説明

泥土圧シールド掘進機の土砂排出装置

【課題】巨礫の搬送が可能なリボン式軸無しスクリューコンベアを用いることを前提として、切羽土圧に対抗する泥土圧を確保することが可能であって、巨礫が多く散在する地山であっても、通常一般の砂礫層等を掘削するのと遜色なく掘進作業を遂行することが可能な泥土圧シールド掘進機の土砂排出装置を提供する。
【解決手段】カッターチャンバーに接続され、最大搬送可能礫径が搬送路31の半径(D2/2)以上であって、礫分を含む掘削土砂をカッターチャンバーから搬送するリボン式軸無しスクリューコンベア8と、スクリューコンベアに接続され、当該スクリューコンベアの搬送路の直径よりも小さな直径(D1)に設定された搬出経路35を有し、搬出する掘削土砂の圧力損失によってプラグゾーンが形成される長さ以上に設定された排土管25とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巨礫の搬送が可能なリボン式軸無しスクリューコンベアを用いることを前提として、切羽土圧に対抗する泥土圧を確保することが可能であって、巨礫が多く散在する地山であっても、通常一般の砂礫層等を掘削するのと遜色なく掘進作業を遂行することが可能な泥土圧シールド掘進機の土砂排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
泥土圧シールド工法は概略的には、シールドジャッキでシールド掘進機を推進し、この推進と共に、当該シールド掘進機前面の回転カッターで地山の切羽を掘削する。掘削した土砂は、回転カッター後方のカッターチャンバー内及びカッターチャンバー内から排土するためのスクリューコンベアに充満させる。
【0003】
この際、回転カッターの前面やカッターチャンバ内に添加材を注入する。添加材は、掘削土砂に練り混ぜられて、土砂を、塑性流動性(自由に変形・移動できる性質)に富み、不透水性を発揮する泥土に変換する。
【0004】
泥土は、カッターチャンバー内からスクリューコンベア内にわたって充満されていて、シールドジャッキの推進力により、当該泥土には、切羽の土圧及び地下水圧(以下、「切羽土圧」という)に対抗する泥土圧が発生する。
【0005】
この泥土圧と切羽土圧との平衡を保つように、シールド掘進機の推進量とスクリューコンベアによる排土量のバランスを図ることによって、切羽の安定を保ちつつ掘進していくようになっている。
【0006】
掘削土砂に添加材を添加して塑性流動性と不透水性を持つ泥土を作成することにより、スクリューコンベアによる円滑な排土が確保されると共に、スクリューコンベア内にプラグゾーン(止水領域)が形成されて地下水の噴発が防止される。
【0007】
この種の泥土圧シールドの土砂排出装置は例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1の「土圧系気泡シールド掘進装置」は、シールド本体の前頭部に設けたカッターヘッドと、該カッターヘッドの後方に設けた隔壁と、該カッターヘッドと該隔壁との間に形成する土圧室内に対し、該隔壁を貫通して、先端開口部を挿設したスクリューコンベアとを有し、前記隔壁を貫通して該土圧室内に突設した気泡を注入する気泡発生器と、前記スクリューコンベアの後部に設けた排土口と坑外に設置されたホッパとを液密的に連接する排土用輸送管と、該排土口の近傍の該排土用輸送管上に設けられ、気泡を帯びた掘削土砂を該ホッパに向けて連続的に圧送する圧送ポンプとを備えている。特許文献1では、中央に回転軸を有する軸付きスクリューコンベアで土砂を排土するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平1−37560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、地山が、巨礫、例えば外形寸法がφ500を超えるような巨礫が多く散在し、その他に玉石や礫を含むような地質である場合、特にこのような巨礫は、中央に回転軸を有する、通常一般のシールド掘進機用軸付きスクリューコンベアの内径相当で搬送不可能であると共に、当該巨礫を小さく細かく破砕して掘進することは非効率的かつ非現実的である。
【0010】
巨礫の搬送には、リボン式軸無しスクリューコンベアの採用が考えられる。リボン式軸無しスクリューコンベアは、回転駆動される内筒の内周面に、内筒の長さ方向に連続的に螺旋状のブレードを設けたものである。これにより、中央の回転軸を廃止し、搬送路となる内筒の内径よりも小さければ、巨礫であっても搬送することができる。
【0011】
しかし、リボン式軸無しスクリューコンベアは、軸付きスクリューコンベアとは異なり、密実な状態で掘削土砂を搬送することができない。特に、巨礫を含む掘削土砂では、巨礫が掘削土砂を押し退けてゴロゴロと不安定に転がり動くため、搬送路内の圧力はきわめて不安定である。
【0012】
このように掘削土砂を密実な状態で搬送できず、搬送路内の圧力が不安定な場合、スクリューコンベアの回転数などを制御しても、カッターチャンバー内からスクリューコンベアにわたる泥土圧を適切に確保することは難しく、従って切羽土圧との平衡を保つことが困難で、泥土圧シールド工法を安全に施工することはできない。
【0013】
すなわち、リボン式軸無しスクリューコンベアでは、止水領域となって切羽土圧と対抗するプラグゾーンを適切に確保することができなかった。特に、地下水圧が高圧である場合には、リボン式軸無しスクリューコンベアの採用は、施工上問題であった。
【0014】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、巨礫の搬送が可能なリボン式軸無しスクリューコンベアを用いることを前提として、切羽土圧に対抗する泥土圧を確保することが可能であって、巨礫が多く散在する地山であっても、通常一般の砂礫層等を掘削するのと遜色なく掘進作業を遂行することが可能な泥土圧シールド掘進機の土砂排出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明にかかる泥土圧シールド掘進機の土砂排出装置は、回転カッターにより切羽から掘削され破砕されて、該回転カッター後方のカッターチャンバー内に充満される礫分を含む掘削土砂を、切羽土圧に対抗させながら該カッターチャンバーから外部に排出する泥土圧シールド掘進機の土砂排出装置において、上記カッターチャンバーに接続され、最大搬送可能礫径が搬送路の半径以上であって、礫分を含む掘削土砂を該カッターチャンバーから搬送するリボン式軸無しスクリューコンベアと、該スクリューコンベアに接続され、当該スクリューコンベアの上記搬送路の直径よりも小さな直径に設定された搬出経路を有し、搬出する掘削土砂の圧力損失によってプラグゾーンが形成される長さ以上に設定された排土管とを備えたことを特徴とする。
【0016】
前記排土管には、掘削土砂の流動性を調節するために、前記搬出経路に空気を供給する空気供給管が接続されることを特徴とする。
【0017】
前記排土管には、掘削土砂の流動性を調節するために、前記搬出経路に水を供給する給水管が接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる泥土圧シールド掘進機の土砂排出装置にあっては、巨礫の搬送が可能なリボン式軸無しスクリューコンベアを用いることを前提として、切羽土圧に対抗する泥土圧を確保することができ、巨礫が多く散在する地山であっても、通常一般の砂礫層等を掘削するのと遜色なく掘進作業を遂行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかる泥土圧シールド掘進機の土砂排出装置の好適な一実施形態を示す概略側断面図である。
【図2】図1に示した泥土圧シールド掘進機の回転カッターの正面図である。
【図3】図1に示した泥土圧シールド掘進機の土砂排出装置のリボン式軸無しスクリューコンベアを示す概略断面図である。
【図4】図3に示したリボン式軸無しスクリューコンベアと排土管との接続部分の要部側面図である。
【図5】図4中、A方向矢視図である。
【図6】本発明にかかる泥土圧シールド掘進機の土砂排出装置を適用して好適な地山の粒径加積曲線を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明にかかる泥土圧シールド掘進機の土砂排出装置の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1には本実施形態にかかる泥土圧シールド工法に用いられる泥土圧シールド掘進機1の土砂排出装置30の概略側面図が示されていると共に、図2には当該泥土圧シールド掘進機1の回転カッター2の正面図が示されている。
【0021】
泥土圧シールド掘進機1は主に、中空円筒体状のスキンプレート3と、スキンプレート3の前端側に設けられた隔壁4と、隔壁4から前方に間隔を隔てて設けられ、回転駆動手段(図示せず)で回転駆動されて地山の切羽Zを掘削する回転カッター2と、回転カッター2と隔壁4との間に形成され、掘削された土砂が取り込まれるカッターチャンバー5と、カッターチャンバー5内に設けられ、取り込まれた土砂と注入された薬材とを混合撹拌する撹拌装置(図示せず)と、スキンプレート3内に隔壁4よりも後方に位置させて設けられ、セグメント6に反力をとって、スキンプレート3と共に回転カッター2を前進させる推進力を発生するシールドジャッキ7と、隔壁4を貫通してカッターチャンバー5内に取り込み端部8aが位置され、排出端部8bがスキンプレート3後方へ、斜め上向きに延出されて、カッターチャンバー5内から土砂を排土するリボン式軸無しスクリューコンベア8とから構成される。また、シールド掘進機1後方の後続台車9には、シールド掘進機1の運転室10が設けられ、この運転室10から運転手がシールド掘進機1の運転制御を行うようになっている。
【0022】
本実施形態にかかる泥土圧シールド掘進機1は、特に、カッターチャンバー5へ取り込むことが好ましくない巨礫Xが混在し得る玉石混じり砂礫や玉石層からなる地山の切羽Zを掘削する場合に、好適に適用される。勿論、このような巨礫Xを含まない玉石混じり砂礫や玉石層、通常の砂礫層などに対しても、適用することが可能である。
【0023】
回転カッター2は図2に示すように、スポークタイプで構成される。回転カッター2は、当該回転カッター2の中央に位置され、センタビット11が取り付けられるハブ部12と、ハブ部12から回転カッター2の周縁に向かって放射状に延出され、各種ビット13,14やローラカッター15が取り付けられる6本のスポーク部16と、スポーク部16の中途部同士を連結する中間リング17と、スポーク部16の先端部同士を連結する外周リング18とから構成される。
【0024】
中間リング17には、スポーク部16とスポーク部16のほぼ中間に位置させて、上述した大きな外形寸法の巨礫Xや玉石等がスポーク部16の間からカッターチャンバー5内へ取り込まれることを規制するために、制限用突起19が設けられる。すなわち、回転カッター2には、ハブ部12周りに、スポーク部16、制限用突起19を有する中間リング17及び外周リング18で規定して、巨礫取り込み制限区画Rが形成される。
【0025】
本実施形態の泥土圧シールド工法では、薬材を、回転カッター2で掘削した土砂に添加し、撹拌装置で撹拌混合することにより、掘削土砂を塑性流動性と不透水性を持つ泥土に変換する。そして、この泥土をカッターチャンバー5内、スクリューコンベア8内、さらには後述する排土管25にわたって充満させ、シールドジャッキ7の推進力によりカッターチャンバー5内等に充満した泥土を加圧して泥土圧を発生させ、この泥土圧で切羽土圧に対抗させて、切羽Zを安定させるようになっている。
【0026】
泥土圧シールド掘進機1の推進に際しては、切羽Zの安定を維持するために、例えば、回転カッター2の回転速度を一定にして、シールドジャッキ7の伸長速度やスクリューコンベア8の回転速度を調整し、排土管25からスクリューコンベア8を介してカッターチャンバー5内に生じる泥土圧を、隔壁4に設けた土圧計(図示せず)で測定し、測定される泥土圧を常時一定の圧力に保つようにして、掘進するようにしている。
【0027】
本実施形態にかかる泥土圧シールド掘進機1には、細砂や粗砂、礫に混ざって、玉石、そしてさらには巨礫Xが散在している地山の切羽Zを掘進するにあたり、カッターチャンバー5内の泥土の状態を好適化する泥土調整手段が設けられる。
【0028】
泥土調整手段は、回転カッター2のスポーク部16やハブ部12の適宜位置に設けられて、回転カッター2前方の切羽Zへ向けて薬材を注入する第1注入手段20、隔壁4の中央部付近に設けられて、カッターチャンバー5内へ向けて薬材を注入する第2注入手段21、並びに、隔壁4の周縁部の適宜位置に設けられて、スキンプレート3の外回りやカッターチャンバー5内へ向けて薬材を注入する第3注入手段22を備える。
【0029】
第1及び第3注入手段20,22は、ベントナイト系添加材などの作泥土材を注入する。第2注入手段21は、気泡材を注入する。作泥土材を注入する注入手段20,22及び気泡材を注入する注入手段21の具体的構成は、従来周知である。
【0030】
また、本実施形態では、作泥土材を注入する注入手段20,22と気泡材を注入する注入手段21を別々に備える場合が示されているが、作泥土材と気泡材を注入口(図示せず)付近で混ぜ合わせることによって、あるいは、作泥土材の注入タイミングと気泡材の注入タイミングをずらすことによって、作泥土材用の注入手段20,22と気泡材用の注入手段21を供用するようにしてもよい。すなわち、作泥土材と気泡材は、すべての注入手段20〜22から注入するようにしてもよい。
【0031】
回転カッター2で切羽Zから掘削され破砕されたばかりの礫分を含む土砂は、回転カッター2の回転作用で、当該回転カッター2の第1注入手段20から切羽Zへ向けて注入される作泥土材や気泡材と撹拌混合されつつ、カッターチャンバー5内へ取り込まれるようになっている。また、回転カッター2で切羽Zから掘削され破砕されてカッターチャンバー5内に取り込まれた礫分を含む土砂は、カッターチャンバー5内で、隔壁4の第2及び第3注入手段21,22からカッターチャンバー5内へ向けて注入される作泥土材や気泡材と撹拌混合される。
【0032】
すなわち、回転カッター2で掘削された礫分を含む土砂は、スクリューコンベア8へ取り込まれる前に、切羽Z位置及びカッターチャンバー5内にて、作泥土材及び気泡材双方と撹拌混合される。
【0033】
また、本実施形態にかかる泥土圧シールド掘進機1には、カッターチャンバー5内からスクリューコンベア8内に亘る間での土砂の閉塞を監視するために閉塞監視手段が設けられる。土砂の閉塞傾向は、撹拌等される土砂に滞留する摩擦熱に起因して、土砂温度が上昇することにより推定される。
【0034】
閉塞監視手段は、スクリューコンベア8内部に設けられ、スクリューコンベア8で搬送される礫分を含む土砂の温度(排土温度)を計測する温度センサ23と、運転室10内に設置され、温度センサ23で計測された排土温度が入力されると共に、当該排土温度を運転者に視認させるために表示する制御盤24とから構成される。
【0035】
温度センサ23で計測された排土温度は、閉塞推定用の設定温度と比較され、閉塞を未然に防ぐためのフィードフォワード制御用のデータとして制御盤24に入力される。排土温度が設定温度に向かう温度上昇傾向が判別されたとき、運転者による手動制御もしくは制御盤24による自動制御により、注入手段20〜22から注入する薬材を増量するようになっている。
【0036】
本実施形態にかかる泥土圧シールド掘進機1の土砂排出装置30は、上述したリボン式軸無しスクリューコンベア8と、このスクリューコンベア8に接続された排土管25とから構成される。
【0037】
リボン式軸無しスクリューコンベア8は、従来周知であって、例えば図3に示すように、搬送路31となる内筒32の内周面にその長さ方向に沿って連続的に螺旋状のブレード33を設け、内筒32を、固定外筒34内部に回転自在に支持し、内筒32の長さ方向端部にリングギアを設けると共に、リングギアに、駆動モータに設けたピニオンを噛み合わせて構成され、駆動モータで内筒32を回転させることにより、螺旋状のブレード33で掘削土砂を、カッターチャンバー5内の取り込み端部8aから排出端部8bへ向かって搬送するようになっている。
【0038】
スクリューコンベア8の搬送路31、すなわち内筒32は、礫等で閉塞を起こし易い軸付きスクリューコンベアとは異なり、最大搬送可能礫径Mが少なくとも、当該搬送路31の半径(D2/2)以上であって(図4参照)、軸付きスクリューコンベアでは搬送し得ないこのような大きな寸法の礫を搬送することが可能となっている。
【0039】
このような礫の大きさは、回転カッター2の巨礫取り込み制限区画Rで規定される。カッターチャンバー5内に取り込んだ巨礫をスクリューコンベア8で搬送できるように、スクリューコンベア8の搬送路31の内径は、巨礫取り込み制限区画Rの大きさとの関係で設定される。あるいは、巨礫取り込み制限区画Rの大きさは、搬送路31の内径との関係で設定される。
【0040】
スクリューコンベア8の排出端部8bには図4及び図5に示すように、排土管25が接続され、この排土管25は、後続台車9に組み込まれるズリ搬出台車26まで延設されて、スクリューコンベア8からの排土を、ズリ搬出台車26に排出する。排土管25内部が、掘削土砂の搬出経路35となる。
【0041】
スクリューコンベア8の排出端部8aと排土管25との接続部には、これら排土管25の搬出経路35やスクリューコンベア8の搬送路31の直径よりも大きな内径で形成された土砂滞留部38が形成され、この土砂滞留部38は、スクリューコンベア8から排土管25へ送り込まれる掘削土砂を一時的に滞留させて、土圧を生じさせつつ円滑に移動させることができるようになっている。
【0042】
図4に示すように、搬出経路35の直径D1、すなわち排土管25の内径は、スクリューコンベア8から排出される巨礫を受け入れて搬出することが可能であると共に、後述する圧力損失が生じるように、搬送路31の直径D2よりも小さく設定される(D1<D2)。排土管25に受け入れられた掘削土砂は、スクリューコンベア8による掘削土砂の押し出し作用で排土管25内を流動しつつ、ズリ搬出台車26に向かって送られる。
【0043】
スクリューコンベア8からズリ搬出台車26に達する排土管25の長さは、搬送経路35内を流動しつつ送られる掘削土砂の圧力損失によって、当該排土管25内にプラグゾーン(止水領域)が形成される長さ以上に設定される。圧力損失は、例えば想定される最大の切羽土圧に見合うように、算定され、排土管25の長さは、このような圧力損失を確保し得る長さに設定される。また、圧力損失は、掘削土砂の塑性流動性などを調整することで変化させることができる。
【0044】
圧力損失は従来周知の、「流体力学における管内流れの圧力損失の式」を用いて算定することかできる。当然のことながら、排土管25の内径が大きければ圧力損失は小さくなり、排土管25の内径が小さければ圧力損失は高くなるので、排土管25はその内径との関係で、長さが設定される。
【0045】
排土管25内部の搬出経路35を掘削土砂が移動する際の当該圧力損失がすなわち、排土管25内部での泥土圧発生に寄与し、この泥土圧で止水領域となるプラグゾーンを形成し、これにより地下水圧等に起因する土砂等の噴出を防止するようになっている。
【0046】
本実施形態にかかる泥土圧シールド掘進機の土砂排出装置30は、巨礫であっても円滑に搬送することができるリボン式軸無しスクリューコンベア8に、巨礫を受け入れることができかつプラグゾーンが形成される圧力損失を生じる長さに設定した排土管25を組み合わせることによって成立するものであって、これにより切羽土圧に対抗する泥土圧を確保しつつ、巨礫を含む掘削土砂をスムーズに排出するようになっている。
【0047】
排土管25には、その内部を移動する掘削土砂の流動性を調節するために、搬送経路35に空気を供給する空気供給管36が接続される。また、排土管25には、その内部を移動する掘削土砂の流動性を調節するために、搬送経路35に水を供給する給水管37が接続される。これら水や空気は、作泥土材など共に、掘削土砂の塑性流動性を変化させ、排土管25内部で生じさせる圧力損失、ひいては切羽土圧に対する泥土圧を調整する。
【0048】
特に、切羽土圧に対して泥土圧が高い場合、具体的には、圧力損失を生じさせる排土管25の長さが長すぎる場合に、空気や水を排土管25内の掘削土砂に混入することで、見かけ上、排土管25の長さを短く設定した状態に調節することができる。
【0049】
図示例では、空気供給管36及び給水管37は、排土管25のスクリューコンベア8側端部に設けられていて、排土管25内の掘削土砂の流動性を、排土管25の上流位置で予め適切に調節することができる。しかしながら、空気供給管36及び給水管37は、接続箇所も設置数も、適宜に設定してよい。
【0050】
次に、上記実施形態にかかる泥土圧シールド掘進機1を例示して、土砂排出装置の作用について説明する。本発明にかかる泥土圧シールド掘進機の土砂排出装置は具体的には、図6に示す粒径加積曲線(粒径2mm未満の細粒(砂分)が20%を超えず、粒径2mm以上の礫石(礫分)が80%を超える)を有する地山を対象として開発され、台湾の大南湾近郊のトンネル掘削に、守秘状態で、実際に採用されたものである。
【0051】
泥土圧シールド工法は基本的には、カッターチャンバー5からスクリューコンベア8に亘って充満する泥土に薬材を添加して塑性流動性や不透水性を確保した上で、シールドジャッキ7の推進力で切羽土圧に拮抗する泥土圧を発生させ、この泥土圧で切羽Zを安定に維持しつつ、カッターチャンバー5内から排土するスクリューコンベア8の回転速度とシールドジャッキ7の伸長速度とを適正に調整して掘進を進めていく。
【0052】
泥土圧シールド掘進機1の掘進作業にあたり、本実施形態にかかる泥土圧シールド工法では、薬材としてベントナイト系添加材などの作泥土材及び気泡材を併用して、これら薬材を第1〜第3注入手段20〜22から、回転カッター2前方の切羽Zに向かって、そしてまたカッターチャンバー5内に向けて、注入する。
【0053】
本実施形態では、カッターチャンバー5へ取り込むことが好ましくない巨礫Xが混在し得る玉石混じり砂礫や玉石層からなる地山の切羽Zを掘削する場合を対象としていて、ベントナイト系添加材に代表される作泥土材は、通常一般に認識されている細粒分の補充という意味合いから、土砂の塑性流動性や不透水性を高めるという作用に加えて、巨礫Xを破砕した礫や玉石等の礫分を含む掘削土砂に関し、当該礫分を掘削土砂と共に包み込んで当該礫分が土砂から分離してしまうことを抑制し、これら土砂と礫分との一体性を向上するようにしている。これにより、気泡材の難点である、土砂の粒子同士の付着結合を妨げる等の分離作用を抑制することができる。
【0054】
また、気泡材は、上記作泥土材と組み合わせて使用することで、通常一般に認識されている塑性流動性や不透水性の向上に関し、細粒分である作泥土材との相乗作用で、ベアリング効果をもつ塑性流動性や不透水性を発揮して礫分を含む土砂の回転カッター2や隔壁4への付着を抑制することができると共に、作泥土材では得られない気泡材のクッション作用により、掘削土砂や作泥土材の圧縮性を高めて、カッターチャンバー5内やスクリューコンベア8内で礫分が転がり移動することを妨げ、また転がり移動したとしてもそのクッション作用で泥土圧の急激な変動を抑制することができる。
【0055】
従って、薬材として、作泥土材及び気泡材を併用することにより、泥土圧を安定化することができて切羽Zを安定的に維持することができると共に、スクリューコンベア8による礫分の排土を円滑化して閉塞の発生を防止できると共に、噴出が発生することも防ぐことができる。
【0056】
このようにして作泥土材及び気泡材と混合・撹拌された礫分を含む掘削土砂は、カッターチャンバー5からスクリューコンベア8へ取り込まれ、さらに排土管25を経由して、ズリ搬出台車26に排出される。リボン式軸無しスクリューコンベア8は、内筒32の螺旋状ブレード33で、取り込み端部8aからカッターチャンバー5内の掘削土砂を取り込んで、排出端部8bへ向かって搬送する。
【0057】
リボン式軸無しスクリューコンベア8は、軸付きスクリューコンベアとは異なり、最大搬送可能礫径Mを搬送路31の半径(D2/2)以上に設定し得るものであって、巨礫を含む掘削土砂であっても、カッターチャンバー5内から取り込んでスムーズに搬送することができる。スクリューコンベア8の排出端部8bに達した掘削土砂は、スクリューコンベア8からの押し込み作用で、排土管25へと送り込まれ、排土管25はこの押し込み作用で、掘削土砂をズリ搬出台車26へ向かって搬出していく。排土管25で搬出される掘削土砂には、空気供給管36及び給水管37から適宜に空気や水が混入されて、これにより流動性が調節される。
【0058】
排土管25は予め、搬出する掘削土砂の圧力損失によってプラグゾーンが形成される長さ以上に設定されていて、これにより、排土管25からスクリューコンベア8を介してカッターチャンバー5内には、切羽土圧に対抗する泥土圧が発生する。これにより、泥土圧と切羽土圧との平衡を保ち、地下水の噴出を防止しながら、シールド掘進機1の推進量と土砂排出装置30による排土量のバランスを図って、切羽の安定を保ちつつ掘進していく。
【0059】
泥土圧シールド掘進機1の運転操作において、土圧計で検出される土圧値と設定土圧値とを比較していて、土圧値が大きい場合には、スクリューコンベア8の回転速度を増速し、これにより土圧値が設定土圧値に戻った場合には、スクリューコンベア8の回転速度を復帰させる。土圧値が下がらないときには、掘進速度を減速する。その後、土圧値が設定土圧値に戻った場合には、掘進速度を復帰させる。
【0060】
他方、土圧値が小さい場合には、スクリューコンベア8の回転速度を減速し、土圧値が設定土圧値に戻った場合には、スクリューコンベア8の回転速度を復帰させる。土圧値が上がらないときには、掘進速度を増速し、その運転状態を継続する。掘進速度は、速い方が好ましいからである。もちろん、土圧値が設定土圧値になったならば、そのときの運転状態で継続運転する。
【0061】
本実施形態にかかる泥土圧シールド掘進機の土砂排出装置30にあっては、カッターチャンバー5に接続され、最大搬送可能礫径Mが搬送路31の半径(D2/2)以上であって、礫分を含む掘削土砂をカッターチャンバー5から搬送するリボン式軸無しスクリューコンベア8と、スクリューコンベア8に接続され、当該スクリューコンベア8の搬送路31の直径D2よりも小さな直径D1に設定された搬出経路35を有し、搬出する掘削土砂の圧力損失によってプラグゾーンが形成される長さ以上に設定された排土管25とを備えたので、リボン式軸無しスクリューコンベア8及び排土管25によって大径の礫を適切に搬送することができると共に、掘削土砂の圧力損失によるプラグゾーンを形成するように長さ設定した排土管25により、リボン式軸無しスクリューコンベア8の不足な点を補って、泥土圧シールド工法による施工を確保することができる。
【0062】
すなわち、リボン式軸無しスクリューコンベア8では、掘削土砂を密実な状態で搬送することができず、特に巨礫を含む掘削土砂では、巨礫が掘削土砂を押し退けて不安定に転がり動いて、スクリューコンベア8内の圧力はきわめて不安定であるが、排土管25を、その搬出経路35に沿って搬送されていく掘削土砂の圧力損失でプラグゾーンが形成される長さに設定していて、このプラグゾーンの形成により、排土管25からスクリューコンベア8を介して、カッターチャンバー5内に、切羽土圧との平衡を保ち得る泥土圧を発生させることができ、安全に泥土圧シールド工法を施工することができる。
【0063】
また、プラグゾーンにより、地下水圧にも適切に抵抗させることができ、噴出発生を防止することができる。
【0064】
以上説明したように、リボン式軸無しスクリューコンベア8に、その欠点を補うために、圧力損失でプラグゾーンを形成する排土管25を組み合わせたことによって、巨礫が多く散在する地山であっても、通常一般の砂礫層等を掘削するのと遜色なく掘進作業を遂行することができる。
【0065】
また、排土管25に、空気供給管36や給水管37を接続するようにしたので、掘削土砂の流動性を調節して圧力損失をコントロールすることができ、排土管25内で閉塞等が発生することを防止しつつ、適切にプラグゾーンを形成することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 泥土圧シールド掘進機
2 回転カッター
5 カッターチャンバー
8 リボン式軸無しスクリューコンベア
25 排土管
30 土砂排出装置
31 スクリューコンベアの搬送路
35 排土管の搬出経路
36 空気供給管
37 給水管
Z 切羽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転カッターにより切羽から掘削され破砕されて、該回転カッター後方のカッターチャンバー内に充満される礫分を含む掘削土砂を、切羽土圧に対抗させながら該カッターチャンバーから外部に排出する泥土圧シールド掘進機の土砂排出装置において、
上記カッターチャンバーに接続され、最大搬送可能礫径が搬送路の半径以上であって、礫分を含む掘削土砂を該カッターチャンバーから搬送するリボン式軸無しスクリューコンベアと、該スクリューコンベアに接続され、当該スクリューコンベアの上記搬送路の直径よりも小さな直径に設定された搬出経路を有し、搬出する掘削土砂の圧力損失によってプラグゾーンが形成される長さ以上に設定された排土管とを備えたことを特徴とする泥土圧シールド掘進機の土砂排出装置。
【請求項2】
前記排土管には、掘削土砂の流動性を調節するために、前記搬出経路に空気を供給する空気供給管が接続されることを特徴とする請求項1に記載の泥土圧シールド掘進機の土砂排出装置。
【請求項3】
前記排土管には、掘削土砂の流動性を調節するために、前記搬出経路に水を供給する給水管が接続されることを特徴とする請求項1または2に記載の泥土圧シールド掘進機の土砂排出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−122259(P2012−122259A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274119(P2010−274119)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】