説明

活性エネルギー線硬化用樹脂組成物、粘着剤、粘着シートおよび粘着シートの製造方法

【課題】 帯電防止用の粘着シートの粘着剤の製造に好適で、粘着物性、被着体耐汚染性に優れ、エージングに長時間を要さない樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 本発明の樹脂組成物は、分子中に酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有する熱可塑性樹脂(A)を含有してなることを特徴とする。紫外線等の活性エネルギー線の照射により熱可塑性樹脂(A)が硬化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化用樹脂組成物、粘着剤、粘着シートおよび粘着シートの製造方法に関する。詳しくは、被着体表面を所定の期間、機械的に及び電気的に保護するための粘着シートおよびその製造方法、その粘着シートに好適な粘着剤、その粘着剤の製造に好適な活性エネルギー線硬化用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワープロ、コンピュータ、携帯電話、テレビ等の各種ディスプレイ;偏光板やそれに準ずる積層体等の光学部品;電子基板等の表面には、通常、表面保護及び機能性付与の目的で、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等の透明な表面保護シート(基材シート)が粘着剤を介して積層される。
【0003】
粘着剤が積層された表面保護粘着シート(以下、単に「粘着シート」ともいう。)は、例えば液晶ディスプレイ等の組み込みが完了した後に、表面保護の役割を終え、剥離除去される場合が多い。しかし、表面保護粘着シート剥離時に静電気が発生して周囲のゴミを巻き込むという問題を抱えている。更に、表面保護粘着シートを剥離する際に生じた剥離帯電により、液晶基板や電子回路が破壊されるというトラブルが発生することがある。
【0004】
そこで、表面保護粘着シートに帯電防止性が付与された帯電防止粘着シートを作成する手段として、以下に示すような種々の方策が提案されている。例えば、(a)表面保護粘着シートを構成する基材シートに帯電防止性を付与する、(b)表面保護粘着シートを構成する粘着剤に帯電防止性を付与する、等である。
【0005】
(a)の方法は、基材シートの原料たるポリエステルやポリエチレン等の熱可塑性樹脂に、有機スルホン酸塩基等のアニオン性化合物、金属粉、カーボンブラック等の導電性フィラーを練り混んで導電性基材シートを得る方法であり、得られた導電性基材シートは導電性フィラーの混入により透明性が低下したり、着色したりする。
しかし、被着体に表面保護粘着シートが貼着されている間も、被着体の表面保護外観が粘着シートを介して絶えず検査されるので、(a)の方法では、被着体に貼着した場合に被着面が見えにくくなるという問題がある。また、コスト高の導電性基材シートを用いるので、高価格になるという問題もある。
【0006】
(b)の方法として、例えば特許文献1には、ポリエーテルポリオール化合物およびアルカリ金属塩からなる帯電防止剤をアクリル系粘着剤に配合し、帯電防止性を付与する方法が開示されている。
しかしながら、この方法においては帯電防止剤のブリードが避けられず、表面保護シートに適用した場合に経時や高温下で被着体への汚染が発生することが判明している。
【0007】
また、例えば特許文献2には、カルボキシル基含有共重合体と、中和剤と、架橋剤とからなる粘着剤組成物が提案されている。
しかしながら、この粘着剤組成物では、配合上、安定に使用できる架橋剤が限定され、反応性が低く、架橋に何日も要するエポキシ系の架橋剤を使用せざるを得ず、生産性に大きな問題があった。
【特許文献1】特開平6−128539号公報
【特許文献2】特開平10−226776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情に照らし、被着体から剥離した際に粘着シートの帯電防止が図れ、被着体への汚染性が低減可能である粘着シートおよびその製造方法、その粘着シートに好適な粘着剤、その粘着剤の製造に好適で、エージングに長時間を要さない樹脂組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
しかるに本発明者等は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、分子中に酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有する熱可塑性樹脂(A)を用いて、架橋剤を必須とせずに、活性エネルギー線の照射により硬化(架橋)させることにより、帯電防止性能に優れるうえ、粘着物性及び耐汚染性に優れ、生産性も良好であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、分子中に酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有する熱可塑性樹脂(A)を活性エネルギー線の照射により硬化(架橋)させることにある。
【0011】
なお、特開平11−293201号公報には、紫外線や放射線を照射して粘着シートの粘着剤を硬化させることが記載されているが、この粘着剤は再剥離型粘着剤であり、強粘着力を低粘着力に低下させるために、紫外線等が照射されている。言い換えれば、この粘着剤は架橋剤により既に硬化(架橋)された粘着剤であって、活性エネルギー線の照射により硬化(架橋)を発現させる本発明のものとは異なる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エージングに長時間を要する架橋剤を必須とせずに、活性エネルギー線の照射により硬化(架橋)させることができるので、架橋を短時間で完了させることができ、生産性が高い。また、熱可塑性樹脂(A)が分子中に酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有するので、ブリードのおそれがある帯電防止剤を必須とせず、経時や高温下で被着体への汚染を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。
以下の実施形態では、(1)活性エネルギー線硬化用樹脂組成物、(2)粘着剤、(3)粘着シートおよびその製造方法について順次説明する。
【0014】
(1)活性エネルギー線硬化用樹脂組成物
本発明の活性エネルギー線硬化用樹脂組成物について説明する。本発明の活性エネルギー線硬化用樹脂組成物は、分子中に酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有する熱可塑性樹脂(A)を含有してなることを特徴とする。
【0015】
熱可塑性樹脂が、分子中に反応性の不飽和基(典型的にはエチレン性不飽和基)をもたないにもかかわらず、活性エネルギー線の照射により架橋(硬化)することは、驚くべきことであり、容易に想到できることではない。
【0016】
このような酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を分子中に有する熱可塑性樹脂(A)としては、特に限定はされないが、アクリル系樹脂(A1)、ポリエステル系樹脂(A2)などが好ましく用いられる。熱可塑性樹脂(A)は、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、酸塩基のイオン対を分子中に有するアクリル系樹脂、ベタイン構造を分子中に有するアクリル系樹脂、酸塩基のイオン対を分子中に有するポリエステル系樹脂を組み合わせたものであっても良い。
【0017】
熱可塑性樹脂の分子中に酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を導入する手段としては、通常、〔1〕酸塩基のイオン対になり得る官能基含有モノマーを共重合し、次いでこの官能基を酸塩基のイオン対に変化させる方法等が挙げられる。
【0018】
熱可塑性樹脂中の官能基を酸塩基のイオン対に変化させる方法には、カルボキシル基含有モノマーを共重合してなるカルボキシル基含有樹脂中のカルボキシル基を中和剤で中和する方法、樹脂中にアミノ基を含有させ、そのアミノ基を四級化する方法などが挙げられる。
【0019】
また、上記の他に、〔2〕分子中に酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有するモノマー(m1)を共重合する方法等も挙げられる。
まず、熱可塑性樹脂(A)として、アクリル系樹脂(A1)を例にして、上記〔1〕の方法を具体的に説明する。
【0020】
アクリル系樹脂(A1)は、通常、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)を主成分とし、酸塩基のイオン対になり得る官能基含有モノマー(a2)を共重合成分として共重合してなるものである。また、必要に応じて、その他の官能基含有モノマー(a3)、その他の共重合性モノマー(a4)を更に共重合成分とすることもできる。
【0021】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ) アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の脂肪族系(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族系(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。中でもアルキル基の炭素数が1〜12の(メタ) アクリル酸アルキルエステルが好ましく、更には炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが初期の濡れ性、経時接着力上昇抑制の点で好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
【0022】
なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)として、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主として用いる場合であっても、アルキル基の炭素数が3以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを適宜併用することもできる。
【0023】
かかる(メタ)アクリアクリル酸アルキルエステル(a1)の含有量は、全モノマー100重量部に対して20〜99.9重量部であることが好ましく、より好ましくは30〜99重量部、特に好ましくは50〜98重量部である。かかる含有量が少なすぎると、樹脂が硬くなりすぎる傾向があり、多すぎると帯電防止性能が低下する傾向がある。
【0024】
酸塩基のイオン対になり得る官能基含有モノマー(a2)としては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマーが好適である。
【0025】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミドN−グリコール酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、ケイ皮酸、(メタ)アクリル酸のミカエル付加物(例えば、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸ダイマー、アクリル酸トリマー、メタクリル酸トリマー、アクリル酸テトラマー、メタクリル酸テトラマー等)などが挙げられ、なかでも、アクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。
【0026】
アミノ基含有モノマーとしては、第一級又は第二級のアミノ基含有モノマーが好ましく、例えば、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0027】
その他の官能基含有モノマー(a3)としては、例えば、水酸基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。また、上記と同様のカルボキシル基含有モノマーやアミノ基含有モノマーも挙げられ、これらのモノマーは、モノマーの官能基をイオン対に変化させずに用いられる。その他の官能基含有モノマー(a3)は、1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
【0028】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリルアルコールなどが挙げられ、なかでも2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の炭素数が1〜4のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレートが好適に用いられる。
【0029】
アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート、ダイアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0030】
アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド等が挙げられる。
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0031】
その他の共重合性モノマー(a4)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン等のモノマーが挙げられる。
【0032】
また、高分子量化を目的とする場合、エチレングリコールジ(メタ) アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等のエチレン性不飽和基を二つ以上有する化合物等を併用することもできる。
【0033】
アクリル系樹脂(A1)は、その製造方法が限定されず、例えば、有機溶媒中でのラジカル共重合により製造することができる。かかる共重合に用いられる有機溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール等の脂肪族アルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。
【0034】
また、かかるラジカル共重合に用いられるラジカル重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤である2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)、2,2’アゾビス(2−メチルプロピオン酸)等のアゾ系化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系化合物が挙げられる。
【0035】
酸塩基のイオン対になり得る官能基含有モノマー(a2)としてのカルボキシル基含有モノマーを共重合してなるカルボキシル基含有アクリル系樹脂中のカルボキシル基を中和させる際の中和剤としては、アンモニア、アルカリ性を示すアンモニウム塩およびモノエチルアミン、モノエタノールアミンなどの一級アミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミンなどの二級アミン;トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミンなどの三級アミン;ジアミン、ポリエチレンイミンなどの1分子中に複数の窒素原子を有するアミノ化合物;ピリジンなどの環式アミノ化合物などのアミン化合物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの金属塩等が挙げられる。
【0036】
また、酸塩基のイオン対になり得る官能基含有モノマー(a2)としてのアミノ基含有モノマーを共重合してなるアミノ基含有アクリル系樹脂中のアミノ基を四級化させる際の四級化剤としては、特に限定されないが、塩酸、硝酸、硫酸、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等の無機酸又は有機酸、塩化メチル、塩化エチル、塩化ベンジル等の塩化物などが挙げられる。
【0037】
次に、上記〔2〕分子中に酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有するモノマー(m1)を共重合する方法を説明する。
【0038】
かかる方法については、上記〔1〕の方法において、酸塩基のイオン対になり得る官能基含有モノマー(a2)を、酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有するモノマー(m1)に変えて、同様に共重合を行う。
【0039】
上記酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有するモノマー(m1)としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、ジエチルアミノエチル( メタ) アクリレート四級化物などの四級アンモニウム塩構造を有するモノマーや、N−(3−スルフォプロピル)−N−メタクリルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(3−スルフォプロピル)−N−メタクリルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインなどのベタイン構造を有するモノマー等が挙げられる。
【0040】
また、ポリエステル系樹脂(A2)の場合は、酸塩基のイオン対になり得る官能基を含有するモノマーを縮合成分に用いて縮重合した後、酸塩基のイオン対に変化させるか、または、酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有するモノマーを縮合成分に用いて重縮合する方法などが挙げられる。
【0041】
本発明の熱可塑性樹脂(A)は、酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を必須成分として分子中に有するものであるが、その分子中にアルキレングリコール鎖をさらに有するものであることが、帯電防止性能を向上させる点で好ましく、特にはアルキレングリコール鎖をさらに有するアクリル系樹脂であることが好ましい。
【0042】
熱可塑性樹脂の分子中にアルキレングリコール鎖(構造)を導入する手段としては、通常、アルキレングリコール構造含有モノマーを共重合する方法を挙げられるが、特に限定されるものではない。例えば、熱可塑性樹脂(A)がアクリル系樹脂(A1)である場合には、上記酸塩基のイオン対に関する〔1〕の方法において、酸塩基のイオン対になり得る官能基含有モノマー(a2)を、アルキレングリコール構造を有するモノマーに替えて、同様に共重合を行うことができる。
【0043】
かかるアルキレングリコール構造を有するモノマーとしては、下記一般式(1)で表される化合物(以下、アルキレングリコール構造含有不飽和モノマーという)等が挙げられる。かかるアルキレングリコール構造含有不飽和モノマーは、帯電防止性能に優れる点で好ましく用いられる。
【0044】
【化1】

【0045】
(式中、Xはアルキレン基、Yは(メタ)アクリロイル基又はアルケニル基、Zは水素又はアルキル基、nは1以上の整数である。)
【0046】
上記一般式(1)中のXはアルキレン基であり、中でも、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、特には、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基が好ましい。また、かかるアルキレン基を有するアルキレングリコール構造は、同一オキシアルキレン鎖を有する化合物がホモ重合したものでもよいし、相異なるオキシアルキレン鎖を有する化合物がランダム或いはブロック状に共重合したものでもよい。
【0047】
上記一般式(1)中のYは(メタ)アクリロイル基またはアルケニル基であり、アルケニル基としては、通常、炭素数2〜6のもの、例えば、ビニル基やアリル基が用いられる。これらの中でも、Yはメタクリロイル基、アクリロイル基、アリル基が好ましく、特にはメタクリロイル基、アクリロイル基が好ましい。
【0048】
上記一般式(1)中のZは水素原子又はアルキル基であり、アルキル基としては、通常、炭素数1〜4のものが用いられる。これらの中でも、Zは水素原子、メチル基、エチル基であることが好ましい。
【0049】
上記一般式(1)中のnはアルキレンオキサイド付加モル数を示す1以上の整数であり、好ましくは1〜500、特に好ましくは2〜100、更に好ましくは3〜50である。nの値が小さすぎると帯電防止能が不十分になる傾向があり、大きすぎると耐久性が十分でなくなる傾向がある。
【0050】
かかるアルキレングリコール構造含有不飽和モノマーの具体例としては、
[Y:(メタ)アクリロイル基の場合]
例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコール誘導体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、等が挙げられ、
【0051】
[Y:アルケニル基の場合]
例えば、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル等のポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル等のポリプロピレングリコール誘導体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−モノアリルエーテル、等が挙げられる。
【0052】
上記の中でもポリエチレングリコール誘導体のものが好ましく、エチレンオキサイド付加モル数nが5〜500、特には5〜100、更には6〜30であることが帯電防止能と耐久性のバランスの点で好ましい。エチレンオキサイド付加モル数nが小さすぎると帯電防止能が劣る傾向があり、大きすぎると耐久性が悪化する傾向がある。更には、硬化性への影響の点で、上記一般式(1)中のYは(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
【0053】
また、上記一般式(1)で示されるアルキレングリコール構造含有不飽和化合物の重量平均分子量としては、通常100〜20000が好ましく、特には200〜10000、更には400〜2000が好ましい。かかる重量平均分子量が小さすぎると帯電防止能に劣る傾向があり、大きすぎると結晶性が高くなり、取り扱いにくくなる傾向がある。
【0054】
かくして、分子中に酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有する熱可塑性樹脂(A)が得られる。熱可塑性樹脂(A)を構成する全モノマー中における、上記酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を形成するモノマー、即ち、酸塩基のイオン対になり得る官能基含有モノマー(a2)や酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有するモノマー(m1)の量は、通常、全モノマー100重量部に対して0.1〜80重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜70重量部、特に好ましくは1〜50重量部、更には2〜30重量部が好ましい。上記酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を形成するモノマーが少なすぎると、十分な帯電防止性能が得られなくなる傾向があり、多すぎると、熱可塑性樹脂(A)全体の極性が高くなり、製造が非常に困難となる傾向がある。
【0055】
かくして得られる、分子中に酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有する熱可塑性樹脂(A)の重量平均分子量は、特に限定されないが、通常20万〜200万であることが好ましく、特には50万〜150万であることが好ましい。重量平均分子量が小さすぎると、後述の活性エネルギー線照射によっても十分な凝集力が得られない傾向があり、大きすぎると、希釈溶剤を大量に必要とし、塗工性やコストの面で好ましくない傾向となる。
【0056】
なお、上記重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)にカラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100〜2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定される。
【0057】
本発明の活性エネルギー線硬化用樹脂組成物は、分子中に酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有する熱可塑性樹脂(A)のみからなることがあり、あるいは前記熱可塑性樹脂(A)とともに後述する活性エネルギー線重合性化合物(B)や活性エネルギー線重合開始剤(C)が含有されることがある。
【0058】
本発明の活性エネルギー線硬化用樹脂組成物は、分子中に反応性の不飽和基(典型的にはエチレン性不飽和基)をもたない熱可塑性樹脂(A)が活性エネルギー線の照射により架橋(硬化)する。かかる不飽和基をもたない熱可塑性樹脂(A)とともに後述の活性エネルギー線重合性化合物(B)が含有される場合には、活性エネルギー線の照射により熱可塑性樹脂(A)の架橋(硬化)と活性エネルギー線重合性化合物(B)の架橋(硬化)の両方が起こることになる。すなわち、活性エネルギー線の照射により粘着性が付与される。
【0059】
活性エネルギー線として、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線;X線、γ線等の電磁波;電子線;プロトン線;中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線が有利である。紫外線照射には、150〜450nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ等を用いることができる。
【0060】
(2)粘着剤
次に、本発明の粘着剤について説明する。
本発明の粘着剤は、分子中に酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有する熱可塑性樹脂(A)、または前記熱可塑性樹脂(A)が少なくとも含有されてなる樹脂組成物[I]に、活性エネルギー線を照射してなることを特徴とする。分子中に酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有する熱可塑性樹脂(A)及び活性エネルギー線については、上記(1)に説明したのと同様である。
【0061】
本発明においては、熱可塑性樹脂(A)とともに活性エネルギー線重合性化合物(B)及び/又は活性エネルギー線重合開始剤(C)をさらに含有した樹脂組成物[I]が好ましい。活性エネルギー線重合性化合物(B)を含有することにより、硬化を調整することができ、各用途に適した粘着物性を実現できる。
【0062】
また、活性エネルギー線重合開始剤(C)を含有することにより、活性エネルギー線照射時の反応を安定化させることができる。
【0063】
活性エネルギー線重合性化合物(B)としては、特に限定はされないが、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B1)が、硬化速度の速いことや到達物性の安定化などの点で、好適に用いられる。
【0064】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B1)は、分子内にウレタン結合を有する(メタ) アクリレート系化合物であり、水酸基を含有する(メタ) アクリル系化合物と多価イソシアネート化合物を反応させて製造できる。
【0065】
上記水酸基を含有する(メタ) アクリル系化合物としては、特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でも3個以上のアクリロイル基を有する水酸基含有(メタ)アクリル系化合物が好ましく用いられる。また、これらは1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0066】
上記多価イソシアネート化合物としては、特に限定されることなく、例えば芳香族系、脂肪族系、脂環式系等のポリイソシアネートが挙げられ、中でもトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等のポリイソシアネート或いはこれらポリイソシアネートの3量体化合物又は多量体化合物、ビュレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート(例えば、日本ポリウレタン工業(株)製の「アクアネート100」、「アクアネート110」、「アクアネート200」、「アクアネート210」等)、又は、これらポリイソシアネートとポリオールの反応生成物等が挙げられる。中でも、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体化合物又は多量体化合物が好ましく用いられる。
【0067】
かかるポリオールとしては、特に限定されることなく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコール系化合物、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA、ポリカプロラクトン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン、ポリグリセリン、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコール;ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドのブロック又はランダム共重合の少なくとも1種の構造を有するポリエーテルポリオール;該多価アルコール又はポリエーテルポリオールと無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、イタコン酸、アジピン酸、イソフタル酸等の多塩基酸との縮合物であるポリエステルポリオール;カプロラクトン変性ポリテトラメチレンポリオール等のカプロラクトン変性ポリオール;ポリオレフィン系ポリオール;水添ポリブタジエンポリオール等のポリブタジエン系ポリオール等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレングリコール誘導体が好ましく用いられ、特にはポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルが好ましく用いられる。
【0068】
更には、かかるポリオールとして、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、酒石酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ジヒドロキシメチル酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、ホモゲンチジン酸等のカルボキシル基含有ポリオールや、1,4−ブタンジオールスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基又はスルホン酸塩基含有ポリオール等も挙げられる。
【0069】
ポリイソシアネートとポリオールの反応生成物を用いる場合は、例えば、上記ポリオールと上記ポリイソシアネートを反応させて得られる末端イソシアネート基含有ポリイソシアネートとして用いればよい。かかるポリイソシアネートとポリオールの反応においては、反応を促進する目的でジブチルスズジラウレートのような金属触媒や、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7のようなアミン系触媒等を用いることも好ましい。
【0070】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B1)としては、アルキレングリコール鎖を有するアルキレングリコール鎖含有ウレタン(メタ)アクリレート系化合物を用いることが優れた帯電防止性能を示す点で好ましい。
かかるアルキレングリコール鎖含有ウレタン(メタ) アクリレート系化合物は、上記ポリオールの中でも、アルキレングリコール系化合物を使用することによって得られるものである。かかるアルキレングリコール鎖含有ウレタン(メタ)アクリレート系化合物の構造としては、アルキレングリコール系化合物の両末端の水酸基のうち一方が上記ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応し、他方が水酸基のまま残っている、アルキレングリコール鎖構造を有するウレタン(メタ)アクリレートが優れた帯電防止性能を示す点で好ましい。かかる優れた帯電防止性能を示す理由は、このアルキレングリコール鎖構造を有するウレタン(メタ)アクリレートが活性エネルギー線照射により硬化した後でも、アルキレングリコール鎖の自由度が大きく、イオンの運搬が起こりやすいためと推測される。
【0071】
また、アルキレングリコール鎖含有ウレタン(メタ) アクリレート系化合物は、上記複数個の水酸基を有するポリオール系のアルキレングリコール系化合物に代えて、水酸基を1つのみ有するアルキレングリコール系化合物を使用して得られるものであってもよい。かかる水酸基を1つのみ有するアルキレングリコール系化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールセチルエーテル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールトリデシルエーテル、ポリエチレングリコールオレイルエーテル、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル等のポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のポリプロピレングリコール誘導体等のアルキル基含有ポリアルキレングリコール誘導体が挙げられる。
【0072】
上記ウレタン(メタ) アクリレート系化合物(B1)の製造方法としては、特に制限されず、例えば、水酸基含有(メタ) アクリル系化合物と多価イソシアネート化合物を不活性ガス雰囲気で混合し、30〜80℃、2〜10時間反応させる方法が挙げられる。この反応では、オクテン酸スズ、ジラウリル酸ジ−n−ブチルスズ、オクチル酸鉛、オクチル酸カリウム、酢酸カリウム、スタナスオクトエート、トリエチレンジアミン等のウレタン化触媒を用いるのが好ましい。
また、副反応抑制のため、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノエチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチルクレゾール等の重合禁止剤も用いることが好ましい。
【0073】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B1)の重量平均分子量は、好ましくは1000〜4000、更に好ましくは1000〜3500、特に好ましくは1200〜3000である。かかる重要平均分子量が小さすぎると硬化後に凝集力不足となる傾向があり、大きすぎると粘度が高くなりすぎ、製造が困難となる傾向がある。
【0074】
また、活性エネルギー線重合性化合物(B)として、上記のウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B1)の他に、1分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和モノマー、例えば、単官能モノマー、2官能モノマー、3官能以上のモノマーを用いることもでき、特に3官能以上のモノマーを用いることが好ましい。
【0075】
単官能モノマーとしては、エチレン性不飽和基を1つ含有するモノマーであればよく、例えば、スチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート等のフタル酸誘導体のハーフエステル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートモノエステル等が挙げられる。
【0076】
また、上記の他にアクリル酸のミカエル付加物あるいは2−アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルも挙げられ、アクリル酸のミカエル付加物としては、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸ダイマー、アクリル酸トリマー、メタクリル酸トリマー、アクリル酸テトラマー、メタクリル酸テトラマー等が挙げられる。また、特定の置換基をもつカルボン酸である2−アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルとしては、例えば2−アクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル等が挙げられる。更に、オリゴエステルアクリレートも挙げられる。
【0077】
2官能モノマーとしては、エチレン性不飽和基を2つ含有するモノマーであればよく、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートジエステル等が挙げられる。
【0078】
3官能以上のモノマーとしては、エチレン性不飽和基を3つ以上含有するモノマーであればよく、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0079】
また、上記エチレン性不飽和モノマーは、帯電防止性能や相溶性の点から、その構造中にアルキレングリコール鎖、水酸基などの親水性を示す構造部位を含むことも好ましい。
【0080】
これら上記のウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B1)やエチレン性不飽和モノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0081】
活性エネルギー線重合性化合物(B)の含有量としては、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して100重量部以下が好ましく、より好ましくは0.1〜50重量部、更に好ましくは0.5〜30重量部である。活性エネルギー線重合性化合物(B)の含有量が多すぎると、樹脂との相溶性が悪くなり、塗膜の白化する傾向が見られる。なお、活性エネルギー線重合性化合物(B)は必須ではないが、少なすぎる場合には凝集力不足となる傾向がある。
【0082】
上記活性エネルギー線重合開始剤(C)としては、光等の活性エネルギー線の作用によりラジカルを発生するものであれば特に限定されず、分子内自己開裂型の重合開始剤や水素引抜型の重合開始剤が用いられる。これら重合開始剤は、単独で、または2種以上を併せて使用される。
【0083】
分子内自己開裂型の重合開始剤としては、例えば、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピレンフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−アシロキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、4−ベンゾイル−4‘−メチルジフェニルサルファイド等が挙げられ、中でも2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好適である。
【0084】
また、水素引抜型の重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、3,3‘−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアンスラキノン、3,3’,4,4‘−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン等が挙げられ、中でもベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンが好適である。
【0085】
活性エネルギー線重合開始剤(C)の含有量としては、特に限定されないが、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部、特には0.2〜10重量部、更には0.3〜5重量部であることが好ましい。活性エネルギー線重合開始剤(C)が少なすぎると、紫外線等の活性エネルギー線照射による硬化にばらつきがでる傾向があり、多すぎると、架橋密度が下がってしまい凝集力が得難くなる傾向がある。
【0086】
また、必要に応じて、活性エネルギー線重合開始剤(C)の助剤として、更にトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4‘−ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等を併用することも可能である。これらは1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
【0087】
本発明の粘着剤は、分子中に酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有する熱可塑性樹脂(A)、または分子中に酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有する熱可塑性樹脂(A)とともに活性エネルギー線重合性化合物(B)及び/又は活性エネルギー線重合開始剤(C)を含有してなる樹脂組成物[I]に、活性エネルギー線を照射することにより粘着性能が付与されて調製される。
【0088】
上記活性エネルギー線照射に当たっては、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線照射による硬化が有利である。なお、電子線照射を行う場合は、活性エネルギー線重合開始剤(C)を用いなくても硬化し得る。
【0089】
かかる紫外線照射を行う時の光源としては、高圧水銀灯、無電極ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライト等が用いられる。高圧水銀灯の場合は、例えば5〜3000mJ/cm2、好ましくは10〜1000mJ/cm2の条件で照射が行われる。無電極ランプの場合は、例えば2〜1500mJ/cm2、好ましくは5〜500mJ/cm2の条件で照射が行われる。照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、塗工厚、その他の条件によっても異なるが、通常は数秒〜数十秒、場合によっては数分の1秒でもよい。電子線照射の場合には、例えば、50〜1000Kevの範囲のエネルギーを持つ電子線を用い、2〜50Mradの照射量とするのが好ましい。
【0090】
活性エネルギー線の照射量は、所望する粘着力等により異なり、一律に規定できないが、例えば、後述の帯電防止用の粘着シートにおける粘着剤であれば、50〜2000mJ/cm2であることが好ましく、更には80〜1500mJ/cm2、特には100〜1000mJ/cm2であることが好ましい。かかる照射量が少なすぎると、不充分な架橋に起因する凝集力不足となる傾向があり、多すぎると、基材や離型シートを劣化させる傾向にある。
【0091】
活性エネルギー線の照射により架橋された後の粘着剤は、ゲル分率が10〜100重量%であることが好ましい。かかるゲル分率が小さすぎると、凝集力が不足することに起因する糊残りが生じる傾向が見られる。かかるゲル分率の中でも一時保護用の粘着シートとする場合には、特には20〜100重量%、更には40〜99重量%であることが好ましく、永久接着用の粘着シートとする場合には、特には10〜98重量%、更には20〜95重量%であることが好ましい。
【0092】
なお、かかる粘着剤のゲル分率を上記範囲に調整するにあたっては、活性エネルギー線の照射量や照射強度を調整すること、自己開裂型と水素引抜型の種類の異なる2種の重合開始剤を併用すること、重合開始剤の2種併用については、各種類の割合を調整すること、重合開始剤の量を調整することなどにより達成される。また、活性エネルギー線の照射量や照射強度、重合開始剤の組成比、添加量は、それぞれの相互作用によりゲル分率が変化するので、それぞれバランスをとることが必要になる。
【0093】
上記ゲル分率は、架橋度の目安となるもので、以下の方法で算出される。
即ち、後述の如く得られる粘着シート(セパレーターを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。なお、基材の重量は差し引いておく。
【0094】
本発明の粘着剤には、必要に応じて、充填剤、帯電防止剤、顔料、希釈剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤等の添加剤を、必要とされる物性を損ねない範囲で、添加してもよい。これらの添加剤は、1種または2種以上、使用可能である。これらの添加剤の添加量は、所望する物性が得られるように適時設定すればよい。
【0095】
上記添加剤のうち帯電防止剤を含有することは、得られる粘着剤の帯電防止性能をより一層優れたものとするので好ましい。帯電防止剤としては、例えば、テトラアルキルアンモニウムスルホン酸塩等の第四級アンモニウム塩のカチオン型帯電防止剤、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールアルコールアルキレンオキサイド付加物リン酸エステル塩等のアニオン型帯電防止剤、過塩素酸リチウムや塩化リチウム等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0096】
また、本発明の粘着剤には、物性に影響を与えない範囲で、反応性架橋剤を含有させても良い。かかる反応性架橋剤としては、アクリル系樹脂(A1)等の熱可塑性樹脂(A)と反応可能であれば特に限定されず、例えば、
【0097】
2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびこれらのポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体等のイソシアネート系化合物;
【0098】
N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシングリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂;
【0099】
テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等のアジリジン化合物;
【0100】
ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン等のメラミン系化合物;
等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
【0101】
本発明において、反応性架橋剤を使用する場合、通常、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して0.005〜20重量部の反応性架橋剤を用いることができる。
【0102】
なお、架橋を促進するために、酸触媒、例えばパラトルエンスルホン酸、リン酸、塩酸、塩化アンモニウム等の架橋促進剤を併用することも可能で、かかる架橋促進剤の添加量は反応性架橋剤に対して10〜50重量%であることが好ましい。
【0103】
(3)粘着シートおよびその製造方法
次に、本発明の粘着シートおよびその製造方法について説明する。
本発明の粘着シートは上記(2)の粘着剤が基材上に積層されてなることを特徴とする。また、本発明の粘着シートの製造方法は、分子中に酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有する熱可塑性樹脂(A)、または前記熱可塑性樹脂(A)が少なくとも含有されてなる樹脂組成物[I]を基材上に設けた後、活性エネルギー線照射を行うことを特徴とする。
【0104】
本発明においては、上記(2)で説明した通り、熱可塑性樹脂(A)に活性エネルギー線重合性化合物(B)及び/又は活性エネルギー線重合開始剤(C)をさらに含有してなる樹脂組成物[I]が好ましい。
【0105】
なお、本発明における「シート」は、フィルムをも含めた意味である。
【0106】
熱可塑性樹脂(A)または上記樹脂組成物[I]を設ける基材としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ボリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン等のポリフッ化エチレン樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体;三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリアリレート;ポリイミド等の合成樹脂フィルム又はシート,アルミニウム、銅、鉄の金属箔,上質紙、グラシン紙等の紙、硝子繊維、天然繊維、合成繊維等からなる織物や不織布が挙げられる。これらの基材は、単層体として又は2種以上が積層された複層体として用いることができる。
【0107】
これら基材の中で、価格面を考慮すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂フィルム又はシートが好適に用いられる。
【0108】
また、基材に対する粘着剤の投錨性を上げるために、基材の表面に対して、コロナ放電処理、プラズマ処理、プライマーコート、脱脂処理、表面粗面化処理等の易接着性を改良する処理を施しても良いし、更なる帯電防止のために帯電防止層が設けられても良い。
【0109】
上記基材の厚さは、特に限定されないが、一般には500μm以下、好ましくは5〜300μm、更に好ましくは10〜200μm程度の厚さを例示することができる。
【0110】
上記基材上に設ける熱可塑性樹脂(A)または樹脂組成物[I]の厚みは、特に制限はないが、乾燥後において、一般に1〜100μm、好ましくは2〜50μm程度の厚さを例示することができる。厚過ぎると、粘着シートを被着体から剥離する際に粘着剤が被着体表面に糊残りする傾向があり、また、薄過ぎると、被着体に対する接着力が低下し、粘着シートを被着体に貼り合わせた後、被着体及び粘着シートが高温に晒された際に粘着シートが剥がれてしまうなどの問題が起こる傾向がある。
【0111】
本発明の粘着シートを被着体に貼り合わせるまで、その粘着剤を汚染から保護する目的で、粘着剤の表面にセパレータを積層することができる。セパレータとしては、上記で例示した合成樹脂フィルム又はシート、紙、布、不織布等の基材を離型処理したものを使用することができる。
【0112】
上記基材上に熱可塑性樹脂(A)または樹脂組成物[I]を設けるに当たっては、通常、熱可塑性樹脂(A)または樹脂組成物[I]の溶液として、特には溶剤により塗布に適した粘度に調整した後、基材に塗布し、乾燥することが行われる。塗布する方法としては、溶液状の熱可塑性樹脂(A)または樹脂組成物[I]を基材に直接塗工する直接塗工法や、溶液状の熱可塑性樹脂(A)または樹脂組成物[I]をセパレータに塗工したのち基材と貼り合わせる転写塗工法などが挙げられる。
【0113】
直接塗工法においては、基材に熱可塑性樹脂(A)または樹脂組成物[I]を塗工し加熱乾燥した後、活性エネルギー線を照射し、その後、セパレータを貼り合わせる方法や、基材に熱可塑性樹脂(A)または樹脂組成物[I]を塗工し加熱乾燥した後、セパレータを貼り合わせ、その後、活性エネルギー線を照射する方法などが挙げられる。塗工は、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の方法により行われる。
【0114】
一方、転写塗工法においては、セパレータに熱可塑性樹脂(A)または樹脂組成物[I]を塗工し加熱乾燥した後、活性エネルギー線を照射し、その後、基材を貼り合わせる方法や、セパレータに熱可塑性樹脂(A)または樹脂組成物[I]を塗工し加熱乾燥した後、基材を貼り合わせ、その後、活性エネルギー線を照射する方法などが挙げられる。塗工方法については、直接塗工と同様の方法が使用できる。
【0115】
本発明の粘着シートを被着する被着体の種類は、特に制限はないが、例えば、上記の基材で例示した、金属箔、合成樹脂フィルム又はシート、金属箔、紙、織物や不織布に加えて、ガラス板、合成樹脂板、金属板が挙げられる。
【0116】
本発明の粘着シートの初期粘着力は、被着体の材料等に応じて適宜決定される。例えば、SUS304BA板に貼着する場合には、0.01N/25mm〜50N/25mmの粘着力を有することが好ましく、一時保護用(表面保護用、マスキング用)に使用される場合は、0.01N/25mm〜5N/25mm、強粘着(永久接着)用に使用される場合は、3N/25mm〜50N/25mmの粘着力が好ましい。なお、永久接着の場合でもリワーク(貼り直し)時に静電気が発生するとゴミのかみこみ等があるので、帯電防止性が要求されることになる。
【0117】
上記の初期粘着力は、つぎのようにして算出される。まず、得られた粘着シートを25mm×100mmに切断した後、これを、被着体としてのステンレス板(SUS304BA板)に、23℃、相対湿度50%の雰囲気下で2kgゴムローラーを用いて2往復させることにより圧着し、試験片を作製する。この試験片を、同雰囲気下で、30分放置した後、剥離速度剥離速度300mm/minにより、180度剥離試験を行い、測定した粘着力(N/25mm)を、初期粘着力とする。
【0118】
また、本発明の粘着シートの経時粘着力は、通常、初期粘着力の7倍以下であることが好ましく、特には5倍以下、更には3倍以下であることが好ましい。かかる経時粘着力はつぎのようにして算出される。まず、上記初期粘着力と同様の方法により作製した試験片を、70℃、相対湿度50%の雰囲気下で、5日間放置する。その後、23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、剥離速度300mm/minにより、180度剥離試験を行い、測定した粘着力(N/25mm)を、経時粘着力とする。
【実施例】
【0119】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0120】
〔実施例1〕
<アクリル系樹脂(A1−1)の調製>
温度計、攪拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えた反応器内に、酢酸エチル50部を仕込み、撹拌しながら昇温し、78℃になったら、ブチルアクリレート70部、メチルメタクリレート20部、アクリル酸10部にアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03部を溶解させた混合物を2時間にわたって滴下した。更に、重合途中に、酢酸エチル10部にAIBN0.05部を溶解させた重合触媒液を逐次追加しながら7時間重合させた後、トルエンで希釈して、重量平均分子量45万のアクリル系樹脂(ア)の40%溶液を得た。
【0121】
上記で得られたアクリル系樹脂(ア)100部(固形分)に対し、トルエン−メタノールの混合溶液(トルエン/メタノール=1/3(重量比))で希釈し、中和剤として水酸化カリウムの80%溶液(カルボキシル基1モルに対して0.8当量)を含有させ、十分に撹拌して、アクリル系樹脂(A1−1)の20%溶液を得た。
【0122】
<ウレタンアクリレート系化合物(B1−1)の調製>
4ツ口丸底フラスコに還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計をとりつけ、イソホロンジイソシアネート17.5部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート82.5部、ジラウリル酸ジ−n−ブチルスズ0.02部、ヒドロキノンモノエチルエーテル0.03部を仕込み50℃にて7時間反応させ、重量平均分子量1300のウレタンアクリレート系化合物(B1−1)を得た。
【0123】
<樹脂組成物[I−1]の調製>
紫外線の遮断された部屋にて、250mlのポリエチレン容器にトルエン3部と上記ウレタンアクリレート系化合物(B1−1)2部を入れ、40℃にて溶解後、上記アクリル系樹脂(A1−1)の20%溶液100部と1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(日本チバガイギー社製、イルガキュア184)(C−1)0.7部を加えて撹拌し均一な樹脂組成物溶液を得た。
【0124】
<粘着シートの作製>
上記で得られた樹脂組成物溶液を、乾燥後の厚さが約25μmになるように、基材としてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ38μm)に塗布した後、100℃で2分間乾燥させた。その後、5.1m/minのコンベア速度でフィルムを搬送させた状態で、塗布面から18cmの高さに配置された高圧水銀灯ランプ80W、1灯を用いて、2パスの紫外線照射(積算照射量480mJ/cm2)を行って、PETフィルム上に粘着剤層を形成した。粘着剤層表面に、離型処理されたPETを貼着して保護し、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で1日間養生し、粘着シートを得た。粘着剤のゲル分率は98%であった。なお、ゲル分率は上記の方法に従って測定した。
【0125】
〔実施例2〕
<アクリル系樹脂(A1−2)の調製>
温度計、攪拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えた反応器内に、酢酸エチル50部を仕込み、撹拌しながら昇温し、78℃になったら、ブチルアクリレート40部、メチルアクリレート30部、アクリル酸10部、ポリエチレングリコールメタクリレート(PME−400:共栄社化学社製)20部にアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03部を溶解させた混合物を2時間にわたって滴下した。更に、重合途中に、酢酸エチル10部にAIBN0.05部を溶解させた重合触媒液を逐次追加しながら7時間重合させた後、トルエンで希釈して、重量平均分子量40万のアクリル系樹脂(A1−2)の40%溶液を得た。
【0126】
上記で得られたアクリル系樹脂(A1−2)100部(固形分)に対し、トルエン−メタノールの混合溶液(トルエン/メタノール=1/3(重量比))で希釈し、中和剤として水酸化カリウムの80%溶液(カルボキシル基1モルに対して1.0当量)を配合し、十分に撹拌して、アクリル系樹脂(A1−2)の20%溶液を得た。
【0127】
<樹脂組成物[I−2]の調製>
紫外線の遮断された部屋にて、250mlのポリエチレン容器にトルエン7.5部と活性エネルギー線硬化樹脂としてジペンタエリスリトールペンタアクリレート5部を入れ、40℃にて溶解後、上記アクリル系樹脂(A1−2)の20%溶液100部と1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンの混合物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア500」)(C−2)0.25部を加えて撹拌し均一な樹脂組成物溶液を得た。
【0128】
<粘着シートの作製>
上記で得られた樹脂組成物溶液を、乾燥後の厚さが約25μmになるように、基材としてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ38μm)に塗布した後、100℃で2分間乾燥させた。その後、5.1m/minのコンベア速度でフィルムを搬送させた状態で、塗布面から18cmの高さに配置された高圧水銀灯ランプ80W、1灯を用いて、2パスの紫外線照射(積算照射量480mJ/cm2)を行って、PETフィルム上に粘着剤層を形成した。粘着剤層表面に、離型処理されたPETを貼着して保護し、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で1日間養生し、粘着シートを得た。
【0129】
〔実施例3〕
<ウレタンアクリレート系化合物(B1−2)の調製>
4ツ口丸底フラスコに還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計をとりつけ、イソホロンジイソシアネート17.5部、ポリエチレングリコール(PEG1000)57.5部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート33.2部、ジラウリル酸−n−ブチルスズ0.02部、ヒドロキノンモノエチルエーテル0.03部を仕込み50℃にて7時間反応させ、重量平均分子量2500のウレタンアクリレート系化合物(B1−2)を得た。
【0130】
<樹脂組成物[I−3]の調製>
紫外線の遮断された部屋にて、250mlのポリエチレン容器にトルエン7.5部と活性エネルギー線重合性化合物として上記ウレタンアクリレート系化合物(B1−2)5部を入れ、40℃にて溶解後、上記アクリル系樹脂(A1−2)の20%溶液100部と1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンの混合物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア500」)(C−2)0.25部を加えて撹拌し均一な樹脂組成物溶液を得た。
【0131】
<粘着シートの作製>
上記で得られた樹脂組成物溶液を、乾燥後の厚さが約25μmになるように、基材としてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ38μm)に塗布した後、100℃で2分間乾燥させた。その後、5.1m/minのコンベア速度でフィルムを搬送させた状態で、塗布面から18cmの高さに配置された高圧水銀灯ランプ80W、1灯を用いて、2パスの紫外線照射(積算照射量480mJ/cm2)を行って、PETフィルム上に粘着剤層を形成した。粘着剤層表面に、離型処理されたPETを貼着して保護し、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で1日間養生し、粘着シートを得た。
【0132】
〔比較例1〕
<アクリル系樹脂(A1−3)の調製>
温度計、攪拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えた反応器内に、酢酸エチル50部を仕込み、撹拌しながら昇温し、78℃になったら、2−エチルヘキシルアクリレート94.8部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5部、アクリル酸0.2部にアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03部を溶解させた混合物を2時間にわたって滴下する。更に、重合途中に、酢酸エチル10部にAIBN0.05部を溶解させた重合触媒液を逐次追加しながら7時間重合させた後、トルエンで希釈して、重量平均分子量90万のアクリル系樹脂(A1−3)の40%溶液を得た。
【0133】
<樹脂組成物の調製>
帯電防止剤としての過塩素酸リチウム(融点236℃)0.01部、ポリプロピレングリコール(ジオール型、数平均分子量2000)0.49部の混合物を酢酸エチル50部で希釈して、帯電防止剤溶液(50重量%)を得た。アクリル系樹脂(A1−3)の40%溶液100部に対し、帯電防止剤溶液を8部添加、更に架橋剤としてコロネートL55E(TDI系架橋剤:日本ポリウレタン工業社製)を5部添加、撹拌し、均一な溶液を得た。
【0134】
<粘着シートの作製>
上記で得られた樹脂組成物溶液を、乾燥後の厚さが約25μmになるように、基材としてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ38μm)に塗布した後、100℃で2分間乾燥させた。その後、塗工面に、離型処理されたPETを貼着して保護し、温度40℃の雰囲気下で3日間養生し、粘着シートを得た。
【0135】
上記の実施例1〜3及び比較例1で得られた粘着シートについて、以下の評価を行った。なお、離型処理されたPETは各種測定試験を実施する際に引き剥がした。
【0136】
〔初期粘着力〕
被着体としてステンレス板(SUS304BA板)に、25mm×100mmの上記粘着シートを、23℃、相対湿度50%の雰囲気下で2kgゴムローラーを用いて2往復させることにより圧着し、同雰囲気下で30分放置した後、剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定した。
【0137】
〔経時粘着力〕
得られた粘着シートより25mm×100mmの大きさの試験片を作製し(切り出し)、この試験片を被着体(SUS304BA板)に2kgローラーを2往復させる方法で圧着し、70℃で5日間放置後、23℃、相対湿度50%雰囲気下で、剥離速度300mm/minで180度剥離強度(α)(N/25mm)を測定した。
【0138】
〔被着体への耐汚染性〕
被着体への耐汚染性は、上記経時粘着力(α)を測定した後の各被着体表面の様子を観察し、以下の基準で評価した。
【0139】
○ : 全く汚染が確認されなかった。
△ : 僅かに汚染が確認された。
× : 明らかに汚染が確認された。
【0140】
〔帯電防止性能:表面抵抗〕
離型処理されたPETが引き剥がされた粘着シートを、温度23℃、相対湿度50%の条件に3時間放置し、調湿後、ハイレスターUP(三菱化学社製)を用いて測定した。値が小さいほど帯電防止性能が高い。実施例1〜3及び比較例1の評価結果を表1に示す。
【0141】
【表1】

【0142】
表1に示すように、実施例1の粘着シートは、帯電防止性に優れる上、初期粘着力が低く、経時的な粘着力の増大も小さく、更に被着体への耐汚染性も良好である。また、アルキレングリコール鎖を有するアクリル系樹脂(A1−2)を用いた実施例2の粘着シート、およびアクリル樹脂(A1−2)とアルキレングリコール鎖を有する活性エネルギー線重合性化合物(ウレタンアクリレート系化合物(B1−2))を用いた実施例3の粘着シートに関しては、実施例1の粘着シートよりも更に帯電防止性能に優れるものであることがわかる。
【0143】
一方、比較例1の粘着シートでは、粘着剤層中の帯電防止剤がブリードするので、被着体への耐汚染性が悪い。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明の活性エネルギー線硬化用樹脂組成物は、帯電防止性が付与された粘着剤の製造に好適であり、本発明の粘着剤は、とりわけ液晶パネル、プラズマディスプレイパネル、偏光板、CRT(ブラウン管)等の光学部材の表面を保護するための粘着シートの形成に好適に用いられる。また、本発明の粘着剤は、帯電防止性が要求される建材分野にも利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有する熱可塑性樹脂(A)を含有してなることを特徴とする活性エネルギー線硬化用樹脂組成物。
【請求項2】
分子中に酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有する熱可塑性樹脂(A)、または前記熱可塑性樹脂(A)が少なくとも含有されてなる樹脂組成物[I]に、活性エネルギー線を照射してなることを特徴とする粘着剤。
【請求項3】
前記樹脂組成物[I]が活性エネルギー線重合性化合物(B)をさらに含有してなることを特徴とする請求項2に記載の粘着剤。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂(A)が、分子中に酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有するアクリル系樹脂(A1)であることを特徴とする請求項2または3記載の粘着剤。
【請求項5】
前記アクリル系樹脂(A1)が分子中に酸塩基のイオン対を有しており、
前記イオン対が、カルボキシル基含有モノマーを共重合してなるカルボキシル基含有アクリル系樹脂中のカルボキシル基を中和することによって得られることを特徴とする請求項4記載の粘着剤。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂(A)がアルキレングリコール鎖をさらに有することを特徴とする請求項2〜5いずれか記載の粘着剤。
【請求項7】
前記活性エネルギー線重合性化合物(B)がウレタン(メタ)アクリレート系化合物であることを特徴とする請求項3〜6いずれか記載の粘着剤。
【請求項8】
前記活性エネルギー線重合性化合物(B)がアルキレングリコール鎖含有ウレタン(メタ)アクリレート系化合物であることを特徴とする請求項3〜7いずれか記載の粘着剤。
【請求項9】
前記樹脂組成物[I]が活性エネルギー線重合開始剤(C)をさらに含有してなることを特徴とする請求項2〜8いずれか記載の粘着剤。
【請求項10】
請求項2〜9いずれか記載の粘着剤が基材上に積層されてなることを特徴とする粘着シート。
【請求項11】
分子中に酸塩基のイオン対及び/又はベタイン構造を有する熱可塑性樹脂(A)、または前記熱可塑性樹脂(A)が少なくとも含有されてなる樹脂組成物[I]を基材上に設けた後、活性エネルギー線照射を行うことを特徴とする粘着シートの製造方法。
【請求項12】
前記樹脂組成物[I]が活性エネルギー線重合性化合物(B)及び/又は活性エネルギー線重合開始剤(C)をさらに含有してなることを特徴とする請求項11記載の粘着シートの製造方法。

【公開番号】特開2008−308670(P2008−308670A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122899(P2008−122899)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】