説明

泥水圧送装置

【課題】早期に目詰りを生ずることなく、排泥等から泥水分のみを効率よく吸引除去したり回収できるようにする。
【解決手段】本発明は、水中ポンプ9を介して排泥等から泥水を吸引して除去したり回収するようなときに用いられる泥水圧送装置1であって、浮力体2と、前記浮力体2の上部に配設されているバイブレータ保持用の固定プレート4と、前記浮力体2の下部に配設されて水中ポンプ用配置空間の内外を区画している濾過用のスクリーン8と、前記スクリーン8内の配置空間に設けられた前記水中ポンプ9と、前記固定プレート4上に設けられたバイブレータ14とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、地盤改良や建設現場などで貯留部や槽内に集められた汚泥や排泥等から水分を多く含む泥水を水中ポンプを介して吸引して除去したり回収する場合に好適な泥水圧送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、特許文献1に開示されているように水中ポンプおよびフロート材が一体に組み合わされて、水面上に浮遊した状態で揚水を行う装置が知られている。この揚水装置は、主に増水した河川の水位調節のために水面に浮べつつ、排水を行うために用いられるものである(以下、これを浮遊式水中ポンプという)。
【0003】
ところで、地盤改良や建設現場などで発生する排泥は、そのまま廃棄するか、或いは水分を脱水除去した上で建設残土として産廃処理する場合と、各種の再生処理方法(例えば、特許第3150453号や特許第3605709号を参照)により対象の排泥に固化材などを添加して強度を増した流動性改良土として利用する場合もある。
【0004】
以上のように排泥を産廃処理したり、再生使用する場合の何れであっても、含水分を分離する必要がある。この分離方法としては、沈降現象を利用して比重の小さな上層の泥水だけを上記した浮遊式水中ポンプで吸引除去したり、排泥(や一次分離後の泥水)に凝集剤液を添加して上層の泥水と、下層の沈降成分とに分離した上で、上澄みの泥水だけを上記した浮遊式水中ポンプを用いて吸引して除去したり回収することが考えられる。
【特許文献1】特開閉11−287194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した浮遊式水中ポンプにより排泥から上層側の泥水を吸引除去したり回収するといっても、実際にはポンプ入口から吸い込んだ下層側の泥土などがポンプハウジング内のインペラーに付着したり、かみ込み現象によって正常な吸引作動を維持し難くなる。また、この対策として、泥土などの侵入を防止するためポンプの入口側にフィルターを取り付けることもあるが、泥土などがそのフィルターに付着して、早期に目詰りを生じ、その都度、フィルターの交換や付着物の除去などの作業が必要で、メンテナンスを頻繁に行わなくてはならず、効率的な除去や回収が期待できなかった。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するものであり、簡単な構造であって、早期に目詰りを生ずることなく、例えば、排泥から泥水分だけを効率的に圧送したり回収可能にした泥水圧送装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明は、図面を参照して特定すると、水中ポンプ9を介して排泥等から泥水を吸引して除去したり回収するようなときに用いられる泥水圧送装置1であって、浮力体2と、前記浮力体2の上部に配設されているバイブレータ保持用の固定プレート4と、前記浮力体2の下部に配設されて水中ポンプ用配置空間の内外を区画している濾過用のスクリーン8と、前記スクリーン8内の配置空間に設けられた前記水中ポンプ9と、前記固定プレート4上に設けられたバイブレータ14とを備えたことを特徴としている。
【0008】
なお、本発明において、「排泥」とは、自然沈降により比重の小さな泥水側および比重の大きな泥土側に分離可能な泥状物で、建設汚泥処理土利用技術基準(国土交通省)で規定している「建設汚泥」を含む。また、「泥水」とは、そのまま下水道や河川に放流すると水質汚濁などの公害要因の有無にかかわらず、前記排泥等から分離された上層側の水ないしは土等の微細粒分で汚れている水を含む広義なものである。
【0009】
上記した本発明の泥水圧送装置は次のように具体化されることがより好ましい。
(ア)、前記浮力体は、浮環2および該浮環を支持している浮環支持枠3を有しており、前記浮環支持枠3の上部に複数の上脚杆5を介して前記固定プレート4を支持しているとともに、前記浮環支持枠3の下部に複数の下脚杆6を設け、該下脚杆6同士の間および底部に前記スクリーン8を張設している構成である(請求項2)。
(イ)、前記水中ポンプの出口に接続されて、前記固定プレートの略中心を摺動可能に貫通して上方へ突出している排出管10を有している構成である(請求項3)。
【0010】
(ウ)、前記排出管10は、頂部がエルボ15およびホースジョイント16を介してホース17に接続されるとともに、前記エルボ15に設けられた吊り下げ用の突片部材18を有している構成である(請求項4)。
(エ)、前記固定プレート4の下部において、前記排出管10の外周に一体化されたばね受け11と、前記排出管10の外周に介挿されているとともに、下端を前記ばね受け11に着座し、上端を前記固定プレート4の下面側に当接している圧縮コイルばね12とを有している構成である(請求項5)。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、泥水中に浮遊状態に配置した後、バイブレータを駆動することにより、装置の周囲に振動が生じ、泥土が完全分離されていない揺変性(チキソトロピック)の状態であっても、振動による液状化現象によって、装置周囲の振動の影響を及す範囲に水が集り、この状態で水中ポンプを稼働すれば、泥水のみを効率よく除去したり回収できる。また、この装置構成では、スクリーンに粗粒分を含む泥土などが付着しても、スクリーン自体が振動篩として機能し、振るい落とされやすくなるため、目詰りがおき難くメンテナンス回数を激減できる。
【0012】
請求項2の発明では、浮環支持枠と上脚杆および下脚杆による装置の骨格構造によって、破損し難い剛体構造で、かつ装置周囲にバイブレータの振動が伝達されやすい構造を実現できる。
【0013】
請求項3の発明では、水中ポンプが竪型で、排出管を固定プレートに下から上へ貫通しているため、排出管用の支持部材を省略したり請求項4のように更に展開可能となる。すなわち、請求項4の発明では、移送用ホースをホースジョイントを介して最適な状態で接続可能となったり、例えば、以上の装置をバックホウなどの機器類で吊り下げて使用する場合、排出管に接続されているエルボを利用して最適状態で吊り下げ可能となる。
【0014】
請求項5の発明では、バイブレータの振動が圧縮コイルばねの減衰作用により、水中ポンプに直に作用することがなくなって、水中ポンプに対する振動の影響を減少し、装置の信頼性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の好適な実施形態について添付図面を参照して説明する。この説明では、図1と図2を参考にして本発明を適用した泥水圧送装置の構造を詳述した後、図3に示した装置の使用例に言及する。
【0016】
(構造)図1と図2の泥水圧送装置1は、浮力体としての浮環2および浮環2を保持している浮環支持枠3と、浮環支持枠3の上側を構成している複数の上脚杆5に配設されている固定プレート4と、浮環支持枠3の下側を構成している複数の下脚杆6および各下脚杆6の下端に連結されている円環状の下連結枠7と、各下脚杆6の外側および下連結枠7の下側を覆って水中ポンプ用配置空間を区画している濾過用のスクリーン8と、スクリーン8内の配置空間に設けられた水中ポンプ9と、固定プレート4上に設けられたバイブレータ14とを備えている。
【0017】
ここで、浮環2は、樹脂成形品であり、水中ポンプ9の外周囲よりかなり大きな外径からなる環状に形成されている。浮環支持枠3は、図2に示されるように、浮環2を内側に拘束した状態で保持し、上周囲部から複数の上脚杆5を斜め上方へ突出をしているとともに、下周囲部からも複数の下脚杆6を斜め下方へ突出している。各上脚杆5と各下脚杆6は、浮環支持枠3の周囲にそれぞれ等間隔に設けられている。各上脚杆5は、上に行くほど互いに近づく傾きで突出され、上端が矩形の固定プレート4に一体化されている。
【0018】
固定プレート4は、複数の上脚杆5で略水平に支持された状態となっており、中心に設けられた貫通孔4aと、該貫通孔4aに装着された略筒形のゴムプッシュ13を有している。ゴムブッシュ13は、例えば、後述する排出管10を摺動可能に挿通することにより、泥水の貫通孔4aを介した固定プレート4上への跳ね上がりを防止可能にする。以上の固定プレート4上には、ゴムブッシュ13の両側に位置して、一対のバイブレータ14がボルトなどの適宜な取付手段を介して固定されている。各バイブレータ14は市販品であり、振動強度が多段に切換可能となっている。
【0019】
浮環支持枠3の各下脚杆6は、下に行くほど互いに近づく傾きで突出されるとともに、各下端同士を連結した上下一対の円環状の下連結枠7を有している。各下脚杆6および下連結枠7の外周および底部側はスクリーン8で覆われている。
【0020】
スクリーン8は、所定メッシュの金網が用いられているが、金網以外のメッシュ形成部材でもよい。そして、スクリーン8は、各下脚杆6および下連結枠7等に対応部を装着した状態で下脚杆6同士の間および下連結枠7の底部に張設されており、浮環2より下側(各下脚杆6および下連結枠7)、つまり水中ポンプ用の配置空間ないしは下部浸漬部分の内外を区画している。該配置空間には水中ポンプ9が配置されている。
【0021】
水中ポンプ9は、竪型遠心式であり、下部外周を入口(吸引口)とし、ハウジング内に泥水取入れ用の図示しないインペラーおよび該インペラーに直結した駆動用モータなどを内蔵している。水中ポンプ9の上部中心には、出口(排出口)が設けられ、該出口に対し排出管10が一体に突設されている。
【0022】
排出管10は、固定プレート4に対し前記したゴムプッシュ13を介して上下に摺動可能に貫通している。そして、排出管10には、図2に示されるように、固定プレート4の下部側にあって、排出管10の外周に鍔状に装着されているばね受け11と、排出管10をコイル径内に挿通した状態でばね受け11と固定プレート4との間に配置されている圧縮コイルばね12とを有している。圧縮コイルばね12は、下端がばね受け11に着座し、上端が固定プレート4の下面側に当接されている。
【0023】
また、排出管10の上端、つまり固定プレート4上に突出された突出端には逆L形のエルボ15(の一端)が結合一体化されている。該エルボ15の他端には、ホースジョイント16を介してホース17が接続されている。エルボ15の頂部には、吊り下げ用突片部材18が溶接等により取り付けられている。突片部材18には装置吊下げ用のワイヤWの下端が連結される。このワイヤWには、水中ポンプ9およびバイブレータ14の各給電用ケーブル19が絡げられる。そして、水中ポンプ9およびバイブレータ14は、電源側のオン・オフ操作により各ケーブル19などを介してそれぞれが独立して駆動される。
【0024】
(使用例)以上の排泥回収装置1を用いた泥水の除去ないしは回収手順について、図3を用いて明らかにする。図3の用途は、建設工事現場に掘削した、いわゆる釜場と称される排泥用貯留ピットPに集められた排泥で、沈降現象により上層に溜まる泥水を回収するときの手順例である。つまり、貯留ピットPの排泥は、静置されることで、泥水分を多く含む上層と、粗粒分を多く含む下層に分離されている。なお、図3では理解しやすくするため、完全分離している状態を示しているが、実際にはこのように明確に分離されず不明瞭な境界となっている。
【0025】
まず、準備操作としては、図3(a)に示されるように、泥水圧送装置1がバックホウ20などの先端に吊下げられた状態で貯留ピットP内の泥水中に投入され、ホース17がその先端側を不図示の回収槽などへ配置される。この状態では、ワイヤWの吊下げによる張力が取り除かれ、図2からも分かるように、浮環2の浮力により、水中ポンプ9が泥水中に浸漬し、浮環支持枠3の上半部が液面WL上に浮び、固定プレート4およびバイプレータ14が空中に露出される。以上の浮遊状態において、泥水圧送装置1は、バイブレータ14が左右一対であるため浮力バランスが均等であり、また、水中ポンプ9が浸漬状態であるため重心も釣り合い、ほぼ水平状態に安定して浮遊する。
【0026】
図3(b)は、以上の浮遊状態において、バイブレータ14を駆動したときの状態を模式的に示している。バイブレータ14の振動は、固定プレート4側から、上脚杆5−浮環支持枠3−下脚杆6並びに下連結枠7およびスクリーン8へと伝達されつつ周囲の泥水に伝達される。
【0027】
これに対し、水中ポンプ9は、排出管10がゴムプッシュ13を介して固定プレート4に接触したり圧縮コイルばね12の存在によりバイブレータ14からの振動を減衰して、大きな振動を受けないようになっている。すなわち、この構造では、バイブレータ14からの振動に伴う、水中ポンプ9側の悪影響を極力抑えられるようになっている。そして、上記した振動により、泥水は揺変状態となって液状化現象を生じ、泥水圧送装置1の振動の影響が大きな範囲では、図3(b)中、破線で囲う範囲に示したようにごく微細粒分を含む水のみが存在し、粗粒分を含む箇所とは隔離される。
【0028】
従って、振動状態で水中ポンプ9を駆動することにより、スクリーン8を通過する微細粒分を含む水、つまり泥水のみが吸い込まれて除去されたり回収される。なお、この吸引作業中に、土等の粗粒分がスクリーン8に付着したとしても、スクリーン8はそれ自身が振動篩として機能し、スクリーン面から強制剥落するため目詰りを生じない。
【0029】
図3(c)は以上の泥水の除去や回収作業が進んで、上澄み分がなくなるまで継続された後の作業を示している。すなわち、貯留ピットPには、残余の排泥分(泥土など)のみがピット底面に残るため、泥水圧送装置1を撤去し、別の掘削用バックホウ21により、その残滓分を掘削除去することにより、1作業サイクルを終了する。回収された排泥は含水分が低く、減容化されているため、例えばダンプトラックで運搬して産廃処理する場合にはその処理費用を削減でき、また、添加材を加えて再生処理土として再利用する場合にも極めて有利なものとなる。
【0030】
なお、以上の形態は本発明を何ら制約するものではない。本発明は、請求項1で特定される技術要素を備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更してり、展開可能なものである。その一例としては、本発明の浮力体として、円環状の浮環を用いたが、それに代えて発泡材などの低比重材料からなる浮体を用いてもよく、更にその形状も円環状に限定されるものでなく、四角形状なども採用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明形態の泥水圧送装置を示す概略斜視図である。
【図2】図1の泥水圧送装置の概略断面図である。
【図3】(a)〜(c)は上記装置を用いた泥水除去又は回収手順を示す模式図である。
【符号の説明】
【0032】
1…泥水圧送装置
2…浮環(浮力体)
3…浮環支持枠(浮力体)
4…固定プレート(4aは貫通孔)
5…上脚杆
6…下脚杆
8…濾過用スクリーン
9…水中ポンプ
10…排出管
11…ばね受け
12…圧縮コイルばね
14…バイブレータ
15…エルボ
16…ホースジョイント
17…ホース
18…吊り下げ用突片部材
W…吊り下げ用ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中ポンプを介して排泥等から泥水を吸引して除去したり回収するようなときに用いられる泥水圧送装置であって、
浮力体と、前記浮力体の上部に配設されているバイブレータ保持用の固定プレートと、前記浮力体の下部に配設されて水中ポンプ用配置空間の内外を区画している濾過用のスクリーンと、前記スクリーン内の配置空間に設けられた前記水中ポンプと、前記固定プレート上に設けられたバイブレータとを備えたことを特徴とする泥水圧送装置。
【請求項2】
前記浮力体は、浮環および該浮環を支持している浮環支持枠を有しており、前記浮環支持枠の上部に複数の上脚杆を介して前記固定プレートを支持しているとともに、前記浮環支持枠の下部に複数の下脚杆を設け、該下脚杆同士の間および底部に前記スクリーンを張設していることを特徴とする請求項1に記載の泥水圧送装置。
【請求項3】
前記水中ポンプの出口に接続されて、前記固定プレートの略中心を摺動可能に貫通して上方へ突出している排出管を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の泥水圧送装置。
【請求項4】
前記排出管は、頂部がエルボおよびホースジョイントを介してホースに接続されるとともに、前記エルボに設けられた吊り下げ用の突片部材を有していることを特徴とする請求項3に記載の排泥回収装置。
【請求項5】
前記固定プレートの下部において、前記排出管の外周に一体化されたばね受けと、前記排出管の外周に介挿されているとともに、下端を前記ばね受けに着座し、上端を前記固定プレートの下面側に当接している圧縮コイルばねとを有していることを特徴とする請求項3又は4に記載の泥水圧送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−202456(P2008−202456A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37846(P2007−37846)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【Fターム(参考)】