説明

注射錠

【課題】 用時溶解型の注射製剤において、活性成分の分解が少なく、不溶性微粒子の生成が少ない製剤が求められていた。
【解決手段】 活性成分を錠剤とすることで、活性成分の分解が少なく、不溶性微粒子の生成が少ない用時溶解型の注射製剤を製造することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射製剤に用いる錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に注射製剤を製造する場合、活性成分の品質を溶液状態で担保できる時は、液剤が選択される。しかし、活性成分の品質を溶液状態では担保できない時は、用時溶解型の注射製剤が選択される。一般的には、用時溶解型の注射製剤の活性成分は、凍結乾燥粉末が使用されている。
特許文献1には、注射用キット及び注射用器具が記載されている。段落0071には、注射用キットに使用する薬剤の形態として、凍結乾燥、減圧乾燥、噴霧乾燥などの易溶性化、微細粉末化などの処理をした粉剤、顆粒剤、錠剤などが使用できることが記載されているが、具体的にどのような錠剤が使用できるのかについては記載されていない。
特許文献2には、医療用容器が記載されている。段落0009には、使用される薬剤は、液剤でも固形剤でも、更に固形剤にあっては散剤でも錠剤でも凍結乾燥剤でも良いと記載されているが、具体的にどのような錠剤が使用できるのかについては記載されていない。
特許文献3には、用時溶解型の注射用ワクチン製剤に関する発明が記載されており、少なくとも一つの凍結乾燥した抗原性成分および溶解助剤を含有してなる、安定な圧縮されたワクチン組成物が記載されている。また、1つの錠剤を100mlの水に溶解した場合、1分以内で溶解することが記載されているが、通常の経口投与用の錠剤と同様に、錠剤溶解助剤、賦形剤、結合剤などを含んでいる。
なお、注射用製剤ではないが、用時溶解型の点眼薬の中には、活性成分の錠剤を溶解液中に溶解し、用時調整するものもある。例えば、千寿製薬から市販されているカタリン点眼液(商品名)、山之内製薬から市販されているタチオン点眼用(商品名)である。ただし、カタリン点眼液(商品名)の場合、その溶解時間は約3分ぐらいである。
また、一般の錠剤は、硬度が50〜100N程度であり、1分程度で溶解することはない。例えば、速溶性の錠剤であっても、概ね約15分程度の溶解時間を要する。また、比較的もろい錠剤として知られる口腔内崩壊錠の場合であっても、口腔内崩壊錠を製造する時の打錠圧は約5kN以上である。
【特許文献1】特開2001−299912号公報
【特許文献2】特開平11−104214号公報
【特許文献3】特表2003−507414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
活性成分によっては、熱、光または水分による影響を受けやすいものもあり、また、凍結乾燥粉末を収容する容器に用いる素材との組合せによっては、不溶性微粒子を発生させるものもあり、また活性成分自体が分解するものもある。そのような状況下、用時溶解型の注射製剤において、いかにして活性成分の分解を防止するか、いかにして不溶性微粒子の生成を抑制するかが、課題とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、用時溶解型の注射製剤の活性成分を錠剤とすることにより、上記の課題が解決できることを見出した。また、錠剤の硬度を20〜50Nにすることで、溶解液への溶解時間も約1分ぐらいであることを確認し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)実質的に活性成分及び所望により安定化剤からなり、硬度が20〜50Nである、打錠された注射製剤用の錠剤。
(2)活性成分の粉末または顆粒及び所望により安定化剤の粉末または顆粒を混合し、2〜5kNの打錠圧で打錠することにより製造された注射製剤用の錠剤。
(3)単位面積あたりの打錠圧が2〜5kN/cm2である(2)記載の錠剤。
(4)無菌である(1)〜(3)のいずれかに記載の錠剤。
(5)無塵である(1)〜(3)のいずれかに記載の錠剤。
(6)(1)〜(3)のいずれかに記載の錠剤を含む、注射製剤。
(7)(1)〜(3)のいずれかに記載の錠剤を含む、用時溶解用の注射製剤。
(8)(1)〜(3)のいずれかに記載の錠剤が封入された薬剤収納容器と溶解液を収納した容器からなる、注射用キット製剤。
(9)薬剤収納容器の接薬部の素材がポリエチレンである(8)記載の注射用キット製剤。
(10)活性成分がセフォタキシムナトリウムである、(1)〜(3)のいずれかに記載の錠剤。
(11)活性成分がイミペネム及びシラスタチンナトリウムである、(1)〜(3)のいずれかに記載の錠剤。
【発明の効果】
【0005】
本発明の注射製剤用の錠剤は、光、熱、水分による活性成分の分解を抑制することができ、また、活性成分を収容する容器から生成する、あるいは容器との接触により活性成分より生成する不溶性微粒子量を抑制することができる。また、注射用の錠剤とすることで、凍結乾燥品とは異なり、充てん時の飛散等が防止でき、有用である。また、活性成分を粉末状ではなく,圧縮された錠剤とすることで、キット製剤自体の小型化を達成できる。また、医療現場で錠数を変化させることにより投与量を調節することが可能であるため、用量の異なる注射用製剤を容易に調製することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の注射製剤用の錠剤は、例えば、活性成分の粉末または顆粒及び所望により安定化剤の粉末または顆粒を混合し、1〜5kNの打錠圧で打錠することにより製造することができる。
本発明の錠剤は、実質的に活性成分及び所望により安定化剤からなる錠剤であり、他の添加剤(例えば、崩壊剤、結合剤など)を含まない。また、本発明には、活性成分のみからなり、硬度が20〜50Nである、打錠された注射製剤用の錠剤も含まれる。
本発明の製剤は、活性成分の粉末または顆粒及び所望により安定化剤の粉末または顆粒を混合し、打錠して製造することができる。活性成分の粉末または顆粒のみを打錠して製造してもよいし、許容される安定化剤を粉末または顆粒として混合し、打錠することもできる。
【0007】
例えば、活性成分としては、注射製剤に用いることができる活性成分であれば、いかなる活性成分でも使用することができる。例えば、既に用時溶解型の注射製剤で使用されている活性成分の凍結乾燥粉末をそのまま打錠して錠剤として使用することもできる。活性成分は、その構造、作用、用途において特に制限されるものでなく、たとえば、滋養強壮剤、解熱鎮痛消炎剤、向精神病剤、抗不安薬、抗うつ剤、催眠鎮静剤、鎮痙剤、胃腸薬、制酸剤、下剤、鎮咳去痰剤、抗ヒスタミン剤、強心剤、不整脈用剤、利尿剤、血圧降下剤、血管収縮剤、冠血管拡張剤、末梢血管拡張剤、利胆剤、抗生物質、抗ウイルス剤、化学療法剤、糖尿病用剤、骨粗しょう症用剤、骨格筋弛緩薬、抗高脂血症剤、抗ガン剤、ステロイド剤等に使用される活性成分などが挙げられる。特に、抗生物質や抗ガン剤に使用される活性成分が好ましい。たとえば、抗生物質には、例えば、セファレキシン、アモキシシリン、塩酸ピブメシリナム、塩酸セフォチアムなどのセフェム系、ペネム系、カルバペネム系、マクロライド系、アミノグリコシド系、ニューキノロン系およびポリペプチド系抗生物質などが含まれる。
【0008】
活性成分は、低分子化合物であってもよく、タンパク製剤であってもよい。また、その製薬上許容される塩(たとえば、塩酸塩、硫酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩など)、それらの溶媒和物(たとえば、1水和物、2水和物など)であってよい。
例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩等)およびアンモニウム塩等のような無機塩基との塩、ならびに有機アミン塩(例えば、トリエチルアミン塩、ジイソプロピルエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン塩等)のような有機塩基との塩などが挙げられる。
酸付加塩としては、無機酸付加塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等)、有機カルボン酸またはスルホン酸付加塩(例えば、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩等)が挙げられる。さらに、塩基性または酸性アミノ酸との塩(例えば、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸との塩等)なども挙げられる。
【0009】
また、光、熱、水分により分解を受けやすい活性成分、活性成分を収容する容器との接触により容器から不溶性微粒子を生成させる活性成分、活性成分を収容する容器との接触により分解を受けやすい活性成分などに使用できる。たとえば、日本薬局方記載の注射剤の不溶性微粒子試験法に従って試験した場合に、光遮へい法という測定において、1mLあたりの粒子径10μm以上の微粒子が25個、粒子径25μm以上の微粒子が3個を超えて生じるような活性成分を含む大容量注射製剤や1容器あたり粒子径10μm以上の微粒子が6000個、粒子径25μm以上の微粒子が600個を超えて生じるような活性成分を含む小容量注射製剤などが挙げられる。
【0010】
安定化剤としては、注射用製剤に使用することが許容されている安定化剤を意味し、アスコルビン酸、L-アスパラギン酸、アセチルトリプトファン、アセチルトリプトファンナトリウム、アミノエチルスルフォン酸、L-アラニン、亜硫酸水素ナトリウム、L-アルギニン、アルブミン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、イノシトール、エタノール、エチレンジアミン、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化第二鉄、塩化ナトリウム、塩化ベンゼトニウム、塩化マグネシウム、塩酸、塩酸アルギニン、塩酸システイン、L-塩酸ヒスチジン、塩酸リジン、果糖、カプリル酸ナトリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、希塩酸、キシリトール、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グリシン、グリセリン、グルコン酸カルシウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸マグネシウム、L-グルタミン酸L-リジン、クレアチニン、ゴマ油、コンドロイチン硫酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、ジエタノールアミン、ジエチレントリアミン五酢酸、L-シスチン、L-システイン、臭化カルシウム、酒石酸、水酸化ナトリウム、精製ゼラチン、精製大豆レシチン、精製白糖、セスキオレイン酸ソルビタン、ゼラチン加水分解物、ソルビタン脂肪酸エステル、D-ソルビトール、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、チオグリコール酸、デキストラン40、糖酸カルシウム、トリエタノールアミン、トロメタモール、ニコチン酸アミド、乳酸、乳酸ナトリウム液、乳糖、尿素、濃グリセリン、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、L-ヒスチジン、人血清アルブミン、氷酢酸、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、ブドウ糖、プロピレングリコール、ヘパリンナトリウム、ベンジルアルコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン(160)、ポリオキシプロピレン(30)、グリコール、ポリソルベート20、ポリソルベート80、マクロゴール400、マクロゴール4000、マルトース、D-マンニトール、無水ピロリン酸ナトリウム、無水マレイン酸、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、メタスルホ安息香酸ナトリウム、モノエタノールアミン、硫酸マグネシウム、リン酸、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムなどを使用することができる。特に、アスコルビン酸、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムなどが好ましい。
これらの安定化剤の量は、活性成分に対して、0〜50重量%、好ましくは、0〜30重量%、さらには0〜10重量%、0〜5重量%、0〜1重量%である。
【0011】
打錠圧は約1〜5kNが好ましく、さらには約2〜5kN、特に、約3〜5kNが好ましい。打錠圧が1kNよりも小さい場合、錠剤が容易に崩壊してしまい好ましくない。また、打錠圧が5kNよりも大きい場合、錠剤の溶解性が悪くなり、好ましくない。
単位面積あたりの打錠圧は約2〜5kN/cm2が好ましく、さらには約3〜5kN/cm2が好ましい。
錠剤は、どのようなものでも使用できるが、特に、直径が7〜12mmであり、厚さが3〜8mmである錠剤が好ましい。
本発明の錠剤は、打錠された錠剤であり、単に凍結乾燥したような、打錠されていない固形物は含まない。
本発明の錠剤の硬度は、約20〜50Nが好ましく、さらには約30〜50N、特に、約40〜50Nが好ましい。特に記述する必要はないでしょう.
【0012】
本発明の錠剤は、注射製剤用の錠剤であるため、無菌、無塵で製造したものが好ましい。無菌で製造するためには、予め滅菌された杵臼、手動式のハンドプレス装置を用いて、或いは菌による汚染防止措置が施された装置内でこれらの滅菌処理を行った後、薬剤粉末を前述の臼に充てんし、これを杵等で上下より所定の力で圧縮して製造すればよい。また、無塵で製造するためには、塵埃発生の可能性があるハンドプレス装置の摺動部分を薬剤充てん部より下部となるようにし、併せて装置内の気流を層状に下降するものとすることで発生する得られる錠剤への塵埃の混入を回避することが可能である。また杵、臼の摩擦により発生する可能性のある塵埃混入の回避については、杵と臼のクリアランスを多く取り、これらが接触することのないようにして製造すればよい。
【0013】
本発明の錠剤は、用時溶解用の注射製剤に使用することができる。用時溶解型の注射製剤とは、投薬時に調整する注射製剤であり、液体状態での保存が困難な活性成分の場合によく用いられる注射製剤である。
本発明の錠剤は、アンプル、バイアル、キット製剤に収容して使用することができる。
キット製剤としては、薬剤収納容器と溶解液を収納した容器からなる、注射用キット製剤(たとえば、ダブルバックなど)を挙げることができる。キット製剤の薬剤を収容する部分に本発明の錠剤を収容することができる。特に、薬剤収納容器の接薬部の素材がポリエチレン(たとえば、低密度ポリエチレンなど)である場合、活性成分によっては不溶性微粒子を生成させるが、本発明の錠剤を用いた場合は、粉末を用いる場合に比較して著しく不溶性微粒子の生成を抑制することができる。
本発明の注射製剤用の錠剤は、必要に応じて生理食塩水に溶解し、注射液として使用される。本発明の注射製剤用の錠剤は、使用前に調剤を要する注射剤として、すなわち用時溶解型の注射剤として、用いることができる。用時注射用水あるいは輸液(例、生理食塩水、ブドウ糖など)で溶解して、静脈注射剤、皮下注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤などの注射剤として用いることができる。
(実施例)
以下に、実施例および試験例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明の範囲は何らこれらによって限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
ダブルバッグとして市販されているセフメタゾンキット点滴静注用1g(左記は商品名、活性成分はセフメタゾールナトリウム)について、粉末を取り出し、以下の手順に従って、注射錠を製造した。薬剤粉末1gを径12mmの円形臼に充てんし,これを上下より平面杵で200〜300kgの力で圧縮成形した。圧縮には圧縮操作に伴う摺動により発生する可能性のある塵埃が粉末部に混入することのないよう層状の下降気流下において摺動部分が充てん粉末部より下部となるよう設置された手動式の圧縮装置を用いた。得られた錠剤は,連通操作により溶解可能な溶解液と連結された最内層ポリエチレン製の薬剤充てん袋部に充てんし、ヒートシールを行い密封し、注射用キット製剤を得た。
【実施例2】
【0015】
バイアルとして市販されているセフォタックス注射用1g(左記は商品名、活性成分はセフォタキシムナトリウム)について、粉末を取り出し、以下の手順に従って、注射錠を製造した。薬剤粉末1gを径12mmの円形臼に充てんし,これを上下より平面杵で200〜300kgの力で圧縮成形した。圧縮には圧縮操作に伴う摺動により発生する可能性のある塵埃が粉末部に混入することのないよう層状の下降気流下において摺動部分が充てん粉末部より下部となるよう設置された手動式の圧縮装置を用いた。得られた錠剤は,連通操作により溶解可能な溶解液と連結された最内層ポリエチレン製の薬剤充てん袋部に充てんし、ヒートシールを行い密封し、注射用キット製剤を得た。
【実施例3】
【0016】
ダブルバッグとして市販されているチエナム点滴用1g(左記は商品名、活性成分はイミペネム/シラスタチンナトリウム)について、粉末を取り出し、以下の手順に従って、注射錠を製造した。薬剤粉末1gを径12mmの円形臼に充てんし,これを上下より平面杵で200〜300kgの力で圧縮成形した。圧縮には圧縮操作に伴う摺動により発生する可能性のある塵埃が粉末部に混入することのないよう層状の下降気流下において摺動部分が充てん粉末部より下部となるよう設置された手動式の圧縮装置を用いた。得られた錠剤は,連通操作により溶解可能な溶解液と連結された最内層ポリエチレン製の薬剤充てん袋部に充てんし、ヒートシールを行い密封し、注射用キット製剤を得た。
【実施例4】
【0017】
バイアルとして市販されているサンセファール静注用1g(左記は商品名、活性成分はセフピラミドナトリウム)について、凍結乾燥粉末を取り出し、以下の手順に従って、注射錠を製造した。薬剤粉末1gを径12mmの円形臼に充てんし,これを上下より平面杵で200〜300kgの力で圧縮成形した。圧縮には圧縮操作に伴う摺動により発生する可能性のある塵埃が粉末部に混入することのないよう層状の下降気流下において摺動部分が充てん粉末部より下部となるよう設置された手動式の圧縮装置を用いた。得られた錠剤は,連通操作により溶解可能な溶解液と連結された最内層ポリエチレン製の薬剤充てん袋部に充てんし、ヒートシールを行い密封し、注射用キット製剤を得た。
【実施例5】
【0018】
バイアルとして市販されているヤマテタン静注用1g(左記は商品名、活性成分はセフォテタン)について、凍結乾燥粉末を取り出し、以下の手順に従って、注射錠を製造した。薬剤粉末1gを径12mmの円形臼に充てんし,これを上下より平面杵で200〜300kgの力で圧縮成形した。圧縮には圧縮操作に伴う摺動により発生する可能性のある塵埃が粉末部に混入することのないよう層状の下降気流下において摺動部分が充てん粉末部より下部となるよう設置された手動式の圧縮装置を用いた。得られた錠剤は,連通操作により溶解可能な溶解液と連結された最内層ポリエチレン製の薬剤充てん袋部に充てんし、ヒートシールを行い密封し、注射用キット製剤を得た。
【実施例6】
【0019】
予め滅菌された杵臼、手動式のハンドプレス装置を用いて菌による汚染防止措置が施された装置内で薬剤粉末を前述の臼に充てんし、これを杵等で上下より圧縮して製造した。また、無塵で製造するために、塵発生の可能性があるハンドプレス装置の摺動部分を薬剤充てん部より下部となるように設置し、併せて装置内の気流を層状に下降するものとすることで、発生する塵埃の錠剤への混入を回避した。
試験例1
【0020】
セフォタックス注射用1g(商品名)について、市販されている粉末と実施例2で得られた製剤について、光照射保存後の活性成分の残存率を比較した。3570 luxで1週間照射保存した後の活性成分の残存率、3570 luxで2週間照射保存した後の活性成分の残存率を調べた。結果を以下の表1に示す。
【0021】
【表1】

試験例2
【0022】
チエナム点滴用1g(商品名)について、市販されている粉末と実施例3で得られた製剤について、ダブルバッグ中で加熱保存後の不溶性微粒子数を比較した。80℃で2週間保存した後に溶解液に溶かし、その時に発生する不溶性微粒子数を、Hiac/Royco社製不溶性微粒子測定装置を用いて日本薬局法に従い測定した。なお、ダブルバッグとしては、接薬部の素材が、低密度ポリエチレンであるものを用いた。結果を以下の表2及び図1に示す。
【0023】
【表2】

【実施例7】
【0024】
式:
【化1】

で示される化合物(ドリペネム)(250mg(力価))について、内径6.5〜15mmまでの各種臼に充てんし、圧縮面が平面である杵を用い、これらを錠剤径に応じて適宜1〜15kN(単位面積あたり1.3〜18kN/cm2)の圧縮力で圧縮した。圧縮された錠剤を取出し、連通操作により溶解可能な溶解液と連結された最内層ポリエチレン製の薬剤充てん袋部に充てんし、ヒートシールを行い密封し、注射用キット製剤を得た。
試験例3
【0025】
実施例7で得られた製剤について、ダブルバッグの溶解液部を上から圧をかけ連通させた時点を開始時点とし、連通されたダブルバッグの溶解液部,薬剤充てん袋部を1秒間に約1回周期で交互に押し、内容物を完全に溶解させるために要した時間を測定した。結果を以下の表3及び図2に示す。
【0026】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】チエナム点滴用1g(商品名)について、市販されている粉末と実施例3で得られた製剤について、ダブルバッグ中で80度で2週間保存し、その後溶解液に溶かし、その時に発生する不溶性微粒子数を比較した図である。
【図2】試験例3の結果である。横軸が圧縮力、縦軸が溶解時間である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に活性成分及び所望により安定化剤からなり、硬度が20〜50Nである、打錠された注射製剤用の錠剤。
【請求項2】
活性成分の粉末または顆粒及び所望により安定化剤の粉末または顆粒を混合し、2〜5kNの打錠圧で打錠することにより製造された注射製剤用の錠剤。
【請求項3】
単位面積あたりの打錠圧が2〜5kN/cm2である請求項2記載の錠剤。
【請求項4】
無菌である請求項1〜3のいずれかに記載の錠剤。
【請求項5】
無塵である請求項1〜3のいずれかに記載の錠剤。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の錠剤を含む、注射製剤。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の錠剤を含む、用時溶解用の注射製剤。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれかに記載の錠剤が封入された薬剤収納容器と溶解液を収納した容器からなる、注射用キット製剤。
【請求項9】
薬剤収納容器の接薬部の素材がポリエチレンである請求項8記載の注射用キット製剤。
【請求項10】
活性成分がセフォタキシムナトリウムである、請求項1〜3のいずれかに記載の錠剤。
【請求項11】
活性成分がイミペネム及びシラスタチンナトリウムである、請求項1〜3のいずれかに記載の錠剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−143594(P2006−143594A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331380(P2004−331380)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】