説明

活性ポリオキサゾリンおよびそれを含む組成物

本開示は、さまざまな反応条件下において種々の標的分子への一官能性POZ誘導体の共役を可能にし、加水分解に安定な標的分子−POZ複合体を産生する、一連の官能性活性基を有する、末端を活性化した一官能性POZ誘導体を提供する。さらに、本開示は、本開示の末端を活性化した一官能性POZ誘導体、および本開示の末端を活性化した一官能性POZ誘導体を使用して生成される加水分解に安定な標的分子−POZ複合体の新規の合成方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年2月28日出願の米国特許仮出願第60/892、212号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、ポリオキサゾリン誘導体、合成方法およびかかるポリオキサゾリン誘導体の産生において有用な中間化合物、ならびにかかるポリオキサゾリン誘導体を使用して産生される加水分解に安定な標的分子−ポリオキサゾリン複合体に関する。
【背景技術】
【0003】
重合体で修飾した治療薬は、現代の薬学において非常に有用性が高いことが証明されている。特に、ポリエチレングリコール(PEG)にカップリングされるタンパク質は、現在一連の疾病の治療に非常に重要な多くの治療法を成している。重合体で修飾した治療薬の成功により、とりわけポリエチレングリコールにはない性質を有する重合体を提供するために、かかる用途を有する重合体の範囲を拡大することに関心が高まっている。
【発明の概要】
【0004】
(定義)
本願で使用する「POZ」「POZ化合物」または「POZ重合体」という用語は、構造−[N(COR)CHCH−を有する反復単位を含む2−置換−2−オキサゾリンの重合体を指し、Rは、各反復単位について、置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニル、アラルキルまたはヘテロシクリルアルキル基から独立して選択され、nは3から1000であり、一実施形態では、置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニル、アラルキルまたはヘテロシクリルアルキル基は、1から10個の炭素原子を含み、さらに具体的な実施形態では、Rは、メチル、エチルまたはn−プロピルである。
【0005】
本願で使用する「PMOZ」という用語は、構造−[N(COCH)CHCH−を有する反復単位を持つPOZを指す。
【0006】
本願で使用する「PEOZ」という用語は、構造−[N(COCHCH)CHCH−を有する反復単位を持つPOZを指す。
【0007】
本願で使用する「M−POZ」「M−PMOZ」または「M−PEOZ」という用語は、開始端の窒素がメチルに結合されている上記の重合体を指す。
【0008】
本願で使用する「POZ誘導体」または「ポリオキサゾリン誘導体」という用語は、POZ重合体を含む構造を指し、このPOZ重合体は、POZ重合体の末端部に単一の活性官能基を有し、この官能基は、標的分子上の化学基と直接または間接に結合を生成することができ、一実施形態では、このPOZ誘導体は一官能性POZ誘導体である。
【0009】
本願で使用する「標的分子」という用語は、治療的、診断的用途もしくは標的機能を有するあらゆる分子を指し、標的分子は、治療的部分(薬を含むがこれに限定しない)、診断的部分、標的部分、有機小分子、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、抗体断片およびタンパク質を含むがこれらに限定されない、本開示のPOZ重合体またはPOZ誘導体の活性官能基と反応することができる。
【0010】
本願で使用する「加水分解に安定の標的分子−POZ複合体」という用語は、POZ複合体と標的分子の間のすべての化学結合が加水分解に安定な、本開示のPOZ誘導体と標的分子の複合体を指す。
【0011】
本願で使用する「加水分解に安定」という用語は、生理学的条件下において水溶液中で安定である結合を指し、一実施形態では、かかる結合は少なくとも12時間、24時間、48時間、96時間、192時間またはそれ以上安定であり、代替の実施形態では、かかる結合は無期限に安定である。
【0012】
本願で使用する「加水分解に不安定な」という用語は、生理学的条件下において水溶液中で安定でない結合を指す。
【0013】
本願で使用する「生理学的条件」という用語は、6から8のpHおよび30から42℃の温度を有する水溶液を指す。
【0014】
本願で使用する「活性官能基」という用語は、求電子基または求核基に容易に反応するか、または環化付加反応によって容易に反応する基を指し、反応に強力な触媒作用、高温、または実行不可能な反応条件を必要とする基とは対照的である。
【0015】
本願で使用する「結合する」「結合した」「結合」または「リンカー」という用語は、本願に記載のPOZ誘導体またはその組成物に関して使用される際、通常は化学反応の結果として形成され、典型的には共有結合である、基または結合を指す。
【0016】
本願で使用する、ヒドロキシル基、アミン基、スルフヒドリル基および他の反応基に関する「保護された」という用語は、本願に記載の手順を使用して付加または除去されることができる、当業者には周知の、Protective Groups in Organic Synthesis,Greene,T.W.;Wuts,P.G.M.,John Wiley&Sons,New York,N.Y.,(3rd Edition,1999)等に記載の保護基を用い、望ましくない反応から保護された、これらの官能基の形成を指す。保護されたヒドロキシル基の例は、t−ブチルジメチル−クロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン、トリエチルクロロシランなどを含むがこれらに限定されない試薬を用いたヒドロキシル基の反応などによって得られるシリルエステル、置換メチルおよびメトキシメチルエーテル、メチチオネチルエーテル、ベンジルオキシメチルエーテル、t−ブトキシメチルエステル、2−メトキシエトキシエチルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、1−エトキシエチルエーテル、アリルエーテル、ベンジルエーテル等(必ずしもこれらに限定されない)のエチルエーテル、ベンゾイルギ酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、およびトリフルオロ酢酸塩等(必ずしもこれらに限定されない)のエステル等を含むがこれらに限定されない。保護されたアミン基の例としては、ホルムアミド、アセトアミド、トリフルオロアセトアミド、およびベンズアミドを含む、アミド、フタルイミド、およびジチオスクシンイミドなどのイミド等が挙げられるが、これらに限定されない。保護されたスルフヒドリル基の例としては、S−ベンジルチオエーテル、およびS−4−ピコリルチオエーテルなどのチオエーテル、ヘミチオ、ジチオおよびアミノチオアセタールなどの置換S−メチル誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本願で使用する「アルキル」という用語は、単独でもしくは置換基の一部として使用される場合のどちらも、1から20個の炭素原子を含む直鎖炭化水素基を含む。したがって、この語句は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等の直鎖アルキル基を含む。この語句はまた、例として提供される以下のものを含むが、これらに限定されない、直鎖アルキル基の分鎖異性体を含む。−CH(CH、−CH(CH)(CHCH)、−CH(CHCH、−C(CH、−C(CHCH、−CHCH(CH、−CHCH(CH)(CHCH)、−CHCH(CHCH、−CHC(CH、−CHC(CHCH、−CH(CH)CH(CH)(CHCH)、−CHCHCH(CH、−CHCHCH(CH)(CHCH)、−CHCHCH(CHCH、−CHCHC(CH、−CHCHC(CHCH、−CH(CH)CHCH(CH、−CH(CH)CH(CH)CH(CH)CH(CH、−CH(CHCH)CH(CH)CH(CH)(CHCH)。この語句はまた、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチル等の環状アルキル基を含み、かかる環は上に定義される直鎖および分鎖アルキル基で置換される。この語句はまた、アダマンチルノルボルニルおよび二環状[2.2.2]オクチル等(必ずしもこれらに限定されない)の多環状アルキル基を含み、かかる環は上に定義される直鎖および分鎖アルキル基で置換される。
【0018】
本願で使用する「アルケニル」という用語は、単独でもしくは置換基の一部として使用される場合のどちらも、任意の2個の隣接する炭素原子の間に少なくとも1つの二重結合を有するアルキル基を含む。
【0019】
本願で使用する「アルキニル」という用語は、単独でもしくは置換基の一部として使用される場合のどちらも、任意の2個の隣接する炭素原子の間に少なくとも1つの三重結合を有するアルキル基を含む。
【0020】
本願で使用する「置換されていないアルキル」「置換されていないアルケニル」および「置換されていないアルキニル」という用語は、ヘテロ原子を含まないアルキル、アルケニルおよびアルキニル基を指す。
【0021】
「置換されているアルキル」「置換されているアルケニル」および「置換されているアルキニル」という語句は、(1つまたはそれ以上の)炭素あるいは(1つまたはそれ以上の)水素への1つ以上の結合が、(必ずしもこれらに限定されないが)以下のような非水素または非炭素原子への結合で置き換えられる、上で定義されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基を指す。アルコキシ基またはアリールオキシ基等の基の酸素原子、アルキルおよびアリールスルフィド基、スルホン基、スルホニル基、およびスルホキシド基などの基の硫黄原子、トリアルキルシリル基、ジアルキルアリルシリル基、アルキルジアリルシリル基、およびトリアリルシリル基などの基のシリコン原子、および種々の基の他のヘテロ原子等。
【0022】
本願で使用する「置換されていないアリール」という用語は、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ビフェニルおよびジフェニル基等(必ずしもこれらに限定されない)の、環部に6個から12個の炭素原子を有する、ヘテロ原子を含まない単環式または二環式芳香族炭化水素基を指す。「置換されていないアリール」という語句は、ナフタレン等の縮合環を含む基を含むが、トリル等のアリール基は、下に説明するとおり本願では置換されているアリール基と考えられているため、環員のうちの1つに結合するアルキルまたはハロ基などの他の基を有するアリール基は含まない。しかしながら、置換されていないアリール基は、親化合物の1個以上の炭素原子、酸素原子、窒素原子、および/または硫黄原子に結合され得る。
【0023】
本願で使用する、「置換されているアリール基」という用語は、置換されていないアリール基との関連において、置換されていないアルキル基に関して置換されているアルキル基が有するものと同一の意味を有する。しかしながら、置換されているアリール基はまた、芳香族炭素のうちの1つが、置換されているアルキルに関して上に説明した原子等(必ずしもこれらに限定されない)の、非炭素もしくは非水素原子のうちの1つに結合するアリール基を含み、また、アリール基の芳香族炭素のうちの1つが、本願で定義される置換されているおよび/または置換されていないアルキル、アルケニルまたはアルキニル基に結合するアリール基を含む。これには、アリール基の2個の炭素原子がアルキルまたはアルケニル基の2個の原子に結合して縮合環系(例えば、ジヒドロナフチルまたはテトラヒドロナフチル)を画定する結合配置も含む。したがって、「置換されているアリール」という語句は、とりわけトリル、およびヒドロキシフェニルを含むが、これらに限定されない。
【0024】
本願で使用する「置換されていないアラルキル」という用語は、置換されていないかまたは置換されているアルキルまたはアルケニル基の水素または炭素結合が、上に定義される置換されているかもしくは置換されていないアリール基への結合に置き換えられる、上で定義される置換されていないアルキルまたはアルケニル基を指す。例えば、メチル(CH)は置換されていないアルキル基である。メチルの炭素がベンゼンの炭素に結合される場合等のように、メチル基の水素原子がフェニル基への結合に置き換えられる場合、化合物は置換されていないアラルキル基(すなわち、ベンジル基)である。
【0025】
本願で使用する、「置換されているアラルキル」という用語は、置換されていないアラルキル基との関連において、置換されていないアリール基に関して置換されているアリール基が有するものと同一の意味を有する。しかしながら、置換されているアラルキル基はまた、基のアルキル部分の炭素または水素結合が非炭素または非水素原子への結合に置き換えられる基を含む。
【0026】
本願で使用する「置換されていないヘテロシクリル」という用語は、1つ以上がN、O、およびS等(必ずしもこれらに限定されない)のヘテロ原子である、3個以上の環原子を含むキヌクリジル等(必ずしもこれらに限定されない)の、単環式、二環式、および多環式の環状化合物を含む芳香族ならびに非芳香族の環状化合物を意味する。「置換されていないヘテロシクリル」という語句は、ベンズイミダゾリルなどの縮合複素環を含むが、2−メチルベンズイミダゾリル等の化合物は上に記載の通り「置換されているヘテロシクリル」基であるため、環原子のうちの1つに結合するアルキルまたはハロ基等の他の基を有するヘテロシクリル基は含まない。ヘテロシクリル基の例としては、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ジヒドロピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル、テトラゾリル等(必ずしもこれらに限定されない)の1から4個の窒素原子を含む不飽和3員環から8員環、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル等(必ずしもこれらに限定されない)の、1から4個の窒素原子を含む飽和3員環から8員環、インドリル、イソインドリル、インドリニル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル等(必ずしもこれらに限定されない)の1から4個の窒素原子を含む縮合不飽和複素環基、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル等(必ずしもこれらに限定されない)の1から2個の酸素原子および1から3個の窒素原子を含む不飽和3員環から8員環、モルホリニル等(必ずしもこれに限定されない)の1から2個の酸素原子および1から3個の窒素原子を含む飽和3員環から8員環、例えば、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾオキサジニル(例えば、2H−1、4−ベンゾオキサジニル等)等の1から2個の酸素原子および1から3個の窒素原子を含む不飽和縮合複素環基、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル(例えば、1、2、3−チアジアゾリル、1、2、4−チアジアゾリル、1、3、4−チアジアゾリル、1、2、5−チアジアゾリル等)等(必ずしもこれらに限定されない)の1から3個の硫黄原子および1から3個の窒素原子を含む不飽和3員環から8員環、チアゾロジニル等(必ずしもこれらに限定されない)の1から2個の硫黄原子および1から3個の窒素原子を含む飽和3員環から8員環、チエニル、ジヒドロジチイニル、ジヒドロジチオニル、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロチオピラン等(必ずしもこれらに限定されない)の1から2個の硫黄原子を含む飽和ならびに不飽和3員環から8員環、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアジニル(例えば、2H−1、4−ベンゾチアジニル等)、ジヒドロベンゾチアジニル(例えば、2H−3、4−ジヒドロベンゾチアジニル等)等(必ずしもこれらに限定されない)の1から2個の硫黄原子および1から3個の窒素原子を含む不飽和縮合複素環、フリル等(必ずしもこれに限定されない)の酸素原子を含む不飽和3員環から8員環、ベンゾジオキソジル(例えば、1、3−ベンゾジオキソイル等)等の1から2個の酸素原子を含む不飽和縮合複素環、ジヒドロオキサチイニル等(必ずしもこれに限定されない)の1個の酸素原子および1から2個の硫黄原子を含む不飽和3員環から8員環、1、4−オキサチアン等の1から2個の酸素原子および1から2個の硫黄原子を含む飽和3員環から8員環、ベンゾチエニル、ベンゾジチイニル等の1から2個の硫黄原子を含む不飽和縮合環、およびベンゾオキサチイニル等の1個の酸素原子および1から2個の酸素原子を含む不飽和縮合複素環が挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロシクリル基は、環の1個以上のS原子が1個または2個の酸素原子に二重結合する、上に説明のもの(スルホキシドおよびスルホン)も含む。例えば、ヘテロシクリル基は、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロチオフェン酸化物、およびテトラヒドロチオフェン、1、1−二酸化物を含む。好ましいヘテロシクリル基は、5つ、または6つの環員を含む。より好ましいヘテロシクリル基は、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、イミダゾール、ピラゾール、1、2、3−トリアゾール、1、2、4−トリアゾール、テトラゾール、チオモルホリン、チオモルホリンのS原子が1個以上のO原子に結合するチオモルホリン、ピロール、ホモピペラジン、オキサゾリジン−2−オン、ピロリジン−2−オン、オキサゾール、キヌクリジン、チアゾール、イソオキサゾール、フラン、およびテトラヒドロフランを含む。
【0027】
本願で使用する「置換されているヘテロシクリル」という用語は、置換されていないヘテロシクリル基との関連において、置換されていないアルキル基に関して置換されているアルキル基が有するものと同一の意味を有する。しかしながら、置換されているヘテロシクリル基はまた、炭素のうちの1つが、置換されているアルキルおよび置換されているアリール基に関して上で説明する原子等(必ずしもこれらに限定されない)の非炭素もしくは非水素原子のうちの1つに結合されるヘテロシクリル基を含み、また、ヘテロシクリル基の1個以上の炭素が、本願で定義される置換および/または置換されていないアルキル、アルケニルまたはアリール基に結合されるヘテロシクリル基を含む。これは、ヘテロシクリル基の2個の炭素原子がアルキル、アルケニル、またはアルキニル基の2個の原子に結合して縮合環系を画定する結合配置を含む。例としては、とりわけ2−メチルベンズイミダゾリル、5−メチルベンズイミダゾリル、5−クロロベンズチアゾリル、1−メチルピペラジニル、および2−クロロピリジルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本願で使用する「置換されていないヘテロシクリルアルキル」という用語は、置換されていないアルキルまたはアルケニル基の水素または炭素結合が、上に定義される置換もしくは置換されていないヘテロシクリル基への結合に置き換えられる、上で定義される置換されていないアルキルまたはアルケニル基を指す。例えば、メチル(CH)は置換されていないアルキル基である。メチル基の水素原子がヘテロシクリル基への結合と置き換えられる場合、たとえば、メチルの炭素がピリジンの炭素2(炭素のうちの1個がピリジンのNに結合される)またはピリジンの炭素3または4に結合される等の場合、化合物は置換されていないヘテロシクリルアルキル基である。
【0029】
本願で使用する「置換されているヘテロシクリルアルキル」という用語は、置換されていないヘテロシクリルアルキル基との関連において、置換されていないアリール基に関して置換されているアリール基が有するものと同一の意味を有する。しかしながら、置換されているヘテロシクリルアルキル基はまた、非水素原子が、ピペリジニルアルキル基のピペリジン環の中の窒素原子等(必ずしもこれらに限定されない)のヘテロシクリルアルキル基のヘテロシクリル基におけるヘテロ原子に結合する基を含む。
【0030】
(概略)
ポリオキサゾリン(POZ)は、2−置換−2−オキサゾリンモノマーから調製される重合体である。これらの重合体は水溶性であり、哺乳類のモデル系において無毒性であると報告されている。POZは、化学量論的に適切な量の2−アルキル−2−オキサゾリンと、メチルp−トルエンスルホナート(または「トシレート」、CH−OSO−C−CH)またはメチルトリフラート(CH−OSO−CF)、等の求電子性開始剤との反応によって一般的に調製され、続いて水酸化物またはアミン等の求核試薬による末端停止が行われる。産生される重合体は、便宜上、開始基が最も左の基で表され、末端基が最も右の基で表され、2−アルキル−2−オキサゾリン成分が中央に表される省略形で説明される。したがって、この省略型の説明が本願明細書において使用される場合、別様に表されない限り、左側は「開始末端」を表し、右側は「停止末端」を表すことが意図される。
【0031】
例えば、2−置換−2−オキサゾリンが2−メチル−2−オキサゾリンである場合、メチルトシレートが開始剤として使用され、水酸化物が末端停止剤として使用され、以下の重合体が産生される。
CH−[N(COCH)CHCH−OH
上の重合体は便宜上、M−PMOZ−OHという簡便な表記法で説明され、式中、メチル開始剤は最も左のM(開始末端)で表され、PMOZは反復単位のメチルがPMOZのMで表されるポリメチルオキサゾリンを表し、停止ヒドロキシルは(停止末端における)−OHで表される。重合度合である、nは、約3から約1000の範囲であり得る。
【0032】
他のよく使用されるモノマーは、2−エチル−2−オキサゾリンであり、そこでメチルトリフラートの開始と水酸化物の停止は、以下のPOZ重合体を提供する。
CH−[N(COCHCH)CHCH−OH
上の重合体は便宜上、M−PEOZ−OHという簡便な表記法で説明され、メチル開始剤は最も左のM(開始末端)で表され、PEOZは反復単位のメチルがPEOZのEで表されるポリメチルオキサゾリンを表し、停止ヒドロキシルは(停止末端における)−OHで表される。
【0033】
より複雑な求電子試薬または求核試薬が使用され得る。例えば、2−エチル−2−オキサゾリン重合のベンジル臭化物による開始と、過剰エチレンジアミンによる停止は、以下の重合体を産する。
−CH−[N(COCHCH)CHCH−NH−CHCH−NH
また、同一の重合体に異なるモノマーを使用して、さまざまなランダムまたはブロック共重合体を得ることができる。
【0034】
重合プロセスは、求電子試薬による開始がオキサゾリニウムカチオンを産出し、これが次に追加的なモノマー単位と連鎖反応を起こし、成長する「リビング」カチオンを産出するので、リビングカチオン重合と称される。
【0035】
【化1】

【0036】
現実には環状形態が当然最も重要であり、所望の生成物は環の5位への求核攻撃によって産生されるが、末端停止生成物は、リビングカチオンが以下の非環状形態で表されると仮定することによって予測できる。
CH−[N(COCH)CHCH−N(COCH)CHCH
本開示において、このカチオンはM−PMOZと表される。上に記載のとおり、このPOZカチオンは水酸化物またはアミンなどの求核試薬と反応することによって「末端停止」され得る。興味深いことに、弱い求核試薬水による末端停止では、5−攻撃(「熱力学的」生成物)の所望の生成物が得られず、2位の攻撃(「動的」生成物)が得られる。この動的生成物は安定でなく、再配列してエステル生成物をもららすか、またはカチオンに戻り得る(O.Nuyken、G.Maier、A.Gross、Macromol.Chem.Phys.197、83−85(1996))。
【0037】
ヒドロキシルで末端停止された重合体をさらに修飾して、所望の誘導体を得ることができる。例えば、Zalipskyは末端−OHをグルタル酸無水物と反応させてグルタラート基で末端停止したPOZを得た(M.C.Woodle、C.M.Engbers and S.Zalipsky、Bioconjugate Chem.、1994、5、493−496)。
M−PMOZ−OC−CHCHCH−CO
上の重合体は、スクシニミジルエステルとして活性化され、リン脂質にカップリングされてPOZ修飾されたリポソームの調製に使用された。これらのリポソームは、PEG修飾されたリポソームに類似した特性を有することが明らかとなった。
【0038】
アミンで末端停止された重合体はまた、さらなる誘導体化のための有用な反応基を提供する。例えば、メチルアミンによる末端停止は、活性基−NHCHで末端停止されたPOZを得る。環状ジアミンピペラジンによる末端停止もまた有用であり得る。
【0039】
オキサゾリン重合もまた、機能的求核試薬によって開始され得る。例えば、求電子性開始剤であるエチル3−ブロモプロピオン酸塩が、2−エチル−2−オキサゾリン重合の開始に使用されている。水酸化物による末端停止は、以下の重合体を得る。
HOC−CHCH−[N(COCHCH)CHCH−OH
【0040】
開始末端および停止末端に同一の官能基を有するPOZは、開始末端の基が窒素に付着し、一方停止末端の基が炭素に付着するため、化学的に異なることは、注目すべきである。例えば、以下の2つの重合体はどちらもPMOZのプロピオン酸誘導体であるが、開始末端のプロピオン酸が窒素に付着し、停止末端のプロピオン酸が炭素に付着する点で異なる(明確にするため、最初または最後のモノマー単位を示す)。
HOOCCHCH−N(COCH)CHCH−PMOZ−OH
M−PMOZ−N(COCH)CHCH−O−CHCHCOOH
【0041】
活性官能基を持つポリオキサゾリンを調製するさらに別の経路としては、2−エチル−2−オキサゾリンなどのモノマーを2位に活性官能基を有するオキサゾリンモノマーで重合するものがある。例えば、Jordanらは2位にアセチレンおよび保護されたアルデヒド、カルボン酸およびアミンを持つオキサゾリンを調製した(F.C.Gaertner、R.Luxenhofer、B.Blechert、R.Jordan and M.Essler、J.Controlled Release、2007、119、291−300)。2−エチル−2−オキサゾリンとのこれらの官能性モノマーの共重合により、複数のペンダントまたは側鎖活性官能基を持つランダム共重合体を得る。例えば、メチルトリフラートによる2−エチル−2−オキサゾリンと2−ペンチニル−2−オキサゾリンの重合の開始、それに続くピペラジン(NHCNH)による末端停止は、以下のランダム共重合体を得る。
CH−{[N(COCHCH)CHCH−[N(COCHCHCH−CCH)CHCHran−NCNH
下付き文字「ran」は、重合体がランダム共重合体であることを示す。nの値は典型的には約20から30であり、mは約2から5である。
【0042】
ポリペプチド等(必ずしもこれに限定されない)の標的分子にPOZをカップリングするには、活性官能基を標的分子上の基と結合を形成することができる重合体の少なくとも1つの末端に付加することによって、重合体を「活性化」することが必要である。POZを標的分子にカップリングするための活性化の研究は、これまでにほとんど行われていない。活性基は、開始(左)端または停止(右)端、または双方に加えられ得る。例えば、標的分子がポリペプチドである場合、ポリペプチドはPOZの活性官能基と反応し得る多数のアミノ基を表面に有し、POZのタンパク質への付着の唯一の公開された例において、Myamotoらは下記のPOZを酵素カタラーゼのアミノ基に付着させた(M.Myamoto、T.Saegusa, et al.,Macromolecules、1990、23、3201−3205)。
M−PMOZ−OC−CHCHCH−CO−NHS
【0043】
この場合、M−PMOZ−OHはグルタル酸無水物と反応し、得られたカルボン酸はN−ヒドロキシスクシンイミドで活性化され、これはNHSで示される。NHS活性エステルは、よく使用される活性型のカルボン酸である。この実施例では、POZ−カタラーゼ共役は活性であると証明されている。
【0044】
従来技術では、標的分子に共役することができる末端が活性化された3つのPOZ化合物を記載している。しかしながら、前述のそれぞれのPOZ誘導体には、制限がある。Zalipskyは、活性化基が分子の開始末端に付着された活性化されたプロピオン酸POZ化合物、NHS−OOCCHCH−PEOZ−OHについて記載した(S.Zalipsky、C.B.Hansen、J.M.Oaks and T.M.Allen、J.Pharm.Sci.、85、133−137(1996))。POZ化合物は、活性化基を含む部分を使用した重合の開始によって作製された。しかしながら、Jordan、Hoogenboomらは、異なる活性化基との重合の開始は、最適の反応条件を決定するために大規模な研究を必要とする、大いに異なる反応条件を必要とし得ることを示した。したがって、活性化されたPOZ化合物を作製するための開始剤の方法を選択する場合、それぞれの新しい化合物に適した反応条件を決定するために、予備的な研究を行わなければならない。また、上記の化合物は、アルキル基などの不活性基ではなく、ヒドロキシル基で末端停止されるため、二官能性である。また、以下で述べるとおり、ハロゲン化アルキルとの重合の開始は、リビングカチオン構造によって進行せず、したがって高い多分散性が見られる。
【0045】
NHSで活性化されたグルタラート誘導体は、MyamotoおよびZalipskyによって作製されている。この誘導体は、停止末端活性化基としてOH基を有する一官能性POZ重合体(M−PMOZ−OH)から調製された。しかしながら、グルタラートおよびコハク酸エステル誘導体は、標的分子をPOZ化合物に結合する加水分解に不安定なエステル結合を有する。例えば、NHS−活性化されたグルタラート誘導体は、本願ではタンパク質として説明される標的分子と、下記のように反応する。
【0046】
M−PMOZ−OC−CHCHCH−CO−NHS+タンパク質−NH−>
−>M−PMOZ−OC−CHCHCH−CONH−タンパク質
加水分解に不安定なエステル結合の結果として、産生された標的分子−POZ複合体は、ヒトや他の哺乳類等の生体系の中において、生理学的条件下で安定せず、加水分解してPOZをタンパク質から開裂する。
M−PMOZ−OC−CHCHCH−CONH−タンパク質−>
−>M−PMOZ−OH+HOC−CHCHCH−CONH−タンパク質
【0047】
さらに、上のスキームにおいて、標的分子−POZ複合体が不安定なエステル結合の開裂による加水分解を受ける場合、得られた標的分子は「タグ」または「ハプテン」を含むこととなり、標的分子の免疫原性を招く。
【0048】
最後に、オルトピリジルジスルフィド(OPSS)誘導体が作製されている(G.Hsiue, et al.,Bioconjugate Chem.,2006,17,781−786)。この誘導体は理論的にはタンパク質チオール基にカップリングされ、ジスルフィド結合を得るが、これは、Hsiueによっては行われておらず、ジスルフィドは不安定であり、血漿中のすばやい減少が起こりやすいことが知られている。
【0049】
既知のPOZ重合体を標的分子の修飾に使用することを妨げているさらなる問題は、いくつかのPOZ重合体は単一の活性官能基を有せず、すなわち、これらは「単官能性」でないことである。単官能性は、架橋結合およびまたは重合体骨格への複数の標的分子の組み込みを回避したい場合に必要である。例えば、Jordanらは、2−エチル−2−オキサゾリンの官能基を含むオキサゾリンモノマーとの共重合を示す研究を公開した。これらのペンダント官能基は、いくつかの事象においては、ペプチドにカップリングされることが可能である。しかしながら、この手法は一官能性POZ重合体を提供するために策定されておらず、骨格に沿ってペンデント基を持つ多官能性化合物を提供する。POZ骨格に複数の官能基を有することは、いくつかの事象においては好都合であるが、ポリペプチドおよびタンパク質等(必ずしもこれらに限定されない)の多官能性標的分子にカップリングする場合、架橋結合および凝集体形成につながるであろう。また、重合体にカップリングされた単一の標的分子を所望する際、多官能性POZ重合体がこれを可能にしないという場合がある。
【0050】
上記の官能性POZ化合物のいくつかは、タンパク質および小分子の薬物等の標的分子にカップリングされる可能性がある。しかしながら、ポリエチレングリコール修飾された治療薬の研究が示しているように、重合体で修飾した薬剤の商業的開発には、40、000Da以上の分子量(MW)および1.1未満の分子量配分または多分散度(PD)の重合体を利用することがしばしば必要である。かなりの量の研究が、従来の技術では、POZについて上記の範囲のMWおよびPDは達成され得ないことを示している。成長するPOZ鎖の分子量が約5、000Daに達すると、多分散性が認め得るほどに高まることが概して示されている。連鎖移動を含む副反応は、重要性が大きくなる。著しく低い重合温度を数週間の反応時間と組み合わせて使用すると、許容できるPDを得ることが示されているが、かかる条件は商業規模の調製にとっては実用的でない(J.S.ParkおよびK.Kataoka、Macromolecules、39、6622(2006))。Hoogenboom、Schubertらは、低PDのPOZが、マイクロ波照射を使用することによって調製され得ることを示したが、重ねて、商業規模の重合はこの手法では利用可能ではない(R.M.Paulus、T.Erdmenger、C.R.Becer、R.Hoogenboom and U.S.Schubert、Macromol.Rapid Comm.、28、484−491(2007))。一般的に見られる広範な多分散性ゆえに、今日までに説明された官能性POZ化合物は、重合体治療学における使用において深刻に制限を受けている。
【0051】
標的分子の修飾においてPOZ誘導体の使用を妨げるさらに別の問題は、一連の条件下で標的分子と反応することができる一連の適切な活性化されたPOZ分子が入手不可能であるということである。さらに、目下入手可能なPOZ分子は、多官能性であるか、標的分子に共役する際に、加水分解に不安定な結合を含んで、それに関連する不都合を有し、または、開始反応中に活性置換基を加えて、それに関連する不都合を有する。さらに、ペンダント官能基が説明されているが、これらの誘導体は多官能性であり、現在の用途には適さない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】2−アルキル−2−オキサゾリン(例えば、2−エチル−2−オキサゾリン)重合のリビング陽イオン機構の説明図であり、−OTfは−OSO−CFまたは「トリフラート」およびNucは陰性の求核試薬である。
【図2A】従来技術の方法によって調製されたM−PEOZ−OH2000のゲル浸透クロマトグラムを示す図である。
【図2B】従来技術の方法によって調製されたM−PEOZ−OH2000のゲル浸透クロマトグラムを示す図である。
【図3】ポリオキサゾリン誘導体の重合における、連鎖移動の脱離−二量化機構のしくみを、ここでは2−エチル−2−オキサゾリンとして示す図である。
【図4A】本発明の最適化条件によって調製されたM−PEOZ−OH2000(図4A)およびM−PEOZ−OH5000(図4B)のゲル浸透クロマトグラムを示す図である。
【図4B】本発明の最適化条件によって調製されたM−PEOZ−OH2000(図4A)およびM−PEOZ−OH5000(図4B)のゲル浸透クロマトグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本開示は、広範囲な標的分子に対して多様な反応条件下において一官能性POZ誘導体の共役を可能にし、加水分解に安定な標的分子−POZ複合体を産生する一連の活性基を有する、1個の標的分子がPOZ誘導体に結合する、一官能性POZ誘導体を提供する。異なる反応条件下において、標的分子上の選択される基と反応することができる一連の活性基を持つ一官能性POZ誘導体を産生することができる能力は、従来技術に著しい利益を提供する。それは、異なる標的分子は異なる反応条件に敏感であり、POZ誘導体の標的分子への共役の最も効率のよい反応条件は、しばしば標的分子およびPOZ誘導体と反応する標的分子の基の性質によってさまざまであるからである。
【0054】
本開示は、当技術分野で既知でない一連のPOZ誘導体を提供することにより、前述のPOZ重合体の制限に対処する。また、本開示は、当技術分野で既知でない一官能性POZ誘導体を提供する。さらに、本開示は、その停止末端に活性官能基を有する一官能性POZ誘導体を提供する。またさらに、本開示は、すぐに入手可能で周知の調製化学を使用して得られるヒドロキシル基等(必ずしもこれに限定されない)の停止末端基とともにPOZ分子を利用する本開示のPOZ誘導体の合成方法を提供することより、従来技術の制限に対処する。それにより、小さい活性分子を利用可能な末端基にカップリングすることによって多種多様なPOZ誘導体が段階的に調製され得、POZ誘導体上に所望の活性官能基を(本願に記載のとおり)生成することができる。また、本開示は、記載の一官能性POZ誘導体の使用を通じて加水分解に安定な標的分子−POZ複合体を提供することにより、従来技術の制限に対処する。かかるアプローチは、1つだけの標的分子が各POZ誘導体に結合した標的分子−POZ複合体を提供するのみならず、標的分子−POZ複合体の生体内半減期を増大させ、標的分子の「ハプテンタギング」に関連する免疫原性の問題を低減する。本開示の一官能性POZ誘導体、合成方法および得られる加水分解に安定な標的分子−POZ複合体は、当技術分野において理解されていない。
【0055】
したがって、記載の一官能性POZ誘導体および合成方法は、当技術分野に内在する問題を回避し、1個の標的分子がPOZ誘導体に結合する、加水分解に安定な標的分子−POZ複合体を産生する機構を提供する。
【0056】
下記に詳述されるように、PMOZならびにPEOZ等(必ずしもこれに限定されない)のあらゆる2−置換−2−オキサゾリン化合物が本開示のPOZ誘導体の産生に使用され得る。ある実施形態においては、PEOZもしくはPMOZは、2−置換−2−オキサゾリンPOZ分子である。当技術分野で周知のとおり、2−アルキル−2−オキサゾリン分子中の異なるアルキル基は、異なる溶解度、薬物動態および膜透過能力を本願に記載のPOZ誘導体に提供し得る。また、POZ重合体骨格における反復単位の性質は同一となり、ホモ重合体(PMOZならびにPEOZ等(必ずしもこれらに限定されない))を生成するか、または反復単位のうちの少なくとも1つが異なって、ランダムまたはブロック共重合体等(必ずしもこれらに限定されない)の共重合体を提供することができる。
【0057】
さらに、本開示は、低い多分散度(PD)の値を有し、および連鎖移動等(必ずしもこれらに限定されない)の意図しない副反応によって生成される不純物の量を減少させた、POZ重合体を合成する新規の方法を提供する。一実施形態では、本開示は、連鎖移動等(必ずしもこれらに限定されない)の意図しない副反応を最小限にして、PDの値が低く、純度を高めたPOZ重合体の産生を可能にする、新規の方法について記載する。一実施形態では、本開示の方法は、低いPD値および高められたMW値とを持つPOZ誘導体を提供する。さらなる実施形態では、不純物の量を減少させたPOZ重合体が産生される。本開示において提供される新規の方法は、従来技術の方法の改良であって、多種多様な標的分子の修飾における使用に適するPOZ重合体の大規模な商業用の調製を提供する。
【0058】
したがって、本開示はまた、製薬の用途における使用に適する、より高い純度の、PD値の低いPOZ重合体を提供する。当技術分野で周知のとおり、PD値はMWと共に変化し、概して分子量が増加するとPD値もまた増加する。本開示の方法を使用すると、従来技術の商業的に適用可能な方法を使用して産生され得るよりも、所与のMWにおいてより低いPD値を有する、商用規模の、種々のMWのPOZ重合体が産生され得る。例えば、本開示の方法を使用すると、20、000Da以下のMWを持つPOZ誘導体が、PD値1.1以下で産生され得る。さらに特定の実施形態では、前述のものが不純物を低減させて産生される。当技術分野で周知のとおり、ならびに本願の実施例において説明されるとおり、従来技術の方法を使用して合成されるPOZ誘導体は、GPCトレースにおいて高いMWのショルダおよび低いMWとして見られる特定の不純物を示す。これらの不純物は、少なくとも部分的に、連鎖移動等(必ずしもこれらに限定されない)の意図しない副反応を通じて生成される。その結果、本開示のPOZ誘導体は、多種多様な標的分子の修飾における使用に適する。
【0059】
本願に記載の方法の使用により、異なる活性官能基を持つ一連の一官能性POZ誘導体が提供される。さらに、本開示は、かかる一官能性POZ誘導体を効果的な手法で産生する合成方法を提供する。最後に、本願に記載の一官能性POZ誘導体の使用により、1個の標的分子がPOZ誘導体に結合する、加水分解に安定な標的分子−POZ複合体が産生され得る。
【0060】
低PD値のPOZ誘導体の合成方法
2−アリール−ならびに2−アルキル−2−オキサゾリンの重合の現行の従来技術は、Kobayshi、Nuyken and Jordan(S.Kobayashi、E.Masuda、S.Shoda and Y.Shimano、Macromolecules、1989、22、2878−2884;A.Gross、G.Maier and O.Nuyken、Macromol.Chem.Phys.、1996、197、281 1−2826、およびF.C.Gaertner、R.Luxenhofer、B.Blechert、R.Jordan and M.Essler、J.Controlled Release、2007、119、291−300)の公開に由来する。これらの方法において、重合は、アルキルトシレートまたはアルキルトリフラート等の求電子試薬によって開始され、一実施形態では、メチルトシレートもしくはメチルトリフラートが使用される。これらの強力な求電子試薬は、リビングカチオン構造が理論上では末端停止または連鎖移動反応を得ないため、この構造による重合を助けるために使用される(Q.Liu、M.Konas and J.S.Riffle、Macromolecules、1993、26、5572−5576)(図1参照)。しかしながら、連鎖移動反応は発生し、この反応はリビングカチオン構造によって正確に進行しないことが従来技術によって知られている。ハロゲン化アルキル等(必ずしもこれらに限定されない)の弱い求電子試薬が使用される場合、反応は共有結合構造によって進行し、結果としてPDの顕著な増加を伴なう。従来技術の重合方法は、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンまたはアセトニトリルを溶媒として使用する。生長相は、約80℃で約1から3日間実施される。炭酸ナトリウム水溶液で80から90℃で加熱することによって、ヒドロキシル末端基を与えるか、またはモルホリンもしくはピペリジン等の第2アミンと反応させることにより、末端第3アミンを得ることにより、末端停止が行なわれる。
【0061】
これらの典型的な従来技術の方法の使用は、ゲル透過クロマトグラフィにおいて、約5から10%の高いMWのショルダおよび著しく低いMWテーリングの出現を招く。かかる結果は、当技術分野において知られている(J.Park and K.Kataoka、Macromolecules、2006、39、6622−6630を参照)。文献において、このMW分布の拡大は、脱離−二量化機構を通じた連鎖移動の進行によるものであると概して説明されているが、このプロセスの構造的な詳細および実験上の裏付けは制限されている(M.Litt、A.Levy and J.Herz、J.Macromol.Sci.−Chem.、1975、A9、703−727)。連鎖移動反応が発生する限り、かかる反応は正確にはリビング重合であると考慮され得ない。したがって、連鎖移動などの意図しない副反応を低減することは有益となる。
【0062】
出願人らは脱離−二量化機構の詳細を明らかにし、その機構の実験上の裏付けを提供し、末端停止の手順に関する機構の意義を提案した。この後者の進展は、なぜ特定の停止反応が失敗するかを示し、成功する停止反応の選択に導くため、特に重要である。かかる発見は当技術分野において記載されておらず、意図しない副反応の発生を最小限にし、所望の末端停止された生成物を産する合成方法の作成における手引きを提供する。
【0063】
本願に記載のとおり、従来技術の方法を使用すると、POZ生成物の全質量の約5から10%の高いMWのショルダを含むPOZ生成物を産生した。この高いMWのショルダは、従来技術の合成方法を使用して得る許容できないPD値の原因となる。従来技術の方法において観察される高いMWのショルダは、少なくとも部分的に、重合および/または停止のステップ中に形成される高MW二量体から構成される(図3参照)。脱離−二量化機構は、末端停止の手順中に連鎖移動が発生した場合、高MWショルダ中の材料は所望の生成物のMWの約二倍となることを予見する。さらに、生長の手順中に連鎖移動が発生した場合、新規の重合鎖が開始され、この段階において単量体濃度が低いため、この重合体のMWは重合体のバルクよりも低くなる。また、この新規の重合鎖が連鎖移動に起因するため、メチルではなくプロトンによって開始されなければならず、したがってこの重合体のMALDIスペクトルは、主ピークのそれよりも14Da低い一連のピークを示すであろう。
【0064】
今日までに理解されていない末端停止の手順に関しての含意もある。例えば、強塩基であって弱い求核試薬である、末端停止求核試薬の追加は、著しい除去および二量化という結果をもたらすことが予見される。さらに、オキサゾリニウムカチオンは非局在化された、または「ソフトな」求電子試薬であり、理論では「ソフトな」または非局在化された求核試薬は、塩基としてよりも末端停止求核試薬として機能する傾向が強いことを予見する。例として、「ソフトな」メルカプチドのほうが「ハードな」アルコキシドよりもより効率のよい末端停止剤であると予期するであろう。
【0065】
上記の予見は、実験的に確認された。一例において、立体障害のエチルジイソプロピルアミン(強塩基、弱求核試薬)が2−エチル−2−オキサゾリン重合の末端停止のために加えられた。この反応は、高MW二量体生成物の75%への増加(実施例3参照)という結果となった。GPCにおける不純物のMWのピークは、所望の生成物のMWの約2倍であることが確認された。また、MALDI−TOFスペクトルは、主ピークの一部分が、予期したよりも14質量単位少ない第2の一連のピークを示したことを確認した。我々は、MWのこの第2の一連のピークは、所望の生成物の2倍よりやや下回ることを認めた。おそらくこれは、重合体が完全に形成され、モノマーが失われる前の生長相の間にいくつかの連鎖移動が行われるために発生し、この場合、生長中に存在する最も強い塩基であるため、その塩基はモノマーでなければならない。
【0066】
また、ハードな求核試薬として知られるアルコキシドによる末端停止は、所望の求核攻撃からの生成物を伴なわず、著しい量の高MW二量体をもたらす(実施例5参照)。また、ソフトな求核試薬として知られるメルカプチドによる末端停止は、予見されるとおり、求核攻撃の所望の生成物をもたらす(実施例11参照)。
【0067】
前述の観察の結果として、出願人らは、連鎖移動等の意図しない副反応を低減し、従来技術と比較して優れた特性を持つPOZ重合体ならびに誘導体の生成を可能にする新規の合成方法を開発した。この改良された方法は、以下の改良の1つ以上を利用することができる。
【0068】
一実施形態では、POZ重合反応はアルキルトシレートもしくはアルキルトリフラート等(必ずしもこれらに限定されない)の強求電子試薬で開始され、一実施形態では、メチルトシレートもしくはメチルトリフラートが使用される。
【0069】
脱離−二量化機構はまた、二分子除去は高温によって促進されるため、成長および停止が双方とも低い温度で実施されるべきであることを示唆する。実施例は、高MW二量体の形成が、生長ならびに停止の双方の温度を下げることによって抑制されるということを示すことにより、この観察を確認する。この予見はまた、Kataoka(J.Park and K.Kataoka、Macromolecules、2006、39、6622−6630参照)によって確認されている。しかしながら、すべての連鎖移動を排除するために十分なほどに温度を下げると、反応の完了に到達するまでに数週間を要し得、ゆえにかかる反応は商業的に実行可能でない。本開示は、以下に商業的に実行可能な方法を記載する。生長の完了またはほぼ完了後に加熱を継続することが、除去−二量化の蓄積を引き起こすことを観察した。本開示は、重合を現行技術の方法よりもずっと早期におよび低い温度で停止させることにより、POZ誘導体の質が大いに改善されることを意外にも発見した。また、生長反応の長さは、モノマー消費の完了または実質的な完了(90%以上)のために必要な最小限の時間である。温度および生長反応の長さは相関することに留意されたい。換言すれば、より短い生長反応時間にはより高い生長温度が使用され得る。反対に、より長い生長反応時間が使用される場合、温度はそれに従って低下されなければならない。
【0070】
クロロベンゼン等(必ずしもこれに限定されない)の溶剤の使用は、一般的に使用されるアセトニトリル溶剤よりもより早い重合を提供することが見出された、これはPOZ生成物の商業的な、大規模な調製には非常に重要である。従来技術はクロロベンゼンを溶剤として認識しているが、反応速度における改善は認識していない。クロロベンゼンを溶剤として使用した予期せぬ結果は、高MW二量体生成物の形成を増加させることなく、重合反応のより早期およびより高い温度での停止を可能にするより早い反応時間を提供する。かかる改良は、当技術分野で理解されていなかった。
【0071】
さらに、POZ生成物、特にOH基で末端停止されたもののカチオン交換樹脂を通じた濾過は、PD値を改善する。かかる濾過は低MWおよび高MW生成物を除去すると考えられる。濾過の効果は、より大きい分子量POZの生成物に特に顕著であり(例えば、10、000Da以上の生成物)。しかしながら、濾過はMWに関わらずPOZ誘導体に利益を提供する。この改良の一例を挙げると、未濾過M−PEOZ−OH10、000(本開示の方法によって産生)は、著しく低いMWテールのMn7950DaおよびPD1.21(GPC)を示した。この生成物のカルボキシエチル−セファロースによる濾過では、観察可能な低MWテーリングはなく、わずか2%の高MWショルダ(GPCで測定)があり、Mn9180DaおよびPD1.05(GPCより)ならびにMn9780およびPD1.01(MALDIより)を得た。高MWショルダが粗生成物に対して示されなかった事実は、カチオン交換濾過が高MWおよび低MWの双方の不純物を除去することを示す。
【0072】
さらに、特定の場合において、POZ生成物は末端基としてカルボン酸を含む場合、アニオン交換クロマトグラフィを、所望の生成物を単離し、形成されるあらゆる高分子生成物を除去するために使用することができる。我々は、この実験をM−PEOZ−S−CHCH−COHに対して実施した。クロマトグラフィ実験が高MW二量体は中性であると示したことに留意すべきである。それゆえに、主要な二量化生成物は図3のアルケンであると思われる。この実験において、粗生成物は9600DaのMn、1.09(GPC)のPDおよび6%の高MWショルダを有した。DEAE−セファロースのアニオン交換クロマトグラフィ後、Mnは9500Da、PDは1.06(GPC)であり、高MWショルダは見られなかった。
【0073】
追加の実施形態において、停止反応が低い温度(一実施形態では80℃未満、代替の実施形態では15から40℃)で、塩基としてよりも、よりよい求核試薬の性質を示す求核試薬を用いて実施された。例示的な求核試薬は、メルカプチド等のソフトな求核試薬を含むがこれらに限定されない。出願人らは、アルコキシドナトリウム化合物の末端停止剤としての使用が、所望の生成物を産生せず、停止されないカチオンが残ったことを見出した。しかしながら、メルカプチドナトリウムおよびNaS−CHCH−COEt等(必ずしもこれらに限定されない)の関連する化合物を使用して、効果的な末端停止を得、低PD値等(必ずしもこれに限定されない)の所望の特性を持つPOZ生成物を得た。このエーテルのカルボン酸への加水分解、続いてアニオン交換クロマトグラフィで、低PD値をもち高MWショルダのない高品質のPOZ生成物を得た。かかる一実施例では、Mnが9600Da、PDが1.09(GPC)、およびショルダが6%のM−PEOZ−S−CHCH−COHが産生された。DEAE−セファロースのアニオン交換クロマトグラフィでは、Mnが9500、PDが1.06(GPC)で、ショルダピークなしであった。
【0074】
合成におけるこの新規の改良は、本願に記載のPOZ重合体ならびに誘導体の調製において利用される。当業者には明白であるように、この合成における改良は、種々の組み合わせで使用され得、上記は所定の合成において各改良が使用される必要があるものと解釈すべきではない。
【0075】
M−PEOZ−OH2000の合成には従来技術の方法のうちの2つの方法が使用された。これらのPOZ誘導体の合成の説明は、実施例1(図2A)ならびに実施形態2(図2B)で提供される。産生したPOZ誘導体を分析した。図2AのPOZ誘導体についてGPCはかなりの高MWショルダ(Mn=3600Da、9%)を持つ単一のピークを示した。主ピークのMnは1980Da、PDは1.08であった。NMRは予期されたピークを示した(実施例6参照)。MALDI−TOFMSでは、最大2000Da、PD1.04および99.1Da分離の一連のピークを得た。MALDIスペクトルはまた、99.1Da分離の第2の一連のピークを示したが、その各ピークは、主の一連のものより14Da低かった。これらの一連のピークは、1600Daで最大であった。図2BのPOZ誘導体について、GPCはかなりの高MWショルダ(Mn=3300Da、6%)を持つ単一のピークを示した。主ピークのMnは2200Da、PDは1.06であった。NMRは予期されたピークを示した(実施例6参照)。MALDI−TOFMSでは、最大2300Da、99.1Da分離の一連のピークを得た。MALDIスペクトルはまた、99.1Da分離の第2の一連のピークを示したが、その各ピークは、主の一連のものより14Da低かった。これらの一連のピークは、2100Daで最大であった。
【0076】
本開示の方法は、比較のため2つのPOZ誘導体、M−PEOZ−OH2000(図4A)ならびにM−PEOZ−OH5000(図4B)合成に使用された。これらのPOZ誘導体の合成の説明は、実施例6(図3A)ならびに実施例7(図4B)に提供されている。GPCクロマトグラムは図4Aおよび図4Bに提供されている。図4Aおよび図4Bは、本開示の合成方法を使用して得られた、大いに改良されたM−PEOZ−OH2000ならびに5000のGPCを示す。M−PEOZ2000について、反応条件は(a)メチルトリフラートによる開始、クロロベンゼン中で110℃、1.5時間の生長、および室温で炭酸塩溶液による停止であった。Mnが1900Da(MALDIおよびGPCより)、PDが1.07(GPC)および1.03(MALDI)であって、高MWショルダならびに低MWテールのないM−PEOZ2000誘導体が観察された。M−PEOZ−OH5000については、反応条件は(a)メチルトリフラートで開始、クロロベンゼン中で42℃で1時間、次に80℃で3.75時間の生長、および室温で炭酸塩溶液での停止であった。Mnが4900Da(MALDIより)、PDが1.06(GPC)および1.02(MALDI)であり、非常にわずかな高MWショルダ(1%)があり、低MWテールのないM−PEOZ5000誘導体が観察された。同様の条件下で調製されたM−PEOZ−OH10、000は、Mnが9780Da(MALDI)、PDが1.01(MALDI)および1.05(GPC)であり、非常にわずかな2%の高MWショルダがあった。
【0077】
要約すると、本開示の出願人らは、従来技術の合成方法を使用した場合に発生する意図しない副反応の性質を同定し、これにより出願人らはかかる副反応の効果を最小限にする反応条件を同定することが可能となった。その結果、本開示の方法は、当技術分野で利用可能なものよりも優れた特性を持つPOZ重合体ならびに誘導体の調製を可能にする。一実施形態では、本開示の方法は低PD値を持つPOZ重合体ならびに誘導体の調製を可能にし、特定の実施形態では、本開示の方法は高MW値で低PD値を持つPOZ重合体ならびに誘導体調製を可能にする。また、本開示の方法は、大規模な生成に適した手法で上記のものを生成することを可能にする。かかる性質を持つかかるPOZ重合体ならびに誘導体、およびこれらを産生する方法は、当技術分野において欠如していた。
【0078】
一実施形態では、本開示の方法は、POZ重合体の合成において、POZ合成の開始、重合または末端停止プロセス中に発生する1つ以上の副反応の、完全なまたは部分的な低減を提供することにより、かかる利益を提供する。特定の実施形態では、副反応は連鎖移動プロセスである。連鎖移動プロセス等(必ずしもこれらに限定されない)のかかる意図しない副反応は、POZ生成物の製造の現行の従来技術手順における問題である。かかる副反応は、高PD値等の望ましくない性質を持つPOZ誘導体を提供する。
【0079】
一官能性POZ誘導体の合成方法
本開示は、記載される一官能性POZ誘導体を合成する新規の方法を提供する。新規の合成方法は、本願では概してビルディングブロック法と称される。ビルディングブロック法の一実施形態では、1つのステップによる合成方法が開示され、ビルディングブロック法の代替の実施形態では、2つのステップによる方法が開示される。ビルディングブロック法のさらなる代替の実施形態では、リビング重合体合成が説明される。各方法は、以下に詳述される。
【0080】
ビルディングブロックの1つのステップによる方法
ビルディングブロックのアプローチの第1の実施形態では、1つのステップによる方法が開示される。1つのステップによる方法では、末端が官能基化された単一のPOZ分子と所望の活性基を含む一連の化合物との間の反応を通して、一連の一官能性POZ誘導体が単一のステップで生成される。これによると、末端が官能基化された単一のPOZ分子は、一連の活性化された一官能性POZ誘導体に変換され得る。このアプローチは、単一の一官能性POZ誘導体の生成に、重合化学を最適化することだけを必要とすることを意味する。一連の活性基を提供するこの範囲の反応を可能にするため、POZ末端基(下記ではY)は注意深く選択される。1つのステップによる方法は、スキーム1中の一般形態として以下のように表され得る。
【0081】
−POZ−Y−>R−POZ−P−Q−X I
スキーム1
式中、
POZは−[N(COR)CHCH−であり、
は、置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニルまたはアラルキル基から各反復単位について独立して選択され、一実施形態では、1個から12個の炭素を有し、
は、水素、または置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニルまたはアラルキル基であり、
からR、R11およびR14からR15は、それぞれ独立して水素または置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニルまたはアラルキル基群から選択され、一実施形態では、1個から10個の炭素を有し、
は、−C10−CH−(シクロヘキシルメチレン)であり、
23は、置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニル、アルキニルまたはアラルキル基群であり、一実施形態では、1個から10個の炭素原子を有し、または置換もしくは置換されていないアリール基であり、
Yは、−OH、−SH、−S−(CH)k−COH、ピペラジニル、置換されているピペラジニル、置換されているピペリジニル、または−NHRであり、
Pは結合基であり、Pはスキーム1に示す結合を形成することができるいかなる基でもあり得、これとともに結合を形成する基の化学的特質によって選択され得、代表的なP基には−O−、−S−、−NH−、−NR11−またはピペラジニル(NCN)等(必ずしもこれらに限定されない)の置換されていないヘテロシクリルを含むがこれらに限定されず、
Qは結合基であり、Qはスキーム1に示す結合を形成することができるいかなる基でもあり得、これとともに結合を形成する基の化学的特質によって選択され得、代表的なQ基には、置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニル、ヘテロシクリルまたはアリール基、−(CH−CONH−(CH−、−NH−(CH−NHCO−(CH、−CO−(CH−、−CO−C−、または−CO−R、−(R15または−(CRを含むがこれらに限定されず、
nは、3から1000までの整数であり、
kおよびmは、1から10から独立して選択される整数であり、
pおよびqは、0または1から独立して選択される整数であり、
Xは、標的分子とともに結合を形成して加水分解に安定な標的分子−POZ複合体を産生することができる活性官能基である。
【0082】
一実施形態では、活性官能基はアルデヒド(−CHO)、活性カーボネート(−O−CO−Z)、マレイミド、トレシレート(2、2、2−トリフルオロエタンスルホナート)およびメシラート(−0−SO−CHまたは−OMs)を含むがこれらに限定されないスルホン酸エステル(−OSO−R23)、ヒドラジド(−CONHNH)、エポキシド、ヨードアセトアミド、アルキン、アジド(−N)、イソシアネート(−OCN)、シアン酸塩(−NCO)、イソチオシアン酸塩(−SCN)、チオシアン酸塩(−NCS)、ニトリル(−CN)、カルボニルジイミダゾール誘導体、ビニルスルホン、カルボン酸ハロゲン化物、活性エステル(−CO−Z)およびカルボン酸(−CO−H)の一般的クラスの化合物から選択され、
Zは、N−スクシンイミジルオキシ、塩素、臭素、スルホ−N−スクシンイミジルオキシ、p−ニトロフェノキシ、1−イミダゾリル、および1−ベンゾトリアゾールイルオキシを含む当技術分野で周知の多くのものがある活性化基である。
【0083】
活性官能基はまた、当技術分野で周知の方法によって保護された活性官能基を得るために保護され得る。例えば、アセタール[CH(OR14]が例示的な保護基であり、これは加水分解されてアルデヒド基を産生することができる。活性官能基は置換されているアルキル基および置換されているおよび置換されていないアルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキルまたはヘテロシクロアルキル基に関連して記載された基で置換され得る。さらに、活性官能基は活性官能基に変換され得る化合物を含む。例えば、X基は特定の反応条件下(POZ誘導体を標的分子に加えるために使用されるもの等)において加水分解しやすい結合で修飾される化合物を含み得、これにより結合を開裂し、活性官能基を曝露して標的分子上の基と反応させる。
【0084】
スキーム1において、反応物R−POZ−Yは、POZの重合の直接生成物であり、Y基は直接、加水分解に安定な標的分子−POZ複合体を形成することができる一連の一官能性POZ誘導体に変換されることができる。例えば、一実施形態では、Yは−OHに等しく、POZ重合反応が水酸化物で末端停止されたときに得られる。代替の実施形態では、Yは−NHRに等しく、POZ重合反応がアミノ基、RNHを含む化合物で末端停止されたときに得られる。他の有用なY基を提供する有用なアミン末端停止剤は、ピペラジンまたは1−ピペラジンプロパノール(H−NCN−CHCHCH−OH)等の置換されているピペラジンである。置換されているピペリジンもまたアミンに有用なすばやい末端停止を提供するために有用であり、これらはまた種々の官能基を導入する。市販の置換されているピペリジンは、4−ピペリジン酪酸、3−ピペリジンカルボン酸および4−ピペリジンメタノールを含む。代替の実施形態では、Yは−S−CHCH−COHに等しく、POZ重合反応がS−CHCH−CO−CHで停止されたときに得られる(続いて加水分解が単離せずに行われる)。
【0085】
−POZ−X誘導体の1つのステップによる方法による調製を説明する、種々の例示的な反応を以下で説明する。以下に示す反応において、RおよびRはメチルであり、Yは−OHまたは−NHRであって、RはCHである。
【0086】
【化2】

【0087】
上記の構造はスキーム1の説明の中に見つけられる。例えば、上記の活性カーボネートについて(M−PMOZ−OCO−NHS)、RおよびRはメチル、pおよびqはゼロ、Xはスクシニミジル炭酸塩である。上記の活性エステル(M−PMOZ−O−CH−CONHS)について、RおよびRはメチル、Pは−O−、pは1、Qは−CH−、qは1、Xは−CONHSである。
【0088】
上に記載の活性基を持つ一官能性POZ誘導体は、多くの有益で異なる特性を提供し、標的分子の性質および所望の反応条件に基づいて所望の官能性活性基を持つ特定の一官能性POZ誘導体を選択することを可能にする。例えば、官能性活性基がアルデヒドである場合、一官能性POZ誘導体は規定のpHの範囲で標的分子のN−端アミンと主に反応してイミン(典型的にホウ化水素で第2アミンに還元される)を形成する。官能性活性基が活性エステルである場合、一官能性POZ誘導体は、標的分子上の非末端リジン基を含むがこれらに限定されないアミンと主に反応する。同様に、官能性活性基が活性カーボネートまたはトレシレートである場合、一官能性POZ誘導体はアミンと容易に反応するが、活性エステルおよびアルデヒドと異なる反応条件および選択性を持つ。さらに、官能性活性基がビニルスルホンまたはマレイミドである場合、一官能性POZ誘導体はチオールと主に反応するが、反応条件はこれらの基によってそれぞれ異なり、一連の標的分子に適した多様な反応条件を提供する。
【0089】
重要なことには、上記のスキームを使用して形成された一官能性POZ誘導体のそれぞれは、加水分解に安定な標的分子−POZ複合体を形成することができる。
【0090】
ビルディングブロックの2つのステップによる方法
代替的な実施形態では、2つのステップによる合成方法が開示される。2つのステップによる方法の第1のステップにおいて、上に記載の重合によって調製された開始重合体生成物(下記のR−POZ−Y)は、所望の化合物と反応してPOZ中間物(下記のR−POZ−Y’)を産生する。2つのステップによる方法の第2のステップにおいて、POZ中間物は種々の官能性活性基を含む種々の化合物とさらに反応して、加水分解に安定な標的分子−POZ複合体を形成することができる一連の一官能性POZ誘導体(下記のR−POZ−X)を形成する。2つのステップによる合成方法は、2つの反応のみを使用し、単一の開始重合体生成物(R−POZ−Y)から開始して、種々の一官能性POZ誘導体を提供する長所を供し、したがって、複数の重合体生成物の重合の条件の必要を最小限にする。2つのステップによる方法は、1つのステップによる方法によっては入手できない一官能性POZ誘導体を提供する。最も一般的な形態において、ビルディングブロック2つのステップによる方法の転換は下記のスキーム2で説明される。
【0091】
−POZ−Y−>R−POZ−Y’−>R−POZ−X II
スキーム2
ビルディングブロック2つのステップによる方法は、下記のとおりスキーム3に詳細な形態で表され得る。スキーム3において、Y’は活性エステルおよび活性カーボネートを含むがこれらに限定されない、官能性求核試薬と反応することができ、T基で表される活性基である。
ステップ1
−POZ−Y−>R−POZ−P−Q−Y’
ステップ2
−POZ−P−Q−Y’+T−U−X−>R−POZ−P−Q−W−U−X III
スキーム3
式中、
からR、R、R、R11、R14からR15、R23、POZ、P、Q、k、m、n、p、q、Y、およびXは、上に説明のとおりであり、
Uは結合基であり、Uはスキーム3に示す結合を形成することができるいかなる基でもあり得、これとともに結合を形成する基の化学的特質によって選択され得、代表的なU基は、−(R16−、−(CR−、−NH−R21−NHCO−R22−を含むがこれらに限定されず、
oは1から10の整数であり、
wおよびuは、1または0から独立して選択される整数であり、
、R、R16、R21およびR22は、それぞれ独立して水素または置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニルまたはアラルキル基群から選択され、一実施形態では、1個から10個の炭素原子を有し、
17水素または置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニルまたはアラルキル基群から選択され、一実施形態では、1個から10個の炭素原子、または置換されているもしくは置換されていないアリール基を有する。
【0092】
Y’およびTは、反応して加水分解に安定である結合Wを形成する反応対であり、Y’およびT反応対ならびに得られたW結合は、表1に示す基および結合から選択される。Y’およびT基は、W結合の性質に影響を与えることなく、反転することができる。
【0093】
【表1】

【0094】
加水分解に安定なR−POZ−P−Q−W−U−X誘導体の調製を説明する例示的な反応を下記で説明する。この反応中、Rは水素、Rはメチル、Yは−OH、pおよびqはゼロ、Uは−CHCH−、uは1、反応対TとY’はそれぞれ−NHと−O−CO−NHSであり、これはウレタンW結合を形成し、wは1、Xはアセタール(保護されたアルデヒド)であり、
H−PMOZ−OH−>M−PMOZ−O−CO−NHS
H−PMOZ−O−CO−NHS+NH−CHCH−CH(OEt)−>
H−PMOZ−OCONH−CHCH−CH(OEt)
加水分解後に、
H−PMOZ−OCONH−CHCH−CHOを得る。
【0095】
スキーム3の別の実施例を下記で説明する。この反応において、RおよびRはメチル、Yは−OH、Pは−O−、pは1、Qは−CHCH−、qは1、反応対TおよびY’はそれぞれ−NHおよび−COHであり、これはアミド(−CONH)W結合を形成し、wは1、Uは−CHCH−、uは1、Xはアセタール(保護されたアルデヒド)であり、
M−PMOZ−OH−>M−PMOZ−O−CHCH−CO
M−PMOZ−O−CHCH−COH+NH−CHCH−CH(OEt)−>
M−PMOZ−O−CHCH−CONH−CHCH−CH(OEt)
加水分解後に、
M−PMOZ−O−CHCH−CONH−CHCH−CHOを得る。
【0096】
上に述べるとおり、スキーム3の活性官能基のそれぞれは、標的分子との反応において独自の長所および特異性を有する。さらに、TおよびY’基の互いに対する反応性は、QおよびU基の性質を通じて制御され得る。QおよびU基のサイズを記載のとおり大きくすることによってTおよびY’および/またはTおよびX基の化学的距離を増大することにより、Y’およびT基の反応性は変化する。さらに、活性官能基Xの標的分子に対する反応性は、同様に変化され得る。
【0097】
1つのステップによる方法と同じく、上記の2つのステップによる合成式を使用して形成される一官能性POZ誘導体のそれぞれは、加水分解に安定な標的分子−POZ複合体を形成することができる。
【0098】
リビング重合体法
本発明のさらに代替的な実施形態では、オキサゾリン重合を末端停止して、標的分子と反応して加水分解に安定な標的分子−POZ複合体を形成することができる一官能性POZ誘導体を直接提供するために、小さな反応分子が使用され得る。この方法はリビング重合体法と称される。リビング重合体法は、下記のスキーム4において最も一般的に示され得る。
【0099】
−POZ+Nuc−Q−X−>R−POZ−C−Q−X IV
スキーム4
式中、
からR、R7、およびR14からR15、R23、POZ、Q、k、m、n、q、Y、およびX上に記載のとおりであり、
POZはオキサゾリン重合中に形成されるカチオン−[N(COR)CHCHを示し、
19は水素または置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニルまたはアラルキル基群から選択され、一実施形態では1個から10個の炭素原子を有し、
Nucは、末端カチオン−N(COR)CHCHと相互に作用することによってリビングPOZ重合反応を末端停止して加水分解に安定な結合Cを形成することが可能な求核試薬であり、Nuc基および得られたC結合は表2に示す基および結合から選択され得る。
【0100】
【表2】

【0101】
−POZ−C−Q−X誘導体の調製を説明する例示的な反応を以下に示す。以下に示す反応において、RおよびRはメチル、Nucは−NH、Cは−NH−、Qは−CH−、qは1、Xは−COH(メチルエステルは下記の反応中に加水分解されることに留意)である。
CH−PMOZS−CH−COCH−>CH−PMOZ−S−CH−CO
【0102】
当技術分野の示唆に反して、本開示は、−O−CH−CO−CHなどのアルコキシドによるカチオン捕捉は、所望の生成物をもたらさないことを示す。
【0103】
表2に示すとおり、C結合は、これらの化合物がNuc基として使用される場合、ピペラジンおよびピペリジン環状構造に組み込まれる。C結合の例およびピペラジンおよびピペリジンをNuc基として使用することによって得られる構造を以下に提供する。
【0104】
この反応の一実施形態では、オキサゾリン重合を末端停止するためにメルカプチド化合物が使用される。この方法において、オキサゾリン重合は本願に記載のとおりに開始され、POZ重合体の停止末端にオキサゾリニウムカチオンを持つPOZ重合体を形成する。反応は求核メルカプチド分子を反応に加えることによって停止し、これによりリビングPOZ重合を末端停止する。メルカプチド分子は、標的分子の基と反応して加水分解に安定な結合を形成することができる活性官能基(この活性官能基は本願に記載のとおりに保護され得る)を含む。
【0105】
この方法の具体的な実施形態において、メルカプチドは構造R25S−D−X、を有し、式中、
Xは上記に定義されるとおりであり、
25は金属であり、一実施形態ではR25はLi、Na、またはKであり、
Dは置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニル、ヘテロシクリルまたはアリール基、−(CH−CONH−(CH−、−NH−(CH−NHCO−(CH、−CO−(CH−、−CO−C−、または−CO−R26または−(CR2728を含むがこれらに限定されない結合基であり、 R27およびR28は、それぞれ独立して水素または置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニルまたはアラルキル基群から選択され、一実施形態では1個から10個の炭素を有し
26は−C10−CH−(シクロヘキシルメチレン)であり、
dは0または1であり、
bは1から10の整数である。
【0106】
一実施形態では、活性官能基は、保護された官能基または活性官能基に変換され得る化合物である。上で説明されるとおり、活性官能基のそれぞれは、標的分子との反応において独自の長所ならびに特異性を有する。上記と同様に、上記の合成式を使用して形成された一官能性POZ誘導体のそれぞれは、加水分解に安定な標的分子−POZ複合体を形成することができる。
【0107】
特定のPOZ誘導体
本開示は、上に記載の方法によって調製され得るさまざまな一官能性POZ誘導体について記載する。さらに、本開示は、本開示の一官能性POZ誘導体の合成において有用な多くの化合物について記載する。
【0108】
一実施形態では、一官能性POZ誘導体は一般式(I)、(III)または(IV)で説明される。
【0109】
−POZ−P−Q−X (I)
−POZ−P−Q−W−U−X (III)
−POZ−C−Q−X (IV)
一般式(I)、(II)および(III)の定義は、スキーム1からスキーム4を参照して上記に提供されるとおりである。
【0110】
また、本開示の一官能性POZ誘導体の多くの特定の構造を下記に提供する。これらの構造は例示的な目的のみのために列挙され、本願に記載の一官能性POZ誘導体の範囲を制限することを意図するものではない。上記と同様、以下を参照すると、上記のスキーム1からスキーム4に提供される定義は、以下の構造に適用可能であり、以下の定義も当てはまるものに適用される。また、以下に提供されるすべての構造について、R基は開始剤基(POZ基の左)の位置に含まれるものと理解される。
【0111】
は、−(R16−または−NH−R21−NHCO−R22−などの結合部分であり、
Gは、フルオロアルキル基等(必ずしもこれらに限定されない)の置換されていないかまたは置換されているアリール基または置換もしくは置換されていないアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり、
Arは置換されていないアリールまたは置換されているアリール基である。
【0112】
一実施形態では、本開示は、1つのステップのビルディングブロックによる方法によって作られる一官能性POZ誘導体を提供する。この手段によって生成される例示的な構造は、以下の構造を含むがこれらに限定されない。
POZ−P−(CR−CH(OR14
POZ−P−(CR−CHOおよびPOZ−NHCO−C−CHO
POZ−P−(CR−CO
POZ−P−(CR−CO−Z
POZ−P−(CR−CO−NH−NH
POZ−OC−O−Z
POZ−O−SO−G
【0113】
【化3】

POZ−P−CHCH−SO−CH=CHおよびPOZ−NHCO−C−SO−CH=CH
POZ−NH−CO−C−NHCO−CH−I
POZ−P−(CR−CCH
【0114】
別の実施形態では、本開示は、POZスルホン酸エステル(POZ−OHに由来する中間物)上の求核置換を使用してビルディングブロック2つのステップによる方法によって作られる一官能性POZ誘導体を提供する。
POZ−N
POZ−P−(CR−CH(OR14
POZ−P−(CR−CHO
POZ−OCN
POZ−SCN
POZ−CN
POZ−P−(CR)H−CCH
POZ−P−(CR−COHおよびPOZ−P−(CR−CO−Z
POZ−P−Ar−COHおよびPOZ−P−Ar−CO−Z
【0115】
別の実施形態では、本開示は、POZ活性カーボネート(POZ−OHに由来する中間物)上の求核置換を利用した2つのステップのビルディングブロックによる方法によって作製される一官能性POZ誘導体を提供する。
【0116】
【化4】

POZ−OCONH−(CR−CO
POZ−OCONH−(CR−CO−Z
POZ−OCONH−C−CHO
【0117】
別の実施形態では、本開示は、上記のうちの任意の活性エステル上の求核置換によって作られたマレイミドを組み込む一官能性POZ誘導体を提供する。
【0118】
【化5】

式中、
POZ−L−CO−は、本願に記載の任意の活性カルボン酸エステルに由来し、
Lは、POZをカルボキシル基に結合し、−P−(CR−、−P−Ar−およびピジリニウム−NC−を含む、上記に示す任意の結合部分である。
【0119】
これらのマレイミドは、上記のPOZ−P−Q−W−U−X式に適合すると理解され得、LはP−Qセグメントから成り、−CONH−はWセグメントから成り、RはUセグメントから成る。
【0120】
別の実施形態では、本開示は、2−アルキル−2−オキサゾリンの重合中に生成されるPOZカチオン上の求核攻撃を利用した、リビングカチオン方法によって作られるPOZ誘導体を提供する。
POZ−P−(CR−CO
POZ−P−Ar−COHおよびPOZ−P−Ar−CO−Z
【0121】
【化6】

【0122】
上記のすべてのPOZ誘導体は、標的分子上の基と反応して、標的分子とPO誘導体との間に加水分解に安定な結合を形成する。
【0123】
ピペリジンまたはピペラジンによる特定のPOZ誘導体
本願に説明されるように、リビングPOZカチオンは、置換もしくは置換されていないピペリジンまたはピペラジンまたは前述のものの誘導体によって末端停止され得る。置換は、置換されているアルキルおよび置換および置換されていないアルキル、アルケニル、アラルキルまたはヘテロシクロアルキルに関連して記載される基を含むがこれらに限定されない。これらのPOZ誘導体は、スキーム4中でCと表される結合基が、ピペリジンまたはピペラジン環構造の一部であるため、上記のスキーム1からスキーム4で説明することが困難である。例えば、POZカチオンは4−ピペリジンメタノールに捕捉されてPOZアルコールを得、4−ピペリジン酪酸に捕捉されてPOZカルボン酸を得、またはピペラジン自身に捕捉されてPOZアミンを得る。
【0124】
【化7】

【0125】
かかるピペリジンおよびピペラジンによる末端停止は、強力な窒素求核試薬は迅速で問題のない末端停止を行って末端官能性活性基を導入するので有用である。1−ピペラジンプロパノール、4−ピペリジン酪酸、3−ピペリジンカルボン酸および4−ピペリジンメタノールを含む、少なくとも4つのピペリジンおよびピペラジン誘導体が市販されており、その他のものも容易に合成され得る。
【0126】
POZアルコール、酸またはアミンから調製される、上に記載のいかなるPOZ誘導体も、かかるピペリジン、または窒素を含む環がアルコール、酸またはアミンを提供するピペラジンから調製され得ることを理解されたい。例えば、下の化合物は4−ピペリジンメタノールで末端停止された上記のPOZから調製することができる。
【0127】
【化8】

【0128】
これらの化合物は、次いで、アセタール、マレイミドおよび活性エステルを含む種々の有用な誘導体に変換され得る。
【0129】
【化9】

【0130】
POZ誘導体の使用
記載の一官能性POZ誘導体は、官能性活性基を介して、加水分解に安定な標的分子−POZ複合体を産生するために使用され得る。また、本願に記載の一官能性POZ誘導体を使用すると、1つの標的分子は各POZ誘導体によって結合される。換言すると、1つの標的分子しか各POZ誘導体に結合しない。一官能性POZ誘導体に存在する官能性活性基の多様性は、一官能性POZ誘導体が、さまざまな反応化学を使用して標的分子上の種々の基にカップリングされることを可能にする。例えば、官能性活性基がアルデヒドである場合、一官能性POZ誘導体は主に標的タンパク質分子のN−端アミンと規定のpH範囲内で.反応する。官能性活性基が活性エステルである場合、一官能性POZ誘導体は、標的分子上のリジン基を含むがこれらに限定されないアミンと主に反応する。同様に、官能性活性が活性カーボネートまたはトレシレートである場合、一官能性POZ誘導体はアミンと反応するが、反応条件および選択性は活性エステルおよびアルデヒドとは異なる。さらに、官能性活性基がビニルスルホン、マレイミドまたはヨードアセトアミドである場合、一官能性POZ誘導体は主にチオールと反応するが、反応条件はこれらの各基によって異なり、種々の標的分子に適した種々の反応条件を提供する。
【0131】
重要なことには、上記の合成式を使用して形成される一官能性POZ誘導体のそれぞれは、加水分解に安定な標的分子−POZ複合体を形成することができる。
【0132】
一実施形態では、標的分子はタンパク質等(必ずしもこれらに限定されない)のポリペプチドである。例えば、一官能性POZ誘導体は、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)等(必ずしもこれらに限定されない)の治療的に重要なタンパク質にカップリングされ得る。この例示的な反応を、次の反応によって下に概略的に説明する。
M−POZ−OCO−O−NHS+GCSF−NH−>
M−POZ−OCONH−GCSF
この実施形態では、GCSF上に見られるアミンは、利用可能ないくつかのリジン基のうちの1つを示す。
【0133】
同様にGCSFは利用可能なチオール基を含み、適正な条件下で、官能性活性基としてマレイミドを有する一官能性POZ誘導体は、このチオール基と反応し得る。
【0134】
活性POZ誘導体は、ペプチドにもカップリングされ得る。例えば、官能性活性基として活性エステルを有する一官能性POZ誘導体は、インスリン上の利用可能なアミノ基にカップリングされ得る。
【0135】
M−POZ−O−CH−CO−NHS+インスリン−NH−>
M−POZ−O−CH−CONH−インスリン
代替の実施形態では、標的分子は小分子、薬剤または診断用薬である。
【0136】
標的分子−POZ複合体
本開示は、標的分子と結合を形成して、上に記載のとおり加水分解に安定な標的分子−POZ複合体を生成することができる様々な一官能性POZ誘導体について記載する。一般的な実施形態では、本開示は、一般式(IV)を有する加水分解に安定な標的分子−POZ複合体
A−B−TM (IV)
を提供し、式中、
Aは、本願に記載の一官能性POZ誘導体であって、POZ誘導体の官能性活性基と標的分子上にある結合パートナーとの反応中に除去されるいかなる離脱基も含まず、
TMは、標的分子であり、
Bは、本開示の一官能性POZ誘導体の官能性活性基と、標的分子上の結合パートナーとの間に形成される加水分解に安定な結合であって、これは加水分解に安定なB結合の性質は、一官能性POZ誘導体上の活性官能基と、標的分子上の結合パートナーの性質に依存することが理解される。例示的な官能性活性基、結合パートナーおよびB結合を以下の表3に提供する。表3に列挙されているものは、網羅的であることを意味せず、本開示の教示を鑑みて他の組み合わせ、および、それにより得られるB結合が想定され得る。
【0137】
【表3】

【実施例】
【0138】
試薬
試薬は、EM Science社またはAldrich社より購入し、使用前に蒸留した。クロロベンゼンおよびオキサゾリンは、水酸化カルシウムより蒸留した。ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)をAgilent Technologies社の機器によって1100クォータナリポンプとRI検出器を用いて実施した。2つのPhenogel(商標)GPCカラム(Phenomenex製、5μ、500A°、300x7.8mm)をカラムヒーター(60℃)において順に使用した。移動相は流速lmL/分で100%N、N’−ジメチルホルムアミド(DMF)であった。較正曲線は、MALDI(750、1K、2K、5Kおよび10K)によって判定される、異なる分子量のM−PEOZ−OH試料を用いて作成した。ゲル浸透クロマトグラフィ(GFC)を、同一のシステムで、ShodexKW−803カラムを使用して、移動相として1mMのHEPESのpH7.0緩衝液を用いて実施した。228nmを監視するためにUV検出器を使用した。ジトラノールをマトリクスとして、Bruker社のMicroflex(商標)装置を用いてMALDI−TOFMSを実施した。NMRはVarian500MHz装置で実施した。
【0139】
実施例1.典型的な現行技術のM−PEOZ−OH2000の調製
メチルトリフラート(0.113mL、0.001mol)をアセトニトリル(3.0mL、6.7M)中の2−エチル−2−オキサゾリン(2.02mL、0.020mol)の溶液に加え、溶液を10分間攪拌した。反応物を次に80℃まで加熱し、18時間攪拌した。炭酸ナトリウム(1.167g)および水(1mL)を加え、得られた混合物を90℃で一晩加熱した。室温に冷却した後、混合物を塩化メチレン(40mL)で希釈し、次に分液漏斗にデカンタした。水(5mL)および塩水(3mL)を加えて振とうした。下層を廃棄し、水層を塩化メチレン(2x20mL)で2度抽出した。混合された有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、回転蒸発によって濃縮した。この粗油をアセトンに溶解し、ジエチルエーテル(80mL)一滴ずつ加えて沈殿させた。得られた粉末を真空で乾燥させた(1.90g、収率94%)。
【0140】
GPCでは、感知できる高MWショルダ(Mn=3600Da、9%)を持つ単一のピークを示した(図2A)。主ピークのMnは1980Da、PDは1.1であった。NMRは、予見されたピーク(実施例6参照)を示した。MALDI−TOF MSでは、最大2000Da、PD1.04および99.1Da分離の一連のピークを得た。MALDIスペクトルはまた、99.1Da分離の第2の一連のピークを示したが、各ピークは、一連の主ピークより14Da低かった。この一連のピークの最大は、1600Daで発生した。
【0141】
実施例2.第2の現行技術のM−PEOZ−OH2000の調製
クロロベンゼン(6.9mL)、アセトニトリル(2.3mL)とメチルトリフラート(0.164mL、1.5mmole)を窒素下で、周囲温度で混合した。2−エチル−2−オキサゾリン(3.05mL、3.0g、30mmole)を次にゆっくりと攪拌しながら加えた。混合物を70℃まで加熱し、8時間.攪拌した。反応混合物を次に氷浴に浸して室温に冷却した。メタノール1mL中の水酸化カリウム(2mmol)を加え、混合物を1時間攪拌した。混合物を次に塩化メチレン(40mL)で抽出した。塩化メチレン層を分離し、水(総量40mL)で3回洗浄した。有機層を乾燥させ、濾過し、回転蒸発によって5mLに濃縮した。生成物をジエチルエーテル(100mL)に加えることによって沈殿させ、真空下で乾燥させた(収率0.7g)。
【0142】
GPCでは、感知できる高MWショルダ(Mn=3300Da、6%)(図2B)を持つ単一のピークを示した。主ピークのMnは2200Da、PDは1.07であった。NMRは、予見されたピーク(実施例6参照)を示した。MALDI−TOFMSでは、最大2300Da、および99.1Da分離の一連のピークを得た。MALDIスペクトルはまた、99.1Da分離の第2の一連のピークを示したが、各ピークは、一連の主ピークより14Da低かった。この一連のピークの最大は、2100Daで発生した。
【0143】
実施例3.M−PEOZ末端停止におけるエチルジイソプロピルアミンの効果
メチルトリフラート(0.0566mL、0.5mmol)をクロロベンゼン(5mL、2M)中の2−エチル−2−オキサゾリン(1.01mL、10.0mmol)の溶液に室温で加え、溶液を10分間攪拌した。溶液を次に110℃まで加熱し、30分間攪拌した。溶液を0℃に冷却し、ジイソプロピルエチルアミン(0.261mL、1.5mmol)を加え、得られた混合物を50℃で18時間攪拌した。混合物を室温に冷却し、ジエチルエーテル(50mL)に一滴ずつ加えると、白色沈殿物を得た。固形物を真空下でほぼ定量的収量に乾燥させた。
【0144】
GPCでは、一方が約2000Da(24%)、もう一方が約3800Da(76%)の2つのピークを示した。MALDIスペクトルは、高MWおよび低MW生成物の双方の存在を確認した。
【0145】
実施例4.M−PEOZ末端停止における2、6−ルチジンの効果
メチルトリフラート(0.0424mL、0.375mmol)をクロロベンゼン(3.75mL)中の2−エチル−2−オキサゾリン(0.758mL、7.5mmol)の溶液に室温で加え、溶液を10分間攪拌した。溶液を次に110℃まで加熱し、30分間攪拌した。溶液を0℃に冷却し、2、6−ルチジン(0.170mL、1.5mmol)を加え、得られた混合物を50℃で18時間攪拌した。混合物を室温に冷却し、ジエチルエーテル(20mL)に一滴ずつ加え、白色沈殿物を得た。固形物は真空下でほぼ定量的収量に乾燥させた。
【0146】
GPCでは、一方が約2000Da(89%)、もう一方が約4000Da(11%)の、いくらかの二量化と一致する2つのピークを示した。NMRスペクトルは、末端停止されていないオキサゾリニウムカチオンの存在と一致する4.2および5.0ppmでピークを示した。
【0147】
実施例5.メチルグリコール酸塩を用いたオキサゾリン重合の試行的末端停止
メチルトリフラート(0.453mL、0.004mol)をクロロベンゼン(5mL、2M)中の2−エチル−2−オキサゾリン(4.04mL、0.040mol)の溶液に室温で加え、溶液を10分間攪拌した。溶液を次に110℃まで加熱し、30分間攪拌した。溶液を0℃に冷却し、2、6−ルチジン(0.929mL、0.008mol)およびメチルグリコール酸塩(0.609mL、0.008mol)を加え、得られた混合物を室温で18時間攪拌した。混合物を室温に冷却し、ジエチルエーテル(1500mL)に一滴ずつ加えると、白色沈殿物を得た。固形物は真空下でほぼ定量的収量に乾燥させた。
【0148】
NMRは、4.46および4.99ppmでピークを示し、オキサゾリニウムイオンと一致し、グリコール酸塩の重合の末端停止の失敗と一致した。
【0149】
実施例6.最適条件化におけるM−PEOZ−OH2000の調製
クロロベンゼン(30mL)とMeOTf(344μL、3.0mmol)を、室温で窒素下で混合し、クロロベンゼン20mL中の2−Et−2−Ox(6.06mL、60mmol)に加えた。混合物を110℃まで加熱しながら35分間攪拌した。混合物を次に0℃に冷却し、次に水40mL中の水溶液炭酸ナトリウム(2.12g)を加え、一晩攪拌した。混合物を分液漏斗に注ぎ入れ、水40mLを加えた。最下層を除去し、水層を塩化メチレン(3x60mL)で抽出した。混合した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、回転蒸発によって濃縮した。濃い油状の残留物を塩化メチレン7mLに溶解し、ジエチルエーテル(80mL)に0℃で一滴ずつ加えた。この沈殿を繰り返すと、白色粉末4.2g(収率84%)を提供した。
【0150】
NMR(Varian製、500MHz、10mg/mL CDCl)では、1.12ppm(s、3H、CHCH2CO−)、2.31ppm(小さいs)および2.41ppm(大きいs)(総面積2H、CHCHCO−)、および3.47ppm(s、4H、−NCHCHN−)で通常の骨格ピークを示す。開始メチルのピークは、2.9ppm(小)および3.05ppm(大)(CH−NCHCH)で2つの一重項として出現する。末端メチレン(−CH−OH)は、3.8ppm(s)で出現する。GPCでは、高MWショルダおよび感知できるテーリングのない単一のピークを示した。Mn=1900Da、多分散度(PD)=1.03(図3A)である。MALDIでは、Mn=1900Da、99.1Da分離の質量単位でスペクトルを得た。算出されたPDは1.03であった。
p−ニトロフェニル炭酸塩の誘導体化
生成物をp−ニトロフェニル炭酸塩に変換し、次に0.2NのNaOH溶液(pH8)存在下で精製し、加水分解した。p−ニトロフェノール(400nmのUV吸収、ε=18、000M−1cm−1)を測定すると、−OHの置換度99%を得た。
【0151】
実施例7.最適条件化におけるM−PEOZ−OH5000の調製
クロロベンゼン(80mL)とMeOTf(354μL、3.2mmole)を、室温で窒素下で250mLの丸底一口フラスコ内で混合した。2−Et−2−Ox(16.4mL、16.0g、160mmol)を攪拌しながらフラスコにゆっくりと加えた。混合物はオキサゾリンを加えると混濁した。混合物を42℃に加熱し、1時間攪拌した。混合物は温度が上がると透明化した。次に混合物を80度まで加熱し、3.75時間攪拌した。混合物は次に氷浴に15分間浸して室温に冷却した。
【0152】
重合を水40mLと炭酸ナトリウム2gを加えることによって停止し、続いて30分間攪拌した。水層を分離し、有機層を水40mLと炭酸ナトリウム1gで再度抽出し、続いて30分間攪拌した。水層を分離し、最初の水層と合わせ、混合した水溶液を室温で一晩攪拌した。混濁した水層(約80mL)を次にpHが6(pH試験紙)未満になるまで0.5MのHCl(約40mL)で酸性化し、透明な溶液を得た。
【0153】
重合体を次に塩化メチレン(各回200mL)で4回抽出し、混合された有機層を無水硫酸マグネシウムで1時間攪拌しながら乾燥させた。塩化メチレン溶液を真空下で蒸発させ、得られた残留物を無水塩化メチレン25mLに溶解し、エチルエーテル(室温)250mLに一滴ずつ加えて沈殿させた。得られた白色固形物を次に真空オーブンで50℃で一晩乾燥させた。乾燥させた材料は白色粉末(14.1g、収率88%)であった。
【0154】
NMR(Varian製、500MHz、10mg/mL CDCl)では、1.12ppm(s、3H、CHCHCO−)、2.31ppm(小さいs)および2.41ppm(大きいs)(総面積2H、CHCHCO−)、および3.47ppm(s、4H、−NCHCHN−)で通常の骨格ピークを示す。開始メチルのピークは、2.9ppm(小)および3.05ppm(大)(CH−NCHCH)で2つの一重項として出現する。末端メチレン(−CH−OH)は、3.8ppm(s)で出現する。GPC GPCでは、保持期間13.5分間で単一のピークを示した。Mn=4100Da、および多分散度(PD)=1.06である。Mn(理論)=4980Daである。12.4分での小さいショルダは、約1%の高いMWの不純物を示唆し、Mn=8900Da(図3B)である。MALDIでは、Mn=4910Da、99.1Da分離の質量単位でスペクトルを得た。PDは1.02であった。
p−ニトロフェニル炭酸塩の誘導体化 生成物をp−ニトロフェニル炭酸塩に変換し、次に精製し、0.2NのNaOH溶液(pH8)存在下で加水分解した。p−ニトロフェノール(400nmでUV吸収、ε=18、000M−1cm−1)を測定すると、99%の−OH置換度を得た。
【0155】
実施例8.POZp−ニトロフェニル炭酸塩の合成
【0156】
【化10】

【0157】
アセトニトリル80mL中のM−PEOZ−OHの溶液(10.0g、1.0mmol)を、回転蒸発を使用して濃縮した。残留物を塩化メチレン(40mL)に溶解し、p−ニトロフェニルクロロギ酸塩(1.61g、7.96mmol)を0℃で加えた。ピリジン(0.80mL、9.95mmol)を、一滴ずつ加え、混合物を室温で3時間攪拌した。混合物を回転蒸発を使用して濃縮し、次にジエチルエーテルに加えると、白色沈殿物を得た。溶剤をデカンタし、沈殿物を真空下で乾燥させた。生成物を弱酸性の水に溶解し、20分間攪拌し、濾過した。生成物を塩化メチレン中で抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。この溶液を回転蒸発によって濃縮し、ジエチルエーテルに加えて沈殿させた。溶剤をデカンタし、生成物を真空下で乾燥させた。収量8.7gであった。NMR(Varian製、500MHz、10mg/mL CDCl)では、1.12ppm(s、3H、CHCHCO−)、2.31ppm(小さいm)および2.41ppm(大きいs)(総面積2H、CHCHCO−)、3.47ppm(s、4H、−NCHCHN−)、7.38ppm(d、2H、J=5.2Hz)、および8.29ppm(d、2H、J=5.2Hz)で通常の骨格ピークを示す。開始メチルのピークは、2.9ppm(小)および3.03ppm(大)(CH−NCHCH)で2つの一重項として出現する。末端メチレン(−CH−O−CO−)は、4.42ppm(s).で出現する。
p−ニトロフェニル炭酸塩の置換 生成物を0.2NのNaOH溶液存在下で加水分解した。遊離p−ニトロフェノール(400nmでUV吸収、ε=17、000M−1cm−1)を測定すると、100%の−OH置換度を得た。
【0158】
実施例9.M−PEOZアミンの合成
【0159】
【化11】

【0160】
塩化メチレン(20mL)中のM−PEOZ−PNPCの溶液(3.60g、0.694mmol)を0℃に冷却し、エチレンジアミン(2.33mL、34.7mmol)を加えた。この溶液をその低温で1時間、次に室温で18時間攪拌した。混合物を回転蒸発を使用して濃縮し、n−ブチルアルコール(20mL)を加えて希釈し、このアルコールを次に回転蒸発によって除去した(ジアミンを共沸的に除去するため)。残留物を塩化メチレン中に溶解し、ジエチルエーテルに加えた。溶剤をデカンタし、白色粉末を塩化メチレン(100mL)に溶解した。溶液を1NのNaOH溶液で洗浄した。この水相を塩化メチレン(2x70mL)で2回洗浄し、有機層をまとめ、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶液を濾過し、濃縮してエチルエーテルに加えた。溶剤をデカンタし、白色粉末を真空下で乾燥させた。
NMR(Varian製、500MHz、10mg/mL CDCl)では、通常の骨格ピークを1.12ppm(s、3H、CHCHCO−)、2.31ppm(小さいs)および2.41ppm(大きいs)(総面積2H、CHCHCO−)、および3.47ppm(s、4H、−NCHCHN−)で示す。開始メチルのピークは2.9ppm(小)および3.05ppm(大)(CH−NCHCH)で2つの一重項として出現する。末端メチレン(−CH−OCO−NH−)は4.2ppm(brs、2H)で出現し、エチレンジアミンに関連するプロトンは2.82ppm(m、2H、−NH−CH−CH−NH)および3.23ppm(m、2H、−NH−CH−CH−NH)で出現する。
【0161】
実施例10.POZスクシニミジル炭酸塩の合成
M−PEOZ−OH(0.5g、0.23mmol)の溶液を無水ジクロロメタンまたは無水アセトニトリル5mL中で調製し、回転蒸発によって濃縮した。ジスクシニミジル炭酸塩(0.24g、0.9mmol)の懸濁液を無水ジクロロメタンまたは無水アセトニトリル5mL中で調製した。ピリジン(0.094mL、1.16mmol)をこの懸濁液に加えた。M−PEOZ−OH溶液を上記の懸濁液に一滴ずつ加え、混合物を室温で一晩攪拌した。混合物を濾過し、回転蒸発を使用して濃縮し、次にジエチルエーテルに加えた。溶剤をデカンタし、白色粉末を真空下で乾燥させた。この粉末を乾燥アセトンに溶解し、ジエチルエーテルに加えて沈殿させた。収量0.6gであった。NMR(Varian製、500MHz、10mg/mL CDCl)は、1.12ppm(s、3H、CHCHCO−)、2.31ppm(小さいm)および2.41ppm(大きいs)(総面積2H、CHCHCO−)、3.47ppm(s、4H、−NCHCHN−)、2.70ppm(s、4H、SC基)で通常の骨格ピークを示す。開始メチルのピークは2.9ppm(小)および3.03ppm(大)(CH−NCHCH)で2つの一重項として出現しする。末端メチレン(−CH−O−CO−)は、4.24ppm(s)で出現する。
【0162】
実施例11.M−PEOZ−T−COOH2000の合成
a.メチルエーテルの合成
【0163】
【化12】

【0164】
M−PEOZ+の1mmol溶液を、上記のとおりクロロベンゼン中で調製した。溶液を室温に冷却した。メチル3−メルカプトプロピオン酸(0.65mL、6mmol)をTHF中のNaH(0.12g、5mmol)懸濁液に一滴ずつ0℃で加えた。M−PEOZ+溶液を次にTHF溶液にゆっくりと加えた。得られた混合物を室温まで加温し、一晩攪拌した。反応混合物を濾過し、エーテルに加えると白色沈殿物を獲得した。溶剤をデカンタし、固形物を真空下で乾燥すると、白色粉末1.5gを得た。
NMR(Varian製、500MHz、10mg/mL CDCl)では、1.12ppm(s、3H、CHCHCO−)、2.31ppm(小さいm)および2.41ppm(大きいs)(総面積2H、CHCHCO−)、3.47ppm(s、4H、−NCHCHN−)で通常の骨格ピークを示す。開始メチルのピークは、2.9ppm(小)および3.03ppm(大)(CH−NCHCH)で2つの一重項として出現する。末端メチレン(−CH−COO−CH)は2.64ppm(s)で出現し、その隣接するメチレン(S−CH−CH−CO−)は2.81ppm(s)で出現し、硫黄族隣接するメチレン(−CH−S−CH−)は、2.71ppm(s)で出現する。メチルエーテル基(−CH−COO−CH)は、3.71ppmで鋭い一重項として出現する。
チオ酸の合成
メタノール20mL中の上記のエステル溶液(8.1g、0.004mol)を調製し、0.05NのNaOH溶液(0.02mol)30mLと混合した。混合物を室温で40分間攪拌し、次に5%HClで酸性化した。メタノールを回転蒸発で除去し、溶液をジクロロメタンで抽出した。抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮し、エーテルに加えることにより沈殿させた。エーテルをデカントし、残留物を真空下で乾燥させた。NMRスペクトルは、メチルエステルのピークの3.71ppmでの消滅を示した。GPCでは、6%の高MWショルダを示した。主ピークは、Mnは1870Da、PDは1.15であった。DEAEセファロースFFの手段を使用したイオン交換クロマトグラフィによって、試料を精製した。生成物のGPCでは、高MWショルダのない単一の主ピークを得、Mnは1970DaおよびPDは1.08であった。MALDIでは、Mn2090DaおよびPD1.04であった。
【0165】
実施例12.M−PEOZ−T−プロピオン酸(M−PEOZ−T−PA)1000の合成
【0166】
【化13】

【0167】
M−PEOZを、クロロベンゼン(25mL)中の2−エチル−2−オキサゾリン(5.05mL、50mmol)およびメチルトリフラート(0.63mL、5.56mmol)を使用して、上記のとおり調製した。末端停止試薬を得るため、メチル3−メルカプトプロピオン酸(2.41mL、22.2mmol)をクロロベンゼン(10mL)中のカリウムtert−ブトキサイド(1.25g、11.1mmol)懸濁液に滴下で0℃で加えた。混合物をその低温で2時間攪拌した後、クロロベンゼン中のM−PEOZの溶液を滴下で加えた。混合物をその低温で4時間攪拌し、次に18時間室温で攪拌した。水(50mL)を加え、5%のHCl水溶液を加えて混合物を酸性化した(約pH3)。クロロベンゼンを含む揮発物を、回転蒸発を使用して除去した。得られた水溶液を、HO(70mL)中のNaOH(1.33g、33.3mmol)溶液で処理した。1時間の攪拌後、混合物を5%のHCl水溶液で酸性化し、次にジクロロメタンで抽出した。混合した有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮し、エーテルに加えることにより沈殿した。エーテルをデカントし、残留物を真空下で乾燥させた。DEAEセファロースFFの手段を使用したイオン交換クロマトグラフィによってさらなる精製を行った。GPCおよびGFCでは、Mnは910Da、PDは1.02の単一のピークを示す。MALDIでは、Mnは1100Da、PDは1.05であった。
【0168】
実施例13.M−PEOZ−T−プロピオン酸NHSエーテル(M−PEOZ−T−SPA)の合成
【0169】
【化14】

【0170】
N−ヒドロキシスクシンイミド(0.467g、2.26mmol)およびDCC(0.467g、2.26mmol)を、ジクロロメタン(44mL)中の上記の調製による(Mn910Da、2.0g、2.20mmol)M−PEOZ−T−COHの溶液に0℃で加えた。その低温で2時間攪拌後、混合物を室温まで加温し、一晩攪拌した。混合物をシリンジフィルタを使用して濾過し、濾液をジエチルエーテルに加えると白色粉末を得た。生成物を真空濾過によって採取し、真空下で乾燥させた(2.0g、収率89%)。HNMRスペクトルは、通常の骨格ピークに加えてスクシニミジルプロトンを2.86ppm(s、2H)で示し、スクシニミジル基の付加を明らかにした。収率を測定するため、化合物(計算では、Mn1025Da、0.4g、0.39mmol)をジクロロメタン(4mL)中のフェニルエチルアミン(0.15mL、1.17mmol)およびトリエチルアミン(0.16mL、1.17mmol)で処理した。一晩攪拌した後、混合物を濾過し、ジエチルエーテルに加えた。白色粉末を濾過し、真空を使用して乾燥させた。ゲル浸透クロマトグラフィによると、変換収率は99%であった。
【0171】
実施例14.メルカプチドを経由したM−PEOZ−チオ−NHの合成
【0172】
【化15】

【0173】
tBocエーテルの合成
クロロベンゼン(25mL)中の2−エチル−2−オキサゾリン(5.05mL、0.05mol)の水溶液に、メチルトリフラート(0.283mL、0.0025mol)を加えた。室温で10分間攪拌した後、混合物を110℃まで30分間加熱し、続いて0℃まで冷却した。末端停止試薬を得るために、クロロベンゼン(5mL)中のカリウムtert−ブトキサイド(0.561g、0.005mol)懸濁液にBoc−システアミン(0.84mL、0.0075mol)を滴下で0℃で加えた。その低温で混合物を1時間攪拌して透明な溶液を得た後、クロロベンゼン中のM−PEOZの溶液を、注射器を使用して滴下で0℃で加えた。混合物をその低温で4時間攪拌し、次に室温で18時間攪拌した。混合物をジエチルエーテルにゆっくりと加えると、白色沈殿物を得た。エーテルをデカントし、残留物を水に溶解し、続いてジクロロメタンで抽出した。混合された有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮し、エーテルに加えることにより沈殿させた。混合物を濾過し、得られた白色粉末を真空下で乾燥すると、4.0gの標的化合物を収率87%で得た。
【0174】
NMR(Varian製、500MHz、10mg/mL CDCl)は、1.12ppm(s、3H、CHCHCO−)、2.31ppm(s)および2.41(s)(総面積2H、CHCHCO−)、および3.47ppm(s、4H、−NCHCHN−)で通常の骨格ピークを示す。開始メチルのピークは、2.9ppmおよび3.03ppm(CH−NCHCH)で2つの一重項として出現する。Bocシステアミン末端基のピークは、1.44ppm(s、9H、−CHNHBoc)、2.67ppm(m、2H、−SCHCHNHBoc)、2.71ppm(m、2H、−CHSCHCHNHBoc)、および3.32ppm(m、2H、−SCHCHNHBoc)である。粗混合物は、NMR積分に基づいて約8%のM−PEOZ−OH種を含む。GPCでは、Mn=1790Da、PD=1.07の鋭いピークを産生する。
アミンの合成
M−PEOZ−T−NH(Boc)(Mn1850Da、3.218g、1.74mmol)を含むフラスコ内に塩酸(ジオキサン中の4M溶液、34.0mL)を0℃で激しく攪拌しながら加えた。混合物を室温まで加温し、1時間攪拌した。混合物を回転蒸発によって濃縮し、水(50mL)で希釈し、pHを約13に調整した。得られた水溶液を、ジクロロメタンで3回抽出した。混合された有機相をNaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮し、エーテル中に沈殿すると白色粉末を得、これを濾過し、真空下で乾燥すると2.5gの生成物を得た。CMセファロースFFの媒体を使用したイオン交換クロマトグラフィによってさらなる精製が行われた。2つの留分をカラム精製によって採取した。一方の0.2gの留分は純アミン重合体を含み、2つ目の2.2gの留分は前述の手順から持ち越された8%の不純物(M−PEOZ−OH)を有するアミン重合体を含んでいた。
【0175】
H NMR(Varian製、500MHz、10mg/mL CDCl)では、1.14ppm(m、3H、CHCHCO−)、2.32ppm(m)および2.41(s)(総面積2H、CHCHCO−)、および3.47ppm(m、4H、−NCHCHN−)で通常の骨格ピークを示した。開始メチルのピークは、2つの一重項として2.9ppmおよび3.03ppm(CH−NCHCH)で出現した。末端システアミノ基のピークは、2.69ppm(m、4H、−SCHCHNH、−CHSCHCHNH)、および2.91ppm(m、2H、−SCHCHNH)であった。Boc基の除去を、1.44ppm(s、9H、−CHNHBoc)でのピークの消滅によって確認した。GPCでは、Mn値は1700Da、PDIは1.10を示した。
【0176】
実施例15.M−PEOZ−T−SCM(M−PEOZ−S−CH−CO−NHS)の合成
酸の合成
クロロベンゼン(100mL)と2−エチル−2−オキサゾリン(39.7g、0.4mole、50等量)をアルゴン下で混合し、0℃で30分間攪拌した。メチルトリフラート(1.31g、1等量)を攪拌しながらフラスコに加え、0℃で30分間、25℃で30分間、42℃で1時間、次に80℃で3.5時間、攪拌を継続した。混合物を室温に冷却した。カリウムt−ブトキサイド(2.25g、5等量)とメチル2−メルカプト酢酸塩(2.9g、6等量)およびクロロベンゼン(100mL)を混合して別個のフラスコ内で末端停止混合物を調製し、0℃で1時間攪拌した。重合混合物を末端停止混合物に加え、室温で一晩攪拌した。混合物を塩化メチレン(50mL)で希釈し、濾過し、ジエチルエーテル(750mL)に加えた。浮遊物をデカンタし、沈殿物を採取して真空下で1時間乾燥させた。この粉末を0.1MのNaOH100mLに溶解し、4時間攪拌した。0.5MのHClを25mL加えて混合物を酸性化した。この水溶液を塩化メチレン(150mLx3回)で抽出し、MgSOで乾燥させ、50mLに濃縮し、ジエチルエーテル(400mL)中に沈殿した。得られた白色粉末を真空下で乾燥させた。
【0177】
得られた酸をDEAEイオン交換クロマトグラフィで精製すると、純粋な酸を得た(GFCクロマトグラフィが示すとおり)。NMRは、メチルおよびメチレンのエステルのピークが、それぞれ1.30と4.19ppmで消滅したことを示した。
NHSエステルの合成
N−ヒドロキシスクシンイミド(0.139g、1.21mmol)およびDCC(0.249g、1.21mmol)をジクロロメタン(60mL)中に溶解したM−PEOZ−T−CM(M−PEOZ−S−CH−COH、Mn4970Da、6.0g、1.21mmol)を含む溶液に0℃で加えた。この温度で2時間攪拌後、透明で無色の混合物を室温まで加温し、一晩攪拌した。白色沈殿物のある混合物をシリンジフィルタを用いて濾過した。濾液を攪拌しながらジエチルエーテルに加え、白色粉末様の沈殿物を産生した。焼結ガラス漏斗を使用して残留物を採取し、真空下で乾燥させて所望の生成物(収率85%)5.2gを得た。
【0178】
−NMR:H NMRスペクトルは、PEOZでの通常の骨格ピークに加え、2.87ppm(s、4H)でスクシニミジルプロトンを示し、ヒドロキシスクシンイミドの付加を確認した。
【0179】
変換収率を算出するため、この化合物(計算値Mn5070Da、0.100g、0.0197mmol)をジクロロメタン(2mL)中のフェニチルアミン(0.012mL、0.0987mmol)とトリエチルアミン(0.014mL、0.0987mmol)で処理した。一晩攪拌した後、混合物を濾過し、ジエチルエーテルに加えた。白色粉末を濾過し、真空を用いて乾燥すると、所望のアミドを定量的収量で得た。GFCによると、変換収率は95%超であった。
【0180】
実施例16.チオNHSエステルの加水分解速度
チオNHSエステルM−PEOZ−T−SCM 5KおよびM−PEOZ−T−SPA 5Kの反応性をpH8のホウ酸塩緩衝剤中で評価した。正確に計量した両エステルの試料を100mLの容量フラスコに入れ、pH8ホウ酸塩緩衝剤(0.2M)に溶解した。各フラスコから、始めは1分毎に、後には10分毎にアリコートを取り出し、260nmのλmax吸収で紫外分光法を用いて分析した。吸収値の上昇速度を時間に対してプロットした。これらの計算から、最大吸収値50%の速度が決定された。M−PEOZ−T−SCM 5KとM−PEOZ−T−SPA 5Kのt1/2の計算値はは、それぞれ1分未満および15分であった。
【0181】
実施例17.M−PEOZ−OCQ−NHSのGCSFとの共役
以下のとおり、単官能性誘導体M−PEOZ−OCO−NHSを本実施例ではGCSFである標的分子に共役した。4mgのGCSF(0.215μmol、MW=18.6kDa)を0.2Mホウ酸ナトリウム緩衝液(pH8.5)1mlに溶解し、GCSFの各アミノ基(合計5リジンに加えてα−アミン)につき3等量のM−PEOZ−OCO−NHSと室温で60分間反応させた。これらの反応条件下において、一官能性POZ誘導体とGCSF上のアミノ基の間の反応は、主としてより曝露した求核アミンにおいて発生する。
【0182】
GCSFの修飾は、60%緩衝剤A(TFA0.05%を含むHPLCグレードのHO)で平衡し、1%緩衝剤B/分(CHCN70%およびTFA0.05%)直線傾斜で、流速1ml/分にて30分間溶出した分析Cl8Agilentカラムを用いたRP−HPLCによって分析した。溶出した物質を吸収度280nmで検出した。GCSF−POZ複合体は左右非対称のピークとして保持期間18.8分間で溶出され、これはGCSF分子に共役するPOZ分子の数に関してGCSF−POZ複合体の不均質性を示唆する。アミノ基含有量のHabeebアッセイは、タンパク質アミノ基の70%がもはや遊離でないことを示した。
【0183】
いくつかの複合体の形成をSDS−PAGEおよびサイズ排除HPLCによって確認した。SDS−PAGE実験をPharmacia Phast Systemを使用して実行した。ミニゲル(12%ポリアクリルアミド)を定電圧(200V)で流し、Laemmliの方法にしたがって調製した。このゲルを染色するタンパク質をクマシーブルー溶液に入れ、一方重合体染色にはヨウ化バリウム溶液が使用された。重合体染色は、ヨウ化バリウム錯体の形成に基づく(Kurfust M.M.、1992、Analytical Biochemistry、200、244−248)。SDS−PAGEデータはいくつかの帯を示し、化学的に異なる分子のGCSF複合体の混合物が得られたことを示唆し、かかる複合体は、1個、2個または3個のPOZ分子から成る。
【0184】
分析用Biosep SEC S2000カラムを使用して、0.1Mリン酸ナトリウム、0.2M塩化ナトリウム、pH7.2、および流速0.5ml/分の20%アセトニトリルのアイソクラチック移動相で溶離し、サイズ排除HPLC分析を行った。溶離された材料を280nmの吸光度によって検出した。クロマトグラムは、天然タンパク質(9.00分で溶離ピーク)よりも多い分子量に相当する5.75分で溶離ピークを示し、GCSF−POZ複合体が形成されたことを示す。
【0185】
実施例18.リボヌクレアーゼAとのM−PEOZ−OCO−NHSの共役
以下のとおり、一官能性POZ誘導体M−PEOZ−OCO−NHSを、本実施例ではリボヌクレアーゼA(RNAseA)である標的分子に共役した。0.2Mホウ酸ナトリウム緩衝液(pH8.5)1mlに溶解したRNAseA(0.36μmol、MW13KDa)5mgを、RNAseAの各アミノ基(合計5リジンに加えてα−アミン)につき、3等量のM−PEOZ−OCO−NHSと反応させた。反応は室温で60分間行った。RNAseA修飾の程度を、80%緩衝剤A(HPLCグレードHOを含む0.05%TFA)で平衡し、1%緩衝剤B/分(90%CHCNおよび0.05%TFA)の直線傾斜で流速は1ml/分にて30分間溶出した分析用C4Agilentカラムを使用したRP−HPLCによって分析した。溶出した物質を吸収度280nmで検出した。クロマトグラムは、少量の(<10%)非修飾タンパク質を示す。POZ修飾タンパク質のピークはかなり広く、RNAseA分子に共役するPOZ分子の数に関してRNAseA−POZ複合体の不均質性を示唆した。アミノ基含有量のHabeebアッセイは、RNAseAのアミノ基の26%が修飾されたことを示した。
【0186】
いくつかの複合体の形成をSDS−PAGEおよびサイズ排除HPLCによって確認した。SDS−PAGE実験をPharmacia Phast Systemを使用して実行し、上記の実施例に記載のとおりに染色した。GCSFの結果と同様に、SDS−PAGEデータはいくつかの帯を示し、いくつかの異なるRNAseA−POZ複合体を表す。サイズ排除HPLC分析を、上記の実施例に記載のとおりに分析用Biosep SEC S2000を使用して行った。クロマトグラムは、、天然タンパク質と比較して、高い分子量に相当する早期の広いピークを示し、RNAseA−POZ複合体の形成と一致する。
【0187】
実施例19.M−PEOZ−マレイミドおよびオルトピリジルジスルフィドの調製
本実施例では、一官能性POZ誘導体M−PEOZ−マレイミドをM−PEOZ−NH(上記)から調製した。4−マレイミド酪酸100mg(0.55mmol、3等量)に、無水クロロホルム中のHOBT(1.09mmol)126mgおよびDCC(1.09mmol)226mgを加えた。3時間後、これに続いてM−PEOZ−NH16mg(0.00254mmol)を加えた。得られた溶液を室温で一晩放置した。反応混合物を0.1NのHClで洗浄し、乾燥させ、真空で蒸発させた。エチルエーテルを加え、沈殿物を濾過して採取し、乾燥させた。反応の収率は65%であった。
【0188】
オルトピリジルジスルフィド(OPSS)試薬を、スクシニミジルプロピオン酸ジチオピリジン(SPDP)(3倍過剰)をクロロホルム中でM−PEOZ−NHと5時間室温でトリエチルアミン(3等量)の存在下でカップリングすることにより、同様の手法で調製した。エーテルから沈殿させ、最終生成物を収率65%で得た。
【0189】
実施例20.M−PEOZ−マレイミド、M−PEOZ−OPSS、PEG−マレイミドおよびPEG−OPSSのチオールとの反応の比較
M−PEOZ−マレイミドとM−PEOZ−OPSSの反応性を評価するため、およびM−PEOZ−マレイミドとM−PEOZ−OPSS誘導体をそれらの対応するPEG誘導体の反応性と比較するため、PEOZとPEG重合体をシステインを含むトリペプチドグルタチオンに共役した。グルタチオンとの反応を当技術分野で周知のEllmanのアッセイで監視した。20mMのPEOZまたはPEG誘導体の溶液と2mMのチオールとをpH=7、0.1Mのリン酸エステル緩衝剤中(5mMのEDTAを含む)で調製した。アリコート(30μl)を回収して、920μlのpH7の緩衝剤に加えて反応停止した。DTNB50マイクロリッターを加え、5分後に420nmでの吸光度を測定して残留チオールを評価した。表4にシステイン修飾の度合いを報告する。
【0190】
【表4】

【0191】
実施例21.M−PEOZ−p−ニトロフェニル炭酸塩およびPEG−p−ニトロフェニル炭酸塩の加水分解およびアミノリシス研究
M−PEOZ−p−ニトロフェニル炭酸塩および対応するPEG−p−ニトロフェニル炭酸塩の加水分解速度を、0.1M、pH8のホウ酸塩緩衝剤において412nmで室温で放出されるp−ニトロフェノールの以下の紫外吸光度またはアミンに対する重合体の反応性を追跡することによって評価した。本実施例では、Gly−Gly(Gly−Gly/重合体は1:1の割合)の水溶液を活性化されたPEOZまたはPEG溶液に加えた。表5に加水分解およびアミノリシスの速度を半減期として報告する。
【0192】
【表5】

【0193】
実施例22.M−PEOZ−O−CH−COHの調製
M−PEOZ−OH(1.5g、0.00024モル、1等量)を共沸的にトルエン60ml中で蒸留し、30mlの蒸留液を除去した。反応混合物をゆっくりと室温に冷却し、続いてt−ブタノール中のカリウムt−ブトキサイド1.0M溶液0.5ml(0.5mmol)を加えた。得られた混合物を室温で1時間攪拌し、続いてt−ブチルブロモ酢酸塩94mg(0.48mmol)を加えた。得られた混濁した混合物を還流まで加熱し、冷却して室温で18時間攪拌した。反応混合物をCeliteで濾過し、溶剤を真空下で除去した。残留物をエチルエーテル中に沈殿させた。生成物を4℃で遠心分離し、3回洗浄し、溶剤を除去した。NMRでのt−ブチルのピーク(1.47ppm)と末端メチルピークとの比較は、定量的変換を示した。
【0194】
得られたカルボン酸t−ブチルエステルをCHCl/トリフルオロ酢酸/水(50ml/0.1ml/100ml)の混合物に溶解し、溶液を室温で3時間攪拌した。溶剤を真空下で除去してTFAを完全に除去し、続いてエチルエーテル中で遠心分離すると生成物900mg(60%)を得た。NMRは、t−ブチルピークが除去されていたことを示し、新規のメチレンのピークが4.08ppmで観察された。
【0195】
アニオン交換クロマトグラフィによってカルボン酸を過剰M−PEOZ−OHから精製した。生成物900mgを事前に平衡化したカラム(QAE50)に流速1ml/分で仕込んだ。M−PEOZ−OHが完全に溶離するまで水を使用した定組成溶離を行った。溶剤を0.01NのNaClに交換し、生成物を採取した。留分をIアッセイによって検査した。留分を真空下で30mlに濃縮し、CHCl(40mlx6)で6回洗浄した。収率は600mgであった。
【0196】
実施例23.M−PEOZ−O−CH−CO−NHSの調製
M−PEOZ−COOH(600mg、0.11mmol)をジクロロメタン15mLに溶解しN−ヒドロキシスクシンイミド(104mg0.9mmol)およびDCC(185mg、0.9mmol)を加えた。反応混合物を24時間放置して反応させ、エチルエーテルを加えることにより生成物を沈殿させ、濾過して採取し、乾燥させた。グリシン−グリシンを基質とするアミノ基修飾により、残留NH基の判定のためにTNBSを使用して測定された活性度は85%であった。
【0197】
実施例24.M−PEOZ−O−CH−CO−NHSおよびPEG−O−CH−CQ−NHSの加水分解およびアミノリシス研究
M−PEOZ−O−CHCO−NHSとPEG−O−CHCO−NHSの加水分解速度を、室温で0.1M、pH8のホウ酸塩緩衝剤中で、260nmにおいて、放出されるN−ヒドロキシスクシンイミドの紫外吸光度を測定して、評価した。アミンに対する重合体の反応性を評価するため、Gly−Gly溶液(Gly−Gly/重合体の割合は1:1)をM−PEOZ−O−CHCO−NHSとPEG−O−CHCO−NHS(当技術分野で周知のとおりに調製)の溶液に比較のために加えた。表6に加水分解およびアミノリシスを半減期として報告する。
【0198】
【表6】

【0199】
実施例25.M−PEOZ−O−CH−CO−NHSのGCSFとの共役
0.2Mホウ酸ナトリウム緩衝液(pH8.5)1mlに溶解した、GCSF(0.134μmol、MW=18.6KDa)2.5mgを、GCSFの各アミノ基(合計5リジンに加えてα−アミン)につき3等量のM−PEOZ−O−CH−CO−NHSと室温で60分間反応させた。この条件下で、修飾は主としてより曝露した求核アミンで発生する。
【0200】
GCSFの修飾を、分析用Cl8Agilentカラムを使用したRP−HPLCで分析した。溶離液Aは0.05%TFAを含むHOであり、溶離液Bは0.05%TFAを含むアセトニトリルであった。流速は1ml/分であり、検出は280nmで行われた。使用した勾配は、0分で30%、30分間で30から80%B、3分間で80から30%Bであった。クロマトグラムは、遊離タンパク質が存在しないことを示し、これは、遊離GCSFよりも後の保持期間で広いピークを示し、複数の型のGCSF−POZが存在することを示唆している。
【0201】
いくつかの複合体の形成をサイズ排除HPLCによって確認した。サイズ排除HPLC分析を、0.1Mリン酸ナトリウム、0.2M塩化ナトリウム、pH=7.2のアイソクラチック移動相および20%アセトニトリルで0.3ml/分で溶離したAgilentGF−250カラムを使用して行った。クロマトグラムは、天然GCSFに対して、より高い分子量のGCSF−POZ複合体共役に対応する広い溶離ピークを示し、広範囲の共役および質量の増加と一致する。
【0202】
実施例26.M−POZ−O−CH−CO−NHSおよびPEG−O−CH−CO−NHSで修飾された酵素の特性の比較
本開示のPOZ誘導体による重合および当技術分野で周知の対応するPEG重合体による重合の関数としての、酵素特性への異なる効果を評価するため、3つの異なる酵素、すなわち、リボヌクレアーゼA、ウリカーゼおよびカタラーゼをM−PEOZ−O−CH−CO−NHS(6kDa)およびPEG−O−CH−CO−NHS(5.5kDa)で修飾した。比較を容易にするため、重合体対酵素比、緩衝剤、pHおよび反応温度に関して、各酵素は類似の条件下で修飾した。
【0203】
上に記載のPOZおよびPEG重合体による酵素修飾条件は、ホウ酸塩緩衝剤中で0.2M、pH8.5であった。修飾に使用されたPOZおよびPEG重合体の量は、各酵素中の計算された利用可能な総アミノ基に基づいて計算した。例えば、リボヌクレアーゼAは分子量13.7kDaで、11の利用可能なアミノ基を有し、ウリカーゼは分子量130kDaで、100の利用可能なアミノ基を有し、カタラーゼは分子量240kDaで、112の利用可能なアミノ基を有する。
【0204】
3つの酵素溶液(2.5mg/ml)に、M−POZ−O−CH−CO−NHSまたはPEG−O−CH−CO−NHS固形物を室温で重合体対タンパク質アミノ基のモル比がそれぞれ2/1と1/1となるように加えた。天然型のリボヌクレアーゼ、ウリカーゼおよびカタラーゼのタンパク濃度を、280nmでそれぞれ9.45x10、13x10および1.67x10のモル吸光係数を使用して分光光度法で評価した。30分後、0.1MのpH7.4のリン酸エステル緩衝剤を溶離剤とするゲル浸透クロマトグラフィSephadexG−75カラムによって重合体−酵素の複合体を未反応重合体およびn−ヒドロキシスクシンイミドから除いた。
【0205】
タンパク質修飾の度合いをTNBSアッセイによって比色分析で評価し、共役アミノ基のタンパク質上に存在する総量に対する割合として表した。天然ならびに修飾酵素の酵素活性を以下のとおり評価した。リボヌクレアーゼ活性をCrookら(BiochemJ.1960Feb;74:234−8)の方法で分析し、ウリカーゼ活性をMahler(AnalBiochem.1970Nov;38(1):65−84)の方法によって決定し、カタラーゼをBeersおよびSizer(J.Biol.Chem.1952Mar;195(l):133−40)の報告による方法に従って分析した。
【0206】
表7Aから表7Cに、それぞれリボヌクレアーゼ(RNAse)、ウリカーゼおよびカタラーゼについての結果を提供する。
【0207】
【表7】


【0208】
リボヌクレアーゼには高い程度の修飾がされたことが見られ、結果的にM−POZ−O−CH−CO−NHSに対するよりもPEG−O−CH−CO−NHSで修飾された場合に活性の損失が高いことがわかった。ウリカーゼにおいては、修飾および活性の損失の双方の度合いは、PEG−O−CH−CO−NHSおよびM−POZ−O−CH−CO−NHSに類似した。しかしながら、POZ複合体は、テストされた双方のモル比において若干高い活性を示した。カタラーゼについては、PEG−O−CH−CO−NHSおよびM−POZ−O−CH−CO−NHSの修飾の程度は類似し、双方の場合において、酵素活性の微小な損失が認められ、テストされた双方のモル比においてPOZ複合体のほうがPEG複合体よりも活性であった。
【0209】
実施例27.M−PEOZ−NHのTGAseによるG−CSFへの共役
本実施例では、酵素TGAseを使用したPOZ−NHによるG−CSFの部位特異性修飾を調査した。比較のため、PEG−NHを使用した同一の反応も同一の試薬濃度で行われた。
【0210】
単官能性アルキルアミンM−PEOZ誘導体を、上に記載のとおりに生成物M−PEOZ−OHから調製した。M−PEOZ−NHとPEG−NHのG−CSとのTGAse触媒共役を、G−CSF1.6mg、どちらかのアミンの50mg、およびTGAse(市販)2mg/mlを使用して、pH7.2、0.1Mのリン酸塩緩衝剤中で、室温で18時間行った。これらの条件下で、G−CSFおよびM−PEOZ−NHの顕著なまたは明確な共役は発生しないが(逆相クロマトグラフィが示すとおり、上に詳述)、一方PEG−NHでは明確な共役を得た。
【0211】
さらなる2mg/mlのTGAse酵素をM−PEOZ−NH反応混合物に加えると、天然G−CSFタンパク質のピークは下降し、共役M−PEOZ−G−CSFを示す新規のピークが観察された。
【0212】
実施例28.M−PEOZアルデヒドの調製
【0213】
【化16】

【0214】
ジオールの調製
pH8.0の0.1Mホウ酸緩衝剤(3mL)中の3−アミノ−l、2−プロパンジオール(1.41gm、15mmol)をガラスバイアル中で調製した。濃縮HClを使用して溶液のpHをpH9に調節した。この溶液に、上に記載のとおりに調製したM−PEOZNHSエステル(1.00gm、0.197mmol)を激しく攪拌しながら加えた。1NのNaOHを加えて溶液のpHを9に維持した。溶液を室温で3時間放置して攪拌した。1NのHClを使用して溶液のpHをpH6.8に調節した。この溶液に、塩化ナトリウム(3gm)を加えた。この溶液に水(1mL)を加え、続いてジクロロメタン(3x10mL)で3回抽出した。水相を廃棄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、回転蒸発によって濃縮した。濃縮した溶液をジエチルエーテル(100mL)中に沈殿させた。得られた粉末を一晩高真空で乾燥させた。収量0.7gm。NMRでは置換は96%、およびGFCでは95%であった。DMSO−d6のNMR:−C(=O)NHCHCH(OH)CHOH:1H、δ4.49、t;−C(=O)NHCHCH(OH)CHOH:1H、δ4.70、d;−C(=O)NHCHCH(OH)CHOH:1H、δ7.87、t(不十分な解析)。
アルデヒドへの酸化
ジオール(0.500gm、0.112mmol)を水(8mL)に溶解した。0.1NのNaOHを加えて溶液のpHを6.85に調節し、続いて過ヨウ素酸ナトリウム(27.9mg、0.130mmol)を加えた。溶液を室温で1時間攪拌した。水(2mL)とNaCl(2gm)をこの溶液に加えた。溶液をジクロロメタン(3x10mL)で3回抽出した。混合した有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。混合物を濾過し、続いて濾液を減圧下で濃縮した。残留物をエチルエーテル(50mL)に加えることによって沈殿させた。濾過に続いて、得られた粉末を高真空下で乾燥させた。収量0.47gm。Mnは、GPCによって4840Daと決定された。アルデヒドの置換はCDClのNMRによると89%であった。CDClのIH−NMR:−C(=O)NHCHCHO、IH、δ9.635、s;−C(=O)NHCH2CHO、2H、δ4.175、q(良好に解析されなかった)。
【0215】
実施例29.M−PEOZ−PNPCからのM−PEOZマレイミド2Kの合成
【0216】
【化17】

【0217】
上に記載のとおりに調製したM−PEOZ p−ニトロフェニル炭酸塩(Mn2150Da、0.500g、0.232mmol)を、塩化メチレン(5mL)中のN−(2−アミノエチル)マレイミドトリフルオロ酢酸塩(0.065g、0.255mmol)とトリエチルアミン(0.097mL、0.696mmol)の混合物に加えた。室温で18時間攪拌後、この混合物を濾過し、次に滴下でジエチルエーテル中に加えると、淡黄色の沈殿物を得た。溶剤をデカンタし、固形物を真空下で乾燥すると、定量的収量を得た。H NMRスペクトルでは、通常の骨格ピークに加えて、末端メチレンプロトン(−CH−OCO−NU−)を4.15ppm(br s、2H)で示し、マレイミドに関連するプロトンを6.72ppm(s、2H)で示した。収率は、開始メチル基およびマレイミドの積分の比較によって約80%と算出された。
【0218】
実施例30.イソニペコチン酸エチルを経由したM−PEOZ NHSエーテルの合成
【0219】
【化18】

【0220】
エチルエーテルの合成
メチルトリフラート(2.83mL、25.0mmol)をクロロベンゼン(250mL)中の2−エチル−2−オキサゾリン単量体(50.47mL、0.500mol)の水溶液に室温で加えた。10分間攪拌後、反応混合物を110℃まで40分間加熱した。反応混合物を0℃に冷却し、次にイソニペコチン酸エチル(11.55mL、75.0mmol)を加えた。得られた混合物を室温で2時間攪拌した後、これをエーテル(1500mL)中に沈殿して白色粉末57gを得た。沈殿物を200mLのHOに溶解し、次に200mLの塩化メチレンで3回抽出した。混合した有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。粘り気のある油状の残留物をCHCl(100mL)に溶解し、ジエチルエーテル(1000mL)に沈殿させた。溶剤をデカンタした後、残留物を真空中で乾燥させ、白色粉末43.5gを収率86%で提供した。NMR(500MHz、10mg/mL CDCl)では、1.12ppm(s、3H、CHCHCO−)、2.31ppm(小さいs)および2.41(大きいs)(総面積2H、CHCHCO−)、および3.46ppm(s、4H、−NCHCHN−)で通常の骨格ピークを示す。開始メチルのピークは、2.9ppm(小)および3.03ppm(大)(CH−NCHCH)で2つの一重項として出現する。ピペリジンのピークは、1.68ppm(br s、3H)、1.90ppm(br s、2H)、2.15ppm(br s、2H)、および2.84ppm(br s、2H)で示される。末端エチルエステルのピークは、1.26ppm(t、3H、J=7.0MHz、−C(=O)OCHCH)および4.13ppm(q、2H、J=6.5MHz、−C(=O)OCHCH)で出現する。GPCでは、Mn=1770DaおよびPD=1.06を示す。MALDIでは、Mn=2050DaおよびPD=1.02を示す。
酸の合成
M−PEOZエチルエーテル(Mn=2050Da、10.0g、4.89mmol)をHO(60mL)に溶解した。HO(20mL)中のNaOH(0.977g、24.4mmol)溶液を加え、混合物を40分間攪拌した。混合物を5%HCl水溶液で酸性化し、次にジクロロメタンで抽出した。混合された有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮し、エーテルに加えることにより沈殿させた。エーテルをデカントし、残留物を真空下で乾燥すると白色粉末9.0gを91%収率で得た。H NMRは、エチルエステル基のピークが加水分解によって完全に消失したことを示した。
NHSエステルの合成
N−ヒドロキシスクシンイミド(0.173g、1.50mmol)およびDCC(0.310g、1.5mmol)をジクロロメタン(50mL)中のM−PEOZ−COH(Mn2020Da、3.0g、1.49mmol)の溶液に0℃で加えた。この低温で2時間攪拌した後、混合物を室温まで加温し、一晩攪拌した。混合物を濾過し、濾液をジエチルエーテルに加えると白色粉末を得た。生成物を濾過によって採取し、真空下で乾燥させた(2.8g、収率93%)。H NMRスペクトルは、2.89ppm(s、2H)でスクシニミジルプロトンおよび通常の骨格ピークを示した。
【0221】
実施例31.M−PEOZ−メシラートの試行的調製
【0222】
【化19】

上に記載のとおり、M−PEOZ−OH 2Kを調製した。M−PEOZ−OH 2K(1.00gm、0.608mmol)を無水アセトニトリル(20mL)に溶解し、回転蒸発器でほぼ乾燥するまで蒸発させた。残留シロップをアセトニトリル(20mL)に再度溶解し、回転蒸発でほぼ乾燥するまで蒸発させた。無水ジクロロメタン(5mL)を加えた。低速のアルゴン流下で、トリエチルアミン(169.3μL、1.215mmol)、続いて塩化メシル(84.6μL、1.094mmol)を加えた。溶液をアルゴン雰囲気下で放置して室温で一晩攪拌した。溶液を回転蒸発によって濃縮した。濃縮した溶液を、ジエチルエーテルに加えることによって沈殿させた。沈殿物を採取して、高真空下で乾燥させた。収量0.6gm。CDClにおけるNMRでは、−CHCHOMs(δ4.44)のピークを示が、面積は約50%変換のみと一致する。−OMsの置換の低さは、メシラートの形成に続くオキサゾリニウムイオンを形成する副反応に起因する。CDClにおけるNMRは、δ5.01(2H、t、正電荷を持つ5員環:−0−CHCHN)およびδ4.44(2H、t、同一の5員環:−O−CHCHN、−CH−OMsと同一の移動)でピークを示す。
【0223】
実施例32.M−PPOZ−OHの合成
【0224】
【化20】

【0225】
メチルトリフラート(MeOTf、25.0μL、0.221mmol)を、新たに乾燥させ、蒸留したクロロベンゼン(2mL)と混合した、新たに乾燥させ、蒸留した2−n−プロピル−2−オキサゾリン(0.500g、4.42mmol)の溶液に加えた。10分間攪拌した後、混合物を110℃まで20分間加熱した。混合物を0℃に冷却し、メタノール(2mL)中のNaOH(0.044g、1.11mmol)の水溶液を使用して末端停止した。NMR(500MHz、10mg/mL CDCl)は、0.95ppm(s、3H、CHCHCHCO−)、1.65ppm(s、2H、CHCHCHCO−)、2.25ppm(小さいs)および2.34(大きいs)(総面積3H、CHCHCHCO−)、および3.45ppm(s、4H、−NCHCHN−)で骨格ピークを示す。開始メチルのピークは2.94ppm(小)および3.03ppm(大)(CH−NCHCH、総面積3H)で2つの一重項として出現する。末端メチレン(−OCH−OH)は3.8ppmで出現する。粗混合物のGPCでは、Mn=1760DaおよびPD=1.1を示した。
【0226】
実施例33.M−PPOZ−チオ−プロピオン酸の合成
【0227】
【化21】

【0228】
クロロベンゼン(25mL)中の2−プロピル−2−オキサゾリン(5.66mL、50mmol)およびメチルトリフラート(0.808mL、7.14mmol)を使用してM−PEOZを上記に示すとおりに調製し、110℃まで25分間加熱し、次に0℃に冷却した。末端停止試薬を得るため、メチル3−メルカプトプロピオン酸(3.09mL、28.6mmol)をクロロベンゼン(14mL)中のカリウムtert−ブトキサイド懸濁液(1.60g、14.3mmol)に滴下で0℃で加えた。混合物を2時間その低温で攪拌した後、クロロベンゼン中のM−PEOZの溶液を、注射器を使用して滴下で加えた。混合物をその低温で4時間攪拌し、次に室温で18時間攪拌した。水(30mL)を加え、5%のHCl水溶液を追加することによって混合物を酸性化(約pH3)した。クロロベンゼンを含む揮発物を回転蒸発を使用して除去した。得られた水溶液をHO(60mL)および固体NaOH(1.43g、35.7mmol)で希釈した。1時間攪拌後、混合物を5%のHCl水溶液で酸性化し、次にジクロロメタンで抽出した。混合した有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮し、エーテルに加えることにより沈殿させた。エーテルをデカントし、残留物を真空下で乾燥させると、粘性のある透明な黄色油を得た。GPCでは、Mnが867Da、PDが1.01の単一の主ピークを示した。GFCでは、粗生成物が2つの異なる種、すなわちM−PPOZ−T−COH(80%)およびM−PPOZ−T−OH(20%)を含むことを示した。
【0229】
実施例34.M−PEOZ−T−レチノイン酸の合成
レチノイン酸(0.0102g、0.0425mmol)とヒドロキシベンズトリアゾール(HOBt、0.0115g、0.0849mmol)をアセトニトリル(10mL)に溶解し、回転蒸発を使用して共沸した。残留物をジクロロメタン(3mL)に再溶解した。固形のDCC(0.0088g、0.0425mmol)を加え、混合物を2時間攪拌した。4300DaのM−PEOZ−NH(0.122g、0.0283mmol)を混合物に加え、放置して40時間攪拌させた。混合物をジエチルエーテルにゆっくりと加えると、黄白色粉末を得た。生成物を濾過し、乾燥すると、生成物0.0823gを収率63%で得た。
【0230】
実施例35.M−PEOZ−SCMによるAra−Cの修飾および共役活性 POZ−共役
M−PEOZ−O−CH−CO−NHS(M−PEOZ−SCM5000)(180mg、0.034mmol)をピリジン11mLに溶解し、無水ピリジン5mLに事前に溶解したシトシンアラビノースの溶液(Ara−C)(5.7mg、0.023mmol)に0℃で加えた。得られた溶液を、72時間室温で攪拌した。逆相HPLC(C−18カラム)は反応の完了を示した。溶剤の蒸発後、生成物を塩化メチレン(5mL)に溶解し、150mLエーテルに一滴ずつ加えた。沈殿物を遠心分離で4oCで採取し、真空下で乾燥させた。収量150mg、80%。NMRは、通常のM−PEOZ骨格(上記)に加えて、7.31、7.67、8.16、および8.62ppmで、Ara−Cのピリミジンプロトンのピークを示した。共役のpH8緩衝剤への曝露は、Ara−Cがゆっくりと放出されることを示し(24時間後で15%)、しかるに共役はプロドラッグと見なされ得る。
共役活性
標準的な手順で培養したヒト頚部腺癌細胞(HeLa)を、24ウェル細胞培養プレートの各ウェルの中に播種した。24時間後、培地を新鮮培地と取替え、細胞をM−PEOZ−Ara−Cまたは遊離Ara−C(Ara−C中20mM)の水溶液で濃度を上昇させながら処理した。細胞を標準状態で72時間培養した。Trypan Blueアッセイを実施して、細胞の生存を判定した。このアッセイにより、共役されたAra−Cは、HeLa細胞に対して細胞障害性であることが示されたが、遊離Ara−Cと比較して30分の1の細胞障害性であり、共役の持続放出プロセスと一致する。類似の手法で調製されたPEG−Ara−Cと比較すると、PEG−とPOZ−複合体は類似の特性を有することが示された。
【0231】
実施例36.H−PEOZ−S−CHCH−COHの合成
クロロベンゼン(25mL)と2−エチル−2−オキサゾリン(9.92g、0.1mol、200等量)を周囲温度でアルゴン下で混合し、0℃に冷却した。トリフルオロメタンスルホン酸(0.075g、1等量)を攪拌しながら加え、反応混合物を30分間攪拌した。混合物を次に80℃まで加熱し、7時間攪拌した。カリウムt−ブトキサイド(168mg、3等量)およびメチル3−メルカプトプロピオン酸(0.360g、6等量)を0℃で6時間反応させることにより、末端停止混合物を別個に調製した。末端停止混合物を重合反応物に0℃で加え、次に室温で一晩攪拌した。溶液を次に0.25Mの水酸化ナトリウム50mLと混合し、1時間攪拌した。水層を分離し、塩化ナトリウムで飽和し、塩化メチレン(250mLx3)で抽出した。塩化メチレンを回転蒸発で除去し、重合体を真空下で乾燥させた。
【0232】
得られた酸をDEAEクロマトグラフィで精製すると、1.5グラムの白色粉末を得た。プロトンNMRは、1.12ppm(m、3H、CHCHCO−)、2.31ppm(m)および2.41ppm(s)(面積2H、CHCHCO−)、および3.47ppm(m、4H、−NCHCHN−).で通常の骨格ピークを示した。プロピオン酸塩メチレンのピークは、2.74、2.81および2.85ppmで出現した。GFCでは、単一のピークが示された。GPCでは、Mnが15、200Da、PDが1.09であった。
【0233】
前述の記載は、本開示の化合物および用途のある実施形態を説明し記載する。また、本開示は、本願の化合物および用途の例示的な実施形態のみを示し、説明するものであるが、上に記載の通り、本開示の教示は種々の他の組み合わせ、変更、および環境において使用することができ、本願に示すように、上記の教示および/または関連する技術分野における技術または知識に相応する理念の範囲内で変更することができるものと理解されたい。上に記載の実施形態は、本発明を行う者が知る最良の形態をさらに説明し、当業者が本発明をかかる、もしくは他の実施形態において、本発明の特定の用途または使用によって必要とされる種々の変更とともに、利用することを可能にすることを意図する。したがって、本願の説明は、本発明の本願に開示される形態への制限を意図するものではない。本願に引用されるすべての参考文献は、本開示に完全に記載されるごとく参照によって組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端を活性化したポリオキサゾリン(POZ)化合物であって、前記POZ化合物はその停止末端部に単一の活性官能基を有するPOZ重合体を含み、前記官能基は、標的分子の基と反応して標的分子−POZ複合体を生成することができ、前記標的分子と前記POZ化合物との間のすべての結合は加水分解に安定な結合である、化合物。
【請求項2】
POZ重合体が、R−[N(COR)CHCHの構造を成し、Rは、水素、置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニルまたはアラルキル基であり、ならびにRは、置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニルまたはアラルキル基から各反復単位について独立して選択され、ならびにnは3から1000までの整数である、請求項1の化合物。
【請求項3】
が、1から12個の炭素原子を有する、請求項2の化合物。
【請求項4】
が、メチル、エチルまたはn−プロピルである、請求項2の化合物。
【請求項5】
POZ重合体が、1.2以下、1.1以下または1.05以下の多分散性値を有する、請求項1の化合物。
【請求項6】
標的分子−POZ複合体の生体内半減期が、生理学的条件下で増加する、請求項1の化合物。
【請求項7】
ポリオキサゾリン(POZ)化合物であって、前記POZ化合物はその停止末端部に単一の活性官能基を有するPOZ重合体を含み、前記官能基は、標的分子の基と反応して標的分子−POZ複合体を生成することができ、前記標的分子と前記POZ化合物との間のすべての結合は加水分解に安定な結合であり、ならびに前記POZ重合体は1.2以下の多分散性値を有する、化合物。
【請求項8】
POZ重合体が、R1−[N(COR7)CH2CH2]nの構造を成し、R1は水素、置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニルまたはアラルキル基であり、ならびにR7は置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニルまたはアラルキル基から各反復単位について独立して選択され、ならびにnは3から1000までの整数である、請求項7の化合物。
【請求項9】
R7が、1から12個の炭素原子を有する、請求項8の化合物。
【請求項10】
R7が、メチル、エチルまたはn−プロピルである、請求項8の化合物。
【請求項11】
POZ重合体が、1.2以下、1.1以下または1.05以下の多分散性値を有する、請求項7の化合物。
【請求項12】
標的分子−POZ複合体の生体内半減期が、生理学的条件下で増加する、請求項7の化合物。
【請求項13】
一般構造R1POZ−Pp−Qq−Xの、末端を活性化したポリオキサゾリン(POZ)化合物であって、
POZは、[N(COR7)CH2CH2]nであり、
Xは、標的分子と加水分解に安定な結合を形成して標的分子−POZ複合体を形成することができる活性官能基であり、
Pは、−O−、−S−、NH、−NR11−、置換されていないヘテロシクリルを含むがこれらに限定されない連結基であり、
Qは、置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニル、アラルキル、ヘテロシクリルまたはアリール基、−(CH2)m−CONH−(CH2)m−、−NH−(CH2)m−NHCO−(CH2)m−、−CO−(CH2)m−、−CO−C6H4−、または−CO−R8、−(R15)m−または−(CR3R4)m−を含むがこれらに限定されない連結基であり、
R7は、置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニルまたはアラルキル基、アラルキル、ヘテロシクリル、アリール、アルケンからPOZの反復単位について独立して選択され、
R1、R3からR4、R11およびR14からR15は、それぞれ独立して水素、置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニルまたはアラルキル基から選択され、
R8は、−C6H10−CH2−であり、
nは、3から1000までの整数であり、
mは、1から10までの整数であり、
pおよびqは、0または1から独立して選択される整数である、化合物。
【請求項14】
活性官能基が保護されている、請求項13の化合物。
【請求項15】
R7が、1から12個の炭素原子を有する、請求項13の化合物。
【請求項16】
R7が、メチル、エチルまたはn−プロピルである、請求項13の化合物。
【請求項17】
活性官能基は、アルデヒド、活性カーボネート(−O−CO−Z)、マレイミド、スルホン酸エステル(OSO2−R23)、ヒドラジド、エポキシド、ヨードアセトアミド、アルキン、アジド、イソシアネート、シアン酸塩 イソチオシアン酸塩、チオシアン酸塩、ニトリル、カルボニルジイミダゾール誘導体、ビニルスルホン、カルボン酸ハロゲン化物、活性エステル(−CO−Z)およびカルボン酸から成る群から選択され、上述のものはいずれも置換されているかまたは置換されていなくてもよく、Zは活性化基でありならびにR23は置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキルまたはアリール基である、請求項13の化合物。
【請求項18】
スルホン酸エステルが、トレシレートまたはメシラートである、請求項17の化合物。
【請求項19】
ZがN−スクシンイミジルオキシ、塩素、臭素、スルホ−N−スクシンイミジルオキシ、p−ニトロフェノキシ、1−イミダゾリル、またはl−ベンゾトリアゾールイルオキシである、請求項17の化合物。
【請求項20】
活性官能基の複素環が、置換されているかまたは置換されていないピペラジニル、または置換されているピペリジニル基である、請求項17の化合物。
【請求項21】
POZ重合体が、1.2以下、1.1以下または1.05以下の多分散性値を有する、請求項13の化合物。
【請求項22】
標的分子−POZ複合体の生体内半減期が、生理学的条件下で増加する、請求項13の化合物。
【請求項23】
一般構造R1POZ−Pp−Qq−Ww−Uu−Xの、末端を活性化したポリオキサゾリン(POZ)化合物であって、
POZは、[N(COR7)CH2CH2]nであり、
Xは、標的分子と加水分解に安定な結合を形成して標的分子−POZ複合体を形成することができる活性官能基であり、
Pは、−O−、−S−、NH、−NR11−、置換されていないヘテロシクリルを含むがこれらに限定されない連結基であり、
Qは、置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニル、アラルキル、ヘテロシクリルまたはアリール基、−(CH2)m−CONH−(CH2)m−、−NH−(CH2)m−NHCO−(CH2)m−、−CO−(CH2)m−、−CO−C6H4−、または−CO−R8、−(R15)m−または−(CR3R4)m−を含むがこれらに限定されない連結基であり、
Uは、−(R16)o−、−(CR5R6)o−、−NH−R21NHCO−R22−から成る群から選択される結合であり、
Wは、−NH−CO−O−、−NH−CO、−NH−CO−NH−、−NH−CS−NH−、−O−、−S−、−NH−およびSO−CO−NHから成る群から選択される連結基であり、
R7は、POZの反復単位について独立して置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニルまたはアラルキル基から選択され、
R1、R3からR6、R11、R14からR16およびR21からR22は、それぞれ独立して水素、置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニルまたはアラルキル基から選択され、
R8は、−C6H10−CH2−であり、
nは、3から1000までの整数であり、
mおよびoは、1から10から独立して選択される整数であり、
p、q、wおよびuは、は、0または1から独立して選択される整数である、化合物。
【請求項24】
活性官能基が保護されている、請求項23の化合物。
【請求項25】
R7が、1から12個の炭素原子を有する、請求項23の化合物。.
【請求項26】
R7が、メチル、エチルまたはn−プロピルである、請求項23の化合物。
【請求項27】
活性官能基が、アルデヒド、活性カーボネート(−O−CO−Z)、マレイミド、スルホン酸エステル(OSO2−R23)、ヒドラジド、エポキシド、ヨードアセトアミド、アルキン、アジド、イソシアネート、シアン酸塩 イソチオシアン酸塩、チオシアン酸塩、ニトリル、カルボニルジイミダゾール誘導体、ビニルスルホン、カルボン酸ハロゲン化物、活性エステル(−CO−Z)およびカルボン酸から成る群から選択され、上述のものはいずれも置換されているかまたは置換されていなくてもよく、Zは活性化基でありならびにR23は置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキルまたはアリール基である、請求項23の化合物。
【請求項28】
スルホン酸エステルが、トレシレートまたはメシラートである、請求項27の化合物。
【請求項29】
Zが、N−スクシンイミジルオキシ、塩素、臭素、スルホ−N−スクシンイミジルオキシ、p−ニトロフェノキシ、1−イミダゾリル、またはl−ベンゾトリアゾールイルオキシである、請求項27の化合物。
【請求項30】
活性官能基の複素環が、置換されているかまたは置換されていないピペラジニルまたは置換されているピペリジニル基である、請求項27の化合物。
【請求項31】
POZ重合体が、1.2以下、1.1以下または1.05以下の多分散性値を有する、請求項23の化合物。
【請求項32】
標的分子−POZ複合体の生体内半減期が、生理学的条件下で増加する、請求項23の化合物。
【請求項33】
一般構造R1−POZ−C−Qq−Xの、末端を活性化したポリオキサゾリン(POZ)化合物であって、
POZは、[N(COR7)CH2CH2]nであり、
Xは、標的分子と加水分解に安定な結合を形成することができる活性官能基であり、
Qは、置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニル、アラルキル、ヘテロシクリルまたはアリール基、−(CH2)m−CONH−(CH2)m−、−NH−(CH2)m−NHCO−(CH2)m−、−CO−(CH2)m−、−CO−C6H4−、または−CO−R8、−(R15)m−または−(CR3R4)m−を含むがこれらに限定されない連結基であり、
Cは、−O−、−NR19−、−S−、−NH−、またはPOZ部分とピペリジンもしくはピペラジン環のN基との間に形成される−N−含有結合から成る群から選択される連結基であり、
R7は、、置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニルまたはアラルキル基からPOZの反復単位について独立して選択され、
R1、R3からR4、R11、R14からR15およびR19は、それぞれ水素、置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニルまたはアラルキル基から独立して選択され、
R8は、−C6H10−CH2−であり、
nは、3から1000までの整数であり、
mは、1から10までの整数であり、
qは、0または1の整数である、化合物。
【請求項34】
活性官能基が保護されている、請求項33の化合物。
【請求項35】
R7が、1から12個の炭素原子を有する、請求項33の化合物。
【請求項36】
R7が、メチル、エチルまたはn−プロピルである、請求項33の化合物。
【請求項37】
活性官能基は、アルデヒド、活性カーボネート(−O−CO−Z)、マレイミド、スルホン酸エステル(OSO2−R23)、ヒドラジド、エポキシド、ヨードアセトアミド、アルキン、アジド、イソシアネート、シアン酸塩 イソチオシアン酸塩、チオシアン酸塩、ニトリル、カルボニルジイミダゾール誘導体、ビニルスルホン、カルボン酸ハロゲン化物、活性エステル(−CO−Z)およびカルボン酸から成る群から選択され、上述のものはいずれも置換されているかまたは置換されていなくてもよく、Zは、活性化基でありならびにR23は、置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキルまたはアリール基である、請求項33の化合物。
【請求項38】
スルホン酸エステルが、トレシレートまたはメシラートである、請求項37の化合物。
【請求項39】
Zが、N−スクシンイミジルオキシ、塩素、臭素、スルホ−N−スクシンイミジルオキシ、p−ニトロフェノキシ、1−イミダゾリル、またはl−ベンゾトリアゾールイルオキシである、請求項37の化合物。
【請求項40】
X基の複素環が、置換されているかまたは置換されていないピペラジニルまたは置換されているピペリジニル基である、請求項37の化合物。
【請求項41】
POZ重合体が、1.2以下、1.1以下または1.05以下の多分散性値を有する、請求項33の化合物。
【請求項42】
化合物が、
【化1】

である、請求項33の化合物。
【請求項43】
標的分子−POZ複合体の生体内半減期が、生理学的条件下で増加する、請求項33の化合物。
【請求項44】
一般式A−B−TMの標的分子POZ複合体であって、
式中、Aは、POZ化合物であって、その停止末端部に単一の活性官能基を有するが、前記POZ化合物の前記活性官能基と標的分子上にある結合パートナーとの反応中に除去されるいかなる離脱基も含まない、POZ化合物であり、
TMは、前記標的分子であって、前記標的分子は結合パートナーを含み、ならびに
Bは、前記活性官能基と結合パートナーとの間に形成される加水分解に安定な結合である、複合体。
【請求項45】
活性官能基がトレシレートであり、結合パートナーがSHでありならびにBがチオエーテル結合である、請求項44の複合体。
【請求項46】
活性官能基がマレイミドであり、結合パートナーがSHでありならびにBがチオエーテル結合である、請求項44の複合体。
【請求項47】
活性官能基が活性カーボネートであり、結合パートナーがNH2でありならびにBがウレタン結合である、請求項44の複合体。
【請求項48】
活性官能基が活性エステルであり、結合パートナーがNH2でありならびにBがアミド結合である、請求項44の複合体。
【請求項49】
活性官能基がアルデヒドであり、結合パートナーがNH2でありならびにBがアミン結合である、請求項44の複合体。
【請求項50】
POZ化合物が、1.2以下、1.1以下または1.05以下の多分散性値を有する、請求項44の複合体。
【請求項51】
POZ化合物が、請求項1、請求項13、請求項23または請求項33のPOZ化合物である、請求項44の複合体。
【請求項52】
標的分子−POZ複合体の生体内半減期が、生理学的条件下で増加する、請求項44の複合体。
【請求項53】
POZ重合体が1.2以下、1.1以下または1.05以下の多分散性値を有する、請求項44の複合体。
【請求項54】
末端を活性化したポリオキサゾリン(POZ)化合物を合成する方法であって、
(a)POZ重合を開始して停止末端に陽イオンを有するPOZ重合体を形成するステップ、および
(b)前記POZ重合体を求核試薬で末端停止するステップ
を含む、方法。
【請求項55】
求核試薬がメルカプチドである、請求項54の方法。
【請求項56】
メルカプチドが、R25S−Dd−Xの構造を成し、
Xは、活性官能基、または活性官能基に変換されることが可能な基であり、前記活性官能基は、標的分子と加水分解に安定な結合を形成して標的分子−POZ複合体を形成することができ、
R25は、金属であり、
Dは、置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニル、ヘテロシクリルまたはアリール基、−(CH2)b−CONH−(CH2)b−、−NH−(CH2)b−NHCO−(CH2)b−、−CO−(CH2)b、−CO−C6H4−、または−CO−R26、または−(CR27R28)bを含むがこれらに限定されない連結基であり、
R27およびR28は、それぞれ独立して水素または置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニルまたはアラルキル基群から選択され、
R26はC6H10−CH2−であり、
dは0または1であり、ならびに
bは1から10の整数である、請求項55の方法。
【請求項57】
活性官能基が、アルデヒド、活性カーボネート(−O−CO−Z)、マレイミド、スルホン酸エステル(OSO2−R23)、ヒドラジド、エポキシド、ヨードアセトアミド、アルキン、アジド、イソシアネート、シアン酸塩 イソチオシアン酸塩、チオシアン酸塩、ニトリル、カルボニルジイミダゾール誘導体、ビニルスルホン、カルボン酸ハロゲン化物、活性エステル(−CO−Z)およびカルボン酸から成る群から選択され、上述のものはいずれも置換されているかまたは置換されていなくてもよく、Zは活性化基でありならびにR23は置換されていないかまたは置換されているアルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキルまたはアリール基である、請求項56の方法。
【請求項58】
スルホン酸エステルが、トレシレートまたはメシラートである、請求項56の方法。
【請求項59】
Zが、N−スクシンイミジルオキシ、塩素、臭素、スルホ−N−スクシンイミジルオキシ、p−ニトロフェノキシ、1−イミダゾリル、またはl−ベンゾトリアゾールイルオキシである、請求項56の方法。
【請求項60】
R25はLi、NaまたはKである、請求項56の方法。
【請求項61】
活性官能基が保護されている、請求項56の方法。
【請求項62】
POZ重合体が、1.2以下、1.1以下または1.05以下の多分散性値を有する、請求項54の方法。
【請求項63】
以下の構造を有し、
【化2】

nは3から1000までの整数である、化合物。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2010−529212(P2010−529212A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551999(P2009−551999)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/002626
【国際公開番号】WO2008/106186
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(509241915)セリナ・セラピユーテイツクス・インコーポレーテツド (2)
【Fターム(参考)】