説明

洗浄方法

【課題】 泥汚れに対し高い洗浄力を示す洗浄方法及び洗浄剤の提供。
【解決手段】 酸剤及び水を含有する組成物からなるA剤と、炭酸水素塩及び水を含有する組成物からなるB剤を洗浄対象に処理し、発泡を伴い洗浄する洗浄方法、並びに上記A剤及びB剤とからなり、A剤とB剤とが分離して収容されており、A剤とB剤を混合する際に発泡を伴う2剤型液体洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄方法及び2剤型液体洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭での衣類洗濯において落としきれない頑固な汚れとして、衣類や靴下等の泥汚れが挙げられる。泥汚れを落とすために、一般家庭では、固形石鹸を直接汚れにこすりつけ、更に手揉み洗いをするなどして洗浄力を高める工夫が行われているが、労力がかかる上に、完全に汚れを除去しきれないという課題が残る。
【0003】
泥汚れを落とす洗浄剤として、特許文献1には、特定脂肪酸を含む液体洗浄剤組成物が開示されている。また、特許文献2にはセルラーゼを活用した洗浄剤組成物、特許文献3には漂白成分を含んだ洗浄剤の応用が開示されている。しかしながら、衣類や靴下等の繊維内部に入り込んだ無機粒子を含む泥汚れなどは除去し難く、洗浄力の更なる向上が望まれている。
【0004】
洗浄力を高める方法として、特許文献4及び5には、炭酸塩と有機酸による炭酸ガスの発生反応を応用した粉末、顆粒、錠剤、固体タイプの洗浄剤が開示されている。また、特許文献6及び7には、ヒドラジン類と過酸化物との反応を応用した発熱発泡型洗浄剤も開示されている。
【特許文献1】特開2001−49298号公報
【特許文献2】特開2000−319688号公報
【特許文献3】特開2005−314576号公報
【特許文献4】特開昭61−53395号公報
【特許文献5】特開昭61−228100号公報
【特許文献6】特開平6−200295号公報
【特許文献7】特開平6−3299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献4及び5に記載される洗浄剤に関しては、炭酸ガスは主に衣類や靴下等の繊維外部で発生するため、繊維内部に入り込んだ無機粒子を含む泥汚れに対しては洗浄力が十分ではない。また、上記特許文献6及び7に記載される洗浄剤に関しては、ヒドラジン類はアンモニアに似た刺激臭を有する化合物であるため、一般家庭での洗浄剤として利用するには課題が残る。
【0006】
本発明の課題は、衣類や靴下等の繊維内部に入り込んだ無機粒子を含む泥汚れなどに対し高い洗浄力を示す洗浄方法及び洗浄剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、酸剤及び水を含有する組成物からなるA剤と、炭酸水素塩及び水を含有する組成物からなるB剤を洗浄対象に処理し、発泡を伴い洗浄する、洗浄方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記A剤及びB剤とからなり、A剤とB剤とが分離して収容されており、A剤とB剤を混合する際に発泡を伴う2剤型液体洗浄剤を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、繊維内部に浸透した液が反応し発泡することで繊維を押し広げ、繊維内部に閉じ込められた無機粒子などを押し出すことにより、衣類や靴下等の繊維内部に入り込んだ無機粒子を含む泥汚れなどに対して高い洗浄力を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<A剤>
本発明の洗浄方法で用いるA剤は、酸剤及び水を含有する組成物からなる。ここで、本発明でいう「酸剤」とは、20℃の1Lイオン交換水に1g以上溶解し、且つ1g/1Lの濃度の20℃におけるpHが5以下の物質が好ましい。また、本発明の酸剤としては、水中における酸解離定数pKaが1〜8の範囲内で2箇所以上ある化合物が好ましい。ここで本発明でいう酸解離定数は「化学便覧基礎編II」(改訂3版、日本化学会編)のII−338頁〜II−342頁に記載の通りである。
【0011】
具体的に好ましい酸剤としては、
(1)リン酸、トリポリリン酸、フィチン酸(イノシン酸)等のリン酸系化合物
(2)ホスホン酸、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸及びその誘導体、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、アミノポリ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸系化合物
(3)2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸等のホスホノポリカルボン酸系化合物
(4)エチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ジェンコール酸等のアミノポリカルボン酸系化合物
(5)アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン等のアミノ酸
(6)クエン酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フマル酸、アジピン酸、アゼライン酸、ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、グルタル酸、リンゴ酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸などの有機酸
(7)メタホウ酸、オルトホウ酸などのホウ酸
(8)硫酸、硝酸
が挙げられる。
【0012】
これらのうちA剤に配合する上で好ましい酸剤は、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸及びエタン−1,1−ジホスホン酸から選ばれる1種以上である。
【0013】
これらの酸剤は、後述する金属イオン封鎖剤として使用されるものであってもよい。
【0014】
A剤中の酸剤の含有量は、発泡性を高める点から、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%、更に好ましくは3〜4.5質量%が好適である。
【0015】
本発明のA剤は水を含有する。水は、蒸留水又はイオン交換水が好ましい。A剤中の水の含有量は、各成分を均一に溶解するために好ましくは50〜99質量%、より好ましくは60〜95質量%が好適である。
【0016】
本発明では、A剤中に、漂白洗浄性能を高めるために過酸化水素を好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜6質量%、更に好ましくは1〜4質量%含有することが好適である。
【0017】
本発明では、A剤中に、更にエステル基、イミド基又はニトリル基を有する漂白活性化剤を好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは0.1〜1質量%添加することで、より優れた効果を得ることができる。
【0018】
特に漂白活性化剤としては下記一般式(1)で示される化合物が好ましい。
【0019】
【化1】

【0020】
〔式中、R1は直鎖又は分岐鎖の炭素数5〜19のアルキル基又はアルケニル基を示し、Zは−SO3M又はCOOMを示す。また、Mは有機又は無機の陽イオンを示す。〕
具体的に好ましい例としては、オクタノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、ノナノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、3,5,5−トリメチルヘキサノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、デカノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、ドデカノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、オクタノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、ノナノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、3,5,5−トリメチルヘキサノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、デカノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、ドデカノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、及びこれらの塩が挙げられる。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が好ましく、特にナトリウム塩が溶解性の点から好ましい。
【0021】
これらの中でも、特にノナノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、デカノイルオキシ−p−ベンゼンカルボン酸、ドデカノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸及びこれらの塩が、親油性汚れ漂白効果の点から好ましい。
【0022】
一般式(1)の漂白活性化剤をA剤に配合する場合、安定化のために特開平6−207196号公報、特開平7−82591号公報、特開平7−216397号公報、及び特開平7−331289号公報等に記載された安定化技術を用いることが好ましい。
【0023】
<B剤>
本発明の洗浄方法で用いるB剤は、炭酸水素塩及び水を含有する組成物からなる。
【0024】
B剤に含有される炭酸水素塩は、A剤に含有される酸剤と反応して二酸化炭素を発生する。これは、弱酸の塩に強酸を作用させると、強酸の塩が生じて弱酸が遊離する現象による。
【0025】
本発明では、繊維内部に浸透したA剤とB剤が反応し発泡することで、繊維を押し広げ、繊維内部に閉じ込められた無機粒子などを押し出すことにより、泥汚れに対し高い洗浄力が得られる。
【0026】
B剤中の炭酸水素塩の含有量は、発泡性を高めるために、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%、更に好ましくは3〜10質量%が好適である。炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素アンモニウムから選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
【0027】
本発明の洗浄方法においては、より優れた効果を得る上で、A剤に漂白活性化剤を含有する場合、特に前記一般式(1)で示される漂白活性化剤を含有する場合、B剤にアミンオキシド型界面活性剤を好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.1〜20質量%、更に好ましくは0.5〜5質量%含有することで、漂白活性化剤から生成する有機過酸の生成率が向上するため、より優れた漂白力を得ることができる。
【0028】
アミンオキシド型界面活性剤としては下記一般式(2)で示されるものが最も優れた漂白効果を発揮することができる。
【0029】
【化2】

【0030】
〔式中、R2、R3及びR4のうち少なくとも1つは、エステル結合、アミド結合又はエーテル結合で中断されていてもよい直鎖又は分岐鎖の炭素数6〜22、好ましくは8〜20、特に好ましくは8〜15のアルキル基又はアルケニル基を示し、その他の基は炭素数1〜5、好ましくは1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。〕。
【0031】
特には下記一般式(2−a)の化合物から選ばれる化合物が好ましい。
【0032】
【化3】

【0033】
〔式中、R5は炭素数8〜16、好ましくは10〜16、特に好ましくは10〜14の直鎖アルキル基又はアルケニル基であり、R7及びR8は、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。R6は炭素数1〜5、好ましくは2又は3のアルキレン基である。Aは−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−及び−O−から選ばれる基であり、aは0又は1、好ましくは1である。〕
本発明のB剤には洗浄効果を高める目的で更に溶剤を配合することが好ましい。溶剤としては(i)炭素数1〜5の1価アルコール、(ii)炭素数2〜12の多価アルコール、(iii)下記の一般式(3)で表される化合物、(iv)下記の一般式(4)で表される化合物、(v)下記の一般式(5)で表される化合物が好ましい。
【0034】
【化4】

【0035】
〔式中、R9及びR10は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を示すが、R9及びR10の双方が水素原子となる場合を除く。bは0〜10の数を、cは0〜10の数を示すが、b及びcの双方が0である場合を除く。R11及びR12は、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基を示す。R13は炭素数1〜8のアルキル基を示す。〕。
【0036】
(i)の炭素数1〜5の1価アルコールとしては、一般的にエタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これらの低級アルコールを配合することにより低温における系の安定性を更に向上させることができる。
【0037】
(ii)の炭素数2〜12の多価アルコールとしては、イソプレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
【0038】
(iii)の化合物は、一般式(3)において、R9、R10がアルキル基である場合の炭素数は1〜4が特に好ましい。また、一般式(3)中、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの平均付加モル数のb及びcは、それぞれ0〜10の数である(b及びcの双方が0である場合を除く)が、これらの付加順序は特に限定されず、ランダム付加したものでもブロック付加したものでもよい。(iii)の化合物の具体例としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ポリオキシエチレン(p=2〜3)ポリオキシプロピレン(p=2〜3)グリコールジメチルエーテル(pは平均付加モル数を示す)、ポリオキシエチレン(p=3)グリコールフェニルエーテル、フェニルカルビトール、フェニルセロソルブ、ベンジルカルビトール等が挙げられる。このうち、洗浄力及び使用感の点から、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリオキシエチレン(p=1〜4)グリコールモノフェニルエーテルが好ましい。
【0039】
また、(iv)の化合物としては、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及び1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノンが好適なものとして例示され、
(v)の化合物としては、アルキルグリセリルエーテル化合物が好適なものとして例示され、好ましくはR13が炭素数3〜8のアルキル基の化合物である。
【0040】
これらの中でも、本発明の性質を満たすために(i)、(ii)、(iii)及び(v)の水溶性溶剤が好ましく、特にエタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ペンチルグリセリルエーテル、オクチルグリセリルエーテル及びポリオキシエチレン(p=1〜4)グリコールモノフェニルエーテルから選ばれる1種以上の溶剤が好ましい。
【0041】
本発明のB剤は、このような溶剤を好ましくは0〜20質量%、より好ましくは5〜20質量%含有することが好適である。
【0042】
<その他の成分>
本発明では、A剤及び/又はB剤に、洗浄漂白効果を高める目的から、界面活性剤を配合することが好ましい。界面活性剤としては非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上が好ましい。
【0043】
非イオン界面活性剤としては、一般式(6)の化合物が好ましい。
【0044】
14−T−[(R15O)d−H]e (6)
〔式中、R14は、好ましくは炭素数8〜20、より好ましくは10〜18、更に好ましくは10〜16のアルキル基又はアルケニル基であり、R15は炭素数2又は3のアルキレン基、好ましくはエチレン基である。dは好ましくは2〜20、より好ましくは4〜15、更に好ましくは5〜10の数を示す。eは1又は2の数を示す。Tは−O−、−CON−又は−N−であり、Tが−O−の場合はbは1であり、Tが−CON−又は−N−の場合はeは2である。〕
一般式(6)の化合物の具体例として、下記の化合物を挙げることができる。
【0045】
14−O−(C24O)f−H (6−a)
〔式中、R14は前記の意味を示す。fは4〜15、好ましくは5〜10の数である。〕
14−O−(C24O)g−(C36O)h−H (6−b)
〔式中、R14は前記の意味を示す。g及びhは、それぞれ独立に2〜15、好ましくは2〜10の数であり、エチレンオキシドとプロピレンオキシドはランダムあるいはブロック付加体であってもよい。〕
【0046】
【化5】

【0047】
〔式中、R14は前記の意味を示す。R16はメチル基、エチル基又は−(C24O)i−Hである。また、R17は−(C24O)j−Hである。i及びjは、それぞれ独立に0〜5の数であり、i+jは1〜6である。〕。
【0048】
本発明では、これらの中でも、特に(6−a)及び(6−b)から選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤が好ましい。
【0049】
陽イオン界面活性剤としては、下記一般式(7)のモノ長鎖アルキル(もしくはアルケニル)トリ短鎖アルキル型陽イオン界面活性剤が好ましい。
【0050】
【化6】

【0051】
〔式中、R18は好ましくは炭素数8〜18、より好ましくは10〜18、更に好ましくは10〜16のアルキル基又はアルケニル基であり、R19、R20及びR21は、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基である。X-は陰イオン、好ましくはハロゲンイオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数1〜12の脂肪酸イオン又は炭素数1〜3の置換基を1〜3個有していてもよいアリールスルホン酸イオンである。〕。
【0052】
両性界面活性剤としては、前記一般式(2)で示されるアミンオキシド型界面活性剤の他に、下記一般式(8)で示される化合物を用いてもよい。
【0053】
【化7】

【0054】
〔式中、R22は好ましくは炭素数9〜23、より好ましくは9〜17、更に好ましくは10〜16のアルキル基又はアルケニル基であり、R23は好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは1〜4、更に好ましくは2又は3のアルキレン基である。Bは−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−及び−O−から選ばれる基であり、kは0又は1の数、好ましくは0である。R24及びR25は、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基、好ましくはメチル基、エチル基又はヒドロキシエチル基であり、R26はヒドロキシ基で置換していてもよい炭素数1〜5、好ましくは1〜3のアルキレン基である。Dは、−SO3-又は−OSO3-であり、特に−SO3-が洗浄漂白効果の点から良好である。〕。
【0055】
陰イオン界面活性剤としては、分子中に好ましくは炭素数10〜18、より好ましくは10〜16、更に好ましくは10〜15のアルキル基又はアルケニル基と、−SO3M基又は−OSO3M基〔M:対イオン〕を有する陰イオン界面活性剤が好ましい。具体的には上記炭素数を有するアルキルベンゼンスルホン酸、アルキル(又はアルケニル)硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸エステル、オレフィンスルホン酸、アルカンスルホン酸、α−スルホ脂肪酸、α−スルホ脂肪酸エステル及びこれらの塩が好ましい。これらの中でも特に炭素数10〜16のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル(又はアルケニル)硫酸エステル、炭素数10〜16のアルキル基又はアルケニル基を有し、エチレンオキシド(以下、EOと表記する)平均付加モル数が好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4、更に好ましくは1〜3であるポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸エステル、炭素数10〜15のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上を配合することが好ましい。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩又はアルカノールアミン塩が貯蔵安定性の点から好適である。
【0056】
本発明のA剤は、洗浄漂白効果の点から、非イオン界面活性剤を好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%含有することが好適であり、陽イオン界面活性剤を好ましくは0.1〜2質量%、より好ましくは0.1〜1質量%含有することが好適であり、両性界面活性剤を好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%含有することが好適である。
【0057】
また、本発明のB剤は、洗浄効果の点から、非イオン界面活性剤を好ましくは0〜40質量%、より好ましくは1〜35質量%含有することが好適であり、陰イオン界面活性剤を好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0.1〜10質量%含有することが好適である。また、両性界面活性剤を好ましくは0〜15質量%、より好ましくは0.5〜5質量%含有することが好適であり、陽イオン界面活性剤を好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%含有することが好適である。なお、一般式(2)のアミンオキシド型界面活性剤はB剤に配合することが好ましい。
【0058】
本発明では、A剤及び/又はB剤に、洗浄性を向上させる目的から、アクリル酸、メタクリル酸、又はマレイン酸を重合して得られるホモポリマー若しくはこれらのモノマーからなるコポリマー、又はこれらのモノマーと共重合可能な他のモノマーとのコポリマー等のカルボン酸系ポリマーを配合することが好ましい。
【0059】
これらのカルボン酸系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは3,000〜100,000、より好ましくは5,000〜80,000である。重量平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで求めることが出来る。
【0060】
また、このようなカルボン酸系ポリマーは一部及び/又は全部がアルカリ剤で中和された塩の状態であっても差し支えない。アルカリ剤としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を含む化合物が好ましい。
【0061】
具体的には、好ましくは重量平均分子量3,000〜30,000のポリアクリル酸ナトリウム(若しくはカリウム)又はポリメタクリル酸ナトリウム(若しくはカリウム)、あるいは好ましくは重量平均分子量20,000〜100,000、より好ましくは50,000〜80,000のアクリル酸−マレイン酸コポリマーのナトリウム塩(もしくはカリウム塩)が良好である。アクリル酸−マレイン酸コポリマーの場合は、アクリル酸/マレイン酸が質量比で5/5〜9/1、好ましくは6/4〜8/2が洗浄効果の点から好適である。
【0062】
本発明において、上記カルボン酸系ポリマーの含有量は、A剤中、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0.1〜7質量%であり、B剤中、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜8質量%である。
【0063】
更に、本発明のA剤及び/又はB剤は金属イオン封鎖剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる金属イオン封鎖剤としては、下記(i)〜(viii)のものが挙げられ、なかでも(ii)、(v)、(vi)及び(vii)から選ばれる少なくとも1種が好ましく、(ii)から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
(i)フィチン酸等のリン酸系化合物のアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩
(ii)エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸及びその誘導体、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸等のホスホン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩
(iii)2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸等のホスホノカルボン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩
(iv)アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン等のアミノ酸のアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩
(v)ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ジエンコル酸等のアミノポリ酢酸のアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩
(vi)ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸等の有機酸のアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩
(vii)ゼオライトAに代表されるアルミノケイ酸のアルカリ金属塩又はアルカノールアミン塩
(viii)アミノポリ(メチレンホスホン酸)のアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩、又はポリエチレンポリアミンポリ(メチレンホスホン酸)のアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩。
【0064】
このような金属イオン封鎖剤の含有量は、B剤中に好ましくは0〜5質量%、更に好ましくは0.01〜1質量%である。
【0065】
本発明のA剤及び/又はB剤には、上記成分の他に、洗浄剤に通常添加される公知の成分を添加することができる。例えば、過酸化水素の安定化剤として公知の硫酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、塩化マグネシウム、ケイフッ化マグネシウム、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウム等のマグネシウム塩、及び珪酸ソーダのような珪酸塩類を用いることが好ましい。更に、必要に応じてカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールのような再汚染防止剤等を添加することが好ましい。
【0066】
また、本発明のA剤及び/又はB剤には、更に種々の化合物を含有させることができる。例えば、過酸化水素の安定化剤として知られているリン酸、バルビツール酸、尿酸、アセトアニリド、オキシキノリンやフェナセチン等に代表されるアミノポリカルボン酸類、及び、DL−α−トコフェロール、没食子酸誘導体、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)等を添加することが好ましい。これらの安定化剤はA剤及び/又はB剤中に、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0.01〜3質量%含有させるのが好適である。
【0067】
また、本発明のA剤及び/又はB剤には、変退色防止剤として公知の物質を含むことが好ましい。このような物質としてはフェニルアラニン、ヒスチジン、リジン、チロシン、メチオニン等のアミノ酸及びアミノ酸塩類、及びヒドロキシイミノジ酢酸等のアミノ又はイミド化合物、更にはアクリロニトリルと第四級アンモニウム基を有するアクリロニトリルと共重合可能なモノマーの1種又は二種以上とのコポリマー等である。なお、アミノ酸には光学異性体が存在するが、本発明の効果においては光学異性体は関与しない。従って、化学的に合成したアミノ酸を使用することも可能である。
【0068】
また、本発明のA剤及び/又はB剤には、漂白繊維に対する漂白効果を増すために蛍光増白剤として、チノパールCBS(チバ・ガイギー社製)、チノパールSWN(チバ・ガイギー社製)や、カラー・インデックス蛍光増白剤28、40、61、71等のような蛍光増白剤や、漂白性能を向上させるために従来公知の酵素(セルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ)を必要に応じて配合することが好ましい。
【0069】
また、本発明のA剤及び/又はB剤には、染料や顔料のような着色剤、香料、シリコーン類、殺菌剤、紫外線吸収剤等の種々の微量添加物を適量配合することが好ましい。
【0070】
また、上記成分の他に通常添加される公知の成分を添加することができる。低温での液の安定性及び凍結復元性を改善したり、高温での液分離を防止する目的でハイドロトロープ剤を配合することが好ましい。このようなハイドロトロープ剤としては、一般的には、トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩等に代表される短鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン等に代表されるアルコール及び多価アルコール等が好ましい。ハイドロトロープ剤はA剤及び/又はB剤中に0〜30質量%程度配合することが好ましい。
【0071】
<pH特性>
A剤の20℃におけるpHは発泡性を高めるために好ましくは2以下、より好ましくは1.3以下に調整することが好適である。B剤の20℃におけるpHは好ましくは3〜10、より好ましくは6〜9に調整することが好適である。
【0072】
発泡性の観点から、A剤とB剤を等量で混合した時の20℃でのpH値が好ましくは8以下、より好ましくは7以下であることが好適である。本発明では、上記A剤及びB剤を混合して洗浄を行うものであり、使用時の混合比率が変動した場合にも、上記pH条件を満たすことが洗浄効果の観点から好ましい。このため、本発明では、A剤とB剤を1/3〜3/1、更に1/5〜5/1、あるいは1/10〜10/1の何れの質量比で混合した場合にも、混合液のpHが、20℃において7以下となるものがより好ましい。混合液のpHが、前記何れの混合比においても前記範囲内にある場合は、充分な洗浄効果を示す。
【0073】
なお、pHは、pHメーター(堀場製作所製 pH METER F−14)を用いて測定する。
【0074】
<粘度特性>
A剤及びB剤の20℃における粘度は、いずれも好ましくは3〜300mPa・s、更に好ましくは4〜200mPa・sの範囲に調整することが好適である。このような粘度に調整するために本発明ではA剤及び/又はB剤に粘度調整剤を配合することができる。粘度調整剤としては炭素数1〜3のアルキル基、もしくはヒドロキシ基が1〜3個置換していてもよいベンゼンスルホン酸、分子量3000〜100000のポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールを用いることができる。このような粘度調整剤の含有量は、A剤及び/又はB剤中、好ましくは0〜10質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%である。粘度は、B型粘度計(ブルックフィールド型粘度計[(株)東京計器製])を用い、No.1ローター、60rpm、20℃で測定する。
【0075】
<洗浄方法及び2剤型液体洗浄剤>
本発明の洗浄方法は、A剤とB剤を洗浄対象に処理し、発泡を伴い洗浄する方法である。A剤及びB剤を衣類等の洗浄対象に処理する方法としては、塗布する方法が好ましく、塗布する方法としては、(1)予めB剤を洗浄対象に塗布し洗浄対象に浸透させた後、A剤を塗布する方法、(2)A剤を塗布した後に、B剤を塗布する方法、(3)A剤とB剤を同時に塗布する方法、(4)A剤とB剤を予め混合した後に塗布する方法等が挙げられる。その中でも、方法(1)が、B剤中の炭酸水素塩が洗浄対象内部に浸透し、続いてA剤を浸透させることにより洗浄対象内部で発泡反応が起こるため、最も好ましい。洗浄対象としては、繊維製品、特に衣料が好ましい。
【0076】
本発明の2剤型液体洗浄剤は、A剤とB剤とからなり、A剤とB剤とが分離して収容されており、A剤とB剤を混合する際に発泡を伴うものである。本発明の2剤型液体洗浄剤は、A剤及びB剤を衣料等の洗浄対象に直接塗布して放置後、水洗する洗浄方法に用いることができる。また、A剤及びB剤を衣料等の洗浄対象に直接塗布して放置後、通常の洗濯機での洗濯で従来公知の衣料用洗剤と混合して使用することもできる。塗布した後の放置時間は、洗浄性能を高め、衣類損傷を起こさないために1〜180分が好ましく、3〜60分が更に好ましい。あるいはまた、水道水に予めA剤又はB剤を溶解させた水溶液(好ましくは0.05〜30質量%)に衣料等の洗浄対象を浸漬させ、他剤を加えて洗浄することができる。また、本発明の2剤型液体洗浄剤は、従来公知の衣料用洗剤と混合して使用することもできる。洗浄性能を高めるために洗浄時に、A剤及び/又はB剤を30〜50℃に加温することも好ましい。
【0077】
本発明の2剤型液体洗浄剤は、繊維製品、特には衣料用の洗浄に使用することが好ましい。
【実施例】
【0078】
実施例1〜5及び比較例1〜4
表1に示す組成のA剤及びB剤をそれぞれ調製した。得られたA剤及びB剤を表1に示す組合せで用い、下記の方法で発泡性及び靴下泥汚れ洗浄力を評価した。結果を表1に示す。なお、表1の実施例1〜5は、A剤とB剤を等量で混合した時の20℃でのpH値は、何れも7以下であった。
【0079】
<発泡性>
B剤30mlを入れた200mlビーカーに、A剤30mlを加え、発泡性を下記基準で評価した。
【0080】
発泡性の評価基準
◎;直後に、激しく発泡する。
○;発泡する。
△;細かい泡が微量出る。
×;発泡しない
<靴下泥汚れ洗浄力>
(1)靴下泥汚れサンプルの調製
二槽式洗濯機(東芝銀河3.6)の洗濯槽に40Lの水道水を入れ、濃度0.0667質量%となるように市販粉末洗剤を加えた洗浄液を用いて、白靴下を3回普通洗浄した。その白靴下を土敷のグラウンドで1日1時間以上運動する人が1日間着用したものを収集し、泥汚れの程度で5つのグループに分け、泥汚れの最もひどいグループを用い、洗浄力評価に供した。
【0081】
(2)靴下泥汚れ洗浄力の評価
二槽式洗濯機(東芝銀河3.6)の洗濯槽に40Lの水道水を入れ、これに1.4kgの綿製の未着用肌着及び0.6kgの綿/ポリエステル混紡の未着用ワイシャツを入れた。更に粉末洗剤を濃度0.0667質量%となるように投入した。表中のB剤を上記(1)で得られた靴下片足(1片)に対し5ml塗布し、10秒間経過後に更にA剤を5ml塗布した。5分間放置後に上記洗濯槽に入れ、10分間普通洗浄した後、1分間脱水し、8分間15L/分の水量の水道水で流水すすぎした。その後5分間脱水し、室内で自然乾燥させ、処理済の試験片を得た。得られた処理済みの試験片に対して、下記の基準により、靴下泥汚れ洗浄力の評価を行った。
【0082】
靴下泥汚れ洗浄力の評価基準
1:未処理の試験片と比べて、汚れが全て落ちており、満足のいくレベル
2:未処理の試験片と比べて、汚れが僅かに残るが、満足のいくレベル
3:未処理の試験片と比べて、汚れがやや落ちたが、やや不満足なレベル
4:未処理の試験片と比べて、汚れが僅かに落ちた不満足なレベル
5:未処理の試験片と比べて、汚れが全く落ちていない不満足なレベル
【0083】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸剤及び水を含有する組成物からなるA剤と、炭酸水素塩及び水を含有する組成物からなるB剤を洗浄対象に処理し、発泡を伴い洗浄する、洗浄方法。
【請求項2】
炭酸水素塩が、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素アンモニウムから選ばれる1種以上である、請求項1記載の洗浄方法。
【請求項3】
A剤の組成物が、過酸化水素を0.1〜10質量%含有する、請求項1又は2記載の洗浄方法。
【請求項4】
A剤がpH2以下であり、B剤のpHが3〜10である、請求項1〜3の何れか1項記載の洗浄方法。
【請求項5】
予めB剤を洗浄対象に処理し、続いてA剤を処理する、請求項1〜4の何れか1項記載の洗浄方法。
【請求項6】
酸剤及び水を含有する組成物からなるA剤と、炭酸水素塩及び水を含有する組成物からなるB剤とからなり、A剤とB剤とが分離して収容されており、A剤とB剤を混合する際に発泡を伴う2剤型液体洗浄剤。
【請求項7】
A剤がpH2以下であり、B剤のpHが3〜10である、請求項6記載の2剤型液体洗浄剤。

【公開番号】特開2010−132758(P2010−132758A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309336(P2008−309336)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】