説明

活性エネルギー線硬化型組成物

【課題】実用上、曲げ、延伸加工性能を要求されるプラスチック基材への密着、加工性に優れ、且つ形成される膜の硬度も優れる印刷物を得ることのできる活性エネルギー線硬化型組成物の提供。
【解決手段】モノマー全体に対して、フェノキシエチルアクリレート63.0重量%〜94.9重量%、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド0.1重量%〜30重量%および多官能モノマー1重量%〜7.0重量%からなる重合性モノマー及び光重合開始剤を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工性に優れ、且つ高硬度、美粧性、密着性に優れるインキジェット用活性エネルギー線硬化型インキに関する。本発明のインキは、加工による美粧性を求められる内装、外装印刷用途や、CD、DVDなどへの印刷用途や、フレキシブル基材への印刷などを中心とした非浸透性基材への印刷に適している。
【背景技術】
【0002】
従来、活性エネルギー線硬化型組成物は、オフセット、シルクスクリーン、トップコート剤などに供給、使用されてきたが、乾燥工程を簡略化によるコストダウンや、環境対応として溶剤の揮発量低減などのメリットから近年使用量が増加している。中でもインクジェットインキとしては水系と溶剤系が多く使用されており各々の特徴に応じて用途が使い分けられているが、工業用としては受容基材に制限があること、耐水性が比較的悪い点、インキの乾燥エネルギーが大きい、また、乾燥によるヘッドへのインキ成分付着などの問題点を有し、比較的揮発性の低い活性エネルギー線硬化型インキへの置き換えを期待されている。
【0003】
しかし、従来の活性エネルギー硬化型組成物による硬化膜は、固いがもろい特性を示す場合が多い。また、単純にTgを室温以下に下げた硬化膜は、曲げなどの可撓性には優れる反面、極度に硬度が低下することに由来する耐擦過性、耐摩擦性が低下するため、製造工程上のハンドリング、または、製品自身の品質として使用が困難となる。いずれの活性エネルギー線硬化膜も延伸加工特性に関しては従来の溶剤型インキに大きく劣ってしまう結果、特に成形加工を要求される高級用途においては、代替を期待されながらも大幅な切り替えが進まないのが現状である。またこの状況は、現行の活性エネルギー線硬化型インキジェット用インキでも同様であるが、さらにインキジェットで安定吐出するために、粘度を高くとも数十cps程度に抑える必要があるうえ、ヘッド部材を浸食しないモノマーを選択使用する必要があるため、実際配合されるモノマーは非常に制限される結果、多くの要求特性を満たすインキが上市されていないのが現状である。
【0004】
このような問題を解決するため、単官能/多官能モノマーの制御、モノマー構造、組成を特定することで、基材、特にポリカーボネートへの密着性に優れ、且つ、曲げ、延伸加工性に優れるインキの提供が可能である。さらに低分子量のモノマーを選択使用することにより、吐出時に発生しやすいサテライト液滴の生成を抑制し、美粧性に優れる印刷物を長時間印字することを可能とした。
【0005】
無溶剤型の活性エネルギー線硬化型インキジェットインキとして、特許文献1は色素および50〜95%の重合可能モノマーで、最大70重量%の単官能モノマー、最大70重量%までの2官能モノマー、0〜10重量%の3あるいはそれ以上の官能性を有するモノマー構成のインキジェットインキを開示している。最大70重量%の単官能モノマーの構成とは、多官能モノマーが30重量%以上含み、硬化収縮の大きい多官能モノマーを多く使用するため、ポリカーボネートやポリエステル基材との密着性が悪く実用上適さないものであった。
特許文献2は接着成分としてアルコキシル化成分と非芳香族系複素環成分を持つモノマーで構成されたインキ組成物を開示している。このインクは、ポリカーボネート基材への密着、可とう性は良好なものの耐候性試験において、塗膜の基材密着性が劣化した。これは、アルコキシ化成分が水を吸収したため塗膜と基材界面に浮きを生じたためと思われる。この現象は特に低級アルコキシ基で顕著である。特許文献3は硬化時の収縮を緩和するためポリカプロラクトンエステル成分とヒドロキシル成分を持った単官能以上のポリエステルウレタンオリゴマーと反応性希釈剤で構成されたインキ組成物を開示している。このインキは密着性と柔軟性をウレタンオリゴマー成分でもたせ、反応性希釈剤によって粘度を既定範囲に調整しているが、粘度が高く、粘度の温度依存性が比較的大きく、インキジェット適性に課題が残る。また、オリゴマー成分を必要量添加するためテトラヒドロフルフリルアクリレートなどの低粘度反応希釈剤の選択が必要となり、ヘッド周辺部材の侵食によりヘッドの使用期間が短くなりコストアップになるなど課題が多い。特許文献4では、ポリカーボネートへの密着性、加工性に優れた紫外線硬化型インキを提示しているが、このインキでは、ポリウレタン系オリゴマーを必須で使用するため高粘度になり、インキジェットではとても吐出できない。また、加温により粘度を吐出可能なまでに低下させた場合であっても、インキ吐出時、ポリウレタン系オリゴマーの高分子量成分に起因するインキの糸曳き現象が発現し、汚れの原因となり、事実上使用できない。また、当文献に記載の方法により合成されるポリカプロタクトン系ウレタンアクリレートは、あらかじめ作成したウレタンの両末端についている−NCO基にヒドロキシアクリレートを付加させ得るため、2官能のオリゴマーとなる。当文献では、ウレタンの有する可撓性、密着性により後加工性を付与しているが、2官能モノマーを多量に配合することになる結果、わずかな延伸加工には対応可能であるが、本発明に記載する程度の大きな延伸加工性を得ることができない。また、ビニルカプロラクタムを必須成分としており該成分は、保存安定性が悪く、かつ黄変しやすいことから実用上適さない。
特許文献5、6では、破断強度1.0kg/cm以上で130%以上の破断伸びを示す紫外線硬化型着色インキを開示している。このインキは、ポリカーボネート基材への密着は良好なものの可とう性は十分ではなく、実際の成形加工において割れははがれを生じてしまい実用上適さない。これは、インキ中に含まれる多官能成分が多いために、本発明に記載する程度の大きな延伸加工性を得ることが出来ない。
特許文献7では、単官能65%以上90%以下かつ3官能以上のモノマーを含む活性エネルギー線硬化型インクジェットインキが開示されているが、単官能モノマーが90%以下の配合となるので、本発明に記載する程度の大きな延伸加工性を得ることが出来ない。
【特許文献1】特開平5−214280号公報
【特許文献3】特表2004−518787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、実用上、曲げ、延伸加工性能を要求されるプラスチック基材への密着、加工性に優れ、且つ形成される膜の硬度も優れる印刷物を得ることのできる活性エネルギー線硬化型組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、モノマー全体に対して、フェノキシエチルアクリレート63重量%〜94.9重量%、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド0.1重量%〜30重量%、多官能モノマー1重量%〜7重量%からなる重合性モノマーを含有することを特徴と活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
更に本発明は、重合性モノマーが環状構造を有するモノマーを含み、その含有量が重合性モノマーの95重量%〜100重量%であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
更に本発明は、重合性モノマーが、分子量2000以上のモノマーを含有しないことを特徴とする活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
更に本発明は、光重合開始剤を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
更に本発明は、該光重合開始剤が、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノンおよび2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドの併用系であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
更に本発明は、多官能モノマーが、2官能モノマーであることを特徴とする活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
更に本発明は、組成物が活性エネルギー線硬化型インクジェットインキであることを特徴とする活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
更に本発明は、組成物の硬化膜が、厚さ10μmの硬化膜として、170℃環境下において、歪み速度2/minで延伸した場合、延びが120%を超えて延びることを特徴とする活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、延伸加工性が良好で、且つ塗膜の美粧性、密着性、硬度に優れる印刷物を得ることができるものであり、フレキシブルな基材への印刷を行う場合や、後加工を行う用途に対して好適に用いることができる。印刷方法としては、オフセット、グラビア、シルクスクリーン、パッド、フレキソ、インクジェットなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明による活性エネルギー線硬化型組成物では、各種基材上への硬化塗膜において、基材への密着だけでなく、高硬度を有し且つ、延伸加工などの成形加工における塗膜の伸び、可撓性や、加工後の密着性を有するための組成として単官能モノマーの配合比率を上げ、多官能モノマーの配合比率を下げること、かつ単官能モノマーとして、フェノキシエチルアクリレートとN−アクリロイルオキシエチルヘキサフタルイミドを用いることが重要であることが分かった。
【0010】
具体的にはフェノキシエチルアクリレートを63.0重量%〜94.9重量%、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドを0.1重量%〜30重量%、多官能モノマー1重量%〜7.0重量%を含有することで、良好な伸び、可撓性を有する塗膜を形成できた。更に良好な伸び、可撓性を得るためには、フェノキシエチルアクリレートを65.0重量%〜96.7重量%、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドを0.1重量%〜30重量%、多官能モノマー1重量%〜5.0重量%とすることが好ましい。
【0011】
また、本発明で記載する、重合性モノマーは、活性エネルギー線硬化反応成分である重合反応性モノマーを示す。具体的にはエチレン性不飽和二重結合を有する分子を示す。この活性エネルギー線硬化反応成分中には、以下で述べる開始剤、顔料、添加剤などの成分は含まない。
【0012】
また、本発明では、環状構造を有するモノマーを活性エネルギー線硬化反応成分中95重量%から100重量%含有することで、より好適な塗膜を形成することができた。
【0013】
単官能の環状構造を有するモノマーとして、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリブロモフェニルアクリレート、エトキシ化トリブロモフェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート(あるいは、そのエチレンオキサイド並び/またはプロピレンオキサイド付加モノマー)、アクリロイルモルホリン、イソボルニルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、1、4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0014】
さらにこの中でもインキジェット適性が高いモノマーとして、シクロヘキシルアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート(あるいは、そのエチレンオキサイド並び/またはプロピレンオキサイド付加モノマー)、イソボルニルアクリレート、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、1、4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドをより好適に用いることができる。
【0015】
またさらに、安全性や塗膜性能の面から、メチルフェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート(あるいは、そのエチレンオキサイド並び/またはプロピレンオキサイド付加モノマー)、イソボルニルアクリレート、ビニルカプロラクタム、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、1、4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートをより好適に用いることができる。ビニルカプロラクタムは、黄変性があり、かつ保存安定性が悪いので実用上適さない。
【0016】
またさらに、安定性の面から、2−フェノキシエチルアクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドをより好適に用いることが出来る。
【0017】
また、多官能の環状構造を有するモノマーとして、ビスフェノールAジアクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールFジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート、イソシアヌル酸ジアクリレート、プロポキシ化イソシアヌル酸ジアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0018】
さらにこの中でもインキジェット適性が高いモノマーとして、ビスフェノールAジアクリレー、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールFジアクリレート、イソシアヌル酸ジアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸ジアクリレート、プロポキシ化イソシアヌル酸ジアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートをより好適に用いることができる。
【0019】
これら環状構造を有するモノマーを成分中に配合すると、密着性が向上する。原理は定かではないが、環構造部分が面で基材と密着し、VanDerWaars力の上昇により、密着性が向上すると考えられる。
【0020】
さらに、環状構造を有しないモノマーを必要に応じて使用することができる。
【0021】
環状構造を有しない単官能モノマーとして、具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート、β-カルボキシルエチルアクリレート、エチルジグリコールアクリレート、トリメチロールプロパンフォルマルモノアクリレート、イミドアクリレート、イソアミルアクリレート、エトキシ化コハク酸アクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、N-ビニルホルムアミドを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0022】
また、環状構造を有しない多官能モノマーとして、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヒドロキシピバリン酸トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化リン酸トリアクリレート、エトキシ化トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシレートグリセリルトリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。これら単官能、多官能のモノマーは、一種または必要に応じて二種以上用いてもよい。
【0023】
また、上記環状の有無に関わらず、多官能モノマーの使用に関してさらに高い延性を求める場合において、2官能をより好適に用いることができる。
【0024】
また、これらの重合性モノマーは、低粘度インキとして仕上げるために、または長時間の印刷画像安定性確保のために、分子量2000未満のモノマーであることが好ましく、重合性モノマーとして分子量2000以上のモノマーを含まないことが、より好ましい。
【0025】
本発明で説明する活性エネルギー線とは、電子線、紫外線、赤外線などの被照射体の電子軌道に影響を与え、ラジカル、カチオン、アニオンなどの重合反応の引き金と成りうるエネルギー線を示すが、重合反応を誘発させるエネルギー線であれば、これに限定しない。
【0026】
本発明のインクジェットインキには、上記モノマー以外にオリゴマー、プレポリマーと呼ばれるものを使用できる。具体的には、ダイセルUCB社製「Ebecryl230、244、245、270、280/15IB、284、285、4830、4835、4858、4883、8402、8803、8800、254、264、265、294/35HD、1259、1264、4866、9260、8210、1290.1290K、5129、2000、2001、2002、2100、KRM7222、KRM7735、4842、210、215、4827、4849、6700、6700−20T、204、205、6602、220、4450、770、IRR567、81、84、83、80、657、800、805、808、810、812、1657、1810、IRR302、450、670、830、835、870、1830、1870、2870、IRR267、813、IRR483、811、436、438、446、505、524、525、554W、584、586、745、767、1701、1755、740/40TP、600、601、604、605、607、608、609、600/25TO、616、645、648、860、1606、1608、1629、1940、2958、2959、3200、3201、3404、3411、3412、3415、3500、3502、3600、3603、3604、3605、3608、3700、3700−20H、3700−20T、3700−25R、3701、3701−20T、3703、3702、RDX63182、6040、IRR419」、サートマー社製「CN104、CN120、CN124、CN136、CN151、CN2270、CN2271E、CN435、CN454、CN970、CN971、CN972、CN9782、CN981、CN9893、CN991」、BASF社製「Laromer EA81、LR8713、LR8765、LR8986、PE56F、PE44F、LR8800、PE46T、LR8907、PO43F、PO77F、PE55F、LR8967、LR8981、LR8982、LR8992、LR9004、LR8956、LR8985、LR8987、UP35D、UA19T、LR9005、PO83F、PO33F、PO84F、PO94F、LR8863、LR8869、LR8889、LR8997、LR8996、LR9013、LR9019、PO9026V、PE9027V」、コグニス社製「フォトマー3005、3015、3016、3072、3982、3215、5010、5429、5430、5432、5662、5806、5930、6008、6010、6019、6184、6210、6217、6230、6891、6892、6893−20R、6363、6572、3660」、根上工業社製「アートレジンUN−9000HP、9000PEP、9200A、7600、5200、1003、1255、3320HA、3320HB、3320HC、3320HS、901T、1200TPK、6060PTM、6060P」、日本合成化学社製「紫光 UV−6630B、7000B、7510B、7461TE、3000B、3200B、3210EA、3310B、3500BA、3520TL、3700B、6100B、6640B、1400B、1700B、6300B、7550B、7605B、7610B、7620EA、7630B、7640B、2000B、2010B、2250EA、2750B」、日本化薬社製「カヤラッドR−280、R−146、R131、R−205、EX2320,R190、R130、R−300,C−0011、TCR−1234、ZFR−1122、UX−2201,UX−2301,UX3204、UX−3301、UX−4101,UX−6101、UX−7101、MAX−5101、MAX−5100,MAX−3510、UX−4101」等が挙げられる。
【0027】
本発明で示される活性エネルギー線硬化型組成物とは、基材表面に印刷、または塗工される液体を示す。このインキは、着色成分を含まない場合、コーティング用途として用いることができ、また、着色成分を含有する場合、グラフィックや、文字、写真などを表示する材料として用いることができる。この着色成分としては、従来、染料や顔料が広く使用されているが、特に耐候性の面から顔料を用いる場合が多い。顔料成分としては、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無彩色の顔料または有彩色の有機顔料が使用できる。有機顔料としては、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系有機顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系有機顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレットなどのペリレン系有機顔料、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系有機顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロンエローなどのキノフタロン系有機顔料、イソインドリンエローなどのイソインドリン系有機顔料、その他の顔料として、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
【0028】
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86 93、109、110、117、120、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が挙げられる。
【0029】
カーボンブラックの具体例としては、デグサ社製「Special Black350、250、100、550、5、4、4A、6」「PrintexU、V、140U、140V、95、90、85、80、75、55、45、40、P、60、L6、L、300、30、3、35、25、A、G」、キャボット社製「REGAL400R、660R、330R、250R」「MOGUL E、L」、三菱化学社製「MA7、8、11、77、100、100R、100S、220、230」「#2700、#2650、#2600、#200、#2350、#2300、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#900、#850、#750、#650、#52、#50、#47、#45、#45L、#44、#40、#33、#332、#30、#25、#20、#10、#5、CF9、#95、#260」等が挙げられる。
【0030】
酸化チタンの具体例としては、石原産業社製「タイペークCR−50、50−2、57、80、90、93、95、953、97、60、60−2、63、67、58、58−2、85」「タイペークR−820,830、930、550、630、680、670、580、780、780−2、850、855」「タイペークA−100、220」「タイペークW−10」「タイペークPF−740、744」「TTO−55(A)、55(B)、55(C)、55(D)、55(S)、55(N)、51(A)、51(C)」「TTO−S−1、2」「TTO−M−1、2」、テイカ社製「チタニックスJR−301、403、405、600A、605、600E、603、805、806、701、800、808」「チタニックスJA−1、C、3、4、5」、デュポン社製「タイピュアR−900、902、960、706、931」等が挙げられる。
【0031】
上記顔料の中で、キナクリドン系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、イソインドリノン系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、キノフタロン系有機顔料、イソインドリン系有機顔料等は耐光性が優れているため好ましい。 有機顔料は、レーザー散乱による測定値で平均粒径10〜150nmの微細顔料であることが好ましい。顔料の平均粒径が10nm未満の場合は、粒径が小さくなることによる耐光性の低下が生じ、150nmを越える場合は、分散の安定維持が困難になり、顔料の沈澱が生じやすくなる。
【0032】
有機顔料の微細化は下記の方法で行うことができる。すなわち、有機顔料、有機顔料の3重量倍以上の水溶性の無機塩および水溶性の溶剤の少なくとも3つの成分からなる混合物を粘土状の混合物とし、ニーダー等で強く練りこんで微細化したのち水中に投入し、ハイスピードミキサー等で攪拌してスラリー状とする。次いで、スラリーの濾過と水洗を繰り返して、水溶性の無機塩および水溶性の溶剤を除去する。微細化工程において、樹脂、顔料分散剤等を添加してもよい。
【0033】
水溶性の無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。これらの無機塩は、有機顔料の3重量倍以上、好ましくは20重量倍以下の範囲で用いる。無機塩の量が3重量倍よりも少ないと、所望の大きさの処理顔料が得られない。また、20重量倍よりも多いと、後の工程における洗浄処理が多大であり、有機顔料の実質的な処理量が少なくなる。
【0034】
水溶性の溶剤は、有機顔料と破砕助剤として用いられる水溶性の無機塩との適度な粘土状態をつくり、充分な破砕を効率よく行うために用いられ、水に溶解する溶剤であれば特に限定されないが、混練時に温度が上昇して溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から沸点120〜250℃の高沸点の溶剤が好ましい。水溶性溶剤としては、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、低分子量ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0035】
本発明において顔料は、十分な濃度および十分な耐光性を得るため、組成物中に3〜30重量%の範囲で含まれることが好ましい。
本発明では、顔料の分散性およびインキの保存安定性を向上させるために顔料分散剤を添加するのが好ましい。顔料分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート等を用いることができる。
分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製「Anti−Terra−U(ポリアミノアマイド燐酸塩)」、「Anti−Terra−203/204(高分子量ポリカルボン酸塩)」、「Disperbyk−101(ポリアミノアマイド燐酸塩と酸エステル)、107(水酸基含有カルボン酸エステル)、110、111(酸基を含む共重合物)、130(ポリアマイド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「400」、「Bykumen」(高分子量不飽和酸エステル)、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸)」、「P104S、240S(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン系)」、「Lactimon(長鎖アミンと不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン)」が挙げられる。
また、Efka CHEMICALS社製「エフカ44、46、47、48、49、54、63、64、65、66、71、701、764、766」、「エフカポリマー100(変性ポリアクリレート)、150(脂肪族系変性ポリマー)、400、401、402、403、450、451、452、453(変性ポリアクリレート)、745(銅フタロシアニン系)」、共栄社化学社製「フローレン TG−710(ウレタンオリゴマー)、「フローノンSH−290、SP−1000」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合物)」、楠本化成社製「ディスパロン KS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)」が挙げられる。
さらに、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、EP」、「ホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子)、「エマルゲン920、930、931、935、950、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)、「アセタミン24(ココナッツアミンアセテート)、86(ステアリルアミンアセテート)」、アビシア社製「ソルスパーズ5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13940(ポリエステルアミン系)、17000(脂肪酸アミン系)、24000GR、32000、33000、39000、41000、53000」、日光ケミカル社製「ニッコール T106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)、Hexagline 4−0(ヘキサグリセリルテトラオレート)」、味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821、822、824」等が挙げられる。
分散剤は組成物中に0.1〜10重量%含まれることが好ましい。
本発明の組成物には、顔料の分散性およびインキの保存安定性をより向上させるために、有機顔料の酸性誘導体を顔料の分散時に配合することが好ましい。
【0036】
本発明の組成物には、基材への濡れ性を向上させるために表面調整剤を加えることが好ましい。表面調整剤の具体例としては、ビックケミー社製「BYK−300、302、306、307、310、315、320、322、323、325、330、331、333、337、340、344、370、375、377、350、352、354、355、356、358N、361N、357、390、392、UV3500、UV3510、UV3570」テゴケミー社製「Tegorad−2100,2200、2250、2500、2700」等が挙げられる。これら表面調整剤は、一種または必要に応じて二種以上用いてもよい。
表面調整剤は組成物中に、0.001〜1重量%含まれることが好ましい。
【0037】
本発明における、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノンかつ2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドを含む組成物は硬化速度が良好で、ブロッキングフリーの印刷物を得るのに効果を有する。
通常、光重合開始剤は、開裂部は1個であることが多いが、本発明で用いる光重合開始剤は、開裂部を2個以上有するため、活性エネルギー照射による開裂後に、重合性モノマーと複数の部分で反応することができるため、硬化膜中の重合反応物の分子量を高くすることができる。ブロッキングとは、未反応モノマーや、低分子の状態で重合が終わってしまったダイマーやトリマーが硬化膜中に多く残ることが原因と考えられる。このため、光重合開始剤として、開裂部を2個以上有する光重合開始剤を用い、硬化膜中の重合反応物の分子量を高くすることで、ブロッキングフリーの印刷物を得ることができる。
【0038】
光重合開始剤は、分子内結合開裂型と分子間水素引き抜き型に分類されるが、本発明のオリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノンは分子内結合型の大部分を占めるアセトフェノン系に分類され、分子間水素引き抜き型と比較し、重合が早い、光酸化による黄変が少ない、貯蔵安定性がよいなどの特徴を有する。また、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドは、350nm〜395nmの波長範囲に吸収ピークを有し、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノンが吸収する光より、長波長側の光を利用することにより、照射光の浸入深さがより長くなることで、膜内部の硬化が促進される。中でも、上記波長範囲に吸収ピークを有する光重合開始剤を使用する結果、硬化速度が向上した。
【0039】
上記光重合開始剤は、重合性モノマーに対し、2〜20重量%含有することが好ましい。2重量%未満であると硬化速度が著しく悪化し、20重量%より多いと、含有量が10重量%のものと硬化速度が変わらないばかりか、溶解残りが発生する場合があり、熱をかけて溶け残りを溶かしたとしても、インキの粘度が上昇し、インクジェット吐出性が悪化するという問題がある。
【0040】
光重合開始剤の吸収スペクトルは、光重合開始剤をアセトニトリルに0.1重量%溶解させ、1cm石英セルを用い、分光光度計(HITACHI社製U-3300)により測定した。本発明で記載する吸収ピークとは、上記測定条件において吸光度が0.5以上のピークのことを示す。また、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は、上記測定条件において、350nm〜395nmの波長範囲に強度が0.5以上の吸収ピークをもつことが多い。
【0041】
本発明の組成物には、経時での安定性、記録装置内での機上の安定性を高めるため、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、ピロガロール、ブチルヒドロキシトルエン等の重合禁止剤をインキ中0.01〜5重量%配合することが好ましい。
本発明の組成物は可塑剤、表面調整剤、紫外線防止剤、光安定化剤、酸化防止剤等の種々の添加剤を使用することができる。
本発明の非吸収性基材としては、ポリ塩化ビニル樹脂シート、ポリカーボネート、アクリル、ガラス、金属、ABSなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0042】
本発明のインクジェットインキは、モノマー、顔料分散剤と共に、顔料をサンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散することにより製造される。予め顔料高濃度の濃縮液を作成しておいてモノマーで希釈することが好ましい。通常の分散機による分散においても充分な分散が可能であり、このため、過剰な分散エネルギーがかからず、多大な分散時間を必要としないため、インキ成分の分散時の変質を招きにくく、安定性に優れたインキが調製される。インキは、孔径3μm以下さらには、1μ以下のフィルターにて濾過することが好ましい。
【0043】
本発明のインクジェットインキは、25℃での粘度が5〜50mPa・sと高めに調整することが好ましい。25℃での粘度が5〜50mPa・sのインキは、特に通常の4〜10KHzの周波数を有するヘッドから、10〜50KHzの高周波数のヘッドにおいても安定した吐出特性を示す。
【0044】
粘度が5mPa・s未満の場合は、高周波数のヘッドにおいて、吐出の追随性の低下が認められ、50mPa・sを越える場合は、加熱による粘度の低下機構をヘッドに組み込んだとしても吐出そのものの低下を生じ、吐出の安定性が不良となり、全く吐出できなくなる。
【0045】
また、本発明のインクジェットインキは、ピエゾヘッドにおいては、10μS/cm以下の電導度とし、ヘッド内部での電気的な腐食のないインキとすることが好ましい。また、コンティニュアスタイプにおいては、電解質による電導度の調整が必要であり、この場合には、0.5mS/cm以上の電導度に調整する必要がある。
【0046】
本発明のインクジェットインキを使用するには、まずこのインクジェットインキをインクジェット記録方式用プリンタのプリンタヘッドに供給し、このプリンタヘッドから基材上に吐出し、その後紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射する。これにより印刷媒体上の組成物は速やかに硬化する。
【0047】
なお、活性エネルギー線の光源としては、紫外線を照射する場合には、例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、紫外線レーザー、および太陽光を使用することができる。電子線により硬化させる場合には、通常300eV以下のエネルギーの電子線で硬化させるが、1〜5Mradの照射量で瞬時に硬化させることも可能である。紫外線を照射する場合、UVランプとしてはインテグレーションテクノロジー社のAバルブを用いることが好ましい。該UVランプは、メタルハライドランプを改良したもので、短波長領域(250nm〜300nm)と長波長領域(320nm〜390nm)に強い発光スペクトルがあり、膜厚が厚くかつ表面積が大きい塗膜を硬化させるのに好適である。特に、インクジェットの場合、該UVランプを用いることで硬化速度は飛躍的に向上する。
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」は「重量部」を表す。
【0048】
まず、下記のような配合で顔料分散体Aを作成した。以下分散体は、モノマーに顔料および分散剤を投入し、ハイスピードミキサー等で均一になるまで撹拌後、得られたミルベースを横型サンドミルで約1時間分散して作成した。
【0049】
・ソルスパーズ32000(ルーブリソール社製 顔料分散剤) 9部
・フェノキシエチルアクリレート 61部
また、下記のような配合で顔料分散体Bを作成した。分散体の製造方法は、分散体Aと同様の製造方法で作成した。
【0050】
・Novoperm Yellow P-HG(クラリアント社製 Benzimidazolone顔料) 35部
・ソルスパーズ32000(ルーブリソール社製 顔料分散剤) 7部
・フェノキシエチルアクリレート 58部
また、下記のような配合で顔料分散体Cを作成した。分散体の製造方法は、分散体Aと同様の製造方法で作成した。
【0051】
・CINQUASIA Magenta B RT-343-D(チバ社製 キナクリドン顔料) 20部
・ソルスパーズ32000(ルーブリソール社製 顔料分散剤) 6部
・フェノキシエチルアクリレート 74部
また、下記のような配合で顔料分散体Dを作成した。分散体の製造方法は、分散体Aと同様の製造方法で作成した。
【0052】
・Special Black 350(デグサ社製 カーボンブラック顔料) 30部
・ソルスパーズ32000(ルーブリソール社製 顔料分散剤) 6部
・フェノキシエチルアクリレート 64部
また、下記のような配合で顔料分散体Eを作成した。分散体の製造方法は、分散体Aと同様の製造方法で作成した。
【0053】
・タイヘ゜ークPF740(石原産業社製 シリカ処理1.0%、アルミナ処理2.0%の白顔料)40部
・アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製 顔料分散剤) 2部
・フェノキシエチルアクリレート 58部
実施例1
上記顔料分散体を表1配合処方にてインキ化し、2時間の撹拌の後、溶解残りがないことを確認し、メンブランフィルターでろ過を行い、粗大粒子を除去し、活性エネルギー線硬化型組成物を得た。この活性エネルギー線硬化型組成物を膜厚10μmになるようにポリカーボネート板上に印刷、硬化し、塗膜を得た。
【0054】
実施例2〜6
実施例1と同様に表1記載の通りにインキを作成し、印刷、硬化を行った。
【0055】
比較例1〜6
実施例1と同様に表2記載の通りにインキを作成し、印刷、硬化を行った。
【0056】
基材への密着性は、硬化後の塗膜を1mm間隔で100マスにクロスカットした部分にセロハンテープを貼り付け、上面から消しゴムでこすり、セロハンテープの塗工面への密着を充分に行った後、セロハンテープを90°で剥離させたときの塗膜の基材への密着の程度から判断した。
【0057】
得られたポリカーボネート上の塗膜は、打ち抜き機(Dumbbell社製)を用いて基材ごとダンベル形状に打ち抜き、得られたテストピースをテンシロン(UCT−1T:ORIENTEC社製)を用いて170℃に加温し、歪み速度2/minで基材ごと引張り試験を行った。塗膜の破断点はロードセルから得られる張力変化からとらえることが困難であったため、目視で塗膜表面の破断を確認した時点での伸びを%として表記した。表中では120%以上の延伸性を示すものを○、120%以下のものを×と表記した。
【0058】
インキの処方の配合、評価結果は表1、表2の通りであった。
【0059】
実施例1〜6ではセロハンテープによる剥離試験でインキがポリカーボネートから剥離せず密着性は良好であり、170℃における延伸性も120%を超え、可とう性にも優れるため加工性に優れた塗膜であるといえる。実施例5については高分子量のモノマーを配合したことで粘度が高く、実施例6ではアクリロイルモルホリンを配合したことでインクジェットのプリンタヘッドへの部材適性が悪いためインクジェット方式による印刷は困難であるが、他の印刷方法においては実用可能であり、加工性に優れた塗膜を与える。
【0060】
比較例1では密着性がなく、比較例2では延伸性が120%に満たず、比較例3では可とう性がないため、どれも印刷物の加工時に不具合が生じる。比較例4では多官能モノマーを配合していないため塗膜の硬度が低く、実用上適さない。比較例5では硬化性が低く、印刷物にタックが残るため実用上適さない。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー全体に対して、フェノキシエチルアクリレート63重量%〜94.9重量%、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド0.1重量%〜30重量%および多官能モノマー1重量%〜7重量%からなる重合性モノマーを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項2】
重合性モノマーが環状構造を有するモノマーを含み、その含有量が重合性モノマーの95重量%〜100重量%である請求項1記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項3】
重合性モノマーが、分子量2000以上のモノマーを含有しないことを特徴とする請求項1ないし2いずれか記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項4】
更に、光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項5】
該光重合開始剤が、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノンおよび2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドの併用系である請求項4記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項6】
多官能モノマーが、2官能モノマーである請求項1ないし5いずれか記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項7】
該組成物が活性エネルギー線硬化型インクジェットインキであることを特徴とする請求項1ないし6いずれか記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項8】
組成物の硬化膜が、厚さ10μmの硬化膜として、170℃環境下において、歪み速度2/minで延伸した場合、延びが120%を超えて延びることを特徴とする請求項1ないし7いずれか記載の活性エネルギー線硬化型組成物。

【公開番号】特開2008−7687(P2008−7687A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181052(P2006−181052)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】