説明

洗浄装置

【課題】洗浄水による洗浄と熱水洗浄とを同一の簡易な設備で施すことができる医療器具等の洗浄殺菌装置を提供する。
【解決手段】洗浄対象の器具が浸漬、且つ加熱するヒータ14が設けられたポット部12を具備する貯留タンク10と、給排出手段と蓋部18の天井面に向けてポット部12で加熱された洗浄水を噴射し、天井面に噴射された熱水が流下するようにして水蒸気発生面積を可及的に広くして水蒸気を充満させる噴射ノズル20,20と、超音波洗浄を施す超音波発信装置16と、前記超音波洗浄を施した器具の一部が露出するように貯留タンク10に貯留された洗浄水をポット部12で加熱して噴射ノズル20,20に送液するポンプとを備え、且つ貯留タンク10内に各洗浄に用いる所定量の洗浄水を貯留するように前記給排手段を制御する制御手段を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄装置に関し、更に詳細には洗浄対象の器具に超音波洗浄と熱水洗浄とを施す洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手術に用いたメスやチューブ等の医療器具は、付着した血液等の体液やタンパク質を洗浄した後、滅菌処理が施されて再使用される。
かかる医療器具の洗浄・滅菌処理装置として、例えば下記特許文献1には、洗浄槽内に封入した洗浄対象の器具を超音波洗浄によって洗浄した後、洗浄槽内に設けられているヒータによって、洗浄槽内に貯められた水を加熱して高温蒸気として滅菌処理する洗浄・滅菌処理装置が提案されている。
また、簡易的な殺菌装置として、下記特許文献2には、熱水を殺菌対象にシャワーリングする殺菌装置も提案されている。かかる殺菌装置を図10に示す。図10に示す滅菌装置では、被殺菌物100を乗せたトレー102を多数段積み重ねた状態で略円筒形の殺菌槽104に収容し、殺菌槽104内へ熱水を噴射することで、殺菌槽104内の被殺菌物100を加熱殺菌する加熱殺菌装置であって、殺菌槽104内には、被殺菌物100へ向けて熱水を噴射する直接加熱用熱水噴射ノズル106と、殺菌槽104の直胴部を形成する側壁近くで上向きに熱水を噴射する加熱量調節用熱水噴射ノズル108とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−65991号公報
【特許文献2】特開2003−299715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の洗浄・滅菌装置では、洗浄と滅菌とを一台の装置で行うことができ、効率的である。しかし、洗浄槽内で高温蒸気を発生させるため、洗浄槽としては圧力容器を採用することが必要となり、洗浄・滅菌装置が重装備となると共に、その維持管理も厳格に行うことを要する。
一方、上記特許文献2の殺菌装置では、少量の洗浄水で殺菌処理でき、被殺菌物に対する加熱斑をなくすことができる。しかし、かかる殺菌装置は、密封包装した食品の殺菌に用いられる装置であって、手術に用いて血液等の体液やタンパク質が付着したメスやチューブ等の医療器具の殺菌には用いることはできない。
ところで、医療器具であっても、器具の種類によっては、付着した血液等の体液やタンパク質を洗浄した後に、熱水で洗浄する熱水洗浄のみで充分な器具もある。また、かかる熱水洗浄を施した器具に対して滅菌処理を施す場合でも、洗浄水による洗浄のみを施した器具に対する滅菌処理に比較して簡易化可能でもある。
そこで、本発明は、重装備で且つ維持管理も厳格に行うことを要する従来の洗浄・滅菌装置、或いは手術に用いた医療器具の殺菌には不適当な従来の殺菌装置の課題を解決し、手術に用いて血液等の体液やタンパク質が付着したメスやチューブ等の医療器具であっても、洗浄水による洗浄と熱水洗浄とを同一の簡易な設備で施すことができる洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、前記課題を解決すべく、血液等の体液やタンパク質が付着したメスやチューブ等の医療器具に対し、体液やタンパク質を除去するには、洗浄水に全体を浸漬した器具に超音波を照射する超音波洗浄が有効であること、及び超音波洗浄で洗浄した器具に熱水をシャワーリングしつつ循環することが有効であると考え検討した。
しかし、超音波洗浄で洗浄した器具の全体を浸漬する洗浄水を加熱して熱水とするには、相当の時間が掛かること、熱水を循環する際に、循環ポンプがキャビテェーションを惹起し易くなって熱水循環量が減少し、器具に直接充分な量のシャワーリングができず、器具に対し施す加熱処理が不均一となり易いことの問題点が判明した。
かかる問題点について、本発明者等が更に検討を重ねた結果、超音波洗浄で洗浄した器具の一部が露出する程度に洗浄水を減少することによって、所望温度の熱水とするまでの時間を短縮でき、且つ循環ポンプの熱水循環量の低下に対しては、熱水を天井面に噴射ノズルから噴射することによって、器具の一部が露出する空間内を充分に満たす水蒸気と熱水とで器具に対し均一加熱ができることを知り本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明は、洗浄対象の器具に超音波洗浄と熱水洗浄とを施す洗浄装置であって、前記器具の全体が浸漬されるように洗浄水が貯留でき、且つ底面の一部に開口された凹部内に洗浄水を加熱するヒータが設けられたポット部を具備する貯留タンクと、前記貯留タンク内に所定量の洗浄水を給排出する給排出手段と、前記貯留タンクの開口部を覆うように設けられた天井部の天井面に向けて前記ポット部で加熱された洗浄水を噴射し、天井面に噴射された熱水が流下するようにして水蒸気発生面積を可及的に広くして水蒸気を充満させるための噴射ノズルと、前記貯留タンクの外周面側に設けられ、前記貯留タンクに貯留された洗浄水に全体が浸漬されている器具に超音波を発振して超音波洗浄を施す超音波発振装置と、前記超音波洗浄を施した器具の一部が露出するように前記貯留タンクに貯留された洗浄水を前記ポット部で加熱して前記噴射ノズルに送液するポンプとを備え、且つ前記貯留タンク内に各洗浄に用いる所定量の洗浄水を貯留するように前記給排手段を制御する制御手段を具備することを特徴とする洗浄装置にある。
かかる本発明において、洗浄対象の器具として、貫通する中空部が形成された中空器具を用い、超音波洗浄及び熱水洗浄の際に、前記中空器具の中空部内に各洗浄で採用する洗浄水又は熱水を通水する通水手段を設けることによって、中空器具の中空部内を充分に洗浄できる。
また、噴射ノズルを、貯留タンクの開口部を覆う天井部に回転可能に設けることによって、熱水を天井部の天井面及び側壁面に噴射でき、熱水の蒸気発生面を増大して空間内を充分な蒸気で満たすことができる。
尚、本発明で言う「熱水」とは、温度が65〜95℃のものを言う。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る洗浄装置によれば、器具の全体が浸漬されるように洗浄水が貯留でき、且つ底面の一部に開口された凹部内に洗浄水を加熱するヒータが設けられたポット部を具備する貯留タンクを用い、器具の全体を洗浄水に浸漬した状態で超音波洗浄を施し、器具に付着した血液等の体液やタンパク質を洗浄できる。
次いで、超音波洗浄を施した器具の一部が露出する程度に貯留タンクに貯めた洗浄水を、貯留タンクのポット部のヒータで加熱する。このため、洗浄水を所定温度の熱水状態まで短時間で加熱ができる。
かかる熱水をポンプによって噴射ノズルから噴出させて器具に熱水洗浄を施す。その際に、ポンプから噴射ノズルへの熱水送液量の減少を、貯留タンクの開口部を覆うように設けられた天井部の天井面に向けて噴射ノズルから熱水を噴射することによって補うことができる。つまり、熱水を天井面に向けて噴射することによって、熱水は天井面及び貯留タンクの内側面を伝わって流下し、熱水の水蒸気発生面積が拡大する。このため、器具の一部が露出する空間内を水蒸気で充分に満たすことができ、器具に対して熱水が散水されている部分と相俟って、器具に対して均一加熱ができる。
その結果、手術に用いて血液等の体液やタンパク質が付着したメスやチューブ等の医療器具であっても、超音波洗浄と熱水洗浄とを同一の簡易な設備で施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る洗浄装置の一例を説明するための断面図である。
【図2】図1に示す噴射ノズル20,20を説明するための正面図である。
【図3】図1に示す噴射ノズル20の横断面図である。
【図4】噴射ノズル20,20に流体を導く内部導管22を構成する曲折部22aと接続される接続部24を説明するための部分断面図である。
【図5】図4に示す接続部24を用いた場合の蓋部18の開閉について説明する説明図である。
【図6】図1に示す洗浄装置の蓋部18を開けた状態を説明する説明図である。
【図7】バスケット28の一端側に配置された箱部32内に流体を供給する供給口32aの開口部と接続される接続部34を説明する説明図である。
【図8】接続部34の部分断面図である。
【図9】本発明に係る洗浄装置を制御する制御装置に関するものである。
【図10】従来の加熱殺菌を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る洗浄装置の概略図を図1に示す。図1に示す洗浄装置を構成する貯留タンク10は、洗浄対象の器具の全体が浸漬されるように洗浄水が貯留でき、且つ底面の一部に開口された凹部内に洗浄水を加熱するヒータ14が設けられたポット部12を具備する。このポット部12内の洗浄水はヒータ14によって所望温度に加熱される。かかる貯留タンク10の底面はポット部12に向かって傾斜面に設けられており、この傾斜面に設けられた底面の外周面側には、超音波発振装置16が設けられている。
かかる貯留タンク10の開口部を覆うように開閉可能に設けられた蓋部18の内側面(天井面)には、筒状の噴射ノズル20,20が回転可能に設けられている。この噴射ノズル20,20は、図2に示す様に、筒状部20aの両端部の各々に二個の噴射孔20b、20bが穿設されている。かかる噴射孔20bは、図3に示す様に、筒状部20a内の流体を斜め上方に噴出するように形成されている。この筒状部20aの両端部の一端部に形成された噴射孔20b、20bからの噴射方向と他端部に形成された噴射孔20b、20bからの噴射方向とは異なる方向であるため、噴射ノズル20,20の各噴射孔20bから流体が噴射されたとき、図2に示す様に、噴射ノズル20,20が回転する。
【0010】
図1及び図2に示す噴射ノズル20,20に流体を導く内部導管22の貯留タンク10の壁面面に沿って曲折されて形成された曲折部22aには、図1に示す様に、貯留タンク10の壁面に設けられた接続部24と接続される。かかる接続部24は、その部分拡大断面図である図4に示す様に、貯留タンク10の壁面に固定された固定部24aに対し、付勢部材としてのバネ24bによって内部導管22の曲折部22aに形成された開口部22bの方向に、接続部材24cの先端部25が付勢されている。この先端部25は、円錐台状に形成されており、中央部に通路26が形成されている。このため、バネ24bの付勢力によって、先端部25の先端面に開口されている通路26の開口部と内部導管22の曲折部22aの開口部22bとが接続される。
図5(a)に示す様に、接続部材24cの先端部25が、バネ24bの付勢力によって内部導管22の曲折部22aの開口部22bと接続されている。このため、図5(b)に示す様に、蓋部18を開いたとき、噴射ノズル20及び曲折部22aを含む内部導管22が蓋部18と共に移動する。
また、蓋部18を閉じたとき、図5(a)に示す様に、曲折部22aの開口部22bと接続部材24cの先端部25とがバネ24bの付勢力で再度接続できる。
【0011】
この様に、蓋部18を開閉できるため、図1に示す貯留タンク10内には、蓋部18を開けてバスケット28を挿脱できる。かかるバスケット28は、図6に示す様に、網状部28aが設けられており、洗浄対象の器具を載置できる。
更に、内視鏡手術に使用されるチューブ等の貫通する中空部が形成された中空器具を洗浄する際に、中空器具の一端を把持し、中空部内に洗浄水を流す把持部材30,30・・がバスケット28の一端側に配置された箱部32に設けられている。この箱部32内に流体を供給する供給口32aの開口部は、図7に示す様に、貯留タンク10の壁面に設けられた接続部34と接続される。
かかる接続部34の拡大部分断面図を図8に示す。図8に示す接続部34には、貯留タンク10の壁面に固定された固定部36aに対し、付勢部材としてのバネ36bによって箱部32の側面に形成された供給口32aの開口部の方向に、接続部材36cの先端部37が付勢されている。この先端部37は、円錐台状に形成されており、中央部に通路38が形成されている。このため、バネ36bの付勢力によって、先端部37の先端面に開口されている通路38の開口部と箱部32に形成された供給口32aの開口部とが接続される。
【0012】
図8に示す様に、接続部材36cの先端部37が、バネ36bの付勢力によって箱部32に形成された供給口32aの開口部と接続されている。このため、バスケット28の両端部に設けられている取手28b,28bを掴み、バスケット28を引っ張り出すことによって、接続部材36cの先端部37と供給口32aの開口部との接続が解除され、バスケット28を貯留タンク10から取り出すことができる。
一方、バスケット28を貯留タンク10内に挿入する際には、バスケット28を所定位置まで押し込むと、図7に示す様に、接続部材36cの先端部37と供給口32aの開口部とがバネ36bの付勢力によって接続される。
【0013】
図1〜図8に示す洗浄装置は、図9に示す様に、配管等が配設されている。貯留タンク10のポット部12で加熱された熱水は、渦巻ポンプ40(以下、単にポンプ40と称する)によって接続部34を通過して箱部32の供給口32aに送液されると共に、自動弁42及び接続部24を通過して噴射ノズル20,20に供給される。
この接続部34には、ファン44から自動弁46及び逆支弁48を通過して圧空が送られる。
また、貯留タンク10内には洗浄水が自動弁50を経由して送液され、貯留タンク10内の洗浄水はポット部12の底面から自動弁52を経由して系外に排出される。
かかるヒータ14、自動弁42,46,50,52、ポンプ40、ファン44は、制御部56によって制御されている。
【0014】
この制御部56は、先ず、自動弁50を開いて貯留タンク10内に給水して、洗浄水を貯める。貯留タンク10内に貯留する洗浄水量は、バスケット28の箱部32に設けられた把持部材30,30・・に一端が把持された中空器具の全体が洗浄水に浸漬する量である。図9に示すラインAのところまで貯留したとき、制御部56からの閉信号によって自動弁50が閉じて給水が終了する。貯留タンク10に所定量貯められた洗浄水には、必要に応じて洗浄剤や潤滑剤を添加してもよい。
次いで、制御部56からの起動信号によってポンプ40を起動し、バスケット28の箱部32及び中空器具の中空部内に洗浄水を通水する。この際に、自動弁42は閉じた状態であり、ヒータ14には通電されていない。
この様に、洗浄水をポンプ40によって循環した状態下で、制御部56からの発振信号によって超音波発振装置16から超音波を発振させて、中空器具の中空部内に洗浄水を通水しつつ、超音波によって中空器具の洗浄を行う。かかる超音波洗浄によって、中空器具の内外に付着していた血液等の体液やタンパク質を効果的に洗浄できる。
【0015】
所定時間の超音波洗浄を終了したとき、制御部56からの停止信号によって超音波発振装置16による超音波の発振を停止すると共に、ポンプ40も停止する。
次いで、制御部56からの開信号によって自動弁52を開き、貯留タンク10内の洗浄水を系外に排出した後、自動弁52を閉じて自動弁50を開いて貯留タンク10への給水を開始する。超音波洗浄終了後の給水では、その洗浄水量はバスケット28の箱部32に設けられた把持部材30,30・・が露出する量である。図9に示すラインBのところまで貯留したとき、制御部56からの閉信号によって自動弁50が閉じて給水が終了する。
その後、制御部56からの駆動信号によってポンプ40が駆動されると共に、ポット部12内のヒータ14に通電される。貯留タンク10内に貯留されている洗浄水量は、超音波洗浄の際の洗浄水量よりも少ないため、ヒータ14によって短時間で所定温度まで昇温できる。
更に、自動弁42も開となって、ポット部12内のヒータ14で加熱された熱水がポンプ40によって噴射ノズル20,20に供給されると共に、バスケット28の箱部32及び中空器具の中空部内に熱水が供給される。
【0016】
熱水が供給された噴射ノズル20,20は、回転しつつ蓋部18の天井面に向けて熱水を噴射する。天井面に噴射された熱水は、天井面から中空器具に流下したり、天井面から内側面を伝わって流下し、水蒸気発生面積を可及的に広くできる。このため、熱水温度がポンプ40にキャビテェーションが発生し易くなる温度(通常、80〜95℃)に昇温されて、ポンプ40の送液量が減少し、中空器具に直接散布される熱水量が減少しても、バスケット28の箱部32に設けられた把持部材30,30・・が露出する空間部内に水蒸気を充満できる。その結果、バスケット28に収容されて貯留タンク10内に挿入された中空器具は、直接熱水に接触しない部分が存在しても、その部分は熱水と略等しい温度の水蒸気と接触して洗浄される。かかる熱水洗浄は、熱水温度が80〜95℃に昇温されてから予め設定された所定時間施す。
熱水洗浄が終了したとき、制御部56からの信号によって、ヒータ14の通電を遮断する共に、ポンプ40を停止する。更に、自動弁52を開いて洗浄した熱水を系外に排出する。
その後、制御部56からの起動信号によって、ファン44を起動すると共に、自動弁46を開として、外気空気流をバスケット28の箱部32を経由して中空器具の中空部内に滞留している洗浄水を排出して、一連の洗浄を終了する。
【0017】
図1〜図9に示す洗浄装置のバスケット28に代えて、底面及び側面が網体で形成されている洗浄用バスケットを用い、洗浄用バスケットの底面を形成する網体上に複数個のバイオロジカルインジケータを載置し、熱水洗浄のみを施した。
このバイオロジカルインジケータとしては、洗浄したステンレス片の一面側に指標菌としてのBacillus atrophaeus(ATCC9372)を塗布した。その塗布面の菌数は2.6×10個である。
かかる複数個のバイオロジカルインジケータを、各指標菌塗布面を下面側として底面を形成する網体上に載置した洗浄用バスケットを、貯留タンク10内に挿入した。
次いで、洗浄用バケットの底面に載置した複数個のバイオロジカルインジケータが浸漬されることのないラインB(図6)まで貯留タンク10内に洗浄水を貯留した後、ポンプ40によって洗浄水を噴射ノズル20,20から蓋部18の天井面に向けて噴射して循環した。
かかるポンプ40に供給される洗浄水は、ポット部12のヒータ14によって加熱され、循環する洗浄水全体が熱水となる。この熱水の温度が93℃に到達してから30分間の熱水洗浄を施した。
【0018】
熱水洗浄処理が終了してから放冷した複数個のバイオロジカルインジケータの各々を、無菌的に10mlの滅菌済のソイビーンガセインダイジェスト培地に入れ、37℃のインキュベータで7日間培養し、指標菌の発育の有無を試験した。その結果、いずれも培地の混濁が認められず、充分に殺菌されている。
この様に、図1〜図9に示す洗浄装置では、洗浄したステンレス片の指標菌塗布面を下側とし、直接熱水に接触することがない状態としても、充分に洗浄できる。このため、手術に用いて血液等の体液やタンパク質が付着している器具であっても、超音波洗浄によって体液やタンパク質を除去した後、熱水洗浄を施すことによって充分な洗浄を施すことができる。
尚、図1〜図9に示す洗浄装置では、超音波発振装置16が貯留タンク10の底面側に設けられているが、深さの深い縦長の貯留タンクの場合は、貯留タンクの側面側に設けてもよい。
【符号の説明】
【0019】
10 貯留タンク
12 ポット部
14 ヒータ
16 超音波発振装置
18 蓋部
20 噴射ノズル
24,34 接続部
28 バスケット
32 箱部
40 渦巻ポンプ
42,46,50,52 自動弁
44 ファン
56 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄対象の器具に超音波洗浄と熱水洗浄とを施す洗浄装置であって、
前記器具の全体が浸漬されるように洗浄水が貯留でき、且つ底面の一部に開口された凹部内に洗浄水を加熱するヒータが設けられたポット部を具備する貯留タンクと、
前記貯留タンク内に所定量の洗浄水を給排出する給排出手段と、
前記貯留タンクの開口部を覆うように設けられた天井部の天井面に向けて前記ポット部で加熱された洗浄水を噴射し、天井面に噴射された熱水が流下するようにして水蒸気発生面積を可及的に広くして水蒸気を充満させるための噴射ノズルと、
前記貯留タンクの外周面側に設けられ、前記貯留タンクに貯留された洗浄水に全体が浸漬されている器具に超音波を発振して超音波洗浄を施す超音波発振装置と、
前記超音波洗浄を施した器具の一部が露出するように前記貯留タンクに貯留された洗浄水を前記ポット部で加熱して前記噴射ノズルに送液するポンプとを備え、
且つ前記貯留タンク内に各洗浄に用いる所定量の洗浄水を貯留するように前記給排手段を制御する制御手段を具備することを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
洗浄対象の器具が、貫通する中空部が形成された中空器具であって、超音波洗浄及び熱水洗浄の際に、前記中空器具の中空部内に各洗浄に用いる洗浄水又は熱水を通水する通水手段が設けられている請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
噴射ノズルが、貯留タンクの開口部を覆う天井部に回転可能に設けられている請求項1又は請求項2記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−196671(P2012−196671A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−109865(P2012−109865)
【出願日】平成24年5月11日(2012.5.11)
【分割の表示】特願2007−121918(P2007−121918)の分割
【原出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【出願人】(000148025)サクラ精機株式会社 (28)
【Fターム(参考)】