説明

洗剤粒子の製造方法

【課題】噴霧乾燥における製造法によって得られた粒子であるにもかかわらず、嵩密度を0.4g/cm3以上に高めた有リン系洗剤粒子を効率よく製造する方法を提供すること、及び0.4〜0.6g/cm3という中程度の嵩密度を有し、粒度分布がシャープな有リン系洗剤粒子を効率よく製造する方法を提供すること。
【解決手段】工程I):スラリー中の固形分換算で、a)10〜30重量%の界面活性剤、b)5〜30重量%のリン酸塩、c)5重量%以下の炭酸ナトリウムを含む洗剤スラリーを調製する工程、工程II):工程I)で得られた洗剤スラリーを乾燥後の噴霧乾燥粒子の一次粒子径が300μm以下になるように噴霧乾燥して、嵩密度が0.4g/cm以上の噴霧乾燥粒子を得る工程を有する、洗剤粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料等の洗濯に用いられる洗剤粒子の製造方法に関する。
さらに詳しくは、噴霧乾燥によって嵩密度が0.4g/cm以上の粒子を製造する有リン系の洗剤粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の洗剤粒子の製造方法としては、洗剤スラリーを噴霧乾燥する工程を含む製造方法が主流である。その中でも、近年、省資源的観点での合理性、及び消費者の持ち運び易さといった利便性から、高密度の洗剤粒子への需要が高まってきている。
そこで、一般に高密度洗剤粒子の製造方法では、0.4g/cm3以下の低密度の噴霧乾燥粒子を製造した後、この噴霧乾燥粒子を圧密造粒、凝集造粒、攪拌造粒、押出造粒等の造粒加工したり、混練、粉砕加工して高密度化する工程を必須としている(特許文献1、2)。
【特許文献1】特開昭61−69897号公報
【特許文献2】特開平63−154799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、本発明者らは、近年の製造コスト及びエネルギーの低減化等の観点から、より経済性、シンプルな製造設備等に優れた製造方法を鋭意検討したところ、特定の組成に調整した有リン系の洗剤スラリーを特定の条件で噴霧乾燥することで、意外にも造粒工程等を必要としない程度にまで嵩密度が高い洗剤粒子を製造することができることを見出し、本発明を完成させた。
従って、本発明の課題は、噴霧乾燥における製造法によって得られた粒子であるにもかかわらず、嵩密度を0.4g/cm3以上に高めた有リン系洗剤粒子を効率よく製造する方法を提供することにある。
また、本発明の別の課題は、0.4〜0.6g/cm3という中程度の嵩密度を有し、粒度分布がシャープな有リン系洗剤粒子を効率よく製造する方法を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
即ち、本発明の要旨は、工程I) :スラリー中の固形分換算で、a)10〜30重量%の界面活性剤、b)5〜30重量%のリン酸塩、c)5重量%以下の炭酸ナトリウムを含む洗剤スラリーを調製する工程
工程II) :工程I)で得られた洗剤スラリーを乾燥後の噴霧乾燥粒子の一次粒子径が300μm以下になるように噴霧乾燥して、嵩密度が0.4g/cm以上の噴霧乾燥粒子を得る工程を有する、洗剤粒子の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の洗剤粒子の製造方法を使用することにより、噴霧乾燥工程後に嵩密度を高める工程を追加する必要なしに、嵩密度を高めた有リン系の洗剤粒子を得ることができるという効果が奏される。
また、本発明によって得られた洗剤粒子は、噴霧乾燥によって得られかつ嵩密度が高いために、従来の造粒加工して嵩密度を高めた粒子に比べて粒度分布がシャープであることから流動特性に優れ、かつ、強度な圧密、凝集を行っていないため、溶解性の点に優れるという効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の洗剤粒子の製造方法は、前記のように、工程I)と 工程II)とを有することに特徴がある。かかる特徴を有する本発明を用いることで、噴霧乾燥における製造法によって得られた粒子であるにもかかわらず、嵩密度を0.4g/cm以上に高めた有リン系洗剤粒子を効率よく製造することができるという効果が奏される。
【0007】
工程I)スラリー調製工程
本発明で用いる事のできるa)成分の界面活性剤は、洗剤配合物の用途に適している界面活性物質のいずれでもよい。例えば、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
かかる物質の中でも好適な例としては、
1)平均炭素数10〜16のアルキル基を有する直鎖又は分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩
2)平均炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有し、1分子内に平均0.5〜8モルのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイドあるいはエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=0.1/9.9〜9.9/0.1の比で付加したアルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩又はカルボン酸塩
3)平均炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸塩
4)平均10〜20の炭素原子を1分子中に有するオレフィンスルホン酸塩又はアルカンスルホン酸塩
5)平均10〜24の炭素原子を1分子中に有する飽和又は不飽和脂肪酸塩
6)平均炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有するα-スルホ脂肪酸塩又はエステル
7)平均炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有し、1〜20モルのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイドあるいはエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=0.1/9.9〜9.9/0.1の比で付加したポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル
が挙げられる。これらの化合物の混合物も同様に用いることができる。これらの界面活性剤の中で直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム単独及び他の界面活性剤との併用がより好ましく用いられる。
【0008】
界面活性剤の含有量は、洗剤スラリー中の固形物換算で10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%である。界面活性剤の含有量は、上記範囲内であれば嵩密度への影響は少なく安定に含有できる。また、必要に応じ、噴霧乾燥後の後工程において噴霧乾燥粒子に液状の界面活性剤を添加しても良いし、粉末状の界面活性剤を混合することもできる。
【0009】
また、本発明で用いることのできるb)成分のリン酸塩としては、オルトリン酸塩、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、メタリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、フィチン酸塩が挙げられる。これらの塩の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン等があげられる。これらのリン酸塩の中では、洗浄力の観点から、トリポリリン酸ナトリウムが好ましい。
【0010】
b)成分の含有量は、洗剤スラリー中の固形物換算で5〜30重量%、好ましくは10〜25重量%である。リン酸塩は洗浄性能の点から高配合することは非常に有効であり、噴乾粒子の付着力を低減させることができるため、噴霧能力の向上に有利である。しかしながら、スラリー中へ多量に配合すると噴霧乾燥粒子の嵩密度が低下するため、必要に応じ、後工程において噴霧乾燥粒子にリン酸塩を混合することもできる。
【0011】
c)成分の炭酸ナトリウムの含有量は洗剤スラリー中の固形物換算で5重量%以下である。
本発明においては、洗剤スラリー中のb)成分とc)成分との含有量を前記範囲にすることで、噴霧乾燥時の乾燥速度が高くなり、嵩密度が有意に高くなるという思わぬ利点がある。
c)成分の洗剤スラリー中の含有量は、好ましくは3重量%以下、より好ましくはスラリー中にc)を配合しないことである。この場合は、後工程において噴霧乾燥粒子に炭酸ナトリウムを混合することが好ましい。
【0012】
また、本発明において、洗剤スラリーには、無機ビルダー及び有機ビルダー等の洗剤ビルダーを添加することができる。例えば、無機ビルダー及び有機ビルダーは、洗剤ビルダーとしての用途に適している化合物のいずれもが含まれる。例えば次のようなものがある。
1)セスキ炭酸ソーダ、ケイ酸ソーダ等のアルカリ性塩
2)硫酸ナトリウム等の中性塩
3)結晶性及び無定形アルミノケイ酸塩
4)ホスホン酸塩、ホスホノカルボン酸塩、アミノ酸塩、アミノポリ酢酸塩、高分子電解質、非解離高分子、有機酸塩等の二価金属イオン補足剤
これらの中でも、ケイ酸ソーダは5重量%以上洗剤スラリー中に配合することで、噴霧乾燥粒子の付着性を低減でき、乾燥能力の向上に有利である。また、硫酸ナトリウムもスラリー中へ配合するのは好ましい。
【0013】
また、前記洗剤スラリーには、洗剤組成物に普通用いられる量の添加剤を含んでもよい。これらの添加剤としては、例えば次のようなものがある。
1)ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース等の再汚染防止剤
2)過炭酸ソーダ、過ホウ酸ソーダ、硫酸ナトリウム過酸化水素付加体等の漂白剤
3)パラトルエンスルホン酸塩、タルク、微粉末シリカ、粘土、酸化マグネシウム等のケーキング防止剤
4)酵素、青味付剤、酸化防止剤、蛍光染料、香料等
【0014】
本工程I)において、前記a)〜c)成分、水、必要であれば無機ビルダー、添加剤等を公知の方法で混合することにより、洗剤スラリーを調製することができる。
【0015】
洗剤スラリー中の水分は、48重量%以下が好ましく、46重量%以下がより好ましく、また、40重量%以上が好ましい。スラリー水分は低いほど嵩密度の点からは好ましいが、スラリー水分を低化していくとスラリー粘度が噴霧に適さないほど高粘度になるため、スラリー粘度が3000cp以下、好ましくは2000cp以下になるようにスラリー水分を調整すればよい。
【0016】
工程II)噴霧乾燥工程
本発明における噴霧乾燥工程は、工程I)で得られた洗剤スラリーを乾燥後の噴霧乾燥粒子の一次粒子径が300μm以下になるように噴霧乾燥して、嵩密度が0.4g/cm以上の噴霧乾燥粒子を得る点に一つの特徴を有する。かかる特徴を有することで、噴霧乾燥粒子が乾燥中に膨張や破裂をするのを抑制するという効果が発現される。
【0017】
噴霧乾燥粒子の一次粒子径の調整は、噴霧液滴径を調整すればよいが、噴霧作業を、噴霧ノズルを用いて行う場合は、噴霧ノズル径、噴霧圧によって調整すればよい。また、アトマイザータイプを用いて噴霧する場合は回転数等で適宜調整すればよい。噴霧乾燥粒子の一次粒子径は小さいほど嵩密度の点からは好ましいが、小さ過ぎるとノズルの詰まりや、生産能力、及び微小粒子の排風側への飛散量の点から好ましくなく、設備に合わせて適宜調整すればよい。前記噴霧乾燥粒子の一次粒子径は、好ましくは280μm以下、更に好ましくは260μm以下である。また、該一次粒子径は、製造適性やハンドリングの観点から、好ましくは80μm以上、より好ましくは100μm以上である。
【0018】
噴霧乾燥粒子は、通常、凝集粒子が存在するため、一次粒子径の測定方法は、得られた噴霧乾燥粒子をCCDカメラ等で撮影を行い、任意に200個以上の一次粒子のFeret径を画像から測定し、球相当にて質量基準の50%粒子径を算出する。
【0019】
なお、前記噴霧液滴径以外の噴霧乾燥条件としては、急激な乾燥を避け、噴霧粒子の膨張や破裂を抑制する観点から、噴霧乾燥時間を長くすることが好ましい。例えば、向流式で噴霧乾燥を行う際に、洗剤スラリーを噴霧するノズル位置を送風位置からできるだけ離して設置する、例えば高い位置に設置することや、噴霧乾燥塔の塔高さの高い乾燥塔を使用すること等が挙げられる。
【0020】
前記以外の噴霧乾燥条件としては、特に限定はなく、通常の条件であればよい。
【0021】
以上のようにして得られる噴霧乾燥粒子の平均粒径(凝集粒子を含んだ粒径)は、本発明では特に限定されないが、150〜500μmが好ましく、180〜450μmがより好ましい。
この場合の平均粒径は、JIS Z 8801の標準篩(目開き2000〜125μm)を用いて5分間振動させた後、篩目のサイズによる重量分率からメジアン径を算出する。
【0022】
本発明で得られる噴霧乾燥粒子の嵩密度は、0.4g/cm以上であり、好ましくは0.45g/cm以上である。その上限値は特に拘らないが、好ましい態様としては0.75g/cm以下が好ましく、0.6g/cm以下がより好ましい。嵩密度が高すぎると一回に使用する洗剤粒子の量について、体積を基準としている消費者は適切な使用量を超えて必要以上に使いすぎる場合がある。
また、本発明においては、工程I)及びII)の条件を前記のように調整することで、粒度分布がよりシャープな、0.4〜0.6g/cm3という中程度の嵩密度を有する噴霧乾燥粒子を効率よく製造することができるという利点がある。
本発明の噴霧乾燥粒子の嵩密度は、JIS K 3362により規定された方法で測定する。
【0023】
噴霧乾燥粒子中の水分は、5重量%以上が好ましく、7重量%以上がより好ましく、また、15重量%以下が好ましく13重量%以下がより好ましい。水分は高い方が嵩密度は大きくなるが、水分が上記範囲内であると噴霧乾燥粒子の付着力をコントロールし粉末物性のために好ましい。
本発明の噴霧乾燥粒子の水分の測定方法は、赤外線水分計FD−240(ケット化学製)を用いて試料3g、設定温度105℃、乾燥時間3分の測定条件において測定する。
【0024】
洗剤粒子としては、前記噴霧乾燥粒子をそのまま用いても良いが、一般的に、前記の種々の洗剤ビルダーや添加剤を混合機を用いてブレンドすることが好ましい。この場合、表面改質剤(微粉体)やその他無機/有機ビルダー及び蛍光染料、酵素、香料、消泡剤、漂白剤、漂白活性化剤等の添加剤が用いられる。
【0025】
前記のようにして得られる洗剤粒子は、十分に嵩密度の高いものであるが、必要に応じ、ミキサーを用いて攪拌を行い、その嵩密度を更に高める操作を行ってもよい。この時、液状バインダーを0.1〜5重量部を噴霧乾燥粒子100重量部に添加することで嵩密度の上昇速度をコントロールすることができる。
【0026】
この場合用いられるミキサーとしては、一般に回分式の混合に使用される混合機を用いれば、特に限定されないが、例えば混合羽根の形状がパドル型の混合機として、(1)混合槽で内部に攪拌軸を有し、この軸に攪拌翼を取り付けて粉末の混合を行う形式のミキサー:例えばヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株)製)、ハイスピードミキサー(深江工業(株)製)、バーチカルグラニュレーター((株)パウレック製)、レディゲミキサー((株)マツボー製)、プロシェアミキサー(太平洋機工(株)製)、TSK−MTIミキサー(月島機械(株)製)、特開平10-296064 号公報、特開平10-296065 号公報記載の混合装置等、混合羽根の形状がリボン型の混合機として、(2)円筒型、半円筒型又は円錐型の固定された容器内でスパイラルを形成したリボン状の羽根が回転することにより混合を行う形式のミキサー:リボンミキサー(日和機械工業(株)製)、バッチニーダー(佐竹化学機械工業(株)製)、リボコーン((株)大順製作所製)、ジュリアミキサー((株)徳寿工作所製)等、混合羽根の形状がスクリュー型の混合機として、(3)コニカル状の容器に沿ってスクリューが容器の壁と平行の軸を中心として自転しながら公転することにより混合を行う形式のミキサー:例えばナウターミキサー(ホソカワミクロン(株)製)、SVミキサー(神鋼パンテック(株)製)等がある。
【0027】
また、連続式で混合を行う場合、一般に連続式混合に使用されている連続式混合機を用いれば、特に限定されないが、例えば上記の混合機のうちで連続型の装置を用いて噴霧乾燥粒子を処理すればよい。
【0028】
以上のようにして得られた有リン系洗剤粒子は、噴霧乾燥によって得られかつ嵩密度が高いために、従来の造粒加工して嵩密度を高めた粒子に比べて粒度分布がシャープなものである。この粒度分布は、例えば、Rosin−Rammler分布の均等数等を用いて評価することができる。
【0029】
また、洗剤粒子は流動特性に優れるものである。この流動特性としては、JIS K 3362により規定された嵩密度測定用のホッパーから、100mLの粉末が流出するのに要する時間とする。
【0030】
また、洗剤粒子は、溶解性の点に優れるものである。この溶解性の指標としては、例えば、洗剤粒子の60秒間溶解率を用いることができる。
洗剤粒子の60秒間溶解率は、以下の方法で算出する。
25℃に調整した71.2mgCaCO/リットルに相当する1リットルの硬水(Ca/Mgモル比7/3)を1リットルビーカー(内径105mm、高さ150mmの円筒型、例えば、岩城硝子社製1リットルビーカー)の中に満たし、5℃の水温をウォーターバスにて一定に保った状態で、攪拌子(長さ35mm、直径8mm、例えば、型式:ADVANTEC社製、テフロンSA(丸型細型))にて水深に対する渦巻きの深さが概ね1/3となる回転数(800r/m)で攪拌する。1.0000±0.0010gとなるように細分・秤量した洗剤粒子を攪拌下に水中に投入・分散させ攪拌を続ける。投入から60秒後にビーカー中の洗剤粒子分散液を、重量既知のJIS Z 8801に規定の目開き74μmの標準篩(直径100mm)で濾過し、篩上に残留した含水状態の洗剤粒子を篩と共に重量既知の開放容器に回収する。尚、濾過開始から篩を回収するまでの操作時間を10±2秒とする。回収した洗剤粒子の溶残物を105℃に加熱した電気乾燥機にて1時間乾燥し、その後、シリカゲルを入れたデシケーター(25℃)内で30分間保持して冷却する。冷却後、乾燥した洗剤粒子の溶残物と篩と回収容器の合計の重量を測定し、式(2)によって洗剤粒子の溶解率(%)を算出する。
溶解率(%)={1−(T/S)}×100 (2)
S:洗剤粒子の投入重量
T:上記攪拌条件にて得られた水溶液を上記篩に供したときに、篩上の残存する洗剤粒子の溶残物の乾燥重量(乾燥条件:105℃の温度下に1時間保持した後、シリカゲルを入れたデシケーター(25℃)内で30分間保持する)(g)
【実施例】
【0031】
以下に本発明の実施例を示すが、これら実施例は本発明を制限するものではない。
実施例1
〔洗剤スラリー調製工程〕
次に示す組成にて洗剤スラリーを調製した。
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム 22.0重量部
トリポリリン酸ナトリウム 18.0重量部
炭酸ナトリウム 1.0重量部
ケイ酸ナトリウム 15.0重量部
硫酸ナトリウム 32.0重量部
ポリアクリル酸ナトリウム 2.0重量部
カルボキシメチルセルロース 1.0重量部
水分 77.5重量部
得られた洗剤スラリーの温度は59℃、スラリー水分46.0重量%、粘度1270cp、比重1.09g/cmであった。
【0032】
〔噴霧乾燥工程〕
このスラリーを塔径5m高さ25mの噴霧乾燥塔の塔頂/塔中付近に設置したスプレードライヤノズル2本/3本(エバーロイ商事(株)製、オリフィス2.8φ、スワール5mm)から噴霧圧力55kg/ cmで噴霧を行った。噴霧乾燥塔に供給する高温ガスは塔下部より温度が190℃で供給され、塔頂より95℃で排出された。
得られた噴霧乾燥粒子の水分は9.0重量%、嵩密度0.48g/cm、一次粒子径270μm、平均粒径290μmであった。
【0033】
得られた噴霧乾燥粒子100重量部をコンクリートミキサーに入れ、3重量部のアルミノ珪酸ナトリウムと香料、酵素等の添加剤を2%添加して2分間混合を行った。得られた洗剤粒子の嵩密度は0.51g/cm、平均粒径285μm、溶解率98%であった。
【0034】
実施例2
実施例1で得られた噴霧乾燥粒子100重量部をハイスピードミキサー(深江工業(株)製)に入れ、攪拌を開始した。直ちにノズルを用いて水1重量部を1分間かけて添加し、その後3分間攪拌を行った。
引き続き、3重量部のアルミノ珪酸ナトリウムと香料、酵素等の添加剤を2%添加して1分間混合を行った。得られた洗剤粒子の嵩密度は0.59g/cm、平均粒径270μm、溶解率97%であった。
【0035】
実施例3
〔洗剤スラリー調製工程〕
次に示す組成にて洗剤スラリーを調製した。
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム 23.0重量部
トリポリリン酸ナトリウム 10.0重量部
炭酸ナトリウム 3.0重量部
ケイ酸ナトリウム 6.0重量部
硫酸ナトリウム 39.5重量部
ポリアクリル酸ナトリウム 3.0重量部
カルボキシメチルセルロース 1.0重量部
アルミノ珪酸ナトリウム 8.0重量部
非イオン界面活性剤 0.5重量部
ポリエチレングリコール 0.5重量部
水分 74.2重量部
得られた洗剤スラリーの温度は61℃、スラリー水分44.0重量%、粘度700cp、比重1.24g/cmであった。
【0036】
〔噴霧乾燥工程〕
このスラリーを実施例1と同じ噴霧条件で噴霧乾燥を行った。噴霧乾燥塔に供給する高温ガスは塔下部より温度が200℃で供給され、塔頂より103℃で排出された。
得られた噴霧乾燥粒子の水分は5.5重量%、嵩密度0.51g/cm、一次粒子径280μm、平均粒径295μmであった。
【0037】
得られた噴霧乾燥粒子100重量部をコンクリートミキサー入れ、3重量部のアルミノ珪酸ナトリウムと香料、酵素等の添加剤を2%添加して2分間混合を行った。得られた洗剤粒子の嵩密度は0.54g/cm、平均粒径275μm、溶解率98%であった。
【0038】
比較例1
〔洗剤スラリー調製工程〕
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム 22.0重量部
トリポリリン酸ナトリウム 18.0重量部
炭酸ナトリウム 8.0重量部
ケイ酸ナトリウム 15.0重量部
硫酸ナトリウム 25.0重量部
ポリアクリル酸ナトリウム 2.0重量部
カルボキシメチルセルロース 1.0重量部
水分 77.5重量部
得られた洗剤スラリーの温度は61℃、スラリー水分46.0重量%、粘度1010cp、比重1.12g/cmであった。
【0039】
〔噴霧乾燥工程〕
このスラリーを塔径5m高さ25mの噴霧乾燥塔の塔頂/塔中付近に設置したスプレードライヤノズル2本/3本(エバロイ商事(株)製、オリフィス3.0φ、スワール5mm)から噴霧圧力40kg/ cmで噴霧を行った。噴霧乾燥塔に供給する高温ガスは塔下部より温度が195℃で供給され、塔頂より95℃で排出された。
得られた噴霧乾燥粒子の水分は9.0重量%、嵩密度0.38g/cm、一次粒子径290μm、平均粒径310μmであった。
【0040】
得られた噴霧乾燥粒子100重量部をコンクリートミキサーに入れ、3重量部のアルミノ珪酸ナトリウムと香料、酵素等の添加剤を2%添加して2分間混合を行った。得られた洗剤粒子の嵩密度は0.41g/cm、平均粒径350μmであった。
【0041】
比較例2
〔洗剤スラリー調製工程〕
実施例1と同様の洗剤スラリーを調製した。
【0042】
〔噴霧乾燥工程〕
このスラリーを塔径5m高さ25mの噴霧乾燥塔の塔頂/塔中付近に設置したスプレードライヤノズル2本/3本(エバロイ商事(株)製、オリフィス3.0φ、スワール5mm)から噴霧圧力20kg/ cmで噴霧を行った。噴霧乾燥塔に供給する高温ガスは塔下部より温度が200℃で供給され、塔頂より95℃で排出された。
得られた噴霧乾燥粒子の水分は9.0重量%、嵩密度0.38g/cm、一次粒子径325μm、平均粒径360μmであった。
【0043】
得られた噴霧乾燥粒子100重量部をコンクリートミキサーに入れ、3重量部のアルミノ珪酸ナトリウムと香料、酵素等の添加剤を2%添加して2分間混合を行った。得られた洗剤粒子の嵩密度は0.41g/cm、平均粒径350μmであった。
【0044】
以上、実施例及び比較例から明らかな様に本発明の製法によれば、噴霧乾燥粒子の嵩密度を高めた洗剤粒子を得ることができる。また、実施例1〜3で得られた噴霧乾燥粒子の粒径分布はいずれもシャープで、またその溶解率も高いものであった。
中でも、実施例1〜3で得られた洗剤粒子は、いずれも嵩密度が0.4〜0.6g/cm付近のものであり、かかる範囲の中程度の嵩密度を有し、粒径分布のシャープでかつ溶解率の高い洗剤粒子が効率よく得られることがわかる。
【0045】
なお、実施例で使用した洗剤原料の詳細は以下の通りである。
炭酸ナトリウム:セントラル硝子(株)製、商品名:デンス灰
アルミノ珪酸ナトリウム:ゼオビルダー製、商品名:ゼオビルダー(ゼオライト4A型、平均粒径3.5μm)
トリポリリン酸ナトリウム:下関三井化学(株)製、商品名:トリポリリン酸ソーダ
非イオン界面活性剤:花王(株)製、商品名:エマルゲン108KM(エチレンオキサイド平均付加モル数;8.5、アルキル鎖の炭素数;12〜14)
ポリエチレングリコール:花王(株)製、商品名:K−PEG6000LA(平均分子量;8500)
ケイ酸ナトリウム:富士化学(株)製、商品名:2号珪酸ソーダ
カルボキシメチルセルロース:第一工業(株)、商品名:セロゲンF-SL
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
硫酸ナトリウム:四国化成(株)製、商品名:中性無水芒硝
ポリアクリル酸ナトリウム:平均分子量10000
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の洗剤粒子の製造方法で得られる有リン系洗剤粒子は、衣料用洗剤、手洗い洗濯用洗剤、ドラム式洗濯用洗剤等に好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程I) :スラリー中の固形分換算で、a)10〜30重量%の界面活性剤、b)5〜30重量%のリン酸塩、c)5重量%以下の炭酸ナトリウムを含む洗剤スラリーを調製する工程
工程II) :工程I)で得られた洗剤スラリーを乾燥後の噴霧乾燥粒子の一次粒子径が300μm以下になるように噴霧乾燥して、嵩密度が0.4g/cm以上の噴霧乾燥粒子を得る工程を有する、洗剤粒子の製造方法。
【請求項2】
工程I)で調製される洗剤スラリー中の水分が48重量%以下である請求項1記載の洗剤粒子の製造方法。
【請求項3】
工程II)で得られ噴霧乾燥粒子中の水分が5重量%以上である請求項1又は2記載の洗剤粒子の製造方法。

【公開番号】特開2006−137832(P2006−137832A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−327905(P2004−327905)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】