説明

治療的処置

アテローム性動脈硬化症の予防または処置のためのおよび心臓血管イベントの予防のための、カンデサルタン(candesartan)およびロスバスタチン(rosuvastatin)を含む組合せが記載されている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、カンデサルタン(candesartan)およびロスバスタチン(rosuvastatin)を含む組合せに関する。
本発明は、更に、前述の組合せを含む医薬組成物に関する。本発明は、更に、アテローム性動脈硬化症の予防または処置における、本明細書中の前述の組合せの使用に関する。
【0002】
アテローム性動脈硬化症は、動脈内に不規則に分布する脂質沈着を引き起こす複雑な病理学的過程によって媒介される状態であり、冠状動脈性心疾患への主な要因である。したがって、アテローム性動脈硬化症の減少は、心臓血管イベント(event)、例えば、心筋梗塞、アンギナの悪化、心停止、脳卒中、うっ血性心不全および心臓血管死の数を減少させるための主な標的である。
【0003】
異常脂肪血症、特に、低密度リポタンパク質(LDL)の増加した血漿レベルは、アテローム性動脈硬化症の主な危険因子の一つである。臨床研究は、スタチンとして一般的に知られている3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル補酵素A(HMG CoA)レダクターゼ阻害剤で血漿LDLレベルを減少させることが、心臓血管イベントの危険を一層少なくするということを示した。
【0004】
レニン−アンギオテンシン系(RAS)の活性化は、アテローム性動脈硬化症の別の重要な危険因子と考えられうる。アンギオテンシン(II)(A(II))の形成でのRASの活性化と、A(II)受容体の活性化は、アテローム発生、アテローム斑破裂、心筋虚血性機能不全およびうっ血性心不全に関係していた(Singh and Mehta, Arch Intern Med, 2003, vol 163, 1296-1304)。
【0005】
国際特許出願WO95/26188号は、場合により、HMGCoAレダクターゼ阻害剤と組み合わせた、A(II)受容体遮断薬でのアテローム性動脈硬化症の処置を開示している。国際特許出願WO01/76573号は、リストの中にアテローム性動脈硬化症がある状態の予防または進行遅延のための、A(II)アンタゴニスト、ACE(アンギオテンシン変換酵素)阻害剤およびHMGCoAレダクターゼ阻害剤の内の少なくとも二つの組合せの使用を開示している。
【0006】
本発明者は、驚くべきことに、A(II)アンタゴニストであるカンデサルタンと、HMG CoAレダクターゼ阻害剤であるロスバスタチンの組合せが、アテローム性動脈硬化症の減少において共力作用(synergic effect)を有するということを発見した。この共力作用は、RASに関与する多数の炎症性メディエーター(例えば、CD40、メタロプロテイナーゼ(MMP))の発現の共力的阻害および/または(内皮細胞上の酸化LDLの受容体である)受容体LOX−1の発現の阻害によって生じると考えられる。その共力作用は、アテローム発生におけるRASと異常脂肪血症との間のクロストークについて強力な証拠を与える。
【0007】
MMPの活性は、それらの組織インヒビター(TIMP)によって in-vivo で調節されうるということが理解されるであろう。本発明者は、更に、TIMP−1およびTIMP−2の発現が、高コレステロール食によってアップレギュレーションされ、そしてカンデサルタンおよびロスバスタチンの組合せによって著しく減衰するということを示した。これらデータは、MMPとTIMPとの間の平衡が、高コレステロール食によって変化するという概念、およびこの不均衡は、A(II)アンタゴニストおよび脂質低下薬(lipid-lowering agent)の組合せによって「正常化(normalized)」することができるという概念を信頼させる。
【0008】
本発明の一つの側面において、アテローム性動脈硬化症の予防または処置のための、カンデサルタンまたはその薬学的に許容しうる塩およびロスバスタチンまたはその薬学的に許容しうる塩を含む組合せを提供する。
【0009】
本発明の一つの側面において、心臓血管イベントの予防のための、カンデサルタンまたはその薬学的に許容しうる塩およびロスバスタチンまたはその薬学的に許容しうる塩を含む組合せを提供する。
【0010】
このような組合せは、これらメディエーター(mediator)に関連した他の疾患、例えば、(心臓、脳、腎、肺および肝への)虚血再灌流障害、放射線誘発損傷、熱傷および末梢血管疾患などの炎症性の疾患または状態の処置または予防にも有用でありうる。
【0011】
カンデサルタンは、好適には、カンデサルタンの形であってよいし、またはカンデサルタン・シレキセチル(candesartan cilexetil)というプロドラッグ形であってよい。これらの形は、ヒドロクロロチアジド(例えば、Atacand PlusTMとして市販の)のような利尿薬などの追加の薬剤と一緒に製剤化することができる。
【0012】
本明細書中でカンデサルタンに言及する場合、これには、カンデサルタンおよびカンデサルタン・シレキセチル双方が含まれる。
ロスバスタチンのカルシウム塩は、ロスバスタチンカルシウムと称されることがありうるが、好ましくは、本発明のいろいろな側面において用いられる。
【0013】
概して、薬学的に許容しうる塩には、メタンスルホン酸塩、トシラート、α−グリセロリン酸、フマル酸塩、塩酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩および(あまり好ましくはないが)臭化水素酸塩などの酸付加塩が含まれる。薬学的に許容しうる塩には、概して、リン酸および硫酸で形成される塩も含まれる。薬学的に許容しうる塩には、概して、塩基塩であって、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム;アルカリ土類金属塩、例えば、カルシウムまたはマグネシウム;有機アミン塩、例えば、トリエチルアミン、モルホリン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N−ジベンジルエチルアミン、トリス−(2−ヒドロキシエチル)アミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアンモニウム、N−メチルd−グルカミン;およびリシンのようなアミノ酸などのものが含まれる。荷電した官能基の数および陽イオンまたは陰イオンの原子価に依存して、1個より多くの陽イオンまたは陰イオンが存在してよい。
【0014】
本明細書中で、「組合せ」という用語が用いられる場合、これは、同時の、別々のまたは逐次的な投与を意味するということは理解されるはずである。本発明の一つの側面において、「組合せ」は、同時投与を意味する。本発明の別の側面において、「組合せ」は、別々の投与を意味する。本発明のもう一つの側面において、「組合せ」は、逐次的投与を意味する。投与が、逐次的または別々である場合、二番目の成分を投与する場合の遅れは、双方の薬剤が、その組合せの共力作用を生じるように体内に存在するようにあるべきである。
【0015】
本発明のもう一つの側面において、アテローム性動脈硬化症の予防または処置に用いるための医薬組成物であって、カンデサルタンまたはその薬学的に許容しうる塩およびロスバスタチンまたはその薬学的に許容しうる塩を、薬学的に許容しうる希釈剤または担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0016】
本発明のもう一つの側面において、心臓血管イベントの予防またはその危険の減少に用いるための医薬組成物であって、カンデサルタンまたはその薬学的に許容しうる塩およびロスバスタチンまたはその薬学的に許容しうる塩を、薬学的に許容しうる希釈剤または担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0017】
本明細書中に記載の組成物は、経口投与に適する形で、例えば、錠剤またはカプセル剤として;非経口注射(静脈内、皮下、筋肉内、脈管内または注入を含めた)には、例えば、滅菌液剤、懸濁剤または乳剤として;局所投与には、例えば、軟膏剤またはクリーム剤として;直腸投与には、例えば、坐剤としてあってよいし、または投与経路は、腫瘍中への直接注射、または限局送達または局部送達によってよい。本発明の他の態様において、組合せ処置の化合物は、内視鏡的に、気管内に、病変内に、経皮的に、静脈内に、皮下に、腹腔内にまたは腫瘍内に送達されてよい。概して、本明細書中に記載の組成物は、当該技術分野において周知である慣用的な賦形剤または担体を用いて慣用的な方式で製造することができる。
【0018】
錠剤製剤に適する薬学的に許容しうる賦形剤または担体には、例えば、ラクトース、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウムまたは炭酸カルシウムなどの不活性賦形剤;トウモロコシデンプンまたはアルギン酸などの造粒剤および崩壊剤;ゼラチンまたはデンプンなどの結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなどの滑沢剤;4−ヒドロキシ安息香酸エチルまたはプロピルなどの保存剤;およびアスコルビン酸などの酸化防止剤が含まれる。錠剤製剤は、胃腸管内でのそれらの崩壊およびその後の活性成分の吸収を変更するようにかまたはそれらの安定性および/または外観を改善するように、どちらの場合も、当該技術分野において周知の慣用的なコーティング剤および手順を用いてコーティングされていてよいしまたは未コーティングであってよい。
【0019】
経口使用のための組成物は、活性成分が、不活性固体賦形剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合されているゼラチン硬カプセル剤の形であってよいし、または活性成分が、ラッカセイ油、流動パラフィンまたはオリーブ油などの油または水と混合されているゼラチン軟カプセル剤としてあってよい。
【0020】
カンデサルタンは、「AtacandTM」および「Atacand PlusTM」として商業的に入手可能である。ロスバスタチンカルシウムは、「CrestorTM」として商業的に入手可能である。本発明に適する製剤には、商業的に入手可能であるものが含まれる。
【0021】
組合せの各々の成分の適する投薬量は、市販の商品のものである。或いは、それら成分間の共力作用が、用いられる一方または双方の成分のより少ない投薬量を可能にすることがありうる。例えば、4mg、8mg、16mg、32mgの用量または160mgまでの用量のカンデサルタンを、80mg、40mg、20mg、10mg、5mgまたは2.5mgの用量のロスバスタチンと組み合わせて用いることができる。カンデサルタンの用量のいずれか一つを、ロスバスタチンのいずれか適する用量と組み合わせることができる。
【0022】
一つの側面において、80mgのロスバスタチンが用いられる。別の側面において、40mgのロスバスタチンが用いられる。もう一つの側面において、20mgのロスバスタチンが用いられる。もう一つの側面において、10mgのロスバスタチンが用いられる。もう一つの側面において、5mgのロスバスタチンが用いられる。もう一つの側面において、2.5mgのロスバスタチンが用いられる。
【0023】
一つの側面において、約64〜128mgなどの32〜160mg、例えば、約64〜96mgなどの64〜112mgのカンデサルタンが用いられる。好都合には、約72mgのカンデサルタンが用いられる。別の側面において、32mgのカンデサルタンが用いられる。もう一つの側面において、16mgのカンデサルタンが用いられる。もう一つの側面において、8mgのカンデサルタンが用いられる。もう一つの側面において、4mgのカンデサルタンが用いられる。
【0024】
本発明による医薬組成物には、カンデサルタンまたはその薬学的に許容しうる塩およびロスバスタチンまたはその薬学的に許容しうる塩、および薬学的に許容しうる賦形剤または担体を含む組成物が含まれるということは理解されるであろう。例えば、このような組成物は、好都合には、単一経口製剤中で、アテローム性動脈硬化症の予防または処置における同時投与のための本発明の治療的組合せ製品を提供する。
【0025】
好ましくは、その組合せの二つの成分は、双方とも経口投与される。
好ましくは、その組合せの二つの成分は、単一経口製剤として投与される。
好ましくは、その組合せは、1日1回投与用に製剤化される。
【0026】
好都合には、その組合せは、単一の錠剤またはカプセル剤として製剤化される。
本明細書中の前記の投薬量およびスケジュールは、具体的な病状および患者の全身状態によって異なることがありうる。例えば、毒性を減少させるために、組合せ処置の成分の上述の用量を減少させることが必要であるまたは望まれることがありうる。投薬量およびスケジュールは、本発明の組合せ処置に加えて、一つまたはそれを超える追加の化学療法薬が用いられる場合も、異なることがありうる。スケジュール作成は、いずれか特定の患者を処置している医療の実務家が、職業上の技術および知識を用いて決定することができる。
【0027】
本発明による医薬組成物には、更に、カンデサルタンまたはその薬学的に許容しうる塩および薬学的に許容しうる賦形剤または担体を含む第一組成物と、ロスバスタチンまたはその薬学的に許容しうる塩および薬学的に許容しうる賦形剤または担体を含む第二組成物を含む別々の組成物が含まれる。このような組成物は、好都合には、アテローム性動脈硬化症の共力的予防または処置における逐次的なまたは別々の投与のための本発明の治療的組合せを提供するが、それら別々の組成物は、同時に投与することもできる。
【0028】
本発明の別の側面において、アテローム性動脈硬化症の予防または処置用の薬剤として用いるための、カンデサルタンまたはその薬学的に許容しうる塩およびロスバスタチンまたはその薬学的に許容しうる塩を含む組合せを提供する。
【0029】
本発明の別の側面において、心臓血管イベントの予防用の薬剤として用いるための、カンデサルタンまたはその薬学的に許容しうる塩およびロスバスタチンまたはその薬学的に許容しうる塩を含む組合せを提供する。
【0030】
本発明の別の側面において、薬剤の製造に用いるための、カンデサルタンまたはその薬学的に許容しうる塩およびロスバスタチンまたはその薬学的に許容しうる塩を含む組合せを提供する。
【0031】
本発明の別の側面において、アテローム性動脈硬化症の予防または処置用の薬剤の製造に用いるための、カンデサルタンまたはその薬学的に許容しうる塩およびロスバスタチンまたはその薬学的に許容しうる塩を含む組合せを提供する。
【0032】
本発明の別の側面において、心臓血管イベントの予防用の薬剤の製造に用いるための、カンデサルタンまたはその薬学的に許容しうる塩およびロスバスタチンまたはその薬学的に許容しうる塩を含む組合せを提供する。
【0033】
本発明のもう一つの側面において、ヒトなどの温血動物のアテローム性動脈硬化症を予防するまたは処置する方法であって、カンデサルタンまたはその薬学的に許容しうる塩およびロスバスタチンまたはその薬学的に許容しうる塩の組合せを投与することを含む方法を提供する。
【0034】
本発明のもう一つの側面において、ヒトなどの温血動物の心臓血管イベントを予防する方法であって、カンデサルタンまたはその薬学的に許容しうる塩およびロスバスタチンまたはその薬学的に許容しうる塩の組合せを投与することを含む方法を提供する。
【0035】
本発明のもう一つの側面により、アテローム性動脈硬化症の予防または処置に用いるためのキットであって、カンデサルタンまたはその薬学的に許容しうる塩およびロスバスタチンまたはその薬学的に許容しうる塩の組合せを、場合により、取扱い説明書と一緒に含むキットを提供する。
【0036】
本発明のもう一つの側面により、アテローム性動脈硬化症の予防または処置に用いるためのキットであって、
(a)第一単位剤形のカンデサルタン;
(b)第二単位剤形のロスバスタチン;および
(c)それら第一および第二剤形を含有するための容器手段;そして場合により、
(d)取扱い説明書
を含むキットを提供する。
【0037】
本発明の別の側面により、CD40および/またはメタロプロテイナーゼ(MMP)の発現を阻害する方法であって、カンデサルタンまたはその薬学的に許容しうる塩およびロスバスタチンまたはその薬学的に許容しうる塩の組合せを投与することによる方法を提供する。
【0038】
具体的なメタロプロテイナーゼは、MMP−1、MMP−2およびMMP−9である。
本発明の別の側面により、CD40および/またはメタロプロテイナーゼ(MMP)の発現の阻害によってアテローム性動脈硬化症患者を処置する方法であって、CD40および/またはメタロプロテイナーゼ(MMP)の発現の阻害に適する量のカンデサルタンまたはその薬学的に許容しうる塩およびロスバスタチンまたはその薬学的に許容しうる塩の組合せを投与することによる方法を提供する。
【0039】
本発明のもう一つの側面により、MMPとTIMPSとの間の平衡を常態化する方法であって、一定量のカンデサルタンまたはその薬学的に許容しうる塩およびロスバスタチンまたはその薬学的に許容しうる塩の組合せの投与による方法を提供する。
【0040】
本発明の別の側面により、LOX−1の発現を阻害する方法であって、カンデサルタンまたはその薬学的に許容しうる塩およびロスバスタチンまたはその薬学的に許容しうる塩の組合せを投与することによる方法を提供する。
【0041】
本発明の別の側面により、LOX−1の発現の阻害によってアテローム性動脈硬化症患者を処置する方法であって、LOX−1の発現の阻害に適する量のカンデサルタンまたはその薬学的に許容しうる塩およびロスバスタチンまたはその薬学的に許容しうる塩の組合せを投与することによる方法を提供する。
【0042】
材料および方法
動物モデル
5つがいのC57BL/6Jマウスおよび3つがいのホモ接合アポEノックアウトマウス(C57BL/6Jバックグラウンドで)を、Jackson Laboratories(Bar Harbor, ME)より入手した。それらを、兄弟姉妹交配によって飼育し、そして6:00AM〜6:00PMまで照明され且つ21℃で保持された室中に収容した。C57BL/6Jマウス(n=10)は、全研究期間を普通食(regular diet)で継続した。アポEノックアウトマウスは、4群に分けた。1群(n=10)被験動物には、高コレステロール食(1%コレステロール)単独を、6週令以降12週間与え;2群(n=10)被験動物には、カンデサルタン(1mg/kg/d)を含む高コレステロール食を、6週令以降12週間与え;3群(n=10)被験動物には、ロスバスタチン(1mg/kg/d)を含む高コレステロール食を、6週令以降12週間与え;4群(n=10)被験動物には、カンデサルタン(1mg/kg/d)およびロスバスタチン(1mg/kg/d)を含む高コレステロール食を、6週令以降12週間与えた。
【0043】
12週処置の最後に、それらマウスを屠殺し、下記の研究を行った。実験手順は全て、Institutional Animal Care and Usage Committee of University of Arkansas for Medical Sciences によって承認されたプロトコールにしたがって行った。
【0044】
アテローム性動脈硬化症斑の定量分析
12週処置の最後に、各群からの5匹のマウスを安楽死させ、大動脈を周囲組織から分離した。外膜脂肪組織の除去後、大動脈を、大動脈弓から腸骨分岐へと縦に開き、10%ホルマリン中で24時間固定した。次に、それら大動脈を、70%アルコール中で簡単にすすぎ洗浄し、スダンIV溶液で15分間染色し、80%アルコール中で20分間差別化し、そして流水で1時間洗浄した(Russell L. Techniques for studying atherosclerotic lesion, Lab Invest. 1958; 7:42-47)。大動脈を検鏡板に固定し、そして解剖顕微鏡に接続されたカメラで、それらの写真を撮った。それら画像は、ソフトウェア(Image Pro Plus, Media Cybernetics)によって分析した。
【0045】
RNA製造およびRT−PCRによる分析
12週処置の最後に、各群からの5匹のマウスを安楽死させ、大動脈(大動脈弓から腸骨分岐まで)を周囲組織から分離し、ドライアイス上で貯蔵した。各々の大動脈を、4部分に切断し、その二つを用いて、初期に記載されたような(27)ワンステップの酸・グアニジニウムチオシアネート・フェノール・クロロホルム法(single-step acid-guanidinium thiocyanate-phenol-chloroform method)で、全RNAを抽出した。1マイクログラムの全RNAを、オリゴdT(Promega, Madison, WI, U.S.A.)および Maloney ネズミ白血病ウイルス(M−MLV)逆転写(Promega)で、cDNA中に42℃で1時間逆転写させた。2マイクロリットルの逆転写(RT)材料を、マウスLOX−1、CD40またはMMP(MMP−1、−2、−9)に特異的なプライマー対および Taq DNAポリメラーゼ(Promega)で増幅させた。マウスLOX−1については、順プライマー:5’−TTACTCTCCATGGTGGTGCC−3’、逆プライマー:5’−AGCTTCTTCTGCTTGTTGCC−3’を用いた。30サイクルのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を、94℃40秒間(変性)、55℃1分間(アニーリング)、および72℃1分間(伸長)で行った。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)産物のサイズは、193塩基対であった。マウスCD40については、順プライマー5’−GTTTAAAGTCCCGGATGCGA−3’および逆プライマー5’−CTCAAGGCTATGCTGTCTGT−3’を用いた。35サイクルのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を、94℃1分間(変性)、55℃1分間(アニーリング)、および72℃1分間(伸長)で行った。PCR産物のサイズは、408塩基対であった。マウスMMP−1については、順プライマー5’−GGACTCTCCCATTCTTAATGA T−3’および逆プライマー5’−CCTCTTTCTGGATAACATCATCA AC−3’を用いた。マウスMMP−2については、順プライマー5’−ATCAAGGGGATCCAGGAGC−3’および逆プライマー5’−GCAGCGATGAAG ATGATAG−3’を用いた。マウスMMP−9については、順プライマー5’−AGTTTGGTGTCGCGGAGCAC−3’および逆プライマー5’−TACATGAGCGCTTCCGGCAC−3’を用いた。全てのMMPについて、35サイクルのPCRを、94℃1分間(変性)、58℃1分間(アニーリング)、および75℃1分間(伸長)で行った。PCR産物のサイズは、それぞれ、627塩基対、718塩基対および753塩基対であった。マウスβアクチンに特異的なプライマー対を、ハウスキーピング遺伝子として用いた(順プライマー:5’−TTCTACAATGAGCTGCGTTG−3’、逆プライマー:5’−CACTGTGTTGGCATAGAGGTC−3’)。30サイクルを、94℃30秒間(変性)、55℃1分間(アニーリング)、および72℃1分間(伸長)で用いた。PCR産物は、560塩基対であった。逆転写PCR(RT−PCR)で増幅された試料を、1.5%アガロースゲル上において臭化エチジウムを用いて可視化した。
【0046】
タンパク質製造およびウェスタンブロットによる分析
各々のマウス大動脈を、4部分に切断した。それらの二つを用いて、RNAを抽出し、そして残り二つを用いて、前に記載されたように(14)タンパク質を抽出した。簡単にいうと、大動脈組織を、溶解緩衝液中で均一化し且つ溶解させた後、4000rpmにおいて4℃で10分間遠心分離した。10%SDS−PAGEにより、大動脈からの溶解産物タンパク質(20μg/列)を分離し、ニトロセルロースメンブランに移した。遮断溶液(5%脱脂乳,Sigma)中でインキュベーション後、メンブランを、1:750希釈のマウスLOX−1への単クローン性抗体;1:500希釈のマウスCD40への多クローン性抗体(Santa Cruz);1μg/ml希釈のマウスMMP−1への単クローン性抗体(Oncogene);1μg/ml希釈のマウスMMP−2への単クローン性抗体(Oncogene);1μg/ml希釈のマウスMMP−9への単クローン性抗体(Oncogene);1:500希釈のマウスTIMP−1への多クローン性抗体(Santa Cruz);1:500希釈のマウスTIMP−2への多クローン性抗体(Santa Cruz);または1:5000希釈のマウスβアクチンへの単クローン性抗体(Sigma)と一緒に4℃で一晩インキュベートした。メンブランを洗浄後、1:5000希釈の特異的二次抗体(Amersham Life Science)と一緒に室温で2時間インキュベートし、それらメンブランを洗浄し、そしてECLシステム(Amersham Life Science)で検出した。タンパク質バンドの相対強度は、Scan-gel-it ソフトウェアによって分析した(Li DY, Zhang YC, Sawamura T, Mehta JL. Circ Res. 1999; 84:1043-1049)。
【0047】
データ分析
データは全て、二重反復試験試料の平均である。データは、平均±SDとして表されている。統計的有意性は、独立データ群の中の多数の比較で決定したが、ここにおいて、ANOVAおよびF検定は、有意差の存在を示した。P値<0.05を、有意とみなした。
【0048】
結果
カンデサルタンおよびロスバスタチンの共力的抗アテローム性動脈硬化症作用
対照マウス(普通食を与えられたC57BL/6Jマウス)と比較したところ、高コレステロール食を与えられたアポEノックアウトマウスは、広範囲にわたるアテローム性動脈硬化症を発症した(対照マウスに対してP<0.01)。カンデサルタンもロスバスタチンも、単独では、アテローム性動脈硬化症の程度を減少させたが(高コレステロール食単独に対してp<0.05)、その組合せは、アテローム性動脈硬化症をはるかに大きく減少させた(カンデサルタンまたはロスバスタチン単独+高コレステロール食に対してP<0.05)。図1は、それぞれの実験結果と、異なった被験動物群でのアテローム性動脈硬化症の程度(平均±SD)を示している。
【0049】
カンデサルタンおよびロスバスタチンは、単独で、アテローム性動脈硬化症を、それぞれ約35%および25%減少させた。その組合せは、アテローム性動脈硬化症を70%減少させ、共力作用を示した。この作用は、図2にグラフで示されている。
【0050】
LOX−1発現に及ぼすカンデサルタンおよびロスバスタチンの共力作用
対照C57BL/6Jマウスにおいて、LOX−1の発現(mRNAおよびタンパク質)は少なかった。対照的に、LOX−1発現(mRNAおよびタンパク質)は、アポEノックアウトマウスにおいて高コレステロール食で著しく増加した(対照マウスに対してP<0.01)。カンデサルタンもロスバスタチンも、単独では、LOX−1発現(mRNAおよびタンパク質)を、大きくはないが減少させた(高コレステロール食単独に対してP<0.05)。カンデサルタンおよびロスバスタチンの組合せは、アポEノックアウトマウスにおいて、LOX−1のアップレギュレーション(mRNAおよびタンパク質)への劇的な阻害作用を有した(高コレステロール食単独に対してP<0.01)。
【0051】
CD40発現に及ぼすカンデサルタンおよびロスバスタチンの共力作用
対照C57BL/6Jマウスでの発現と比較したところ、CD40発現(mRNAおよびタンパク質)は、高コレステロール食を与えられたアポEノックアウトマウスにおいて著しく増加した(対照マウスに対してP<0.01)。カンデサルタンおよびロスバスタチンの単独処置は、CD40発現を僅かに減少させたが(高コレステロール食単独に対してP<0.05)、カンデサルタンおよびロスバスタチンの組合せは、アポEノックアウトマウスにおいて、CD40のアップレギュレーション(mRNAおよびタンパク質)への劇的な阻害作用を有した(高コレステロール食単独に対してP<0.01)。
【0052】
MMP発現に及ぼすカンデサルタンおよびロスバスタチンの共力作用
対照C57BL/6Jマウスでの発現と比較したところ、MMP−1、−2および−9の発現(mRNAおよびタンパク質)は、高コレステロール食を与えられたアポEノックアウトマウスにおいて著しく増加した(対照マウスに対してP<0.01)。カンデサルタンもロスバスタチンも、単独では、MMP−1、−2および−9の発現(mRNAおよびタンパク質)を、大きくはないが減少させた(高コレステロール食単独に対してP<0.05)。カンデサルタンおよびロスバスタチンの組合せは、それらの発現への劇的な阻害作用を有した(高コレステロール食単独に対してP<0.01)。
【0053】
TIMP発現に及ぼすカンデサルタンおよびロスバスタチンの作用
TIMP−1およびTIMP−2タンパク質発現も、アポEノックアウトマウスにおいて、高コレステロール食で増加したが(対照マウスに対してP<0.01)、その増加は、MMPの場合より少なかった。カンデサルタンもロスバスタチンも、単独では、TIMP−1およびTIMP−2の発現を僅かに減少させたが(高コレステロール食単独に対してP<0.05)、カンデサルタンおよびロスバスタチンの組合せは、それらの発現への一層大きい阻害作用を有した(高コレステロール食単独に対してP<0.01,カンデサルタンまたはロスバスタチンを含む高コレステロール食に対してP<0.05)。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】
【図2】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アテローム性動脈硬化症の予防または処置のための、カンデサルタン(candesartan)またはその薬学的に許容しうる塩およびロスバスタチン(rosuvastatin)またはその薬学的に許容しうる塩を含む組合せ。
【請求項2】
アテローム性動脈硬化症の予防または処置に用いるための医薬組成物であって、請求項1に記載の組合せを、薬学的に許容しうる希釈剤または担体と一緒に含む医薬組成物。
【請求項3】
心臓血管イベントの予防に用いるための医薬組成物であって、請求項1に記載の組合せを、薬学的に許容しうる希釈剤または担体と一緒に含む医薬組成物。
【請求項4】
アテローム性動脈硬化症の予防または処置用の薬剤の製造に用いるための、請求項1に記載の組合せ。
【請求項5】
心臓血管イベントの予防用の薬剤の製造に用いるための、請求項1に記載の組合せ。
【請求項6】
アテローム性動脈硬化症の予防または処置用の薬剤として用いるための、請求項1に記載の組合せ。
【請求項7】
心臓血管イベントの予防用の薬剤として用いるための、請求項1に記載の組合せ。
【請求項8】
ヒトなどの温血動物のアテローム性動脈硬化症を予防するまたは処置する方法であって、請求項1に記載の組合せを投与することを含む方法。
【請求項9】
ヒトなどの温血動物の心臓血管イベントを予防する方法であって、請求項1に記載の組合せを投与することを含む方法。
【請求項10】
アテローム性動脈硬化症の予防または処置に用いるためのキットであって、請求項1に記載の組合せを、場合により、取扱い説明書と一緒に含むキット。
【請求項11】
カンデサルタンが、カンデサルタン・シレキセチル(candesartan cilexetil)の形である、請求項1に記載の組合せ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−506720(P2007−506720A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527488(P2006−527488)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004120
【国際公開番号】WO2005/030215
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(300022113)アストラゼネカ・ユーケイ・リミテッド (39)
【氏名又は名称原語表記】AstraZeneca UK Limited
【住所又は居所原語表記】15 Stanhope Gate, London W1K 1LN, United Kingdom
【Fターム(参考)】