説明

洗浄組成物

【課題】 繊維間のような形状が複雑な部分に付着し、通常の洗浄では落ちにくい有機物と無機物からなる泥汚れのような混合汚れであっても、効果的に落とすことができる洗浄組成物およびそれを用いた洗浄方法を提供する。
【解決手段】 還元剤(I)と、フッ化物(II)と、窒素を含有する界面活性剤(a−1)、または、4級アンモニウム基または3級アミノ基を有するビニル単量体を構成単位として含む高分子化合物(a−2)の少なくとも一方(III)とを含有する洗浄組成物である。この洗浄組成物を含む液中に被洗物を浸漬する工程、または、この洗浄組成物を含む液を被洗物に塗布する工程を有する洗浄方法により、汚れを効果的に洗浄できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落としにくい泥汚れの洗浄などに好適に使用される洗浄組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
泥汚れの主な成分である黒土は、無機物と有機物の混合汚れであり、通常の洗浄では落としにくい。このような泥汚れが、たとえば繊維間などの形状が複雑な部分に付着した場合には、特にこれを落とすのは困難である。
そこで、このような泥汚れを洗浄する組成物が検討されていて、例えば、特許文献1には、洗浄成分として還元剤を使用したものが開示されている。一方、半導体基材のエッチ残留物や、外装材表面を洗浄するためのものではあるが、洗浄成分としてフッ化物を用いたものが特許文献2および3に記載されている。また、特許文献4には、洗浄成分として両性高分子を含む洗浄剤組成物が開示されている。
【特許文献1】特開平1−96297号公報
【特許文献2】特表2003−503556号公報
【特許文献3】特開平8−245986号公報
【特許文献4】特開昭58−13700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1〜4に記載のものは、いずれも無機物と有機物の混合汚れに効果のあるものではなかった。
【0004】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、有機物と無機物からなる泥汚れのような混合汚れであっても、効果的に落とすことができる洗浄組成物およびそれを用いた洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の洗浄組成物を用いることにより、泥汚れのような混合汚れであっても、効果的に洗浄できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の洗浄組成物は、還元剤(I)と、フッ化物(II)と、窒素を含有する界面活性剤(a−1)、または、4級アンモニウム基または3級アミノ基を有するビニル単量体を構成単位として含む高分子化合物(a−2)の少なくとも一方(III)とを含有することを特徴とする。
本発明の洗浄組成物は、さらにキレート剤を含有することが好ましい。
また、本発明の洗浄組成物は、1質量%に希釈した水溶液の25℃におけるpHが、5以上12以下であることが好ましい。
本発明の洗浄組成物は、特に泥汚れの洗浄に適している。
本発明の洗浄方法は、前記洗浄組成物を用いて、被洗物を洗浄する方法であって、洗浄組成物を含む液中に被洗物を浸漬する工程、または、洗浄組成物を含む液を被洗物に塗布する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、有機物と無機物からなる泥汚れのような混合汚れであっても、効果的に落とすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の洗浄組成物は、還元剤(I)(以下、(I)成分という場合もある。)と、フッ化物(II)(以下、(II)成分という場合もある。)と、窒素を含有する界面活性剤(a−1)、または、4級アンモニウム基または3級アミノ基を有するビニル単量体を構成単位として含む高分子化合物(a−2)の少なくとも一方(III)(以下、(III)成分という場合もある。)とを含有するものである。以下、これら各成分について説明する。
【0008】
「(I)成分」
本発明で(I)成分として使用される還元剤は、他の物質を還元する働きのある物質であれば制限されず、例えば、亜硫酸、次亜硫酸、亜硝酸、亜リン酸、次亜リン酸、チオ硫酸、ホルムアルデヒドスルホン酸(ロンガリット)、アスコロビン酸、イソアスコロビン酸、チオグリコール酸、ジメルカプトコハク酸、シュウ酸、ギ酸、トリス(カルボキシメチル)ホスフィン、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン、トリス(2−カルボキシプロピル)ホスフィンや、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。また、その他に、マグネシウム、ナトリウムアマルガム、マグネシウムアマルガム、ヨウ化水素、硫化水素、二酸化イオウ、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、二酸化チオ尿素、ジチオスレイトール、リボース、グルコース、サッカロース、トリエチルホスフィン、トリn−ブチルホスフィン、トリn−オクチルホスフィン、トリ(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンが挙げられる。
【0009】
これらのうち好ましくは、亜硫酸、次亜硫酸、次亜リン酸、ホルムアルデヒドスルホン酸(ロンガリット)、トリス(カルボキシメチル)ホスフィン、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン、トリス(2−カルボキシプロピル)ホスフィンや、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、さらには、二酸化チオ尿素、ジチオスレイトール、チオグリコール酸、トリエチルホスフィン、トリn−ブチルホスフィン、トリn−オクチルホスフィン、トリ(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンである。
より好ましくは、次亜硫酸、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンや、これらのアルカリ金属塩(例えば、次亜硫酸のナトリウム塩であるハイドロサルファイト)、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、さらには二酸化チオ尿素、ジチオスレイトール、チオグリコール酸、トリ(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンである。
これら還元剤は1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0010】
「(II)成分」
本発明で(II)成分として使用されるフッ化物は、水に溶かしたときにフッ化物イオンを放出する化合物であれば特に制限はない。例えば、フッ化物の塩を形成する化合物の他、フッ化物イオンを化合物のカウンターイオンとして有するものでもよい。
好ましくは、フッ化水素、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化リチウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウム、フッ化アンモニウム、酸性フッ化ナトリウム(NaHF)、酸性フッ化カリウム(KHF)、珪フッ化ナトリウム(NaSiF)、氷晶石(NaAlF)であり、より好ましくは、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウムである。
【0011】
「(III)成分」
本発明の洗浄組成物に使用される(III)成分は、汚れを分散させるものであり、主に汚れ中の有機物に作用すると考えられるものであって、窒素を含有する界面活性剤(a−1)、または、4級アンモニウム基または3級アミノ基を有するビニル単量体を構成単位として含む高分子化合物(a−2)の少なくとも一方(III)が使用される。
【0012】
[窒素を含有する界面活性剤(a−1)]
窒素を含有する界面活性剤(a−1)としては、例えば、下記式(1)で表される4級アンモニウム界面活性剤が挙げられる。
【化1】

【0013】
式(1)中、RおよびRは各々独立に、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基または分岐鎖状アルキル基または不飽和炭化水素鎖、あるいは、これらの炭素鎖に水酸基、エステル部位、ハロゲンを1つ以上含む構造、あるいは、炭素数3から6のシクロアルキル基、フェニル基、ベンジル基のいずれかを示す。
mおよびnは、エチレンオキシド基の平均付加モル数であり、各々独立に0以上の整数である。m+nは、汚れの分散性や、汚れの再付着防止の点から、10以上が好ましく、より好ましくは10以上60以下である。Xはカウンターアニオンを示し、Xとしては、ハロゲンイオン、硝酸イオン、硫酸イオン、有機酸イオンなどを例示でき、好ましくは塩素イオン、臭素イオン、フッ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン等である。
【0014】
その他、窒素を含有する界面活性剤(a−1)としては、セチルトリメチルアンモニウム塩など式(1)以外の4級アンモニウムカチオン界面活性剤、N,N−ジメチル−N−ラウリルオキサイドなどのアルキルアミンオキサイド、N,N−ジメチル−N−ドデシル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタインなどアルキルベタインのような両性活性剤、N,N−ポリオキシアルキレン−N−アルキルアミンなどの3級アミン界面活性剤などが挙げられる。
【0015】
[高分子化合物(a−2)]
4級アンモニウム基または3級アミノ基を有するビニル単量体を構成単位として含む高分子化合物(a−2)としては、特に制限はないが、例えば、以下の高分子化合物(イ)、高分子化合物(ロ)、高分子化合物(ハ)が好ましいものとして挙げられる。
【0016】
(i)高分子化合物(イ)
高分子化合物(イ)は、アニオン性ビニル単量体(A)に由来する構成単位(A′)と、4級アンモニウム基または3級アミノ基を有するビニル単量体(B)に由来する構成単位(B′)と、疎水性ビニル単量体(C)に由来する構成単位(C′)と、親水性ビニル単量体(D)に由来する構成単位(D′)とを含有するものであって、高分子化合物(イ)の水溶媒への溶解性、泥への吸着性、泥の分散性、汚れの再付着防止などの観点からは、特にこれらの構成単位を下記組成比で含有するものが好ましい。
【0017】
すなわち、組成比(A′)/(B′)は、80/20〜20/80モル%が好ましく、より好ましくは70/30〜30/70モル%、さらに好ましくは60/40〜40/60モル%である。構成単位(A′)、(B′)、(C′)、(D′)の合計に占める(C′)、すなわち(C′)/[(A′)+(B′)+(C′)+(D′)]は、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜15質量%、さらに好ましくは、0.3〜10質量%である。また、(D′)/[(A′)+(B′)+(C′)+(D′)]は0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜40質量%、さらに好ましくは、0.3〜30質量%である。
また、高分子化合物(イ)は、構成単位(A′)〜(D′)を含有するランダムコポリマーであっても、ブロックコポリマーであってもよい。
【0018】
(アニオン性ビニル単量体(A))
高分子化合物(イ)の構成単位(A′)をなすアニオン性ビニル単量体(A)は、アニオン性の官能基を備えたビニル単量体またはその塩であって、このようなものとしては、例えばカルボキシル基を備えたビニル単量体またはその塩、スルホン酸基を備えたビニル単量体またはその塩などを例示でき、これらの単量体を1種単独で使用しても、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。以下、塩を形成していないアニオン性官能基を備えたビニル単量体を酸型、塩を形成しているものを塩型という場合がある。
【0019】
カルボキシル基を備えたビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸などを例示できる。塩型の場合、具体的にはアルカリ金属塩、アンモニウム誘導体などが挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸の少なくとも一方を示す。
アルカリ金属塩、アンモニウム誘導体の例としては、ナトリウム塩(Na塩)、カリウム塩(K塩)、アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等が挙げられる。塩型を使用する場合は、塩型単独で用いても、酸型と混合して用いてもよい。また、ビニル単量体として酸型のものを用いて高分子化合物(イ)を製造した後、この高分子化合物(イ)中のカルボキシル基をアルカリ剤で中和してもよい。
【0020】
カルボキシル基を備えたビニル単量体またはその塩をより具体的に挙げると、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸Na塩、アクリル酸K塩、メタクリル酸Na塩、メタクリル酸K塩、マレイン酸Na塩、マレイン酸K塩、フマル酸Na塩、フマル酸K塩、アクリル酸アンモニウム塩、メタクリル酸アンモニウム塩、マレイン酸アンモニウム塩、フマル酸アンモニウム塩、アクリル酸モノエタノールアミン塩、メタクリル酸モノエタノールアミン塩、マレイン酸モノエタノールアミン塩、フマル酸モノエタノールアミン塩等を示すことができる。これらのなかで好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸Na塩、メタクリル酸Na塩、アクリル酸モノエタノールアミン塩、メタクリル酸モノエタノールアミン塩である。
【0021】
スルホン酸基を備えたビニル単量体としては、ビニルスチレンスルホン酸、または下記の一般式(2)および一般式(3)で示されるものなどを使用できる。塩型の場合、具体的にはアルカリ金属塩、アンモニウム誘導体などが挙げられる。
アルカリ金属塩、アンモニウム誘導体の例としては、Na塩、K塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩が挙げられる。塩型を使用する場合は、塩型単独で用いても、酸型と混合して用いてもよい。また、ビニル単量体として酸型のものを用いて高分子化合物(イ)を製造した後、この高分子化合物(イ)中のスルホン酸基をアルカリ剤で中和して用いてもよい。
【0022】
【化2】

【化3】

【0023】
式中(2)、(3)中のRは、水素または炭素数1〜2のアルキル基を示し、Yはスルホン酸基(−SOH)またはスルホン酸塩を示す。Aは酸素原子またはNHを示し、Vは炭素数1〜15の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基または不飽和炭化水素鎖を示す。Wは炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状または脂環式のアルキル基、あるいは、炭素数2〜20の直鎖状または分岐鎖状または脂環式のアルケニル基を示す。
【0024】
一般式(2)で示されるスルホン酸基を備えたビニル単量体の例としては、アクリルアミドメタンスルホン酸、メタクリルアミドメタンスルホン酸、アクリルアミドエタンスルホン酸、メタクリルアミドエタンスルホン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、メタクリルアミドプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタンスルホン酸アクリレート、メタンスルホン酸メタクリレート、エタンスルホン酸アクリレート、エタンスルホン酸メタクリレート、プロパンスルホン酸アクリレート、プロパンスルホン酸メタクリレートが挙げられる。
【0025】
また、一般式(2)で示されるスルホン酸基を備えたビニル単量体の塩型の例としては、アクリルアミドメタンスルホン酸Na塩、メタクリルアミドメタンスルホン酸Na塩、アクリルアミドエタンスルホン酸Na塩、メタクリルアミドエタンスルホン酸Na塩、アクリルアミドプロパンスルホン酸Na塩、メタクリルアミドプロパンスルホン酸Na塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸Na塩、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸Na塩、メタンスルホン酸アクリレートNa塩、メタンスルホン酸メタクリレートNa塩、エタンスルホン酸アクリレートNa塩、エタンスルホン酸メタクリレートNa塩、プロパンスルホン酸アクリレートNa塩、プロパンスルホン酸メタクリレートNa塩、アクリルアミドメタンスルホン酸K塩、メタクリルアミドメタンスルホン酸K塩、アクリルアミドエタンスルホン酸K塩、メタクリルアミドエタンスルホン酸K塩、アクリルアミドプロパンスルホン酸K塩、メタクリルアミドプロパンスルホン酸K塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸K塩、2−メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸K塩、メタンスルホン酸アクリレートK塩、メタンスルホン酸メタクリレートK塩、エタンスルホン酸アクリレートK塩、エタンスルホン酸メタクリレートK塩、プロパンスルホン酸アクリレートK塩、プロパンスルホン酸メタクリレートK塩、アクリルアミドメタンスルホン酸トリエチルアミン塩、メタクリルアミドメタンスルホン酸トリエチルアミン塩、アクリルアミドエタンスルホン酸トリエチルアミン塩、メタクリルアミドエタンスルホン酸トリエチルアミン塩、アクリルアミドプロパンスルホン酸トリエチルアミン塩、メタクリルアミドプロパンスルホン酸トリエチルアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸トリエチルアミン塩、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸トリエチルアミン塩、メタンスルホン酸アクリレート、メタンスルホン酸メタクリレートトリエチルアミン塩、エタンスルホン酸アクリレートトリエチルアミン塩、エタンスルホン酸メタクリレートトリエチルアミン塩、プロパンスルホン酸アクリレートトリエチルアミン塩、プロパンスルホン酸メタクリレートトリエチルアミン塩等を挙げられる。
【0026】
これら一般式(2)で示されるスルホン酸基を備えたビニル単量体およびその塩の中では、アクリルアミドメタンスルホン酸、アクリルアミドメタンスルホン酸Na塩、アクリルアミドメタンスルホン酸トリエチルアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸Na塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸トリエチルアミン塩、メタクリルアミドメタンスルホン酸、メタクリルアミドメタンスルホン酸Na塩、メタクリルアミドメタンスルホン酸トリエチルアミン塩、2−メタクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸Na塩、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸トリエチルアミン塩が好ましく、より好ましくは、2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸Na塩、2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸トリエチルアミン塩、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸Na塩、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸トリエチルアミン塩である。
【0027】
一般式(3)で示されるスルホン酸基を備えたビニル単量体およびその塩の例としては、モノ−n−ブチル−モノビニルスルホコハク酸エステル、モノ−n−ブチル−モノビニルスルホコハク酸エステルNa塩、モノ−n−ブチル−モノビニルスルホコハク酸エステルK塩、モノ−n−ブチル−モノビニルスルホコハク酸エステルトリエチルアミン塩、モノ−n−へキシル−モノビニルスルホコハク酸エステル、モノ−n−へキシル−モノビニルスルホコハク酸エステルNa塩、モノ−n−へキシル−モノビニルスルホコハク酸エステルK塩、モノ−n−へキシル−モノビニルスルホコハク酸エステルトリエチルアミン塩、モノシクロへキシル−モノビニルスルホコハク酸エステル、モノシクロへキシル−モノビニルスルホコハク酸エステルナトリウム塩、モノシクロへキシル−モノビニルスルホコハク酸エステルトリエチルアミン塩、モノ−2−エチルへキシル−モノビニルスルホコハク酸エステル、モノ−2−エチルへキシル−モノビニルスルホコハク酸エステルNa塩、モノ−2−エチルへキシル−モノビニルスルホコハク酸エステルK塩、モノ−2−エチルへキシル−モノビニルスルホコハク酸エステルトリエチルアミン塩、モノ−n−オクチル−モノビニルスルホコハク酸エステル、モノ−n−オクチル−モノビニルスルホコハク酸エステルNa塩、モノ−n−オクチル−モノビニルスルホコハク酸エステルK塩、モノ−n−オクチル−モノビニルスルホコハク酸エステルトリエチルアミン塩、モノ−n−ラウリル−モノビニルスルホコハク酸エステル、モノ−n−ラウリル−モノビニルスルホコハク酸エステルNa塩、モノ−n−ラウリル−モノビニルスルホコハク酸エステルK塩、モノ−n−ラウリル−モノビニルスルホコハク酸エステルトリエチルアミン塩、モノ−n−ステアリル−モノビニルスルホコハク酸エステル、モノ−n−ステアリル−モノビニルスルホコハク酸エステルNa塩、モノ−n−ステアリル−モノビニルスルホコハク酸エステルK塩、モノ−n−ステアリル−モノビニルスルホコハク酸エステルトリエチルアミン塩を挙げることができる。
【0028】
一般式(3)で示されるスルホン酸基を備えたビニル単量体およびその塩の中では、好ましくは、モノ−n−オクチル−モノビニルスルホコハク酸エステル、モノ−n−オクチル−モノビニルスルホコハク酸エステルNa塩、モノ−n−ラウリル−モノビニルスルホコハク酸エステル、モノ−n−ラウリル−モノビニルスルホコハク酸エステルNa塩であり、より好ましくは、モノ−n−ラウリル−モノビニルスルホコハク酸エステル、モノ−n−ラウリル−モノビニルスルホコハク酸エステルNa塩である。
【0029】
(4級アンモニウム基または3級アミノ基を有するビニル単量体(B))
高分子化合物(イ)の構成単位(B′)をなすビニル単量体(B)は、4級アンモニウム基または3級アミノ基を有するものであり、そのような単量体を1種単独で使用しても、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
3級アミノ基を有するビニル単量体としては、下記一般式(4)で示されるものや、1−ビニル−4−ジメチルアミノベンゼン、1−ビニル−4−ジエチルアミノベンゼンなどを例示できる。
【化4】

【0030】
式(4)中、Rは水素または炭素数1〜2のアルキル基を示し、Aは酸素原子またはNHを示し、Vは炭素数1〜15の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基、あるいは、炭素数2〜15の直鎖状または分岐鎖状の不飽和炭化水素鎖を示す。なお、Vの炭素鎖中に水酸基が結合してもよく、また、Vが不飽和炭化水素鎖である場合には、これに炭素数3から6のシクロアルキル基、フェニル基が結合していてもよい。また、RとRは炭素数1〜2のアルキル基を示し、RとRは互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0031】
一般式(4)で示される単量体の具体例としては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノブチルアクリレート、ジメチルアミノブチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノブチルアクリルアミド、ジメチルアミノブチルメタクリルアミド、ジエチルアミノエチルアクリルアミド、ジエチルアミノエチルメタクリルアミド等を挙げることができる。これらの中では、好ましくはジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミドであり、より好ましくはジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリルアミドである。
【0032】
4級アンモニウム基を有するビニル単量体としては、下記一般式(5)や(6)で示されるものや、1−ビニル−4−トリメチルアミノベンゼン、1−ビニル−4−トリエチルアミノベンゼンなどを例示できる。
【化5】

【化6】

【0033】
式(5)、(6)中、Rは水素または炭素数1〜2のアルキル基を示し、Aは酸素原子または又はNHを示し、Vは炭素数1〜15の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基、あるいは、炭素数2〜15の直鎖状または分岐鎖状の不飽和炭化水素鎖を示す。なお、Vの炭素鎖中に水酸基が結合してもよく、また、Vが不飽和炭化水素鎖である場合には、これに炭素数3から6のシクロアルキル基、フェニル基が結合していてもよい。また、R、R、Rは各々炭素数1〜2のアルキル基を示し、R、R、Rは、互いに同一でも、異なっていてもよい。また、ZおよびZは、炭素数1〜3の直鎖状のアルキレン基を示し、ZとZは互いに同一でも異なっていてもよい。また、式(6)中の2つのRも互いに同一でも、異なっていてもよい。
また、Xはカウンターアニオンを示し、Xとしては、ハロゲンイオン、硫酸イオン、有機酸イオンなどを例示でき、好ましくは塩素イオン、臭素イオン、フッ素イオン、硫酸イオン、クエン酸イオン等である。
【0034】
一般式(5)で示されるビニル単量体の具体例として、カウンターアニオンXとして塩素イオンを備えた(塩化物)ものを以下に例示するが、塩化物に限定されるものではない。
すなわち、塩化1−ビニル−4−トリメチルアミノベンゼン、塩化1−ビニル−4−トリエチルアミノベンゼン、塩化トリメチルアミノエチルアクリレート、塩化トリメチルアミノエチルメタクリレート、塩化トリメチルアミノプロピルアクリレート、塩化トリメチルアミノプロピルメタクリレート、塩化トリメチルアミノブチルアクリレート、塩化トリメチルアミノブチルメタクリレート、塩化トリエチルアミノエチルアクリレート、塩化トリエチルアミノエチルメタクリレート、塩化トリメチルアミノエチルアクリルアミド、塩化トリメチルアミノエチルメタクリルアミド、塩化トリメチルアミノプロピルアクリルアミド、塩化トリメチルアミノプロピルメタクリルアミド、塩化トリメチルアミノブチルアクリルアミド、塩化トリメチルアミノブチルメタクリルアミド、塩化トリエチルアミノエチルアクリルアミド、塩化トリエチルアミノエチルメタクリルアミド等が挙げられ、好ましくは、ジメチルアミノエチルメタクリレート、塩化トリメチルアミノエチルメタクリレート、塩化トリメチルアミノプロピルアクリルアミド、塩化トリメチルアミノプロピルメタクリルアミド等が挙げられ、好ましくは塩化トリメチルアミノエチルメタクリレート、塩化トリメチルアミノエチルアクリレート、塩化トリメチルアミノプロピルメタクリルアミド、塩化トリメチルアミノプロピルアクリルアミド、塩化1−ビニル−4−トリメチルアミノベンゼン、塩化1−ビニル−4−トリエチルアミノベンゼン等が挙げられ、より好ましくは、塩化トリメチルアミノエチルメタクリレート、塩化トリメチルアミノプロピルメタクリルアミド、塩化トリメチルアミノプロピルアクリルアミド、塩化1−ビニル−4−トリメチルアミノベンゼン等である。
【0035】
一般式(6)は、4級アンモニウム基を有するビニル単量体が2官能性単量体である場合を示したものである。以下、その具体例として、カウンターアニオンXとして塩素イオンを備えた(塩化物)ものを例示するが、塩化物に限定されるものではない。
すなわち、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムブロマイド、ジアリルジエチルアンモニウムクロライド、ジアリルジメエチルアンモニウムブロマイド等が挙げられ、好ましくはジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムブロマイド等であり、より好ましくはジアリルジメチルアンモニウムクロライドである。
【0036】
(疎水性ビニル単量体(C))
高分子化合物(イ)の構成単位(C′)をなす疎水性ビニル単量体(C)は、疎水性を示す単量体であればよく、特に限定されるものではないが、下記の一般式(7)で示されるものや、一般式(8)で示されるシリコンマクロマーなどを好ましく例示できる。これらは1種の単量体を単独で使用しても、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【化7】

【化8】

【0037】
式(7)、(8)中、Rは、水素または炭素数1〜2のアルキル基を示し、Aは酸素原子またはNHを示し、Xは炭素数1〜15の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、あるいは、炭素数2〜15の直鎖状または分岐鎖状のアルケニル基を示す。また、Rはエーテル基を含有しても良い炭素数1〜6、好ましくは1〜4の2価脂肪族基を示し、Rは炭素数1〜30、好ましくは1〜18の脂肪族基、または炭素数1〜22の含フッ素アルキル基を示す。hは0、1または2であり、jは0〜500、好ましくは0〜300の整数である。
【0038】
一般式(7)で示される単量体の具体例としては、メチルアクリルート、メチルメタクリレート、エチルアクリルート、エチルメタクリレート、プロピルアクリルート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリルート、ブチルメタクリレート、t−ブチルアクリルート、t−ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリルート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリルート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルアクリルート、オクチルメタクリレート、ラウリルアクリルート、ラウリルメタクリレート、プロピルアクリルアミド、プロピルメタクリルアミド、ブチルアクリルアミド、ブチルメタクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド、t−ブチルメタクリルアミド、ヘキシルアクリルアミド、ヘキシルメタクリルアミド、オクチルアクリルアミド、オクチルメタクリルアミド、ラウリルアクリルアミド、ラウリルメタクリルアミド等が挙げられ、好ましくはプロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリルート、ブチルメタクリレート、t−ブチルアクリルート、t−ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリルート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリルート、2−エチルヘキシルメタクリレート等であり、より好ましくは、ブチルアクリルート、ブチルメタクリレート、t−ブチルアクリルート、t−ブチルメタクリレート等である。
【0039】
一般式(8)で示されるシリコンマクロマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定した重量平均分子量は、重合溶媒との相溶性から100〜4万の範囲、好ましくは200〜2万の範囲にあることが好ましい。
【0040】
(親水性ビニル単量体(D))
高分子化合物(イ)の構成単位(D′)をなす親水性ビニル単量体(D)としては、一般式(9)で示される単量体が挙げられる。
【化9】

式(9)中、Rは水素または炭素数1〜2のアルキル基を示し、Aは酸素原子またはNHを示す。Yは(CHCHO)Bを示し、ここでnは1〜30の整数であり、Bは水素またはメチル基を示す。
【0041】
一般式8で示される単量体の具体例としては、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(オキシエチレン繰り返し単位数:1〜30)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(オキシエチレン繰り返し単位数:1〜30)等が挙げられ、好ましくはメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(オキシエチレン繰り返し単位数:4、9、23)等を示すことができる。
【0042】
(ii)高分子化合物(ロ)
高分子化合物(ロ)は、N−ビニルピロリドン単量体からなる構成単位を含有する高分子化合物であり、水への溶解度が25℃において40質量%以上であるものを好ましく使用できる。また、高分子化合物(ロ)は、N−ビニルピロリドン単量体からなる構成単位を含有する限り、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーのいずれでもよい。
【0043】
このようなものとしては、例えば、N−ビニルピロリドンのホモポリマーであるBASF社製Luvitec K 17(商品名)、Luvitec K 30(商品名)、Luvitec K 90(商品名)等が市販されている。
また、N−ビニルピロリドン単量体とN−ビニルイミダゾリン単量体を含有する高分子化合物であるBASF社製Luvitec VPI 55 K 72 W(商品名)等が市販されている。
また、その他に、N−ビニルピロリドン/ジメチルアミドエチルメタクリレート/メチルメタクリレート/t−ブチルメタクリレート/メトキシポリエチレングリコール(p=9)メタクリレートの共重合体で、例えば組成比が13/39.4/20.4/19.4/7.8(モル%)であるものが好ましいものとして挙げられる。
【0044】
(iii)高分子化合物(ハ)
高分子化合物(ハ)は、ビニルピリジン部を有する単量体に由来した構成単位を含有する高分子化合物であり、このような単量体として一般式(10)のものを示すことができる。
【化10】

式(10)中、Dは、O、OH、CHCOOHの酸型またはアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を表す。)
【0045】
このようなものとしては、例えば、DがOである単量体からなるINTERNATIONAL SPECIALITY PRODUCTS INC.製の「ChromBond S−400(商品名)」と、DがCHCOOHである単量体からなる同社の「ChromBond S−100(商品名)」が市販されている。
【0046】
本発明の洗浄組成物は、上述した(I)成分、(II)成分、(III)成分をそれぞれ少なくとも1種含有するものであって、これら各成分の洗浄組成物中の配合比は、この組成物の使用形態、使用方法、汚れの付着している被洗物の種類、汚れの量、汚れの付着状態などによって異なることから、適宜調製すればよく、(I)成分/(II)成分/(III)成分の配合比(質量比)は、1〜70/2〜95/2〜95がよく、好ましくは、20〜60/5〜50/15〜60であり、より好ましくは30〜50/10〜40/25〜50である。
【0047】
本発明の洗浄組成物には、上述の(I)〜(III)成分に加えて、さらにキレート剤を配合することができる。
「キレート剤」
使用されるキレート剤は、主に汚れ中の無機物に含まれる多価金属イオンを捕捉すると考えられるものであって、これを水に溶かしたときに、多価金属イオンを捕捉する作用を奏するものであれば特に制限はないが、例えば、リン化合物または2つ以上のカルボキシル基を含有する化合物またはポリヒドロキサメート化合物が例示できる。このようなものとして好ましくは、リン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、トリエチレンテトラミンーN,N,N’ ,N’, N’’’ N’’’, N’’’−六酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトロソ三酢酸、シュウ酸、クエン酸、デフェロキサミンおよびその塩類(30−アミノ−3,14,25−トリヒドロキシ−3,9,14,20,25−ペンタアザトリアコンタン−2,10,13,21,24−ペンタオン、30−アミノ−3,14,25−トリヒドロキシ−3,9,14,20,25−ペンタアザトリアコンタン−2,10,13,21,24−ペンタオンメタンスルホン酸塩、30−アミノ−3,14,25−トリヒドロキシ−3,9,14,20,25−ペンタアザトリアコンタン−2,10,13,21,24−ペンタオン塩酸塩)であり、より好ましくは、ヘキサメタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトロソ三酢酸であり、更により好ましくは、ヘキサメタリン酸、トリポリリン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトロソ三酢酸、デフェロキサミンおよびその塩類(30−アミノ−3,14,25−トリヒドロキシ−3,9,14,20,25−ペンタアザトリアコンタン−2,10,13,21,24−ペンタオン、30−アミノ−3,14,25−トリヒドロキシ−3,9,14,20,25−ペンタアザトリアコンタン−2,10,13,21,24−ペンタオンメタンスルホン酸塩、30−アミノ−3,14,25−トリヒドロキシ−3,9,14,20,25−ペンタアザトリアコンタン−2,10,13,21,24−ペンタオン塩酸塩)である。
【0048】
キレート剤は1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また、キレート剤の配合量は、洗浄組成物の使用形態、使用方法、汚れの付着している被洗物の種類、汚れの量、汚れの付着状態などによって異なることから、適宜調製すればよい。好ましくは(I)〜(III)成分とキレート剤の合計を100質量%とした場合、キレート剤が10〜90質量%であり、より好ましくは20〜60質量%であり、更に好ましくは30〜50質量%である。
【0049】
「その他の成分」
本発明の洗浄組成物は、必須成分である(I)〜(III)成分や、任意成分であるキレート剤の他に、さらに、界面活性剤、有機溶剤、pH調整剤、消臭剤、蛍光剤、香料等を必要に応じて含有できる。
界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を例示でき、市販の界面活性剤をいずれも用いることができる。
有機溶剤としては、例えばエチルカルビトール、ブチルカルビトール、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ホウ酸、塩酸、硝酸、硫酸等を例示できる。
これらの成分はそれぞれ洗浄組成物の組成物中に0.01〜40重量%含有させるのが好ましい。
【0050】
本発明の洗浄組成物は、上述の必須成分や必要に応じて配合される成分を混合することにより調製できる。また、その形態は、粉状、粒状、ゲル状、液体のいずれの形態でもよく限定されない。また、洗浄組成物中の各成分の濃度は、洗浄組成物の形態などに応じて、適宜調整できる。例えば、粉状、粒状、ゲル状、液体の形態の場合、各成分の濃度を濃く調製し、使用する際に水などの溶媒で適宜希釈して、被洗物を洗浄組成物を含む液中に浸漬したり、被洗物に洗浄組成物を含む液を塗布したりして、洗浄することができる。洗浄組成物がゲル状、液体などである場合には、はじめから洗浄に適した濃度に調製しておき、そのまま、同様に浸漬したり塗布したりして被洗物を洗浄すればよい。
【0051】
本発明の洗浄組成物を、1質量%に希釈した水溶液の液性には特に制限はないが、25℃におけるpHが5以上12以下、さらに好ましくは5.5以上10.5以下であると、室内等で使用する場合にもより安全性が高く好ましい。また、本発明の洗浄組成物は、このようなpH領域においても高い洗浄効果を奏する点にも特徴がある。
また、本発明の洗浄組成物の対象とする被洗物としては、繊維、陶器、磁器、ガラス、プラスチック、金属、塗装金属、タイル等であり、その具体例としては、靴下、服、ズボン、カーテン、便器等トイレ、窓ガラス、乗り物のガラス、めがね、透明プラスチック、温室用のシート、鏡、浴槽、浴室の壁や床、排水口、排水溝、流し台、洗面台等や、家やビル等建物の外壁、半導体用基板、半導体素子、原子力発電プラント等が挙げられる。また、対象とする汚れの種類にも特に制限はないが、繊維間のように形が複雑な部分に付着し、無機物と有機物からなる泥汚れのような混合汚れに対して、各成分が相乗的に働くためと推察されるが特に優れた効果を発揮し、極めて有用である。
【0052】
洗浄組成物の使用形態にも特に限定はないが、繊維間のような複雑な部分に付着した汚れを効率よく落すためには、被洗物を洗浄組成物を含む液中に浸漬する工程、または、被洗物に洗浄組成物を含む液を塗布する工程のいずれか一方を少なくとも選択し、実施することが好ましい。
浸漬する時間や、塗布後保持する時間は、好ましくは10分から24時間、より好ましくは、1時間から20時間、さらに好ましくは、3時間から15時間である。浸漬や塗布の後には水で濯ぐだけでもよいが、被洗物が繊維からなるものである場合には、通常の衣類用洗浄剤などで洗濯した方が、より効果的である。
【0053】
以上説明したこのような洗浄組成物は、たとえ繊維間のような形状が複雑な部分に付着し、通常の洗浄では落ちにくい有機物と無機物からなる泥汚れのような混合汚れであっても、(III)成分が汚れ中の有機物を分散させるとともに(I)成分の還元剤が主に汚れ中における金属を介した有機物に作用し、(II)成分のフッ化物が汚れ中のSiO由来の無機物などに作用するといった相乗効果により、効果的に洗浄することができる。
【実施例】
【0054】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[合成例1]
以下のようにして、実施例9および実施例11で使用した合成高分子化合物1を製造した。
冷却還流管、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラコにイオン交換水120gを仕込み、窒素を吹き込みながら80℃で30分撹拌した。ここに、予め200ml用ビーカーに2−メチル−2−アクリルアミドプロパンスルホン酸(AMPS)23.8g、塩化トリメチルアミノプロピルアクリルアミド(AAPTAC)19.01g、塩化1−ビニル−4−トリメチルアミノベンゼン(p−TMAMVB)4.86g、t−ブチルメタクリレート(t−BMA)0.3g、メトキシポリエチレングリコール(p=23)メタクリレート(M230G)12.0g、水酸化ナトリウム4.6g、過硫酸ナトリウム0.58g、イオン交換水120gを仕込み、この溶液を激しく攪拌しながら2時間かけてセパラブルフラスコに滴下した。
滴下中、セパラブルフラスコ内を撹拌しながら、温度を80℃に保った。
滴下後、85℃に昇温し4時間反応を行った。生成物を反応器から取り出し、ヘキサンで再沈澱させることにより合成高分子化合物1の固体を57g得た。
得られた合成高分子化合物1の重量平均分子量は18万であった。
なお、重量平均分子量はGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法により測定した。すなわち、カラムとして、東ソー(株)社製 TSKgel α5000、α3000、α2500の3本を用いた。溶出液は0.3 mol/Lトリエチルアミンをリン酸にてpHを2.9に調整した溶液を用い、流速0.05mL/min、カラム温度40℃にて流した。標準サンプルにShodex社製 プルランを用い検量した。
【0055】
[合成例2]
以下のようにして、実施例12および比較例4で使用した合成高分子化合物2を製造した。
冷却還流管、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラコにイオン交換水120gを仕込み、窒素を吹き込みながら80℃で30分撹拌した。ここに、予め200ml用ビーカーに、メタクリル酸13.2g、塩化トリメチルアミノエチルメタクリレート(DMC)31.8g、t−BMA3.0g、M230G12.0g、水酸化ナトリウム5.21g、過硫酸ナトリウム0.81g、イオン交換水120gを仕込み、この溶液を激しく攪拌しながら2時間かけてセパラブルフラスコに滴下した。
滴下中、セパラブルフラスコ内を撹拌しながら、温度を80℃に保った。
滴下後、85℃に昇温し4時間反応を行った。生成物を反応器から取り出し、ヘキサンで再沈澱させることにより合成高分子化合物2の固体を58g得た。
得られた合成高分子化合物2の合成例1と同法による重量平均分子量は15万であった。
【0056】
[合成例3]
以下のようにして、実施例10および比較例1で使用した合成高分子化合物3を製造した。
冷却還流管、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラコにエタノール88gを仕込み、窒素を吹き込みながら80℃で30分撹拌した。ここに、予め200ml用ビーカーにビニルピロリドン(VP)15.0g、ジメチルアミドエチルメタクリレート(DMEMA)7g、メチルメタクリレート(MMA)7g、t−BMA8.5g、メトキシポリエチレングリコール(p=9)メタクリレート(M90G)12.5g、2.2―アゾビスイソブチロニトリル0.93g、エタノール58gを仕込み、この溶液を激しく攪拌しながら2時間かけてセパラブルフラスコに滴下した。
滴下中、セパラブルフラスコ内を撹拌しながら、温度を80℃に保った。
滴下後、4時間反応を行い、合成高分子化合物3として、48g得た。
得られた合成高分子化合物3の合成例1と同法による重量平均分子量は9万であった。
【0057】
[合成例4]
以下のようにして、実施例18および比較例5で使用した合成高分子化合物4を製造した。 冷却還流管、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラコにエタノール88gを仕込み、窒素を吹き込みながら80℃で30分撹拌した。ここに、予め200ml用ビーカーにVP15.5g、DMEMA6.5g、MMA14g、M90G14g、2.2−アゾビスイソブチロニトリル0.95g、エタノール58gを仕込み、この溶液を激しく攪拌しながら2時間かけてセパラブルフラスコに滴下した。
滴下中、セパラブルフラスコ内を撹拌しながら、温度を80℃に保った。
滴下後、4時間反応を行い、合成高分子化合物4として、48g得た。
得られた合成高分子化合物4の合成例1と同法による重量平均分子量は8万であった。
【0058】
[実施例1〜22および比較例1〜6]
各例においては、配合組成を変えた以外は同様として洗浄組成物を調製し、それぞれ評価した。各例の配合組成を表1〜6に示す。表中の配合量の単位は質量%を示す。
なお、全成分の合計が100質量%となるように、水量を適宜調整している。また、pHは25℃での値である。
【0059】
表中の成分について以下に示す。
ビスノールUP10:一方社油脂工業(株)社製(式(1)で示される窒素を含有する界面活性剤であり、R:牛脂由来のアルキル基、R:ベンジル基、m+n=30、X:Cl
Luvitec K90:ビニルピロリドンホモポリマー(BASF社製)
LuvitecVPI55K72W:ビニルピロリドン/ビニルイミダゾール共重合物(BASF社製)
クロマボンドS−400:INTERNATIONAL SPECIALITY PRODUCTS INC.製(式(10)においてDがOのものの重合体)
HEDP:1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸
PVA235:ポリビニル酢酸、(株)クラレ製
【0060】
<洗浄評価>
各例で得られた洗浄組成物を使用して、繊維に付着した泥汚れに対する洗浄評価を行った。
1.モデル泥汚れ布の作成
園芸用黒土(kyotochiya製)15gを秤量し、水道水500g中に投入し、ホモジナイザー(KINEMATICA(スイス)社製、商品名ポリトロン Type PT 10/35 )にて、80rpmで、15分間分散させた。得られた泥分散液中に10cm×25cmに裁断したメンメリヤスニット布((株)谷頭商店製)15枚を浸漬させ、布を手で良く揉み、布全体に均一に分散液を含ませた。
布を取り出し、ローラーで軽く絞り、1時間自然乾燥させた後、105℃の恒温槽にてさらに1時間乾燥させた。
最後に布表面をウレタンスポンジで擦り、余分な泥粒子を落したものをモデル泥汚れ布とした。
【0061】
2.洗浄方法
(1)洗浄方法1:浸漬
実施例1〜10、比較例1〜3の各洗浄組成液100mLに、上記モデル泥汚れ布5枚(各4cm×4cmに裁断したもの)を浸漬した。浸漬時間は15時間とした。
一方、二槽式洗濯機(三菱電機製 商品名CW−C30A1−H1)の洗濯槽に、25℃の水道水30Lを入れ、次いで衣料用洗浄剤(ライオン(株)社製 商品名「トップ」)を15g投入し、30秒間撹拌した。その後、上記浸漬後の評価布5枚と、丸首半袖シャツ7枚(富士紡績(株)社製 BVD.LLサイズ)とを入れ、標準水流で10分間洗浄した後、1分間脱水した。さらに、ためすすぎ3分間、脱水1分間を2セット繰り返した後、自然乾燥させた。
(2)洗浄方法2:塗布
実施例11〜20、比較例4〜6の各洗浄組成液を、モデル泥汚れ布1枚に対し、1.5g塗布し、10時間放置し、その後、洗浄を行なった。洗浄方法は洗浄方法1と同様にである。
【0062】
3.洗浄力の評価
評価布の反射率を、未洗浄布、汚染布(洗浄前の布)、洗浄布(洗浄後の布)について、各々、日本電色(SE2000)にて測定し、洗浄率(%)を下記式に基づいて算出した。尚、反射率としては、Z値を採用した。
洗浄率(%)=(洗浄布の反射率−汚染布の反射率)/(未汚染布の反射率−汚染布の反射率)×100
評価布5枚の洗浄率の平均値を求め、下記基準にて評価した。
◎:洗浄率60%以上
○:洗浄率45%以上〜60%未満
△:洗浄率30%以上〜45%未満
×:洗浄率30%未満
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
【表5】

【0068】
【表6】

【0069】
これらの結果より、還元剤(I)と、フッ化物(II)と、窒素を含有する界面活性剤(a−1)、または、4級アンモニウム基または3級アミノ基を有するビニル単量体を構成単位として含む高分子化合物(a−2)の少なくとも一方(III)とを含有する実施例の洗浄組成物は、これらの成分が相乗的に作用し、洗浄力が良好であった。一方、成分(I)〜(III)のいずれかが欠けると、相乗効果が発現されず、洗浄力は低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤(I)と、フッ化物(II)と、窒素を含有する界面活性剤(a−1)、または、4級アンモニウム基または3級アミノ基を有するビニル単量体を構成単位として含む高分子化合物(a−2)の少なくとも一方(III)とを含有することを特徴とする洗浄組成物。
【請求項2】
さらにキレート剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項3】
1質量%に希釈した水溶液の25℃におけるpHが、5以上12以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄組成物。
【請求項4】
泥汚れ洗浄用であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の洗浄組成物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の洗浄組成物を用いて、被洗物を洗浄する方法であって、
洗浄組成物を含む液中に被洗物を浸漬する工程、または、洗浄組成物を含む液を被洗物に塗布する工程を有することを特徴とする洗浄方法。


【公開番号】特開2006−111869(P2006−111869A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264694(P2005−264694)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】