説明

波長変換用ガラス部材の製造方法

【課題】蛍光体の劣化を抑制しながら、耐久性に優れた波長変換用ガラス部材を簡易な方法により製造することができる波長変換用ガラス部材の製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス素材の表面に蛍光体を供給する。蛍光体が供給されたガラス素材を成形型で加圧成形し、ガラス素材と蛍光体とを一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は波長変換用ガラス部材の製造方法に関し、特に、光源からの光の少なくとも一部の波長を変換するための蛍光体を有する波長変換用ガラス部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白色発光素子の1種である白色発光ダイオード(以下、白色LEDともいう)は、低消費電力、小型軽量、発熱が少ない、水銀フリー、光量の調節が容易などといった優れた特徴を備えていることから、白熱電球、蛍光ランプ、高圧放電ランプなどを代替可能な次世代省エネルギー型照明光源として期待されている。
【0003】
LEDを用いて白色光を発光させる方法として、(1)3色以上のLEDチップを組み合わせて白色光を得る方法(例えば、特許文献1参照)や、(2)青色LEDチップ又は近紫外LEDチップと、蛍光体とを組み合わせて白色光を得る方法(例えば、特許文献2、3参照)が知られている。このうち、(1)の方法は各色LEDチップの発光強度のバランスを取るのが困難であることから、(2)のようにLEDチップと蛍光体とを組み合わせて白色光を得る方法が注目されている。
【0004】
特許文献2、3には、LEDチップからの光の波長を変換するための蛍光体を、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の樹脂材料に分散させて固定する構成が記載されている。しかしながら、このような樹脂材料は、LEDチップからの光や、LEDチップ及び蛍光体の発熱などによって劣化が進行し易く、長期使用に耐えうるだけの耐久性を得ることができないという問題があった。特に、車のヘッドライト用LEDのように単位面積当たりの明るさを要求される場合には、蛍光体を分散させた樹脂材料の劣化が顕著であり問題となっていた。
【0005】
そのため、樹脂材料に代えて、より耐久性に優れるガラスを用いて蛍光体を固定する方法の開発が望まれている。しかし、溶融ガラス中に蛍光体を混練する方法では、蛍光体が長時間にわたって高温の溶融ガラス中におかれることになるため、高温による分解や溶融ガラスの成分との反応が進行して蛍光体が著しく劣化してしまう。このような課題に対して、蛍光体の劣化を抑制するため、所定成分のガラス粉末と蛍光体粉末とを混合して焼結させることによりガラス中に蛍光体を分散させる方法が提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−45206号公報
【特許文献2】特開平10−242513号公報
【特許文献3】特開2002−314142号公報
【特許文献4】特開2003−258308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献4に記載の方法では、使用できるガラスの種類が限定される上、工程が非常に複雑になるという問題があった。また、焼結の際に蛍光体が少なからず劣化してしまうという問題もあった。
【0008】
本発明は上記のような技術的課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、蛍光体の劣化を抑制しながら、耐久性に優れた波長変換用ガラス部材を簡易な方法により製造することができる波長変換用ガラス部材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有するものである。
【0010】
1.光源からの光の少なくとも一部の波長を変換するための蛍光体を有する波長変換用ガラス部材の製造方法であって、
ガラス素材の表面に蛍光体を供給する工程と、
前記蛍光体が供給された前記ガラス素材を成形型で加圧成形し、前記ガラス素材と前記蛍光体とを一体化する工程と、を有することを特徴とする波長変換用ガラス部材の製造方法。
【0011】
2.前記ガラス素材は前記成形型に滴下された溶融ガラス滴であることを特徴とする前記1に記載の波長変換用ガラス部材の製造方法。
【0012】
3.前記蛍光体は、発光する光の波長が異なる複数種の蛍光体からなることを特徴とする前記1又は2に記載の波長変換用ガラス部材の製造方法。
【0013】
4.第1の波長の光を発光する第1の蛍光体を含む層と、第2の波長の光を発光する第2の蛍光体を含む層とを、前記ガラス素材の表面に積層させて供給することを特徴とする前記3に記載の波長変換用ガラス部材の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法によれば、ガラス素材の表面に蛍光体を供給した後、蛍光体が供給されたガラス素材を加圧成形してガラス素材と蛍光体とを一体化するため、蛍光体が高温のガラスと接触している時間が短く、蛍光体の劣化を十分に抑制することができる。更に、加圧成形によってガラスと蛍光体との境界部に両者が混じり合った領域が形成されるため、蛍光体を強固に固定することができる。従って、蛍光体の劣化を抑制しながら、耐久性に優れた波長変換用ガラス部材を簡易な方法により製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】波長変換用ガラス部材を備えた白色LEDを模式的に示す断面図である。
【図2】波長変換用ガラス部材の製造方法を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態の各工程を模式的に示す図(前半)である。
【図4】本実施形態の各工程を模式的に示す図(後半)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図1〜図4を参照しつつ詳細に説明するが、本発明は該実施の形態に限られるものではない。
【0017】
図1は、白色LED10を模式的に示す断面図である。白色LED10は、基板14の上に配置されたLEDチップ12と、本実施形態の方法で製造された波長変換用ガラス部材13とを備えている。
【0018】
LEDチップ12は青色LEDチップでもよいし、紫外又は近紫外LEDチップでもよい。波長変換用ガラス部材13はLEDチップ12を囲むように配置され、ガラス層131と、その表面に形成された蛍光体層132とを有している。ここでは、波長変換用ガラス部材13が半球形状の場合を例に挙げて図示しているが、これに限定されるものではない。例えば、両面とも平面の平板形状でもよいし、いわゆる砲弾形状でもよい。また、波長変換用ガラス部材13の表面は凸面でもよいし、凹面や平面でもよい。凸面や凹面の場合は、球面でもよいし、非球面成分を有する形状でもよい。波長変換用ガラス部材13はガラス素材を加圧成形して製造するため、容易に種々の形状とすることができる。
【0019】
波長変換用ガラス部材13は、後述するように表面に蛍光体を供給されたガラス素材を加圧成形することで製造されるため、ガラス層131と蛍光体層132の境界部には両者が混じり合った領域が存在している。そのため、蛍光体層132はガラス層131に強固に固定されており、優れた耐久性を備えている。蛍光体層132はガラス層131の両面に設けてもよいし、何れか一方の面のみに設けてもよい。蛍光体層132をガラス層131の両面に設ける場合は、ガラス素材の両面に蛍光体を供給して加圧成形する。また、蛍光体層132をガラス層131の何れか一方の面のみに設ける場合には、ガラス素材の何れか一方の表面のみに蛍光体を供給して加圧成形する。
【0020】
次に、波長変換用ガラス部材13の製造方法について、図2〜図4を参照しながら説明する。図2は波長変換用ガラス部材13の製造方法の例を示すフローチャートであり、図3及び図4は本実施形態の各工程を模式的に示す図である。
【0021】
なお、ここでは、ガラス素材として溶融ガラス滴を用いる場合を例に挙げて説明するが、加圧成形のためのガラス素材は溶融ガラス滴に限定されるものではなく、所定の体積の溶融ガラスを固化したものを用いることもできる。また、固化したガラスを、球や平板など所望の形状に加工したものを用いることも好ましい。ガラス素材として固化したガラスを用いる場合は、成形型と共に、加圧成形が可能な温度まで加熱して用いればよい。一方、ガラス素材として溶融ガラス滴を用いる場合は、比較的低温の成形型で溶融ガラス滴を受け、そのまま加圧成形しながら冷却・固化することでガラス成形体が得られるため、非常に短時間で効率よく製造できる利点がある。
【0022】
以下、本実施形態の波長変換用ガラス部材の製造方法の一例として、ガラス素材として溶融ガラス滴を用いる場合を例に挙げて、図2に示すフローチャートに従い各工程について順を追って説明する。
【0023】
先ず、成形型である下型21及び上型22をそれぞれ所定の温度に加熱する(工程S110)(図3(a)参照)。下型21及び上型22は、図示しない加熱手段によって所定温度に加熱できるように構成されている。加熱手段としては、公知の加熱手段を適宜選択して用いることができる。例えば、被加熱部材の内部に埋め込んで使用するカートリッジヒータや、被加熱部材の外側に接触させて使用するシート状のヒータ、赤外線加熱装置、高周波誘導加熱装置等を用いることができる。
【0024】
所定の温度とは、ガラスや蛍光体の種類等に応じて適宜選択すればよい。一般的に、下型21や上型22の温度が低すぎるとガラス層131と蛍光体層132の付着力が低下し易くなり、また、高い形状精度を得ることが困難になってくる。逆に、必要以上に温度を高くしすぎることは、蛍光体の劣化が進行し易くなり、また、下型21及び上型22の寿命が短くなり易い。これらの観点から、通常は、使用するガラスのガラス転移温度をTgとしたとき、Tg−100℃からTg+100℃程度の温度に設定することが好ましい。下型21と上型22の加熱温度は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0025】
下型21及び上型22の加熱温度は工程毎に変化させてもよいが、工程S170でガラス成形体(波長変換用ガラス部材)を回収するまでの間、制御温度を一定に保っておくことで、高い製造効率を確保することができる。また、下型21及び上型22の制御温度を一定に保ったまま、複数のガラス成形体を繰り返し製造することもできる。従って、1つのガラス成形体を製造する毎に下型21及び上型22の昇温と冷却を繰り返す必要はなく、極めて短時間で効率よく光学素子を製造することができる。ここで、下型21及び上型22の制御温度を一定に保つというのは、下型21及び上型22を加熱するための温度制御における目標設定温度を一定に保つという意味であり、各工程実施中において、溶融ガラス滴31との接触等による温度変動を防止しなければならないという意味ではない。
【0026】
下型21の成形面211、及び、上型22の成形面221は、予め製造する波長変換用ガラス部材の形状に対応した所定の形状に精密加工しておく。それにより、高い形状精度を有する波長変換用ガラス部材を容易に製造することができる。また、波長変換用ガラス部材の表面は、溶融ガラス滴31が成形面211、221と接触して急冷されることにより形成されるため、成形面211、221よりも平滑な面を得ることができる。十分に平滑な表面を得るという観点からは、成形面211、221の算術平均粗さRaを0.2μm以下とすることが好ましい。なお、算術平均粗さRaはJIS B 0601:2001において定義される粗さパラメータである。
【0027】
下型21及び上型22の材質は、耐熱合金(ステンレス等)、炭化タングステンを主成分とする超硬材料、各種セラミックス(炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム等)、カーボンを含む複合材料など、ガラス成形体を製造するための成形型として公知の材質の中から適宜選択して用いることができる。下型21及び上型22を同一の材質で構成してもよいし、異なる材質で構成してもよい。
【0028】
また、下型21や上型22の表面には、蛍光体やガラスとの離型性を向上させるために被覆層を設けておくことも好ましい。例えば、種々の金属(クロム、アルミニウム、チタン、白金等)、窒化物(窒化クロム、窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化硼素等)、酸化物(酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化チタン等)等を用いることができる。被覆層の成膜方法に制限はなく、公知の成膜方法の中から適宜選択して用いればよい。例えば、真空蒸着、スパッタ、CVD等が挙げられる。
【0029】
次に、下型21を滴下位置に移動し(工程S120)、下型21に溶融ガラス滴31を滴下する(工程S130)(図3(b)、(c)参照)。
【0030】
下型21は図示しない駆動手段により、滴下ノズル23の下方で溶融ガラス滴31を受けるための位置(滴下位置)と、上型22と対向して溶融ガラス滴31を加圧成形するための位置(加圧位置)との間で移動可能に構成されている。滴下位置への移動は、溶融ガラス滴31を滴下する前であれば、下型21や上型22の加熱(工程S110)の前であっても後であってもよい。
【0031】
溶融ガラス滴31の滴下は、溶融ガラスを収容する溶融槽(不図示)に接続されたパイプ状の滴下ノズル23を所定温度に加熱することによって行う。滴下ノズル23をヒータ24で所定温度に加熱すると、溶融ガラスは自重によって滴下ノズル23の先端部に供給され、表面張力によって液滴状に溜まる。滴下ノズル23の先端部に溜まった溶融ガラスが一定の質量になると、重力によって滴下ノズル23から自然に分離し、溶融ガラス滴31となって下方に落下する。
【0032】
滴下ノズル23から滴下する溶融ガラス滴31の質量は、滴下ノズル23の先端部の外径などによって調整可能であり、ガラスの種類等によるが、0.1g〜2g程度の溶融ガラス滴31を滴下させることができる。重力によって滴下ノズル23から分離させる方法の他、溶融ガラスを加圧して押し出す方法や、気流や振動等の外力を加えて分離させる方法でもよい。また、滴下ノズル23から滴下した溶融ガラス滴31を、一旦、貫通細孔を設けた部材に衝突させ、衝突した溶融ガラス滴31の一部を、貫通細孔を通過させることによって、微小化された溶融ガラス滴を下型21に滴下してもよい。このような方法を用いることによって、例えば0.01gといった微小な溶融ガラス滴を得ることができるため、滴下ノズル23から滴下する溶融ガラス滴31をそのまま下型21で受ける場合よりも、微小なガラス成形体の製造が可能となる。
【0033】
使用できるガラスの種類に特に制限はなく、公知のガラスを用途に応じて選択して用いることができる。例えば、ホウケイ酸塩ガラス、ケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、ランタン系ガラス等の光学ガラスが挙げられる。
【0034】
次に、溶融ガラス滴31の上に蛍光体33を供給する(工程S140)(図4(a)参照)。
【0035】
蛍光体33は白色LEDの用途や種類に応じて、適宜選択して用いればよい。LEDチップ12として青色LEDチップを用いる場合は、例えば、青色光を黄色光に波長変換する(青色光で励起され黄色光を発光する)蛍光体を用いて、青色LED+黄色蛍光体という構成にすることで白色光を得ることができる。2種類以上の蛍光体を用いて、例えば、青色LED+黄色蛍光体+赤色蛍光体という構成や、青色LED+緑色蛍光体+赤色蛍光体という構成にすることもできる。また、LEDチップ12として紫外又は近紫外LEDチップを用いる場合は、青色蛍光体+黄色蛍光体という構成や、青色蛍光体+緑色蛍光体+赤色蛍光体という構成にすることで白色光を得ることができる。
【0036】
好適な蛍光体33として、YAG系蛍光体、シリケート系蛍光体、ナイトライド系蛍光体、オキシナイトライド系蛍光体、サルファイド系蛍光体、チオガレート系蛍光体、アルミネート系蛍光体などが挙げられる。
【0037】
蛍光体33の供給方法にも特に制限はない。蛍光体33を粉体の状態で供給してもよいが、飛散を防止し、供給量を安定させる観点からは、蛍光体33を液体やゲル状のバインダに分散させた状態で供給することが好ましい。この際、使用するバインダの沸点が、蛍光体33を供給する溶融ガラス滴31の温度よりも低いと、ガラス成形体に不要なバインダが残留しないという利点がある。例えば、エタノール、アセトンなどの有機溶媒が好適である。また、溶融ガラス滴31に蛍光体33を供給する際、必ずしも溶融ガラス滴31の表面に均一な厚みで供給する必要はなく、例えば、中心部に液滴状に供給してもよい。中心部に液滴状に供給された蛍光体33は加圧成形によって溶融ガラス滴31と共に変形するため、ガラス層131の表面に均一な厚みの蛍光体層132が形成される。
【0038】
また、供給する蛍光体は1種類でもよいし、発光する波長の異なる複数種の蛍光体33を使用してもよい。複数種の蛍光体33を適宜選択して使用することで、照明用として好まれる演色性の高い白色光を得ることができる。
【0039】
複数種の蛍光体33を用いる場合、複数の蛍光体を混合して分散させたバインダを供給してもよいし、第1の波長の光を発光する第1の蛍光体を含む層と、第2の波長の光を発光する第2の蛍光体を含む層とを、溶融ガラス滴31の上に積層させて供給してもよい。一般に、複数種の蛍光体を同時に使用する場合、第1の蛍光体からの発光が別の第2の蛍光体を励起する、いわゆる多段励起による損失が問題となりやすい。しかし、第1の蛍光体を含む層と、第2の蛍光体を含む層とを積層させて供給することで、このような多段励起による損失を減少させることができる。多段励起による損失をより効果的に減少させる観点からは、光源となるLEDチップからの光が先に到達する側に発光波長が長い方の蛍光体層132が形成され、後から到達する側に発光波長が短い方の蛍光体層132が形成されるように蛍光体33を供給することがより好ましい。
【0040】
なお、溶融ガラス滴31の代わりに、固化したガラスをガラス素材として用いる場合には、ガラス素材の両面に蛍光体33を供給してもよい。両面に蛍光体33が供給されたガラス素材を加圧成形して、ガラス層131の両面に蛍光体層132を設けることにより、それぞれの蛍光体層132の厚みを薄くできるため、蛍光体33をより強固に固定でき耐久性が向上するという利点がある。また、複数種の蛍光体33を用いる場合には、第1の波長の光を発光する第1の蛍光体と、第2の波長の光を発光する第2の蛍光体とを、ガラス成形体の別々の面にそれぞれ供給して、ガラス層131の両面にそれぞれの蛍光体層132を設ける構成とすることで、上述のような多段励起による損失を減少させることができる。
【0041】
次に、下型21を加圧位置に移動し(工程S150)、上型22を下方に移動して溶融ガラス滴31を加圧成形する(工程S160)(図4(b)参照)。溶融ガラス滴31は、下型21や上型22と接触することによって急速に冷却され、固化してガラス成形体32となる。この際、溶融ガラス滴31に供給されていた蛍光体33はガラス成形体32の表面に固定される。加圧を開始してからガラスが固化するまでの時間は、ガラスの種類やサイズ等によるが、通常は数秒〜数十秒の範囲である。このように、本実施形態の方法によれば、蛍光体33が高温の溶融ガラスと接触する時間を非常に短くすることができるため、蛍光体33の劣化を十分に抑制することができる。また、加圧成形によってガラス層131と蛍光体層132との境界部に両者が混じり合った領域が形成されるため、蛍光体33を強固に固定することができる。
【0042】
溶融ガラス滴31を加圧するために加える荷重は一定であってもよいし、時間的に変化させてもよい。荷重の大きさは、製造するガラス成形体32のサイズ等に応じて適宜設定すればよい。通常は、数百〜数千Nの範囲で設定すればよい。また、上型22を上下移動させる駆動手段に特に制限はなく、エアシリンダ、油圧シリンダ、サーボモータ等の公知の駆動手段を適宜選択して用いることができる。
【0043】
なお、図4(b)では、上型22のみを加圧方向に移動して溶融ガラス滴31の加圧成形を行っているが、このような構成に限定されるものではなく、上型22は固定しておいて下型21のみを加圧方向に移動して加圧成形を行ってもよいし、下型21と上型22の両方を移動して加圧成形を行ってもよい。
【0044】
次に、上型22を上方に移動して加圧を解除し、固化したガラス成形体32を回収する(工程S170)(図4(c)参照)。ガラス成形体32の回収は、例えば、真空吸着を利用した離型装置25を用いて行えばよい。ガラス成形体32を回収した後、引き続いてガラス成形体32の製造を行う場合は、下型21を再び滴下位置に移動し(工程S120)、以降の工程を繰り返せばよい。
【0045】
なお、本実施形態の波長変換用ガラス部材の製造方法は、ここで説明した以外の別の工程を含んでいてもよい。例えば、ガラス成形体32を回収する前にガラス成形体32の形状を検査する工程や、ガラス成形体32を回収した後に下型21や上型22をクリーニングする工程を設けることも好ましい。
【0046】
本実施形態の製造方法により製造されたガラス成形体32は、そのまま白色LED用の波長変換用ガラス部材として用いることができる。また、ガラス成形体32に、外径加工やアニール処理などの後処理を行ってから、波長変換用ガラス部材として用いることもできる。
【符号の説明】
【0047】
10 白色LED
12 LEDチップ
13 波長変換用ガラス部材
131 ガラス層
132 蛍光体層
14 基板
21 下型
211 成形面
22 上型
221 成形面
23 滴下ノズル
31 溶融ガラス滴
32 ガラス成形体
33 蛍光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光の少なくとも一部の波長を変換するための蛍光体を有する波長変換用ガラス部材の製造方法であって、
ガラス素材の表面に蛍光体を供給する工程と、
前記蛍光体が供給された前記ガラス素材を成形型で加圧成形し、前記ガラス素材と前記蛍光体とを一体化する工程と、を有することを特徴とする波長変換用ガラス部材の製造方法。
【請求項2】
前記ガラス素材は前記成形型に滴下された溶融ガラス滴であることを特徴とする請求項1に記載の波長変換用ガラス部材の製造方法。
【請求項3】
前記蛍光体は、発光する光の波長が異なる複数種の蛍光体からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の波長変換用ガラス部材の製造方法。
【請求項4】
第1の波長の光を発光する第1の蛍光体を含む層と、第2の波長の光を発光する第2の蛍光体を含む層とを、前記ガラス素材の表面に積層させて供給することを特徴とする請求項3に記載の波長変換用ガラス部材の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−280537(P2010−280537A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135925(P2009−135925)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】