説明

活性光線硬化型インクおよびその製造方法

【課題】メンテナンスの頻度を軽減でき、高感度で長期間に渡り安定した出射精度が得られる、活性光線硬化型インクおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】オキセタン化合物と、脂環式エポキシ化合物と、グリシジル基含有化合物またはビニルエーテル化合物と、光酸発生剤と、顔料と、分散剤とからなる活性光線硬化型インクであって、該顔料を該グリシジル基含有化合物又はビニルエーテル化合物を主成分とする分散媒で分散した後に、他成分を混合して製造することを特徴とする活性光線硬化型インクの製造方法及び活性光線硬化型インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あらゆる記録材料に、様々な印字環境下においても高精細な画像を安定に再現できる活性光線硬化型インク、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式は一般消費者向けの小型プリンターから産業用の画像パターン作製用途やグラフィック分野など、様々な印刷分野に応用されてきている。中でもUV光などの活性光線によりインクを定着させるUVインクジェット方式は、広範囲の基材に対し高速で印刷できる特徴から、産業用印刷分野への適用が急速に拡大してきている。
【0003】
例えば、紫外線硬化型インクジェットインクが開示されて(例えば、特許文献1参照)いる。また紫外線硬化型インクジェット用インクとして、カチオン重合性化合物を用いたインクが開示されて(例えば、特許文献2参照)いる。このカチオン重合性化合物を用いたインクは、酸素阻害作用を受けないのでエネルギー照度の低い光源であっても硬化させることが出来るという利点がある。
【0004】
産業用途において出射の信頼性は重要な性能である。UVインクは粘度が高く、良好な出射安定性を得るためにはヘッド部においてインクを加熱し5〜20mPa・s程度まで粘度を低下させて出射される。また、出射安定性を確保するためにインクジェットノズル面に撥インク性を持たせ安定したメニスカスを形成することが行われている。
【0005】
しかしながら、UVインクジェット方式ではしばしばノズル面の撥インク性が損なわれ出射安定性が劣化するケースが見られる。高粘度のインクを長期に渡り加熱を繰り返すことによる熱反応、UV光がノズル面に達し引き起こされる化学反応、蒸気圧の高い成分の揮発や外気水分などの影響など、様々な原因が考えられるが、インク中の何らかの不純物や反応性生物がインクジェットノズルプレート面に付着・堆積していくことで出射の不安定化が起こる。これらの付着物上には、供給されたインクが付着し濡れていくため、出射精度の劣化や、高周波数の連続出射における出射欠などの問題を引き起こす。
【0006】
このように撥インク処理が施されたインクジェット面にインクが付着し濡れていく現象は、特に、高感度となるよう設計されたカチオン重合型インクにおいて課題となっていた。これらの付着物はクリーニングによって回復することも可能であるが、装置機構が複雑になる上に、頻度の高いメンテナンスは経済的なロスを伴い好ましくない。
【特許文献1】特表2000−504778号公報
【特許文献2】特開2002−60484号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、メンテナンスの頻度を軽減でき、高感度で長期間に渡り安定した出射精度が得られる、活性光線硬化型インクおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0009】
1.オキセタン化合物と、脂環式エポキシ化合物と、グリシジル基含有化合物またはビニルエーテル化合物と、光酸発生剤と、顔料と、分散剤とからなる活性光線硬化型インクであって、該顔料を該グリシジル基含有化合物又はビニルエーテル化合物を主成分とする分散媒で分散した後に、他成分を混合して製造することを特徴とする活性光線硬化型インクの製造方法。
【0010】
2.活性光線硬化型インクを製造する際、分散中のグリシジル基含有化合物またはビニルエーテル化合物の比率を70質量%以上で製造することを特徴とする前記1記載の活性光線硬化型インクの製造方法。
【0011】
3.粘度が10〜30mPa・s(25℃)の単官能または2官能のグリシジルエーテル基含有化合物を用いることを特徴とする前記2記載の活性光線硬化型インクの製造方法。
【0012】
4.光酸発生剤を0〜50℃の温度範囲で溶解して製造することを特徴とする前記1記載の活性光線硬化型インクの製造方法。
【0013】
5.前記1〜4のいずれか1項記載の活性光線硬化型インクの製造方法により製造されたことを特徴とする活性光線硬化型インク。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、メンテナンスの頻度を軽減でき、高感度で長期間に渡り安定した出射性の印刷システムを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
UV硬化感度と長期間の出射安定性を得ることを目的として、インクジェットノズルに付着する活性光線硬化型インク中の成分に着目し鋭意検討を行った。その結果この成分は、活性光線硬化型インクの製造方法に大きく依存することが判明し、本発明に至った。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
(オキセタン化合物)
本発明の活性光線硬化型インク(以後単にインクとも言う)においては、少なくとも1種のオキセタン環を有する化合物を含む。
【0018】
本発明で用いることのできるオキセタン化合物としては、オキセタン環を有する化合物のことであり、特開2001−220526号、同2001−310937号等に開示されているような公知のあらゆるオキセタン化合物を使用できる。
【0019】
(脂環式エポキシ化合物)
また、本発明においては、更なる硬化性及び吐出安定性の向上のために、少なくとも1種の脂環式エポキシ化合物を含有する。
【0020】
脂環式エポキシ化合物としては、少なくとも1個のシクロヘキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。
【0021】
(グリシジル基含有化合物)
本発明に係るグリシジル基含有化合物は、グリシジル基を1つ以上有する有機化合物であり、例えば水酸基を有する化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって製造することができる。
【0022】
水酸基を有する化合物としては、例えばブチルフェノール、1,6−ヘキサンジオール等があげられ、これらとエピクロルヒドリンとの反応によってモノグリシジルエーテル又はポリグリシジルエーテルが得られる。
【0023】
本発明に係る単官能とは、グリシジル基を1つ有することをいい、芳香族グリシジル基とは、芳香族基を有するグリシジル基を有する化合物をいう。
【0024】
本発明に係るグリシジル基を有する化合物としては、単官能であるものが好ましく、また芳香族基を有する化合物が好ましく特に単官能で、芳香族基を有する化合物が吐出安定性、画像品質の面から特に好ましい。これらの中でもさらに、25℃における粘度が1〜40mPa・sである化合物が好ましい。
【0025】
本発明においては、グリシジル基を末端ではなく内部に有するエポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドを含有することもできる。
【0026】
エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセライドにエポキシ基を導入したものであれば、特に制限はなく用いられる。
【0027】
エポキシ化脂肪酸エステルとしては、オレイン酸エステルをエポキシ化して製造されたもので、エポキシステアリン酸メチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等が用いられる。また、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、同様に、大豆油、アマニ油、ヒマシ油等をエポキシ化して製造されたもので、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ヒマシ油等が用いられる。市販されているエポキシ化された植物油としては、例えば、新日本理化株式会社製サンソサイザーE−4030、ATOFINA Chemical社製 Vf7170、Vf7190、Vf5075、Vf4050、Vf7010、Vf9010、Vf9040、Vf7040等が挙げられる。
【0028】
(ビニルエーテル化合物)
本発明に係る、ビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0029】
本発明の活性光線硬化型インクの好ましい構成としては、グリシジル基を有する化合物を30〜70質量%、オキセタン化合物を5〜60質量%、脂環式エポキシドを5〜30質量%、ビニルエーテル化合物0〜40質量%とを含有する構成が挙げられる。
【0030】
本発明に係る、グリシジル基を有する化合物の例示化合物を以下に記載する。
【0031】
【化1】

【0032】
(光酸発生剤)
本発明係る光酸発生剤は、活性光線の照射により活性光線硬化型インクの硬化を開始しうる化合物であり、オニウム塩が好ましく用いられる。
【0033】
オニウム塩の例示化合物としては、例えば、THE CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN Vol.71 No.11, 1998年、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)等に記載の光酸発生剤と同様、公知の方法にて容易に合成することができる。
【0034】
オニウム塩としては、吐出安定性向上の観点から、スルホニウム塩であることが好ましい。
【0035】
また、光酸発生剤としては、logPow(Pow:1−オクタノールと水との間の分配係数)が1.0以上のオニウム塩が好ましい。
【0036】
また、スルホニウム塩が、活性光線照射後にベンゼンを発生することが好ましく、さらに分子量700以下であることが好ましい。
【0037】
本発明において、インク調合時に光酸発生剤を添加し混合溶解するときの液温は0〜50℃の範囲、好ましくは0〜40℃の範囲にあることが好ましい。このように温度制御することにより、インクジェットノズル面の清浄度を保つことが可能となり、結果としてインクの出射安定性およびメンテ性を向上させることが出来る。
【0038】
本発明においては、更なる硬化性の向上のため、増感剤を併用することが好ましい。
【0039】
増感剤としては、置換基として水酸基、置換されていてもよいアラルキルオキシ基またはアルコキシ基を少なくとも1つ有する多環芳香族化合物、カルバゾール誘導体及びチオキサントン誘導体から選ばれる少なくとも1種であり、かつ330nmよりも長波長に紫外線スペクトル吸収を有する増感剤が好ましく用いられる。
【0040】
多環芳香族化合物としては、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体が好ましい。置換基であるアルコキシ基としては、炭素数1〜18のものが好ましく、特に炭素数1〜8のものが好ましい。アラルキルオキシ基としては、炭素数7〜10のものが好ましく、特に炭素数7〜8のベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基が好ましい。
【0041】
増感剤を例示すると、カルバゾール、N−エチルカルバゾール、N−ビニルカルバゾール、N−フェニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、1−ナフトール、2−ナフトール、1−メトキシナフタレン、1−ステアリルオキシナフタレン、2−メトキシナフタレン、2−ドデシルオキシナフタレン、4−メトキシ−1−ナフトール、グリシジル−1−ナフチルエーテル、2−(2−ナフトキシ)エチルビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジメトキシナフタレン、1,1′−チオビス(2−ナフトール)、1,1′−ビ−2−ナフトール、1,5−ナフチルジグリシジルエーテル、2,7−ジ(2−ビニルオキシエチル)ナフチルエーテル、4−メトキシ−1−ナフトール、ESN−175(新日鉄化学社製のエポキシ樹脂)またはそのシリーズ、ナフトール誘導体とホルマリンとの縮合体等のナフタレン誘導体、9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9−メトキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジエトキシアントラセン、9−エトキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、9−イソプロポキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、9−ベンジルオキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、9−(α−メチルベンジルオキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(2−カルボキシエトキシ)アントラセン等のアントラセン誘導体、1,4−ジメトキシクリセン、1,4−ジエトキシクリセン、1,4−ジプロポキシクリセン、1,4−ジベンジルオキシクリセン、1,4−ジ−α−メチルベンジルオキシクリセン等のクリセン誘導体、9−ヒドロキシフェナントレン、9,10−ジメトキシフェナントレン、9,10−ジエトキシフェナントレン等のフェナントレン誘導体などを挙げることができる。これら誘導体の中でも、特に、炭素数1〜4のアルキル基を置換基として有していても良い9,10−ジアルコキシアントラセン誘導体が好ましく、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0042】
また、チオキサントン誘導体としては、例えば、チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン2−クロロチオキサントン等を挙げることができる。
【0043】
本発明においては、更なる吐出安定性の向上のため、塩基性化合物を併用することが好ましい。
【0044】
塩基性化合物を含有することで、吐出安定性が良好となるばかりでなく、低湿下においても硬化収縮による皺の発生が抑制される。塩基性化合物としては、公知のあらゆるものを用いることができるが、代表的なものとして、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などが挙げられる。
【0045】
塩基性アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属のアルコラート(例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド等)が挙げられる。
【0046】
塩基性アルカリ土類金属化合物としては、同様に、アルカリ土類金属の水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、アルカリ金属のアルコラート(例えば、マグネシウムメトキシド等)が挙げられる。
【0047】
塩基性有機化合物としては、アミンならびにキノリンおよびキノリジンなど含窒素複素環化合物などが挙げられるが、これらの中でも、光重合成モノマーとの相溶性の面からアミンが好ましく、例えば、オクチルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミン、ナフチルアミン、キシレンジアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジメチルアニリン、キヌクリジン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、2−メチルアミノエタノール、トリイソプロパノールアミンおよびトリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0048】
塩基性化合物を存在させる際のその濃度は、重合性化合物の総量に対して10〜1000質量ppm、特に20〜500質量ppmの範囲であることが好ましい。なお、塩基性化合物は単独で使用しても複数を併用して使用してもよい。
【0049】
(顔料)
本発明の活性光線硬化型インクには、上述の組成物と共に、各種公知の顔料を含有する。
【0050】
本発明で好ましく用いることのできる顔料を、以下に列挙するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
C.I Pigment Yellow−1、3、12、13、14、17、81、83、87、95、109、42、74、120、138、139、150,151、180、181、185、 C.I Pigment Orange−16、36、38、 C.I Pigment Red−5、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57:1、63:1、144、146、185、101、121、 C.I Pigment Violet−19、23、 C.I Pigment Blue−15:1、15:3、15:4、18、60、27、29、 C.I Pigment Green−7、36、 C.I Pigment White−6、18、21、 C.I Pigment Black−7、
上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。
【0052】
(分散剤)
また、顔料の分散を行う際に、上述した、グリシジル基含有化合物又はビニルエーテル化合物を主成分とする分散媒中で分散するが、分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、高分子分散剤を用いることが好ましく、高分子分散剤としてはAvecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ社のPBシリーズが挙げられる。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。
【0053】
これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
【0054】
顔料分散を行う際、分散媒として用いるグリシジル基含有化合物又はビニルエーテルの比率は、顔料分散液全体の25質量%以上、好ましくは70質量%以上となるよう分散媒の主成分とすることが好ましい。本発明のようにグリシジル基含有化合物又はビニルエーテルを主成分とすることによって、出射安定性、メンテ性を向上させることが可能となる。
【0055】
また、分散媒主成分として用いるグリシジル基含有化合物又はビニルエーテルは粘度が10〜30mPa・s(25℃)であることが好ましい。この粘度範囲のグリシジル基含有化合物又はビニルエーテルを用いることにより、より効率良く顔料を分散することが可能となり、インクの長期保存安定性だけでなく、出射安定性、メンテ性を向上させることが可能となる。
【0056】
顔料の分散は、顔料粒子の平均粒径を0.08〜0.5μmとすることが好ましく、最大粒径は0.3〜10μm、好ましくは0.3〜3μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒の選定、分散条件、ろ過条件を適宜設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。本発明の活性光線硬化型インクにおいては、色材を含有する場合、色材濃度としては、活性光線硬化型インク全体の1質量%乃至10質量%であることが好ましい。
【0057】
本発明の活性光線硬化型インクには、上記説明した以外に様々な添加剤を用いることができる。例えば、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することができる。また、ラジカル重合性モノマーと開始剤を組み合わせ、ラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インクとすることも可能である。
【0058】
本発明の活性光線硬化型インクは、25℃における粘度が7〜50mPa・sであることが、硬化環境(温度・湿度)に関係なく吐出が安定し、良好な硬化性を得るために好ましい。
【0059】
本発明に係る画像形成方法で用いることのできる記録材料としては、通常の非コート紙、コート紙などの他、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、延伸ナイロン(ONy)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを挙げることができる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが使用できる。また、金属類や、ガラス類にも適用可能である。これらの記録材料の中でも、特に熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムへ画像を形成する場合に本発明の構成は、有効となる。これらの基材は、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいばかりでなく、インク膜が基材の収縮に追従し難い。
【0060】
これら各種プラスチックフィルムの表面エネルギーは、素材の特性により大きく異なり、記録材料によってはインク着弾後のドット径が変わってしまうことが、従来から問題となっていた。本発明の構成では、表面エネルギーの低いOPPフィルム、OPSフィルムや表面エネルギーの比較的大きいPETまでを含む、表面エネルギーが35〜60mN/mの広範囲の記録材料に良好な高精細な画像を形成できる。
【0061】
本発明において、包装の費用や生産コスト等の記録材料のコスト、プリントの作製効率、各種のサイズのプリントに対応できる等の点で、長尺(ウェブ)な記録材料を使用する方が有利である。
【0062】
次に、本発明に係る画像形成方法について説明する。
【0063】
本発明に係る画像形成方法においては、上記のインクをインクジェット記録方式により記録材料上に吐出、描画し、次いで紫外線などの活性光線を照射してインクを硬化させる方法が好ましい。
【0064】
(インク着弾後の光照射条件)
本発明に係る画像形成方法においては、活性光線の照射条件として、インク着弾後0.001秒〜1.0秒の間に活性光線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001秒〜0.5秒である。高精細な画像を形成するためには、照射タイミングが出来るだけ早いことが特に重要となる。
【0065】
活性光線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号に開示されている。これによると、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明に係る画像形成方法においては、これらの何れの照射方法も用いることが出来る。
【0066】
また、活性光線を照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で活性光線を照射し、かつ、全印字終了後、更に活性光線を照射する方法も好ましい態様の1つである。活性光線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
【0067】
従来、UVインクジェット方式では、インク着弾後のドット広がり、滲みを抑制のために、光源の総消費電力が1kW・hrを超える高照度の光源が用いられるのが通常であった。しかしながら、これらの光源を用いると、特に、シュリンクラベルなどへの印字では、記録材料の収縮があまりにも大きく、実質上使用出来ないのが現状であった。
【0068】
本発明では、1時間あたりの消費電力が1kW以下の光源を用いても、高精細な画像を形成出来、且つ、記録材料の収縮も実用上許容レベル内に収められる。1時間あたりの消費電力が1kW未満の光源の例としては、蛍光管、冷陰極管、LEDなどがあるが、これらに限定されない。
【0069】
(インク着弾後の総インク膜厚)
本発明では、記録材料上にインクが着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が2〜20μmであることが好ましい。スクリーン印刷分野の活性光線硬化型インクジェット記録では、総インク膜厚が25μmを越えているのが現状であるが、記録材料が薄いプラスチック材料であることが多い軟包装印刷分野では、前述した記録材料のカール・皺の問題でだけでなく、印刷物全体のこし・質感が変わってしまうという問題が有るため、過剰な膜厚のインク吐出は好ましくない。
【0070】
尚、ここで「総インク膜厚」とは記録材料に描画されたインクの膜厚の最大値を意味し、単色でも、それ以外の2色重ね(2次色)、3色重ね、4色重ね(白インクベース)のインクジェット記録方式で記録を行った場合でも総インク膜厚の意味するところは同様である。
【0071】
(インクの加熱及び吐出条件)
本発明に係る画像記録方法においては、活性光線硬化型インクを加熱した状態で、活性光線を照射することが好ましい。
【0072】
その一つの方法として、インクジェット記録ヘッド及びインクを35〜100℃に加熱し、加熱した状態でインクを記録材料上に噴射することが、吐出安定性の点で好ましい。
【0073】
また、インクジェット記録ヘッド及びインクをそれぞれ35〜80℃に加熱した状態で、インクジェット記録ヘッドよりインクを噴射し、更にインクが記録材料上に着弾した後も、35〜80℃に保った状態で、活性光線を照射することが、吐出安定性の点で好ましい。
【0074】
本発明において、インクジェット記録ヘッド及びインクを所定の温度に加熱、保温する方法として特に制限はないが、例えば、ヘッドキャリッジを構成するインクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク等のインク供給系や、フィルター付き配管、ピエゾヘッド等を断熱して、パネルヒーター、リボンヒーター、保温水等により所定の温度に加温する方法がある。
【0075】
また、インクが記録材料上に着弾した後、所定の温度に保つ方法としては、例えば、記録材料の保持部にパネルヒーターを組み込む方法や、記録材料搬送部を囲って、温風等で加熱する方法を挙げることができる。
【0076】
活性光線硬化型インクは、温度変動による粘度変動幅が大きく、粘度変動はそのまま液滴サイズ、液滴射出速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こすため、インク温度を上げながらその温度を一定に保つことが必要である。インク温度の制御幅としては、設定温度±5℃、好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
【0077】
また、本発明では、各ノズルより吐出する液滴量が2〜20plであることが好ましい。本来、高精細画像を形成するためには、液滴量がこの範囲であることが必要であるが、この液滴量で吐出する場合、前述した吐出安定性が特に厳しくなる。本発明によれば、インクの液滴量が2〜20plのような小液滴量で吐出を行っても吐出安定性は向上し、高精細画像が安定して形成出来る。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
実施例1
《活性光線硬化型インクセットの調製》
下記の方法に従って、活性光線硬化型インクを調製した。
【0080】
(顔料分散液の調製)
60℃に加熱した表1に示す分散媒に、表1に示す分散剤を添加・攪拌し、分散剤を溶解した後に表1に示す顔料を添加し、0.3mmのジルコニアビーズを用いてビーズミル分散を行い、表1に示す、Y、M、C、K、Wの各顔料分散液1及び顔料分散液2を調製した。
【0081】
【表1】

【0082】
(活性光線硬化型インクの調製)
活性光線硬化型インク配合手順A
PC(プロピレンカーボネート)にTAS−1(トリアリールスルホニウム塩−1)を質量比=1:1、25℃で攪拌し溶解し開始剤溶解液Aを得た。表1記載の各顔料分散液1に対し、OXT221、EP−6、EP−1、OXT212、EPR−1、上記開始剤溶解液A及びKF351を順次添加し、攪拌混合した。ここでEP−6、EP−1は表1記載の配合率となるように、各顔料分散液1からの持込分を差し引いた量を配合した。次に、DEAを添加し溶解した。0.8μmのメンブレンフィルターにて得られた溶解液をろ過し、Y1A、M1A、C1A、K1A、W1Aの各活性光線硬化型インクを得た。インクの液調製は、全て液温25℃にて行った。
【0083】
活性光線硬化型インク配合手順B
表1記載の各顔料分散液1に対し、OXT221、EP−6、EP−1、OXT212、EPR−1、DEA、PC、KF351を順次添加し、60℃に加熱して1時間攪拌混合し、溶解混合した。ここでEP−6、EP−1は表1記載の配合率となるように、各顔料分散液1からの持込分を差し引いた量を配合した。次に、液温を40℃まで下げてからTAS−1を添加し、溶解混合した。0.8μmのメンブレンフィルターにて得られた溶解液をろ過し、Y1B、M1B、C1B、K1B、W1Bの各活性光線硬化型インクを得た。
【0084】
活性光線硬化型インク配合手順C
表2記載のインク配合比率に従って顔料、OXT221、PB822、EP−6、EP−1、OXT212、EPR−1、PC、TAS−1、DEA、KF351を順次添加し、60℃に加熱して1時間攪拌混合し、次いでTAS−1を溶解した。得られた液を、0.3mmのジルコニアビーズを用いてビーズミル分散を行った。分散液を0.8μmのメンブレンフィルターにて得られた溶解液をろ過し、Y1C、M1C、C1C、K1C、W1Cの各活性光線硬化型インクを得た。
【0085】
活性光線硬化型インク配合手順B2
表1記載の各顔料分散液2を用い、上述した活性光線硬化型インク配合手順Aにて、Y2Aを、インク配合手順BにてM2B、C2B、K2B、W2Bの各活性光線硬化型インクを得た。
【0086】
得られた各活性光線硬化型インクの配合比率を表2に示す。
【0087】
【表2】

【0088】
以下に実施例で用いた前記例示化合物の番号およびそれに対応する製品を記す。
【0089】
実施例2
実施例1において、EP−6にかえてDVE−3を用い、実施例1のインク化手順Aと同様にインクを作製したインクを、Y3A、M3A、C3A、K3A、W3Aとした。
【0090】
〈オキセタン〉
OXT−221:二官能オキセタン(東亞合成社製)
【0091】
【化2】

【0092】
〈グリシジル基を有する化合物〉
EP−1:EX−146(粘度20mPa・s/25℃、ナガセケムテックス社製)
EP−6:EX−121(粘度4mPa・s/25℃、ナガセケムテックス社製)
〈光開始剤〉
PC:プロピレンカーボネート
【0093】
【化3】

【0094】
〈分散剤〉
PB822:味の素ファインテクノ社製
〈界面活性剤〉
KF351:側鎖ポリエーテル変性シリコーン(信越化学工業社製)
〈増感剤〉
DEA:ジエトキシアントラセン
評価
(1)感度
PETフィルム上に8μmの厚みでインクを塗布し、低圧水銀灯にて露光、硬化させ、硬化に要する感度を求めた。
○:硬化感度<15mJ/cm
△:硬化感度15〜30mJ/cm
×:硬化感度>30mJ/cm
(2)出射安定性
KonicaMinolta IJ製インクジェットヘッドKM512M(ヒーター付き)を用い、インクの粘度に合わせ45〜55℃の間で適宜インクの温調を行い出射性を評価した。
【0095】
出射テスト開始前にはインクジェットノズル面をメンテナンスによりクリーン化し、連続1時間の出射でランクを付けた。
○:出射の間、曲がり、欠は無く、最後まで安定している
△:出射の間、曲がり、欠が数個レベル程度出現するが自然に復帰し、最後まで安定している
×:出射の間、曲がり、欠が数個以上あるが、最終的にノズル欠または出射曲がりが1ノズル以上残る。
【0096】
(3)メンテナンス性
インクパージ後ノズル面をワイプ材にて拭き取った後のノズル面の状態を観察し、以下の評価基準で評価を行った。
○:インク残りも無く綺麗に拭き取りが出来る
△:僅かにインクがノズル面に残る。複数回の拭き取りまたはクリーニング液を利用した拭き取りでインクが綺麗に取れる
×:複数回の拭き取りでもノズル面にインクが残る。完全なインク拭き取りはクリーニング液などが必要となる。
【0097】
(4)メンテナンス頻度
ノズル面の撥インク性が劣化するまでの期間を以下の評価基準で評価した。
○:1ヶ月以上、メンテ無しでもノズル面は綺麗
△:1ヶ月使用すると、僅かにインクがノズル面に残る
×:1ヶ月使用すると、インクがノズル面に多く残る。
【0098】
【表3】

【0099】
表3より明らかなように、本発明の活性光線硬化型インクを用いと、高感度で長期間に渡り安定した出射性が得られ、かつ、メンテナンスの頻度を軽減できることができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキセタン化合物と、脂環式エポキシ化合物と、グリシジル基含有化合物またはビニルエーテル化合物と、光酸発生剤と、顔料と、分散剤とからなる活性光線硬化型インクであって、該顔料を該グリシジル基含有化合物又はビニルエーテル化合物を主成分とする分散媒で分散した後に、他成分を混合して製造することを特徴とする活性光線硬化型インクの製造方法。
【請求項2】
活性光線硬化型インクを製造する際、分散中のグリシジル基含有化合物またはビニルエーテル化合物の比率を70質量%以上で製造することを特徴とする請求項1記載の活性光線硬化型インクの製造方法。
【請求項3】
粘度が10〜30mPa・s(25℃)の単官能または2官能のグリシジルエーテル基含有化合物を用いることを特徴とする請求項2記載の活性光線硬化型インクの製造方法。
【請求項4】
光酸発生剤を0〜50℃の温度範囲で溶解して製造することを特徴とする請求項1記載の活性光線硬化型インクの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の活性光線硬化型インクの製造方法により製造されたことを特徴とする活性光線硬化型インク。

【公開番号】特開2009−298956(P2009−298956A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156437(P2008−156437)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】