説明

活性化T細胞受容体の核因子

細胞におけるサイトカイン及び細胞受容体の生産及び発現を調節するアゴニスト及びアンタゴニスト抗体を生産するのに有用な、活性化T細胞の核因子(NFAT)を活性化する新規な受容体。該受容体は、270アミノ酸から成る算出分子量約30kDのタイプI膜貫通タンパク質である。該受容体は、N末端(1〜42番アミノ酸)に推定シグナルペプチド、細胞外領域にIgドメイン(43〜150番アミノ酸)、細胞質領域に予測膜貫通ドメイン(164〜186番アミノ酸)及び予測ITAMモチーフ(220〜235番アミノ酸)を有する。該受容体は、NFAT、IL-13及びTNFアルファプロモーターレポーター活性を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは細胞受容体に関し、特に受容体を活性化する活性化T細胞の核因子「NFAT」を活性化する受容体に関する。
【背景技術】
【0002】
活性化Tリンパ球は、免疫機構の活動を制御し効果的な免疫応答を発現する働きを担うサイトカインを分泌する。サイトカイン生産の制御は、サイトカイン遺伝子の転写開始のレベルから起こり得る。活性化T細胞の核因子「NFAT」と称されるタンパク質転写因子ファミリーは、サイトカイン遺伝子の転写制御において重要な役割を果たしている。NFATタンパク質は、重要な免疫作用を調整する多様なサイトカインおよび細胞表面受容体、例えば、インターロイキン-2、インターロイキン-4、インターロイキン-5、インターロイキン-13、インターフェロン-γ、腫瘍壊死因子α、GM-CSF、CD40LおよびCTLA-4の転写の制御において主要な役割を果たすことが知られている。最もよく知られ特徴付けられているNFATファミリーのメンバーとしては、NFAT1、NFAT2、NFAT3、及びNFAT4が挙げられる。
【0003】
NFATタンパク質の活性化は、該タンパク質の脱リン酸化、核への転移及びDNA結合に関わる過程を経て制御される。休止中の細胞内では、リン酸化されたNFATタンパク質は細胞質に存在し、DNAへの結合親和性は低い。カルシウムの動員を引き起こす様々な刺激により、Ca2+/カルモジュリン依存性タンパク質ホスファターゼであるカルシニュリンが関与する過程を経て、NFATタンパク質の迅速な脱リン酸化が起こる。核局在化シグナルを露出した、脱リン酸化されたNFATタンパク質は核内に移行し、親和性が増大したDNAに結合して標的遺伝子の転写を調節する。NFATタンパク質は、T細胞のみならず様々なグループの免疫及び非免疫細胞種において発現している。NFATタンパク質は、マスト細胞、Bリンパ球及びNK細胞の活性化に関与している。これらの細胞では、NFATタンパク質は カルシウム/カルシニュリンシグナルに連動する受容体、例えば、T細胞およびB細胞上の抗原受容体、マスト細胞及び好塩基球上のFcε受容体、マクロファージ及びNK細胞上のFcγ受容体並びにヘテロ三量体Gタンパク質に連動する受容体を刺激することにより活性化される。
【0004】
以下の特許は、NFAT複合体並びにそれに関連するポリヌクレオチド及び抗体の転写に関連するポリペプチド、並びに関係する方法及び産物を開示している。Crabtree, et al.へ発行された、米国特許第5,837,840、出願日1998年11月17日(譲受人Board of Trustees of Leland Stanford Jr. University (Stanford, カリフォルニア州))、発明の名称「NF-AT polypeptides and polynucleotides」;Crabtree, et al.へ発行された、米国特許第6,096,515、出願日2000年8月1日、(譲受人Board of Trustees of Leland Stanford Junior University (Stanford, カリフォルニア州))、発明の名称「NF-AT polynucleotides」;Crabtree, et al.へ発行された、米国特許第6,150,099、出願日2000年11月21日、(譲受人Board of Trustees of Leland Stanford Junior University (Stanford, カリフォルニア州))、発明の名称「NF-AT polypeptides and polynucleotides」;Crabtree, et al.へ発行された、米国特許第6,171,781、出願日2001年1月9日、(譲受人Board of Trustees of Leland Stanford Junior University (Stanford, カリフォルニア州))、発明の名称「NF-AT polypeptides and polynucleotides」;Crabtree, et al.へ発行された、米国特許第6,197,925、出願日2001年3月6日(譲受人Sara Lee Corporation (Winston-Salem,ノースカロナイナ州))、発明の名称「NF-AT polypeptides and polynucleotides」;Crabtree, et al.へ発行された、米国特許第6,312,899、出願日2001年11月6日(譲受人Board of Trustees of the Leland Stanford Junior University (Palo Alto, カリフォルニア州))、発明の名称「NF-AT polypeptides and polynucleotides」;Crabtree, et al.へ発行された、米国特許第6,352,830、出願日2002年3月5日(譲受人The Board of Trustees of the Leland Stanford Junior University (Stanford, カリフォルニア州))、発明の名称「NF-AT polypeptides and polynucleotides and screening methods for immunosuppressive agents」;Crabtree, et al.へ発行された、米国特許第6,388,052、出願日2002年5月14日(譲受人Board of Trustees of the Leland Stanford Junior University (Stanford, カリフォルニア州))、発明の名称「NF-AT polypeptides and polynucleotides」
【0005】
NFATタンパク質及び該タンパク質のサイトカイン生産への作用機構に関しては多くの知見が得られているが、NFAT経路を理解し、サイトカインや細胞表面受容体の発現を制御する抗体のようなアゴニスト及びアンタゴニストを含めた、経路を調整するために有用な組成物や方法、並びにサイトカインや受容体に関連した疾患を防止又は治療する薬剤を同定するために有用なスクリーニングの方法を開発するため、その理解を活用する必要性が引き続き存在している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、活性化T細胞リガンドタンパク質の核因子と相互作用できる、新規なNFAT活性化受容体を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、ネイティブなNFAT活性化受容体に結合し、該受容体の発現又は作用を阻害又は促進するアゴニスト又はアンタゴニストを提供することである。
【0008】
さらに本発明の他の目的は、NFAT活性化受容体に結合する抗体及びこのような抗体の生産方法を提供することである。
【0009】
さらに本発明の目的は、活性化T細胞リガンドタンパク質の核因子と相互作用する新規なNFAT活性化受容体をコードするヌクレオチド配列を提供することである。
【0010】
さらに本発明の他の目的は、新規なNFAT活性化受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクター、及びこのようなベクターを含む宿主細胞を提供することである。
【0011】
さらに本発明の目的は、NFAT活性化受容体アゴニスト及びアンタゴニストを同定するための、並びに医薬が動物に投与された際に望ましくない副作用を引き起こしやすいか否かを決定するためのスクリーニング方法を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、NFAT活性化受容体の発現をブロック又は変調する方法を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、サイトカインの無調整な発現により引き起こされる疾患を進展させる、患者の素質を診断する方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、NFATタンパク質を介する疾患を、哺乳動物において予防又は治療する方法を提供することである。
【0015】
本発明のもう1つの目的は、特定の細胞、組織又は体液中で発現するNFAT活性化受容体を検出するための診断方法を提供することである。
【0016】
本発明のもう1つの目的は、組換え細胞培養物、混入物及びネイティブな環境から、NFAT活性化受容体を単離及び精製する方法を提供することである。
【0017】
本発明のもう1つの目的は、不所望の免疫応答を経験し得る哺乳動物に寛容を誘導する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
これら及び他の目的は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する新規な活性化T細胞の核因子「NFAT」活性化受容体、該受容体をコードするヌクレオチド配列、並びに該ヌクレオチド配列を発現し該受容体を生産するベクター及び宿主細胞を提供することにより達成される。該受容体は、サイトカイン並びに細胞受容体及びリガンドの細胞性生産に影響を与えるのに有効な、アゴニスト及びアンタゴニスト抗体の生産に使用される。該抗体は、受容体アゴニスト及びアンタゴニストのスクリーニング、並びに医薬が医療目的で動物に投与された際に不所望の副作用を引き起こしやすいか否かを決定するためのスクリーニングに有用である。
【0019】
本発明の他のさらなる目的、特徴および利点が、当業者にとって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
定義
「精製ポリペプチド」という語は、同定され、ネイティブな環境において精製されたポリペプチドに通常付随する少なくとも1つの混入ポリペプチドから分離されたポリペプチドを意味し、特に細胞性環境から分離されたポリペプチドを意味する。
【0021】
「単離されたポリヌクレオチド」という語は、同定され、ネイティブな環境において単離されたポリヌクレオチドに通常付随する少なくとも1つの混入ポリヌクレオチドから分離されたポリヌクレオチドを意味し、特に細胞性環境から分離されたポリヌクレオチドを意味する。
【0022】
「ネイティブ」という語は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド配列又は他の分子を記述するために用いられた場合には、天然の供給源から分離することができる、ウイルス、原核細胞又は真核細胞のような生物中に存在し、構造、性質又は機能が意図的に修飾されていない、例えばポリペプチド又はポリヌクレオチド配列のような、天然中に見出される、ポリペプチド、ポリヌクレオチド又は他の分子を意味する。配列番号1に示されるヌクレオチド配列を有する、単離されていない細胞性ポリヌクレオチドはネイティブポリヌクレオチドであり、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する、精製されていない細胞性ポリペプチドはネイティブポリペプチドである。
【0023】
「配列同一性パーセント」という語は、2つ又はそれ以上のヌクレオチド又はアミノ酸配列の比較において見出される配列の類似性の百分率である。同一性パーセントは、例えば、MEGALIGNプログラム(DNASTAR, Inc., ウィスコンシン州Madison)を用いることにより電子的に決定することができる。MEGALIGNプログラムは、例えばクラスタル(clustal)法(例えばHiggins, D. G. and P. M. Sharp (1988) Gene 73:237-244を参照)のような異なる方法により2つ又はそれ以上の配列のアラインメントを生成する。クラスタルアルゴリズムが、全てのペア間の距離を調べることにより、配列をクラスターにグループ化する。クラスターは、ペアとして整列され、次にグループに整列される。2つのアミノ酸配列、例えば配列Aと配列Bの類似性百分率は、配列Aの長さマイナス配列A中のギャップ残基の数マイナス配列B中のギャップ残基の数を、配列Aと配列Bの一致した残基の合計で割り、100倍することにより計算される。2つのアミノ酸配列の間で類似性が低い又はないギャップは、類似性百分率の決定には含まれない。ヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、例えばHein, J. (1990) Methods Enzymol. 183:626-645に記載されたJotun Hein法のような、この分野において知られた方法により計数又は計算される。配列間の同一性は、例えばハイブリダイゼーション条件を変えるなどのような、この分野において知られた他の方法によっても決定することができる。
【0024】
「変異体」という語は、ポリヌクレオチド配列を記述するために用いられた場合には、ネイティブの対応物(counterpart)と1又は2以上のヌクレオチドが異なり、かつ、ネイティブの対応物と同一又は類似する生物学的機能を有するか又はネイティブの対応物と同一又は類似する生物学的機能を有さないがネイティブの対応物を同定又は単離するプローブとして有用なヌクレオチド配列を意味する。好ましい変異体は、ネイティブの対応物と比較した場合に少なくとも85%、好ましくは少なくとも90〜95%、最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列、並びにストリンジェント条件下においてネイティブの配列又はその相補物に結合するヌクレオチド配列である。最も好ましい変異体は、ネイティブの対応物と同一のアミノ酸配列をコードするが、遺伝暗号の縮重に基づいてのみネイティブのヌクレオチド配列と異なるヌクレオチド配列である。
【0025】
「変異体」という語は、ポリペプチド配列を記述するために用いられた場合には、修飾、置換、挿入及び欠失を包含する変異によりネイティブの対応物と1又は2以上のアミノ酸が異なっており、かつ、ネイティブの対応物と同一又は類似する生物学的機能を有するか又はネイティブの対応物と同一又は類似する生物学的機能を有さないがネイティブの対応物に結合する抗体を生産するための免疫原として、又はネイティブの対応物に対するアゴニスト若しくはアンタゴニストとして有用なアミノ酸配列を意味する。好ましい変異体は、ネイティブの対応物と比較した場合に少なくとも70%、好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドである。最も好ましい変異体は、保存的なアミノ酸置換を有するポリペプチドである。
【0026】
「断片」という語は、ポリヌクレオチドを記述するために用いられた場合は、ストリンジェント条件下においてそのネイティブな対応物又はその相補物と結合する、ネイティブな対応物のヌクレオチド配列サブセットを意味する。好ましい断片は、ネイティブ配列の少なくとも25ないし50の連続するヌクレオチドから成るヌクレオチド配列を有する。最も好ましい断片は、ネイティブ配列の少なくとも50ないし100の連続するヌクレオチドから成るアミノ酸配列を有する。
【0027】
「断片」という語は、ポリペプチドを記述するために用いられた場合は、ネイティブの対応物の何らかの生物活性を維持するか又はネイティブの対応物と結合する抗体を生産することができる免疫原として働く、ネイティブの対応物のアミノ酸配列サブセットを意味する。好ましい断片は、ネイティブ配列の少なくとも10ないし20の連続するアミノ酸から成るアミノ酸配列を有する。最も好ましい断片は、ネイティブ配列の少なくとも20ないし30の連続するアミノ酸から成るアミノ酸配列を有する。
【0028】
「アゴニスト」という語は、NFAT活性化受容体の正常な機能を高め、促進し又は刺激するあらゆる分子を意味する。アゴニストの1つのタイプは、そのリガンドと同様にNFAT活性化受容体と相互作用する分子であり、抗体又は抗体断片を包含する。
【0029】
「アンタゴニスト」という語は、NFAT活性化受容体の正常な機能をブロックし、妨害し、阻害し又は中和するあらゆる分子を意味する。アンタゴニストの1つのタイプは、NFAT活性化受容体とそのリガンドの相互作用を妨げる分子であり、抗体又は抗体断片を包含する。アンタゴニストの他のタイプは、ネイティブなNFAT活性化受容体の適正な転写を阻害するアンチセンスヌクレオチドである。
【0030】
「保存的アミノ酸置換」という語は、ポリペプチド中のアミノ酸が、類似の側鎖を有するアミノ酸で置換されていることを意味する。例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシンは、脂肪族側鎖を有し、セリン及びスレオニンは脂肪族―ヒドロキシ側鎖を有し、アスパラギン及びグルタミンはアミド含有側鎖を有し、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンは芳香族側鎖を有し、リジン、アルギニン及びヒスチジンは塩基性の側鎖を有し、システイン及びメチオニンはイオウ含有側鎖を有する。好ましい保存的アミノ酸置換は、バリン―ロイシン―イソロイシン、フェニルアラニン―チロシン、リジン―アルギニン、アラニン―バリン、及びアスパラギン―グルタミンである。
【0031】
「ストリンジェント条件」という語は、0.2x SSC及び0.1% SDS中での42℃における洗浄若しくは0.015 M NaCl、0.0015 Mクエン酸ナトリウム、0.1% Na2SO4での50℃における洗浄を伴う、(1)0.1%ウシ血清アルブミン、0.1% Ficoll、0.1%ポリビニルピロリドン、50 mMリン酸ナトリウムバッファー、pH 6.5、750 mM NaCl、75 mMクエン酸ナトリウムを含む50%(vol/vol)ホルムアミド中、42℃におけるハイブリダイゼーション、(2)5x SSC(0.75 M NaCl、0.075 Mクエン酸ナトリウム)、50 mMリン酸ナトリウム(pH 6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5x デンハルツ溶液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1% SDS及び10%デキストラン硫酸を含む50%ホルムアミド中、42℃におけるハイブリダイゼーション、又は同様な低イオン強度並びに高温洗浄剤及び同様な変性剤を用いる同様な操作を意味する。
【0032】
ここで用いる「アンチセンス」という語は、特定のDNA又はRNA配列に相補的なヌクレオチド配列を含むあらゆる組成物を意味する。「アンチセンス鎖」という語は、「センス」鎖と相補的な核酸鎖を意味する。アンチセンス分子はペプチド核酸を包含し、合成又は転写を包含するいずれの方法により製造されたものであってよい。相補的ヌクレオチドは、一旦細胞内に導入されると、細胞により生産される天然の配列に結合して二本鎖を形成し、転写又は翻訳をブロックする。アンチセンス鎖を示すために「ネガティブ」、センス鎖を示すために「ポジティブ」という表記を時々使用する。
【0033】
「ノックアウト」という語は、単一細胞、選択された複数の細胞又は哺乳動物の全細胞の内発性遺伝子(NFAT活性化受容体のような)によりコードされるポリペプチドの少なくとも一部の発現を部分的に又は完全に減少させることを意味する。哺乳動物は、内発性遺伝子のうち1個の対立遺伝子が破壊された「ヘテロ接合ノックアウト」、又は内発性遺伝子の両方の対立遺伝子が破壊された「ホモ接合ノックアウト」であり得る。
【0034】
ここに記載した特定の方法論、プロトコール、セルライン、ベクター及び試薬は、変わることがあるので、本発明は、これらに限定されるものではない。さらに、ここに記載した用語は、特定の具体例を記述するためにのみ用いており、本発明の範囲を限定することを意図しない。ここ及び添付の請求の範囲において用いる単数形の冠詞は、文脈から明らかにそうではない場合を除き、複数をも意味する。例えば、「1つの宿主細胞」は、複数のこのような宿主細胞をも包含する。
【0035】
遺伝暗号の縮重の故に、本発明のNFAT活性化ポリペプチドをコードする多くのヌクレオチド配列を生産することができる。これらの配列のいくつかは、いずれかの公知の天然のヌクレオチド配列に高度に相同的であろうし、いくつかはこれらに最小限に相同的であろう。本発明は、可能なコドンの選択に基づく組合せを選択することにより作られ得るヌクレオチド配列の全ての可能な個々の変異を意図する。これらの組合せは、天然のNFAT活性化受容体をコードするヌクレオチド配列に適用される標準的なトリプレット遺伝暗号に従って作ることができ、全てのこのような変異は具体的に開示されているものと考えられる。
【0036】
他に定義されている場合を除き、ここで用いる全ての技術及び科学用語並びに頭文字語は、当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の実施において、ここに記載したのと類似する又は均等なあらゆる方法及び材料を用いることができるが、ここでは好ましい方法、装置及び材料を記載する。
【0037】
ここに記載する全ての特許及び文献は、本発明に用いることができるかもしれない、そこに報告されたタンパク質、酵素、ベクター、宿主及び方法を記載し及び開示する目的で、法により許される範囲内でここに組み入れられたものとする。もっとも、これらの記述は、本発明が先行発明よりも前に発明されたものではないとの自認であると解釈されるものではない。
【0038】
本発明
ポリペプチド
1つの局面において、本発明は、配列番号2;配列番号2の変異体;及び配列番号2の断片;並びに、配列番号1;配列番号1の変異体;及び配列番号1の断片から成る群より選ばれるヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドがコードするアミノ酸配列;から成る群より選ばれるアミノ酸配列を含む、精製されたポリペプチドを提供する。
【0039】
本発明の精製ポリペプチドは、好ましくは、様々なサイトカイン及び細胞受容体遺伝子の転写調節に関与するNFAT活性化受容体である。該受容体は、優先的にヒト免疫関連細胞及び組織、特に好中球、単球、リンパ球、マスト細胞、脾臓組織及び肺組織で発現する。該受容体は、該受容体に結合し、受容体の構造、特性、又は生物学的機能を包含する機能に影響を与える抗体を創製するために使用される。好ましくは、該抗体は、サイトカイン及び細胞受容体の産生を促進する受容体アゴニスト、又はサイトカイン及び細胞受容体の産生を阻害する受容体アンタゴニストとして機能する。
【0040】
アゴニスト及びアンタゴニスト
他の局面では、本発明は、NFAT活性化受容体に特異的に結合し、受容体の発現又は作用を阻害又は促進するアゴニスト及びアンタゴニストを提供する。アゴニスト及びアンタゴニストのタイプは、ポリペプチド、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、糖脂質、多糖類、少糖類、ヌクレオチド、有機分子、生物有機分子、ペプチド模倣物、薬剤及びその代謝物、並びに転写及び翻訳制御配列を包含するが、これらに限定されるものではない。
【0041】
1つの具体例では、アンタゴニストは、NFAT活性化受容体の可溶性形態、及びNFAT活性化受容体の細胞外領域から誘導された、NFAT活性化受容体と結合することができる可溶性ポリペプチドである。好ましくは、該アンタゴニストは配列番号2のアミノ酸43〜150又はそのアンタゴニスト断片から成る群より選ばれるペプチドである。これらのアンタゴニストは、天然のリガンドに結合することにより該リガンドがNFAT活性化受容体に結合することをブロックし、該リガンドがネイティブの受容体に結合することを防止する。
【0042】
好ましくは、該アゴニスト及びアンタゴニストは、特異的に受容体に結合し、例えば、サイトカイン及び細胞受容体の産生の促進又は阻害のような、その生物学的作用及び機能に影響する抗体である。該抗体は、ポリクローナル又はモノクローナル抗体であり得るが、好ましくはモノクローナル抗体である。
【0043】
アゴニスト抗体は、非疾患状態と比較して低いサイトカイン及び受容体の発現により特徴付けられる疾患の予防又は治療に用いられる。アンタゴニスト抗体は、非疾患状態と比較して高いサイトカイン及び受容体の発現により特徴付けられる疾患の予防又は治療に用いられる。
【0044】
該アゴニスト及びアンタゴニストは、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物過敏症及びじんま疹のようなアレルギー疾患;移植片拒絶及び移植片対宿主疾患を包含する移植関連疾患;水疱性皮膚疾患、多形性紅斑及び接触性皮膚炎、乾癬を包含する自己免疫疾患又は免疫媒介皮膚疾患;リウマチ性関節炎、若年性慢性関節炎;炎症性腸疾患(すなわち、潰瘍性大腸炎、クローン病);全身性エリテマトーデス;脊椎関節疾患;全身性硬化症(皮膚硬化症);特発性炎症性筋疾患(皮膚筋炎、多発性筋炎);シェーグレン症候群;全身性血管炎;サルコイドーシス;自己免疫性溶血性貧血(免疫性汎血球減少症、発作性夜間ヘモグロビン尿症)、自己免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病、免疫媒介血小板減少症);甲状腺炎(グレーブス病、橋本甲状腺炎、若年性リンパ球性甲状腺炎、萎縮性甲状腺炎);糖尿病;免疫媒介腎疾患(糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎);多発性硬化症、特発性脱髄性多発神経障害又はギラン‐バレー症候群、及び慢性炎症性脱髄性多発神経障害のような、中枢及び末梢神経系の脱髄疾患;感染性肝炎(A型、B型、C型、D型、E型及び他の非肝萎縮性ウイルス)、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎及び硬化性胆管炎のような肝胆道系疾患;嚢胞性線維症、グルテン過敏性腸症及びウィップル病のような炎症性及び繊維性肺疾患;好酸球性肺炎、特発性肺線維症及び過敏性肺臓炎のような肺の免疫性疾患を包含する種々の免疫疾患の治療に用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
抗体及び抗体生産
他の局面では、本発明は、ネイティブなNFAT活性化受容体アゴニスト又はアンタゴニストとして機能する抗体を包含する、本発明のNFAT活性化受容体に結合する抗体及びこのような抗体の生産方法を提供する。1つの具体例では、該方法は、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を包含する、抗原に対する抗体の生産のための公知のプロトコールにおいて、本発明のNFAT活性化受容体に結合する抗体を生産するために、単離されたNFAT活性化受容体又はその抗原性断片を抗原として用いることを含む。他の具体例では、該方法は、組換えNFAT活性化受容体を発現する宿主細胞を抗原として用いることを含む。さらなる具体例では、該方法は、該受容体遺伝子を含むDNA発現ベクターを用いて、抗体を生産するための抗原としての該受容体を発現することを含む。
【0046】
ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、一価抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、二特異的抗体、及びヘテロ結合抗体を包含する抗体の生産方法は、当業者に周知である。
【0047】
ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、免疫原を単独で又はアジュバントと共に注射することにより哺乳動物中で生産することができる。典型的には、1回又は2回以上の皮下又は腹腔内注射により哺乳動物に免疫原を注射する。免疫原は、目的のポリペプチド、又は、該ポリペプチドと、免疫された哺乳動物中で免疫原性を有することが知られている他のポリペプチドとを含む融合タンパク質を包含し得る。免疫原はまた、組換え受容体を発現する、又は該受容体遺伝子を含むDNA発現ベクターを発現する細胞を包含し得る。このような免疫原性タンパク質の例として、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及びダイズトリプシンインヒビターが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アジュバントの例としては、フロイントの完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコレート)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。免疫化プロトコールは、過度な実験なしに当業者によって選択され得る。
【0048】
モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein, Nature, 256:495 (1975)により記載されたような、ハイブリドーマ法を用いて生産することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適当な宿主哺乳動物を免疫原で免疫し、該免疫原に特異的に結合する抗体を生産する又は生産し得るリンパ球を誘起する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。免疫原は、典型的には、目的のポリペプチド又は該ポリペプチドを含む融合タンパク質を包含する。一般的に、ヒト由来の細胞が望まれるならば、末梢血リンパ球(「PBLs」)細胞が用いられる。非ヒト哺乳動物由来の細胞が望まれるならば、脾細胞又はリンパ節細胞が用いられる。リンパ球は次いで、例えばポリエチレングリコールのような適切な融合剤を用いて不死化セルラインと融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp 59-103 (Academic Press, 1986))。不死化セルラインは、通常、癌化された哺乳動物細胞であり、特に齧歯動物、ウシ又はヒトのミエローマ細胞である。通常、ラット又はマウスのミエローマセルラインが用いられる。ハイブリドーマ細胞は、融合しなかった不死化細胞の増殖又は生存を阻害する1つ又は2つ以上の物質を好ましく含む、適切な培地中で培養することができる。例えば、親細胞がヒポキサンチングアニンホスフォリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)酵素を欠損している場合には、ハイブリドーマのための培地は典型的にはヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む(HAT培地)であろう。HAT培地は、HGPRT欠損細胞の増殖を防止する。
【0049】
好ましい不死化セルラインは、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定した高レベルの発現を支持し、HAT培地のような培地に感受性であるものである。より好ましい不死化セルラインは、米国カリフォルニア州San DiegoのSalk Institute Cell Distribution Centerから入手可能なMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍から誘導されたような、並びに米国メリーランド州RockvilleのAmerican Type Culture Collectionから入手可能なSP2/0又はX63-Ag8-653細胞から誘導されたようなマウスミエローマラインである。ヒトミエローマ及びマウス―ヒトへテロミエローマセルラインもまた、ヒトモノクローナル抗体の生産に用いられることが記載されている(Kozbor, J. Immunol. 133:3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。マウスミエローマセルラインNS0もまた用いることができる(European Collection of Cell Cultures, Salisbury, Wiltshire UK)。ヒトミエローマ及びマウス―ヒトへテロミエローマセルラインは、この分野において周知であり、これらもまたヒトモノクローナル抗体を生産するために用いることができる。
【0050】
次に、ハイブリドーマ細胞の培養に用いた培地中に目的のポリペプチドに対するモノクローナル抗体が存在するかどうかを分析する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により生産されるモノクローナル抗体の結合特異性を、免疫沈降又は、例えば放射性免疫測定(RIA)若しくは酵素結合免疫吸着測定(ELISA)のようなインビトロの結合分析により測定する。このような技術及び分析はこの分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson and Pollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)のScatchard解析により測定することができる。
【0051】
所望のハイブリドーマ細胞を同定した後、該クローンを限界希釈法によりサブクローンし、常法により増殖させることができる。この目的のための好ましい培地は、ダルベッコの修飾イーグル培地及びRPMI-1640培地を包含する。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物中で腹水として生体内で増殖させることもできる。
【0052】
サブクローンから分泌されたモノクローナル抗体は、プロテインA―セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィーのような従来の免疫グロブリンの精製方法により培地又は腹水から単離又は精製される。
【0053】
モノクローナル抗体はまた、例えば米国特許第4,816,567に記載されたような組換えDNA法によっても生産できる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより、従来法を用いて容易に単離及び配列決定できる(Innis M. et al. In "PCR Protocols. A Guide to Methods and Applications", Academic, San Diego, CA (1990), Sanger, F.S, et al. Proc. Nat. Acad. Sci. 74:5463-5467 (1977))。ここに記載するハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として役立つ。DNAは、一旦単離すると、発現ベクター中に入れることができる。次いで該ベクターを、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は免疫グロブリンタンパク質を生産しないミエローマ細胞のような宿主細胞中にトランスフェクトする。組換え宿主細胞は、所望のモノクローナル抗体を生産するために用いられる。該DNAはまた、例えば、相同マウス配列に代えてヒトの重鎖及び軽鎖の定常領域をコードする配列で置換し、又は非免疫グロブリンポリペプチドをコードする配列の全て又は一部に該免疫グロブリンコード配列を共有結合することにより修飾することもできる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常領域を置換し、又は抗体の1つの抗原結合部位の可変領域を置換することで、キメラ二価抗体を創製することができる。
【0054】
一価抗体は、免疫グロブリンの軽鎖および修飾重鎖の組換え発現により生産することができる。重鎖は一般的に、Fc領域内のいかなる部位においても切断して重鎖の架橋を防止することができる。あるいは、関連するシステイン残基を他のアミノ酸残基に置換するか又は削除することにより、架橋を防止することができる。同様に、インビトロ法を用いて一価抗体を生産することができる。公知の方法を用いた抗体の消化により、抗体断片、好ましくはFab断片の生産をすることができる。
【0055】
抗体及び抗体断片は、McCafferty, et al., Nature 348:552-554 (1990)に記載された技術を用いて生成された抗体ファージライブラリーを用いて生産することができる。Clackson, et al., Nature 352:624-628 (1991)およびMarks, et al., J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991)にはそれぞれ、ファージライブラリーを用いたマウス及びヒトの抗体の単離が記載されている。続いて発行された文献には、チェインシャフリングによる高親和性(nM範囲)ヒト抗体の生産(Marks, et al., Bio/Technology 10:779-783 (1992))、並びに極めて大きなファージライブラリーを構築するための戦略としてのコンビナトリアル感染及びインビボ組換え(Waterhouse, et al., Nuc. Acids. Res. 21:2265-2266 (1993))が記載されている。このように、これらの技術は、モノクローナル抗体単離のための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術の実行可能な代替技術である。また、DNAは、例えば、相同なマウス配列をヒトの重鎖及び軽鎖定常領域をコードする配列で置換することにより、又は、非免疫グロブリンポリペプチドをコードする配列の全て又は一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合することにより、修飾することができる。典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常領域と置換し、又は、抗体の1つの抗原結合部位の可変領域と置換して、ある抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位と、異なる抗原に対する特異性を有するもう1つの抗原結合部位とを含む、キメラ二価抗体を創製することができる。
【0056】
抗体はまた、化学的融合ではなく電気的融合によってハイブリドーマを形成して生産することもできる。この技術は良く確立されている。融合の代わりに、例えば、エプシュタインバールウイルス又は癌遺伝子を用いてB細胞を癌化して不死にすることもできる「Continuously Proliferating Human Cell Lines Synthesizing Antibody of Predetermined Specificity」、 Zurawaki, V. R. et al、in「Monoclonal Antibodies」Kennett R. H. et al監修、Plenum Press, N.Y. 1980, pp 19-33。
【0057】
ヒト化抗体
ヒト化抗体は、Winter in Jones et al., Nature,321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature, 332:323-327 (1988); 及び Verhoeyen et al., Science, 239:1 534-1536 (1988)に記載された方法を用いて生産することができる。ヒト化は、齧歯動物のCDR又はCDR配列をヒト抗体の相当する配列で置換することにより達成される。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒト由来の1又は2以上のアミノ酸を有する。このような「ヒト化」抗体は、無損のヒト可変領域よりも実質的に少ない部分が非ヒト種由来の相当する配列で置換されているキメラ抗体である。実際には、ヒト化抗体は典型的には、いくつかのCDR残基及び場合によってはいくつかのFR残基が齧歯動物抗体中の類似の部位由来の残基で置換されたヒト抗体である。非ヒト(例えばマウス又はウシ)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含む、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又は、Fv、Fab、Fab'、F(ab')2若しくは抗体の他の抗原結合サブ配列のような免疫グロブリン断片である。ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット又はウサギのような非ヒト種のCDR(ドナー抗体)由来の残基と置換しているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を包含する。時々、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、相当する非ヒト残基によって置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体にも移入されたCDR又はフレームワーク配列にも見出されない残基を含む。一般に、ヒト化抗体は、全て又は実質的に全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に相当し、全て又は実質的に全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である、実質的に全ての少なくとも1つ及び典型的には2つの可変領域を含む。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンFc領域の少なくとも一部を含む。
【0058】
ヒト抗体
ヒト抗体は、例えば、Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991)及びMarks et at., J. Mol. Biol., 222:581 (1991)に記載されたファージディスプレイライブラリーのような、この分野において公知である種々の技術を用いて生産することができる。ヒトモノクローナル抗体は、Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985)及びBoemer et al., J. Immunol., 147(1):86-95 (1991)に記載された技術を用いて生産することができる。あるいは、免疫すると内在の免疫グロブリンを生産することなく全範囲のヒト抗体を生産することができる、マウスのようなトランスジェニック動物が利用可能である。このようなトランスジェニックマウスは、カリフォルニア州FremontのAbgenix, Inc.及びニュージャージー州Annandaleの Medarex, Inc.,から入手可能である。キメラ及び生殖系列突然変異マウスの抗体重鎖結合部(joining)領域(JH)遺伝子をホモ接合欠損させることにより、内在の抗体の生産が完全に阻害される。このような生殖系列突然変異マウスにヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイを導入すると、抗原への曝露でヒト抗体を生産するようになる。例えば、Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2551 (1993); Jakobovits et al., Nature 362:255-258 (1993); Bruggermann et al., Year in Immunol. 7:33 (1993); 及びDuchosal et al. Nature 355:258 (1992)を参照のこと。ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリーから誘導することもできる(Hoogenboom et al., J. Mol. Biol. 227:381 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991); Vaughan, et al., Nature Biotech 14:309 (1996))。
【0059】
二重特異的抗体
二重特異的抗体は、2個の重鎖が異なる特異性を有する、2個の免疫グロブリン重鎖/軽鎖ペアの組換え共発現により生産することができる。二重特異的抗体は、少なくとも2個の異なる抗原に対する結合特異性を有する、モノクローナルの、好ましくはヒト又はヒト化抗体である。本発明では、結合特異性のうちの1つはNFAT活性化受容体に対するものであり、もう1つはいずれの抗原に対するものでもよく、好ましくは細胞表面受容体又は受容体サブユニットに対するものである。免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖はランダムに組み合わされるので、これらのハイブリドーマは可能な10種類の異なる抗体の混合物を生産する。しかしながら、これらの抗体のうちのただ1つが正しい二重特異的構造を有する。正しい分子の回収及び精製は、通常はアフィニティークロマトグラフィーにより達成される。
【0060】
所望の結合特異性(抗体―抗原結合部位)を有する抗体可変領域は、免疫グロブリン定常領域配列に融合することができる。好ましくは融合は、ヒンジ、CH2及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常領域とともに行なわれる。好ましくは、軽鎖の結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が、融合の少なくとも1つに存在する。免疫グロブリン重鎖、及び、所望であれば免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、別々の発現ベクターに挿入し、適切な宿主生物に共トランスフェクトする。二重特異的抗体を生産するのに適した技術は、Suresh et al., Methods in Enzymology, 121:210 (1986)に記載されている。
【0061】
ヘテロ結合抗体
ヘテロ結合抗体は、例えば、1つの抗体のアミノ基を他の抗体又は他のペプチドのチオール基と結合させるような、公知のタンパク質融合法を用いて生産できる。必要であれば、チオール基は公知の方法により導入することができる。例えば、抗体又は抗体断片とポリペプチド毒素とを含む免疫毒素は、ジスルフィド交換反応を用いるか又はチオエーテル結合を形成することにより生産できる。この目的のために適切な試薬の例として、イミノチオレート及びメチル‐4‐メルカプトブチルイミデートが挙げられる。このような抗体は、免疫系細胞に不所望の細胞を標的とさせるため、又はHIV感染を治療するために利用することができる。
【0062】
ポリヌクレオチド
他の局面において、本発明は、配列番号1;配列番号1の変異体;及び配列番号1の断片、並びに配列番号2;配列番号2の変異体;配列番号2の断片から成る群より選ばれるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列から成る群より選ばれるヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチドを提供する。1つの具体例としては、該単離されたポリヌクレオチドは、配列番号2の43〜150番アミノ酸又はそのアンタゴニスト断片から成る群より選ばれるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0063】
本発明の単離されたポリヌクレオチドは、好ましくは、種々のサイトカイン及び受容体遺伝子の転写調節に関与するNFAT活性化受容体のコード配列である。該ポリヌクレオチドは、NFAT活性化受容体に特異的に結合し、このような受容体の発現又は作用を阻害又は活性化するアゴニスト及びアンタゴニスト抗体を生産するために用いられる工程において、抗原として機能するNFAT活性化受容体を生産するために利用される。
【0064】
ベクター及び宿主細胞
他の局面において、本発明は、本発明のNFAT活性化受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクター、及びこのようなベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0065】
例えば、宿主細胞は哺乳動物細胞(例えばCHO細胞)、原核細胞(例えば大腸菌)又は酵母細胞(例えばサッカロミセス・セレビシエ)であり得る。脊椎動物の融合ポリペプチドを生産する工程がさらに提供され、脊椎動物の融合ポリペプチドの発現に適切な条件下で宿主細胞を培養すること及び細胞培養物から該融合ポリペプチドを回収することが包含される。
【0066】
NFAT活性化受容体の組換え発現
単離及び精製されたNFAT活性化受容体は、本発明に基づき、相当するヌクレオチド配列を発現ベクターに組み込み、該ヌクレオチド配列を適切な宿主細胞内で発現させてポリペプチドを生産することにより提供される。
【0067】
発現ベクター
該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターは、周知の技術を用いて作製することができる。該発現ベクターは、哺乳動物、微生物、ウイルス又は昆虫の遺伝子に由来するような、適切な転写又は翻訳調節ヌクレオチド配列と動作的に連結したヌクレオチド配列を包含する。調節配列の例としては、転写プロモーター、オペレーター、エンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、並びに転写及び翻訳の開始及び終止を制御する適切な配列が挙げられる。ヌクレオチド配列は、適切なポリペプチドのために、調節配列が該ヌクレオチド配列と機能的に関連しているときに「動作的に連結」している。従って、プロモーターヌクレオチド配列は、該プロモーターヌクレオチド配列が適切なヌクレオチド配列の転写を制御するならば、NFAT活性化受容体配列に動作的に連結している。
【0068】
通常は複製開始点により付与される所望の宿主細胞内で増殖する能力及び形質転換体を同定するための選択遺伝子を、発現ベクターに付加的に組み込んでもよい。
【0069】
さらに、天然にはNFAT活性化受容体には付随しない、適切なシグナルペプチドをコードする配列を発現ベクターに組み込むことができる。例えば、シグナルペプチド(分泌リーダー)のためのヌクレオチド配列を、読み枠を合わせてポリペプチド配列に融合させて、ポリペプチドを最初に該シグナルペプチドを含む融合タンパク質として翻訳させることができる。意図した宿主細胞内で機能するシグナルペプチドは、適切なポリペプチドの細胞外分泌を促進する。シグナルペプチドは、ポリペプチドが細胞から分泌された後に、ポリペプチドから切り離すことができる。
【0070】
宿主細胞
NFAT活性化受容体の発現のために適切な宿主細胞は、原核生物、酵母、古細菌及び他の真核生物細胞を包含する。細菌、菌類、酵母及び哺乳動物細胞宿主に使用するための適切なクローニング及び発現ベクターは、例えばPouwels et al. Cloning Vectors: A Laboratory Manual, Elsevier, New York (1985) にあるように、この分野において周知である。ベクターは、プラスミドベクター、一本鎖若しくは二本鎖ファージベクター、又は一本鎖若しくは二本鎖のRNA若しくはDNAウイルスベクターであり得る。このようなベクターは、DNA及びRNAを細胞内に導入する周知の技術を用いることにより、ポリヌクレオチドとして、好ましくはDNAとして細胞内に導入できる。ベクターがファージ及びウイルスベクターの場合でも、感染及び形質導入のための周知の技術により、パッケージ化又はカプセル化ウイルスとして細胞内に導入でき、このように導入することが好ましい。ウイルスベクターは、複製可能または複製不能であり得る。後者の場合には、ウイルスの自己増殖は一般的に、相補的な宿主細胞内でのみ起こる。無細胞翻訳系を利用して、本DNA構築物由来のRNAを用いたタンパク質を生産することができる。
【0071】
本発明において宿主細胞として有用な原核生物は、大腸菌又はバチルスのような、グラム陰性又はグラム陽性生物を包含する。原核生物宿主細胞内では、ポリペプチドは、原核生物宿主細胞内での組換えポリペプチドの発現を容易にするため、N末端のメチオニン残基を包含し得る。N末端のMetは、発現された組換えNFAT活性化受容体ポリペプチドから切り離すことができる。組換え原核生物宿主細胞発現ベクターのために通常利用されるプロモーター配列は、β‐ラクターゼ及びラクトースプロモーター系を包含する。
【0072】
原核生物宿主細胞で用いられる発現ベクターは、一般的に、1又は2以上の表現型選択マーカー遺伝子を含む。表現型選択マーカー遺伝子は、例えば、抗生物質耐性を付与するタンパク質又は独立栄養要求性を供給するタンパク質をコードする遺伝子である。原核生物宿主細胞で有用な発現ベクターの例としては、クローニングベクターpBR322(ATCC 37017)のような市販のプラスミドから誘導される発現ベクターが挙げられる。pBR322はアンピシリン及びテトラサイクリン耐性遺伝子を持ち、形質転換された細胞を同定するための単純な方法を提供する。pBR322を利用して発現ベクターを構築するために、適切なプロモーター及びDNA配列をpBR322ベクターに挿入する。他の市販のベクターとしては、例えば、pKK223-3(スウェーデン国UppsalaのPharmacia Fine Chemicals)、pGEM1(米国ウィスコンシン州MadisonのPromega Biotec)、及びpET(米国ウィスコンシン州MadisonのNovagen)、並びにpRSETシリーズベクター(米国カリフォルニア州CarlsbadのInvitrogen Corporation)が挙げられる(Studier, F.W., J. Mol. Biol. 219: 37 (1991); Schoepfer, R. Gene 124: 83 (1993))。
【0073】
組換え原核生物宿主細胞発現ベクターに通常用いられるプロモーター配列は、T7(Rosenberg, A.H., Lade, B. N., Chui, D-S., Lin, S-W., Dunn, J. J., and Studier, F. W. (1987) Gene (Amst.) 56, 125-135)、β‐ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトースプロモーター系(Chang et al., Nature 275:615, (1978); and Goeddel et al., Nature 281:544, (1979))、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel et al., Nucl. Acids Res. 8:4057, (1980))及びtacプロモーター(Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, p. 412 (1982))を包含する。
【0074】
本発明において宿主細胞として有用な酵母は、Saccharomyces属、Pichia属、K. Actinomycetes及びKluyveromyces属の酵母を包含する。酵母ベクターは、しばしば2μ酵母プラスミドからの複製開始点配列、自己複製配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化配列、転写終止配列、及び選択マーカー遺伝子を含む。酵母ベクターのために適切なプロモーター配列は、とりわけ、メタロチオネイン、3-ホスフォグリセレートキナーゼ(Hitzeman et al., J. Biol. Chem. 255:2073, (1980))、又はエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスフォフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスフォグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、ホスフォグルコースイソメラーゼ及びグルコキナーゼのような他の糖分解酵素(Holland et al., Biochem. 17:4900, (1978))のプロモーターを包含する。酵母内での発現に利用するのに適した他のベクター及びプロモーターは、Fleer et al., Gene, 107:285-195 (1991)にさらに記載されている。酵母及び酵母の形質転換プロトコールに適した他のプロモーター及びベクターは、この分野において周知である。
【0075】
酵母の形質転換プロトコールは、当業者に知られている。このようなプロトコールの1つは、Hinnen et al., Proceedings of the National Academy of Sciences USA, 75:1929 (1978)に記載されている。Hinnenのプロトコールは、選択培地中でTrp.sup.+形質転換体を選択するものであり、該選択培地は、0.67%酵母窒素原、0.5%カザミノ酸、2%グルコース、10μg/mlアデニン及び20μg/mlウラシルから成る。
【0076】
この分野において周知の哺乳動物又は昆虫宿主細胞培養系も、組換えNFAT活性化受容体の発現に利用できる。例えば、昆虫細胞内で異種のタンパク質を生産するためのバキュロウイルスシステム、又は哺乳動物で発現させるためのチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が利用できる。哺乳動物宿主細胞発現ベクターのための転写及び翻訳制御配列は、ウイルスゲノムから切り出すことができる。一般的に用いられているプロモーター配列及びエンハンサー配列は、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2、シミアンウイルス40(SV40)及びヒトサイトメガロウイルスに由来する。SV40ウイルスゲノム由来のDNA配列は、例えばSV40開始点、初期及び後期プロモーター、エンハンサー、並びにスプライス及びポリアデニル化部位のような、哺乳動物宿主細胞内での構造遺伝子配列の発現のための他の遺伝因子を提供するために利用することができる。ウイルス初期及び後期プロモーターは、いずれも、ウイルス複製開始点をも含み得る断片としてウイルスゲノムから容易に得ることができるので、特に有用である。哺乳動物宿主細胞内で用いるための模範的な発現ベクターは、この分野において周知である。
【0077】
有益であれば、NFAT活性化受容体は、融合セグメントに連結したNFAT活性化受容体を有する融合タンパク質として発現させてもよい。融合セグメントはしばしば、例えば、アフィニティークロマトグラフィーによる融合タンパク質の単離及び精製を可能にすることで、タンパク質の精製を援助する。融合タンパク質は、タンパク質のカルボキシル末端及び/又はアミノ末端に連結した融合セグメントを含むタンパク質をコードする、融合核酸配列で形質転換された組換え細胞を培養することにより生産できる。好ましい融合セグメントは、グルタチオン‐S‐トランスフェラーゼ、β‐ガラクトシダーゼ、二価金属イオンに結合できるポリヒスチジンセグメント及びマルトース結合タンパク質を包含するが、これらに限定されるものではない。
【0078】
発現及び回収
本発明に基づき、単離及び精製されたNFAT活性化受容体を、上記の組換え発現系を用いて生産することができる。該方法は、該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞を、該ポリペプチドの発現を促進するのに十分な条件下で培養することを包含する。該ポリペプチドは、次いで、使用した発現系に応じて、培養液又は細胞抽出物から回収される。当業者に知られているように、組換えポリペプチドを精製する方法は、使用した宿主細胞のタイプ及び組換えポリペプチドが培養液中に分泌されるか否かなどの要因に応じて異なってくる。組換えポリペプチドが分泌される発現系を用いる場合には、まず培養液を濃縮することができる。濃縮に次いで、該濃縮物をゲルろ過媒体のような精製マトリックスに施すことができる。あるいは、例えばペンダントジエチルアミノエチル(DEAE)基を有するマトリックス又は基質のような、陰イオン交換樹脂を使用することができる。該マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロース、又はタンパク質精製に一般的に使用されるその他のタイプのものであり得る。陽イオン交換の工程もまた用いることができる。適切な陽イオン交換体は、スルホプロピル基又はカルボキシメチル基を含む、種々の不溶性マトリックスを包含する。さらに、疎水性の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)媒体(例えばペンダントメチル基若しくは他の脂肪族基を有するシリカゲル)、イオン交換HPLC(例えばペンダントDEAE基若しくはスルホプロピル(SP)基を有するシリカゲル)又は疎水性相互作用HPLC(例えばペンダントフェニル基、ブチル基若しくは他の疎水基を有するシリカゲル)を用いた、1又は2以上のRP-HPLC工程を用いて、タンパク質をさらに精製することができる。種々の組合せにおける、前述の精製工程のいくつか又は全ては、この分野において周知であり、これらを利用して単離及び精製された組換えポリペプチドを提供することができる。
【0079】
細菌培養物中に生産された組換えポリペプチドは、通常はまず宿主細胞を破壊し、遠心し、不溶性ポリペプチドであれば細胞沈殿物から抽出し又は可溶性ポリペプチドであれば上清から抽出し、次いで1回又は2回以上の遠心、塩析、イオン交換、アフィニティー精製若しくはサイズ排除クロマトグラフィー工程を用いることで単離される。最後に、RP-HPLCを最終の精製工程として用いることができる。凍結―融解サイクル、超音波破壊、機械的破壊又は細胞溶解試薬の使用を包含する、いずれの便利な方法を用いても、微生物細胞を破壊することができる。
【0080】
アゴニスト及びアンタゴニストのスクリーニング
他の局面において、本発明はNFAT活性化受容体アゴニスト及びアンタゴニストの同定のためのスクリーニング法を提供する。該スクリーニング法は、NFAT活性化受容体を潜在的NFATアゴニスト/NFATアンタゴニストに曝露し、潜在的アゴニスト/アンタゴニストが受容体に結合するか否かを判定することを包含する。もし潜在的アゴニスト/アンタゴニストが受容体に結合するならば、潜在的アゴニスト/アンタゴニストが、インビボで患者に投与されネイティブなNFAT活性化受容体に曝露された際に、実際にアゴニスト又はアンタゴニストとして機能するものと強く推定される。該方法により同定された該NFATアゴニスト及び該NFATアンタゴニストは、サイトカインを生産できる細胞を該アゴニスト/アンタゴニストに曝露し、サイトカインの生産を非曝露細胞と比較して測定することにより、アゴニスト又はアンタゴニストとして特徴付けることができる。アゴニストであればサイトカインの生産が増大する;アンタゴニストであればサイトカインの生産が減少する。他のスクリーニング方法は、NFATのDNAに結合する配列を含むレポーター遺伝子構造物で細胞をトランスフェクトすることを包含する。好ましくは、潜在的アゴニスト/アンタゴニストは、抗体を包含する有機化合物又はポリペプチドである。該スクリーニング法は、疾患、特に非疾患状態と比べてサイトカイン生産が比較的低い又は比較的高いことによって特徴付けられる疾患の予防又は治療のための薬剤として機能するかもしれない化合物を同定するために役立つ。
【0081】
有害な副作用のスクリーニング
さらなる局面において、本発明は、医薬が所望の効能のために動物に投与された時に、サイトカイン及び細胞受容体の生産が減少又は増大することに関連する不所望の副作用を引き起こしやすいか否かを判定するためのスクリーニング法を提供する。該スクリーニング法は、NFAT活性化受容体を医薬に曝露し、医薬が該受容体に結合するか否か又はサイトカインの生産に変化をもたらすことにより受容体リガンドの生物的機能を模倣するか否かを決定することを包含する。もし医薬が該受容体に結合するなら又は受容体リガンドの生物的機能を模倣するなら、該医薬が所望の効能のために動物に投与された時に有害な副作用を引き起こす可能性がある。有害な副作用は、サイトカインの生産の望ましくない変化の結果として起こる。該方法でスクリーニングできる医薬は、ポリペプチド、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、糖脂質、多糖類、少糖類、ヌクレオチド、有機分子、生物有機分子、ペプチド模倣物、薬理学的物質及びそれらの代謝物、並びに転写及び翻訳制御配列を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましい具体例では、特定の効能のために投与される抗体をスクリーニングして、NFAT活性化受容体と交差反応するか否か、及びそれ故に、意図する効能のために投与された時に不所望の副作用を引き起こしやすいかを調べる。
【0082】
受容体発現変調
さらに他の局面では、本発明は、NFAT活性化受容体をコードするDNA又はRNAポリヌクレオチドの転写又は翻訳に干渉することにより、細胞のNFAT活性化受容体の発現をブロック又は変調する方法を提供する。該方法は、NFAT活性化受容体を発現できる細胞を、NFAT活性化受容体をコードするDNA又はRNAポリヌクレオチドの適切な転写又は翻訳に干渉する分子に曝露することを包含する。該分子は、有機分子、生物有機分子、アンチセンスヌクレオチド、RNAiヌクレオチド又はリボザイムであり得る。
【0083】
好ましい具体例では、該方法は、NFAT活性化受容体をコードするDNA若しくはNFAT活性化受容体をコードするDNAの発現を調節するDNAに対してアンチセンスな、又はこれらと三重らせんを形成するポリヌクレオチドに細胞を曝露することにより、細胞のNFAT活性化受容体の発現をブロック又は変調することを包含する。細胞は、NFAT活性化受容体の発現を阻害又は調節するのに十分な量のアンチセンスポリヌクレオチド又は三重らせん形成性ポリヌクレオチドに曝露される。本発明はまた、NFAT活性化受容体をコードするDNA若しくはNFAT活性化受容体をコードするDNAの発現を調節するDNAに対してアンチセンスな、又はこれらと三重らせんを形成するポリヌクレオチドを動物に投与することにより、動物体内でNFAT活性化受容体の発現をブロック又は変調する方法も提供する。動物は、動物体内でNFAT活性化受容体の発現を阻害又は調節するのに十分な量のアンチセンスポリヌクレオチド又は三重らせん形成性ポリヌクレオチドを投与される。好ましくは、アンチセンスポリヌクレオチド又は三重らせん形成性ポリヌクレオチドは、DNA又はRNAポリヌクレオチドである。
【0084】
細胞をアンチセンスポリヌクレオチドに曝露する方法及びアンチセンスポリヌクレオチドを動物に投与する方法は、この分野において周知である。好ましい方法では、該ポリヌクレオチドは、公知の方法により細胞ゲノムに組み込まれ、細胞内で発現することを許される。発現したアンチセンスポリヌクレオチドは、NFAT活性化受容体をコードするポリヌクレオチドに結合し、それらの転写又は翻訳に干渉する。
【0085】
該方法は、例えば好中球若しくはマスト細胞のような、種々のタイプの細胞の研究を行なう際に、又は非疾患状態と比べてサイトカインの生産が過剰であることにより特徴付けられる動物の疾患を予防若しくは治療する際に、サイトカイン及び受容体の発現を阻害するのに有用である。
【0086】
疾病素質診断
他の局面において、本発明は、サイトカインの無調整な発現に起因する疾患を進展させる、患者の疾病素質を診断するための方法を提供する。本発明は、患者のある細胞、組織又は体液中にNFAT活性化受容体が存在している又は増加して存在しているということが、該患者がある免疫疾患に対する質病素質を有していることを示しているという発見に基づいている。1つの具体例では、該方法は、NFAT活性化受容体をあるとしてもごくわずかに含むということが知られている細胞、組織又は体液のサンプルを患者から採取し、組織中のNFAT活性化受容体の存在を調べるために該組織又は体液を分析し、組織又は体液中のNFAT活性化受容体の存在に基づいて、ある免疫疾患に対する患者の疾病素質を予測することを包含する。その他の具体例では、該方法は、規定されたレベルのNFAT活性化受容体を含むことが知られている細胞、組織又は体液のサンプルを患者から採取し、組織中のNFAT活性化受容体の量を調べるために該組織又は体液を分析し、正常な細胞、組織及び体液において確立された規定されたレベル又は測定されたレベルと比較した、該組織または体液中のNFAT活性化受容体の量の変化に基づいて、ある免疫疾患に対する患者の疾病素質を予測することを包含する。NFAT活性化受容体の規定されたレベルは、文献値に基づいた公知の量か、又は正常な細胞、組織若しくは体液中の量を測定することにより前もって定めた量であり得る。特に、ある組織又は体液中のNFAT活性化受容体レベルを測定することで、患者の免疫疾患を特異的かつ早期に、好ましくは疾患が起きる前に発見できる。該方法により診断できる免疫疾患は、ここに記載された免疫疾患を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましい具体例では、該組織又は体液は、末梢血、末梢血白血球、肺又は皮膚生検のような生検組織、及び滑液又は滑膜組織である。
【0087】
疾患の予防及び治療
他の局面において、本発明は、哺乳動物におけるNFATタンパク質を介する疾患の予防又は治療のための方法を提供する。該方法は、疾患を予防又は治療する量のNFAT活性化受容体アゴニスト又はアンタゴニストを哺乳動物に投与することを包含する。該アゴニスト又はアンタゴニストは、NFAT活性化受容体に結合し、サイトカイン及び細胞受容体の発現を調節して、非疾患状態に特徴的なレベルのサイトカインを生産する。好ましくは、該疾患は、アレルギー、喘息、自己免疫又は他の炎症性疾患である。最も好ましくは、該疾患はアレルギー又は喘息である。
【0088】
NFAT活性化受容体アゴニスト又はアンタゴニストの投与量は、当該哺乳動物の年齢、大きさ及び性質、並びに疾患に応じて異なる。当業者はこれらの要因に基づき投与量を決定できる。該アゴニストまたはアンタゴニストは、例えば、疾患を緩和するために数日にわたって1回若しくは数回投与したり、又はアレルギーや喘息を予防するために長期間にわたって定期的に投与したりするような、当該疾患に合致した治療法に沿って投与することができる。
【0089】
該アゴニスト及びアンタゴニストは、注射及びインプラント等を含むいずれの許容可能な方法を用いても哺乳動物に投与できる。投与のタイミングと投与量のレベルを正確に制御することができるので、注射及びインプラントが好ましい。該アゴニスト及びアンタゴニストは非経口投与することが好ましい。ここで用いる非経口投与は、静脈内、筋肉内若しくは腹腔内注射、又は皮下埋込みを意味する。
【0090】
注射により投与する場合、該アゴニスト及びアンタゴニストは、種々の賦形剤、アジュバント、添加剤及び希釈剤のような、生体適合性並びにアゴニスト及びアンタゴニスト適合性を有する担体を含む注射可能な剤形で哺乳動物に投与できる。不揮発性発熱物質を含まない水、滅菌水及び静菌水のような水性賦形剤もまた、注射可能な溶液を形成するのに適している。これらの形態の水に加えて、数種類のほかの水性賦形剤も用いることができる。これらは、塩化ナトリウム、リンゲル液、デキストロース、デキストロースと塩化ナトリウム、及び乳酸加リンゲル液のような、滅菌可能な等張性注射組成物を包含する。綿実油、ゴマ油又は落花生油のような非水性賦形剤、及びミリスチン酸イソプロピルのようなエステルもまた、該組成物のための溶媒系として用いることができる。加えて、抗菌性保存剤、酸化防止剤、キレート化剤および緩衝剤を包含する、該組成物の安定性、無菌性及び等張性を高める種々の添加物を加えることができる。しかしながら、使用するいかなる賦形剤、希釈剤又は添加物も、生体適合性並びに本発明のアゴニスト及びアンタゴニストとの適合性を有していなければならない。
【0091】
NFATポリペプチド診断薬
本発明の抗体はまた、特定の細胞、組織若しくは体液又はそれらの構成成分中で発現されるNFAT活性化受容体を検出する診断方法に用いることもできる。該方法は、細胞、組織若しくは体液又はそれらの構成成分を本発明の抗体に曝露し、該細胞、組織若しくは体液又はそれらの構成成分が抗体と結合するかどうかを判定することを包含する。抗体と結合した細胞、組織若しくは体液又はそれらの構成成分は、NFAT活性化受容体を含む細胞、組織若しくは体液又はそれらの構成成分であると診断される。このような方法は、特定の細胞、組織又は体液が、NFAT活性化受容体を含むことが以前より知られているあるタイプの細胞、組織又は体液の1つであるかどうかを判定するのに有用である。例えば、競合的結合アッセイ、直接又は間接サンドイッチアッセイ、及び異質又は均質相で行なわれる免疫沈降アッセイなどの、この分野において知られる種々の診断方法が利用可能である。
【0092】
NFATポリペプチド精製
本発明の抗体はまた、組換え細胞培養物、混入物及びネイティブな環境からNFAT活性化受容体を単離及び精製する方法に用いることができる。該方法は、NFAT活性化受容体及び混入物を、当該受容体に結合できる抗体に曝露し、NFAT活性化受容体を抗体に結合させ、混入物から抗体―受容体複合体を分離し、当該複合体からNFAT活性化受容体を回収することを包含する。例えば、組換え細胞培養物又はネイティブな供給源からNFAT活性化受容体を回収するアフィニティー精製などの、この分野において公知の種々の精製方法を用いることができる。この方法において、NFAT活性化受容体に対する抗体は、セファデックス樹脂又はろ紙のような適当な支持体に、この分野において周知の方法によって固定化される。次に固定化抗体を、精製すべきNFAT活性化受容体及び混入物を含む試料組成物に接触させる。次いで該支持体を、固定化抗体に結合したNFAT活性化受容体以外の、試料中の実質的に全ての物質を取り除くことができる適当な溶媒で洗浄する。最後に、該支持体を、抗体からNFAT活性化受容体を取り除くのに適当な別の溶媒で洗浄する。
【0093】
寛容誘導法
他の局面において、本発明は、不所望の免疫応答を経験し得る動物に寛容を誘導する方法を提供する。該方法は、細胞核内へのNFATタンパク質の移行、及びそれに続いて起こる、NFATタンパク質と相互作用することが知られている転写因子である転写因子活性化タンパク質1(AP-1)との相互作用を阻害するのに十分な量のNFAT活性化受容体アンタゴニストを患者に投与することを包含する。好ましくは、該アンタゴニストは、NFAT活性化受容体に結合し、NFATタンパク質が核へ移行してAP-1と相互作用することを防ぐ抗体である。
【0094】
寛容は、不完全な情報伝達の過程を経て誘導される。自己抗原はT細胞受容体のみを刺激し、細胞内のカルシウムレベルの増大を引き起こしてNFATタンパク質を活性化する。次にNFATタンパク質は、T細胞DNAの特異的部位に結合して、寛容を誘導する遺伝子発現を引き起こす。しかしながら、NFATタンパク質は典型的に、AP-1として知られる他の転写因子と相互作用する。これらの転写因子間の相互作用は、T細胞が外来の抗原と戦う最大限の免疫応答を誘導する。しかしながら、NFATタンパク質がAP-1と相互作用しない場合には、T細胞が抗原を許容するT細胞不応答状態が生じる。外来の抗原に対する最大限の免疫応答は、例えばアレルギー及び移植臓器拒絶反応などの、多くの不所望の免疫応答の原因である。したがって、NFATとAP-1との相互作用を防止するいかなる物質も、これらの不所望で破壊的な応答を防止し、寛容を誘導するであろう。
【0095】
好ましい具体例では、本発明は、臓器移植患者に寛容を誘導するための方法を提供する。一般的に、移植臓器の外来抗原に対する最大限の免疫応答は、臓器拒絶反応の原因である。現在では、免疫抑制剤シクロスポリンを移植患者に用いて、NFATタンパク質の活動を停止させることにより拒絶反応を防止している。しかしながら、こうしたシクロスポリンの使用は、NFATタンパク質によるT細胞寛容の開始を妨げる。したがって、NFATタンパク質とAP-1との相互作用を防止することで、移植臓器に対する寛容が誘導されるであろう。
【0096】
ノックアウト動物
他の局面において、本発明は、内生のNFAT活性化受容体遺伝子がヘテロ接合的又はホモ接合的に破壊されたゲノムを有し、生物学的に機能的なNFAT活性化受容体タンパク質の発現が抑制又は妨害されたノックアウト動物を提供する。好ましくは、本発明のノックアウト動物は、内生のNFAT活性化受容体遺伝子がホモ接合的に破壊されたものである。好ましくは、本発明のノックアウト動物はマウスである。該ノックアウト動物は、当業者に公知の技術を用いて容易に作製することができる。遺伝子破壊は、ポリペプチドコード配列のいずれかの部分に終止コドンを導入して生物学的に不活性なポリペプチドにすること、プロモーター又は他の調節配列に変異を導入してポリペプチドの発現を抑制又は妨害すること、外来性の配列を遺伝子に挿入して該遺伝子を不活化すること、及び該遺伝子から配列を欠失させることを包含する、数種類の方法により達成することができる。
【0097】
特異的なDNA配列を哺乳動物生殖系列に導入し、これらの配列(導入遺伝子)の各次世代への安定した伝達を達成するために、数種類の技術が利用可能である。最も一般的に用いられる技術は、受精した卵母細胞の前核にDNAを直接マイクロインジェクションすることである。これらの卵母細胞から誘導されたマウス又は他の動物は、およそ10〜20%の頻度で、育種を経て異なるトランスジェニックマウスラインをもたらすトランスジェニックファウンダーとなる。胚操作及びマイクロインジェクションによる、特にマウスなどの動物でのトランスジェニック動物の作製方法は、この分野において常套化された。例えば、米国特許第4,736,866号、第4,870,009号及び第4,873,191号、並びにHogan, B., Manipulating the Mouse Embryo(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1986)など。同様な方法が、他のトランスジェニック動物の作出に用いられる。
【0098】
胚性幹細胞(ES細胞)技術は、遺伝子を特異的に欠失させたノックアウトマウス(及び他の動物)を創製するために用いることができる。インビトロで培養し遺伝的に改変できる、全能性の胚性幹細胞を、マウス胚と凝集させ又はマウス胚中にマイクロインジェクションして、子孫に当該遺伝的改変を伝達できるキメラマウスを作出する。定方向の育種を経て、該遺伝子を欠失したマウスを得ることができる。数種類の他の方法が、遺伝的改変動物の作出に利用できる。例えば、細胞質内精子注入技術(ICSI)がトランスジェニックマウス作出に利用できる。この方法では、精母細胞の頭部を未受精卵母細胞の細胞質にマイクロインジェクションし、該卵母細胞の受精及びその後の着床胚の適切な細胞分裂の活性化を引き起こす必要がある。このようにして得られたマウス胚は、偽妊娠の受容雌に移植される。該雌は、同腹のマウスを産むであろう。トランスジェニックマウスの作出に適用されるICSIでは、精子又は精母細胞頭部の懸濁液を、所望のDNA分子(導入遺伝子)を含む溶液と共にインキュベートする。これらは精子と相互作用し、一旦マイクロインジェクションされると、外来DNAのための担体賦形剤として働く。一旦卵母細胞の中に入ると、該DNAはゲノムに組み込まれ、トランスジェニックマウスをもたらす。この方法は、伝統的な前核マイクロインジェクションプロトコールを用いてこれまで得られていたトランスジェニックマウスの収率よりも高い収率(80%以上)をもたらす。
【0099】
実施例
本発明を、以下の好ましい具体例によりさらに例示する。もっとも、これらの実施例は、単に例示のために記載するものであり、他に断りがない限り本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0100】
NFAT活性化受容体遺伝子の同定
重複のないヒトタンパク質データベースIPI(International Protein Index)を用いて、1) 免疫グロブリン(Ig)ドメイン、2)免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)、及び3) 膜貫通領域を含む新規分子の検索を行なった。それらは、TCR、BCR、FcεRI及び近年同定された多くの他の活性化受容体の構成要素を包含した、免疫系の機能を調節する多くのシグナル活性化受容体が有する、共通の特徴である(Isakov 1997 "ITIMs and ITAMs" Immunologic Research 16:85)。Igドメインの検索には、隠れマルコフモデル(HMM)に基づいた方法を用いた。HMMは、113の確信的なIgドメインのアラインメントから構築され、HMMERプログラムにより較正されたものであり、Pfam (version 6.6) データベースから入手された。ITAMモチーフを含むタンパク質の検索では、はじめにITAMに共通した特徴に基づいてPROSITE‐フォーマット化モチーフプロフィール(PROSITE-formatted motif profile)を構築し、「seedtop」ソフトウェア(NCBI)を用いて検索を行なった。全てのIPIタンパク質に対する大規模膜貫通領域予測は、TMHMM version 2.0ソフトウェア(http://www.cbs.dtu.dk/services/TMHMM/)を用いて行なった。IPI00086590と呼ばれる仮想タンパク質配列が、上記3つ全ての判定基準に合っていた。インシリコのクローニング法により、配列番号2に示される全長cDNA配列を導き出した。
【実施例2】
【0101】
NFAT活性化受容体遺伝子発現の定量的リアルタイムPCR解析
Primer Express 2.0 (Applied Biosystems, Inc.) を用いて、NFAT活性化受容体ヌクレオチド配列よりForward: 5' TCCTGCTCTTTGGCTTCACC及びReverse: 5' GCCGTGCCCACTACACTCAの配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーを選択して合成し、PCR反応に用いてリアルタイムでNFAT活性化受容体ポリヌクレオチドの発現をモニターした。次に示す組織及び細胞におけるNFAT活性化受容体ポリヌクレオチドの発現のレベルを測定するためにRNAを単離した:脳;心臓;腎臓;肝臓;肺、脾臓、単球、Daudiすなわちバーキットリンパ腫セルライン;HPB-ALLすなわちT細胞白血病セルライン;THP-1すなわち急性単球性白血病;リンパ球;JurkatすなわちT細胞白血病セルライン;HMC-1;マスト細胞ライン;HUVAC;一次ヒト血管内皮細胞;好中球;PBMCすなわち末梢血単核球;及びインビトロで培養した臍帯血由来マスト細胞試料の4つの異なるバッチ。
【0102】
Taqman試薬を用いて、製造者の指示書に従い、ABI Prism 7900(Applied Biosystems, Inc.)の配列検出システムにより定量的リアルタイムPCR解析を行なった。上記した細胞供給源由来の等量の一本鎖cDNAを反応中のPCR鋳型として用いて閾値サイクル(Ct)を得、18Sリボソームからの既知のCtを用いて前記Ctを正規化し、ΔCtを得た。異なるセルラインにおけるNFAT活性化受容体ポリヌクレオチドの遺伝子発現の相対レベルを比較するため、最低の発現レベルをベースとしてΔΔCt値を計算し、次いで真の倍数発現相違値(real fold expression difference values)に変換した。結果を表1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
表1より、NFAT活性化受容体mRNAは、好中球、一次単球及び単球セルライン、リンパ球並びにインビトロ培養マスト細胞で高発現していることがわかった。脾臓及び肺組織で発現が検出された。対照的に、全ての他の組織及び細胞(脳、心臓;腎臓、肝臓、Daudi、HPB-ALL、Jurkat、HUVAC)での発現レベルは非常に低かった。
【実施例3】
【0105】
NFAT活性化受容体の分子クローニング及び特徴付け
開始メチオニンコドン(5'-CACCATG GAGAACCAGCCTG)及び停止コドン(5'-ACCTGGTCTATGAAAATCTC)を含む2つのオリゴプライマーをそれぞれ用いて、RT-PCRにより、ヒト単球からNFAT活性化受容体cDNAをクローニングした。2つのcDNAクローンを単離し、配列決定したところ、配列番号1に示すインシリコクローニングで導き出されたコード領域配列と一致することがわかった。インシリコクローニングで導き出された配列は、完全なKozakモチーフを含み、おそらく、予測される開始メチオニンに先行する停止コドンを読み枠を合わせて数個有しているので、NFAT活性化受容体ポリヌクレオチドの完全なコード領域を表している。さらに、該配列は、想定される開始メチオニンから始まる、推定上のシグナルペプチドを有する。
【0106】
NFAT活性化受容体は、N末端(1〜42番アミノ酸)に推定上のシグナルペプチド、細胞外領域にIgドメイン(43〜150番アミノ酸)、細胞質領域に膜貫通ドメイン(164〜186番アミノ酸)及びITAMモチーフ(220〜235番アミノ酸)を有する、270アミノ酸からなる算出分子量約30kDのタンパク質であると予測された。それは染色体22q13.2に存在する。cDNAをゲノム配列と整列化すると、NFAT活性化受容体ポリヌクレオチドのコード領域は6つのエキソンを含んでいた。1つの潜在的なN-グリコシレーション部位が細胞外領域(107〜110番アミノ酸)に見つかった。対応するESTライブラリー供給源の分布に基づいた「電子ノーザン(electronic northern)」により、NFAT活性化受容体は白血球で優先的に発現していることが示された。特異的なタンパク質キナーゼによるリン酸化又はドメインへの結合が期待されるタンパク質のモチーフを検索するために作成された、ウェブベースのSCANSITE(http://scansite.mit.edu/)を用いることにより、NFAT活性化受容体は、シグナル伝達において非常に一般的な活性化アダプター分子であるLck(リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ)のSH2ドメインのための結合領域を細胞質領域に含むと予測された。
【実施例4】
【0107】
NFAT活性化受容体の発現
NFAT活性化受容体遺伝子産物を決定するため、V5タグをC末端又はN末端に読み枠を合わせて融合させた、NFAT活性化受容体を発現するポリヌクレオチドのコード領域を、pcDNA 3.1哺乳動物発現ベクター(INVITROGEN, カリフォルニア州)にサブクローニングし、次いでLipofectamin 2000を用いて293T細胞に一過的にトランスフェクトした。8 X 105個の細胞を100μLのddH2Oに再懸濁して全細胞タンパク質試料を調製し、等量の2 X試料ローディングバッファーを加えて98℃で5分間加熱した。タンパク質を15% SDS-PAGEで分離し、膜に移した。タグを付されたNFAT活性化受容体は、抗V5モノクローナル抗体を用いたウエスタンブロットにより、約35kDの主たるタンパク質バンド及び約30kDのより小さなバンドとして検出される。これらのタンパク質バンドは、プラスミドベクターのみトランスフェクトした細胞では存在しない。
【実施例5】
【0108】
NFAT活性化受容体の細胞局在
NFAT活性化受容体が膜表面で発現しているかどうかを決定するため、C末端にV5タグを付けたNFAT活性化受容体構築物で293T細胞をトランスフェクトし、凍結―融解法により細胞を溶解した。細胞を1 X溶解バッファーに懸濁し、凍結―融解を3回行なった。微量遠心器により最大速度で遠心して、不溶性膜画分を可溶性タンパク質から分離した。該タンパク質を15% SDS-PAGEで分離した。抗V5モノクローナル抗体で検出したところ、NFAT活性化受容体は主に膜画分に存在した。可溶性画分からはほとんど検出されなかった。
【0109】
次いで、膜でのNFAT活性化受容体の局在と配向を決定するため、免疫蛍光染色を行なった。NFAT活性化受容体のN末端又はC末端いずれかにV5タグを融合し、293T細胞にトランスフェクトした。該細胞を、1% BSAを含む無酵素細胞解離バッファー(Invitrogen)中で洗浄し、4℃で30分間プレインキュベーションした。次いで細胞を、FITC標識抗V5モノクローナル抗体(10μg/ml)(Invitrogen)とともに同バッファー中で30分間インキュベートした。3回洗浄後、細胞を1%パラホルムアルデヒドで固定して/固定せずに、1 X PBSに再懸濁し、蛍光顕微鏡(ZEISS Axioskop, 独国)で解析した。N末端にタグを付けたNFAT活性化受容体は、抗V5モノクローナル抗体により、生存(非固定)細胞及びメタノール固定細胞の両方の膜上で検出されたが、一方でC末端にタグを付けたNFAT活性化受容体はメタノール固定細胞の膜上でのみ検出された。これらの結果は、NFAT活性化受容体がN末端を細胞膜外部に露出した膜貫通タンパク質であることを示している。
【実施例6】
【0110】
NFAT活性化受容体によるNFATの活性化
免疫応答の活性化または阻害の第一レベルの調節は、受容体部位で起こり、受容体サブユニットの細胞質領域のタンパク質モジュールが関与していることがわかっている。近年の研究により、ITAM(immunoreceptor tyrosine-based activation motif)及びITIM(immunoreceptor tyrosine-based inhibition motif)という、2タイプのモジュールが同定された。これらは、受容体の連結の際に迅速で一過的なリン酸化を受ける保存されたチロシン残基を有し、シグナル伝達経路を活性化又は終結させる(Isakov 1998 "ITAMs: immunoregulatory scaffolds that link immunoreceptors to their intracellular signaling pathways" Receptors Channels 5:243)。免疫グロブリン(Ig)ドメインはリガンド―レセプター相互作用に関与することがしばしば見出されている。免疫組織及び細胞中で優先的に発現していることに加えて、膜タンパク質であるNFAT活性化受容体中にIgドメインとITAMモチーフが共存することは、NFAT活性化受容体が免疫系において活性化レセプターとして機能していることを強く示唆している。
【0111】
NFAT活性化受容体のシグナル伝達経路の下流にあるかもしれない標的として、3つの一般的な転写因子(NFAT、NF-κB及びAP-1)について、リアルタイムPCRによりNFAT活性化受容体が適度に発現していることがわかっているHMC-1(ヒトマスト細胞ライン)中で、ルシフェラーゼレポーターアッセイを行なって調べた。典型的なルシフェラーゼアッセイを以下の通り行なった:HMC-1を培地1リットル当り20万個の濃度で24穴培養プレートに播いた。ルシフェラーゼレポーター(NFAT、AP-1又はNF-κB結合部位を包含するプロモーター領域を含む)、NFAT活性化受容体発現プラスミド及びpRLSV40の、3つのプラスミドをHMC-1細胞に共トランスフェクトした。該細胞をトランスフェクト40〜46時間後に採取し、passive lysis buffer(Promega, Inc.)中で融解した。ホタル及びウミシイタケのルシフェラーゼ活性を、デュアル-ルシフェラーゼアッセイキット(Promega, Inc.)を用いてTD-20ルミノメーター(Turner Design)により調べた。結果を表2から表7に示す。
【0112】
【表2】

【0113】
【表3】

【0114】
【表4】

【0115】
【表5】

【0116】
【表6】

【0117】
【表7】

【0118】
表2から表7に記載の通り、NFAT活性化受容体―V5-353の過剰発現により、NFATは約80倍活性化される(表2)が、NF-κB(表3)又はAP-1(表4)は活性化されなかった。ベクターのみのトランスフェクションはネガティブコントロールとして用いた;ネガティブコントロールでは3つの転写因子のいずれも活性化されなかった(表2、3及び4)。NF-κB及びAP-1の場合には、NF-κB及びAP-1を活性化できることが知られているMEKK3をポジティブコントロールとして用いた(表3及び4)。
【0119】
単離したポリペプチドがNFAT活性化受容体であることを確かめるため、2つのさらなる実験を行なった:1) NFAT活性化受容体の過剰発現がNFAT調節遺伝子(IL-13及びTNF-α)の転写に及ぼす影響、及び2) カルシニュリン/NFATシグナル伝達経路の公知の阻害剤がNFAT活性化受容体に媒介されるNFAT活性化に及ぼす影響。IL-13及びTNF-αは、免疫応答において中心的役割を果たしていることを理由に選ばれた。IL-13又はTNF-αのいずれかのプロモーター領域(NFAT結合部位を含む)を、プロモーター欠失ルシフェラーゼレポータープラスミドベクター(DB Bioscience Clontech)に挿入し、次いでHMC-1に共トランスフェクトした。NFAT活性化受容体の過剰発現により、ベクターのみのコントロールと比較して、IL-13で約19倍、TNF-αで約5倍の、強い転写増加が見られた(表5及び6)。さらに、公知のNFAT阻害剤であるシクロスポリンA(CsA)により、NFAT活性化受容体の刺激活性が劇的に減少した(表7)。これらを総合的に判断すると、これらのデータは、NFAT活性化受容体の過剰発現によりNFATを活性化できることを示している。
【実施例7】
【0120】
NFAT活性化受容体によるNFAT活性化はITAMモチーフにより媒介される
異なる受容体サブユニットの構造機能解析により、異なる抗原及びFc受容体の細胞質末尾にあるITAMが同定された。これらの受容体はチロシンリン酸化に依存した態様で作用し、Sky/ZAP-70 PTKsを利用して活性化シグナルを伝達する(Cambier 1995 "Antigen and Fc receptor signaling" J Immunol 155:3281)。本発明のNFAT活性化受容体は、細胞質末尾(220〜235番アミノ酸)に予測されるITAMモチーフを有し、活性化受容体として作用することが示された。推定ITAMモチーフがシグナル伝達を媒介するかどうかを調べるため、我々は、ITAMモチーフ中の2個のチロシン(Y220及びY231、ここではそれぞれY1及びY2)を、個別に及び組み合わせてアラニンに変異させた、3つのNFAT活性化受容体変異体(Y1A、Y2A、及び二重変異体Y12A)を作製した。全ての変異体はPCRによる変異生成で作製された。用いたプライマー配列は次の通り:
Y1A フォワード: 5'-AGAATCTGTCGCCACAGCTCTG
リバース: 5'-GCAGAGCTGTGGCGACAGATTCTG
Y2A フォワード: -AGACCGAGGTCGCTGCCTGCATCG
リバース: 5'-CGATGCAGGCAGCGACCTCGGTC
【0121】
次いで変異cDNAを、pCDNA発現ベクター(Invtrogen)に個別にサブクローニングした。次いで、同様なルシフェラーゼレポーターアッセイを行ない、各チロシンのアラニンへの変異体の過剰発現が、NFATの活性化及びNFATにより調節される遺伝子(IL-13及びTNF-α)の転写に及ぼす影響を調べた。3つの各変異体のNFAT活性化作用は実質的に消失しており、得られたルシフェラーゼレポーターのシグナルはベクターのみのコントロールと同程度だった(表2、4及び5)。これらの結果より、NFAT活性化受容体の活性化シグナル伝達はITAMモチーフを介することがわかった。
【0122】
明細書において、本発明の典型的な好ましい具体例を開示し、また、特定の用語を用いたが、それらは一般的かつ記述的な意味のみに用いており、限定の目的のために用いているものではなく、本発明の範囲は請求の範囲に記載されている。明らかなように、上記の教示に照らし、本発明の多くの修飾及び変形が可能である。従って、請求の範囲内において、本発明は、特に記述したものと異なるように実施することができることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2;
配列番号2の変異体;
配列番号2の断片;並びに
配列番号1;
配列番号1の変異体;及び
配列番号1の断片から成る群より選ばれるヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列、
から成る群より選ばれるアミノ酸配列を含む精製ポリペプチド。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、NFAT活性化受容体に特異的に結合し、該受容体の発現又は作用を阻害又は促進する、アゴニスト又はアンタゴニストである、請求項1記載の精製ポリペプチド。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、NFAT活性化受容体の可溶性形態、及びNFAT活性化受容体に結合可能な、NFAT活性化受容体の細胞外ドメイン由来の可溶性ポリペプチドから成る群より選ばれるアンタゴニストである、請求項2記載の精製ポリペプチド。
【請求項4】
配列番号2のアミノ酸43〜150又はそのアンタゴニスト断片から成る群より選ばれるアミノ酸配列を含む、請求項3記載の精製ポリペプチド。
【請求項5】
前記アゴニスト又はアンタゴニストが抗体である、請求項2記載の精製ポリペプチド。
【請求項6】
前記抗体が、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、ヒト、二特異的及びヘテロ結合抗体から成る群より選ばれる、請求項5記載の精製ポリペプチド。
【請求項7】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項5記載の精製ポリペプチド。
【請求項8】
配列番号1;
配列番号1の変異体;
配列番号1の断片;並びに
配列番号2;
配列番号2の変異体;
配列番号2の断片から成る群より選ばれるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
から成る群より選ばれるヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド。
【請求項9】
配列番号2のアミノ酸43〜150又はそのアンタゴニスト断片から成る群より選ばれるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、請求項8記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項8記載のヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
【請求項11】
請求項10記載の発現ベクターを含む宿主細胞;請求項8記載のヌクレオチド配列を含む宿主細胞;及び請求項9記載のヌクレオチド配列を含む宿主細胞、から成る群より選ばれる単離された宿主細胞。
【請求項12】
NFAT活性化受容体を潜在的なNFATアゴニスト/NFATアンタゴニストに曝露し;そして
前記潜在的なアゴニスト/アンタゴニストが前記受容体と結合するか否かを決定することを含む、NFAT活性化受容体アゴニスト及びアンタゴニストを同定するためのスクリーニング方法。
【請求項13】
NFAT活性化受容体を医薬に曝露し;そして
前記医薬が前記受容体に結合するか否か、又はサイトカインの生産に変化を及ぼすことにより前記受容体リガンドの生物学的機能を模倣するか否かを決定することを含む、医薬が所望の効能のために動物に投与された際に、サイトカイン及び細胞受容体の生産の減少又は増大を伴う不所望の副作用を引き起こしやすいか否かを決定するためのスクリーニング方法。
【請求項14】
NFAT活性化受容体を発現できる細胞を、NFAT活性化受容体をコードするDNA又はRNAポリヌクレオチドの転写又は翻訳に干渉する分子に曝露することを含む、NFAT活性化受容体をコードするDNA又はRNAポリヌクレオチドの転写又は翻訳に干渉することによって細胞のNFAT活性化受容体の発現をブロック又は変調する方法。
【請求項15】
前記分子が、NFAT活性化受容体をコードするDNA又はRNAポリヌクレオチドの適正な転写又は翻訳に干渉する、アンチセンスヌクレオチド、RNAiヌクレオチド及びリボザイムから成る群より選ばれる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記分子が、NFAT活性化受容体をコードするDNA又はRNAポリヌクレオチドの適正な転写又は翻訳に干渉するアンチセンスヌクレオチドである、請求項14記載の方法。
【請求項17】
NFAT活性化受容体をあるとしてもごくわずかにしか含まないことが知られている細胞、組織又は体液試料を患者から採取し;
該組織又は体液について、組織中のNFAT活性化受容体の存在を分析し;そして
該組織又は体液中のNFAT活性化受容体の存在に基づき、ある免疫疾患に対する患者の疾病素質を予測することを含む、サイトカインの無調整な発現により引き起こされる疾病を発達させる、患者の疾病素質を診断する方法。
【請求項18】
規定されたレベルのNFAT活性化受容体を含むことが知られている細胞、組織又は体液試料を患者から採取し;
該組織又は体液について、組織中のNFAT活性化受容体の存在を分析し;そして
該組織又は体液中のNFAT活性化受容体の量について、正常な細胞、組織又は体液において確立された規定されたレベル又は測定されたレベルと比較した差異に基づき、ある免疫疾患に対する患者の疾病素質を予測することを含む、サイトカインの無調整な発現により引き起こされる疾病を発達させる、患者の疾病素質を診断する方法。
【請求項19】
疾患を予防又は治療する量のNFAT活性化受容体アゴニスト又はアンタゴニストを哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物においてNFAT活性化受容体を介した疾患を予防又は治療する方法。
【請求項20】
前記のNFAT活性化受容体アゴニスト又はアンタゴニストが抗体である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
抗体の生産のために、
単離されたNFAT活性化受容体又はそれの抗原性断片を抗原として用いること;
組換えNFAT活性化受容体を発現する宿主細胞を抗原として用いること;及び
該受容体遺伝子を含み該受容体を発現するDNA発現ベクターを抗原として用いること;
から成る群より選ばれる方法を含む、NFAT活性化受容体と結合する抗体を生産する方法。
【請求項22】
請求項21記載の方法を用いて生産された抗体。
【請求項23】
ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、ヒト、二特異的及びヘテロ結合抗体から成る群より選ばれる、請求項22記載の抗体。
【請求項24】
細胞、組織若しくは体液、又はそれらの構成成分を、請求項22記載の抗体に曝露し;そして
前記細胞、組織若しくは体液、又はそれらの構成成分が該抗体と結合するか否かを決定することを含む、特定の細胞、組織又は体液中で発現するNFAT活性化受容体を検出するための診断方法。
【請求項25】
NFAT活性化受容体及び混入物を含む組成物を、該受容体に結合できる抗体に曝露し;
NFAT活性化受容体が前記抗体に結合することを許し;
抗体―受容体複合体を前記混入物から分離し;そして
該複合体からNFAT活性化受容体を回収することを含む、組換え細胞培養物、混入物及びネイティブな環境からNFAT活性化受容体を単離及び精製するための方法。
【請求項26】
前記抗体が請求項22記載の抗体である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
NFAT活性化受容体タンパク質の細胞核への移行、及び続いて起こる転写因子活性化タンパク質1(transcription factor activator protein 1)との相互作用を阻害するのに十分な量のNFAT活性化受容体アンタゴニストを患者に投与することを含む、不所望の免疫応答を経験し得る哺乳動物に寛容を誘導する方法。
【請求項28】
前記アンタゴニストが、NFAT活性化受容体に結合してNFATタンパク質の核への移行及びAP-1との相互作用を妨げる抗体である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記抗体が請求項22記載の抗体である、請求項26記載の方法。
【請求項30】
内生のNFAT活性化受容体遺伝子にヘテロ接合又はホモ接合の欠失を含むゲノムを有し、生物学的に機能的なNFAT活性化受容体タンパク質の発現が抑制又は妨害されている、トランスジェニックノックアウト動物。

【公表番号】特表2006−500032(P2006−500032A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−538310(P2004−538310)
【出願日】平成15年9月19日(2003.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2003/029643
【国際公開番号】WO2004/027079
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(505102016)タノックス インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】