説明

洗剤粒子群の製造方法

【課題】陰イオン系界面活性剤を含有するスラリーを噴霧乾燥して得られた粒子を高速混合機で高嵩密度化する洗剤粒子群の製造方法であって、破壊荷重値9800mN以下(25℃)の範囲内で、且つ粒子成長度=高嵩密度化処理後平均粒子径/高嵩密度化処理前平均粒子径≦1.1の範囲内で混合処理を行い、高嵩密度化処理前後の嵩密度上昇度合いを20〜800g/Lとすることを特徴とする洗剤粒子群の製造方法を可能とすること。
【解決手段】陰イオン系界面活性剤を含有するスラリーを噴霧乾燥して得られた粒子を高速混合機で高嵩密度化する際、破壊荷重値9800mN以下(25℃)の範囲内で混合処理を行うことを特徴とする洗剤粒子群の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗剤粒子群の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、市販されている洗剤には、大きく分けて高嵩密度型洗剤(600g/Lより大きい)、中嵩密度型洗剤(400〜600g/L),低嵩密度洗剤(250以上400g/L未満)、液体洗剤等がある。例えば、日本においては高嵩密度型洗剤が多く使用されているが、アジア・オセアニアや欧州等においては、中低嵩密度型洗剤の需要も多い。
【0003】
低嵩密度型洗剤においては、その製造方法としては、陰イオン系界面活性剤及びその他ビルダーをスラリー配合し、噴霧乾燥によって製造することが主流となっている。一方、中高嵩密度型洗剤においては、陰イオン系界面活性剤及びその他ビルダーをスラリー配合し、噴霧乾燥した後、高嵩密度化処理して製造することが主流となっている。
【0004】
このような中高嵩密度型洗剤の製造時において、噴霧乾燥粒子を高速せん断機構を持つ高速ミキサー等によって高嵩密度化する際、一般的には嵩密度の増加に伴い平均粒子径が増加してしまうため、溶解性並びに製品収率の低下という課題が生じることが判っており、この両者の改善が求められている。これに対し、例えば、特許文献1においては、混合翼を螺旋状に配置した特殊なドラム型ミキサーを用いてフルード数50〜1200と非常に高せん断力をかけるといった方法で噴霧乾燥粒子を連続処理し、嵩密度を上昇させる方法が報告されている。しかし、装置及び操作条件に大きな制約がある方法であり、嵩密度の増加が最大で200g/Lとなっている。
【0005】
今までは、陰イオン界面活性剤を含有する噴霧乾燥粒子を高速混合機にて混合処理を続けると陰イオン界面活性剤の粘性が原因となる粒子同士の付着・凝集が発生するために、破壊荷重値が徐々に上昇し、少なくとも9800mNを遥かに超え、嵩密度の上昇と共に粒子の粗大化が起こる。
【特許文献1】特開平1−247498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高速せん断機構を持つ高速ミキサー等によって高嵩密度化処理する際に処理中の洗剤粒子群の表面粘着性がある一定値(破壊荷重値で9800mN以下)を超えない範囲で処理を行うという方法によって、粒子成長を抑制しながら、中高嵩密度型洗剤を製造する方法を提供することにある。
【0007】
本発明により、高嵩密度化に伴う溶解性の低下、製品収率の低下を引き起こすことなく、中高嵩密度型洗剤の製造を可能とする。また、表面粘着性がある一定値以上にならないため、高速ミキサー内へ洗剤粒子群が付着しにくく、連続生産時においても安定した粉末物性の洗剤粒子群の製造が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明の要旨は、
陰イオン系界面活性剤を含有するスラリーを噴霧乾燥して得られた粒子を高速混合機で高嵩密度化する洗剤粒子群の製造方法であって、破壊荷重値9800mN以下(25℃)の範囲内で、且つ粒子成長度=高嵩密度化処理後平均粒子径/高嵩密度化処理前平均粒子径≦1.1の範囲内で混合処理を行い、高嵩密度化処理前後の嵩密度上昇度合いを20〜800g/Lとすることを特徴とする洗剤粒子群の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、粒子成長を抑制しながら、中高嵩密度型洗剤の製造を可能にするという効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明における破壊荷重値とは、洗剤粒子群の表面粘着性を表す指標であり、この値が高い程、表面粘着性が高くなり洗剤粒子間での造粒が進行し、洗剤粒子の粗大化が起こる事を示す。
【0011】
本発明においては、以下に示す条件を適宜組み合わせることにより破壊荷重値を適切な値にコントロールし、目的とする洗剤粒子を製造することができる。
【0012】
組成的には、陰イオン界面活性剤、有機ポリマー、水分を多く含有する噴霧乾燥粒子は破壊荷重値が高く、混合処理条件においては、主翼の周速を高くすると破壊荷重値の上昇速度が速くなる。
【0013】
本発明における洗剤粒子とは、陰イオン系界面活性剤、及びその他ビルダー等を含有してなる噴霧乾燥粒子を混合処理することにより得られる粒子であり、洗剤粒子群とはその集合体を意味する。そして後述の洗剤組成物は、洗剤粒子群を含有し、更に洗剤粒子群以外に別途添加された洗剤成分(例えば、蛍光染料、酵素、香料、消泡剤、漂白剤、漂白活性化剤等)を含有する組成物を意味する。
【0014】
<噴霧乾燥粒子>
本発明における噴霧乾燥粒子は陰イオン系界面活性剤、及びその他ビルダー等を含有した水溶性スラリーを噴霧乾燥することによって得られる粒子である。以下に本発明に用いられる各成分について説明する。
【0015】
1.陰イオン系界面活性剤
陰イオン系界面活性剤としては一般的に使用されているものを用いることができる。例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸エステルスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩等が挙げられる。このような陰イオン系界面活性剤は一成分のみを用いても良く、二成分以上を組み合わせて用いても良い。また、対イオンとしては、アルカリ金属が好ましく、特にナトリウムが好ましい。中でも、経済性、保存安定性及び泡立ちの観点からは直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS−Na)特に、平均炭素数10〜15のアルキル基を有するLAS-Naが好ましい。
【0016】
前記陰イオン系界面活性剤のスラリーへの含有量は、得られる噴霧乾燥粒子中において洗浄性能の観点から、含有量が10重量%以上となる量が好ましく、15重量%以上がより好ましく、20重量%以上が更に好ましい。また、粒子の粗大化を抑制しながら嵩密度のコントロール範囲を広げるという観点から、40重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましく、25重量%以下が更に好ましい。
【0017】
本発明における噴霧乾燥粒子に必須の成分としては、陰イオン系界面活性剤のみであるが、洗浄性能、粒度分布及び粒子強度の観点から、必要に応じて適宜、洗剤組成物に通常使用されている他の成分を噴霧乾燥粒子中に含有させることができる。例えば、その他の成分としては、水溶性固体アルカリ無機物質、キレート剤、水溶性無機塩、水溶性ポリマー、水不溶性賦形剤、非イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、その他の補助成分等が挙げられるが、中でも、水溶性固体アルカリ無機物質、キレート剤、水溶性無機塩、及び水溶性ポリマーを配合することが好ましい。
更に、本発明の噴霧乾燥粒子には必要に応じて適宜以下に挙げる物質を配合することができる。
【0018】
2.水溶性固体アルカリ無機物質
水溶性固体アルカリ無機物質とは、常温(20℃)で固体状のアルカリ無機物質であり、20℃の水100g中に1g以上、好ましくは5g以上、より好ましくは10g以上溶解し得るものが好ましい。該水溶性固体アルカリ無機物質としては、特に規定はないが、水酸根、炭酸根、炭酸水素根を持つアルカリ金属塩、珪酸塩等が使用可能であり、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウム等を挙げることができる。中でも洗濯液中で好適なpH緩衝領域を示すアルカリ剤として炭酸ナトリウムが好ましい。水溶性固体アルカリ無機物質のスラリーへの含有量としては、得られる噴霧乾燥粒子中、洗剤性能の観点から、含有量が5重量%以上となる量が好ましく、10重量%以上がより好ましく、20重量%以上が更に好ましい。配合の自由度を損なわない点から40重量%以下が好ましく、38重量%以下がより好ましく、35重量%以下が更に好ましい。
【0019】
3.キレート剤
キレート剤は、金属イオンによる洗浄作用阻害を抑制する為、噴霧乾燥粒子に配合することができ、その例としては、水溶性キレート剤及び水不溶性キレート剤がある。
【0020】
キレート剤の量としては、金属イオン封鎖能の観点から、噴霧乾燥粒子中、含有量が好ましくは3〜60重量%、より好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは10〜40重量%となるように含有量を調節することが望ましい。キレート剤としては、水溶性キレート剤、水不溶性キレート剤があり、複数のキレート剤を同時に配合することも可能であるが、その場合、総和が上記量となるよう任意に調節することが望ましい。
【0021】
水溶性キレート剤としては、金属イオン封鎖能を保持する物質であれば特に規定はないが、好ましくは、20℃の水100g中に1g以上溶解し得るものが好ましく、例えばトリポリリン酸塩、オルトリン酸塩、ピロリン酸塩等が使用可能である。中でも、トリポリリン酸塩が好ましく、全水溶性キレート剤中、トリポリリン酸塩の含有量は、60重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、更に好ましくは80重量%以上である。又、対イオンとしては、アルカリ金属塩が好ましく、特にナトリウム及び/又はカリウムが好ましい。
【0022】
水不溶性キレート剤については、金属イオン封鎖能向上及び噴霧乾燥粒子の強度向上を目的に添加しても良いが、好ましくは、20℃の水100g中に1g未満溶解し得るものが好ましく、例えば水中での分散性の観点から、粒子の平均粒径が0.1〜20μm、より好ましくは0.5〜10μmのものが好ましい。好適な水不溶性キレート剤としては、結晶性アルミノケイ酸塩が挙げられ、例えばA型ゼオライト、P型ゼオライト、X型ゼオライト等があるが、金属イオン封鎖能及び経済性の点でA型ゼオライトが好ましい。
【0023】
結晶性アルミノケイ酸塩の含有量としては、金属イオン封鎖能の観点から、キレート剤量の総和が上記範囲となるよう配合することが好ましい。一方、洗濯時の残留を抑制する観点からは、噴霧乾燥粒子中、結晶性アルミノケイ酸塩の含有量は、30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。
【0024】
4.水溶性無機塩
水溶性無機塩は、洗濯液のイオン強度を高め、皮脂汚れ洗浄等の効果を向上させる為、噴霧乾燥粒子に配合することが好ましい。該水溶性無機塩としては、溶解性良好で、洗浄力に悪影響を与えない物質であれば特に規定はなく、例えば20℃の水100g中に1g以上溶解し得るものが好ましいが、例えば、硫酸根、亜硫酸根を持つアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。中でも、イオン乖離度の高い硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸カリウムを賦形剤として使用することが好ましい。又、溶解速度向上の観点からは硫酸マグネシウムの併用も有効である。
【0025】
水溶性無機塩の量としては、イオン強度の観点から噴霧乾燥粒子中5〜80重量%が好ましく、10〜70重量%がより好ましく、20〜60重量%が更に好ましい。
【0026】
5.水溶性ポリマー
皮膜形成による粒子強度向上を目的に、水溶性ポリマーを噴霧乾燥粒子中に添加しても良い。水溶性ポリマーとしては、有機系のポリマー、無機系のポリマーが挙げられ、例えば、有機系のポリマーとしては、カルボン酸系ポリマー、カルボキシメチルセルロース、可溶性澱粉、糖類、ポリエチレングリコール等が、無機系のポリマーとしては非晶質のケイ酸塩等が挙げられるが、中でも、カルボン酸系ポリマーが好ましく、これらのカルボン酸系ポリマーの中でアクリル酸−マレイン酸コポリマーの塩とポリアクリル酸塩(対イオン:Na、K 、NH4 等)がより優れている。これらのカルボン酸系ポリマーの平均分子量は1000〜8000が好ましく、2000以上であって且つカルボキシル基を10個以上有するものがさらに好ましい。有機系のポリマーの量としては、噴霧乾燥粒子中0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜5重量%がより好ましい。また、無機系のポリマー量としては、0.1〜20重量%が好ましく、0.5〜10重量%がより好ましい。
【0027】
6.水不溶性賦形剤
水不溶性賦形剤としては、水中での分散性良好で、洗浄力に悪影響を与えない物質であれば特に規定はない。例えば結晶性もしくは非晶質のアルミノケイ酸塩や、二酸化ケイ素、水和ケイ酸化合物、バーライト、ベントナイト等の粘土化合物等が有る。水中での分散性の観点から、一次粒子の平均粒径が0.1〜20μmのものが好ましく、0.5〜10μmのものがより好ましい。
水不溶性賦形剤の量としては、経済性及び分散性の観点から、噴霧乾燥粒子中50重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。
【0028】
7.水分
噴霧乾燥粒子中の水分としては、高嵩密度化速度の観点からは0重量%以上が好ましく、3重量%以上がより好ましく、5重量%以上が更に好ましい。一方、破壊荷重値のコントロールのし易さという観点からは20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。
【0029】
8.その他補助成分
蛍光染料、顔料、染料等を噴霧乾燥粒子中に配合してもよい。
【0030】
以上の各成分を添加、混合したスラリーを噴霧乾燥することで、本発明に用いられる噴霧乾燥粒子を得ることができる。なお、スラリーの水分量や噴霧乾燥条件については、特に限定はない。例えば特許庁公報10(1998)−25(7159) 周知慣用技術集(衣料用粉末洗剤)に記載の製造方法にて得られる。
【0031】
<好ましい組成について>
噴霧乾燥粒子中に結晶性アルミケイ酸ナトリウムとケイ酸ナトリウムを併用すると嵩密度上昇速度が極端に低下するといった観点から、併用する場合の噴霧乾燥粒子中のケイ酸ナトリウムの含有量は20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましく、10重量%以下が更に好ましい。噴霧乾燥粒子中の結晶性アルミケイ酸ナトリウムとケイ酸ナトリウムの合計含有量は50重量%以下が好ましく、45重量%以下がより好ましく、40重量%以下が更に好ましく、30重量%以下が更に好ましい。
【0032】
<洗剤粒子群>
本発明における洗剤粒子群は前述の噴霧乾燥粒子を高嵩密度化処理する際に破壊荷重値が9800mNの範囲に制御することによって得られる。例えば破壊荷重値9800mN以下で高嵩密度処理を行う、又は9800mNを超える前に表面粘着性抑制剤を所定量添加し、高嵩密度化処理を継続するという工程を繰り返す方法により、300g/Lから1500g/Lの嵩密度の洗剤粒子群が得られる。
【0033】
以下に本発明に用いられる洗剤粒子群の製造方法について説明する。
【0034】
高嵩密度化処理を終了する際の、又は表面粘着性抑制剤を一定量添加する場合の洗剤粒子群の破壊荷重値としては、粒径成長抑制の観点から9800mN以下が好ましく、7840mN以下がより好ましく、5880mN以下が更に好ましい。一方、高嵩密度化速度の観点から、490mN以上が好ましく、980mN以上がより好ましく、1960mN以上が更に好ましい。破壊荷重値の測定方法は、実施例の中で記載してある。
【0035】
<表面粘着性抑制剤>
本発明の洗剤粒子群は、洗剤粒子の表面粘着性増加による粒径成長の抑制を目的に高嵩密度化処理中に表面粘着性抑制剤を添加し処理を継続することで最終嵩密度を調整することができる。
【0036】
表面粘着性抑制剤としては、通常用いられる公知のものが使用でき、トリポリリン酸ナトリウム、結晶性もしくは非晶質のアルミノ珪酸塩、結晶性珪酸ナトリウム、ケイソウ土、シリカ等が好適に用いられる。中でも、キレート能を持つトリポリリン酸ナトリウム、結晶性アルミノ珪酸塩からなる群から選ばれる一種以上が好ましい。キレート能を持つ物質により表面改質することにより、洗浄初期からキレート能が作用し、洗浄能力が向上するためである。流動特性の観点からは結晶性アルミノ珪酸塩がより好ましく、すすぎ性の観点からはトリポリリン酸ナトリウムがより好ましい。
【0037】
尚、表面粘着性抑制剤として使用する粒子は、被覆性の観点から、洗剤粒子群の平均粒子径の1/10以下、好ましくは1/20以下、また、製造時のハンドリングの観点から1/3000以上、好ましくは1/600以上の平均粒子径を持つことが望ましい。
【0038】
又、表面粘着性抑制剤の量は、多すぎると高嵩密度化速度が低下し、少なすぎても表面粘着性の抑制が不十分となり粒径成長を引き起こす為、洗剤粒子群中、1〜20重量%が好ましく、2〜15重量%がより好ましく、3〜10重量%が更に好ましい。
【0039】
本発明では液体バインダーを添加することが必須条件ではないが、高嵩密度化処理の際、発生する微粉をまとめ、流動性を向上させるために液体バインダーを添加しても良い。液体バインダーとしては、例えば水、液体非イオン界面活性剤、水溶性ポリマー(ポリエチレングリコール、アクリル酸マレイン酸コポリマー等)の水溶液、脂肪酸等の洗剤組成物中の任意の液体成分が挙げられる。液体バインダーは二成分以上を併用しても良く、この場合の例としては、(1)予め二成分以上の液体バインダーを混合した後に添加する、(2)それぞれの液体バインダーを同時に添加する、(3)それぞれの液体バインダーを交互に添加する、といった添加方法が挙げられる。いずれの方法においても、製造コスト低下の観点から、水を併用する事が好ましい。液体バインダーの含有量は、洗剤組成物の凝集抑制の観点から、噴霧乾燥粒子100重量部に対し、10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましく、3重量部以下が更に好ましい。また、微粉低減効果の観点から、0.1重量部以上が好ましく、0.3重量部以上がより好ましい。
【0040】
液体バインダーの添加方法としては、連続添加又は分割添加、一括添加が挙げられるが粒子成長の抑制と発生した微粉の取り込みを両立させるという観点から、高嵩密度化処理終了時に一括添加する事が好ましい。
【0041】
高嵩密度化処理を行う手段として、噴霧乾燥粒子と表面粘着性抑制剤、流動助剤が混合可能な装置であれば特に限定はされない。しかし、噴霧乾燥粒子に高いせん断力を与えるという観点からは解砕機構を有する縦型造粒機、解砕機構を有する横型造粒機、邪魔板を有する回転式混合機等が好ましい。
【0042】
前記縦型造粒機を用いる場合の主翼の周速は嵩密度の上昇速度と破壊荷重値のコントロールのし易さという観点から1m/s〜7m/sが好ましく、2m/s〜5m/sがより好ましい。また解砕機構である羽根の回転数は上記と同様の観点から500〜4000rpmが好ましく、1000〜2000rpmがより好ましい。前記横型造粒機を用いる場合の主翼の周速は0.5m/s〜3m/sが好ましい。また解砕機構である羽根の回転数は500〜4000rpmが好ましく、1000〜2000rpmがより好ましい。
【0043】
本発明における洗剤粒子群は溶解性及び製品収率の観点から、高嵩密度化処理後の粒子成長度=高嵩密度化処理後平均粒子径/高嵩密度化処理前平均粒子径は1.1以下であり、0.6〜1.1が好ましく、0.7〜1.1がより好ましく、0.8〜1.1が更に好ましい。また、本発明における洗剤粒子群の高嵩密度化処理前後における嵩密度の上昇度合いは、20〜800g/Lであり、好ましくは30〜600、より好ましくは40〜500である。
【0044】
尚、本発明における洗剤粒子は、更なる流動性の向上、保存安定性の向上を目的とし、高嵩密度化処理の後に、流動助剤による表面改質を行うことができる。
【0045】
流動助剤の平均粒子径としては、表面粘着性抑制剤と同様のものを用いることができる。
【0046】
又、流動助剤の量は、多すぎても少なすぎても流動特性は低下する為、洗剤粒子群100重量部に対して、2〜20重量部が好ましく、5〜15重量部がより好ましい。
【0047】
又、本発明における洗剤粒子群の製造工程においては、必要に応じて適宜、洗剤組成物に用いられる物質を添加することができる。
【0048】
<洗剤組成物>
本発明の洗剤組成物は、洗剤粒子群以外に別途添加された洗剤成分(例えば、蛍光染料、酵素、香料、消泡剤、漂白剤、漂白活性化剤等)を含有する。前記のような構成を有する本発明の洗剤組成物は、前記各成分を公知の方法で適宜混合することにより製造することができる。また、本発明の洗剤粒子群は、洗剤組成物中、50〜100重量%含まれるのが好ましく、特に70〜100重量%含まれるものがより好ましい。
【0049】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
実施例1
<噴霧乾燥粒子の調製>
下記の手順にて噴霧乾燥粒子を作製した。
ジャケット60℃に設定した攪拌翼を有する1mの混合槽に温度60℃の水292.32kg、48重量%水酸化ナトリウム水溶液40.71kgの順に添加した。5分攪拌後、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS:アルキル基の平均炭素数10〜15)146.53kgを添加した。10分攪拌後、硫酸ナトリウム238.46kg、炭酸ナトリウム63.60kg、トリポリリン酸ナトリウム57.24kg、40重量%2号ケイ酸ナトリウム水溶液127.20kg、60重量%のポリエチレングリコール(PEG)水溶液2.13kgを添加した後、120分間攪拌してスラリーを得た。このスラリー中の水分は42重量%であった。
【0051】
このスラリーを噴霧乾燥塔の塔頂付近に設置した圧力噴霧ノズルから噴霧圧力35kg/cmで噴霧を行い、噴霧乾燥粒子を得た。噴霧乾燥塔に供給する高温ガスは塔下部より温度が205℃で供給され、塔頂より95℃で排出された。得られた噴霧乾燥粒子群の組成を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
<洗剤粒子群の調製>
ジャケットに40℃の温水を40L/分で流したハイスピードミキサー(深江パウテック株式会社製、型式FS−400、満水容量455L、ジャケット付)に上記手順によって得られた噴霧乾燥粒子100kg、輸送ゼオライト(A型ゼオライト:平均粒径3μm)1.18kgを投入し、主翼を4m/s、解砕羽根(チョッパー)回転数1800rpmで13分攪拌した。その後、流動助剤としてA型ゼオライト(平均粒径3μm)4.72kgを添加して、主軸を4m/s、解砕羽根(チョッパー)回転数1800rpmで30秒間、表面改質を行い洗剤粒子群を得た。洗剤粒子群の調整条件を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
<洗剤粒子群物性測定結果>
表3に高嵩密度化処理(「高嵩処理」と表示)前後の洗剤粒子群の物性と溶解率を測定した結果を示す。高嵩処理時間15分で、破壊荷重4900mNに達したところで処理を終了した。嵩密度660g/L、粒子成長度0.70、造粒収率99%、溶解率99%と嵩密度上昇後も高い造粒収率並びに溶解率であった。
【0056】
【表3】

【0057】
噴霧乾燥粒子および洗剤粒子群の物性値は以下の方法で測定できる。
【0058】
<破壊荷重値>
図1〜3に示すようにレオメーター(不動工業(株)製)に、直径30mmのアダプターを取り付け、金属製の筒状容器に嵩密度[g/L]の値を20で割った重量[g]の洗剤粒子群をセットし、常温で9800mNの荷重を3分間かけ、圧縮する。次に容器から取り出し、昇台速度を2cm/minに合わせて台を上昇させ、圧縮によって成型された粒子に力を加え、成型体が壊れる時の力を測定した。
【0059】
<平均粒径>
JIS Z 8801規定の標準篩を用いて、Ro-Tap式篩振とう機(回転数265rpm、タッピング数145tpm)で5分間振動させた後、各篩目のサイズによる重量分布から測定できる。
【0060】
<嵩密度>
JIS K 3362規定の見掛け密度測定方法により測定できる。
【0061】
<粒子成長度>
粒子成長度とは(高嵩密度化処理後平均粒子径)/(高嵩密度化処理前平均粒子径)で表す。
【0062】
<造粒収率>
JIS Z 8801規定の標準篩1400μmを通過した洗剤粒子群の割合とする。
【0063】
溶解率は以下の方法で測定できる。
【0064】
<溶解率>
5℃に調整した71.2mgCaCO3 /Lに相当する1Lの硬水(Ca/Mgのモル比7/3)を1Lビーカー(内径105mm、高さ150mmの円筒型、例えば岩城硝子社製1Lガラスビーカー)の中に満たし、5℃の水温をウオーターバスにて一定に保った状態で、攪拌子(長さ35mm、直径8mm、例えば型式:ADVANTEC社製、商品名:テフロン(登録商標)丸型細型)にて水深に対する渦巻きの深さが約1/3となる回転数(800rpm/min)で攪拌する。1.0000±0.0010gとなるように縮分・秤量した洗剤粒子(1400μm pass)を攪拌下に水中に投入・分散させ攪拌を続ける。投入から60秒後にビーカー中の洗剤粒子分散液を重量既知のJIS Z 8801(ASTM No.200に相当)規定の目開き74μmの標準篩(直径100mm)で濾過し、篩上に残留した含水状態の洗剤粒子を篩と共に重量既知の開放容器に回収する。尚、濾過開始から篩を回収するまでの操作時間を10±2秒とする。回収した洗剤粒子の溶残物を105℃に加熱した電気乾燥機にて1時間乾燥し、その後、シリカゲルを入れたデシケーター(25℃)内で30分間保持して冷却する。冷却後、乾燥した洗剤粒子の溶残物と篩と回収容器の合計の重量を測定し、篩上に残留した洗剤粒子群の乾燥重量を求める。そして、次式によって洗剤粒子群の溶解率(%)を算出する。尚、重量の測定は精密天秤を用いて行うこととする。
溶解率(%)={1−(T/S)}×100
S : 洗剤粒子群の投入重量(g)
T : 篩上に残留した洗剤粒子群の乾燥重量(g)
【0065】
実施例2〜5、比較例1,2
<噴霧乾燥粒子の調製>
スラリー1000kg配合にて、実施例1と同様にして表1の組成の噴霧乾燥粒子を得た。
【0066】
<洗剤粒子群の調製>
表2に示す条件にて、実施例1と同様に調整を行い洗剤粒子群を得た。
【0067】
<洗剤粒子群物性測定結果>
実施例1と同様に洗剤粒子群の物性測定を行った結果を表3に示す。実施例2〜5は、実施例1と同様、破壊荷重値が9800mN以下で高嵩密度化処理を終える、又は9800mNを超えない状態で表面粘着性抑制剤を添加し、処理を続けることで、高嵩密度化処理後も高い造粒収率並びに溶解性を維持する結果となった。
【0068】
一方、比較例1では実施例1の組成より、噴霧乾燥粒子中の水分が高い物を破壊荷重が9800mNを超えるまで高嵩密度化処理を行った結果、嵩密度807g/L、粒子成長度6.90、造粒収率30%、溶解率88%と造粒収率、溶解性ともに低下した。また、比較例2では高嵩密度化処理を3分間行ったが嵩密度の上昇は全く見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明により、高嵩密度化に伴う溶解性の低下、製品収率の低下を引き起こすことなく、中高嵩密度型洗剤の製造を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、粒子の破壊加重値の測定で粒子をアダプター容器に入れ、成形体を作るところを示す図である。
【図2】図2は、圧縮成形されて出来た成形体に更に荷重しているところを示す図である。
【図3】図3は、洗剤成形体が加重により崩壊するところを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰イオン系界面活性剤を含有するスラリーを噴霧乾燥して得られた粒子を高速混合機で高嵩密度化する洗剤粒子群の製造方法であって、破壊荷重値9800mN以下(25℃)の範囲内で、且つ粒子成長度=高嵩密度化処理後平均粒子径/高嵩密度化処理前平均粒子径≦1.1の範囲内で混合処理を行い、高嵩密度化処理前後の嵩密度上昇度合いを20〜800g/Lとすることを特徴とする洗剤粒子群の製造方法。
【請求項2】
表面粘着性抑制剤を破壊荷重値が9800mN以下の範囲内で添加した後に、更に混合処理を行うことを特徴とする請求項1記載の洗剤粒子群の製造方法。
【請求項3】
表面粘着性抑制剤がトリポリリン酸ナトリウム及び結晶性アルミノ珪酸塩からなる群から選ばれる1種以上である請求項1又は2記載の洗剤粒子群の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−197662(P2007−197662A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245451(P2006−245451)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】