説明

洗浄剤組成物

【課題】 従来、衣料用洗剤、台所用洗剤、毛髪用洗剤、身体用洗剤においては、目的とする被洗浄物の種類及び汚れの種類に応じた洗浄剤組成が確立され、いずれの洗浄剤においても主成分としては、起泡力、乳化力、可溶化力、分散力などの基本的界面活性能に優れたアニオン界面活性剤が主に使用されてきた。本発明は、起泡力、洗浄力、乳化力、可溶化力、分散力等の基本的界面活性能が要求される洗浄剤において、その成分にポリグリセリンアルキルエーテルを使用し、更にその界面活性能を増強させる目的でビルダーを配合し、具体的には起泡力、洗浄力の向上を目的とする。
【解決手段】 ポリグリセリンアルキルエーテルを含有することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起泡性、洗浄性に優れた食品、食器、衣料等の洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣料用洗剤、台所用洗剤、毛髪用洗剤、身体用洗剤においては、目的とする被洗浄物の種類及び汚れの種類に応じた洗浄剤組成が確立され、いずれの洗浄剤においても主成分としては、起泡力、乳化力、可溶化力、分散力などの基本的界面活性能に優れたアニオン界面活性剤が主に使用されてきた。また、環境面への配慮から、主成分をアニオン活性剤からノニオン活性剤にシフトしようとする試みが積極的になされ、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の酸化エチレン系のノニオン界面活性剤が用いられている。更に衣料用洗剤ではアルカリ剤、キレートビルダー、蛍光剤、漂白剤、酵素等、台所用洗剤や毛髪用洗剤では脂肪酸アルカノールアミドやアルコールエトキシレート系ノニオン界面活性剤等が起泡力、洗浄力の観点から併用されてきた。
【0003】
しかしこれらの界面活性剤や、また上記組み合わせでは、各成分の各性能における積算的結果と同等又はそれ以下にしか過ぎず、主成分の界面活性剤の能力を増大させる効果を期待するものではなかった。
【0004】
洗浄剤組成物としては、糖系非イオン界面活性剤並びに糖残基及びカチオン性基を用いた低刺激かつクリーミィで良好な泡立ちを有する洗浄剤組成物が報告されている(例えば、特許文献1参照。)。また、特定リン酸エステル系界面活性剤と糖アルコール類と特定グリセリン誘導体を用いた起泡性、洗浄性を有する洗浄剤組成物が報告されている(例えば、特許文献2参照。)が、組成物の安定性や、充分な起泡性、洗浄性が得られなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平4−216898
【特許文献2】特開平6−212190
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、起泡力、洗浄力、乳化力、可溶化力、分散力等の基本的界面活性能が要求される洗浄剤において、その成分にポリグリセリンアルキルエーテルを使用し、更にその界面活性能を増強させる目的でビルダーを配合し、具体的には起泡力、洗浄力の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の点に鑑み、鋭意検討の結果本発明に至った。即ち、本発明は、ポリグリセリンアルキルエーテルを含有することを特徴とすることで、食品、食器等の洗浄に適することを見出し、本発明に至ったものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により従来の洗浄剤では不可能であった起泡力、洗浄力、乳化力、可溶化力、分散力等の界面活性能のある洗浄剤組成物の製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、詳細に本発明を説明する。
【0010】
本発明のポリグリセリンアルキルエーテルのポリグリセリン重合度は、製造性、使用性の観点から好ましくは2〜20、より好ましくは2〜10である。また、構成する炭素数が6〜22、よりこのましくは10〜14であるアルキル基を有することが、起泡力、洗浄力、乳化力、可溶化の観点から望ましい。また、アルキル鎖長は直鎖型、分岐型を問うものではないが、構成する洗浄剤組成物の性状より自由に選択することが望ましい。さらに、ポリグリセリンアルキルエーテルがポリグリセリンモノアルキルエーテルであることが、起泡力、洗浄力、乳化力、可溶化の観点から望ましい。
【0011】
ポリグリセリンアルキルエーテルの製造方法としては、塩基性触媒の存在下、脂肪族アルコールに該アルコール/グリシドールの存在モル比が特定となるようにグリシドールを添加して反応させる方法、ポリグリセリンにα−オレフィンエポキシドを反応させることによって得られる方法、酸触媒もしくはアルカリ触媒の存在下でアルキルグリシジルエーテルをポリグリセリンを用いて開環させる方法等が挙げられるが特に限定されるものではない。また、活性炭や活性白土などにて吸着処理したり、水蒸気、窒素などをキャリアーガスとして用いて減圧下脱臭処理を行ったり、あるいは酸やアルカリを用いて洗浄を行ったり、分子蒸留を行ったりして精製してもよい。
【0012】
このようにして得られるポリグリセリンアルキルエーテルはポリグリセリンモノアルキルエーテルとして好ましい例を挙げるとするならば、ジグリセリンモノオクチルエーテル、ジグリセリンモノデシルエーテル、ジグリセリンモノドデシルエーテル、ジグリセリンモノテトラデシルエーテル、トリグリセリンモノオクチルエーテル、トリグリセリンモノデシルエーテル、トリグリセリンモノドデシルエーテル、トリグリセリンモノテトラデシルエーテル、テトラグリセリンモノオクチルエーテル、テトラグリセリンモノデシルエーテル、テトラグリセリンモノドデシルエーテル、テトラグリセリンモノテトラデシルエーテル、ヘキサグリセリンモノオクチルエーテル、ヘキサグリセリンモノデシルエーテル、ヘキサグリセリンモノドデシルエーテル、ヘキサグリセリンモノテトラデシルエーテル、オクタグリセリンモノオクチルエーテル、オクタグリセリンモノデシルエーテル、オクタグリセリンモノドデシルエーテル、オクタグリセリンモノテトラデシルエーテル、デカグリセリンモノオクチルエーテル、デカグリセリンモノデシルエーテル、デカグリセリンモノドデシルエーテル、デカグリセリンモノテトラデシルエーテル、エイコサグリセリンモノオクチルエーテル、エイコサグリセリンモノデシルエーテル、エイコサグリセリンモノドデシルエーテル、エイコサグリセリンモノテトラデシルエーテル等が挙げられるが、特に好ましくはジグリセリンモノドデシルエーテル、トリグリセリンモノドデシルエーテル、テトラグリセリンモノドデシルエーテル、ヘキサグリセリンモノドデシルエーテル、オクタグリセリンモノドデシルエーテル、デカグリセリンモノドデシルエーテルである。
【0013】
ポリグリセリンアルキルエーテルは、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、洗浄剤組成物中の割合は特に限定するものではないが通常、0.01〜50重量部、好ましくは0.1〜35重量部、特に好ましくは0.5〜20重量部配合される。0.01重量部未満では十分な泡立ちや感触改良効果が得られず、50重量部を超えると組成物の粘度等の問題から調製が困難であり、また使用感に劣る。
【0014】
本発明の洗浄剤組成物には、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、ポリグリセリンアルキルエール以外の非イオン性界面活性剤を配合することができ、泡立ち等の性能をより向上させることができるので好ましい。これらのうち、通常、食品、食器、衣料用等に使用しているものであれば特に制限されるものではないが、例えばアニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルキル硫酸塩等の硫酸エステル型アニオン界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、αスルホ脂肪酸塩等のスルホネート型アニオン界面活性剤、アルキレンオキサイド付加アルキルまたはアルケニルエーテル硫酸塩、脂肪酸塩、等が挙げられる。
【0015】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドベタイン、イミダゾリニウムベタイン、N−アルキルアミノ酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
非イオン界面活性剤としては例えば、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアシルエステル、アルキルポリグリコシド、脂肪酸グリコシドエステル、脂肪酸メチルグリコシドエステル、アルキルメチルグルカミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
アニオン界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、洗浄剤組成物中に0.1〜30重量部配合するのが好ましく、特に0.5〜25重量部、更に0.8〜20重量部配合すると、泡立ちや肌感触がより向上するので好ましい。
【0017】
本発明の洗浄剤組成物には、前記成分のほか、通常の洗浄剤組成物に用いられる成分、例えばアニオン性、ノニオン性、カチオン性ポリマー等の粘度調整剤;ポリオール類等の保湿成分;アマイド、脂肪酸等の増泡剤;その他防腐剤、スクワラン、ホホバ油、オリーブ油、高級アルコール、ラノリン、エステル、シリコーン等の油分、水溶性高分子、pH調整剤、パール化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料、色素等を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0018】
本発明のビルダーは金属イオン封鎖能を有する無機ビルダーまたは金属イオン封鎖能を有する有機ビルダーが挙げられる。
【0019】
無機ビルダーとしてはピロリン酸、トリポリリン酸、ヘキサメタリン酸などの縮合リン酸及びそのアルカリ金属塩やゼライトなどが挙げられる。就中、縮合リン酸または縮合リン酸アルカリ金属塩の使用が好適である。
【0020】
有機ビルダーとしてはグルタミン酸、グリシン、アラニンなどのアミノ酸類、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、フマル酸、乳酸、グルコン酸などの有機酸及びこれらの有機酸のアルカリ金属塩、エチレンジアミンテトラ酢酸及びそのアルカリ金属塩などが挙げられる。特にリンゴ酸、クエン酸のナトリウム塩やカリウム塩の使用が好適である。
【0021】
ビルダーの配合割合は、少なすぎると洗浄力に劣り、多すぎると洗浄剤組成物の保存安定性に好ましくない影響を与えるため、好ましくは0.1〜10重量%であり、より好ましくは1〜6%である。
【0022】
本発明の可溶化剤は特に限定されるものではないが、1価乃至多価アルコール類、単糖類、2糖類が望ましい。可溶化の観点から、1価乃至多価アルコール類、単糖類、2糖類以外に水を混合してもよい。可溶化剤または水の配合割合は、洗浄剤の温度経時保存安定性の向上や、洗浄剤の増粘、増泡等の観点から、洗浄剤組成物中に好ましくは0.05〜95重量部、より好ましくは1〜60重量部、最も好ましくは5〜30重量部配合することが望ましい。
【0023】
本発明の洗浄剤組成物は、これら可溶化剤と併用して、通常の方法に従って製造することができる。また、本発明の洗浄剤組成物は、pH4〜11、特にpH5〜10であることが好ましい。
【0024】
本発明の洗浄剤組成物は、起泡性、洗浄性、乳化性、可溶化性、分散性に優れた洗浄剤として好適である。本発明の洗浄剤組成物とは台所用洗浄剤、食器洗浄剤、衣料用洗浄剤、工業用洗浄剤などが挙げられ、特に用途限定されるものではない。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明がかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0026】
試験例1
表1の処方に基づき洗浄剤組成物を調製し、起泡力試験を行った。
各洗浄剤組成物について、20倍希釈水溶液を調製し、この溶液100ml(液温30℃)を500mlメスシリンダーに注入した。ついで撹拌羽根を上記溶液中に設置し、1000rpmの回転数で1分間撹拌した。その後生じた泡の体積(ml)を測定し泡立ち量とした。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
<起泡性>
◎:泡立ち300ml以上
○:泡立ち250ml以上300ml未満
△:泡立ち200ml以上250ml未満
×:泡立ち200ml未満
なお、◎および○を合格品とする。
【0030】
表2より、ポリグリセリンアルキルエーテルを用いた洗浄剤組成物が優れた起泡力を有することは明らかである。
【0031】
試験例2
洗浄用汚巧として
表3の処方に基づき洗浄剤組成物を調製し、洗浄力試験を行った。
【0032】
各洗浄剤組成物の0.2%水溶液700ml(液温30℃)に、人工汚巧を付着させた平面20cmのガラス板を専用台にセットして沈め、攪拌羽を回転数250rpmで3分間回転させた。回転終了後ガラス板を取り出し、乾燥させた後の重量を測定し、下記算出式を用いて洗浄率を算出した。
【0033】
洗浄率={(洗浄前の重量−洗浄後の重量)/ 洗浄前の重量}×100%
【0034】
【表3】

【0035】
【表4】

【0036】
<洗浄性>
◎:洗浄力95%以上
○:洗浄力85%以上95%未満
△:洗浄力50%以上85%未満
×:洗浄力50%未満
なお、◎および○を合格品とする。
【0037】
表4より、ポリグリセリンアルキルエーテルを用いた洗浄剤組成物が優れた洗浄力を有することは明らかである。更にビルダーを配合することで、より高い洗浄力を有することは明らかである。
【0038】
試験例3
表5の処方に基づき洗浄剤組成物を調製し、経時保存安定性試験を行った。
調製した洗浄剤組成物を5℃、25℃、40℃に保存し、目視にて安定性を確認した。
【0039】
【表5】

【0040】
<洗浄性>
○:結晶析出なし
×:結晶析出あり
なお、○を合格品とする。
【0041】
表5より、ポリグリセリンアルキルエーテルを用いた洗浄剤組成物は、可溶化剤を配合することで、経時保存安定性が向上することは明らかである。
【0042】
上記実施例で証明した様に本発明によれば、構成するポリグリセリンの重合度が2〜30であるポリグリセリンアルキルエーテルを含有する洗浄剤組成物は優れた起泡力と洗浄力を有し、洗浄剤分野で今まで不可能であった高い起泡力と洗浄力を付与した洗浄剤組成物の製造が可能となることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のポリグリセリンアルキルエーテルは、起泡力と洗浄力を必要とする洗浄剤の分野で有効に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグリセリンアルキルエーテルを含有することを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項2】
ポリグリセリンアルキルエーテルを構成するポリグリセリンの重合度が2〜30である請求項1記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
ポリグリセリンアルキルエーテルを構成するアルキル基の炭素数が6〜22であることを特徴とする請求項1または2記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
ビルダーを含有することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
ポリグリセリンアルキルエーテルが、1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
可溶化剤として1価乃至多価アルコール類、単糖類または2糖類を含有することを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の洗浄剤組成物。
【請求項7】
使用用途が食品、食器または衣料である請求項1〜6いずれか記載の洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2006−348084(P2006−348084A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172990(P2005−172990)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】