説明

波長選択スイッチ

【課題】ビーム径を変化させることなく、透過帯域の拡大を実現することができる波長選択スイッチを提供する。
【解決手段】本発明に係る波長選択スイッチ(500)は、波長多重された光を入射させる少なくとも一つの入力部(501)と、入力部(501)からの光を受光し光を分散させる分散素子(503)と、波長ごとに分散された分散光を集光する集光要素(504)と、集光要素(504)からの分散光を波長ごとに独立に偏向可能な複数の反射光学素子(101)を有する光偏向部材(505)と、光偏向部材(505)によって偏向された分散光を受光する少なくとも一つの出力部(501)と、を備え、複数の反射光学素子(101)の少なくとも一つの分散素子(503)により分散される方向の端部の少なくとも一部に、反射光学素子の中心領域に対して反射率の高い領域を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力される波長多重された光を分散して波長ごとに出力可能な波長選択スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
広透過帯域を実現するには、集光要素による信号光の集光の際の集光度が高いことが要求されてきた。一般に、集光度を高くするには、集光要素へ入射する際の光のビーム径を大きくすれば良い。しかし、ビーム径を大きくすることは装置が大型化することを意味する。
【0003】
特許文献1には、分散素子に入射するビーム径が、分散方向に垂直な方向のビーム径に比べて、分散方向のビーム径が大きくなるようにし、分散方向に垂直な方向に装置が大型化するのを抑制する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−133203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているものは、分散素子入射時における分散方向のビーム径が大きいままであり、この構成では分散方向の各光学素子及び波長選択スイッチ全体の大型化を抑制することができない。
【0006】
本発明は、この点に着目し、簡単かつ安価で軽量コンパクトな構成を維持しながら、ビーム径を変化させることなく、透過帯域の拡大を実現することができる波長選択スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本発明に係る波長選択スイッチは、
波長多重された光を入射させる少なくとも一つの入力部と、
前記入力部からの光を受光し、分散させる分散素子と、
波長ごとに分散された分散光を集光する集光要素と、
前記集光要素からの分散光を、波長ごとに独立に偏向可能な複数の反射光学素子を有する光偏向部材と、
前記光偏向部材によって偏向された分散光を受光する少なくとも一つの出力部と、
を備えた波長選択スイッチであって、
前記反射光学素子の少なくとも一つは反射率分布を有する反射面を有し、
前記反射率分布を有する反射面には、前記分散素子による分散方向における前記反射光学素子の端部の少なくとも一部に、前記反射光学素子の中心領域の反射率に対して反射率の高い領域が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明において、前記中心領域の反射率に対して反射率の高い領域は、
前記分散素子による分散方向における前記反射光学素子の端部から始まり、前記分散素子による分散方向における前記分散光の前記反射光学素子上での像の直径より幅の小さい領域であることを特徴とすることができる。
【0009】
本発明において、前記反射率分布は、前記分散素子による分散方向と垂直な方向において、同じ反射率分布となるように形成されていることを特徴とすることができる。
【0010】
本発明において、前記反射率分布は、前記中心領域から前記分散素子による分散方向における前記反射光学素子の端部に向かうほど反射率が高くなるように形成されていることを特徴とすることができる。
【0011】
本発明において、前記中心領域に対して反射率の高い領域と前記中心領域との間に、前記中心領域に対して反射率の低い領域が形成されていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単かつ安価で軽量コンパクトな構成を維持しながら、ビーム径を変化させることなく、透過帯域の拡大を実現することができる波長選択スイッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る波長選択スイッチのマイクロミラー(反射光学素子)の構成例を説明するための図である。
【図2】同上実施形態の構成を用いたときのマイクロミラーでの反射光量の周波数(波長)特性のシミュレーション結果を示した図である。
【図3】同上実施形態のマイクロミラーの変形例を説明するための図である。
【図4】図3に例示した変形例に対応したマイクロミラーでの反射光量の周波数(波長)特性のシミュレーション結果を示した図である。
【図5】同上実施形態に係る波長選択スイッチの全体構成を概略的に示した斜視図である。
【図6】本発明に係るマイクロミラー面内の反射率分布及び条件式を説明するための図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るマイクロミラー(反射率分布に不連続点を持たず、反射率分布は微分可能な場合の例)の構成例を説明するための図である。
【図8】図7に例示した構成例に対応したマイクロミラーでの反射光量の周波数(波長)特性のシミュレーション結果を示した図である。
【図9】Au膜厚と反射率との関係を例示した図である。
【図10】本発明に係る複数の反射光学素子としてのマイクロミラーのアレイ(MEMSミラーアレイ)の構成例を示す斜視図である。
【図11】本発明に係るマイクロミラー(反射光学素子)への金属反射膜の適用例と、その適用部位に対する膜厚と反射率との関係を示した図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係るマイクロミラー(光が分散される方向に限らず面として広がった局所反射率分布を持つ場合の例)の構成例を説明するための図である。
【図13】第3の実施形態の変形例1のマイクロミラーの構成例を説明するための図である。
【図14】第3の実施形態の変形例2のマイクロミラーの構成例を説明するための図である。
【図15】第3の実施形態の変形例3のマイクロミラーの構成例を説明するための図である。
【図16】第3の実施形態の変形例に対応したマイクロミラーでの反射光量の周波数(波長)特性のシミュレーション結果を示した図である。
【図17】従来の波長選択スイッチのマイクロミラーと透過帯域の関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る波長選択スイッチの実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
<第1の実施形態>
以下、本発明に係る波長選択スイッチの第1の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、全図を通して同一の符号は同一または相当部分を示すものとする。
【0016】
図5に、本実施形態による波長選択スイッチの全体構成を示す。
本実施形態は、いわゆる透過型の波長選択スイッチ500である。波長選択スイッチ500は、複数の光ファイバからなるファイバアレイ501と、マイクロレンズアレイ502と、分散素子503と、レンズ504と、MEMS(MicroElectro Mechanical Systems)モジュールであるMEMSミラーアレイ505と、を備えている。
【0017】
ファイバアレイ501内の各光ファイバとマイクロレンズアレイ502内の各マイクロレンズは対になっている。この対がアレイ状に配置されている。
【0018】
ファイバアレイ501は光の入力部兼出力部として機能する。入力部となるその光ファイバのひとつ(以下、「第1の光ファイバ」という。)から、波長多重された信号光が、分散素子503に向けて出射される。光ファイバから出射した光は、マイクロレンズアレイ502で平行光束に変換される。
【0019】
マイクロレンズアレイ502から出射した光は、分散素子503に入射する。分散素子503は、波長多重光を帯状に分散する。
【0020】
レンズ504は集光要素であって、分散素子503によって分散された光を、光偏向部材であるMEMSミラーアレイ505の波長ごとの所定位置に導く。
【0021】
MEMSモジュールであるMEMSミラーアレイ505は、図10に示すように、分散素子503で帯状に分散された光の波長に対応する複数の反射光学素子としてのマイクロミラー101のアレイ(MEMSミラーアレイ)を有する。
【0022】
マイクロミラー101は、それぞれのマイクロミラー101がローカルのx軸とy軸の周りに回転が可能で、主にy軸に関する回転により、入射した光を入射方向とは異なる方向へ反射する。前記y軸は分散素子503による分散方向と一致するものとする。
【0023】
MEMSミラーアレイ505の複数のマイクロミラー101により、入射方向とは異なるAX方向に反射された光は、レンズ504により分散素子503上に統合され、回折後は再び多波長成分の同一光束となる。
【0024】
これに対して、異なるマイクロミラー101により、入射方向ともAX方向とも異なる方向に反射された光は、レンズ504により分散素子503上にリレーされ、回折されるが、AX方向に反射された光とは統合されない。
これらの光はファイバアレイ501の入力部以外の、異なるファイバに入射する。このファイバは出力部となる。
【0025】
このように、第1の光ファイバから出射した多波長成分の光は、波長ごとにMEMSミラーアレイ505のそれぞれのマイクロミラー101の傾き角により選択的に他のファイバに入射させることができる。
【0026】
次に、本実施形態のマイクロミラー101の構成について、図1を用いて説明する。
図1は、y軸方向に並んだ3つのマイクロミラー101のアレイを抜き出して図示している。
【0027】
本実施形態において、各マイクロミラー101は、中心領域100に対して高い反射率をもつ分散方向のマイクロミラー端部に領域102をもつように構成されている。中心領域100と、領域102と、の境界において、反射率分布は不連続であり、また各々の領域内では反射率は均一となっている(図1(a)下部参照)。ここで、反射率分布とは、マイクロミラーの面内全領域における反射率の位置依存性のことを意味している。領域102のような限られた領域内での反射率の位置依存性に特に注目する場合は、反射率の領域内分布と称することにする。
【0028】
また、各々の領域100、102での反射率の差は、マイクロミラー101の表面に形成されている金属反射膜の膜厚を制御することで実現可能である(図11参照)。
【0029】
マイクロミラー101の金属反射膜に用いる金属としては、例えば、Auを用いることができるが、図9のようにAuの膜厚が80nm以下と薄い場合、膜厚と反射率に正の相関がある。
【0030】
よって、図11のように80nm以下の薄い範囲内でAuの膜厚分布を調整すれば、空間的に反射率が分布されたマイクロミラー101を得ることができる。
【0031】
図11の例では、マイクロミラー基板の上に、中央の膜厚が薄いAuの金属反射膜が取り付けられている。この場合、図11の下段に示すように、Auの金属膜が80nm以内で膜厚の変化を示している場合には、マイクロミラー101の反射率に影響を与える。
【0032】
すなわち、Au膜の薄い中央付近の反射ロスが大きく、従って、マイクロミラー101の中央部分(領域100)に対してマイクロミラー101の端部(領域102)の反射率を大きく設定できる。
【0033】
本実施形態のマイクロミラーアレイ505はMEMS技術によって製造されるため、金属反射膜の膜厚が薄い領域で反射率を制御することは、マイクロミラー101の反りや変形を低減する上でも効果的である。
【0034】
ここで、本実施形態のマイクロミラー面内の反射率分布は以下の条件式(式1)、(式2)を満たした構成となっている。
【0035】
【数1】

【0036】
【数2】

【0037】
本実施形態のマイクロミラー構成によって、以下に説明するような作用・効果を得ることが出来る。
【0038】
まず、従来の波長選択スイッチのマイクロミラーと透過帯域の関係を、図17を用いて説明する。
【0039】
図17は、y軸方向に並んだ3つのマイクロミラーのアレイを抜き出して示している。ビームスポット103は、分散素子によって分光され、レンズによりマイクロミラーに導かれたものである(例えば図5参照)。
【0040】
ビームスポット103は、各々の波長に従ってマイクロミラーに対する入射位置が変化する。一般に、マイクロミラーの中心にはITUグリッド(ITU(国際電気通信連合によって定められたグリッド規格)の波長に一致する波長のビームが集光するように設計・調整が行われる。つまり、ビームスポット103の波長がITUグリッドから離れるに従って、ビームスポット103はマイクロミラー中心から離れた位置に集光することになる。
【0041】
マイクロミラーを用いた波長選択スイッチの場合、透過率の減少は、分散された各波長の光がマイクロミラー上に入射したときに、マイクロミラー端部に入射するビームスポットの一部がマイクロミラーからはみ出すことによって生じる。透過帯域をITUグリッドに対する透過率が±0.5dBとなる周波数領域とすると、従来の波長選択スイッチの場合の透過帯域は、マイクロミラー両端で0.5dB分のビームはみだしが許容制限となり、(W−1.23ω)に比例する値となる。この場合、マイクロミラー幅、分散方向のビームスポット径、及び隣接するマイクロミラーとのマイクロミラー中心間隔が決まれば透過帯域は一義的に決まることになる。
【0042】
次に本実施形態におけるマイクロミラーを使用した場合のマイクロミラーと透過帯域の関係を図1を用いて説明する。
【0043】
図1は、y軸方向に並んだ3つのマイクロミラー101のアレイを抜き出して図示している。
ビームスポット103の波長とマイクロミラー101上の入射位置との関係は従来構成のマイクロミラーで説明した通りである。
【0044】
マイクロミラー101の中心からビームスポット103が離れるに従って、ビームスポット103の裾がマイクロミラー101の外へと落ちることとなる。
【0045】
本実施形態においては、(式1)を満たすように、中心領域100に対して高い反射率をもつ分散方向のマイクロミラー端部に領域102をもつため、ビームスポット103の裾がマイクロミラー外へ落ちる位置に来たときにはビームスポット103の少なくとも一部は領域102で反射されることになる(図1(a)の上段中央等参照)。
【0046】
そのため、マイクロミラー端部に入射したビームスポット103の反射光量は、マイクロミラー外へ落ちるために生じる戻り光量の減少分と、領域102での反射によって生じる戻り光量の増加分とで相殺が生じ、結果として中心領域100で反射したビームの戻り光量に対する戻り光量の減少分が小さくて済む。
【0047】
また、領域102は、前記分散素子503により分散される方向のマイクロミラー端から始まる、前記反射光学素子(101)上の前記分散光の前記分散素子503による分散方向の直径より小さい幅の領域となっているのが好適である。前記領域102よりマイクロミラー中心側に高反射率領域を設けた場合、前記マイクロミラー中心側に設けた高反射率領域は、マイクロミラー端部からビームスポットのはみ出しのないビームスポットが高反射率部分で反射されることにより発生する透過帯域内のリップルの増加への寄与がほとんどとなるからである。
【0048】
また、本実施形態は、(式2)を満たすように構成されている。
(式2)の0.89、1.13は、それぞれ、マイクロミラー中心に入射した光の戻り光量に対して、以下(式14)に入射した光の戻り光量が−0.5dB、+0.5dBとなる量に由来する。

−W/2+0.617ω<y<W/2−0.617ω(式14)

双方の不等号外に出た場合、その点までの周波数領域によって透過帯域が決められてしまうため、本実施の形態の反射率分布は、(式2)を満足するように構成されていることが好適である。
【0049】
図1(b)に本実施形態の原理を簡易的に示す。
反射率が一定の場合の透過特性を上段に示す。本実施の形態におけるマイクロミラー101の分散方向の反射率分布を中段に示す。本実施の形態におけるマイクロミラー反射率分布は、マイクロミラー101の端部で反射する際の反射光量減少を軽減することで、透過特性の劣化を防ぐことができる補正フィルタの役割を果たし、図1(b)の最下段に示したように、従来の透過帯域Bに比べ、大きな(広い)透過帯域Aを実現することが可能である。
【0050】
図2に、本実施の形態の構成を用いたときのマイクロミラーでの反射光量の周波数(波長)特性のシミュレーション結果を示す。シミュレーションにおけるパラメータは以下の通りである。
【0051】
マイクロミラー中心を含む中心領域100は、以下の(式15)で示される。

−W/2+ω <y< W/2−ω(式15)

マイクロミラー端部を含み、中心領域100に対して大きな反射率を持つ領域102は、以下の(式16)で示される。
−W/2<y<−W/2+ω、−W/2−ω<y<W/2 (式16)
マイクロミラーの幅はW、
y軸方向のマイクロミラー上でのビームスポット径ωはW/6、
隣接するマイクロミラーとのマイクロミラー中心間隔はW/0.9、
(隣接するマイクロミラー中心には周波数換算で100GHz離れた波長の光が入射する)
領域100の反射率に対する領域102の相対反射率は1.12、
であり、
この構成は(式1)、(式2)を満足するものである。
【0052】
図2から、マイクロミラー端部における反射光量の落ち分が従来構成に比べ少なく抑えられることで、0.5dBの減少を生じる周波数幅が広がっていることが分かる。また、途中のいかなる点においても±0.5dBを超える反射光強度を持たないことも分かる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の構成を用いれば、マイクロミラー端部(領域102)の反射率がマイクロミラー中心(領域100)に比べて大きくしたことで、マイクロミラー端部における反射光量の減少を少なく抑えることが出来、ビームスポット径を変化させることなく、透過帯域幅の拡大が実現される。ビームスポット径の変化がないため、分散方向及び分散方向に垂直な方向共に装置の大型化を招かずに、広透過帯域を実現出来る。また、分散素子503、集光レンズ504に入射するビーム径の変化がないため、分散素子503、集光レンズ504といった個別の素子の大型化を招かないためコスト低減にも効果がある。
【0054】
<第1の実施形態の変形例1>
第1の実施形態の変形例1を説明する。
本変形例における波長選択スイッチの全体構成は第1の実施形態による波長選択スイッチと同様である。
【0055】
本変形例のマイクロミラーについて、図3(a)を用いて説明する。
本変形例における各マイクロミラー101は、マイクロミラー中心領域100に対して高い反射率をもつ分散方向のマイクロミラー端部の領域102との間に領域100の反射率より高く、領域102の反射率より低い反射率をもった領域303をもつように構成されている。
【0056】
中心領域100、領域303、領域102の各境界において、反射率分布は不連続であり、また各々の領域内で反射率の領域内分布をもたない(反射率が均一)(図3(a)下段参照)。また、各々の領域での反射率の差はマイクロミラー101の表面に形成されている金属反射膜の膜厚を制御することで構成されている。
【0057】
本変形例においても反射率分布は(式1)、(式2)を満足するように構成する。
本変形例は(式1)を満たすように、中心領域100に対して高い反射率をもつマイクロミラー101の端部の領域102、領域100の反射率より高く、領域102の反射率より低い反射率をもった領域303をもつため、ビームスポット(図1(a)の符号103等参照)の裾がマイクロミラー外へ落ちる位置に来たときにはビームスポット103の少なくとも一部は領域102で反射されることになる。そのためマイクロミラー端部に入射したビームスポット103の反射光量は、マイクロミラー外へ落ちるために生じる戻り光量の減少分と、領域102での反射によって生じる戻り光量の増加分とで相殺が生じ、結果として中心領域100で反射したビームの戻り光量に対する戻り光量の減少分が小さくてすみ、透過帯域幅を広げることが出来る。
【0058】
更に、本変形例はマイクロミラー101の外側に向かって反射率が大きくなっていく構成になっているため、はみ出しのないビームスポットへは高反射率部分の寄与が小さく、はみ出しのあるビームスポットへの高反射率部分の寄与が大きい構成となる。
【0059】
図4(a)に本変形例の構成を用いたときのマイクロミラーでの反射光量の周波数(波長)特性のシミュレーション結果を示す。
【0060】
シミュレーションにおけるパラメータは以下の通りである。マイクロミラーの幅、y軸方向のマイクロミラー上でのビームスポット径、隣接するマイクロミラーとのマイクロミラー中心間隔は、第1の実施形態と同様である。
【0061】
マイクロミラー面内の反射率分布は、
マイクロミラー中心を含む(式15)で与えられる領域100と、
マイクロミラー端部を含み、中心領域1に対して大きな反射率を持ち、以下の(式20)で示される領域102と
領域102に隣接し、中心領域100に対して大きく、領域102に対して小さい反射率を持ち、以下の(式21)で示される領域303とから構成される。

−W/2<y<−W/2+ω/2、W/2−ω/2<y<W/2 (式20)
−W/2+ω/2<y<−W/2+ω、W/2−ω<y<W/2−ω/2
(式21)

中心領域100の反射率に対する領域102、領域303の相対反射率はそれぞれ1.12、1.05である。
この構成は(式1)、(式2)を満足するものである。
【0062】
図4(a)から、マイクロミラー周辺における反射光量の落ち分が従来構成に比べ少なく抑えられることで、0.5dBの減少を生じる周波数幅が広がっていることが分かる。また、リップルが小さくなっていることが分かる。これにより、はみ出しのないビームスポットが高反射率部分で反射されることにより発生する透過帯域内のリップルを低減することが出来る。
【0063】
また、本変形例は以下のような構成であっても良い。
図3(b)に示すように、各マイクロミラー101は、マイクロミラー中心領域100に対して高い反射率をもつ分散方向のマイクロミラー端部の領域102との間に領域100の反射率より低い反射率をもった領域303をもつように構成されている。中心領域100、領域303、領域102の各境界において、反射率分布は不連続であり、また各々の領域内に反射率の領域内分布をもたない(反射率が均一)(図3(b)下段参照)。
【0064】
また、各々の領域での反射率の差はマイクロミラーの表面に形成されている金属反射膜の膜厚を制御することで構成されている。
【0065】
本変形例において反射率分布は(式2)及び以下に示す(式3)、(式4)を満足するように構成する。
【0066】
【数3】



【0067】
本変形例は、中心領域100に対して高い反射率をもつマイクロミラー端部の領域102と、中心領域100に対して低い反射率をもつ領域303と、をもつが、ビームスポットがマイクロミラー外へ落ちていくに従い、領域102での高反射の寄与が大きくなるため、マイクロミラー端部に入射したビームスポットの反射光量は、マイクロミラー外へ落ちるために生じる戻り光量の減少分と、領域102での反射によって生じる戻り光量の増加分とで相殺が生じ、結果として中心領域100で反射したビームの戻り光量に対する戻り光量の減少分が小さくて済み、透過帯域幅を広げることが出来る。
【0068】
本変形例では、中心領域100に対して高い反射率を持つマイクロミラー端部の内側に、中心領域100に対して低い反射率を持つ領域303を設けることで、ITUグリッドの波長における反射光量に対して、光量が小さくなる方向と、光量が大きくなる方向とに、リップルを振り分けることが出来、結果として、リップルをほとんど出さずに、より大きな広透過帯域効果を得ることが出来る。
【0069】
図4(b)に本変形例の構成を用いたときのマイクロミラーでの反射光量の周波数(波長)特性のシミュレーション結果を示す。
【0070】
シミュレーションにおけるパラメータは以下の通りである。マイクロミラーの幅、y軸方向のマイクロミラー上でのビームスポット径、隣接するマイクロミラーとのマイクロミラー中心間隔は第1の実施形態と同様である。
【0071】
マイクロミラー面内の反射率分布は、
マイクロミラー中心を含み、以下の(式22)で示される中心領域100と、
マイクロミラー端部を含み、中心領域100に対して大きな反射率を持つ(式16)で与えられる領域102と、
領域102に隣接し、中心領域100に対して小さい反射率を持ち、以下の(式23)で示される領域303と、から構成される。

−W/2+2ω<y<W/2−2ω (式22)
−W/2+ω<y<−W/2+2ω、W/2−2ω<y<W/2−ω
(式23)
中心領域100の反射率に対する領域102、領域303の相対反射率はそれぞれ1.12、0.96である。
【0072】
図4(b)から、マイクロミラー周辺における反射光量の落ち分が従来構成に比べ少なく抑えられることで、0.5dBの減少を生じる周波数幅が広がっていることが分かる。また光量が小さくなる方向と、光量が大きくなる方向とに、リップルが振り分けられ、図3(a)の構成よりさらにリップルが小さくなっていることが分かる。
【0073】
なお、第1の実施形態の変形例1(図3(a)、図3(b))の説明では、反射率の異なる3つの領域を用いて説明を行ったが、4つ以上の領域を用いて構成しても良い。この場合、3つの領域をもつ場合に比べ、反射率分布を細かく設計できる。そのため前記領域の数を増やすほど,リップルをほとんど出さずに、より大きな広透過帯域効果を得ることが出来る。
【0074】
<第1の実施形態の変形例2>
第1の実施形態の変形例2を説明する。本変形例における波長選択スイッチの全体構成は第1の実施形態による波長選択スイッチと同様である。
【0075】
次に本変形例のマイクロミラーについて図3(c)を用いて説明する。
本変形例における各マイクロミラー101は、中心領域100に対して高い反射率をもつ分散方向のマイクロミラー端部の領域102をもつように構成されている。中心領域100と、領域102と、の境界において、反射率分布は連続だが微分不可能である。また中心領域100内では反射率は均一だが、領域102内にはマイクロミラー端に向かって単調増加するような反射率の領域内分布をもっている(図3(c)下段参照)。また、各々の領域での反射率の差はマイクロミラー101の表面に形成されている金属反射膜の膜厚を制御することで構成されている。
【0076】
本変形例においても反射率分布は(式1)、(式2)を満足するように構成する。
本変形例は(式1)を満たすように、中心領域100に対して高い反射率をもつマイクロミラー端部に領域102をもつため、ビームスポットの裾がマイクロミラー外へ落ちる位置に来たときにはビームスポットの少なくとも一部は領域102で反射されることになる。そのため、マイクロミラー端部に入射したビームスポットの反射光量は、マイクロミラー外へ落ちるために生じる戻り光量の減少分と、領域102での反射によって生じる戻り光量の増加分とで相殺が生じ、結果として中心領域100で反射したビームの戻り光量に対する戻り光量の減少分が小さくて済み、透過帯域幅を広げることが出来る。
【0077】
本変形例は、領域102内に反射率分布をもっていることにより、マイクロミラー101の外側に向かって反射率が連続的に大きくなっていく構成になっているため、はみ出しのないビームスポットへは高反射率部分の寄与が小さく、はみ出しのあるビームスポットへの高反射率部分の寄与が大きい構成を図3(a)の構成より高い自由度で設計設定することが出来る。これにより、はみ出しのないビームスポットが高反射率領域で反射されることにより発生する透過帯域内のリップルを図3(a)の構成よりさらに低減することが出来る。
【0078】
図4(c)に本変形例の構成を用いたときのマイクロミラーでの反射光量の周波数(波長)特性のシミュレーション結果を示す。
【0079】
図4(c)から、マイクロミラー周辺における反射光量の落ち分が従来構成に比べ少なく抑えられることで、0.5dBの減少を生じる周波数幅が広がっていることが分かる。また、リップルが小さくなっていることが分かる。
【0080】
また、本変形例は以下のような構成とすることができる。
図3(d)に示すように、各マイクロミラー101は、中心領域100に対して高い反射率をもつ分散方向のマイクロミラー端部に部分102と、中心領域100の反射率より低い反射率をもった部分303をもつ領域304と、を設けるように構成されている。前記部分102は前記部分303よりマイクロミラー端部側に設けられている。中心領域100と、領域304と、の境界において、反射率分布は不連続であり、また中心領域内では反射率は均一だが、領域102内にはマイクロミラー端に向かって単調増加するような反射率の領域内分布をもっている(図3(d)下段参照)。
【0081】
本変形例において反射率分布は(式2)、(式3)、(式4)を満足するように構成する。
本変形例は、中心領域100に対して高い反射率とマイクロミラー端部の部分102と、中心領域100対して低い反射率をもつ部分303と、をもつが、ビームスポットがマイクロミラー外へ落ちていくに従い、部分102での高反射の寄与が大きくなるため、マイクロミラー端部に入射したビームスポットの反射光量は、マイクロミラー外へ落ちるために生じる戻り光量の減少分と、部分102での反射によって生じる戻り光量の増加分とで相殺が生じ、結果として中心領域100で反射したビームの戻り光量に対する戻り光量の減少分が小さくて済み、透過帯域幅を広げることが出来る。
【0082】
本変形例では、中心領域100に対して高い反射率を持つマイクロミラー端部の内側に、中心領域100に対して低い反射率を持つ部分303を設けることで、ITUグリッドの波長における反射光量に対して、光量が小さくなる方向と、光量が大きくなる方向とに、リップルを振り分けることが出来、結果として、リップルをほとんど出さずに、より大きな広透過帯域効果を得ることが出来る。また、領域304内にも反射率分布をもたせることにより、前記リップルも含めた透過帯域の制御を図3(b)の構成よりさらに高い自由度で行うことが出来る。
【0083】
図4(d)に本変形例の構成を用いたときのマイクロミラーでの反射光量の周波数(波長)特性のシミュレーション結果を示す。
【0084】
シミュレーションにおけるパラメータは以下の通りである。マイクロミラーの幅、y軸方向のマイクロミラー上でのビームスポット径、隣接するマイクロミラーとのマイクロミラー中心間隔は第一の実施形態と同様である。
【0085】
マイクロミラー面内の反射率分布は、
マイクロミラー中心を含み、以下の(式24)で示される中心領域100と、
マイクロミラー端部を含み、以下の(式25)で示される領域102と、から構成される。

−W/2+3ω/2<y<W/2−3ω/2 (式24)、
−W/2<y<−W/2+3ω/2、W/2−3ω/2<y<W/2 (式25)

領域102内の反射率の領域内分布は、マイクロミラー端部に向かって大きくなる一次関数で与えられ、中心領域100の反射率に対する領域102の反射率の下限は0.96、上限は1.12である。
【0086】
図4(d)から、マイクロミラー周辺における反射光量の落ち分が従来構成に比べ少なく抑えられることで、0.5dBの減少を生じる周波数幅が広がっていることが分かる。また光量が小さくなる方向と、光量が大きくなる方向とに、リップルが振り分けられ、リップルが小さくなっていることが分かる。
【0087】
また、本変形例は以下のような構成とすることができる。
図3(e)に示すように、各マイクロミラーは、マイクロミラー中心領域100に対して高い反射率をもつ分散方向のマイクロミラー端部の領域102との間に領域100の反射率より低い反射率をもった領域303をもつように構成されている。中心領域100、領域303、領域102の各境界において、反射率分布は連続だが、微分不可能であり、また中心領域内では反射率は均一だが、領域303内にはマイクロミラー端に向かって単調減少するような反射率の領域内分布を、領域102内にはマイクロミラー端に向かって単調増加するような反射率の領域内分布をそれぞれもっている(図3(e)下段参照)。また、各々の領域での反射率の差はマイクロミラーの表面に形成されている金属反射膜の膜厚を制御することで構成されている。
【0088】
本変形例において反射率分布は(式2)、(式3)、(式4)を満足するように構成する。
本変形例は、中心領域100に対して高い反射率をもつマイクロミラー端部に領域102と、中心領域100対して低い反射率をもつ領域303と、をもつが、ビームスポットがマイクロミラー外へ落ちていくに従い、領域102での高反射の寄与が大きくなるため、マイクロミラー端部に入射したビームスポットの反射光量は、マイクロミラー外へ落ちるために生じる戻り光量の減少分と、領域102での反射によって生じる戻り光量の増加分とで相殺が生じ、結果として中心領域100で反射したビームの戻り光量に対する戻り光量の減少分が小さくて済み、透過帯域幅を広げることが出来る。
【0089】
本変形例では、中心領域100に対して高い反射率を持つマイクロミラー端部の内側に、中心領域100に対して低い反射率を持つ領域303を設けることで、ITUグリッドの波長における反射光量に対して、光量が小さくなる方向と、光量が大きくなる方向とに、リップルを振り分けることが出来、結果として、リップルをほとんど出さずに、より大きな広透過帯域効果を得ることが出来る。また、領域304内にも反射率の領域内分布をもたせることにより、前記リップルの振り分けをより高い自由度で行うことが出来る。また各領域の境界で反射率分布が連続的な振る舞いをすることにより、境界における図示しない回折等の影響を抑えることが出来る。
【0090】
図4(e)に本変形例の構成を用いたときのマイクロミラーでの反射光量の周波数(波長)特性のシミュレーション結果を示す。
【0091】
シミュレーションにおけるパラメータは以下の通りである。マイクロミラーの幅、y軸方向のマイクロミラー上でのビームスポット径、隣接するマイクロミラーとのマイクロミラー中心間隔は第1の実施形態と同様である。
【0092】
マイクロミラー面内の反射率分布は、
マイクロミラー中心を含む(式15)で与えられる中心領域100と、
マイクロミラー端部を含み、領域1に対して大きな反射率を持つ(式16)で与えられる領域102と、
領域102に隣接し、領域1に対して小さい反射率を持つ(式23)で与えられる領域303と、から構成される。
【0093】
領域102内の反射率の領域内分布は、マイクロミラー端部に向かって小さくなる一次関数で与えられ、中心領域100の反射率に対する領域102の反射率の下限は0.96、上限は1.0である。
【0094】
領域303内の反射率の領域内分布は、マイクロミラー端部に向かって大きくなる一次関数で与えられ、中心領域100の反射率に対する領域303の反射率の下限は0.96、上限は1.12である。
【0095】
図4(e)から、マイクロミラー周辺における反射光量の落ち分が従来構成に比べ少なく抑えられることで、0.5dBの減少を生じる周波数幅が広がっていることが分かる。また光量が小さくなる方向と、光量が大きくなる方向とに、リップルが振り分けられ、リップルが小さくなっていることが分かる。
【0096】
なお、上述した第1の実施形態では、ひとつの光入力部から複数の光出力部への結合に関して説明したが、複数の光入力部からひとつの光出力部への結合を行うことも可能である。
【0097】
上述した第1の実施形態の波長選択スイッチでは、分散素子503と光偏向部材505の間にある光学系をレンズ504としたが、図示しない反射光学系としてもよい。
【0098】
上述した第1の実施形態では、マイクロミラー内の反射率分布の与え方を金属反射膜の膜厚分布としたが、金属反射膜の材料を部分的に変えたり、高反射率部位に増反射膜を設けたり、低反射率部位に反射減衰膜を設けたり、誘電体多層膜の設計を部位によって変えたりすることによって反射率分布を与えても良い。
【0099】
上述した第1の実施形態では、マイクロミラー内の反射率分布は、マイクロミラー中心に対して対称となっているが、非対称な反射率分布であっても、分散素子による分散方向の片側の端部のみについて高反射率部分を設けても良い。
【0100】
<第2の実施形態>
本実施形態における波長選択スイッチの全体構成は、第1の実施形態による波長選択スイッチと同様である。
【0101】
次に、本実施形態のマイクロミラーについて説明する。
図7(a)に示すように、本実施形態において、各マイクロミラー101は、マイクロミラー全面において、反射率分布に不連続点を持たず、反射率分布は微分可能であり、分散素子503による分散方向(y軸)に、マイクロミラー中心から、マイクロミラー端部へと向かうに従って反射率が高くなっていくように反射率分布を持つ。また、各々の領域での反射率の差はマイクロミラーの表面に形成されている金属反射膜の膜厚を制御することで構成されている。金属反射膜の連続的な膜厚分布は、例えばグラデーションマスクを使用したフォトリソグラフィとエッチング加工の組み合わせによって作製することが出来る。
【0102】
本実施形態においても反射率分布は(式1)、(式2)を満足するように構成する。
本実施形態は(式1)を満たすように、マイクロミラー端部に向かって単調増加する反射率分布をもつため、ビームスポットの裾がマイクロミラー外へ落ちる位置に入射するビームスポット内の平均反射率は、マイクロミラー中心に入射するビームスポット内の平均反射率に比べ高くなる。そのためマイクロミラー端部に入射したビームスポットの反射光量は、マイクロミラー外へ落ちるために生じる戻り光量の減少分と、平均反射率の高い反射によって生じる戻り光量の増加分とで相殺が生じ、結果としてマイクロミラー中心に入射したビームの戻り光量に対する戻り光量の減少分が小さくて済み、透過帯域幅を広げることが出来る。
【0103】
本実施形態は、マイクロミラー101の外側に向かって反射率が大きくなっていく構成になっているため、はみ出しのないビームスポットへは高反射率部分の寄与が小さく、はみ出しのあるビームスポットへの高反射率部分の寄与が大きい構成をとることが出来る。また、マイクロミラー全面において連続的な反射率分布をもつことから、図3(a)の構成より高い自由度で設計することが出来る。
これにより、はみ出しのないビームスポットが高反射率領域で反射されることにより発生する透過帯域内のリップルを図3(a)の構成よりさらに低減することが出来る。
【0104】
また、反射率分布は微分可能な連続関数で定義されるため、自由度の高い反射率分布設計が可能であるとともに、マイクロミラー内のいかなる位置に入射するビームスポットに対しても滑らかな反射率分布を持たせることが出来、図示しない回折等の影響を図3(c)に示した第1の実施形態の変形例2以上に抑えることが出来る。
【0105】
図8(a)に、本実施形態の構成を用いたときのマイクロミラーでの反射光量の周波数(波長)特性のシミュレーション結果を示す。ビームスポットがマイクロミラー端部へ向かうに従って、マイクロミラーの局所反射率が高くなることによって、マイクロミラー周辺における反射光量の落ち分が従来構成に比べ少なく抑えられていることが確認出来る。
【0106】
<第2の実施形態の変形例1>
第2の実施形態の変形例1について説明する。
図7(b)に示すように、各マイクロミラー101は、マイクロミラー全面において、反射率分布に不連続点を持たず、反射率分布は微分可能な局所反射率分布を分散素子による分散方向(y軸)にもつ。また、局所反射率分布は、マイクロミラー端部にマイクロミラー中心より高い反射率をもち、前記マイクロミラー端部に対しマイクロミラー中心よりの位置において、マイクロミラー中心より低い反射率をもつ部分があるように構成される。また、各々の領域での反射率の差はマイクロミラーの表面に形成されている金属反射膜の膜厚を制御することで構成されている。
【0107】
本変形例において反射率分布は(式2)、(式3)、(式4)を満足するように構成する。
【0108】
本変形例は、マイクロミラー中心に対して高い反射率をもつマイクロミラー端部部分と、マイクロミラー中心に対して低い反射率をもつ部分と、をもつが、ビームスポットがマイクロミラー外へ落ちていくに従い、マイクロミラー端部の高反射率部分の寄与が大きくなるため、マイクロミラー端部に入射したビームスポットの反射光量は、マイクロミラー外へ落ちるために生じる戻り光量の減少分と、マイクロミラー端部の高反射率によって生じる戻り光量の増加分とで相殺が生じ、結果としてマイクロミラー中心で反射したビームの戻り光量に対する戻り光量の減少分が小さくて済み、透過帯域幅を広げることが出来る。
【0109】
本変形例では、マイクロミラー中心に対して高い反射率を持つマイクロミラー端部部分の内側に、マイクロミラー中心に対して低い反射率を持つ部分を設けることで、ITUグリッドの波長における反射光量に対して、光量が小さくなる方向と、光量が大きくなる方向とに、リップルを振り分けることが出来、結果として、リップルをほとんど出さずに、より大きな広透過帯域効果を得ることが出来る。また、マイクロミラー面内に連続的な反射率分布をもたせることにより、リップルの振り分けをより高い自由度で行うことが出来る。またマイクロミラー内のいかなる位置に入射するビームスポットに対しても滑らかな反射率分布を持たせることが出来、図示しない回折等の影響を図3(d)、図3(e)に示した第1の実施形態の変形例2以上に抑えることが出来る。
【0110】
図8(b)に本実施形態の構成を用いたときのマイクロミラーでの反射光量の周波数(波長)特性のシミュレーション結果を示す。
マイクロミラー端部の局所反射率が高いことによって、マイクロミラー周辺における反射光量の落ち分が従来構成に比べ少なく抑えられていることが確認出来る。また、前記マイクロミラー端部に対しマイクロミラー中心よりの位置において、マイクロミラー中心より低い反射率をもつ部分によって、リップルが小さく抑えられていることが確認出来る。
【0111】
なお、第2の実施形態では、マイクロミラー内の反射率分布の与え方を金属反射膜の膜厚分布としたが、金属反射膜の材料を部分的に変えたり、高反射率部位に増反射膜を設けたり、低反射率部位に反射減衰膜を設けたり、誘電体多層膜の設計を部位によって変えたりすることによって反射率分布を与えても良い。
【0112】
第2の実施形態では、マイクロミラー内の反射率分布は、マイクロミラー中心に対して対称となっているが、非対称な反射率分布であっても、分散素子による分散方向の片側の端部のみについて高反射率部分を設けても良い。
【0113】
<第3の実施形態>
本実施形態における波長選択スイッチの全体構成は第1の実施形態による波長選択スイッチと同様である。
【0114】
次に本実施形態のマイクロミラーについて、図12を用いて説明する。
本実施形態において、各マイクロミラー101は、分散素子503によって分散される方向に限らず面として広がった局所反射率分布を持つ。図12で示すように、矩形の領域と楕円形状の領域からなる中心領域100と、マイクロミラー端部に中心領域100に対して高い反射率をもつ領域102と、を持つように構成する。中心領域100と、高い反射率をもつ領域102と、の境界において、反射率は不連続である。また、各領域内に反射率の領域内分布をもたない(反射率が均一)。また、各々の領域での反射率の差はマイクロミラーの表面に形成されている金属反射膜の膜厚を制御することで構成されている。
【0115】
本実施の形態において反射率分布は、(式2)及び以下に示す(式5)を満足するように構成する。
【0116】
【数4】



【0117】
本実施形態において、マイクロミラー内の反射率分布はマイクロミラーの面全体に広がった反射率分布を持つ。マイクロミラー面上で反射されるビームの強度分布がガウス分布であるため、分散方向と直交する方向(x軸)について、マイクロミラー中心に入射するビーム強度が最も大きく、マイクロミラー中心から離れるに従って、入射するビーム強度が減少していく。そのため、マイクロミラーからの戻り光量に対する局所反射率の寄与は、x軸方向について、マイクロミラー中心でもっとも大きく、マイクロミラー中心から離れるに従って小さくなっていく。寄与の減少の度合いは、入射光の強度分布によって決められるため、本実施形態のように面全体に広がった反射率分布をもつ場合、単純な反射率の算術平均では不十分で、(式19)で与えられるx軸方向について加重平均された反射率を用いて考える必要がある。
【0118】
本実施形態は(式5)を満たすように、中心領域100に対して高い反射率をもつマイクロミラー端部の領域102をもつため、ビームスポットの裾がマイクロミラー外へ落ちる位置に来たときにはビームスポットの少なくとも一部は領域102で反射されることになる。そのためマイクロミラー端部に入射したビームスポットの反射光量は、マイクロミラー外へ落ちるために生じる戻り光量の減少分と、領域102での反射によって生じる戻り光量の増加分とで相殺が生じ、結果として中心領域100で反射したビームの戻り光量に対する戻り光量の減少分が小さくて済み、透過帯域幅を広げることが出来る。
【0119】
x軸方向について加重平均された反射率を用いると、各マイクロミラー面内の加重平均された反射率は、マイクロミラー中心から、マイクロミラー端部へと向かうに従って上がっていくことが分かる(図12の最下段参照)。このように、面内に反射率分布をもつ構成では、各領域の反射率が一定であっても、加重平均反射率を、マイクロミラー端部へと向かうに従って連続的に上がるように構成することが出来る。そのため、分散方向にのみ反射率分布をもつ場合に比べ、簡易な構成でリップルの抑制を行うことが可能になる。
【0120】
図16(a)に、本実施形態の構成を用いたときの、マイクロミラーでの反射光量の周波数(波長)特性のシミュレーション結果を示す。
ビームスポットがマイクロミラー端部へ向かうに従って、マイクロミラーのx軸方向について加重平均された反射率が大きくなることによって、マイクロミラー周辺における反射光量の落ち分が少なく抑えられていることが確認出来る。
なお、中心領域100が矩形の領域と楕円形状の領域からなる以外に、楕円形状のみからなる領域であっても同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0121】
<第3の実施形態の変形例1>
第3の実施形態の変形例1を説明する。
本変形例における波長選択スイッチの全体構成は第1の実施形態による波長選択スイッチと同様である。
【0122】
本変形例のマイクロミラーについて、図13(a)を用いて説明する。
本変形例における各マイクロミラー101は、マイクロミラー中心領域100に対して高い反射率をもつマイクロミラー端部の領域102との間に領域100の反射率より高く、領域102の反射率より低い反射率をもった領域303をもつように構成されている。中心領域100、領域303、領域102の各境界において、反射率分布は不連続であり、また各々の領域内に反射率の領域内分布をもたない(反射率が均一)(図13(a)中段参照)。また、各々の領域での反射率の差はマイクロミラーの表面に形成されている金属反射膜の膜厚を制御することで構成されている。
【0123】
本変形例においても反射率分布は(式2)、(式5)を満足するように構成する。
本変形例は(式5)を満たすように、中心領域100に対して高い反射率をもつマイクロミラー端部の領域102、領域100の反射率より高く、領域102の反射率より低い反射率をもった領域303をもつため、ビームスポットの裾がマイクロミラー外へ落ちる位置に来たときにはビームスポットの少なくとも一部は領域102で反射されることになる。そのためマイクロミラー端部に入射したビームスポットの反射光量は、マイクロミラー外へ落ちるために生じる戻り光量の減少分と、領域102での反射によって生じる戻り光量の増加分とで相殺が生じ、結果として中心領域100で反射したビームの戻り光量に対する戻り光量の減少分が小さくて済み、透過帯域幅を広げることが出来る。
【0124】
本変形例は、マイクロミラーの外側に向かって局所反射率が大きい領域があるように構成されているため、加重平均反射率を制御するための自由度が増し、はみ出しのないビームスポットへは高反射率部分の寄与が小さく、はみ出しのあるビームスポットへの高反射率部分の寄与が大きい構成をとることが出来る。
【0125】
図16(b)に、本変形例の構成を用いたときのマイクロミラーでの反射光量の周波数(波長)特性のシミュレーション結果を示す。
マイクロミラー周辺における反射光量の落ち分が従来構成に比べ少なく抑えられることで、0.5dBの減少を生じる周波数幅が広がっていることが分かる。また、リップルが小さいことが分かる。
【0126】
また、本変形例は以下のような構成であっても良い。
図13(b)に示すように、各マイクロミラーは、マイクロミラー中心領域100に対して高い反射率をもつ分散方向のマイクロミラー端部の領域102との間に領域100の反射率より低い反射率をもった領域303をもつように構成されている。中心領域100、領域303、領域102の各境界において、反射率分布は不連続であり、また各々の領域内に反射率の領域内分布をもたない(反射率が均一)(図13(b)中段参照)。また、各々の領域での反射率の差はマイクロミラーの表面に形成されている金属反射膜の膜厚を制御することで構成されている。
【0127】
本変形例において反射率分布は(式2)及び以下に示す(式6)(式7)を満足するように構成する。
【0128】
【数5】

【0129】
本変形例は、中心領域100に対して高い反射率をもつマイクロミラー端部の領域102と、中心領域100対して低い反射率をもつ領域303と、をもつが、ビームスポットがマイクロミラー外へ落ちていくに従い、領域102での高反射の寄与が大きくなるため、マイクロミラー端部に入射したビームスポットの反射光量は、マイクロミラー外へ落ちるために生じる戻り光量の減少分と、領域102での反射によって生じる戻り光量の増加分とで相殺が生じ、結果として中心領域100で反射したビームの戻り光量に対する戻り光量の減少分が小さくて済み、透過帯域幅を広げることが出来る。
【0130】
また、本変形例では、中心領域100に対して高い反射率を持つマイクロミラー端部の内側に、中心領域100に対して低い反射率を持つ領域303を設けることで、ITUグリッドの波長における反射光量に対して、光量が小さくなる方向と、光量が大きくなる方向とに、リップルを振り分けることが出来、結果として、リップルをほとんど出さずに、広透過帯域を拡大することが出来る。
【0131】
図16(c)に、本変形例の構成を用いたときのマイクロミラーでの反射光量の周波数(波長)特性のシミュレーション結果を示す。
マイクロミラー周辺における反射光量の落ち分が従来構成に比べ少なく抑えられることで、0.5dBの減少を生じる周波数幅が広がっていることが分かる。また光量が小さくなる方向と、光量が大きくなる方向とに、リップルが振り分けられ、リップルが小さくなっていることが分かる。
【0132】
なお、この第3の実施形態の変形例1(図13(a)、図13(b))においては反射率の異なる3つの領域を用いて説明を行ったが、4つ以上の領域を用いて構成しても良い。この場合、3つの領域をもつ場合に比べ、反射率設定の自由度が上がり、リップルをほとんど出さずに、より大きな広透過帯域効果を得ることが出来る。
【0133】
<第3の実施形態の変形例2>
第3の実施形態の変形例2を説明する。
本変形例における波長選択スイッチの全体構成は第1の実施形態による波長選択スイッチと同様である。
【0134】
本変形例のマイクロミラーについて、図14(a)を用いて説明する。
本変形例における各マイクロミラー101は、分散素子503によって分散される方向に限らず面として広がった局所反射率分布を持つ。中心領域100に対して高い反射率をもつ分散方向のマイクロミラー端部の領域102をもつように構成されている。中心領域100、領域102との境界において、反射率分布は連続だが微分不可能である。また中心領域内には反射率の領域内分布をもたない(反射率が均一)が、領域102内にはマイクロミラー端に向かって単調増加するような反射率の領域内分布をもっている(図14(a)中段参照)。また、各々の領域での反射率の差はマイクロミラーの表面に形成されている金属反射膜の膜厚を制御することで構成されている。
【0135】
本変形例においても反射率分布は(式2)、(式5)を満足するように構成する。
本変形例は(式5)を満たすように、中心領域100に対して高い反射率をもつマイクロミラー端部の領域102をもつため、ビームスポットの裾がマイクロミラー外へ落ちる位置に来たときにはビームスポットの少なくとも一部は領域102で反射されることになる。そのためマイクロミラー端部に入射したビームスポットの反射光量は、マイクロミラー外へ落ちるために生じる戻り光量の減少分と、領域102での反射によって生じる戻り光量の増加分とで相殺が生じ、結果として中心領域100で反射したビームの戻り光量に対する戻り光量の減少分が小さくて済み、透過帯域幅を広げることが出来る。
【0136】
本変形例は、領域102内に反射率の領域内分布をもっていることにより、マイクロミラーの外側に向かって反射率が連続的に大きくなっていく構成になっているため、第3の実施形態に比べ、マイクロミラー端部まで連続的に加重平均反射率が上がるように局所反射率を制御出来、はみ出しのないビームスポットへは高反射率部分の寄与が小さく、はみ出しのあるビームスポットへの高反射率部分の寄与が大きい構成をより高い自由度で設定することが出来る。
【0137】
図16(d)に本変形例の構成を用いたときのマイクロミラーでの反射光量の周波数(波長)特性のシミュレーション結果を示す。
マイクロミラー周辺における反射光量の落ち分が従来構成に比べ少なく抑えられることで、0.5dBの減少を生じる周波数幅が広がっていることが分かる。また、リップルが小さくなっていることが分かる。
【0138】
また、本変形例は以下のような構成とすることもできる。
図14(b)に示すように、各マイクロミラー101は、マイクロミラー中心領域100に対して高い反射率をもつマイクロミラー端部の領域102との間に領域100の反射率より低い反射率をもった領域303をもつように構成されている。中心領域100、領域303、領域102の各境界において、反射率分布は不連続であり、また中心領域内では反射率は均一だが、領域303内にはマイクロミラー端に向かって単調減少するような反射率の領域内分布を、領域102内にはマイクロミラー端に向かって単調増加するような反射率の領域内分布をそれぞれもっている(図14(b)中段参照)。また、各々の領域での反射率の差はマイクロミラーの表面に形成されている金属反射膜の膜厚を制御することで構成されている。
【0139】
本変形例においても反射率分布は(式2)、(式6)、(式7)を満足するように構成する。
本変形例は、中心領域100に対して高い反射率をもつマイクロミラー端部の領域102と、中心領域100対して低い反射率をもつ領域303と、をもつが、ビームスポットがマイクロミラー外へ落ちていくに従い、領域102での高反射の寄与が大きくなるため、マイクロミラー端部に入射したビームスポットの反射光量は、マイクロミラー外へ落ちるために生じる戻り光量の減少分と、領域102での反射によって生じる戻り光量の増加分とで相殺が生じ、結果として中心領域100で反射したビームの戻り光量に対する戻り光量の減少分が小さくて済み、透過帯域幅を広げることが出来る。
【0140】
本変形例では、中心領域100に対して高い反射率を持つマイクロミラー端部の内側に、中心領域100に対して低い反射率を持つ領域303を設けることで、ITUグリッドの波長における反射光量に対して、光量が小さくなる方向と、光量が大きくなる方向とに、リップルを振り分けることが出来、結果として、リップルをほとんど出さずに、より大きな広透過帯域効果を得ることが出来る。また、領域102、領域303内にも反射率の領域内分布をもたせることにより、図13(b)で示した第3の実施形態の変形例1の例に比べ、前記リップルの振り分けをより高い自由度で行うことが出来る。
【0141】
図16(e)に本変形例の構成を用いたときのマイクロミラーでの反射光量の周波数(波長)特性のシミュレーション結果を示す。
マイクロミラー周辺における反射光量の落ち分が従来構成に比べ少なく抑えられることで、0.5dBの減少を生じる周波数幅が広がっていることが分かる。また光量が小さくなる方向と、光量が大きくなる方向とに、リップルが振り分けられ、リップルが小さくなっていることが分かる。
【0142】
なお、本変形例において、マイクロミラー内の反射率分布をマイクロミラー端部へ単調増加するとしたが、加重平均された反射率への寄与の小さい領域については、マイクロミラー中心との反射率比が大きくなりすぎない値に漸近するように設定するのが望ましい。
【0143】
<第3の実施形態の変形例3>
第3の実施形態の変形例3を説明する。
本変形例における波長選択スイッチの全体構成は第1の実施形態による波長選択スイッチと同様である。
【0144】
次に本変形例のマイクロミラーについて説明する。
図15(a)に示すように、本実施形態において、各マイクロミラー101は、マイクロミラー全面において、反射率分布に不連続点を持たず、反射率分布は微分可能であり、マイクロミラー全面に、マイクロミラー中心から、マイクロミラー端部へと向かうに従って反射率が高くなっていくように反射率分布を持つ。また、各々の領域100、102での反射率の差はマイクロミラーの表面に形成されている金属反射膜の膜厚を制御することで構成されている。
【0145】
本変形例においても反射率分布は(式2)、(式5)を満足するように構成する。
本変形例は(式5)を満たすように、マイクロミラー端部に向かって単調増加する反射率分布をもつため、ビームスポットの裾がマイクロミラー外へ落ちる位置に入射するビームスポット内の平均反射率は、マイクロミラー中心に入射するビームスポット内の平均反射率に比べ高くなる。そのためマイクロミラー端部に入射したビームスポットの反射光量は、マイクロミラー外へ落ちるために生じる戻り光量の減少分と、平均反射率の高い反射によって生じる戻り光量の増加分とで相殺が生じ、結果としてマイクロミラー中心に入射したビームの戻り光量に対する戻り光量の減少分が小さくて済み、透過帯域幅を広げることが出来る。
【0146】
本変形例は、マイクロミラーの外側に向かって反射率が大きくなっていく構成になっているため、はみ出しのないビームスポットへは高反射率部分の寄与が小さく、はみ出しのあるビームスポットへの高反射率部分の寄与が大きい構成をとることが出来る。また、反射率分布は微分可能な連続関数で定義されるため、図13(a)で示した第3の実施形態の変形例1に比べ、自由度の高い反射率分布設計が可能であるとともに、マイクロミラー内のいかなる位置に入射するビームスポットに対しても滑らかな反射率分布を持たせることが出来、図示しない回折等の影響を図13(b)で示した第3の実施形態の変形例2の構成以上に抑えることが出来る。
【0147】
図16(f)に、本変形例の構成を用いたときのマイクロミラーでの反射光量の周波数(波長)特性のシミュレーション結果を示す。ビームスポットがマイクロミラー端部へ向かうに従って、マイクロミラーの局所反射率が高くなることによって、マイクロミラー周辺における反射光量の落ち分が従来構成に比べ少なく抑えられていることが確認出来る。
また、リップルが小さくなっていることが分かる。
【0148】
また、本変形例は以下のような構成とすることができる。
図15(b)に示すように、各マイクロミラー101は、マイクロミラー全面において、反射率分布に不連続点を持たず、反射率分布は微分可能な局所反射率分布をもつ。また、局所反射率分布は、マイクロミラー端部ではマイクロミラー中心領域より高い反射率をもち、マイクロミラー端部とマイクロミラー中心領域間においては、マイクロミラー中心領域より低い反射率をもつように構成される。また、各々の領域での反射率の差はマイクロミラーの表面に形成されている金属反射膜の膜厚を制御することで構成されている。
【0149】
本変形例において反射率分布は(式2)、(式6)、(式7)を満足するように構成する。
本変形例は、マイクロミラー中心に対して高い反射率をもつ領域と、マイクロミラー中心に対して低い反射率をもつ領域と、をもつが、ビームスポットがマイクロミラー外へ落ちていくに従い、マイクロミラー端部の高反射率部分の寄与が大きくなるため、マイクロミラー端部に入射したビームスポットの反射光量は、マイクロミラー外へ落ちるために生じる戻り光量の減少分と、マイクロミラー端部の高反射率によって生じる戻り光量の増加分とで相殺が生じ、結果としてマイクロミラー中心で反射したビームの戻り光量に対する戻り光量の減少分が小さくて済み、透過帯域幅を広げることが出来る。
【0150】
本変形例では、マイクロミラー中心に対して高い反射率を持つマイクロミラー領域の内側に、マイクロミラー中心に対して低い反射率を持つ領域を設けることで、ITUグリッドの波長における反射光量に対して、光量が小さくなる方向と、光量が大きくなる方向とに、リップルを振り分けることが出来、結果として、リップルをほとんど出さずに、より大きな広透過帯域効果を得ることが出来る。また、マイクロミラー面内に連続的な反射率分布をもたせることにより、図13(a)で示した第3の実施形態の変形例1に比べ、リップルの振り分けをより高い自由度で行うことが出来る。またマイクロミラー内のいかなる位置に入射するビームスポットに対しても滑らかな反射率分布を持たせることが出来、図示しない回折等の影響を図13(b)で示した第3の実施形態の変形例2以上に抑えることが出来る。
【0151】
図16(g)に、本変形例の構成を用いたときのマイクロミラーでの反射光量の周波数(波長)特性のシミュレーション結果を示す。マイクロミラー端部の局所反射率が高いことによって、マイクロミラー周辺における反射光量の落ち分が従来構成に比べ少なく抑えられていることが確認出来る。また、前記マイクロミラー端部に対しマイクロミラー中心よりの位置において、マイクロミラー中心より低い反射率をもつ部分によって、リップルが小さく抑えられていることが確認出来る。
【0152】
なお、本変形例において、マイクロミラー内の反射率分布をマイクロミラー端部へ単調増加するとしたが、加重平均された反射率への寄与の小さい領域については、マイクロミラー中心との反射率比が大きくなりすぎない値に漸近するように設定するのが望ましい。
【0153】
ところで、上述した各実施形態ではマイクロミラー内の反射率分布の与え方を金属反射膜の膜厚分布としたが、金属反射膜の材料を部分的に変えたり、高反射率部位に増反射膜を設けたり、低反射率部位に反射減衰膜を設けたり、誘電体多層膜の設計を部位によって変えたりすることによって反射率分布を与えても良い。
【0154】
また、上述した各実施形態では、マイクロミラー内の反射率分布は、マイクロミラー中心に対して対称となっているが、非対称な反射率分布であっても、分散素子による分散方向の片側の端部のみについて高反射率部分を設けても良い。
【0155】
本発明は、上述した発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0156】
以上のように、本発明に係る波長選択スイッチは、簡単かつ安価で軽量コンパクトな構成としながら、ビーム径を変化させることなく、透過帯域の拡大を実現することができ、光学の分野において有用である。
【符号の説明】
【0157】
100 領域(中央領域)
101 マイクロミラー
102 領域(端部)
103 ビームスポット
303 領域(端部)と領域(中央領域)間のマイクロミラー内領域
500 波長選択スイッチ
501 ファイバアレイ(入力部兼出力部)
502 マイクロレンズアレイ
503 グレーティング(分散素子)
504 レンズ(集光要素)
505 MEMSミラーアレイ(MEMSモジュール、光偏向部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長多重された光を入射させる少なくとも一つの入力部と、
前記入力部からの光を受光し、分散させる分散素子と、
波長ごとに分散された分散光を集光する集光要素と、
前記集光要素からの分散光を、波長ごとに独立に偏向可能な複数の反射光学素子を有する光偏向部材と、
前記光偏向部材によって偏向された分散光を受光する少なくとも一つの出力部と、
を備えた波長選択スイッチであって、
前記反射光学素子の少なくとも一つは反射率分布を有する反射面を有し、
前記反射率分布を有する反射面には、前記分散素子による分散方向における前記反射光学素子の端部の少なくとも一部に、前記反射光学素子の中心領域の反射率に対して反射率の高い領域が形成されていることを特徴とする波長選択スイッチ。
【請求項2】
前記中心領域の反射率に対して反射率の高い領域は、
前記分散素子による分散方向における前記反射光学素子の端部から始まり、前記分散素子による分散方向における前記分散光の前記反射光学素子上での像の直径より幅の小さい領域であることを特徴とする請求項1に記載の波長選択スイッチ。
【請求項3】
前記反射率分布は、前記分散素子による分散方向と垂直な方向において、同じ反射率分布となるように形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の波長選択スイッチ。
【請求項4】
前記反射率分布は、前記中心領域から前記分散素子による分散方向における前記反射光学素子の端部に向かうほど反射率が高くなるように形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の波長選択スイッチ。
【請求項5】
前記中心領域に対して反射率の高い領域と前記中心領域との間に、前記中心領域に対して反射率の低い領域を形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の波長選択スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−186333(P2011−186333A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53635(P2010−53635)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】