及び他の神経系開業医に特に関係するのは、(a)感染、自己免疫抗体及びマクロファージ破壊によって発生し得る脱髄並びに(b)ミエリンの構造上の欠陥から生じる髄鞘形成異常の各疾患である。
【0219】
ニューロン疾患は、(a)胚形成及び初期形成中のニューロンの異常遊走又は(b)例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、運動ニューロン疾患、虚血に関係する疾患及び発作、糖尿病性神経障害などで起こるニューロンの生存の減少に起因する変性疾患の結果であり得る。
【0220】
(a)脱髄疾患
原発性脱髄は、脱髄した軸索が比較的維持されている髄鞘損失である。原発性脱髄は、ミエリンを作るオリゴデンドログリアの損傷によって、又はミエリン自体への直接的な、通常は免疫性又は毒性の攻撃によって生じる。これに対し、二次性脱髄は、軸索変性後に起こる。脱髄疾患は、広範な原発性脱髄を特徴とするCNS症状の一群である。脱髄疾患としては、多発性硬化症及びその変種、静脈周囲の脳炎などが挙げられる。主要な病変が原発性脱髄であるが、先天性代謝異常症、白質萎縮症、ウイルス性疾患(進行性多巣性白質脳症PM)、幾つかの他の稀な原因不明の障害などの他のカテゴリーに通常は都合よく分類される幾つかの他の疾患がある。
【0221】
多発性硬化症は、30−40代で最も発症する中枢神経系(CNS)の疾患である。多発性硬化症は、CNSの全ての部分に影響を及ぼし、視覚系、感覚系、運動系及び小脳系に関係する障害を起こす。この疾患の徴候は、穏やかで間欠的な場合もあれば、進行性で壊滅的な場合もある。病原は、CNSミエリンに対する自己免疫攻撃によるものである。利用可能な治療は、けい縮、疲労、ぼうこう機能不全及びけいれんの対症療法である。他の治療は、ミエリンに対する免疫性攻撃を停止させることに向けられる。これは、プレドニゾン、メチルプレドニゾロンなどのコルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリンなどの一般的免疫抑制薬及びベータインターフェロンなどの免疫調節剤からなる。ミエリンを保護する治療やミエリンを攻撃に耐えるようにする治療はない。
【0222】
急性播種性脳脊髄炎は、通常、ウイルス感染後に起こる障害であり、CNSミエリンに対する自己免疫反応によるものと考えられ、麻ひ、し眠及び昏睡をもたらす。急性播種性脳脊髄炎は、MSが再発及び慢性を特徴とするのに対して単相性(monophasic)疾患である点でMSとは異なる。治療は、典型的には、ステロイド投与からなる。
【0223】
急性壊死性出血性白質脳炎は、一般に致命的である奇病である。急性壊死性出血性白質脳炎も、ウイルス感染によって誘発される、CNSミエリンに対する自己免疫攻撃によって媒介されると考えられる。神経学的症候が頭痛、麻ひ及び昏睡と共に突然発生する。通常、数日以内に死亡する。治療は支持療法である。
【0224】
白質萎縮症は、ミエリン形成を損なうミエリン代謝異常に起因する白質の疾患である。白質萎縮症は、髄鞘形成障害性疾患と考えられ、若年で発現し得る。
【0225】
異染性白質ジストロフィーは、酵素アリルスルファターゼの欠乏による常染色体劣性(遺伝)障害であり、脂質の蓄積をもたらす。進行性の衰弱及びけい縮をもたらすCNS及び末梢神経系の脱髄がある。
【0226】
クラッベ病も常染色体劣性として遺伝し、別の酵素のガラクトセレブロシド(galctocerebroside)ベータガラクトシダーゼの欠損によるものである。
【0227】
副腎白質萎縮症及び副腎脊髄神経障害は、神経系に加えて副腎(adrenal glad)に影響を及ぼす。
【0228】
(b)変性疾患
これらの疾患に対して知られている満足の行く病因又は病態生理はなく、これらの疾患全てが類似の病因を有すると考える説得力のある理由はない。このカテゴリーの疾患は、全般的な類似性を有する。これらの疾患は、選択的障害をもたらし易いニューロンの疾患であり、ニューロンの1つ以上の機能システムを冒し、他の機能システムを損なわない。
【0229】
パーキンソン病は、脳の黒質におけるドーパミン作動性ニューロンの欠損に起因する。パーキンソン病は、遅い随意運動、硬直、表情の乏しい顔及び猫背として現れる。レボドパ、カルビドパ、ブロモクリプチン、ペルゴリドなどのドーパミン作動性機能を増大させる、又はベンズトロピン、アマンタジンなどのコリン作動性機能を低下させる、幾つかの薬物が利用可能である。セレギリンは、残余のドーパミン作動性ニューロンを保護するように設計された新しい治療薬である。
【0230】
脊髄小脳変性症とは、大脳基底核、脳幹、小脳、脊髄及び末梢神経に様々な程度で影響を及ぼす変性疾患の一群を指す。患者は、CNS中の異なる解剖学的領域及び/又はニューロン系の損傷を反映した、パーキンソン症、失調症、けい縮、運動障害及び知覚障害の症候を呈する。
【0231】
アルツハイマー病(AD)は、結果的に重度の認知症になる、精神機能の緩徐な低下によって臨床的に特徴づけられる疾患である。ADの診断上の病理学的特徴は、脳、特に新皮質及び海馬における多数の老人性伝染病(senile plague)及び神経原線維変化の存在である。これらの脳領域及び幾つかの皮質下核における特定のニューロン集団の損失は、アセチルコリンを含めて、ある種の神経伝達物質の枯渇と相関がある。ADの病因はまだ不明である。これまで、多数の研究が、老人性伝染病(senile plague)のB/A4アミロイド成分の組成及び起源に焦点をおいている。アルツハイマー病は、重度の認知症の発生を伴う、知的機能の緩徐な低下によって臨床的に特徴づけられる。この進行を遅らせる治療法はない。
【0232】
ハンチントン舞踏病(HD)は、15−20年で死に至ることが多い運動障害、人格変化及び認知症によって臨床的に特徴づけられる、中年発症型の常染色体優性遺伝疾患である。脳の神経病理的変化は、大脳基底核に集中する。その顕著な樹状きょく突起の故に「有棘細胞(spiny cell)」と呼ばれる投射ニューロンの1クラスの損失が典型的である。この細胞クラスは、ガンマアミノ酪酸(GABA)、サブスタンスP及びオピオイドペプチドを含む。連鎖解析によって、HD遺伝子の位置が4番染色体の短腕の最も遠位のバンドに特定された。この疾患の進行を遅延させることが証明された治療はない。N−メチルd−アスパラギン酸(NMDA)作動物質に感受性の高いニューロンとHDにおいて消失するニューロンとの類似性を示す実験的研究によって、NMDA拮抗物質が有益であるかもしれないという推測がなされた。幾つかの最近の研究によれば、脳のエネルギー代謝の欠陥がHDにおいて発生し、興奮毒性ストレスに対するニューロンの脆弱性を高めている可能性がある。
【0233】
ミトコンドリア脳筋症は、ミトコンドリアの代謝に影響を及ぼす障害の異質な一群である。これらの障害には、基質の輸送、基質の利用、クレブス回路の欠陥、呼吸鎖の欠陥及び酸化/リン酸化カップリングの欠陥が関与し得る。純粋な筋疾患は、発症年齢、経過(急速進行性、静的、さらには可逆性)及び筋力低下の分布(呼吸不全を伴う全身化、近位優位の顔面肩甲上腕型、眼けん下垂を伴う輪筋及び外眼筋並びに進行性外眼筋麻ひ)に関してかなり変動する。ミトコンドリア筋症患者は、運動不耐性及び早発の疲労を訴える。
【0234】
運動ニューロンに影響を及ぼす変性疾患としては、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)などが挙げられる。好ましい一実施形態においては、本発明の組成物及び方法を用いて、変性疾患有効運動ニューロン(degenerative diseases effective motor neurons)、より具体的にはALS又はSMAを治療する。
【0235】
脊髄性筋萎縮症(SMA)。SMAは、前角細胞(AHC)に限定された疾患過程によって定義される神経筋疾患の一群である。(総説として“The Spinal Muscular Atrophies,” by Theodore L. Munsat M.D., a long−time MDA Researcher. From Current Neurology, Chapter 3, Vol. 14, 1994, pp.55−71を参照されたい。)。随意筋の筋力低下及び消耗が中心的特徴である。その大部分が発症年齢と相関があるSMAの幾つかの一般的タイプ:(i)SMAタイプ1(ウェルドニッヒ−ホフマン病)は出生前又は生後数ヵ月以内に明らかになる。(ii)タイプIIは、通常、生後3から15ヵ月で出現する。(iii)SMAタイプIII(クーゲルベルク−ヴェランデル病)は、2から17歳で出現する。(iv)ケネディ症候群又は進行性球脊髄性筋萎縮症は15から60歳で発症し得る。関節拘縮症(肢の固定された異常な姿勢を有する関節の持続的拘縮)を伴う先天性SMAは稀な障害である。SMAの治療の大部分は本質的に支持療法である。
【0236】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)。「ルー ゲーリッグ病」としても知られるALSは、脳及び脊髄中の神経細胞において発症する進行性神経変性疾患である。運動ニューロンが変性すると、通常は筋肉を動かす筋線維にもはや活動電位を送ることができなくなる。ALSの初期症候は、特に腕及び脚、会話、えん下又は呼吸を含めて、筋力低下の進行を含むことが多い。筋肉は、機能するのに必要なメッセージを運動ニューロンからもはや受け取らなくなると、萎縮し始める(より小さくなる。)。肢は、筋組織萎縮症のように「より細く」なり始める。随意筋の活動が次第に冒され、疾患後期の患者は全く麻ひしたようになり得る。患者の約50%は診断から3、4年以内に死亡する。ALSの病因及び病原は依然として十分に理解されていない。現在の仮説としては、(i)グルタミン酸代謝の変化、(ii)自己免疫機序、(iii)酸化的ストレス、(iv)外因性興奮毒、(iv)細胞骨格異常などが挙げられる。
【0237】
ALSは、3つのカテゴリー、すなわち、(i)散発性(sporatic)、(ii)家族性及び(iii)環境性に分類される。散発性ALSは、格段に最も一般的な形態であり、症例の90から95%を占める。散発性ALSの原因は不明である。家族性ALSは、遺伝的に連鎖しており、全症例の5から10%を占める。環境性ALSは食事要因と関連があると考えられる。散発性ALSは、それ自体が幾つかの障害、すなわち、(i)全症例の2/3を占め、上位と下位の両方の運動ニューロンが関与する古典的ALS、(ii)ALS症例の25%を占め、初期に延髄領域をもたらす進行性球麻ひ、(iii)散発性ALS症例の8010%を占め、初期に下位運動ニューロン症候を示す進行性筋萎縮症及び(iii)初期に上位運動ニューロン症候を示す極めて稀な診断の原発性側索硬化症に下位分類される。
【0238】
ALSを停止又は逆戻りさせる、治療又は処置はない。ALSの進行を適度に遅らせる、FDAによって認可された唯一の薬物Rilutek(登録商標)(2−アミノ−6−(トリフルオロメトキシベンゾチアゾール)(Aventis)がある。他の薬物は臨床試験で検討されている。
【0239】
(c)末梢神経系障害
末梢神経系(PNS)は、脳神経及び脊髄神経の運動成分及び感覚成分と、交感部門及び副交感部門を有する自律神経系と、末梢神経節とからなる。末梢神経系(PNS)は、感覚情報をCNSへ、効果器の信号を筋肉などの末梢器官へ伝達する手段である。再生能を持たない脳とは反対に、PNSの病的反応は変性と再生の両方を含む。末梢神経系障害を含む基本的病的変性過程には、ウォーラー変性、軸索変性及び節性脱髄の3つがある。
【0240】
神経障害性症候群としては、多様な感覚障害を有する急性上行性運動麻ひ、例えば、急性脱髄性神経障害、多発性神経炎を有する感染性単核球症、肝炎及び多発性神経炎、中毒性多発性神経障害;亜急性知覚運動性多発性神経障害などが挙げられる。後天性軸索神経障害(neurophathics)の例としては、異常タンパク血症、尿毒症 糖尿病、アミロイド症、結合組織病、ライ病などが挙げられる。遺伝性疾患の例としては、ひ骨筋萎縮症、肥大性の多発性神経障害、レフスム病などの肥大を伴う大部分が慢性の脱髄;突発性多発性神経炎 ポルフィリン症、脚気、中毒などの慢性再発性多発性神経障害;圧迫性麻ひ、外傷性麻ひ、血清神経炎、帯状ほう疹、ライ病などの単神経障害又は多発性単神経障害などが挙げられる。
【0241】
G. 併用療法
4−フェニル酪酸塩化合物を含む制御放出製剤は、疾患を改善する併用療法手法を行うために、幾つかの治療用化合物と組み合わせて、又は交互に使用することができる。一実施形態においては、さらに第2の治療薬を含む4−フェニル酪酸を含む制御放出製剤(すなわち、第2の治療薬も制御放出製剤中に分散されている。)。
【0242】
例えば、4−フェニル酪酸制御放出製剤は、癌及び腫ようの治療において、導入化学療法、術前(ネオアジュバント)化学療法及び補助放射線療法と補助化学療法の両方を含めて、放射線及び化学療法による治療と併用することができる。また、放射線及び化学療法は、癌治療において手術の補助として頻繁に必要とされる。アジュバントで使う状況では放射線及び化学療法の目標は、原発腫ようが抑制されたときに、再発リスクを低下させ、無病生存率を高めることである。化学療法は、肺癌及び乳癌の補助治療として、疾患が転移性であるときには頻繁に利用される。補助放射線療法は、肺癌及び乳癌を含めて幾つかの疾患において必要とされる。4−フェニル酪酸化合物を含む制御放出製剤は、癌治療において放射線療法及び/又は化学療法と組み合わせて手術後にも有用である。
【0243】
本発明の制御放出製剤中の4−フェニル酪酸塩、エステル又はプロドラッグと併用することができる化学療法剤としては、この詳細な説明のセクションFで列挙した薬剤などが挙げられ、さらに、アルキル化剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、抗腫よう抗生物質、ホルモン及び拮抗物質、微小管安定剤、放射性同位体、抗炎症剤、抗菌剤、植物アルカロイド(alkyloid)、抗ウイルス剤、抗体、天然物、これらの組み合わせなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。例えば、本発明の化合物は、ドキソルビシン、他のアントラサイクリンアナログなどの抗生物質、シクロホスファミドなどのナイトロジェンマスタード、5−フルオロウラシルなどのピリミジンアナログ、シスプラチン、ヒドロキシ尿素などと一緒に投与することができる。別の例として、腫ようが性腺刺激ホルモン依存性細胞と性腺刺激ホルモン非依存性細胞を含む乳房の腺癌などの混合腫ようの場合には、本化合物をロイプロリド又はゴセレリン(LH−RHの合成ペプチドアナログ)と組み合わせて投与することができる。他の抗腫ようプロトコルとしては、阻害剤化合物と別の治療法、例えば手術又は放射線との併用が挙げられ、本明細書では「補助抗腫よう療法」とも称する。
【0244】
本発明の制御放出製剤に含有させるのに適切な例示的治療薬としては、ベノフロキサシン、ナリジクス酸、エノキサシン、オフロキサシン、アミフロキサシン、フルメキュイン、トスフロキサシン(tosfloxacin)、ピロミド酸、ピペミド酸、ミロキサシン、オキソリン酸、シノキサシン、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、ペフロキサシン、ロメフロキサシン、エンロフロキサシン、ダノフロキサシン、ビンフロキサシン、サラフロキサシン、イバフロキサシン、ジフロキサシン、これらの塩などの難水溶性ピリドンカルボン酸タイプの合成抗菌剤などが挙げられるが、これらだけに限定されない。他の治療薬としては、ペニシリン、テトラサイクリン、セファロスポリン及び他の抗生物質、抗菌物質、抗ヒスタミン剤及びうっ血除去薬、抗炎症剤、駆虫剤、抗ウイルス剤、局所麻酔薬、抗真菌剤、抗アメーバ薬又は抗トリコモナス薬、鎮痛薬、抗関節炎薬、抗ぜん息薬、抗凝血薬、抗けいれん薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗悪性腫よう薬、抗精神病薬、高血圧治療薬、筋弛緩剤などが挙げられる。代表的抗菌物質は、ベータラクタム抗生物質、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、グラミシジン、バシトラシン、スルホンアミド、ニトロフラゾン、ナリジクス酸及びアナログ並びにフルダラニン/ペンチジドンの抗菌剤の組み合わせである。代表的な抗ヒスタミン剤及びうっ血除去薬は、ピリラミン(perilamine)、クロルフェニラミン、テトラヒドロゾリン及びアンタゾリンである。
【0245】
抗炎症薬を4−フェニル酪酸制御放出製剤と併用することもできる。使用に適した代表的な抗炎症薬としては、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルオコルトロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、インドメタシン、スリンダク及びその塩、対応するスルフィドなどが挙げられる。代表的な駆虫化合物はイベルメクチンである。
【0246】
代表的な抗ウイルス化合物は、アシクロビル及びインターフェロンである。代表的な鎮痛薬は、ジフルニサル、アスピリン又はアセトアミノフェンである。代表的な抗関節炎薬は、フェニルブタゾン、インドメタシン、スリンダク(silindac)、その塩及び対応するスルフィド、デキサメタゾン、イブプロフェン、アロプリノール、オキシフェンブタゾン又はプロベネシドである。代表的な抗ぜん息薬は、テオフィリン、エフェドリン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン及びエピネフリンである。代表的な抗凝血薬は、ビスヒドロキシクマリン及びワルファリンである。代表的な抗けいれん薬は、ジフェニルヒダントイン及びジアゼパムである。代表的な抗うつ薬は、アミトリプチリン、クロルジアゼポキシドペルフェナジン、プロトリプチリン、イミプラミン及びドキセピンである。代表的な抗糖尿病薬は、インスリン、ソマトスタチン及びそのアナログ、トルブタミド、トラザミド、アセトヘキサミド並びにクロルプロパミドである。代表的な抗悪性腫よう薬は、アドリアマイシン、フルオロウラシル、メトトレキセート及びアスパラギナーゼである。代表的な抗精神病薬は、プロクロルペラジン、チオリダジン、モリンドン、フルフェナジン、トリフルオペラジン、ペルフェナジン、アミトリプチリン(armitriptyline)及びトリフルプロマジン(trifluopromazine)である。代表的な高血圧治療薬は、スピロノラクトン、メチルドパ、ヒドララジン、クロニジン、クロロチアジド、デセルピジン、チモロール、プロプラノロール、メトプロロール、プラゾシン塩酸塩及びレセルピンである。代表的な筋弛緩剤は、塩化スクシニルコリン、ダントロレン(danbrolene)、シクロベンザプリン、メトカルバモール及びジアゼパムである。
【0247】
本発明の制御放出製剤に含めることができる治療薬の幾つかの他の例としては、アジフェニン、アロバルビタール、アミノ安息香酸、アモバルビタール、アンピシリン、アネトール、アスピリン、アザプロパゾン(azopropazone)、アズレン バルビツール酸、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン(beclomethasone dipropronate)、ベンシクラン、ベンズアルデヒド、ベンゾカイン、ベンゾジアゼピン、ベンゾチアジド、ベタメタゾン、17−吉草酸ベタメタゾン、ブロモ安息香酸、ブロムワレリル尿素、ブチル−p−アミノベンゾアート、抱水クロラール、クロランブシル、クロラムフェニコール、クロロ安息香酸、クロルプロマジン、ケイ皮酸、クロフィブラート、補酵素A、コルチゾン、酢酸コルチゾン、シクロバルビタール、シクロヘキシルアントラニラート、デオキシコール酸、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、ジアゼパム、ジギトキシン、ジゴキシン、エストラジオール、フルフェナム酸、フルオシノロンアセトニド、5−フルオロウラシル、フルルビプロフェン、グリセオフルビン、グアイズレン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、イブプロフェン、インジカン、インドメタシン、ヨウ素、ケトプロフェン、ランカシジン(lankacidin)系抗生物質、メフェナム酸、メナジオン、メフォバルビタール、メタルビタール、メチシリン、メトロニダゾール、マイトマイシン、ニトラゼパム、ニトログリセリン、ニトロソ尿素(nitrosurea)、パラメサゾン、ペニシリン、ペントバルビタール、フェノバルビタール、フェノバルビトン、酪酸フェニル、吉草酸フェニル、フェニトイン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、プロゲステロン、プロピルパラベン、プロスシラリジン、プロスタグランジンAシリーズ、プロスタグランジンBシリーズ、プロスタグランジンEシリーズ、プロスタグランジンFシリーズ、キノロン抗菌剤、レセルピン、スピロノラクトン、スルファセタミドナトリウム、スルホンアミド、テストステロン、サリドマイド、チアミンラウリル硫酸塩、パルミチン酸チアンフェニコール、チオペンタール、トリアムシノロン、VIAGRA(商標)、ビタミンA、ビタミンD3(コレカルシフェロール)、ビタミンE、ビタミンK3(メナジオン)、ワルファリンが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0248】
特定の一実施形態においては、本発明の制御放出製剤は、前立腺疾患治療薬と組み合わせて、又は交互に使用することができる。かかる治療薬も本発明の制御放出製剤に含有させるのに適切である。かかる薬剤としては、化学療法剤、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH−RH)作動物質、抗アンドロゲン剤などが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0249】
別の特定の一実施形態においては、本発明の制御放出製剤は、脊髄性筋萎縮症治療薬と組み合わせて、又は交互に使用することができる。かかる治療薬も本発明の制御放出製剤に含有させるのに適切である。かかる薬剤としては、バルプロ酸、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、ヒドロキシ尿素、アクラルビシン、クアンゾリン、テトラサイクリン誘導体、アミノ配糖体、インドプロフェン、クレアチン、リルゾール、カルニチンなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0250】
さらに別の一実施形態においては、本発明の制御放出製剤は、筋萎縮性側索硬化症治療薬と組み合わせて、又は交互に使用することができる。かかる治療薬も本発明の制御放出製剤に含有させるのに適切である。かかる薬剤としては、タモキシフェンを含めた2−アミノ−6−(トリフルオロメトキシ)ベンゾチアゾール、サリドマイド、AVP−923−Neurodex(Avanir Pharmaceuticals)、ミノサイクリン、ブスピロン、リトナビル及びヒドロキシ尿素、AEOL 10150(Aeolus Pharmaceuticals)、補酵素Q、及びセフトリアキソン(ceftriaxome)、クレアチン、ミオトロフィン(Cephalon)、セレブレックス、ネオトロフィン(NeoTherapeutics, Inc.)、NAALADase(Guilford Pharmaceuticals)、オキサンドロロン、トピラメート(Topamax)、キサリプロデン(Sanofi−Synthelabo Inc)、インジナビル、クレアチンなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0251】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すものである。以下の実施例に開示する技術は、本発明の実施において十分機能するように本発明者らによって発見された技術であり、従って、その実施の好ましい態様を構成するとみなすことができることを当業者は理解されたい。しかし、当業者は、本開示に照らして、開示する具体的実施形態において多数の変更を行い、それでも同様又は類似の結果を本発明の範囲から逸脱することなく得ることができることを理解されたい。
【0252】
実施例
【実施例1】
【0253】
4−フェニル酪酸ナトリウムの緩効性テーブルの製造
4−フェニル酪酸ナトリウム(Triple Crown America, Inc., Perkasie, PA)6.000Kg、ラクトース一水和物(lactosum monohydricum)6.280Kg、Methocel K100 M Premium(Prochem AG, Zurich, Switzerland)3.500Kg及びAvicel PH 102(Select Chemie, Zurich, Switzerland)750gの混合物をDiosna Mixer(DIOSNA Dierks & Sohne GmbH, Osnabruck, Germany)によって撹拌し、次いで精製水(aqua purificata)(逆浸透(inversion osmosis)によって精製された水)4,000.0gで湿らせ、冷気で18時間風乾した。次いで、混合物をふるいIVmmに通し、Lukon乾燥棚(Lukon Thermal Solutions AG, Tauffelen, Switzerland)によって40℃の気流で10時間再度乾燥させた。次いで、滑石240.0とステアリン酸マグネシウム30.0gの混合物を20分間混合した。次いで、生成した混合物を(Korsch AG, Berlin, GermanyのKorsch錠剤プレスEK IIを用いて)厚さ約6.8mm及び硬度約90ニュートンの0.70g錠剤にプレスした。このバッチによって24,000個の錠剤コアを製造した。
【0254】
これらのコアを、イソプロピルアルコール7,850.0g、Eudragit(商標)L 12.5 3,360.0g、フタル酸ジブチル66.0g、Miglyol 812 18.0g及びポリエチレングリコールPEG 400 56.0gを含むコロイド状分散液を用いてフィルムコーティングした。懸濁液を上記24,000個の錠剤コアに3.5atu及び25℃で噴霧した。得られたフィルムコート錠を循環空気乾燥棚(Lukon)によって35℃で少なくとも4時間乾燥させた。
【0255】
本明細書に開示し、特許請求する組成物、方法及び/又はプロセスの全てを、本開示に照らして過度の実験なしに製造し、実施することができる。本発明の組成物及び方法を好ましい実施形態について説明したが、組成物、方法及び/又はプロセスに、並びに本明細書に記載した方法の段階又は一連の段階において、本発明の概念及び範囲から逸脱することなく様々な変形形態を適用できることは当業者に明らかなはずである。より具体的には、同じ又は類似の結果が得られる限りは、本明細書に記載した薬剤を化学的にも生理学的にも関係するある種の薬剤で置換できることは明らかなはずである。当業者に明白なかかる類似の置換及び改変の全ては、本発明の範囲内及び概念内にあると見なせる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックス(ここで、ポリマーマトリックスはコポリマー、ターポリマー又はポリマーブレンドを含む。)中に分散された、4−フェニル酪酸(phenylbutric acid)又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含む、制御放出組成物。
【請求項2】
ポリマーマトリックスがコポリマーを含む、請求項1に記載の制御放出組成物。
【請求項3】
コポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項2に記載の制御放出組成物。
【請求項4】
ポリマーマトリックスがターポリマーを含む、請求項1に記載の制御放出組成物。
【請求項5】
ターポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項4に記載の制御放出組成物。
【請求項6】
ポリマーマトリックスがポリマーブレンドを含む、請求項1に記載の制御放出組成物。
【請求項7】
ポリマーブレンドが少なくとも1種類の親水性ポリマーを含む、請求項6に記載の制御放出組成物。
【請求項8】
親水性ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項7に記載の制御放出組成物。
【請求項9】
ポリマーブレンドが2種類以上の親水性ポリマーを含む、請求項7に記載の制御放出組成物。
【請求項10】
ポリマーブレンドが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxpropylcellulose)及び微結晶セルロースからなる群から選択されるセルロースエーテルとを含む、請求項9に記載の制御放出組成物。
【請求項11】
疎水性ポリマーをさらに含む、請求項7に記載の制御放出組成物。
【請求項12】
第2の治療薬の治療有効量をさらに含む、請求項1に記載の制御放出組成物。
【請求項13】
第2の治療薬が化学療法剤である、請求項12に記載の制御放出組成物。
【請求項14】
化学療法剤がアルキル化剤(alkyating agent)、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、抗腫よう抗生物質及びホルモン剤からなる群から選択される、請求項13に記載の制御放出組成物。
【請求項15】
第2の治療薬が2−アミノ−6−(トリフルオロメトキシ)ベンゾチアゾールである、請求項12に記載の制御放出組成物。
【請求項16】
第2の治療薬が、バルプロ酸、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、ヒドロキシ尿素、アクラルビシン、クアンゾリン(quanzoline)、テトラサイクリン誘導体、アミノ配糖体、インドプロフェン、クレアチン、リルゾール及びカルニチンからなる群から選択される、請求項12に記載の制御放出組成物。
【請求項17】
4−フェニル酪酸塩がフェニル酪酸ナトリウムである、請求項1に記載の制御放出組成物。
【請求項18】
ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含み、前記ポリマーマトリックスが、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種類のセルロースエーテルポリマーを含む、制御放出組成物。
【請求項19】
第2の治療薬をさらに含む、請求項18に記載の制御放出組成物。
【請求項20】
4−フェニル酪酸塩がフェニル酪酸(phenylbutryate)ナトリウムである、請求項18に記載の制御放出組成物。
【請求項21】
ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含み、前記ポリマーマトリックスが、非セルロース多糖、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール及びアクリル酸コポリマーからなる群から選択される少なくとも1種類の親水性ポリマーを含む、制御放出組成物。
【請求項22】
第2の治療薬をさらに含む、請求項21に記載の制御放出組成物。
【請求項23】
4−フェニル酪酸塩がフェニル酪酸ナトリウムである、請求項21に記載の制御放出組成物。
【請求項24】
哺乳動物の疾患又は障害の治療用医薬品の製造における、ポリマーマトリックス(ここで、ポリマーマトリックスはコポリマー、ターポリマー又はポリマーブレンドを含む。)中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含む、制御放出組成物の使用。
【請求項25】
哺乳動物がヒトである、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
ポリマーマトリックスがポリマーブレンドを含む、請求項24に記載の使用。
【請求項27】
ポリマーブレンドがヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
疾患又は障害が腫よう性疾患である、請求項24に記載の使用。
【請求項29】
疾患又は障害が前立腺癌である、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
疾患又は障害が神経変性疾患又は障害である、請求項24に記載の使用。
【請求項31】
神経変性疾患又は障害が脊髄性筋萎縮症である、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
神経変性疾患又は障害が筋萎縮性側索硬化症である、請求項30に記載の使用。
【請求項33】
疾患又は障害が、尿素サイクル障害、血液疾患、感染症、嚢胞性線維症及びタンパク質の局在化又は凝集障害からなる群から選択される、請求項24に記載の使用。
【請求項34】
4−フェニル酪酸塩がフェニル酪酸ナトリウムである、請求項24に記載の使用。
【請求項35】
哺乳動物の疾患又は障害の治療用医薬品の製造における、親水性ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含み、親水性ポリマーがメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキソメチルセルロース、ヘミセルロース及びメチルセルロースからなる群から選択されるセルロース誘導体である、制御放出組成物の使用。
【請求項36】
哺乳動物がヒトである、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
疾患又は障害が腫よう性疾患である、請求項35に記載の使用。
【請求項38】
腫よう性疾患が前立腺癌である、請求項35に記載の使用。
【請求項39】
障害が神経変性疾患又は障害である、請求項35に記載の使用。
【請求項40】
神経変性疾患又は障害が脊髄性筋萎縮症である、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
神経変性疾患又は障害が筋萎縮性側索硬化症である、請求項39に記載の使用。
【請求項42】
疾患又は障害が、尿素サイクル障害、血液疾患、感染症、嚢胞性線維症及びタンパク質の局在化又は凝集障害からなる群から選択される、請求項35に記載の使用。
【請求項43】
4−フェニル酪酸塩がフェニル酪酸ナトリウムである、請求項35に記載の使用。
【請求項44】
哺乳動物の疾患又は障害の治療用医薬品の製造における、親水性ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含み、親水性ポリマーが、非セルロース多糖、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール及びアクリル酸コポリマーからなる群から選択される、制御放出組成物の使用。
【請求項45】
哺乳動物がヒトである、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
疾患又は障害が腫よう性疾患又は障害である、請求項44に記載の使用。
【請求項47】
腫よう性疾患又は障害が前立腺癌である、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
疾患又は障害が神経変性疾患又は障害である、請求項44に記載の使用。
【請求項49】
神経変性疾患又は障害が脊髄性筋萎縮症である、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
神経変性疾患又は障害が筋萎縮性側索硬化症である、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
疾患又は障害が、尿素サイクル障害、血液疾患、感染症、嚢胞性線維症及びタンパク質の局在化又は凝集障害からなる群から選択される、請求項44に記載の使用。
【請求項52】
前記4−フェニル酪酸塩がフェニル酪酸ナトリウムである、請求項44に記載の使用。
【請求項53】
脊髄性筋萎縮症の治療用医薬品の製造における、ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含む、制御放出組成物の使用。
【請求項54】
ポリマーマトリックスが少なくとも1種類の親水性ポリマーを含む、請求項53に記載の使用。
【請求項55】
親水性ポリマーが、セルロース誘導体、非セルロース多糖、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール及びアクリル酸コポリマーからなる群から選択される、請求項54に記載の使用。
【請求項56】
セルロース誘導体が、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシルプロピルセルロースからなる群から選択されるセルロースエーテルである、請求項55に記載の使用。
【請求項57】
セルロース誘導体がヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項56に記載の使用。
【請求項58】
制御放出組成物がさらに第2の治療薬を含む、請求項53に記載の使用。
【請求項59】
第2の治療薬が、バルプロ酸、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、ヒドロキシ尿素、アクラルビシン、クアンゾリン、テトラサイクリン誘導体、アミノ配糖体、インドプロフェン、クレアチン、リルゾール及びカルニチンからなる群から選択される、請求項58に記載の使用。
【請求項60】
4−フェニル酪酸塩がフェニル酪酸ナトリウムである、請求項53に記載の使用。
【請求項61】
制御放出組成物が経口投与される、請求項53に記載の使用。
【請求項62】
筋萎縮性側索硬化症の治療用医薬品の製造における、ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含む、制御放出組成物の使用。
【請求項63】
ポリマーマトリックスが少なくとも1種類の親水性ポリマーを含む、請求項62に記載の使用。
【請求項64】
親水性ポリマーが、セルロース誘導体、非セルロース多糖、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール及びアクリル酸コポリマーからなる群から選択される、請求項63に記載の使用。
【請求項65】
セルロース誘導体が、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシルプロピルセルロースからなる群から選択されるセルロースエーテルである、請求項64に記載の使用。
【請求項66】
セルロースエーテルがヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項65に記載の使用。
【請求項67】
制御放出組成物がさらに第2の治療薬を含む、請求項62に記載の使用。
【請求項68】
第2の治療薬が2−アミノ−6−(トリフルオロメトキシ)ベンゾチアゾールである、請求項67に記載の使用。
【請求項69】
制御放出組成物が経口投与される、請求項62に記載の使用。
【請求項70】
4−フェニル酪酸塩がフェニル酪酸ナトリウムである、請求項62に記載の使用。
【請求項71】
哺乳動物における腫よう性疾患又は障害の治療用医薬品の製造における、ポリマーマトリックス(ここで、ポリマーマトリックスはコポリマー、ターポリマー又はポリマーブレンドを含む。)中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含む、制御放出組成物の使用。
【請求項72】
哺乳動物がヒトである、請求項71に記載の使用。
【請求項73】
ポリマーマトリックスがポリマーブレンドを含む、請求項71に記載の使用。
【請求項74】
ポリマーブレンドがヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項73に記載の使用。
【請求項75】
腫よう性疾患又は障害が前立腺癌である、請求項71に記載の使用。
【請求項76】
制御放出組成物がさらに第2の治療薬を含む、請求項71に記載の使用。
【請求項77】
第2の治療薬が、化学療法剤(chemotheraputic agent)、黄体形成ホルモン−放出ホルモン(LH−RH)作動物質及び抗アンドロゲン作動物質からなる群から選択される、請求項76に記載の使用。
【請求項78】
4−フェニル酪酸塩がフェニル酪酸ナトリウムである、請求項71に記載の使用。
【請求項79】
哺乳動物における腫よう性疾患又は障害の治療用医薬品の製造における、親水性ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含み、親水性ポリマーが、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシルプロピルセルロースからなる群から選択されるセルロースエーテルである、制御放出組成物の使用。
【請求項80】
哺乳動物がヒトである、請求項79に記載の使用。
【請求項81】
腫よう性疾患又は障害が前立腺癌である、請求項79に記載の使用。
【請求項82】
制御放出組成物が、化学療法剤、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH−RH)作動物質及び抗アンドロゲン剤からなる群から選択される第2の治療薬をさらに含む、請求項79に記載の使用。
【請求項83】
4−フェニル酪酸塩がフェニル酪酸ナトリウムである、請求項79に記載の使用。
【請求項84】
哺乳動物における腫よう性疾患又は障害の治療用医薬品の製造における、親水性ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含み、親水性ポリマーが、非セルロース多糖、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール及びアクリル酸コポリマーからなる群から選択される、制御放出組成物の使用。
【請求項85】
哺乳動物がヒトである、請求項84に記載の使用。
【請求項86】
腫よう性疾患が前立腺癌である、請求項84に記載の使用。
【請求項87】
制御放出組成物が、化学療法剤、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH−RH)作動物質及び抗アンドロゲン剤からなる群から選択される第2の治療薬をさらに含む、請求項84に記載の使用。
4−フェニル酪酸塩がフェニル酪酸ナトリウムである、請求項84に記載の使用。
【請求項89】
哺乳動物の疾患又は障害の治療のための、ポリマーマトリックス(ここで、ポリマーマトリックスはコポリマー、ターポリマー又はポリマーブレンドを含む。)中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含む、制御放出組成物の使用。
【請求項90】
哺乳動物がヒトである、請求項89に記載の使用。
【請求項91】
ポリマーマトリックスがポリマーブレンドを含む、請求項89に記載の使用。
【請求項92】
ポリマーブレンドがヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項91に記載の使用。
【請求項93】
疾患又は障害が腫よう性疾患である、請求項89に記載の使用。
【請求項94】
疾患又は障害が前立腺癌である、請求項93に記載の使用。
【請求項95】
疾患又は障害が神経変性疾患又は障害である、請求項89に記載の使用。
【請求項96】
神経変性疾患又は障害が脊髄性筋萎縮症である、請求項95に記載の使用。
【請求項97】
神経変性疾患又は障害が筋萎縮性側索硬化症である、請求項95に記載の使用。
【請求項98】
疾患又は障害が、尿素サイクル障害、血液疾患、感染症、嚢胞性線維症及びタンパク質の局在化又は凝集障害からなる群から選択される、請求項89に記載の使用。
【請求項99】
4−フェニル酪酸塩がフェニル酪酸ナトリウムである、請求項89に記載の使用。
【請求項100】
哺乳動物の疾患又は障害の治療のための、親水性ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含み、親水性ポリマーがメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキソメチルセルロース、ヘミセルロース及びメチルセルロースからなる群から選択されるセルロース誘導体である、制御放出組成物の使用。
【請求項101】
哺乳動物がヒトである、請求項100に記載の使用。
【請求項102】
疾患又は障害が腫よう性疾患である、請求項100に記載の使用。
【請求項103】
腫よう性疾患が前立腺癌である、請求項100に記載の使用。
【請求項104】
障害が神経変性疾患又は障害である、請求項100に記載の使用。
【請求項105】
神経変性疾患又は障害が脊髄性筋萎縮症である、請求項104に記載の使用。
【請求項106】
神経変性疾患又は障害が筋萎縮性側索硬化症である、請求項104に記載の使用。
【請求項107】
疾患又は障害が、尿素サイクル障害、血液疾患、感染症、嚢胞性線維症及びタンパク質の局在化又は凝集障害からなる群から選択される、請求項100に記載の使用。
【請求項108】
4−フェニル酪酸塩がフェニル酪酸ナトリウムである、請求項100に記載の使用。
【請求項109】
哺乳動物の疾患又は障害の治療のための、親水性ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含み、親水性ポリマーが、非セルロース多糖、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール及びアクリル酸コポリマーからなる群から選択される、制御放出組成物の使用。
【請求項110】
哺乳動物がヒトである、請求項109に記載の使用。
【請求項111】
疾患又は障害が腫よう性疾患又は障害である、請求項109に記載の使用。
【請求項112】
腫よう性疾患又は障害が前立腺癌である、請求項111に記載の使用。
【請求項113】
疾患又は障害が神経変性疾患又は障害である、請求項111に記載の使用。
【請求項114】
神経変性疾患又は障害が脊髄性筋萎縮症である、請求項113に記載の使用。
【請求項115】
神経変性疾患又は障害が筋萎縮性側索硬化症である、請求項114に記載の使用。
【請求項116】
疾患又は障害が、尿素サイクル障害、血液疾患、感染症、嚢胞性線維症及びタンパク質の局在化又は凝集障害からなる群から選択される、請求項109に記載の使用。
【請求項117】
4−フェニル酪酸塩がフェニル酪酸ナトリウムである、請求項109に記載の使用。
【請求項118】
脊髄性筋萎縮症の治療のための、ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含む、制御放出組成物の使用。
【請求項119】
ポリマーマトリックスが少なくとも1種類の親水性ポリマーを含む、請求項118に記載の使用。
【請求項120】
親水性ポリマーが、セルロース誘導体、非セルロース多糖、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール及びアクリル酸コポリマーからなる群から選択される、請求項119に記載の使用。
【請求項121】
セルロース誘導体が、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシルプロピルセルロースからなる群から選択されるセルロースエーテルである、請求項118に記載の使用。
【請求項122】
セルロース誘導体がヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項121に記載の使用。
【請求項123】
制御放出組成物がさらに第2の治療薬を含む、請求項118に記載の使用。
【請求項124】
第2の治療薬が、バルプロ酸、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、ヒドロキシ尿素、アクラルビシン、クアンゾリン、テトラサイクリン誘導体、アミノ配糖体、インドプロフェン、クレアチン、リルゾール及びカルニチンからなる群から選択される、請求項123に記載の使用。
【請求項125】
4−フェニル酪酸塩がフェニル酪酸ナトリウムである、請求項118に記載の使用。
【請求項126】
制御放出組成物が経口投与される、請求項118に記載の使用。
【請求項127】
筋萎縮性側索硬化症の治療のための、ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含む、制御放出組成物の使用。
【請求項128】
ポリマーマトリックスが少なくとも1種類の親水性ポリマーを含む、請求項127に記載の使用。
【請求項129】
親水性ポリマーが、セルロース誘導体、非セルロース多糖、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール及びアクリル酸コポリマーからなる群から選択される、請求項128に記載の使用。
【請求項130】
セルロース誘導体が、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシルプロピルセルロースからなる群から選択されるセルロースエーテルである、請求項129に記載の使用。
【請求項131】
セルロースエーテルがヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項130に記載の使用。
【請求項132】
制御放出組成物がさらに第2の治療薬を含む、請求項127に記載の使用。
【請求項133】
第2の治療薬が2−アミノ−6−(トリフルオロメトキシ)ベンゾチアゾールである、請求項127に記載の使用。
【請求項134】
制御放出組成物が経口投与される、請求項127に記載の使用。
【請求項135】
4−フェニル酪酸塩がフェニル酪酸ナトリウムである、請求項127に記載の使用。
【請求項136】
哺乳動物における腫よう性疾患又は障害の治療のための、ポリマーマトリックス(ここで、ポリマーマトリックスはコポリマー、ターポリマー又はポリマーブレンドを含む。)中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含む、制御放出組成物の使用。
【請求項137】
哺乳動物がヒトである、請求項136に記載の使用。
【請求項138】
ポリマーマトリックスがポリマーブレンドを含む、請求項136に記載の使用。
【請求項139】
ポリマーブレンドがヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項138に記載の使用。
【請求項140】
腫よう性疾患又は障害が前立腺癌である、請求項136に記載の使用。
【請求項141】
制御放出組成物がさらに第2の治療薬を含む、請求項136に記載の使用。
【請求項142】
第2の治療薬が、化学療法剤(chemotheraputic agent)、黄体形成ホルモン−放出ホルモン(LH−RH)作動物質及び抗アンドロゲン作動物質からなる群から選択される、請求項141に記載の使用。
【請求項143】
4−フェニル酪酸塩がフェニル酪酸ナトリウムである、請求項136に記載の使用。
【請求項144】
哺乳動物における腫よう性疾患又は障害の治療のための、親水性ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含み、親水性ポリマーが、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシルプロピルセルロースからなる群から選択されるセルロースエーテルである、制御放出組成物の使用。
【請求項145】
哺乳動物がヒトである、請求項144に記載の使用。
【請求項146】
腫よう性疾患又は障害が前立腺癌である、請求項144に記載の使用。
【請求項147】
制御放出組成物が、化学療法剤、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH−RH)作動物質及び抗アンドロゲン剤からなる群から選択される第2の治療薬をさらに含む、請求項144に記載の使用。
【請求項148】
4−フェニル酪酸塩がフェニル酪酸ナトリウムである、請求項144に記載の使用。
【請求項149】
哺乳動物における腫よう性疾患又は障害の治療のための、親水性ポリマーマトリックス中に分散された、4−フェニル酪酸又は薬剤として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグの治療有効量を含み、親水性ポリマーが、非セルロース多糖、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール及びアクリル酸コポリマーからなる群から選択される、制御放出組成物の使用。
【請求項150】
哺乳動物がヒトである、請求項149に記載の使用。
【請求項151】
腫よう性疾患が前立腺癌である、請求項149に記載の使用。
【請求項152】
制御放出組成物が、化学療法剤、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH−RH)作動物質及び抗アンドロゲン剤からなる群から選択される第2の治療薬をさらに含む、請求項149に記載の使用。
3. 4−フェニル酪酸塩がフェニル酪酸ナトリウムである、請求項149に記載の使用。

【公表番号】特表2008−511611(P2008−511611A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529047(P2007−529047)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【国際出願番号】PCT/IB2005/004062
【国際公開番号】WO2006/059237
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(507063263)ルナメツド・インコーポレーテツド (1)
【Fターム(参考)】