説明

波長選択スイッチ用光学ユニットおよび波長選択スイッチ

【課題】波長選択スイッチの筐体内の光学系の光路を筐体外部から調整することが可能な波長選択スイッチを提供する。
【解決手段】本発明に係る波長選択スイッチ用光学ユニット101は、入力ポート110aと、入力ポート110aから入力された入力光を波長分散させる分散部112と、分散部112により分散される光を集光する集光素子113と、出力ポート110bと、分散部112により分散される光をシフトさせる光路補正部と、光路補正部によるシフト量を変化させる調整部121と、入力ポート110a、分散部112、集光素子113、出力ポート110b及び光路補正部を密閉する筐体118とを備え、筐体118は、集光素子113により集光された光が入射する位置に光学的に透明な透明部119を有し、調整部121は、筐体118の外部に配置され、光路補正部は、調整部121により筐体118の外部から制御可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長選択スイッチ用光学ユニットおよび波長選択スイッチに関するものである。
【0002】
波長選択スイッチとは、周波数に基づいて光を分光して出力する機能を有するものである。波長選択スイッチは、例えば、リングネットワークを接続するノードに備えられ、複数のリングネットワークを接続して、メトロネットワークを構成する。このとき、波長選択スイッチは、リングネットワークを構成する光ファイバから入射された光を、周波数に基づいて経路を切り替えるように動作する。
【背景技術】
【0003】
従来、波長選択スイッチとして、分散性素子、複数の光学部品、及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)アレイ(ミラーアレイ)が筐体内部に密閉した状態で収容される波長選択スイッチが提案されてきた(例えば、特許文献1参照)。このような波長選択スイッチでは、製造段階で適切に光路調整を行って固定し筐体を密閉すれば、気圧等の変化による屈折率等の変動が回避され、筐体内の光路は適切に維持される。
【0004】
波長選択スイッチは、光ファイバ等により構成される入出力部から入力された波長多重された光を、波長に基づいて分散し、ミラーアレイ(偏向部)を構成する各ミラー素子(偏向素子)に光をそれぞれ入射させ、各ミラー素子を所定の角度に制御して、所望の入出力部から光を出射させる。一般的に、ミラーアレイは、入射光に略垂直な平面でx軸方向に一列に並んだミラー素子により構成される。x軸方向に波長分散された光束がミラー素子上に入射される。各ミラー素子の中心に来る光の波長は、規格によって決められた所定の値に近いことが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−145887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、筐体に対してミラーアレイを接着固定する場合には、接着剤の凝固時にミラーアレイの位置が全体に10μm程度ずれるおそれがある。また、波長選択スイッチに備えられるミラーアレイ等の偏向部は、可動に構成されるので、波長選択スイッチの筐体内部に備えられた他の光学素子と比較して、破損や故障の危険性が高い。したがって、波長選択スイッチの設計にあたって、ミラーアレイ等を筐体の外部に備える構成として、破損や故障の際の交換や修理を容易にすることが考えられる。更には、ミラーアレイ以外の光学系を筐体内に密閉内蔵した波長選択スイッチ用光学ユニットとして設計し、当該波長選択スイッチ用光学ユニットに対して、ミラーアレイ等を着脱可能に取り付けて、波長選択スイッチとして機能させることが考えられる。
【0007】
このような構成では、特許文献1に記載の波長選択スイッチのように、分散性素子、複数の光学部品、及びミラーアレイが、製造時に適切に光路調整された状態で一つの筐体内に密閉されない。すなわち、このような波長選択スイッチは、分散部及び集光のための光学系が筐体に密閉され、ミラーアレイが筐体の外部に取り付けられた構成となる。よって、このような波長選択スイッチにおいて、筐体に密閉された分散部並びに集光のための光学系(以下、分散部及び集光のための光学系を併せて、「筐体内の光学系」と称する)を、筐体外部に備えられたミラーアレイに対して調整することが望まれる。
【0008】
したがって、かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、波長選択スイッチの筐体内の光学系の光路を筐体外部から調整することが可能な波長選択スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明に係る波長選択スイッチ用光学ユニットは、少なくとも一つの入力ポートと、該入力ポートから入力された入力光を波長分散させる分散部と、該分散部により分散される光を集光する集光素子と、少なくとも一つの出力ポートと、前記分散部により分散される光をシフトさせる光路補正部と、前記光路補正部によるシフト量を変化させる調整部と、前記入力ポート、前記分散部、前記集光素子、前記出力ポート及び前記光路補正部を密閉する筐体と、を備え、前記筐体は、前記集光素子により集光された光が入射する位置に光学的に透明な透明部を有し、前記調整部は、前記筐体の外部に配置され、前記光路補正部は、前記調整部により前記筐体の外部から制御可能である。
【0010】
また、本発明に係る波長選択スイッチ用光学ユニットにおいて、前記光路補正部は、前記入力ポートと、前記分散部との間の光路中に配置されることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る波長選択スイッチ用光学ユニットにおいて、前記光路補正部は、前記分散部と、前記透明部との間の光路中に配置されることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る波長選択スイッチ用光学ユニットにおいて、前記光路補正部は、光路補正用の光学素子と、該光学素子を駆動するアクチュエータを備え、前記調整部は、前記アクチュエータを駆動して、前記シフト量を調整することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る波長選択スイッチ用光学ユニットにおいて、前記分散部は、透過型の分散素子と、反射素子とを備えるリットマン・メトカルフ構造からなり、前記反射素子は、前記光路補正部を構成し、前記調整部は、前記反射素子を変位させることによって、前記シフト量を調整することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る波長選択スイッチ用光学ユニットにおいて、前記光路補正部は、電気光学素子を備え、前記調整部は、前記電気光学素子に印加する電圧を制御して、前記シフト量を調整することが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る波長選択スイッチ用光学ユニットにおいて、前記筐体は少なくとも一部に非磁性体部を備え、前記光路補正部は、光路補正用の光学素子と、該光学素子に取り付けられた磁性体又は磁石を備え、前記調整部は、前記非磁性体部を介して前記磁性体又は磁石と協働して、磁力により前記光学素子を変位させて、前記シフト量を調整する磁石又は磁性体を備えることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る波長選択スイッチ用光学ユニットにおいて、前記光路補正用の光学素子は、平行平板を備えることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る波長選択スイッチ用光学ユニットにおいて、前記筐体は前記光路補正部を、紫外線硬化型接着剤により、当該筐体に固定するための透明窓を有することが好ましい。
【0018】
上記目的を達成する本発明に係る波長選択スイッチは、上述のいずれか1つの波長選択スイッチ用光学ユニットと、前記筐体の外側に取り付けられ、前記集光素子により集光される光を偏向する偏向部と、を備える。
【0019】
また、本発明に係る波長選択スイッチにおいて、前記光路補正部は、前記分散部により分散される光の前記偏向部に対する入射位置をシフトさせることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、波長選択スイッチの筐体内の光学系の光路を筐体外部から調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】第1実施形態による波長選択スイッチの概略構成を示す平面図である。
【図1B】第1実施形態による波長選択スイッチの概略構成を説明する側面図である。
【図2A】第1実施形態による波長選択スイッチの光路補正部の概略構成を説明するための図である。
【図2B】第1実施形態による波長選択スイッチの光路補正部の概略構成を説明するための図である。
【図2C】第1実施形態による光路補正部の機能を説明するための図である。
【図3A】第2実施形態による波長選択スイッチの概略構成を示す平面図である。
【図3B】第2実施形態による波長選択スイッチの概略構成を示す側面図である。
【図3C】第2実施形態による光路補正部の機能を説明するための図である。
【図4A】第3実施形態による波長選択スイッチの概略構成を示す平面図である。
【図4B】第3実施形態による波長選択スイッチの概略構成を説明する側面図である。
【図5A】第3実施形態による光路補正部の概略構成を説明するための図である。
【図5B】第3実施形態による光路補正部の概略構成を説明するための図である。
【図5C】第3実施形態による光路補正部の機能を説明するための図である。
【図6】第4実施形態による波長選択スイッチの概略構成を示す平面図である。
【図7A】第4実施形態による光路補正部の概略構成を説明するための図である。
【図7B】第4実施形態による光路補正部の概略構成を説明するための図である。
【図7C】第4実施形態による光路補正部の概略構成を説明するための図である。
【図8A】第4実施形態による波長選択スイッチの変形例を示す図である。
【図8B】図9Aに示す変形例による光路補正部の概略構成を説明するための図である。
【図9】本発明による波長選択スイッチにおける光束調整方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明による波長選択スイッチ及び波長選択スイッチ用光学ユニットの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1Aは、本発明の第1実施形態による波長選択スイッチ100の概略構成を示す平面図である。図1Bは、本実施形態による波長選択スイッチ100の概略構成を説明する側面図である。図1A及び図1Bでは、明瞭のために、各光束を中心線で示し、分散部112によって分散された少なくとも1つ以上の光束についても、代表的な波長の光束を中心線で示した。
【0024】
本実施形態による波長選択スイッチ100は、光ファイバアレイ109、入出力ポート110、レンズアレイ111、第1集光素子113a、第2集光素子113b、分散部112、第3集光素子113c、ミラー部114、補正板116、アクチュエータ117、並びに、支持体122を密閉内蔵すると共に窓119を有する筐体118、及び調整部121を備える波長選択スイッチ用光学ユニット101と、偏向部115を内蔵する偏向部筐体120とを備える。
【0025】
光ファイバアレイ109は、少なくとも2以上のファイバから構成されている。そして、光ファイバアレイ109は、筐体118に設けられた貫通孔を介して、筐体118の外部から内部に延出している。ここで、筐体118に形成された光ファイバアレイ109を通すための貫通孔と、光ファイバアレイ109とは、隙間がない状態で、配置されている。このため、光ファイバアレイ109が筐体118の外部から内部に延びているにもかかわらず、筐体118の内部は、密閉状態が保たれている。
【0026】
入出力ポート110は、少なくとも1つの入力ポート110aと、少なくとも1つの出力ポート110bを備える。入力ポート110aは、光ファイバアレイ109からの波長多重光信号を波長選択スイッチ100の光学系に入力する。出力ポート110bは、波長選択スイッチ100の光学系からの光信号を光ファイバアレイ109に出力する。
【0027】
なお、本願においては、光ファイバアレイ109の先端近傍を、特に入力ポート110aまたは出力ポート110bとして説明する。すなわち、入力ポート110aまたは出力ポート110bは、光ファイバアレイ109と、別の部材とは限らない。また、図1aにおいて、入出力ポート110の部分を、光ファイバアレイ109の部分に比して、太径にしているが、実際には、このように径に差があるとは限らない。
【0028】
また、入出力ポート110を構成するポートの数は、例えば2以上とし、より多数の入出力ポートを設けることができるが、図1Bにおいては、説明の都合から、代表的な入出力ポートを4つのみ図示している。また、入出力ポート110を構成するポートの数に応じて、光ファイバアレイ109を構成する光ファイバの数も変更する。また、何れの入出力ポートを入力用または出力用として用いるかは、適宜設計することが可能である。すなわち、入出力ポート一つのみを入力用として用いて、それ以外の入出力ポートを出力用に用いてもよいし、入力用のポートと、出力用のポートと、を複数ずつ設けても良い。
【0029】
レンズアレイ111は、入出力ポート110からの光束を平行光にするとともに偏向部115から戻ってくる光束を入出力ポート110に集光するための、球面または、非球面形状の、複数のマイクロレンズを備える。レンズアレイ111を構成する各マイクロレンズは、入出力ポート110を構成する各ポートと対になっている。
【0030】
第1集光素子113aは、レンズアレイ111の各マイクロレンズからの光束を1点に集光する、とともに偏向部115から戻ってくる光束をレンズアレイ111の各マイクロレンズに分配する。
【0031】
補正板116は、第1集光素子113aと第2集光素子113bとの間に配置されている。補正板116は、アクチュエータ117により、駆動されて、光路を補正する。補正板116とアクチュエータ117によって、光路補正部が構成される。光路補正部は、分散部112により分散される光をシフトさせる。具体的には、筐体118外部に配置された偏向部115に入射する光束の、偏向部115に対する集光位置をシフトさせる。光路補正部の詳細については、後述する。
【0032】
第2集光素子113bは、第1集光素子113aにより1点に集光された光束を平行光にする、とともに偏向部115から戻ってくる光束を1点に集光する。
【0033】
分散部112は、第2集光素子113bにより平行にされた光束を、波長毎に分散(波長分散)する、とともに偏向部115から戻ってくる光束の進行方向を同一にし、第2集光素子113bに入力する。分散部112は、例えば、透過型の分散素子(グレーティング)で構成される。また、分散部112は、分散素子と、ミラーとを組み合わせた、リットマン−メトカルフ型の構成でもよい。さらに、この実施形態では透過型の分散素子を用いたが、これに限られるものではなく、反射型回折格子、Grism、スーパープリズム等を用いることもできる。
【0034】
第3集光素子113cは、分散部112により分散される光束を偏向部115上で集光する。また、第3集光素子113cは、偏向部115からの戻ってくる光束をコリメートして、分散部112に入射させる。
【0035】
ミラー部114は、集光素子113cからの光を反射させて、窓119を経て偏向部115に導くものである。なお、集光素子113cからの光の進行方向上に偏向部115が設けられていないため、ミラー部114が必要になるが、本実施形態はこの態様に限定されるわけではない。例えば、集光素子113cからの光の進行方向上に偏向部115が設けられている場合には、ミラー部114を省略することができる。
【0036】
偏向部115は、第3集光素子113cにより集光された少なくとも1つ以上の光束を、それぞれ異なる角度で偏向させる1つ以上の偏向素子を有し、第3集光素子113cからの光束を入射した角度とは異なる角度で反射し、第3集光素子113cへ光束を戻す。
【0037】
偏向部115は、例えば、MEMSミラーアレイや反射型の液晶表示パネルであるLOCS(Liquid crystal on silicon)である。偏向部115がMEMSミラーアレイである場合、偏向部115は、波長に対応する複数のマイクロミラーがアレイ状に配置されているものである。各マイクロミラーは、ケーブル(図示しない)からの電力供給により駆動され、これにより、マイクロミラー自体の傾きを変え、波長毎に光の進行方向を変更する。偏向部115の備える偏向素子の数は、特に限定されない。
【0038】
第1、2、3集光素子113a、b、cは、それぞれ偏向部115に向かう光束と、偏向部115から戻る光束が通過する。すなわち、第1、2、3集光素子113a、b、cは、通過する方向によって、光束を集光させる集光素子、または1点からの光束を平行光にするコリメータ素子として機能するが、ここではすべて、集光素子と呼んでいる。
【0039】
筐体118は、入出力ポート110、レンズアレイ111、分散部112、第1、2、3集光素子113a、b、c、ミラー部114、光路補正部(補正板116及びアクチュエータ117)、その他の筐体内の配置された素子を密閉して内蔵する。光ファイバアレイ109及びアクチュエータ117に電源供給する導線は、例えば、シール部材を介して筐体118の外に出る。これにより、筐体118の内部の密閉性を保持しつつ、筐体118の外部から光路補正部を調整することが可能となる。
【0040】
窓119は、第3集光素子113cにより集光された光が入射する位置に配置された光学的に透明な透明部を構成する。具体的には、窓119は筐体118の一部に形成された透明素材からなり、ミラー部114によって直下方向に反射された光を透過させる。窓119は、例えば、石英により構成される。また、窓119に代えて、透明素材からなるプレートを筐体118に設けてもよい。この場合、プレート上には、筐体118に配置される部材を取り付けることができる。
【0041】
偏向部筐体120は、偏向部115を内蔵する。偏向部筐体120と、筐体118は別体とし、偏向部筐体120を筐体118に後付け可能である。また、偏向部筐体120は、筐体118に対して着脱可能であり、仮に、偏向部115が故障した時には、利用者は、偏向部筐体120を交換することが可能である。
【0042】
なお、筐体118および偏向部筐体120は、接着剤等により固定されていてもよく、あるいは、ねじ等の固定部材で固定されていてもよい。さらに、筐体118および/または偏向部材120には、必要に応じて、取り付け部材を設けていても良い。
【0043】
調整部121は、光路補正部(補正板116及びアクチュエータ117)によるシフト量を変化させる。具体的には、調整部121は、アクチュエータ117を駆動して、分散部112により分散される光の偏向部115に対する入射位置のシフト量を調整する。アクチュエータ117がピエゾ素子により構成される場合、調整部121は、ピエゾ素子に印加する電圧を制御することで、ピエゾ素子を伸縮させる。ピエゾ素子の収縮により、補正板116を所望の回転角で回転させて、偏向部115に対する光の入射位置を、所望量シフトさせる。
【0044】
以上に説明したように、入力ポート110aからの光束は、レンズアレイ111、第1集光素子113a、補正板116、第2集光素子113b、分散部112、第3集光素子113c、ミラー部114、窓119を順次通過して、偏向部115で反射して、全く上記と逆の経路を通過し、出力ポート110bに戻る。
【0045】
次に、図2Aおよび図2Bを参照して光路補正部の概略構成について説明する。図2Aは、光路補正部の概略構成を説明するための図である。図2Aは、光路補正部を図1Aにおけるa方向から見た図である。上述の通り、光路補正部は、補正板116とアクチュエータ117によって、構成される。補正板116は、例えば、平行平板によって構成される。平行平板は、比較的安価である。補正板116は、支持体122に支持されている。支持体122は、筐体118に固定された回転軸123について回転可能である。アクチュエータ117は、回転軸123とは反対側の支持体122の端部に当接して配置されている。アクチュエータ117は、例えば、ピエゾ素子によって構成される。具体的には、ピエゾ素子は、積層型PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)でありうる。
【0046】
図2Bは、光路補正部の概略構成を説明するための図である。図2Bは、光路補正部を図1Aにおけるb方向から見た図である。支持体122に当接して弾性体124が配置される。そして、弾性体124に当接してストッパー125が配置される。調整部121によってアクチュエータ117が駆動されることで、支持体122が回転軸123に対して回転移動する。アクチュエータ117がピエゾ素子により構成される場合、ピエゾ素子に印加する電圧が変更され、ピエゾ素子が電圧に応じて伸縮して支持体122を回転軸123に対して回転移動させる。支持体122の回転に応じて、補正板116の傾きが変化する。
【0047】
ここで、補正板116の回転により、偏向部115に入射する光束の集光位置がシフトすることを、図2Cを参照して説明する。図2Cは、第1実施形態による光路補正部の機能を説明するための図である。図2Cにおいて、分散部112で分散された光束は、特定波長の1光束のみで、偏向部115に向かう光束を示している。ミラー部114は、省略している。補正板116を回転することにより、第2集光素子113bに入射する光束が発散する点Aのみかけの位置が、点線で示すように、シフトする。シフトする量dxは補正板116の屈折率をn、厚さをt、回転角度θとすると、
dx = t θ / n
で近似できる。
【0048】
すなわち、シフト量dxは補正板116の回転角度にほぼ比例する。第2集光素子113bと第3集光素子113cの焦点距離が等しいと、光束が第3集光素子113cで集光される点のシフト量は、点Aのシフト量と等しくなる。
【0049】
以上により、補正板116の回転により、第3集光素子113cによる特定波長の光束の集光位置が偏向部115の偏向素子上でシフトすることがわかる。よって、波長選択スイッチ100に入射された波長帯域の光束全体が偏向部115を構成するほとんどの偏向素子上でシフトすることになる。
【0050】
このように、本実施形態による波長選択スイッチ100及び波長選択スイッチ用光学ユニット101は、光路補正部によって、光が偏向部115に入射する位置をシフトさせることができる。そして、光路補正部は、筐体118の外部に設けられた調整部121によってシフト量が調整されるため、波長選択スイッチ100及び波長選択スイッチ用光学ユニット101を組立てて、筐体118に密閉内蔵させた後であっても、筐体内の光学系の光路を調整することができる。したがって、波長選択スイッチ用光学ユニット101又は筐体118に対して、偏向部115を含む偏向部筐体120を外付する場合、接着材の硬化時やねじ止め時に偏向部筐体120が正規の取り付け位置から微動しても、波長選択スイッチ用光学ユニット101の光学系又は筐体118に内蔵された光学系を、偏向部115に合わせて調整することができる。
【0051】
光束調整の具体的な方法には、例えば、以下に記載する方法が挙げられる。波長選択スイッチ用光学ユニット101又は筐体118に対して、偏向部115を内蔵する偏向部筐体120を外付けした後に、一つの出力ポート110bに全波長が入力されるように、偏向部115の偏向素子を傾ける。一つの出力ポート110bから出力された光信号を、光ファイバアレイ109を介して光スペクトルアナライザで観測する。偏向部115の偏向素子は不連続なため、不連続部分の波長の光は戻ってこないので図9に示すような信号が観測される。偏向部115の各偏向素子から戻ってくる光の波長が一つのチャンネルの帯域となる。その帯域の中心の波長を中心波長とする。上述の方法に従って光路補正部によって、光が偏向部115に入射する位置をシフトすると中心波長がシフトする。各チャンネルの中心波長が規格で定まった波長に近くなるように光路補正部の状態を保持する。
【0052】
さらに、本実施形態では、光路補正部は、入出力ポート110と、分散部112との間の光路中に配置されるため、光路補正部に備えられる補正板116の大きさを比較的小さくすることが可能である。これは、光路補正部を分散部112と偏向部115との間の光路に配置し、補正板116によって分散された光をシフトさせる場合とは違い、補正板116の大きさは、複数の分散された光の全てを受光可能な程度に大きくする必要がないからである。補正板116の大きさを比較的小さくすることで、本実施形態に係る波長選択スイッチ100及び波長選択スイッチ用光学ユニット102の小型化に貢献することができる。
【0053】
さらに、本実施形態による波長選択スイッチ100にて、光路補正部は、光路補正用の光学素子である補正板116と、アクチュエータ117を備え、当該アクチュエータ117は筐体118の外部に設けられた調整部121からの電気信号により制御されるので、筐体118内の密閉性を維持しつつ、光路補正部を駆動させることができる。
【0054】
なお、筐体内の光学系にて、第1集光素子113aは、入力光を成形するため径の異なる2つのシリンドリカルレンズにすることも可能である。例えば、2つのシリンドリカルレンズは、入力ポートから入射した光の断面を楕円に成形する。或いは、入力光を成形するためのレンズの形状は、必ずしもシリンドリカルである必要は無く、光の断面を楕円状に成形することができるあらゆるレンズでありうる。
【0055】
(第2実施形態)
図3Aは、本発明の第2実施形態による波長選択スイッチ200の概略構成を示す平面図である。図3Bは、本実施形態による波長選択スイッチ200の概略構成を示す側面図である。
【0056】
本実施形態による波長選択スイッチ200は、光ファイバアレイ209、入出力ポート210、レンズアレイ211、第1集光素子213a、第2集光素子213b、分散素子212a、反射素子212b、反射素子移動部材212c、ミラー部214、並びにアクチュエータ217を密閉内蔵すると共に窓219を有する筐体218、及び調整部221を備える波長選択スイッチ用光学ユニット201と、偏向部215を内蔵する偏向部筐体220とを備える。第1実施形態の構成要素と同一または対応する構成要素については、第1実施形態の参照符号に100を足した数の参照符号を付し、説明を省略する。
【0057】
第1実施形態では、分散部112の前後に1つずつあった2個の集光素子113b、113cを、本実施形態では共通にして、集光素子213bとしている。また、第1実施形態では、分散部112と記載していたが、本実施形態では、分散素子212a、反射素子212b、反射素子移動部材212c、によって分散部212が構成される。そして、入出力ポート210と分散部212の間の光路と、分散部212と偏向部215の間の光路の両方が集光素子213bを通過する構成となっている。
【0058】
本実施形態による波長選択スイッチ200では、分散部212を構成する、透過型の分散素子212aと、反射素子212bは、リットマン・メトカルフ(Littman-Metcalf)構造となるように配置される。反射素子212bは、反射素子移動部材212cに取り付けられている。反射素子移動部材212cに当接してアクチュエータ217が備えられる。アクチュエータ217は、例えば、PZTにより構成され、印加される電圧に応じて伸縮する。図示しないが、反射素子移動部材212cを挟んでアクチュエータ217とは反対側に、弾性体が設けられる。そして、弾性体に当接してストッパー(図示しない)が配置される。
【0059】
本実施形態による波長選択スイッチ200及び波長選択スイッチ用光学ユニット201の調整部221は、アクチュエータ217に印加する電圧を制御する。調整部221により印加された電圧に応じて、アクチュエータ217が駆動し、回転軸(図示しない)を中心として反射素子移動部材212cを回転させる。そして、反射素子移動部材212cの回転により、偏向部215に入射する光束はシフトする。すなわち、本実施形態では、反射素子212b、反射素子移動部材212c、アクチュエータ217が、光路補正部として機能する。
【0060】
ここで、図3Cを参照して、反射素子移動部材212cの回転により、偏向部215に入射する光束がシフトする原理を説明する。入出力ポート210から分散部212までの光路は第1実施形態とほぼ同様なので省略する。図3Cにおいて、反射素子212bから偏向部215に向かう特定の1波長の光束のみを示す。反射素子212bには、特定波長の光束が平行光束として入射した後、入射した光束は、反射される。反射された光束は、分散素子212aで、入出力ポート210から来る光束とは、少し違う角度の方向に偏向される。偏向された光束は、第2集光素子213bに入射し、第2集光素子213bにより、偏向部215を構成する偏向素子の一つに集光される。反射素子移動部材212cが回転することにより、反射素子移動部材212cに固定してある反射素子212bが回転し、第2集光素子213bに入射する光束の入射角度が変化する。第2集光素子213bに入射する光束の入射角度が変化すると、偏向部215を構成する偏向素子上の光束の集光位置が変化する。すなわち、第2集光素子213bによる集光位置のシフト量は、第2集光素子213bに入射する光束角度変化量と第2集光素子213bの焦点距離の積となる。第2集光素子213bに入射する光束角度変化量は、反射素子移動部材212cの回転角の2倍となる。よって、反射素子移動部材212cの回転角に比例した量で、第2集光素子213bによって偏向部215の偏向素子上に集光される集光点はシフトする。
【0061】
本実施形態による波長選択スイッチ200は、リットマン・メトカルフ構造となるように配置された分散素子212a及び反射素子212bを備え、波長選択スイッチ200の筐体218の外部に設けられた調整部221は、反射素子212bを変位させることによって偏向部215に対する光の入射位置をシフトさせる。このため、本実施形態による波長選択スイッチ200は、密閉性を維持しつつ、筐体218の外部から光路補正部を駆動することができる。また、筐体218内の光学系に対して、光路補正用の光学素子を追加する必要がないため、波長選択スイッチ200を構成する部品点数の増加を押さえつつ、光束調整機能を付与することができる。
【0062】
(第3実施形態)
図4Aは本発明の第3実施形態による波長選択スイッチ300の概略構成を示す平面図である。図4Bは、本実施形態による波長選択スイッチ300の概略構成を説明する側面図である。本実施形態による波長選択スイッチ300は、光ファイバアレイ309、入出力ポート310、レンズアレイ311、第1集光素子313a、第1ミラー部314a、第2集光素子313b、温度補正プリズム326、グリズム312、第2ミラー部314b、第3集光素子313c、補正板316、回転軸323、並びに第3ミラー部314cを密閉内蔵すると共に窓319を有する筐体318、及び磁石(図示しない)を保持する保持部327により構成される調整部を備える波長選択スイッチ用光学ユニット301と、偏向部315を内蔵する偏向部筐体320とを備える。第1実施形態と同様の機能を有する構成要素については、第1実施形態における対応する構成要素の参照符号に対して200を加えた数の参照符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0063】
温度補正プリズム326は、入力光を偏向してグリズム312へ出射させるプリズムである。この温度補正プリズム326は、偏向部315からの光の出力ポートに入射する入射角度が、本実施形態による波長選択スイッチ300の使用温度範囲内の温度変化に対してほぼ一定になるように、形状、配置、媒質その他の条件が設定されうる。グリズム312は、プリズムと回折格子とを組み合わせた、分散素子の一種である。本実施形態における光路補正部は、光路補正用の光学素子を構成する補正板316と、磁性体330とを備える。
【0064】
次に、図5Aおよび図5Bを参照して本実施形態に係る波長選択スイッチ300の光路補正部の概略構成について説明する。図5Aは、光路補正部の概略構成を説明するための図である。図5Aは、光路補正部を図4Aにおけるa方向から見た図である。第1実施形態と同様に、補正板316は支持体322に支持されており、例えば、平行平板により構成される。支持体322は、筐体318に固定された回転軸323について回転可能である。ここで、本実施形態では、支持体322に対して回転軸323とは反対側の端部に磁性体330が設けられる。
【0065】
そして、磁性体330の上部付近に、筐体318に非磁性体部329が設けられる。そして、非磁性体部329に設けられた凹部に、光路補正部(補正板316及び磁性体330)による偏向部315に対する光の入射位置のシフト量を調整する調整部を構成する磁石328が配置される。磁石328は、保持部327によって保持される。
【0066】
図5Bは、光路補正部の概略構成を説明するための図であり、光路補正部を図4Aにおけるb方向から見た図である。磁石328の一側面には、弾性部材331が取り付けられる。弾性部材331の他端は、保持部327に取り付けられる。マイクロメータ332を回転することで、磁石328が図示した矢印Xの方向に移動する。磁石328の移動に応じて、補正板316が回転軸323について回転する。補正板316が回転することにより偏向部315に入射する光束がシフトする。
【0067】
ここで、図5Cを参照して、補正板316が回転することにより偏向部315に入射する光束がシフトする説明をする。入出力ポート310から第3集光素子313cまでの光路は第1実施形態とほぼ同様なので省略する。図5Cにおいては、偏向部315に入射する光束は、特定の1波長の光束のみ示している。第3集光素子313cには平行光束が入射し、偏向部315の1つの偏向素子上に集光する。第3集光素子313cと偏向部315の間にある補正板316が、回転すると図からも明らかなように集光位置がシフトする。シフト量dxは補正板316の屈折率をn、厚さをt、回転角をθとすると
dx = t θ / n
で近似でき、シフト量は補正板316の回転角に比例する。よって、補正板316が回転により偏向部315に入射する光束がシフトする。
【0068】
上述したように、本実施形態による波長選択スイッチ300及び波長選択スイッチ用光学ユニット301は、調整部を構成する磁石328を移動させることで、偏向部315に対する光の入射位置がシフトする。このように、本実施形態による波長選択スイッチ300及び波長選択スイッチ用光学ユニット301によれば、筐体318内の密閉性を維持しつつ、光路補正部を駆動させることができる。さらに、本実施形態による波長選択スイッチ300は、磁石328により補正部316を回転させているため、電力の消費を低減することができる。
【0069】
なお、本実施形態による波長選択スイッチ300及び波長選択スイッチ用光学ユニット301では、補正板316は、例えば、平行平板により構成され、磁石328によって変位するように構成されたが、補正板316は、電気光学素子(Electro−Optic Device、以下、EODと称する)によって構成されることもできる。EODとは、印加される電圧に応じて屈折率が変化する素子である。すなわち、EODは、印加された電圧に応じた量だけ、光路をシフトさせる機能を有する。補正板316がEODによって構成される場合、光をEODに対して斜めに入射させるために、補正板316は傾斜して設けられる。また、この場合、回転軸323は不要である。代表的なEODとしては、KTN(タンタル酸ニオブ酸カリウム)、PZT(登録商標)(チタン酸ジルコン酸鉛)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、KTP(KTiOPO)等が挙げられる。
【0070】
補正板316がEODによって構成される場合には、補正板316は、筐体318外部に設けられた調整部と、例えば、導線等で接続される。このとき、調整部は補正板316に印加する電圧を制御して補正板316の屈折率を変化させ、補正板316を通る光の光路を変化させる。これにより、調整部は、偏向部315に対する光の入射位置のシフト量を調整する。このようにして、本実施形態による波長選択スイッチ300及び波長選択スイッチ用光学ユニット301は、密閉性を維持しつつ筐体318内の光路補正部(補正板316)を調整することができる。
【0071】
なお、本実施形態では、光路補正部が磁性体330を、調整部が磁石328をそれぞれ有するものとして説明したが、本発明の思想は、光路補正部と調整部とが磁力により協働することにある。このため、本実施形態による波長選択スイッチにて、光路補正部が磁石を、調整部が磁性体を、それぞれ有するような構成とすることも可能である。また、本実施形態では、温度補正プリズム326を配置したが、必ずしも配置しなくてもよい。また、グリズム312に代えて、第1実施形態で例示した種々の分散部112を用いてもよい。
【0072】
(第4実施形態)
図6は、本発明の第4実施形態による波長選択スイッチ400の概略構成を示す平面図である。筐体418内の構成は、アクチュエータが設けられていないことを除いて、第1実施形態と略同様であるため、第1〜3実施形態の構成要素と同一または対応する構成要素については、第1実施形態の参照符号に300を足した数の参照符号を付し、説明を省略する。ここでは、第1実施形態とは異なる構成要素についてのみ説明する。なお、図示しないが、本実施形態による波長選択スイッチ400は、第1実施形態と共通する種々の光学素子を密閉内蔵すると共に窓(図示しない)を有する筐体418、及び調整部(図示しない)を備える波長選択スイッチ用光学ユニットと、偏光部を内蔵する偏向部筐体(図示しない)とを備える。
【0073】
図7A及び図7Bは、第4実施形態による光路補正部の概略構成を説明するための図である。図7Aは、本実施形態による支持体422の平面図である。図7Bは、光路補正部を図6のa方向から見た図である。支持体422は、上面(補正板416を支持する面の反対側の面)に、磁性体430を備え、接着剤封入部441を有する。接着剤封入部441には、紫外線硬化接着剤442が封入されている。
【0074】
図7Cは、光路補正部を図6のb方向から見た図である。筐体418は、接着剤封入部441の上に透明窓443を備え、磁性体430の上に磁石428を備える。磁石428は、保持部427によって保持される。磁石428による光路補正部の調整機構は、図5A及び図5Bに示した第3実施の形態に係る磁石328及び保持部327と同様の機構に従う。
【0075】
以下、本実施形態による波長選択スイッチ400及び波長選択スイッチ用光学ユニットの光路補正部の固定方法について説明する。まず、上述のように、調整部を構成する磁石428によって、光路補正部を構成する補正板416を所望の角度だけ傾斜させる。そして、透明窓443を介して紫外線照射することで、接着剤封入部441に封入された紫外線硬化接着剤442を硬化させる。このようにして、本実施形態による波長選択スイッチ400及び波長選択スイッチ用光学ユニットは、筐体418の密閉性を維持しつつ、筐体418内の光路補正部を調整し、且つ、調整後の状態で光路補正部を筐体418に固定することができる。
【0076】
さらに、本実施形態おいて、接着剤封入部441に封入する接着剤を熱硬化型接着剤とし、透明窓443を高熱伝導部材に置き換えて、所望の角度だけ補正板416を傾斜させた後に、熱硬化型接着剤を熱により硬化させて、補正板416を所望の傾斜角で固定することも可能である。
【0077】
図8Aは、本発明の第4実施形態による波長選択スイッチの変形例を示す図である。接着剤封入部441に封入する接着剤を、2液硬化型接着剤とする。この2液硬化型接着剤は第1液442a及び第2液442bからなるものとする。第1液442aは、接着剤封入部441内に封入されている。第2液442bは、図8Bに示すように、微小な磁性ビーズ445と、当該磁性ビーズ445の周囲に、第2液442bが吸着された状態で存在する。そして、第2液442bが付着した磁性ビーズ445を、筐体418の外部から接着剤用磁石444で引き付け、図8Aに示す第2液442bのように、筐体418の内壁に固定する。そして、磁石428によって光路補正部を作用させ、補正板416を所望の角度だけ傾斜させた後に、接着剤用磁石444を筐体418からとり外す。すると、接着剤用磁石444によって引き付けられていた磁性ビーズ445が第1液442aの中に落下し、第1液442a及び第2液442bが混合されて、硬化する。
【0078】
本変形例によれば、筐体418内の光学系を上述したような方法により調整した後に、磁性ビーズ及び2液硬化型接着剤を利用して、密閉性を維持しつつ、光束調整した光路補正部を固定することができる。
【0079】
上述したように、本実施形態による波長選択スイッチ400及び波長選択スイッチ用光学ユニットは、光路補正部を接着剤で固定するので、偏向部415の故障による偏向筐体の交換はできないが、偏向部筐体(図示しない)を後付するときの接着剤の硬化時の微動に対して、筐体418に内蔵された光学系を、偏向部415に合わせて調整することができる。光路補正部を接着剤で固定しているので、筐体418外の磁石428を調整後はずすことができる。また、光路補正部を保持する電力を必要としない。また、光路補正部は、接着剤によって強固に固定されているので、外部からの衝撃に対して光路補正部の移動を抑制することができる。
【0080】
なお、第3実施形態と同様に、本実施形態では、光路補正部が磁性体430を、調整部が磁石428をそれぞれ有するものとして説明したが、本発明の思想は、光路補正部と調整部とが磁力により協働することにある。このため、本実施形態による波長選択スイッチにて、光路補正部が磁石を、調整部が磁性体を、それぞれ有するような構成とすることも可能である。
【0081】
このように、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。従って、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0082】
例えば、第1、第4実施形態に示した光学系、第2実施形態に示した光学系、第3実施形態に示した光学系は、それぞれ異なる構成を有するが、各光学系は一例に過ぎず、上述した光路補正部の各構成について何ら限定するものではない。すなわち、第1、第4実施形態に示した光路補正部の構成を、第2又は、第3実施形態に示した光学系に適用することは可能である。反対に、第2、第3実施形態に示した光路補正部の構成を第1、第4、第5実施形態に示した光学系に適用することも可能である。
【0083】
より具体的には、第1実施形態における、筐体118内の各部材の配置において、補正板116をアクチュエータ117により駆動することに代えて、第3実施形態のように、磁性体330等を用いて補正板116を回転させてもよい。また、第2実施形態において、反射素子212bの回転をアクチュエータ217によって駆動することに代えて、第3実施形態にように、磁性体330等を用いて反射素子212bを回転させてもよい。また、光ファイバアレイは、光導波路であってもよい。さらに、第1、2、3、集光素子113a、b、cは、集光作用を奏すればよく、レンズに限らず、集光ミラーや、回折型集光素子等を用いることができる。さらに、光路を折り曲げるための反射ミラーは、必要に応じて配置しても良いし、配置しなくても良い。また、入力ポートから入力される光束が、平行光束であるならば、必ずしも、マイクロレンズアレイ等のコリメート素子により、光束を平行にしなくても構わない。
【符号の説明】
【0084】
100、200、300、400 波長選択スイッチ
101、201、301 波長選択スイッチ用光学ユニット
109、209、309、409 光ファイバアレイ
110、210、310、410 入出力ポート
110a 入力ポート
110b 出力ポート
111、211、311、411 レンズアレイ
112、412 分散部
113a、213a、313a 第1集光素子
113b、213b、313b 第2集光素子
113c、213c、313c 第3集光素子
114 ミラー部
115、215、315 偏向部
116、316、416 補正板
117、217 アクチュエータ
118、218、318 筐体
119、219、319 窓
120、220、320 偏向部筐体
121、221 調整部
122、322 支持体
123、323 回転軸
124 弾性体
125 ストッパー
212a 分散素子
212b 反射素子
212c 反射素素子移動部材
312 グリズム
314a 第1ミラー部
314b 第2ミラー部
326 温度補正プリズム
327、427 保持部
328、428 磁石
330 弾性体
441 接着剤封入部
442 紫外線硬化接着剤
442a 第1液
442b 第2液
443 透明窓
444 接着剤用磁石
445 磁性ビーズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの入力ポートと、
該入力ポートから入力された入力光を波長分散させる分散部と、
該分散部により分散される光を集光する集光素子と、
少なくとも一つの出力ポートと、
前記分散部により分散される光をシフトさせる光路補正部と、
前記光路補正部によるシフト量を変化させる調整部と、
前記入力ポート、前記分散部、前記集光素子、前記出力ポート及び前記光路補正部を密閉する筐体と、を備え、
前記筐体は、前記集光素子により集光された光が入射する位置に光学的に透明な透明部
を有し、
前記調整部は、前記筐体の外部に配置され、前記光路補正部は、前記調整部により前記筐体の外部から制御可能である、
波長選択スイッチ用光学ユニット。
【請求項2】
前記光路補正部は、前記入力ポートと、前記分散部との間の光路中に配置される、請求項1に記載の波長選択スイッチ用光学ユニット。
【請求項3】
前記光路補正部は、前記分散部と前記透明部との間の光路中に配置される、請求項1に記載の波長選択スイッチ用光学ユニット。
【請求項4】
前記光路補正部は、光路補正用の光学素子と、該光学素子を駆動するアクチュエータを備え、
前記調整部は、前記アクチュエータを駆動して、前記シフト量を調整する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の波長選択スイッチ用光学ユニット。
【請求項5】
前記分散部は、透過型の分散素子と、反射素子とを備えるリットマン・メトカルフ構造からなり、
前記反射素子は、前記光路補正部を構成し、
前記調整部は、前記反射素子を変位させることによって、前記シフト量を調整する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の波長選択スイッチ用光学ユニット。
【請求項6】
前記光路補正部は、電気光学素子を備え、
前記調整部は、前記電気光学素子に印加する電圧を制御して、前記シフト量を調整する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の波長選択スイッチ用光学ユニット。
【請求項7】
前記筐体は少なくとも一部が非磁性体部を備え、
前記光路補正部は、光路補正用の光学素子と、該光学素子に取り付けられた磁性体又は磁石を備え、
前記調整部は、前記非磁性体部を介して前記磁性体又は磁石と協働して、磁力により前記光学素子を変位させて、前記シフト量を調整する磁石又は磁性体を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の波長選択スイッチ用光学ユニット。
【請求項8】
前記光路補正用の光学素子は、平行平板を備える、請求項4又は7に記載の波長選択スイッチ用光学ユニット。
【請求項9】
前記筐体は前記光路補正部を、紫外線硬化型接着剤により、当該筐体に固定するための透明窓を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の波長選択スイッチ用光学ユニット。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の波長選択スイッチ用光学ユニットと、
前記筐体の外側に取り付けられ、前記集光素子により集光される光を偏向する偏向部と、
を備えた波長選択スイッチ。
【請求項11】
前記光路補正部は、前記分散部により分散される光の前記偏向部に対する入射位置をシフトさせる、請求項10に記載の波長選択スイッチ。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−181458(P2012−181458A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45713(P2011−45713)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】