説明

洗浄液兼充填液、該洗浄液兼充填液を収容したカートリッジ、該洗浄液兼充填液を用いたインクジェット記録装置の洗浄、充填、保管方法

【課題】インク流路の洗浄を十分に行うことができる洗浄液の機能と、印字検査に用いたインクの洗浄残渣の凝集を防ぎ、インク流路部材への侵食もなく、インクの充填時に問題を起こさない充填液としての機能を持つ洗浄液兼充填液などの提供。
【構成】インクジェット記録装置及びインクカートリッジの液体流路の洗浄液兼充填液であって、下記構造式(1)で示されるアミド化合物の少なくとも1種を合計量で10.0〜45.0質量%含有し、かつフッ素系界面活性剤を含有する洗浄液兼充填液。
<構造式(1)>


(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置及びこの装置に用いるインクカートリッジの液体流路を洗浄するための洗浄液兼充填液、該洗浄液兼充填液を充填したカートリッジ、該洗浄液兼充填液を用いたインクジェット記録装置の洗浄、充填、保管方法、並びに、この方法で洗浄、充填、保管されたインクジェット記録装置に関する。
に関する。
インクカートリッジにもインク貯蔵部からインク供給口までのインク通液部などの液体流路があり、インクカートリッジを再利用するときなどには、これらの液体流路を洗浄する必要が生じる。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置のインク吐出ヘッドは、直径50μm以下の微細なオリフィスを持つノズル部や、それにつながる圧力発生部、液室部、フィルター部等から構成され、非常に高精度に加工されており、また、1ヘッドあたりのノズル数も多く、製品として出荷する前に全体が正常に動作し、吐出不良が起こっていないことを確かめるために、色材を含有する検査インクなどを充填し、不具合を検知している。これら検査に使用したインクが輸送時にインク漏れを起こして問題とならないよう、また、ユーザーの元でインクが充填されるまでの間、検査インク中の色材が凝集して目詰まりを起こすなどの問題を生じさせないためにも、検査後はインクジェット記録装置内のインクを洗い流すことが必要となる。
インクを洗い流すための洗浄液として、従来は、主溶媒(たとえば水)、界面活性剤、保湿剤などを含有させた固形分を含まない溶液が用いられてきた(特許文献1参照)。
これらの洗浄液を用いると、吐出液体中の固形分が残留してノズル内を塞ぐことはなく目詰まりは起こりにくいが、微量残留物がノズル内壁、吐出口などに付着残留して起こる吐出液体の曲がりなどの吐出不良は十分に解決できていない。
また、ノズル内に付着した残留物を除去するためのメンテナンス液、クリーニング液なども提案されているが(特許文献2参照)、ノズル内残留物を完全に除去するのは難しいのが実情である。
【0003】
特に最近では、高解像度の画像やパターニング精度が求められ、従来よりも吐出液体の曲がりへの許容度が減っており、より精度の高い吐出性が求められている。さらに、インクには種々の固形分が含有されるようになり、ますます液体流路、特にノズル内をきれいに洗浄することや、少なくとも、その後の使用でインク吐出に影響しない程度に洗浄することが難しいのが現状である。
このような状況下、従来の洗浄液兼充填液では、洗浄性が不十分であったり、また洗浄性を確保できても、インクの充填性が悪くて吐出不良を起こしたり、ヘッド内に用いている接着剤を膨潤させてヘッドの強度低下を招き吐出安定性が得られなかったり、インクが充填されるまでの保管期間にインク流路の金属部を腐食したりするなどの問題があった。
一方、特許文献3にはN,N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミドと水を含み、更には界面活性剤を含む洗浄剤組成物が開示されている。しかし該洗浄液は精密機械部品又は電気・電子部品の洗浄剤として開発されたものであって、インクジェット記録装置の洗浄に用いると、装置内に残存するインク成分を凝集させたり、界面活性剤の種類によっては洗浄性が劣ったり、洗浄液自体が泡立つなどの問題を起こすことがあるため使用できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、インクジェット記録装置及びこの装置に用いるインクカートリッジの液体流路の洗浄液兼充填液であって、インク流路の洗浄を十分に行うことができる洗浄液の機能と、印字検査に用いたインクの洗浄残渣の凝集を防ぎ、インク流路部材への侵食もなく、インクの充填時に問題を起こさない充填液としての機能を持つ洗浄液兼充填液、該洗浄液兼充填液を充填したカートリッジ、該洗浄液兼充填液を用いたインクジェット記録装置の洗浄、充填、保管方法、並びに、この方法で洗浄、充填、保管されたインクジェット記録装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、次の1)〜7)の発明によって解決される。
1) インクジェット記録装置及びこの装置に用いるインクカートリッジの液体流路の洗浄液兼充填液であって、下記構造式(1)で示されるアミド化合物の少なくとも1種を合計量で10.0〜45.0質量%含有し、かつフッ素系界面活性剤を含有することを特徴とする洗浄液兼充填液。
<構造式(1)>
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
2) 前記フッ素系界面活性剤が、下記構造式(2)−1〜(2)−8で示されるものから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の洗浄液兼充填液。
<構造式(2)−1>
【化2】

(式中、R1、R3は水素、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表し、R2、R4は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表す。m、nは0又は正の整数、p、q及びrは正の整数を表す。)

<構造式(2)−2>
【化3】

(式中、Mはアルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム、又はアルカノールアミンを表し、Rfは−CF、又は−CFCFを表し、qは4〜10の整数を表す。)

<構造式(2)−3>
【化4】

(式中、Rは水素、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表し、Rは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表す。x、y、zは正の整数を表す。)

<構造式(2)−4>
2n+1−CHCH(OH)CHO(CHCHO)a−Y

〔式中、Yは−C2b+1(bは11〜19の整数)又は−CHCH(OH)CH−C2d+1(dは2〜6の整数)を表し、nは2〜6の整数、aは15〜50の整数を表す。〕

<構造式(2)−5>
【化5】

(式中、MはLi、Na、K、NHのいずれかを表す。)

<構造式(2)−6>
〔(RfSO〕N
(式中、Rfは炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を表し、MはLi、Na、K、NHのいずれかを表す。)

<構造式(2)−7>
〔(RfSO)(RSO)〕N
(式中、Rfは炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を表し、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表し、MはLi、Na、K、NHのいずれかを表す。)

<構造式(2)−8>
〔(FSO〕N
(式中、MはLi、Na、K、NHのいずれかを表す。)

3) 前記構造式(2)−4で示される化合物が、次の(a)〜(e)のいずれかであることを特徴とする2)に記載のインクジェット記録装置用洗浄液兼充填液。
(a)C−CHCH(OH)CHO−(CHCHO)21−C1837
(b)C−CHCH(OH)CHO−(CHCHO)25−C1225
(c)C−CHCH(OH)CHO−(CHCHO)23−CHCH(OH)CH−C
(d)C−CHCH(OH)CHO−(CHCHO)35−CHCH(OH)CH−C
(e)C−CHCH(OH)CHO−(CHCHO)45−CHCH(OH)CH−C
4) 更にグリセリン及び/又は1,3−ブタンジオールを含有することを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載の洗浄液兼充填液。
5) 1)〜4)の何れかに記載の洗浄液兼充填液を容器中に収容したことを特徴とするカートリッジ。
6) 1)〜4)の何れかに記載の洗浄液兼充填液を通液してインク流路を洗浄した後、該洗浄液兼充填液を充填して保管することを特徴とするインクジェット記録装置の洗浄、充填、保管方法。
7) 6)記載の方法により洗浄、充填、保管されたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、インクジェット記録装置及びこの装置に用いるインクカートリッジの液体流路の洗浄液兼充填液であって、液体流路の洗浄を十分に行うことができる洗浄液の機能と、印字検査に用いたインクの洗浄残渣の凝集を防ぎ、液体流路部材への侵食もなく、インクの充填時に問題を起こさない充填液としての機能を持つ洗浄液兼充填液、該洗浄液兼充填液を充填したカートリッジ、該洗浄液兼充填液を用いたインクジェット記録装置の洗浄、充填、保管方法、並びに、この方法で洗浄、充填、保管されたインクジェット記録装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】インクジェット記録装置のインクカートリッジ装填部のカバーを開いた状態の斜視説明図である。
【図2】インクジェット記録装置の全体構成を説明する概略構成図である。
【図3】インクジェットヘッドの一例の概略拡大図である。
【図4】インクジェットヘッドの一例の要部拡大図である。
【図5】インクジェットヘッドの一例の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明の洗浄液兼充填液は前記構造式(1)で示されるアミド化合物の少なくとも1種とフッ素系界面活性剤を含有することを特徴とする。
上記アミド化合物は、平衡水分量の高い水溶性溶剤と比較的疎水性の有機溶剤を均一に混合させる機能を有し、印字検査に用いたインクと洗浄液兼充填液が混ざりやすくなるため洗浄性が向上する。また、洗浄残渣の凝集を防ぎ、インク充填時には洗浄液兼充填液とインクが速やかに混ざり、凝集すること無くインクの充填が行える。また、高沸点かつ平衡水分量も高いため保湿力が高く、耐乾燥性を上げることができるので洗浄液としてだけでなく充填液としても使用可能となる。中でも炭素数が少ないものほど平衡水分量が高いため保湿力が高く、炭素数が多いものほど溶解性に優れるため洗浄性が高い。したがって炭素数が少ないものと炭素数が多いものを併用することが好ましい。
前記アミド化合物の添加量は、10.0〜45.0質量%とする。10.0質量%未満では、均一に混合させる効果が十分に確保できず、45.0質量%を超えると液体流路部材などを侵食するため、吐出等に悪影響を与える。
【0009】
フッ素系界面活性剤は、液の表面張力を下げることにより洗浄性を上げたり、洗浄液兼充填液の混合安定性を上げたり、洗浄後のインクの充填性を上げるために加える。中でも前記構造式(2)−1〜(2)−8で示されるフッ素系界面活性剤が好ましく、特に構造式(2)−4のフッ素系界面活性剤としては前記(a)〜(e)のいずれかが好ましい。
また、これらの界面活性剤は液の表面張力を低下させる能力が高く洗浄性能に優れる上に、低起泡性であり、チューブやヘッド内に泡が残ってノズル抜けの発生を引き起こすことが無い。更に、これらの界面活性剤は水に溶解しにくいが、前記アミド化合物と混合することにより相溶性が向上し、液の保存性が向上する。界面活性剤の相溶性が悪いとチューブやヘッド内に界面活性剤が残存してインクとの混合安定性が悪化することがあるが、このような問題も解決できる。
フッ素系界面活性剤の添加量は0.01〜5.0質量%の範囲が好ましい。0.01質量%以上であれば表面張力を下げる効果が十分に得られるし、5.0質量%以下であれば、乾燥時に凝集を招いたり、液体流路部材を膨潤させたりすることはない。
フッ素系界面活性剤以外の界面活性剤を併用することもでき、例えばアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0010】
アニオン界面活性剤としては、アルキルアリル又はアルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、アルキルアリールエーテルエステル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンオレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、エーテルカルボキシレート、スルホコハク酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル、脂肪酸塩、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、ナフテン酸塩等がある。
【0011】
カチオン界面活性剤としては、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、脂肪族アミン塩、ベンザルコニウム塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩等がある。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレングリコールエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グリコキシド等がある。
両性界面活性剤としては、イミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリン誘導体、ジメチルアルキルラウリルベタイン、アルキルグリシン、アルキルジ(アミノエチル)グリシン等がある。
【0012】
本発明の洗浄液兼充填液は、前記アミド化合物及び界面活性剤の他に、溶媒、保湿剤、その他の添加剤等を含有する。インクと共通な構成成分で固形分を含まないものが用いられることが多いが、特に限定されるものではない。ただし、流路内での洗浄液兼充填液の乾燥防止や発泡防止のため保湿剤を含有させることが好ましい。
【0013】
溶媒としては水が中心であるが、水溶性有機溶媒などを混合して用いることもできる。平衡水分量の高い水溶性有機溶剤を加えると、水分蒸発が抑えられ、より乾燥に強くなり充填液としての保管性が向上するので好ましい。
水溶性有機溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、グリセリン、1,2,6−へキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類;プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0014】
保湿剤は主に流路内での洗浄液兼充填液の乾燥を防いだり発泡を防ぐなどの目的で含有させる。このような保湿剤としては水溶性多価アルコールが好ましく、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、グリセリン、1,2,6−へキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等が挙げられる。中でも23℃、湿度80%における平衡水分量が30質量%以上であるものが好ましく、グリセリン、1,3−ブタンジオールがこれに該当する。
水溶性多価アルコール以外の保湿剤として、含窒素炭化水素溶媒、含硫黄炭化水素溶媒などを併用してもよい。
【0015】
その他の添加剤としては、pH調整剤、防腐防黴剤等が挙げられる。
pH調整剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;第4級アンモニウム水酸化物やジエタノールアミン、トリエタノ−ルアミン等のアミン;水酸化アンモニウム、第4級ホスホニウム水酸化物等が挙げられる。
防腐防黴剤としては、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、ぺンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム等が挙げられる。
【0016】
次に、本発明の洗浄液兼充填液が適用可能なインクジェット記録装置の一例について説明する。
図1に示すインクジェット記録装置は、装置本体(101)と、装置本体(101)に装着した用紙を装填するための給紙トレイ(102)と、装置本体(101)に装着され画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ(103)と、インクカートリッジ装填部(104)とを有する。インクカートリッジ装填部(104)の上面には、操作キーや表示器などの操作部(105)が配置されている。インクカートリッジ装填部(104)は、インクカートリッジ(201)の脱着を行うための開閉可能な前カバー(115)を有している。(111)は上カバー、(112)は装置の前面である。
装置本体(101)内には、図2及び図3に示すように、左右の側板(不図示)に横架したガイド部材であるガイドロッド(131)とステー(132)とでキャリッジ(133)を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ(不図示)によって図3に示す矢示方向に移動走査する。
キャリッジ(133)には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個のインクジェット記録用ヘッドからなる記録ヘッド(134)を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0017】
記録ヘッド(134)を構成するインクジェット記録用ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどをインクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できる。
また、キャリッジ(133)には、記録ヘッド(134)に各色のインクを供給するための各色のサブタンク(135)を搭載している。サブタンク(135)には、インク供給チューブ(不図示)を介して、インクカートリッジ装填部(104)に装填された本発明のインクカートリッジ(201)からインクが供給されて補充される。
【0018】
一方、給紙トレイ(103)の用紙載置部(圧板)(141)上に積載した用紙(142)を給紙するための給紙部として、用紙載置部(141)から用紙(142)を1枚づつ分離給送する給紙コロ(半月コロ)(143)、及び給紙コロ(143)に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド(144)を備え、この分離パッド(144)は給紙コロ(143)側に付勢されている。
この給紙部から給紙された用紙(142)を記録ヘッド(134)の下方側で搬送するための搬送部として、用紙(142)を静電吸着して搬送するための搬送ベルト(151)と、給紙部からガイド(145)を介して送られる用紙(142)を搬送ベルト(151)との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ(152)と、略鉛直上方に送られる用紙(142)を略90°方向転換させて搬送ベルト(151)上に倣わせるための搬送ガイド(153)と、押さえ部材(154)で搬送ベルト(151)側に付勢された先端加圧コロ(155)とが備えられ、また、搬送ベルト(151)表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ(156)が備えられている。
【0019】
搬送ベルト(151)は、無端状ベルトであり、搬送ローラ(157)とテンションローラ(158)との間に張架されて、ベルト搬送方向に周回可能である。この搬送ベルト(151)は、例えば、抵抗制御を行っていない厚さ40μm程度の樹脂材、例えば、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)とを有している。搬送ベルト(151)の裏側には、記録ヘッド(134)による印写領域に対応してガイド部材(161)が配置されている。なお、記録ヘッド(134)で記録された用紙(142)を排紙するための排紙部として、搬送ベルト(151)から用紙(142)を分離するための分離爪(171)と、排紙ローラ(172)及び排紙コロ(173)とが備えられており、排紙ローラ(172)の下方に排紙トレイ(103)が配されている。
装置本体(101)の背面部には、両面給紙ユニット(181)が着脱自在に装着されている。両面給紙ユニット(181)は、搬送ベルト(151)の逆方向回転で戻される用紙(142)を取り込んで反転させて、再度、カウンタローラ(152)と搬送ベルト(151)との間に給紙する。なお、両面給紙ユニット(181)の上面には手差し給紙部(182)が設けられている。
【0020】
このインクジェット記録装置においては、給紙部から用紙(142)が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙(142)は、ガイド(145)で案内され、搬送ベルト(151)とカウンタローラ(152)との間に挟まれて搬送される。更に先端を搬送ガイド(153)で案内されて先端加圧コロ(155)で搬送ベルト(151)に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、帯電ローラ(156)によって搬送ベルト(157)が帯電されており、用紙(142)は、搬送ベルト(151)に静電吸着されて搬送される。そこで、キャリッジ(133)を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド(134)を駆動することにより、停止している用紙(142)にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙(142)を所定量搬送後、次行の記録を行う。記録終了信号又は用紙(142)の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙(142)を排紙トレイ(103)に排紙する。
そして、サブタンク(135)内のインクの残量ニアーエンドが検知されると、インクカートリッジ(201)から所要量のインクがサブタンク(135)に補給される。
【0021】
このインクジェット記録装置においては、インクカートリッジ(不図示)中のインクを使い切ったときには、インクカートリッジにおける筐体を分解して内部のインク袋だけを交換することができる。また、インクカートリッジは、縦置きで前面装填構成としても、安定したインクの供給を行うことができる。したがって、装置本体(101)の上方が塞がって設置されているような場合、例えば、ラック内に収納したり、あるいは装置本体(101)の上面に物が置かれているような場合でも、インクカートリッジの交換を容易に行うことができる。
なお、ここでは、キャリッジが走査するシリアル型(シャトル型)インクジェット記録装置に適用した例で説明したが、ライン型ヘッドを備えたライン型インクジェット記録装置にも同様に適用することができる。
また、上記インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法は、インクジェット記録方式による各種記録に適用することができ、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、などに特に好適に適用することができる。
【0022】
次に、インクジェットヘッドについて説明する。
図4は、インクジェットヘッドの一例の要部拡大図、図5は、同ヘッドのチャンネル間方向の要部拡大断面図である。
このインクジェットヘッドは、インク供給口(不図示)と共通液室(1b)となる彫り込みを形成したフレーム(10)と、流体抵抗部(2a)、加圧液室(2b)となる彫り込みと、ノズル(3a)に連通する連通口(2c)を形成した流路板(20)と、ノズル(3a)を形成するノズルプレート(30)と、凸部(6a)、ダイヤフラム部(6b)及びインク流入口(6c)を有する振動板(60)と、該振動板(60)に接着層(70)を介して接合された積層圧電素子(50)と、該積層圧電素子(50)を固定しているベース(40)を備えている。
ベース(40)はチタン酸バリウム系セラミックからなり、積層圧電素子(50)を2列配置して接合している。
積層圧電素子(50)は、厚さ10〜50μm/1層のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電層と、厚さ数μm/1層の銀・パラジウム(AgPd)からなる内部電極層とを交互に積層している。内部電極層は両端で外部電極に接続する。
【0023】
積層圧電素子(50)はハーフカットのダイシング加工により櫛歯上に分割され、1つ毎に駆動部(5f)と支持部(5g)(非駆動部)として使用する。外部電極の外側はハーフカットのダイシング加工で分割されるように、切り欠き等の加工により長さを制限しており、これらは複数の個別電極となる。他方はダイシングでは分割されずに導通しており共通電極となる。
駆動部の個別電極にはFPC8が半田接合されている。また、共通電極は積層圧電素子の(50)の端部に電極層を設けて回し込んでFPC8のGnd電極に接合させている。FPC8にはドライバIC(不図示)が実装されており、これにより駆動部(5f)への駆動電圧印加を制御している。
振動板(60)は、薄膜のダイヤフラム部(6b)と、このダイヤフラム部(6b)の中央部に形成した駆動部(5f)となる積層圧電素子(50)と接合する島状凸部(アイランド部)(6a)と、支持部に接合する梁を含む厚膜部と、インク流入口(6c)となる開口を電鋳工法によるNiメッキ膜を2層重ねて形成している。ダイヤフラム部の厚さは3μm、幅は35μm(片側)である。
この振動板(60)の島状凸部(6a)と積層圧電素子(50)の可動部(5f)、振動板(50)とフレーム(10)の結合は、ギャップ材を含んだ接着層(70)をパターニングして接着している。
流路板(20)はシリコン単結晶基板からなり、流体抵抗部(2a)、加圧液室(2b)となる彫り込み、及びノズル(3a)に対する位置に連通口(2c)となる貫通口がエッチング工法によりターニングされている。
エッチングで残された部分が加圧液室(2b)の隔壁(2d)となる。また、このヘッドではエッチング幅を狭くする部分を設けて、これを流体抵抗部(2a)としている。
【0024】
ノズルプレート(30)は、金属材料、例えば、電鋳工法によるNiメッキ膜等で形成したもので、インク滴を飛翔させるための微細な吐出口であるノズル(3a)を多数形成している。このノズル(3a)の内部形状(内側形状)は、ホーン形状(略円柱形状又は略円錘台形状でもよい。)に形成している。また、このノズル(3a)の径はインク滴出口側の直径で約20〜35μmである。また、各列のノズルピッチは150dpiである。このノズルプレート(30)のインク吐出面(ノズル表面側)又はノズル内壁に、撥インク性の表面処理を施した撥インク層(不図示)を設けている。
撥インク層としては、フッ素樹脂シリコーン樹脂などの樹脂層、フッ素系シランカップリング剤、Ni/PTFE共析膜などの金属/樹脂複合膜などが用いられるが、特にシリコーン樹脂、フッ素系シランカップリング剤の場合、本発明の効果が非常に顕著になる。
インク供給口と共通液室(1b)となる彫り込みを形成するフレーム(10)は樹脂成形で作製している。
【0025】
このように構成したインクジェットヘッドにおいては、記録信号に応じて駆動部(5f)に駆動波形(10〜50Vのパルス電圧)を印加することによって、駆動部(5f)に積層方向の変位が生起し、振動板(60)を介して加圧液室(2b)が加圧されて圧力が上昇し、ノズル(3a)からインク滴が吐出される。
その後、インク滴吐出の終了に伴い、加圧液室(2b)内のインク圧力が低減し、インクの流れの慣性と駆動パルスの放電過程によって加圧液室(2b)内に負圧が発生してインク充填行程へ移行する。このとき、インクタンクから供給されたインクは共通液室(1b)に流入し、共通液室(1b)からインク流入口(6c)を経て流体抵抗部(2a)を通り、加圧液室(2b)内に充填される。
流体抵抗部(2a)は、吐出後の残留圧力振動の減衰に効果が有る反面、表面張力による最充填(リフィル)に対して抵抗になる。流体抵抗部を適宜に選択することで、残留圧力の減衰とリフィル時間のバランスが取れ、次のインク滴吐出動作に移行するまでの時間(駆動周期)を短くできる。
本発明の洗浄液兼充填液を用いて洗浄する際には、前記圧電素子のように圧電アクチュエータにより、吐出が起こらない程度の微駆動による振動を利用して洗浄効果をより高めることも可能であり、非常に洗浄効率が向上し有効な手段である。
上記インクジェットノズル板、インクジェットヘッドは、これらインクジェット記録装置(画像形成装置)への応用が効果的であるが、これに限らず、カラーフィルター、有機EL等の製造装置、その他各種パターニング装置にも応用可能である。
【0026】
本発明の洗浄液兼充填液は容器に収容してカートリッジとし、インクジェット記録装置のメンテナンスの時などに用いることができる。その構成はインクカートリッジと同じでよく、インクの代りに洗浄液兼充填液を充填すればよい。また、図1に示すインクジェット記録装置の場合には、インクカートリッジ(201)に代えて本発明のカートリッジを用いればよい。
【0027】
次に、インクジェット用インクについて説明する。
インクの構成成分としては、色材、湿潤剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤、その他の添加剤(pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、水溶性赤外線吸収剤等)、樹脂等が挙げられる。インクが乾燥した際に、特に色材、樹脂などの固形分がノズル内に固着残留物として残り、それらが曲がりなどの吐出不良の原因となる。色材として顔料を用いた場合や樹脂として樹脂エマルジョンを用いた場合は、これらが溶媒に溶解せずに分散しているため固着残留物となり易く、本発明は有効である。顔料の場合は再分散性のあるものもあるが、樹脂エマルジョンは一度固着してしまうと、新たに吐出液体に接触しても再分散しないこと、また定着性付与のための添加であることが多く、接着機能があることから、ノズル内壁などに固着してしまうと完全に除去するのは非常に困難であったが、本発明ではそれが可能となった。
【0028】
色材としては、公知の顔料や染料を適宜使用することができる。
無機顔料としては、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、及びコンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの中でも、溶媒と親和性の良いものが好ましい。
上記の他に、顔料(例えばカーボン)の表面にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加し水中に分散可能とした自己分散顔料等も使用できる。また、顔料をマイクロカプセルに包含させ、該顔料を水中に分散可能なものとしたものであっても良い。
【0029】
インク中の色材としての顔料の添加量は、0.5〜25質量%程度が好ましく、より好ましくは2〜15質量%程度である。一般に顔料濃度が高くなると画像濃度が上がり画質が向上するが、定着性や吐出安定性、目詰まり等の信頼性に対しては悪影響が出易くなる。
顔料の粒径については特に制限は無いが、最大個数換算で最大頻度が20〜150nmの粒径の顔料インクが好ましい。粒径が150nmを超えると、インクとしての顔料分散安定性が悪くなるばかりでなく、吐出安定性も劣化し、画像濃度などの画像品質も低くなり好ましくない。粒径が20nm未満では、インクの保存安定性、プリンタでの噴射特性は安定するが、そのように細かな粒径にまで分散させるには、分散操作や、分級操作が複雑となり、経済的に記録液を製造することが困難となる。
分散剤を用いて顔料を分散する場合には、公知の分散剤を適宜使用することができる。たとえば、高分子分散剤、水溶性界面活性剤などが挙げられる。
【0030】
樹脂は、画像定着性の向上、画質の向上、顔料分散性の向上等の目的で必要に応じて添加する。
その例としては、親水性高分子として、天然系ではアラビアガム、トラガンガム、グーアガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクトン、ペクチン、クインスシードデンプン等の植物性高分子;アルギン酸、カラギーナン、寒天等の海藻系高分子;ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の動物系高分子;キサンテンガム、デキストラン等の微生物系高分子、半合成系ではメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素系高分子;デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のデンプン系高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸ブロピレングリコールエステル等の海藻系高分子、純合成系ではポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等、及びこれらの塩が挙げられる。
これらの樹脂の添加量は、信頼性を考慮した上で適宜選択される。
【0031】
また、最近は溶媒に溶けるタイプの樹脂ではなく、溶媒中で微粒子として分散したいわゆる樹脂エマルジョンが用いられることが多い。樹脂エマルジョンとは、樹脂微粒子を連続相としての溶媒中に分散したものであり、必要に応じて界面活性剤のような分散剤を含有させても良い。分散相成分としての樹脂微粒子の含有量(樹脂エマルジョン中の樹脂微粒子の含有量)は一般的には10〜70質量%程度であり、樹脂微粒子の粒径は特にインクジェット記録装置に使用することを考慮すると、平均粒径で10〜1000nmが好ましく、さらに20〜300nmが好ましいが、特に限定されるものではない。
分散相の樹脂微粒子成分としてはアクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコン系樹脂などが挙げられ、特にアクリルシリコン系樹脂が効果的であるが、特に限定されるものではなく、公知のものを用いた場合に信頼性を確保するためのものであり、市販の樹脂エマルジョンを用いることも可能である。
その具体例としては、マイクロジェルE−100、E−2002、E−5002(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン 日本ペイント製)、ボンコート5454(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン 大日本インキ化学製)、ジョンクリル775(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン ジョンソンポリマー製)、SAE1014(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン 日本ゼオン製)、サイビノールSK−200(アクリル系樹脂エマルジョン サイデン化学製)、プライマルAC−22、AC−61(アクリル系樹脂エマルジョン ローム・アンド・ハース製)、ナノクリルSBCX−2821、3689(アクリル−シリコン系樹脂エマルジョン 東洋インキ製)、#3070(メタクリル酸メチル重合体樹脂エマルジョン 御国色素製)などが挙げられる。
【0032】
インク中の前記樹脂微粒子の含有量としては、一般的には0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜20質量%、さらに好ましくは1〜10質量%であるが、特に限定されるものではない。
その他の構成成分である、水溶性有機溶剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐防黴剤などは前記洗浄液兼充填液の構成成分と同様であり、特に限定されるものではない。
上記インクは、前述の構成成分を媒体中に分散又は溶解し、さらに必要に応じて攪拌混合して作製する。分散はサンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシャイカー、超音波分散機等により行うことができ、攪拌混合は通常の攪拌羽を用いた攪拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機等で行うことができる。
【実施例】
【0033】
以下、インクジェット記録装置に適用した実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。
【0034】
実施例1〜10、比較例1〜10
表1、表2の各実施例及び比較例の欄に示すように材料を混合し、各洗浄液兼充填液を作製した。なお、表中の数値は質量%であり、純水は全体で100質量%となるように加えた。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
上記表1、表2中の製品名及び符号で示した材料の詳細は以下のとおりである。
・ゾニールFS−300(フッ素系界面活性剤):ポリオキシエチレンパーフロロアルキルエーテル(DuPont社製、有効成分40質量%)
・ECTD−6NEX(界面活性剤):ポリオキシエチレン(6)アルキルエーテル酢酸ナトリウム(日光ケミカルズ社製)
【表3】

【0038】
<顔料インクの調製>
−ポリマー溶液の調製−
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー4.0g及びメルカプトエタノール0.4g、メチルエチルケトン40.0gを混合し、65℃に昇温した。
次にスチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g及びメチルエチルケトン342.0gの混合溶液を2.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。
滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18.0gの混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。
反応終了後、濃度が50質量%のポリマー溶液800gを得た。
【0039】
−イエロー顔料含有ポリマー微粒子水分散体の調製−
前記ポリマー溶液28gとC.I.ピグメントイエロー74を26g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20.0g及びイオン交換水13.6gを十分に攪拌した後、ロールミルを用いて混練した。
得られたペーストを純水200gに投入し、充分に攪拌した後、エバポレータを用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、顔料を15質量%含有する、固形分20質量%のイエロー顔料含有ポリマー微粒子の水分散体を得た。
【0040】
−イエロー顔料インクの調製−
以下の手順でイエロー顔料インクを調製した。
まず、1,3−ブタンジオール15質量%、グリセリン15質量%、OMNOVA社製ポリフォックスPF−151N 1質量%、オクタンジオール2質量%を混合し、1時間攪拌して均一に混合した。この混合液に対して前記イエロー顔料含有ポリマー微粒子水分散体40質量%を添加し、合計100質量%となるように残量の水を添加し、1時間撹拌した。その後、0.8μmセルロースアセテートメンブランフィルターを用いて加圧濾過し、粗大粒子を除去して評価用のイエローインクとした。
【0041】
−マゼンタ顔料含有ポリマー微粒子水分散体の調製−
前記ポリマー溶液17.5gとC.I.ピグメントレッド122を32.5g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液8.5g、メチルエチルケトン13.0g及びイオン交換水13.6gを十分に攪拌した後、ロールミルを用いて混練した。
得られたペーストを純水200gに投入し、充分に攪拌した後、エバポレータを用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、顔料を15質量%含有する、固形分20質量%のマゼンタ顔料含有ポリマー微粒子の水分散体を得た。
【0042】
−マゼンタ顔料インクの調製−
以下の手順でマゼンタ顔料インクを調製した。
まず、3−メチル−1,3−ブタンジオール15質量%、グリセリン15質量%、DuPont社製ゾニールFSO−100 0.5質量%、1,2−ヘキサンジオール1質量%を混合し、1時間攪拌して均一に混合した。この混合液に対して前記マゼンタ顔料含有ポリマー微粒子水分散体40質量%を添加し、合計100質量%となるように残量の水を添加し、1時間撹拌した。その後、0.8μmセルロースアセテートメンブランフィルターを用いて加圧濾過し、粗大粒子を除去して評価用のマゼンタインクとした。
【0043】
上記した各洗浄液兼充填液及び評価用インクを用いて、以下のようにして、各種特性を評価した。結果を纏めて表4、表5に示す。
【0044】
<液としての均一性>
各洗浄液兼充填液を1時間静置し、静置後の液の状態を目視で観察して次の基準で評価した。
○:分離や不溶解物がなく均一な状態
×:成分の一部が分離しているか、又は不溶解物があり、不均一な状態

【0045】
<洗浄液兼充填液とインクの混合性評価>
洗浄液兼充填液97質量%、インク3質量%の混合液を作製し、65℃で50時間放置した後、外観変化を次の基準で評価した。
○:分離の有無が判らない
△:濃淡が見られる
×:分離が起こっている

【0046】
<洗浄液兼充填液の洗浄性評価>
・初期状態の設定
インクジェットプリンター(IPSIO GX3000、リコー社製)のインク供給経路やヘッド内のインクを純水で置換し、その後、ブラック、シアンインクの代わりに前記評価用のマゼンタインクを充填したカートリッジを、マゼンタ、イエローインクの代わりに前記評価用のイエローインクを充填したカートリッジを取り付け、充填動作後にヘッドリフレッシング動作を10回繰り返し、インク供給経路やヘッド内のインクを評価用インクに置き換えた。その後、ノズルチェックパターンを印字し、ノズル抜けが無くなるまでヘッドリフレッシング動作を行った。
・洗浄処理
インクジェットプリンターのノズル抜けが無いことを確認した後、洗浄液兼充填液を充填したカートリッジを全カートリッジの代わりに取り付け、ヘッドリフレッシング動作を6回実施した。その後、プリンターの維持ユニットを動作させ、各ヘッドから4.5ccだけ吸引し再び充填する動作を3回繰り返した。再度充填後、各ヘッドから2cc吸引し、ノズル面をワイピングすることによりインクジェット記録装置内の経路の洗浄を行った。
・洗浄性の評価
最後の吸引洗浄液兼充填液を回収し、マゼンタインクで563nm、イエローインクで421nmでの吸光度測定を行い、インクの同波長の吸光度との比較により、回収した洗浄液兼充填液中のインク着色微粒子の濃度(質量%)を算出した。
【0047】
<インク充填性評価>
インクジェットプリンター(IPSIO GX3000、リコー社製)を用い、洗浄液兼充填液でインクジェットプリンターのインク流路を洗浄した後、同じ洗浄液兼充填液を充填し、ノズル面に保湿キャップをして50℃、60%RH環境下で1ヶ月間放置した。その後、前述した評価用のイエローインク、マゼンタインクを充填したインクカートリッジを取り付け、インク充填動作を実施した。次いで、ノズルチェックパターンを印字し、インク充填動作後にヘッドリフレッシング動作を繰り返し、ノズルチェックを行って吐出不良(ノズルの不吐出や吐出曲がり=画像に対する白筋や黒筋が目立つ状態)が無くなるまでのヘッドリフレッシング回数により次の基準でインク充填性を評価した(最大8回まで)。
◎:ヘッドリフレッシングなし
○:ヘッドリフレッシング1回以上2回以下
△:ヘッドリフレッシング3回以上4回以下
×:ヘッドリフレッシング5回以上必要、もしくは回復不能
【0048】
【表4】

【0049】
【表5】

【0050】
上記表4、表5の結果から判るように、実施例1〜10は構造式(1)のアミド化合物を適量含有するので、インクとの混合性・洗浄性・インク充填性のいずれも良好であり、特に構造式(2)−1のフッ素系界面活性剤を含有する実施例5〜10は実施例1〜4に比べて洗浄性が優れている。
一方、アミド化合物とフッ素系界面活性剤の少なくとも一方を欠く場合、及び、アミド化合物の含有量が適量でない場合には、インクとの混合性・洗浄性・インク充填性の少なくとも一つが悪いか不十分である。
【0051】
実施例11〜17、比較例11〜13
表6、表7の各実施例及び比較例の欄に示すように材料を混合し、各洗浄液兼充填液を作製した。なお、表中の数値は質量%であり、純水は全体で100質量%となるように加えた。
【0052】
【表6】

【0053】
【表7】

【0054】
上記表6、表7中の符号で示した材料の詳細は下記表8に示すとおりである。
【表8】

【0055】
上記した各洗浄液兼充填液及び実施例1〜10で作製した評価用インクを用い、実施例1〜10の場合と同様にして、各種特性を評価した。結果を纏めて表9、表10に示す。
【0056】
【表9】

【0057】
【表10】

【0058】
上記表9、表10の結果から分かるように、実施例11〜17は構造式(1)のアミド化合物を適量含有するので、インクとの混合性・洗浄性・インク充填性のいずれも良好であり、構造式(2)−2のフッ素系界面活性剤を含有するので、実施例1〜4に比べて洗浄性が優れている。
一方、比較例11は、アミド化合物を含まないためインクとの混合性が不十分でインク充填性が悪く、比較例12、13は、アミド化合物の含有量が適量でないため、洗浄性、インク充填性又はインクとの混合性が不十分である。
【0059】
実施例18〜26、比較例14〜16
表11、表12の各実施例及び比較例の欄に示すように材料を混合し、各洗浄液兼充填液を作製した。なお、表中の数値は質量%であり、純水は全体で100質量%となるように加えた。
【0060】
【表11】

【0061】
【表12】

【0062】
上記表11、表12中の符号で示した材料の詳細は下記表13に示すとおりである。
【表13】

【0063】
上記した各洗浄液兼充填液及び実施例1〜10で作製した評価用インクを用い、実施例1〜10の場合と同様にして各種特性を評価した。結果を纏めて表14、表15に示す。
【0064】
【表14】

【0065】
【表15】

【0066】
上記表14、表15の結果から分かるように、実施例18〜26は構造式(1)のアミド化合物を適量含有するので、インクとの混合性・洗浄性・インク充填性のいずれも良好であり、構造式(2)−3のフッ素系界面活性剤を含有するので、実施例1〜4に比べて洗浄性が優れている。
一方、比較例14は、アミド化合物を含まないためインクとの混合性及びインク充填性が悪く、比較例15、16は、アミド化合物の含有量が適量でないため、インクとの混合性及び/又は洗浄性が不十分である。
【0067】
実施例27〜31、比較例17〜20
表16、表17の各実施例及び比較例の欄に示すように材料を混合し、各洗浄液兼充填液を作製した。なお、表中の数値は質量%であり、純水は全体で100質量%となるように加えた。
【0068】
【表16】

【0069】
【表17】

【0070】
上記表16、表17中の符号で示した材料の詳細は以下のとおりである。
(a)C−CHCH(OH)CHO−(CHCHO)21−C1837
(b)C−CHCH(OH)CHO−(CHCHO)25−C1225
(c)C−CHCH(OH)CHO−(CHCHO)23−CHCH(OH)CH−C
(d)C−CHCH(OH)CHO−(CHCHO)35−CHCH(OH)CH−C
(e)C−CHCH(OH)CHO−(CHCHO)45−CHCH(OH)CH−C
【0071】
上記した各洗浄液兼充填液及び実施例1〜10で作製した評価用インクを用い、実施例1〜10の場合と同様にして各種特性を評価した。結果を纏めて表18、表19に示す。
【0072】
【表18】

【0073】
【表19】

【0074】
上記表18、表19の結果から分かるように、実施例27〜31は構造式(1)のアミド化合物を適量含有するので、インクとの混合性・洗浄性・インク充填性のいずれも良好であり、構造式(2)−4のフッ素系界面活性剤を含有するので、実施例1〜4に比べて洗浄性が優れている。
一方、アミド化合物を含まない比較例17〜18はインク充填性が悪く、比較例19〜20は、アミド化合物の含有量が適量でないため、インクとの混合性・洗浄性・インク充填性の二つ以上が不十分である。
【0075】
実施例32〜52、比較例21〜23
表20−1、表20−2、表21の各実施例及び比較例の欄に示すように材料を混合し、各洗浄液兼充填液を作製した。なお、表中の数値は質量%であり、純水は全体で100質量%となるように加えた。
【0076】
【表20−1】

【表20−2】

【0077】
【表21】

【0078】
上記表20−1、表20−2、表21中の符号で示した材料の詳細は以下のとおりである。
・A1 :構造式(2)−5のフッ素系界面活性剤(K塩)
・A2 :構造式(2)−5のフッ素系界面活性剤(Na塩)
・A3 :構造式(2)−5のフッ素系界面活性剤(Li塩)
・A4 :構造式(2)−5のフッ素系界面活性剤(NH塩)
・A5 :構造式(2)−6のフッ素系界面活性剤(Rf=CF、K塩)
・A6 :構造式(2)−6のフッ素系界面活性剤(Rf=C、Li塩)
・A7 :構造式(2)−6のフッ素系界面活性剤(Rf=C、Na塩)
・A8 :構造式(2)−6のフッ素系界面活性剤(Rf=C、NH塩)
・A9 :構造式(2)−7のフッ素系界面活性剤(Rf=C、R=CH
K塩)
・A10:構造式(2)−7のフッ素系界面活性剤(Rf=CF、R=C
Li塩)
・A11:構造式(2)−7のフッ素系界面活性剤(Rf=C、R=C
Na塩)
・A12:構造式(2)−7のフッ素系界面活性剤(Rf=C、R=C17
NH塩)
・A13:構造式(2)−8のフッ素系界面活性剤(Rf=C、Na塩)
・A14:構造式(2)−8のフッ素系界面活性剤(Rf=C、K塩)
【0079】
上記した各洗浄液兼充填液及び実施例1〜10で作製した評価用インクを用い、実施例1〜10の場合と同様にして各種特性を評価した。結果を纏めて表22−1、表22−2、表23に示す。
【0080】
【表22−1】

【表22−2】

【0081】
【表23】

【0082】
上記表22−1、表22−2、表23の結果から分かるように、実施例32〜52は構造式(1)のアミド化合物を適量含有するので、インクとの混合性・洗浄性・インク充填性のいずれも良好であり、構造式(2)−5〜(2)−8のフッ素系界面活性剤を含有するので、実施例1〜4に比べて洗浄性が優れている。
一方、アミド化合物を含まない比較例21は、インクとの混合性及びインク充填性が悪く、比較例22〜23は、アミド化合物の含有量が適量でないため、インクとの混合性・洗浄性・インク充填性が不十分である。
【符号の説明】
【0083】
1b 共通液室
2a 流体抵抗部
2b 加圧液室
2c 連通口
2d 隔壁
3a ノズル
5f 駆動部
5g 支持部(非駆動部)
6a 凸部
6b ダイヤフラム部
6c インク流入口
10 フレーム
20 流路板
30 ノズルプレート
40 ベース
50 積層圧電素子
60 振動板
70 接着層
101 装置本体
102 給紙トレイ
103 排紙トレイ
104 インクカートリッジ装填部
105 操作部
111 上カバー
112 前面
115 前カバー
131 ガイドロッド
132 ステー
133 キャリッジ
134 記録ヘッド
135 サブタンク
141 用紙載置部
142 用紙
143 給紙コロ
144 分離パッド
145 ガイド
151 搬送ベルト
152 カウンタローラ
153 搬送ガイド
154 押さえ部材
155 加圧コロ
156 帯電ローラ
157 搬送ローラ
158 デンションローラ
161 ガイド部材
171 分離爪
172 排紙ローラ
173 排紙コロ
181 両面給紙ユニット
182 手差し給紙部
201 インクカートリッジ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】特開2000−127419号公報
【特許文献2】特開2001−49292号公報
【特許文献3】特許第4290486号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット記録装置及びこの装置に用いるインクカートリッジの液体流路の洗浄液兼充填液であって、下記構造式(1)で示されるアミド化合物の少なくとも1種を合計量で10.0〜45.0質量%含有し、かつフッ素系界面活性剤を含有することを特徴とする洗浄液兼充填液。
<構造式(1)>
【化6】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記フッ素系界面活性剤が、下記構造式(2)−1〜(2)−8で示されるものから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の洗浄液兼充填液。

<構造式(2)−1>
【化7】

(式中、R1、R3は水素、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表し、R2、R4は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表す。m、nは0又は正の整数、p、q及びrは正の整数を表す。)

<構造式(2)−2>
【化8】

(式中、Mはアルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム、又はアルカノールアミンを表し、Rfは−CF、又は−CFCFを表し、qは4〜10の整数を表す。)

<構造式(2)−3>
【化9】

(式中、Rは水素、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表し、Rは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表す。x、y、zは正の整数を表す。)

<構造式(2)−4>
2n+1−CHCH(OH)CHO(CHCHO)a−Y

〔式中、Yは−C2b+1(bは11〜19の整数)、又は−CHCH(OH)CH−C2d+1(dは2〜6の整数)を表し、nは2〜6の整数、aは15〜50の整数を表す。〕

<構造式(2)−5>
【化10】

(式中、MはLi、Na、K、NHのいずれかを表す。)

<構造式(2)−6>
〔(RfSO〕N
(式中、Rfは炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を表し、MはLi、Na、K、NHのいずれかを表す。)

<構造式(2)−7>
〔(RfSO)(RSO)〕N
(式中、Rfは炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を表し、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表し、MはLi、Na、K、NHのいずれかを表す。)

<構造式(2)−8>
〔(FSO〕N
(式中、MはLi、Na、K、NHのいずれかを表す。)

【請求項3】
前記構造式(2)−4で示される化合物が、次の(a)〜(e)のいずれかであることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置用洗浄液兼充填液。
(a)C−CHCH(OH)CHO−(CHCHO)21−C1837
(b)C−CHCH(OH)CHO−(CHCHO)25−C1225
(c)C−CHCH(OH)CHO−(CHCHO)23−CHCH(OH)CH−C
(d)C−CHCH(OH)CHO−(CHCHO)35−CHCH(OH)CH−C
(e)C−CHCH(OH)CHO−(CHCHO)45−CHCH(OH)CH−C
【請求項4】
更にグリセリン及び/又は1,3−ブタンジオールを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の洗浄液兼充填液。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の洗浄液兼充填液を容器中に収容したことを特徴とするカートリッジ。
【請求項6】
請求項1〜4の何れかに記載の洗浄液兼充填液を通液してインク流路を洗浄した後、該洗浄液兼充填液を充填して保管することを特徴とするインクジェット記録装置の洗浄、充填、保管方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法により洗浄、充填、保管されたことを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−158171(P2012−158171A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−2085(P2012−2085)
【出願日】平成24年1月10日(2012.1.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】