説明

洗濯機

【課題】できるだけ少ない水量で洗濯物のねじれや絡みつきがない洗濯および乾燥が可能なパルセータ方式の洗濯機を提供する。
【解決手段】洗濯機の底部に配置されたパルセータ4は、上面の一端側を低くし、それに対向する上面の他端側を高くしたことにより表面が傾斜面に形成されたベース部4aと、このベース部の傾斜面に立設し、傾斜面の傾き方向に沿って延びる翼部4bとを備え、ベース部4aは、翼部4bで隔てられ、その縁部から翼部4bの方向に向かって異なる勾配で高くなる傾斜面に形成されたベース部の両側面を有する。制御手段110は、このパルセータ4の緩斜面での洗濯に対応する正転の時間を急斜面での洗濯に対応する反転の時間よりも長くなるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に関するものであり、特にパルセータ方式の洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に洗濯機は、ドラム式とパルセータ方式とに大別される。ドラム式は、水平方向の回転軸を具備するドラム(洗濯槽に相当する)を回転させ、その回転によってドラム内で衣類などの洗濯物が落下する際の機械的作用と洗剤による化学作用とを利用するものであり、洗濯された洗濯物の脱水には、ドラムを回転し、遠心力を利用している。さらに、脱水後の洗濯物の乾燥は、ドラム内に温風を吹きこみながらドラムを回転したりしている。
これに対してパルセータ方式は、洗濯槽(又は洗濯兼脱水槽)の底部に配置されたパルセータを回転して、その回転によって「回流する水流」を発生させ、摩擦または振動などの機械的作用と洗剤による化学作用とによって汚れを除去する。また、洗濯された洗濯物の脱水には、洗濯槽を回転し、遠心力を利用している。さらに、脱水後の洗濯物の乾燥は、パルセータを回転させて洗濯物を攪拌させながら、洗濯槽内に温風を吹き込むことにより行っている。
【0003】
上記のような作用を果たすパルセータは、その乾燥性能に大きく影響を与える。そのため、従来より、パルセータの上面を斜面に形成して、それにより洗濯物を上下動させて、乾燥性能を向上させることが試みられている(例えば、特許文献1、2)。
【特許文献1】特開2005−81102号公報(第2図、第6図など)
【特許文献2】実開昭56−44676号公報(第2図、第3図など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年ランニングコスト低減化やパルセータ駆動モータの負荷減少の観点から従来同様の洗浄能力を維持しつつ使用水量をできるだけ少なく、具体的には洗濯物が水に浮かない範囲(洗濯物がパルセータ上に乗ったままひたひた状態である程度)の少ない水量で洗濯できる製品の登場が要望されている。
また、従来のパルセータの構造は、左右対称であり、その回転の動き(回転量、回転速度)も左右対称であるため、重い洗濯物が偏った位置に集まってパルセータのバランスが崩れた場合には、パルセータが洗濯物を押す際にモータにかかる負荷が強すぎて回りにくくなって一方に偏った左右非対称の動きとなる。その結果、洗濯物に偏った機械力が加わり、ねじれや絡み付きが発生し易くなるという問題があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであって、できるだけ少ない水量で洗濯物のねじれや絡みつきがない洗濯および乾燥が可能なパルセータ方式の洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る洗濯機は、洗濯機本体の底部に配された回転体であるパルセータと、パルセータの回転を制御する制御手段とを備え、パルセータは、上面の一端側を低くしそれに対向する上面の他端側を高くしたことにより表面が傾斜面に形成されたベース部と、ベース部の傾斜面に立設し傾斜面の傾き方向に沿って延びる翼部とを備え、ベース部をさらに翼部で隔てられその縁部からまたは表面の翼部と平行な所定位置から翼部の方向に向かって異なる勾配で高くなる傾斜面に形成された両側面を有するように変形することで構成され、両側面は、所定値より緩やかな勾配をもつ緩斜面と、緩斜面より急な勾配をもつ急斜面とから成り、制御手段は緩斜面での洗濯に対応する正転と急斜面での洗濯に対応する逆転とを交互に行わせるとともに正転の時間を逆転の時間よりも長くなるようにパルセータを制御するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、傾斜面を有するベース部と、その傾斜面から突出した翼部と、一端が翼部の延設された頂部に接続され他端がベース部に接続され、傾斜が相違する左右壁面と、を有するパルセータを用い、緩斜面での洗濯に対応する正転の時間を急斜面での洗濯に対応する反転の時間よりも長くなるように制御するので、少ない水量で洗濯物のねじれや絡みつきがない洗濯および乾燥が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。各図において同じ部分には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
図1は本発明の実施の形態に係る洗濯機の側断面図である。この洗濯機は、一連の洗い行程と、すすぎ行程と、脱水行程と、乾燥行程とを実行するものである。なお、洗い行程とすすぎ行程とをまとめて「洗濯行程」と称する場合がある。
【0010】
(筐体、水槽)
この洗濯機は、筐体(外箱)1の内部に、洗濯槽(内槽)3を内装した水槽(外槽)2と、洗濯槽3から出た空気を、除湿・乾燥して再び洗濯槽3に戻す風路とを、備えている。また、筐体1の四隅の上端部近くには吊棒4の上端部が設置されており、吊棒4の下端部にはバネが設けられている。水槽2は、このバネを介して複数の吊り棒4によって支持され、吊り棒可動部4Aによる吊り棒4の上げ下げにより、傾斜可能に構成されている。吊り棒4は、吊り板5および吊り座5Aから成る吊り棒支持部を介して筐体1に取り付けられており、水槽2はその吊り棒支持部において吊り棒4と連結している。
なお、洗濯槽3の左右方向の回転と区別するため便宜上、水槽2(洗濯槽3)の傾斜方向(上下方向)の回転を「傾動」と称呼する。
なお、筐体1の上部には、洗濯物30の出入口があり、その出入口は扉10で開閉自在に構成されている。
また、洗濯物30の乾燥に供される風路は、この例では、洗濯槽3、除湿風路11、乾燥フィルタ16、乾燥用ファン15および乾燥用ヒータ17などからなる循環風路として構成されている。
除湿風路11は洗濯槽3の外側の水槽2の後側外周に、水槽2と一体に形成されていて、除湿風路11の内部には、水冷式除湿用熱交換器である除湿板12が配置されている。
また、筐体1の後側上面には給水口13が設けられており、給水口13から取り入れられた水は、分岐弁14を介して、洗濯槽3または除湿風路11に導入される。
【0011】
(洗濯槽)
洗濯槽3は、その側面を構成している脱水槽側板3Aと、その底面を構成している脱水槽底板3Cから構成されており、天面が開放され、底面が閉塞された筒状で、脱水槽側板3Aには脱水のための複数の脱水槽孔3Bが設けられている。脱水槽側板3Aの上部周囲には流体バランサ6が配置されている。流体バランサ6の内周で囲まれた範囲が、開口部として洗濯物30を投入したり取り出したりするために供される。脱水槽底板3Cの上には洗濯時や乾燥時に左右に回転するパルセータ9が取り付けられている。水槽2の下側には回転モータ7が取り付けられており、この回転モータ7の動力が回転軸8を介して洗濯槽3やパルセータ9に伝達され、それらの回転に利用される。
洗濯槽3は、投入された洗濯物30の洗い、すすぎ、脱水及び乾燥に供するものであるから、洗濯兼脱水槽あるいは洗濯兼脱水兼乾燥槽とも称されるものである。洗濯槽3は水槽2内に回転自在に配置されている。また、洗濯槽3は吊り棒可動部4Aによる吊り棒4の上げ下げにより水槽2と共に傾動するものである。
【0012】
(パルセータ)
パルセータ9は、給水口13および分岐弁14を通過し筐体1の上部に取り付けられた洗剤ケース20内の洗剤を溶かし込んで洗濯槽3に注水された水(以下「洗濯水」と称す)、及び洗濯槽3内に投入された洗濯物30を攪拌するためのものであり、上述したように脱水槽底板3Cの上に左右に回転自在に配置されている。以下、洗濯槽3の回転と区別するため便宜上、パルセータ9の回転を「旋回」と称する。
図2はこの実施の形態で用いるパルセータ9を示す斜視図、図3はパルセータ9を図2の矢印X方向から見た矢視図(側面図)である。このパルセータ9は、その上面の一端側を低くし、それに対向する他端側を高くしたことによる傾斜面が表面(上面)9Aに形成された円盤状のベース部9aと、該ベース部9aの傾斜面から突出してその傾斜面の傾斜方向に沿って延び、ベース部9a中央部を横断する形状の翼部9bとを備え、翼部9bの、ベース部9aの傾斜面からの突出高さを、ベース部9aの高さの低い側から高い側に向かってより高くなるようにした構造を基本としている。なお、図中の符号9Bはパルセータ9の裏面(底面)を示している。
【0013】
図4はパルセータ9の翼部9bの長手方向に直交するラインにおける断面図である。図4に示すようにパルセータ9は、翼部9bで隔てられたベース部9aの両側面9s、9gも、その縁部またはその表面の翼部9bと平行な所定位置から翼部9bの方向に向かって高くなる傾斜面に形成している。これにより、パルセータ9が旋回すると、この傾斜面に沿って洗濯物30が翼部9bの頂上に向かって跳ね上がり、洗濯物30の上下動がより促進されて、洗濯物30の乾燥性能およびほぐし性能が向上する。
【0014】
ここで、図4に示すように左右壁面の傾斜は相違しており、一方の壁面9sは洗濯物30に対して周方向の力を作用させる急斜面に、他方の壁面9gは洗濯物30に対して上下方向の力を作用させる緩斜面に、それぞれ形成されている。図5はこのように構成されたパルセータの上面を示す上面図であり、図6は急斜面9sと緩斜面9gの作用を説明する作用説明図である。
次に、動作を説明する。図6において、パルセータ9の旋回(正転及び反転)時、急斜面9sは洗濯物30を水平方向に押し出す力を与えるように作用し、緩斜面9gは洗濯物30を上下移動させるのに寄与する。従って、急斜面9sは洗い時やすすぎ時に効果を発揮し、緩斜面9gは乾燥時に効果を発揮する。
【0015】
また、パルセータ9の水抜き穴4cは、ベース部9aの高さが高い側よりも低い側の領域に多く設けられている。これにより、水がたまりやすい高さの低い部分からの排水量が増えるため、洗濯槽3からの排水効率が良くなる。
また図7に示すように、パルセータ9の裏面(底面)9Bには、水をすくい上げるポンプアップ用羽根9kが放射状に複数設けられており、高さが低い側には凸状リブ9mが設けられており、高い側と低い側の中間部には凸状リブ9nが設けられている。
【0016】
(回転モータ)
水槽2の下方には、パルセータ9及び洗濯槽3を回転(旋回)駆動するための共通の回転モータ7が設置されている。加えて、回転モータ7の回転をパルセータ9または洗濯槽3に振り分ける回転分配手段と、該共通の回転分配手段からパルセータ9に回転(旋回)を伝達するパルセータ側回転伝達手段と、該共通の回転分配手段から洗濯槽3に回転を伝達する槽側回転伝達手段とが設置されているが、それらの手段は特に図示しない。回転モータ7及び回転分配手段は、後述の制御手段の指令によって、洗濯行程と脱水行程と乾燥行程において、それぞれ所定の回転/停止及び振り分けをするものである。
【0017】
(乾燥手段)
乾燥手段は、熱風によって洗濯物30を乾燥させるものであって、乾燥行程時に洗濯槽3内に温風を供給する乾燥用フアン15と、空気を加熱する乾燥用ヒータ17とを有している。
乾燥用フアン15は筐体1の後方上部に設置され、乾燥用フアン15のケーシング吐出口には乾燥用ヒータ17が設置されている。そして、水槽2の後部外壁に沿って立ち上がって上端が開口する除湿風路11が設置されており、水槽2の傾動に伴って傾動するものである。
乾燥用ヒータ17によって加熱された温風は、洗濯槽3内において洗濯物30の乾燥に供した後、脱水槽孔3Bを通過して、除湿風路11に排出され、ここで分岐弁14の切替えによって給水口13から給水された水によって冷却除湿された後再度、乾燥用ファン15によって乾燥フィルタ16を介して乾燥用ヒータ17に送られ循環する。
【0018】
(水槽の傾動動作)
水槽2を図8のように傾斜させる水槽2の傾動動作は各種の方法で行うことができる。例えば、水槽2を支えている後ろ側の吊り棒4を上下動させて行うことができる。また、回転モータ7、ピニオン及びラックを利用して、傾動支点を中心に図示しない傾動台を回転させることで、水槽2を傾斜させることもできる。なお、除湿風路11は、水槽2が直立状態のときには図1に示すように水槽2の上部に設けられた乾燥用ファン15とは切り離されているが,水槽2の傾動動作時には図8に示すように乾燥用ファン15に連通するように構成されている。
【0019】
次に、上記洗濯機の作用を説明する。この洗濯機は、洗い、すすぎ、脱水および乾燥を行うことが可能となっているものであり、その際、水槽2は行程および洗濯物30の重量に応じてその傾斜状態を決定できる。例えば、洗いやすすぎ行程では、洗濯物30の重量に応じて直立または傾斜に設定する。脱水行程では洗濯水が十分浸った洗濯物で重くなった脱水槽を高速回転させる必要があるため、モータ負荷の関係から水槽2は図1のように、直立状態とするのが好ましい。一方、乾燥行程では、洗濯物30の攪拌を促進させて乾燥効率を上げるために、通常、図8のように、水槽2を傾斜させた状態で行うのが好ましい。
【0020】
洗いまたはすすぎ行程では、水槽2に収容された洗濯槽3の内部に入れられた洗濯物30が、一緒に入れられた水とともにパルセータ9により攪拌されて洗浄される。その際、特に、洗剤を使用した洗い行程においては、除湿風路11の底部の隙間部分に泡が溜まることがある。しかし、洗濯槽3内の水が、洗濯槽3の脱水槽孔3Bおよび水槽2の細孔を介して除湿風路11との間を行き来して、水が除湿風路11を上から下へ流れるため、その水によって除湿風路11の底部の隙間部分に溜まった泡が除去されて、泡が蓄積することが防止される。
また、除湿板12の水槽2の貫通穴の形成領域と対向する領域にも開口が形成されているため、この開口から風路の外周側へも水が流入し、その部分に溜まった泡も流されて、泡の蓄積が防止される。
また、洗いまたはすすぎ行程では、パルセータ9の回転により水がポンプアップされ、洗濯槽3内の水位が変化するが、貫通穴が除湿風路11の高さ方向に沿って設けられているため、洗濯槽3内の水位にかかわらず、貫通穴を水が行き来して、除湿風路11の底部の消泡が実行される。
【0021】
洗いまたはすすぎ行程が終了すると、脱水行程に進む。脱水行程は前述したように、振動を抑制する観点から、水槽2を直立状態として行うのが好ましい。
【0022】
乾燥行程では、乾燥用ファン15の作用によって、洗濯槽3内の洗濯物30から放出された水分を含んだ空気を水槽3の底部の開口から排出し、除湿風路11の給気口から除湿風路11内に取り込む。そして、除湿風路11で除湿された空気を乾燥フィルタ16でフィルタリングし、乾燥用ヒータ17で加熱した後、その加熱空気を空気取入口から洗濯槽3内に導入して洗濯物30の乾燥に供するという、空気の循環を行っている。
このとき、除湿風路11内には、分岐弁14の切替により上方から冷却水が流下され、除湿板12の面上に沿って流れる。これにより、除湿風路11内で、上方に向かう湿潤空気と流下する冷却水の接触による熱交換(冷却除湿)が行われて、湿潤空気の除湿が進行する。
【0023】
(制御手段)
図9は、図1に示す洗濯機の動作を制御する制御手段の構成を説明するブロック図である。この洗濯機の制御手段110は、CPU130と、入力インターフェイス120と、出力インターフェイス140と、メモリ150と、クロック制御部160(タイマ170に接続されている)とを有している。入力インターフェイス120にはこれを介してCPU130に所定の信号を入力する運転コース設定スイッチ、電源スイッチなどの各種の操作スイッチ(図中、「…・SW]にて示す)や傾斜角度検出器が接続され、出力インターフェイス140には、CPU130からの所定の制御信号が出力される乾燥用フアン15やモータ(洗濯槽3の回転モータ7及び水槽2の傾動モータ等を総称する)やトルクセンサ18等が接続されている。
また、メモリ150には、運転コースのそれぞれの行程に対応して制御条件が記憶されている。そして、CPU130は、傾斜角度の決定や、決定した傾斜角度に傾動させる制御指令を、運転コースの各行程に応じて発している。
【0024】
(洗濯行程)
図10は標準コースを選んだ場合の洗濯行程を示すフローチャートである。
また、図11は節水コースを選んだ場合の洗濯行程を示すフローチャートである。
また、図12は大容量の洗濯物と小容量の洗濯物における各水流と、図10の標準コースおよび図11の節水コースで共通に行われる運転の時間比率および傾斜角度との関係を示す表である。急斜面による洗濯に対応するパルセータの回転を右回転、緩斜面による洗濯に対応するパルセータの回転を左回転とした場合、図12の回転時間は、左回転のOFF時間を1とした場合の比率を示している。
【0025】
(標準コース洗濯行程)
まず標準コースを選んだ場合の洗濯行程の動作について図10および図12に基づいて説明する。
ユーザが図9の電源スイッチをON操作して洗濯機に電源が投入されると(ステップS101)、洗濯機の制御手段110は、洗濯槽3の傾斜角度が洗濯物30の投入が容易な角度である例えば20度か否かを調べる(ステップS102)。洗濯槽3の傾斜角度がすでに20度であればその傾斜を維持したまま、スタートスイッチの投入を待つ。傾斜角度が20度以外であれば、洗濯槽3を20度に傾動し(ステップS103)、傾動終了後に停止して扉スタートスイッチの投入を待つ。次に、ユーザは扉10を開けて、洗濯物30を洗濯槽3に投入する(ステップS104)。
【0026】
次に、ユーザは標準コースを設定して、スタートスイッチをON操作する(ステップS105)。洗濯機の制御手段110は、スタートスイッチONの信号を入力すると、トルクセンサ18を用いて公知の方法により、負荷量(投入されている洗濯物30の重量)Xを検知する。すなわち、回転モータ7を起動してパルセータ9を一定量だけ回転させた後、回転モータ7を停止して、停止した後のパルセータ9の惰性回転量で洗濯物30の重量(「負荷量」に換算可能な値)を検知する(ステップS106)。
【0027】
次に、ユーザは洗剤を洗剤ケース20に投入して(ステップS107)扉10を閉じる。すると、洗濯機の制御手段110は、洗濯槽3を洗濯可能な15度に傾動させた(ステップS108)後、負荷量に基づいて、注水量を計算などにより決定し、検知した洗濯物30の重量Xが約6kg以上か否かを調べ(ステップS109)、Xが約6kg未満であれば、洗濯中に洗濯水が洗濯槽3の外部へ洩れないようにするため図8の蛇腹19を下ろした(ステップS10A)後、洗濯槽をその傾斜角度を15度に維持した状態で回転させながら洗濯物30全体に一様に水を注いで十分な水量を浸透させる回転給水を行い(ステップS10B)、さらに洗濯槽3の傾斜角度を15度に維持した状態で通常の「洗い」を行なった(ステップS10C)後、洗濯槽3の傾斜角度を15度に維持した状態で「強洗い(小容量)」を実行する(ステップS10D)。「強洗い(小容量)」が終了すると、制御手段110は、蛇腹を上げさせ(ステップS10E)、さらにモータ11を制御して洗濯槽3の傾斜角度を0度、すなわち、洗濯槽3を傾斜させず直立させ(ステップS10F)、ステップS10Jに進む。
一方、ステップS109において、検知した洗濯物30の重量が約6kg以上の場合には、制御手段110は、洗濯中のトルクが少なくなるように洗濯槽3の傾斜角度を0度、すなわち、洗濯槽3を傾斜させず直立させた状態で回転給水を行って洗濯物30に浸透するのに十分な水量を確保すると共に、洗濯中に洗濯槽3内の水が零れないようにする(ステップS10G)。そして、洗濯槽3を直立させた状態で洗いを行なった(ステップS10H)後、洗濯槽3を直立させた状態で強洗い(大容量)を実行する(ステップS10I)。強洗いが終了すると、ステップS10Jに進む。
【0028】
ステップS10Jでは、洗濯機の制御手段110は洗濯槽3を直立させた状態でほぐし運転を行い、この後脱水(ステップS10K)、すすぎ(ステップS10L)、脱水(ステップS10M)の順に運転を行う。次に、制御手段110は、乾燥スイッチが設定されているか否かを調べる(ステップS10N)。乾燥が設定されていれば、乾燥運転を行なった(ステップS10O)後、洗濯槽3をユーザが洗濯物を取り出し易い角度である20度に傾動して(ステップS10P)運転を終了する。乾燥が設定されていなければ、洗濯槽3を20度に傾動して(ステップS10Q)運転を終了する。
【0029】
なお、洗濯機は以下の特徴的な動作を行うことで、以下の効果を奏することができる。
(1)電源投入時、洗濯槽は自動的に洗濯物を収納し易い角度(20度)に傾動するので、ユーザは作業し易くなる。
(2)洗濯機の制御手段は、洗濯槽の傾斜角度変更時は、ロック機構を制御して洗濯機の扉が開かないようにロックをかけさせるので、安全を確保できる。
(3)洗濯機の制御手段は、上記傾斜角度を変更時は、ロック機構を制御して運転設定による運転スタートができないようにロックをかけさせるため、ユーザは、投入し易い傾斜角度で操作でき、確実にしかも安全に洗濯物の投入または取り出すことができ、さらに、負荷量検知において高精度を確保できる。
(4)槽傾斜を洗浄、乾燥の傾斜に変更すると同時に洗剤量を表示するので、洗剤を投入口に入れることができ、また洗剤投入口は洗濯槽3とは別にあるため、洗濯槽稼動中も洗剤投入は可能であり、時間の短縮を図ることができる。
(5)容量が少ないとき(15度で洗いを実施するとき)洗いの後に強洗いを実施するが、パルセータ9の急斜面による洗濯に対応するパルセータ9の回転を右旋回、緩斜面による洗濯に対応するパルセータ9の回転を左旋回とした時、強洗い(小容量)右旋回の回転量を長くまたは同等とすることで、洗濯物に機械力を与えることができ、洗浄力を上げることができる。また、左旋回中心でやさしい洗いをメインとすることで、洗濯物の傷みと絡みを抑え、消費電力を抑えることができる。
(6)最後に強洗いを実施することで洗浄力を確保、工程の時間短縮も可能となる。
即ち、容量が多いとき(0度で洗いを実施するとき)洗いの後に強洗いを実施するが、強洗い(大容量)は一方の回転量を極端に長くし、洗濯物を固まりとしてひっくり返すので、水が少なく洗濯物の量が多くても水面より上に出ている洗濯物もしっかり洗える。
脱水工程前に槽傾斜0度でほぐしを実施し、15度でほぐしを実施し、排水すると洗濯物が斜めに固まり,脱水工程時にアンバランスになり危険であるが、この問題を解消できる。
【0030】
(節水コース洗濯行程)
次に、節水コースを選んだ場合の洗濯行程の動作について図11および図12に基づいて説明する。
ユーザが図9の電源スイッチをON操作して洗濯機に電源が投入されると(ステップS111)、洗濯機の制御手段110は、洗濯槽3の傾斜角度が洗濯物30の投入が容易な角度である例えば20度か否かを調べる(ステップS112)。洗濯槽3の傾斜角度がすでに20度であればその傾斜を維持したまま、スタートスイッチの投入を待つ。傾斜角度が20度以外であれば、洗濯槽3を20度に傾動し(ステップS113)、傾動終了後に停止して扉スタートスイッチの投入を待つ。次に、ユーザは扉10を開けて、洗濯物30を洗濯槽3に投入する(ステップS114)。
【0031】
次に、ユーザは節水コースを設定して、スタートスイッチをON操作する(ステップS115)。洗濯機の制御手段110は、スタートスイッチON信号を入力すると、トルクセンサ18を用いて公知の方法により、負荷量(投入されている洗濯物30の重量)Xを検知する。すなわち、回転モータ7を起動してパルセータ9を一定量だけ回転させた後、回転モータ7を停止して、停止した後のパルセータ9の惰性回転量で洗濯物30の重量(「負荷量」に換算可能な値)を検知する(ステップS116)。
【0032】
次に、ユーザは洗剤を洗剤ケース20に投入して(ステップS117)扉10を閉じる。すると、洗濯機の制御手段110は、洗濯槽3を一旦全容量で洗濯可能な15度に傾動させた(ステップS118)後、負荷量に基づいて、注水量を計算などにより決定し、洗濯中に洗濯水が洗濯槽3の外部へ洩れないようにするため図8の蛇腹19を下ろした(ステップS119)後、洗濯槽3をその傾斜角度を15度に維持した状態で回転させながら洗濯物30全体に一様に水を注いで十分な水量を浸透させる回転給水を行う(ステップS11A)。次に、洗濯槽3をその傾斜角度を15度に維持したまま約50rpmで回転させて洗う槽回転洗いを実行する(ステップS11B)。これにより、洗濯物(特に洗濯槽内の外側に配置された洗濯物)30に水分を浸透させることができる。次に、制御手段110は、さらにパルセータ9を旋回させて通常の「洗い」を行なう(ステップS11C)。この「洗い」は、洗濯槽3の傾斜角度を15度に維持したままで水量を節約して行うが、傾斜の手前側は水位が高くなっているので、水が少なくても洗濯物30に水を浸透させることができる。
「洗い」が終了すると、制御手段110は、蛇腹を上げさせ(ステップS11D)、さらにモータ11を制御して洗濯槽3の傾斜角度を0度、すなわち、洗濯槽3を傾斜させず直立させ(ステップS11E)、この直立状態を維持したまま「ほぐし」(ステップS11F)、「脱水」(ステップS11G)、「すすぎ」(ステップS11H)、「脱水」(ステップS11I)の順に運転を行う。次に、制御手段110は、乾燥スイッチが設定されているか調べる(ステップS11J)。乾燥が設定されていれば、「乾燥運転」を行なった(ステップS11K)後、洗濯物を取り出し易いように洗濯槽3を20度に傾動して(ステップS11L)運転を終了する。乾燥が設定されていなければ、洗濯槽3を20度に傾動して(ステップS11M)運転を終了する。
【0033】
なお、洗濯機は以下の特徴的な動作を行うことで、以下の効果を奏することができる。
(1)節水コースでは洗濯槽の傾斜角度が15度で「洗い」を実施するため、傾斜の手前側は水位が高くなっているので、水が少なくても洗濯物に水を浸透させることができる。
(2)槽回転洗い(パルセータを使う「洗い」工程前に洗濯槽を50rpmでゆっくり回転させる)をするので、洗濯物(とくに槽内の外側に配置された洗濯物)に水分を浸透させることができる。
【0034】
(洗濯機の制御)
以下、本発明に係る洗濯行程の各実施の形態について説明する。
実施の形態1.
図13は、6kg以上の重い洗濯物30を洗濯する場合(例えば9kg定格のトルクをかけた場合)のパルセータON時間(単位:秒)と1周期当たりのトルク(急斜面による洗濯に対応するパルセータの回転を右旋回、緩斜面による洗濯に対応するパルセータの回転を左旋回とした場合の左旋回のトルクを1とした場合の右旋回トルクの比率)との関係を示すグラフである。
また、図14は、本実施の形態1におけるパルセータを用いた洗濯行程における制御手段110の動作を示すフローチャートである。
【0035】
次に、本実施の形態1の動作を、図9〜図14を用いて説明する。
洗濯時には、洗濯槽の回転に同期させてパルセータを「右旋回→休み→左旋回→休み」の順序で繰り返し実行させ、「右旋回」、「左旋回」、「休み」の各動作をそれぞれ異なる適当な時間(数秒程度)実行する。この場合、右向きにパルセータ9を旋回させることで急斜面による洗濯が行われるが、パルセータ9によって洗濯物30は押されるので時間の経過とともにねじれや絡みつきが発生する。そこで、この後一旦パルセータ9を休止させた上で逆の方向へ旋回させることで緩斜面によるほぐしを兼ねた洗濯が行われる。また、同じ向きによる洗濯時間が長すぎると洗濯物30のねじれや絡みつきが発生するので、適当な時間経過したら再び一旦パルセータ9を休止させた上で逆の方向へ旋回させることにより急斜面によるほぐしを兼ねた洗濯が行われる。以上の動作を繰り返し行うことで、ねじれや絡みつきがない洗濯が可能になる。
【0036】
パルセータ9の急斜面による洗濯を例えばパルセータ9の右旋回によって行い、緩斜面による洗濯を逆の左旋回によって行うとした場合、図13のグラフより、洗浄に際してバランスの関係上、トルクの強い右旋回時は、短時間運転、左旋回時は長時間運転とし、1周期のトルクが少ないON時間にて基本洗いを実行することが好ましい。この場合、トルク積算値、すなわち電力量が一致するように制御する。
そこで、この実施の形態1では、このような場合について説明する。
図13では、左旋回すると、洗濯物30を上方へ跳ね上げるため時間とともにトルクが減っていく。そこで、トルクが最小になったら基本洗いを行うように制御する。この場合には、小さいトルクで洗濯を行うため、洗濯物30のねじれや絡みつきが発生しにくい。従って、左旋回の洗濯時間を多少長くしても問題がない。一方、右旋回の場合には、衣類を水平方向に押すことになり、時間とともに洗濯物30の抵抗によりトルクが増大していき、洗濯物30のねじれや絡みつきが発生し易い。従って、右旋回の洗濯時間を短くするのが好ましい。また、トルクが小さい洗濯時間をトルクが大きい洗濯時間より長くしたので、回転モータ7にかかる負荷が少なくなり、スムーズな洗濯が可能になる。
【0037】
次に、制御手段の動作を、図14を用いて説明する。
制御手段110は、洗濯する前に、図13に示される右トルクと左トルクとの関係から予め、右方向の回転時間T1と左方向の回転時間T2を算出して内部のメモリ150に保存しておく。
そして、洗濯行程に入ったら、回転モータ7を起動して時間T1だけパルセータ9を右旋回させて洗濯する(ステップS141)、次に所定時間T2だけモータ11を停止させてパルセータ9を休止させる(ステップS142)。次に回転モータ7を逆回転させてパルセータ9を時間T3だけ左旋回させて洗濯する(ステップS143)。次に所定時間T2だけ回転モータ7を停止させてパルセータ9を休止させる(ステップS144)。そして、ステップS145において、洗濯行程が終了したか否かを判定し、まだ終了していない場合にはステップS141に戻り、上記洗濯行程を再開する。そして、以上の動作を洗濯行程が終了するまで、繰り返し実行する。ステップS145において、洗濯行程が終了したらこの処理フローを終了して洗濯行程の次の行程に進む。
【0038】
以上、この実施の形態1によれば、傾斜面を有するベース部と、その傾斜面から突出した翼部と、一端が翼部の延設された頂部に接続され他端がベース部に接続され、傾斜が相違する左右壁面と、を有するパルセータを用いるので、少ない水量で洗濯物30のねじれや絡みつきがない洗濯が可能である。
また、パルセータの急斜面による洗濯時間を緩斜面による洗濯時間よりも短くし、緩斜面による洗濯時間を急斜面による洗濯時間よりも長くしたので、少ないトルクで長時間洗濯することが可能になり省電力が図れる。
【0039】
なお、上記時間T1〜T4は過去の実績データを基に洗濯物30のねじれ・絡みつき具合や回転モータ7の負荷などを考慮して最適な値を公知の技術を用いて設定する。
また、上記の例では、パルセータ9の急斜面による洗濯をパルセータ9の右旋回によって行い、緩斜面による洗濯を逆の左旋回によって行う場合について説明したが、これに限らず、パルセータの急斜面による洗濯をパルセータの左旋回によって行い、緩斜面による洗濯を逆の右旋回によって行ってもよい。
【0040】
実施の形態2.
この実施の形態2では、左右の回転トルクが略同じになるようにパルセータのON時間を設定する場合について説明する。
図9と図13は、この実施の形態2でも用いられる。
図15はこの実施の形態2におけるパルセータを用いた洗濯における制御手段110の動作を示すフローチャートである。
次に、本実施の形態2の動作を、図9〜図13、図15を用いて説明する。
【0041】
パルセータ9の急斜面による洗濯に対応するパルセータ9の回転を右旋回、緩斜面による洗濯に対応するパルセータ9の回転を左旋回とした時、制御手段110は、洗濯する前に、右方向の回転時間T1を設定して内部のメモリ150に保存しておく。
そして、洗濯行程に入ったら、回転モータ7を起動して時間T1だけパルセータ9を右旋回させて洗濯する(ステップS151)。次に、回転モータ7の回転軸8などに取り付けられたトルク計測手段21により右旋回時の回転モータ7のトルクを計測して、この計測された右旋回のトルクを内蔵メモリ150にW1として記憶する(ステップS152)。次に、右旋回のトルクW1(初期値はゼロ)を累積、すなわち積算して内蔵メモリ150にW1として記憶する(ステップS153)。次に、所定時間T2だけ回転モータ7を停止させてパルセータ9を休止させる(ステップS154)。次に、回転モータ7を逆回転させて時間T3だけパルセータ9を左旋回させて洗濯する(ステップS155)。次に、トルク計測手段21により左旋回時のトルクを計測し、計測された左旋回のトルクを内蔵メモリ150にW2として記憶する(ステップS156)。次に、左旋回のトルクW2(初期値はゼロ)を積算して内蔵メモリ150にW2として記憶する(ステップS157)。次に、所定時間T4だけ回転モータ7を停止させてパルセータ9を休止させる(ステップS158)。次に、積算された左旋回のトルクW2を積算された右旋回のトルクW1と比較する(ステップS159)。比較の結果、左旋回のトルク積算値W2が右旋回回転のトルク積算値W1未満の間はステップS155に戻って左旋回による洗濯を続行し、左旋回のトルク積算値W2が右旋回のトルク積算値W1以上になったら洗濯行程が終了したか否かを判定する(ステップS15A)。洗濯行程が終了していない場合には、ステップS151に戻って、洗濯を続行する。ステップS15Aにおいて、洗濯行程が終了したらこの処理フローを終了して洗濯行程の次の行程に進む。
【0042】
以上により、この実施の形態2によれば、左右の旋回トルクがバランスした洗濯を実行できるので、洗濯物30のねじれや絡みつきが少ない洗濯が可能である。
【0043】
実施の形態3.
実施の形態2では、左右のトルクがバランスするように洗濯する形態について説明したが、この実施の形態3では、急斜面による洗濯時間を時間の経過とともに減少させていくことでトータル洗濯時間の短縮を図る場合について説明する。
図9と図13は、この実施の形態3でも用いられる。
図16はこの実施の形態3におけるパルセータを用いた洗濯における制御手段110の動作を示すフローチャートである。
次に、本実施の形態3の動作を、図9〜図13、図16を用いて説明する。
洗濯物30は洗濯回数が増えていくに従って、どんどんきれいになっていく。そこで、強いトルクにより洗濯に大きく寄与する、急斜面による洗濯の時間を時間の経過とともに減少させていっても洗濯能力は維持できる。この実施の形態3では、このような場合について説明する。
【0044】
パルセータ9の急斜面による洗濯に対応するパルセータ9の回転を右旋回、緩斜面による洗濯に対応するパルセータ9の回転を左旋回とした時、制御手段110は、洗濯する前にパルセータ9の右旋回の回転時間T1を設定して内部のメモリ150に保存しておく。
そして、洗濯行程に入ったら、制御手段110は、回転モータ7を起動して時間T1だけパルセータ9を右旋回させて洗濯する(ステップS161)。次に所定時間T2だけ回転モータ7を停止させてパルセータ9を休止させる(ステップS162)。次に、回転モータ7を逆回転させて時間T3だけパルセータ9を左旋回させて洗濯する(ステップS163)。次に所定時間T4だけ回転モータ7を停止させてパルセータ9を休止させる(ステップS164)。次に右旋回の時間T1を閾値αと比較し(ステップS165)、右旋回の時間T1が閾値αより大きい間はT1から所定の小さい値(刻み値)βを減算する(ステップS166)。一方、ステップS165において、時間T1が閾値αより小さくなったらこれ以上少ない時間で洗濯しても意味がないため、減算をやめてステップS167へ進む。次に、ステップS167において、洗濯行程が終了したか否かを判定する。洗濯行程が終了していない場合には、ステップS161に戻って、洗濯を続行する。ステップS167において、洗濯行程が終了したらこの処理フローを終了して洗濯行程の次の行程に進む。
【0045】
以上により、この実施の形態3によれば、実施の形態1の効果に加えて、洗浄効果を維持しつつトータルな洗濯時間を減らせるので、時間の無駄使いをなくすとともに省電力を図れる。また、洗濯物の生地も傷みにくい。
【0046】
実施の形態4.
この実施の形態4では、実施の形態2以上に左右のON時間差をつけることによって、敢えて洗濯物30に偏った力を加え、この洗濯物30を塊としてひっくり返す場合について説明する。
図9と図13は、この実施の形態4でも用いられる。
図17は、この実施の形態4の動作原理を説明するための概略説明図である。
図18はこの実施の形態4におけるパルセータを用いた洗濯における制御手段110の動作を示すフローチャートである。
次に、本実施の形態4の動作を、図9〜図13、図17〜図18を用いて説明する。
【0047】
パルセータ9の急斜面による洗濯に対応するパルセータ9の回転を右旋回、緩斜面による洗濯に対応するパルセータ9の回転を左旋回とした時、制御手段110は、洗濯する前に、右方向の旋回時間T1を設定して内部のメモリ150に保存しておく。
図17に示すように、左旋回を実施の形態2よりも多く実行することで、洗濯物30は周囲の洗濯ドラムとの摩擦や水の抵抗などにより少しずつ回転していく。そして、やがて重心がずれて洗濯物30はコロッと自重によって転倒する場合がある。この場合、洗濯物30が別の位置に移動するので、洗濯物30の転倒前後でのトルクの変化が急激になる。そこで、制御手段10はトルクセンサ18を用いてトルクを計測し、前回計測したトルク値と比較して、偏差が所定値より小さい場合、すなわちさほど大きな変化がない場合には、パルセータ9の右旋回を続行し、所定値より大きな変化があった場合には洗濯物30の転倒が発生したと判断して、今度はパルセータ9を左旋回する。この場合、制御手段10は右回転時のトルク積算値と、左回転時のトルクとに基づいて左旋回の回転時間を換算する。但し、洗濯物30がなかなか転倒しない場合もあり、この状態で左回転ばかり度を超して続行するとトルクが異常に増大して故障の原因になる恐れもあるので、制御手段10は上限値を決めておき、回転数がこの上限値に達したら洗濯物30に転倒が発生しなくても自動的に左旋回で洗濯するように回転モータ7を駆動制御する。
【0048】
次に、この実施の形態4における制御手段110の動作について図18を用いて説明する。
パルセータ9の急斜面による洗濯に対応するパルセータ9の回転を右旋回、緩斜面による洗濯に対応するパルセータ9の回転を左旋回とした時、制御手段110は、洗濯する前に、左旋回の時間T1を設定して内部のメモリ150に保存しておく。
そして、洗濯行程に入ったら、制御手段110は、初期化を行う。ここでは、後述の左旋回の回数を数えるカウンタの値をゼロにクリアしておく(ステップS181)。次に、制御手段10は回転モータ7を起動して予め設定した時間T1だけパルセータ9を左旋回させて洗濯する(ステップS182)。次に、制御手段110は、回転モータ7の回転軸8などに取り付けられたトルクセンサ18により左旋回時のトルクを計測して、この計測された左旋回のトルクを内蔵メモリ150にW1として記憶する(ステップS183)。次に、制御手段110は所定時間T2だけ回転モータ7を停止させてパルセータ9を休止させる(ステップS184)。次に、左旋回の回数(初期値はゼロ)を1つカウントアップし(ステップS185)、この数が上限値に達したか否かを調べる(ステップS186)。上限値に達していなければ、まだトルクに余裕があるので、ステップS187に進み、上限値に達したら、これ以上続行すると危険なため、左旋回から右旋回に移行するためステップS188に進む。ステップS187では、メモリ150に保存しておいた今回の左旋回のトルクと前回の左旋回のトルクとの偏差を調べ、トルクに所定値より大きな変化があったか否かを調べる。左旋回のトルクの変化が所定値以上に達していなければ、ステップS182に戻り、大きな変化があるまで左旋回による洗濯を続行する。一方、ステップS187において左旋回のトルクの変化が所定値以上に達したら、制御手段110は洗濯物30が転倒したと判断し、今度は右旋回に移行するために左旋回のトルク積算値(左旋回のトルクとその回数との乗算結果)と右旋回のトルクから、右旋回の時間T3を算出する(ステップS188)。この場合、右旋回のトルクは左旋回のそれよりも強いので、右旋回時間は、左旋回時間に比べてその分短くなる。次に、制御手段110は回転モータ7を起動して算出された時間T3だけパルセータ9を右旋回させて洗濯する(ステップS189)。次に、制御手段110は所定時間T4だけ回転モータ7を停止させてパルセータ9を休止させる(ステップS18A)。次に、制御手段110は洗濯行程が終了したか否かを判定し(ステップS18B)、洗濯行程が終了していない場合には、ステップS182に戻って、洗濯を続行する。ステップS18Bにおいて、洗濯行程が終了したらこの処理フローを終了して洗濯行程の次の行程に進む。
【0049】
以上により、この実施の形態3によれば、実施の形態1の効果に加え、パルセータによって洗濯物30を転倒するので、さらにねじれや絡みつきが少なくなり洗濯性能が向上する。
【0050】
なお、上記の例ではトルクを計測したが、これに限らない。例えば、振動検知手段を用いて、パルセータ回転中に所定値以上の振動を検出したら、洗濯物30の転倒が発生したと判断する方法でもよい。この場合も上記と同様の効果を奏する。
【0051】
実施の形態5.
以上の実施の形態では、洗濯物30の重量が6kgより重い(9kg定格)場合を前提として説明してきた。この実施の形態5では、洗濯物30の重量が6kg以下の相対的に軽い場合について説明する。
洗濯物30の重量が6kg以下の場合にはトルクに影響が少ないので、パルセータの急斜面を利用した洗濯時間をより多くすることが可能である。本実施の形態5ではこの場合について説明する。
【0052】
図9と図13は、この実施の形態5でも用いられる。
図19はこの実施の形態5におけるパルセータを用いた洗濯における制御手段110の動作を示すフローチャートである。
次に、本実施の形態5の動作を、図9〜図13および図19を用いて説明する。
【0053】
パルセータ9の急斜面による洗濯に対応するパルセータ9の回転を右旋回、緩斜面による洗濯に対応するパルセータ9の回転を左旋回とした時、制御手段110は、洗濯する前に、右旋回の時間T1を設定して内部のメモリ150に保存しておく。
そして、洗濯行程に入ったら、制御手段110は、回転モータ7を起動して時間T1だけパルセータ9を左旋回させて洗濯させる(ステップS191)。次に、制御手段110は、回転モータ7の回転軸8などに取り付けられたトルクセンサ18により左旋回時の回転モータ7のトルクを計測して、この計測された左旋回のトルクを内蔵メモリ150にW1として記憶する(ステップS192)。次に、制御手段110は、左旋回のトルクW1(初期値はゼロ)を積算して内蔵メモリ150にW1として記憶する(ステップS193)。次に、制御手段110は、所定時間T2だけ回転モータ7を停止させてパルセータ9を休止させる(ステップS194)。次に、制御手段110は、回転モータ7を逆回転させて時間T3だけパルセータ9を右旋回させて洗濯する(ステップS195)。次に、制御手段110は、トルクセンサ18により右旋回のトルクを計測し、計測された右旋回のトルクを内蔵メモリ150にW2として記憶する(ステップS196)。次に、制御手段110は、右旋回のトルクW2(初期値はゼロ)を積算して内蔵メモリ150にW2として記憶する(ステップS197)。次に、制御手段110は、所定時間T4だけ回転モータ7を停止させてパルセータ9を休止させる(ステップS198)。次に、積算された右旋回のトルクW2を積算された左旋回のトルクW1と比較する(ステップS199)。比較の結果、右旋回のトルクの積算値W2が左旋回のトルク積算値W1未満の間はステップS195に戻って右旋回による洗濯を続行し、右旋回のトルク積算値W2が左旋回のトルク積算値W1+α以上になったら、制御手段110は洗濯行程が終了したか否かを判定する(ステップS19A)。ここで、αは、緩斜面による洗濯時間である右回転時間の増分であり、洗濯物30の重量が6kg以下の場合にトルクに影響が少ないので、右回転時間を多少増やしても問題がない程度の値を予め設定しておく。ステップS19Aにおいて、洗濯行程が終了していない場合には、制御手段110は、ステップS191に戻って、洗濯を続行させる。ステップS19Aにおいて、洗濯行程が終了したらこの処理フローを終了して洗濯行程の次の行程に進ませる。
【0054】
以上により、この実施の形態5によれば、左右の旋回トルクがバランスした洗濯を実行できるので、洗濯物のねじれや絡みつきが少ない洗濯が可能である。
【0055】
なお、上記の例では、増分αを加えたが、これに限らず、例えば1以上の値を乗算しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態に係る洗濯機の側断面図である。
【図2】図1の洗濯機に使用されているパルセータを示す斜視図である。
【図3】図2のパルセータの側面図である。
【図4】図2のパルセータの変形例を示す翼部に直交するラインにおける断面図である。
【図5】パルセータの上面を示す上面図である。
【図6】パルセータの急斜面と緩斜面の作用説明図である。
【図7】図2のパルセータの裏面(底面)側詳細図である。
【図8】水槽を傾斜させた状態の本発明の実施の形態に係る洗濯機の側断面図である。
【図9】図1に示す洗濯機における制御手段の構成を説明するブロック図である。
【図10】標準コースを選んだ場合の洗濯行程を示すフローチャートである。
【図11】節水コースを選んだ場合の洗濯行程を示すフローチャートである。
【図12】大容量の洗濯物と小容量の洗濯物における各水流と、標準コースおよび節水コースで共通に行われる運転の時間比率および傾斜角度との関係を示す表である。
【図13】重い洗濯物を洗濯する場合のパルセータON時間(単位:秒)と1周期当たりのトルクとの関係を示すグラフである。
【図14】本発明の実施の形態1におけるパルセータを用いた洗濯行程における制御手段110の動作を示すフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態2におけるパルセータを用いた洗濯行程における制御手段110の動作を示すフローチャートである。
【図16】本発明の実施の形態3におけるパルセータを用いた洗濯行程における制御手段110の動作を示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施の形態4におけるパルセータを用いた洗濯行程における制御手段110の動作を示すフローチャートである。
【図18】本発明の実施の形態5におけるパルセータを用いた洗濯行程における制御手段110の動作を示すフローチャートである。
【図19】本発明の実施の形態6におけるパルセータを用いた洗濯行程における制御手段110の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
1 筐体、2 水槽、3 洗濯槽、3A 脱水槽側板、3B 脱水槽孔、3C 脱水槽底板、4 吊棒、4A 吊り棒可動部、5 吊り板、6 流体バランサ、7 回転モータ、8 回転軸、9 パルセータ、9A パルセータの表面、9B パルセータの裏面、9a ベース部、9b 翼部、9c 水抜き穴、9k ポンプアップ用羽根、9m リブ、9n リブ、10 扉、11 除湿風路、12 除湿板、13 給水口、14 分岐弁、15 乾燥用フアン、16 乾燥フィルタ、17 乾燥用ヒ一夕、18 トルクセンサ、19 蛇腹、20 洗剤ケース、21 ロック機構、30 洗濯物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯機本体の底部に配された回転体であるパルセータと、
このパルセータの回転を制御する制御手段と、を備え、
前記パルセータは、上面の一端側を低くしそれに対向する上面の他端側を高くしたことにより表面が傾斜面に形成されたベース部と、このベース部の傾斜面に立設し前記傾斜面の傾き方向に沿って延びる翼部とを備え、前記ベース部をさらに前記翼部で隔てられその縁部からまたは表面の前記翼部と平行な所定位置から前記翼部の方向に向かって異なる勾配で高くなる傾斜面に形成された両側面を有するように変形することで構成され、
前記両側面は、所定値より緩やかな勾配をもつ緩斜面と、この緩斜面より急な勾配をもつ急斜面とから成り、
前記制御手段は、前記緩斜面での洗濯に対応する正転、第1の休止、前記急斜面での洗濯に対応する逆転、第2の休止の順序で構成される洗濯周期毎に、前記正転と逆転を交互に行わせるとともに前記正転の時間を前記逆転の時間よりも長くなるように前記パルセータを制御することを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記制御手段は、前記パルセータの正転のトルクの積算値と、逆転のトルクの積算値とが略同じになるように前記パルセータの正転および逆転を制御することを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記パルセータの正転の時間を時間の経過とともに、徐々に少なくすることを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項4】
前記パルセータを駆動する駆動手段と、
この駆動手段のトルクを計測するトルク計測手段と、を備え、
前記制御手段は、前記洗濯周期毎に、前記正転または前記正転と前記第1の休止の動作を連続的に行わせ、前記トルク計測手段によって計測されるトルクの変化が所定値よりも大きい場合に前記パルセータの回転方向を逆に変えさせることを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項5】
前記制御手段は、洗濯物の重量が所定値よりも軽い場合には、各洗濯周期において前記パルセータの逆転の時間を、前記洗濯物の重量が重い場合よりも相対的に少なくすることを特徴とする請求項1または請求項4に記載の洗濯機。
【請求項6】
前記制御手段は、洗濯物の重量が所定値よりも軽い場合には、各洗濯周期において前記パルセータの逆転の時間を、前記パルセータの正転の時間よりも長くまたは同等とすることを特徴とする請求項1または請求項4に記載の洗濯機。
【請求項7】
洗濯槽を傾斜させる傾動手段を備え、
前記制御手段は、標準コースでの運転において洗濯物の容量が所定値よりも少ない場合には、洗濯槽を回転させながら給水を行う回転給水時、通常の洗い時、前記正転の時間または回数と前記逆転のそれとの偏差が前記通常の洗い時よりもさらに大きい強洗い時の少なくとも一つにおいて前記洗濯槽の傾斜角度が所定の値になるように前記傾動手段を制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項8】
洗濯槽を傾斜させる傾動手段を備え、
前記制御手段は、標準コースでの運転において洗濯物の容量が所定値よりも多い場合には、洗濯槽を回転させながら給水を行う回転給水時、通常の洗い時、前記正転の時間または回数と前記逆転のそれとの偏差が前記通常の洗い時よりもさらに大きい強洗い時の少なくとも一つにおいて前記洗濯槽が略直立するように前記傾動手段を制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項9】
前記制御手段は、通常の洗いの後に前記正転の時間または回数を前記逆転のそれよりもさらに大きくした強洗いを引き続き実行させるように前記パルセータを制御することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の洗濯機。
【請求項10】
洗濯槽を傾斜させる傾動手段を備え、
前記制御手段は、節水コースでの運転の場合には、洗濯槽を回転させながら給水を行う回転給水時、洗濯槽を所定の速度で回転させながら洗いを行う槽回転洗い時、通常の洗い時の少なくとも一つにおいて前記洗濯槽の傾斜角度が所定の値になるように前記傾動手段を制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項11】
洗濯槽から洗濯水が外部へ漏れるのを防ぐ蛇腹を備え、
前記制御手段は、前記回転給水、前記通常の洗い、前記強洗いの少なくとも一つにおいて、事前に前記蛇腹を下ろさせることを特徴とする請求項7または請求項10に記載の洗濯機。
【請求項12】
前記制御手段は、ほぐし、脱水、すすぎの少なくとも一つの運転時には、前記洗濯槽が略直立するように前記傾動手段を制御することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項13】
前記制御手段は、乾燥運転時には、前記洗濯槽の傾斜角度が所定の値になるように前記傾動手段を制御することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項14】
前記制御手段は、電源投入時、洗濯槽の傾斜角度が所定の角度以外の場合には、前記所定の角度になるように傾動させることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項15】
洗濯機の扉をロックするロック機構を備え、
前記制御手段は、前記洗濯槽の傾斜角度変更時には、前記ロック機構を制御して前記が開かないようにロックをかけさせることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項16】
洗濯機の扉をロックするロック機構を備え、
洗濯機の制御手段は、上記傾斜角度を変更時は、ロック機構を制御して運転設定による運転スタートができないようにロックをかけさせることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項17】
洗剤投入口は、洗濯槽とは別に設けられたことを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項18】
洗濯槽を傾斜させる傾動手段を備え、前記洗濯槽を傾斜させて少量の水で洗濯を行なうコースを備えたことを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−272170(P2008−272170A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118489(P2007−118489)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000004422)日本建鐵株式会社 (152)
【Fターム(参考)】