説明

活性炭を形成する方法

活性炭を製造するための改良された方法が開示される。活性炭を製造するために、炭素前駆体物質がリンベースの化学物質溶液でコーティングされ、物理的に活性化される。炭素と化学反応する化学物質の溶液でグリーン体炭素前駆体物質をコーティングし、得られた物質を炭化し、該炭化工程の少なくとも一部分において物理的に活性化することにより活性炭を形成することもできる。炭素物質を粉砕し、所望の粒子サイズとし、ついで粉砕された粒子を活性化することにより活性炭を形成することもできる。他の改良方法においては、ナノ粒子状物質で炭素または炭素前駆体をコーティングし、炭素が炭素前駆体の場合には、その後前駆体を炭化して炭素を形成し、空気および不活性ガス中で炭素を触媒的に活性化し、水蒸気または二酸化炭素中で物理的に活性化することにより活性炭を形成する。活性炭は前もって化学的に活性化された炭素を物理的に活性化することにより活性炭を形成することもできる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願
この出願は、2007年2月14日出願、発明の名称「メソポーラスな多層活性炭」の米国仮出願60/901,850、2007年7月20日出願、発明の名称「処理された活性炭」の米国仮出願60/961,432、2007年7月20日出願、発明の名称「連続的に活性化された炭素」の米国仮出願60/961,320、および2007年12月6日出願、発明の名称「活性炭化合物」の米国仮出願61/005,58の利益を要求する。
【0002】
技術分野
本発明は、活性炭およびそれらの製造方法に関する。活性炭は、様々な電気化学的装置(例えばキャパシタ、バッテリー、燃料電池およびその他同種のもの)、水素貯蔵装置、濾過装置、触媒基体など(ただしこれらに限定されるものではない)を始めとする活性炭材料を含むあらゆる種類の装置中で使用されることができる。
【背景技術】
【0003】
電気自動車およびハイブリッド自動車のような多くの将来技術では、高エネルギーおよび高出力密度の両方を備えたキャパシタへの必要が存在する。この領域について多くの研究が行われたが、ハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車および電気マイクログリッドのような多くの実用化用途においては、現在の技術は性能面でぎりぎりであるかまたは許容不能であり、またコストも高すぎる。環境省のエネルギー貯蔵における研究開発についての開発報告(DOE Progress Report for Energy Storage Research and Development fy2005 (2006年1月))、環境省のエネルギー貯蔵研究計画のマネージャーのGyukによる実用規模の電気貯蔵(キャパシタ開発世界サミット、Advanced Capacitors World Summit 2006、スピカー4、スライド13−15)を参照。
【0004】
電気化学二重層キャパシタ(EDLC’s、スーパーキャパシタと呼ばれ、時にはウルトラキャパシタとも呼ばれる形式の電気化学キャパシタ)は、そのような用途のために研究された1つのタイプのキャパシタ技術である。電気化学二重層キャパシタの設計は、非常に大きな電極表面積に依存する。電極表面にすぐ隣接して形成されるヘルムホルツ二重層として知られている領域内への電解質からのイオンの物理的分離により電荷を貯蔵するために、アルミニウムまたは銅箔のような優れた電導体で作られた集電装置上に塗布された「ナノスケール」で粗い金属酸化膜または活性炭から電極表面は通常作られる。米国特許3,288,641を参照。EDLCに固有の物理的な誘電性はない。それにもかかわらず、キャパシタンスは、電場を横切る物理的な電荷分離に基づく。セルのそれぞれの側にあり多孔質膜によって分離された電極は、それらの表面の二重層内に反対の極性の同量の電荷を貯蔵し、両方の電極に対して従来のキャパシタにおける相対するプレートになる効果を奏する電解質溶液を含んでいる。
【0005】
EDLCの内部炭素孔径は、ヘルムホルツ二重層キャパシタンスのために孔の表面が寄与できるように、それぞれの電解質イオンの溶媒和球に適合するために、水性の電解質においては少なくとも約2nm、有機電解質においては少なくとも約3nmであるべき事は一般に受け入れられるであろう。J.Electrochem. Soc. 148(8):A910−A914(2001)、およびElectrochem. and Solid State Letters 8(7):A357−A360(2005)を参照。内部の孔は、ふるい分けるためではなく、電解質への暴露と湿潤のために、外側の粒子表面がアクセス可能であるべきである。接触可能表面の合計が多いほど好ましい。ELDC装置の中で使用されている従来の活性炭は多くの電気化学的に役立たないミクロポア(つまりIUPACの定義による2nm未満)を有している。文献に報告された高度に活性化された電気化学的炭素では、合計の利用可能な表面積は典型的には10%(米国特許6,491,789を参照)から20%(米国特許6,737,445を参照)である。商業的なエレクトロカーボンにおける典型的なメソポアの割合は、約1300m/gから約1900m/gまでの範囲のDFT表面において、低くて5%から、高くて22%の範囲である。Walmet(MeadWestvaco)、DLC(ISDLC)第16回国際セミナーの議事録参照:139−140(2006)。
【0006】
EDLC装置にふさわしい高度に使用可能な表面を有する炭素を生産するために、それらの望ましいより高い操作電圧で有機電解質を使用する、いくつかの異なるアプローチが試みられた。これらは通常とは異なる炭素前駆体(例えば米国特許6,660,583)、新規な炭化方法(例えば米国特許公開2005/0207961)、長時間または数日に及ぶ新規な物理的な活性化方法(例えば主要な活性炭サプライヤであるNorit Nederland BVによるISDLCの議事録、第16号、95(2006)で、キルン中の滞留時間が「数時間から数日まで」で「800−1000℃でスチーム活性化」として言及されたもの)、新規な化学的活性方法(例えば米国特許5,877,935)、炭素エアロゲル(例えば米国特許5,626,977、米国特許5,898,564)、様々なテンプレーティング技術(例えば米国特許6,297,293、米国特許公開2004/0091415、米国特許6,737,445)、カーバイド誘導炭素(例えばPCT/EE2005/000007、米国特許公開2006/0165584)、およびカーボンナノチューブ類(例えば米国特許6,491,789、米国特許6,934、144)、またはその等価物(例えば米国特許公開2005/0025974)の利用があげられる。これらのアプローチはそれぞれ著しい制限を有している。これらの発明者のうちの1人による出願、PCT/US2007/004182(2006年2月15日に出願された米国仮出願60/773,538に基づく優先権を主張する)は、これらの制限を分析し、触媒ナノ粒子の使用によって任意の好適な先駆物質から改善されたメソポーラスな炭素を生産する新規な方法を開示する。
【0007】
電気化学キャパシター、富士重工業LiCのようなハイブリッドキャパシター/バッテリー装置および非対称バッテリーをはじめとする用途については、誘導されるメソポロシティを好適に調節することにより、装置の要求(エネルギー密度、出力密度、電解質システム)に応えるようにメソポーラス炭素を正確に作製することは望ましい。
【0008】
内部ポロシティによって作られた表面領域が濾過炭素にとって重要である一方、先行技術は外表面の影響を見落としていた。マイクロポロシティがふるいをかけるため、特定のキャパシタンスにとって外側の真の表面は特に重要である。所定の幾何学的なオブジェクトについて真の外表面を増加させることは、定義からルゴシティ(rugosity)を増加させることを意味する。活性炭粒子またはファイバーの外表面は定義から電解質にアクセス可能であるが、内側ポアの実質的な部分は、マイクロポアの篩い効果のために確率的に利用できない。PCT/US2007/004182を参照。従来は、活性炭の内部ポア表面に比較して非常に小さいと考えられていたので、活性炭の真実の外面についての議論は炭素の電気的な科学文献において事実上行われていなかった。3つの顕著な例外のうちの2つには方法論的な欠陥がある。
【0009】
第一に、Electrochimica Acta 41(10):1633−1639(1996)においてShiは、すべてのメソポアが外側にあると仮定した。これは、真実でないと容易に証明される。例えば Chem.Mater.8:454−462(1996),J.Electrochem.Soc.149(7):A855−A861(2002),およびElectrochem.and Solid State Letters 6(10):A214−A217(2003))を参照。さらに、この仮定を用いてShiが導いたある結果は、彼自身が十分に説明できなかった。そこからの推定は問題がある。Carbon 43:1303−1310(2005)を参照。
【0010】
第二に、J.Power Sources 154:314−320(2006)において、Stockliが活性炭の異なるサンプルセットについて多変数の統計分析を使用して、Shiを解釈し直すことを試み、部分的に成功した。Stockliは、Brunauer,Emmett and Teller法(BET法)を使用して測定された外表面積が「非多孔性の」カーボンブラックのそれに関連があると仮定した。しかしながら、参照の Vulcan XC 72 カーボンブラックのBET表面積が約254m/g(製造者の規格)であり、約259m/g(J.Power Sources 154:314−320(2006)におけるBET)から、約240m/g(Carbon 43:1303−1310(2005)におけるBET)であるのに対し、これらの文献において密度関数理論(DFT)によって測定された表面積は、それぞれ132m/gおよび119m/gに過ぎなかった。完全な硬い同一の球体のランダムパッキングの理論的な幾何学的な表面積は、D50が30nmであり、1.80g/ccとの製造者の規格のVulcan XC 72についてBernalの充填限界の0.635を使用すると、111m/gであり、DFT評価に合理的に近い。したがって、BETカーボンブラック表面積は約2倍になる誤差を生ずる。理論によって制限されるものではないが、これは恐らくナノ球体間のメソポア空間中の毛管凝縮によると考えられる。CondonのSurface Area and Porosity Determination by Physiosorption,(1998)、ページ160−169,およびAdsorption 4:187−196(1998)を参照。したがって、相対的なBET外表面積の評価は疑わしい。Stockliの統計的に導かれた外側表面の寄与率は、より小さい外側についてわずかに0.124(式5)から0.134(式10)であり、より大きな内側表面については少なくとも17.7(式5)から17.4(式10)の、より大きな寄与率を有する。事実、疑わしい外側(下側)の評価は、従来の考えによれば、内側表面からほとんどのキャパシタンスが生ずることを示唆する多変数の方程式に帰着した。
【0011】
第三に、Proceedings of 16th ISDLC:(電子版でのみ利用可能な特別レイトセッション,ページ18−20)(2006)で、アサヒリサーチラボのイケダが、プロピレンカーボナイト中のBFアニオンの19F核磁気共鳴(NMR)を使用し、作動中のEDLC装置中の吸着された陰イオンの炭素位置をキャラクタライズした。これは、低温電導度を改善するための添加剤と、プロピレンカーボナイト溶剤の破壊耐電圧に関する研究の一部だった。米国特許6,879,482を参照。この実験は、内部のポア表面へのアクセスの可能性に依存して(平均ポア径の増加により示された)、1.5nmよりも大きな非常に大きな平均ポアサイズにおいて、全くアニオンが吸着されていない状態から、約半分のアニオンが内部に吸着された状態にあることが確実に示された。試験された電解質システムにおいて、陰イオンは2つの中でより小さい;従ってより大きな陽イオンはより少なくアクセスし、運動がコントロールされている。例えばCarbon 40:2613−2626(2002)を参照。陰イオンの少なくとも半分、したがって運動がコントロールされた陽イオンの半分よりも多い陰イオンが、外側表面上に吸着されていることがNMRによって示された。これは従来の思考と比較して、驚くほど高い値である、しかしPCT/US2007/004182中の開示と完全に一致している。それは、活性炭の外側表面の重要性を示す直接的な実験の証拠である。
【0012】
真実の外側表面は、典型的な活性炭において、全体の比キャパシタンスの半分以上を生じさせる。したがってルゴシティを増加させることにより外側表面を増加させることは、エレクトロカーボン(electrocarbon)のエネルギー密度の改善にとって重要である。
【0013】
外側表面の重要性の直接の結果として、炭素の所定の体積/質量当たりで、より小さな粒子はより大きな外表面を有するという、ユークリッド幾何学に直接従う。
より小さな粒子状物質の利用の例として、カーバイド由来の炭素(CDC)は、殆ど全体にわたってマイクロポアの分布を有しているにも拘わらず、120−135F/gの高い比キャパシタンスを有している。CDCは、典型的には約1−3ミクロン(例えばJ.Power Sources 133:320−328(2004)、およびJ.Power Sources 162:1460−1466(2006)参照、および約6ミクロン(例えばElectrochem.and Solid State Letters 8(7):A357−A360(2005)参照)という狭い粒度分布を有している。それらは、従ってすべての炭素の中で最も高い容積エネルギー密度(volumetric energy density)を有している(例 Proceedings of 15th ISDLC:250および259(2005)参照)。それに比較して、商業用のエレクトロカーボンは、典型的には約8ミクロンのD50、メディアン粒子の最大4倍の大きさとより大きな全体としての多分散性、単位体積/質量当たりで比例して少ない外側表面を有している。(例えば米国特許6,643、119、およびProceedings of 16th ISDLC:141(2006)参照)。
【0014】
選ばれた炭素活性化方法はルゴシティに影響を与え、したがって、生じる材料の比キャパシタンスにも影響を与える。アルカリ活性化は、生じる材料の細孔径分布および平均孔径が他の活性化プロセスのものとは本質的に異ならないという事実にもかかわらず、よりよい比キャパシタンスを生ずることが従来知られていた。例えば、米国特許5,877,935は、ポアの少なくとも40%が1〜2nm(すなわちミクロポーラス)である物質について記載する。活性炭の大規模なサンプルの詳細な分析については、例えばElectrochemica Acta 41(10):1633−1639(1996),J.Power Sources 74:99−107(1998)、およびJ.Power Sources 154:314−320(2006)を参照。理論によって拘束されるものではないが、ミクロポアの優位にもかかわらずアルカリ活性化からの向上された使用可能な表面の1つのメカニズムは、増加したルゴシティである。Carbon 40:2613−2626(2002)の図1、およびJ.Electrochem Soc.151(6):E199−E205(2004)のページE201の付随する議論の図2を参照。これらのミクロンスケールの活性炭粒子状物質の拡大イメージに基づいて、少なくとも幾分かのアルカリ活性化ルゴシティは、数百ナノメートルのオーダーの比較的大きな物理スケールである。異なる活性化の回数および異なる活性化温度でのルゴシティの視覚的な相違は、測定される比キャパシタンスにおける観察された変化と相関する。メソポア表面もメソポア体積も、総表面積も、平均ポアサイズの増大も、比キャパシタンスの観察された変化に相関しない。
【0015】
主に物理的なスケールでの相違だが、従来の物理的な活性化はルゴシティも生成する。割られたそれぞれの炭素サブユニットまたは100nmよりも小さな寸法の小さな凝集体は、DOE project DE−FG−26−03NT41796(Lehigh University 6/2005)により画像化された。等しく重要なのは、水蒸気または二酸化炭素によって引き起こされた、それぞれの炭素サブユニットの分子レベルエッチング(例えばアルカリ活性化でのような炭酸カリウム粒子状物質の形成なしに)である。これは1nmから約10−15nmのスケール、または最大で個々の炭素サブユニットの寸法までの炭素の外側表面の酸化的点食に帰着する。たとえばCritical Reviews in Solid State and Mat.Sci.30:235−253(2005)参照。そのようなサブユニットスケールの活性炭表面点食は高解像度透過型電子顕微鏡(HRTEM)を使用して画像化された。例えばEconomy,Proceedings of the 8th Polymers for Advanced Technology International Symposium,Budapest 11−14 Sept.2005を参照。同じ寸法スケールの同様の酸化点食は、表面処理された蒸気成長炭素繊維(VGCF)上で原子間力顕微鏡使用(AFM)を使用して、直接測定された。処理は未処理のVGCFに対して17倍以上もルゴシティを増加させる。Carbon37(11):1809−1816(1999)を参照。
【0016】
研究者は、以前活性化プロセスを組み合わせることを試みたが成功しなかった。例えばCarbon 45(6):1226−1233(2007)は、1226−1233(2007)が、標準的なエレクトロカーボン(例えば、米国特許6,643,119を参照)であり、株式会社クラレにより製造されるRP−20(以前はBP−20として指定されていた)のメソポロシティを改良しようとする新しい試みを報告している。以下、タルト報告と呼ぶ。タルト報告は、2.5時間、950℃から1150℃までの高温の水蒸気による第二の活性化について議論する。報告によれば、1050℃では、この第二の活性化は総ポア体積をほぼ2倍にし、2倍以上のメソポロシティとし、BET表面積を65%増加させた。これらの測定値の各々は従来技術では望ましく、また増加は大きい。しかし、タルト報告の表2および図7の中で与えられた作動する2電極のEDLC装置についての結果はがっかりするものであり、RP−20に比較して炭素比キャパシタンスにおける著しい改良が見られなかった。
【0017】
1工程で化学的活性化と物理的な活性化をともに組み合わせた、別の従来の努力(ルゴシティではなくメソポロシティに注目した)は、よりよい材料を生産しなかった。台湾の研究グループは、同時のKOHでの化学的活性化および二酸化炭素での物理的活性化の結果を公表した。Journal of Power Sources 159(2):1532−1542(2006)(以下”JPS 2006”)によれば、モミ材製木炭に関する結果が記載された。Electrochimica Acta 52(7):2498−2505(2007)(以下”EA 2007”)には、ピスタチオの殻の木炭に関する結果が記載された。両方の報告において、活性化されていないが炭化された炭は、等量(1:1)のKOHと混合され、ついで不活性の窒素の下で、780℃で60分間活性化された。従来の通りに、不活発なNの下でのKOH活性化は、米国特許5,877,935および米国特許7,214,646に記載されるように、すでに炭化された材料の上で行われた。60分の処理時間の途中に、二酸化炭素を直後に導入するものから、全く導入しないものまで区分けされた。この処理により、60分間KOHのみで活性化された材料、および15、30あるいは60分の期間の間さらに同時の二酸化炭素活性化を行った材料が得られた。両方の文献において述べられているこの処理の目的はメソポアの割合を増加させることだった。「KOH活性化は炭をエッチングしてミクロポアを形成するために主として使用され」、「VmesoがCOガス化時間に正比例する」からである。文献中のこの結合した活性化での最も高い報告された比キャパシタンスは、電解質として硫酸を使用した時の、197F/gだった。比較として、単純な標準Kuraray RP(BP)15の商用規格は、硫酸中の236F/gの比キャパシタンスである。両方の文献はさらに、合計のBET表面積およびメソポロシティの実質的増加にもかかわらず、増加するCO時間とともにキャパシタンスが実際に減少したという異常で失望させる結果を見いだした。JPS 2006は、明らかに結果を異常現象および酸化還元反応の偽キャパシタンスの因果関係に帰着されると考えた。EA 2007も同様の議論を含んでいた。両方の文献は、次により長い期間の同時のCO活性化の、これらの推測される表面官能基の部分的除去における潜在的な有用性について議論する。それらが固有抵抗を増加させるかもしれないし、望ましくない大きな自己放電に帰着するかもしれないからである。しかしながら当業者は、JPS 2006の図6の定電流での充電および放電プロットが直線(サイクリックボルタモグラムが電解質破壊に起因する酸化還元反応のピークを示す最大電圧の近くをのぞいて)であり、酸化還元反応の偽キャパシタンスは殆ど含まれていないことを見いだすであろう。むしろ減衰は、同時活性化の期間の増加とともに生ずる表面ルゴシティの劣化に原因を求めることができる。同様の減衰はKOH単独での活性化の増加について推論することができる。Carbon 40:2616−2626(2002)およびJ.Electrochem.Soc.151:E199−E205(2004)を参照。
【0018】
別の炭素についての考察は化学的純度である。ある重大な濾過用途(例えば医薬品)では、炭素不純物は、望ましくなく濾液へ浸出するかもしれない。したがって、活性化されたまま、および酸洗浄して不純物を除去した少なくとも2つの等級で活性炭が販売されることは一般的である。残余の金属イオン不純物が望ましくないファラデー電気化学の酸化還元反応シャトルを誘導するかもしれないことは従来から考えられ、それによって、自己放電を増加させて、時間とともに貯蔵電荷を減少させる。例えばFujinoら、Proceedings of the 15th International Seminar on Double Layer Capacitors、ページ79−80(2005)を参照。そのような電気化学的不純物を削除する従来の手段は酸洗浄である。例えばJ.Electrochem.Soc.149(7)A855−A861(2002)を参照。
【0019】
別のオプションは精製された先駆物質を使用することである。例えば、米国特許公開2005/0207962(精製された炭水化物先駆物質、例えば精製されたスクロースについて)、あるいは米国特許6,660,583(化学的に精製された合成石油ピッチ先駆物質について)を参照。砂糖または石油誘導体のような精製された先駆物質は、バルクの形でしばしば得られる。より小さな粒子状物質は相対的に外側表面積を増加させる。より小さな使用可能な粒径を達成するために、希望の最終粒度分布にバルク材料をミルにかけなければならない。これは物質のとの扱いの便宜およびコストの理由で活性化の後に従来行われていた。例えば米国特許7,214,646を参照。このプラクティスは、活性化された外表面より少ないルゴシティを有する外側の劈開表面を有する粒子状物質(先のより大きな活性化粒子のミルにかけられたフラグメント)に帰着する。高解像度表面画像比較については、例えばEconomy,Proceedings of the 8th Polymers for Advanced Technology International Symposium,Budapest 11−14 Sept.2005を参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許6,660,583
【特許文献2】米国特許公開2005/0207961
【特許文献3】米国特許5,877,935
【特許文献4】米国特許5,626,977
【特許文献5】米国特許5,898,564
【特許文献6】米国特許6,297,293
【特許文献7】米国特許公開2004/0091415
【特許文献8】米国特許6,737,445
【特許文献9】PCT/EE2005/000007
【特許文献10】米国特許公開2006/0165584
【特許文献11】米国特許6,491,789
【特許文献12】米国特許6,934、144
【特許文献13】米国特許公開2005/0025974
【特許文献14】PCT/US2007/004182
【特許文献15】米国特許6,643,119
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Norit Nederland BVによるISDLCの議事録、第16号、95(2006)
【非特許文献2】Carbon 45(6):1226−1233(2007)
【非特許文献3】Journal of Power Sources 159(2):1532−1542(2006)
【非特許文献4】Electrochimica Acta 52(7):2498−2505(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の範囲は特許請求の範囲によって定義され、この要約内の記載によってはいかなる意味においても影響されない。
【0023】
これらの問題を扱うために、高エネルギー密度を有する活性炭を製造する方法についての必要がある。さらに高エネルギー密度を備えた活性炭を産出する先駆物質材料の必要がある。炭素におけるナノ粒子触媒メソポア形成の改良されたコントロールに対する一層の必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
したがって、1つの実施態様によれば、活性炭の製造方法が提供される。炭素前駆体材料はリンベースの化学溶液でコーティングされ、コーティングされた材料を形成し、該コーティングされた材料は物理的に活性化され、活性炭を形成する。
【0025】
別の実施態様では、活性炭の製造方法が提供される。グリーン炭素前駆体は、炭素と化学反応する化学溶液でコーティングされ、コーティングされた炭素材料を形成する。コーティングされたグリーン炭素材料が炭化される。コーティングされた炭素材料は、炭化工程の少なくとも1部で物理的に活性化され活性炭を形成する。
【0026】
別の実施態様では、活性炭の製造方法が提供される。活性化に先立って、炭素材料をミルにかけて前もって定義した粒径にして、粉砕された粒子状物質が形成される。粉砕された粒子状物質は活性化され、活性炭粒子状物質が形成される。
【0027】
別の実施態様では、活性炭の製造方法が提供される。炭素は、炭素または炭素前駆体として提供され、コーティングされる。炭素が炭素前駆体である場合、先駆物質は炭化され炭素を形成する。その後、炭素は、空気と不活性ガスの中で触媒的に活性化され、触媒的に活性化された活性炭が形成される。触媒的に活性化された炭素の質量は、炭素の質量より小さい。活性炭は触媒的に活性化された活性炭を水蒸気または二酸化炭素中で物理的に活性化することにより形成される。活性炭の質量は、触媒的に活性化された炭素の質量より小さい。さらに、活性炭はメソポロシティである。
【0028】
別の実施態様においては、活性炭の製造方法が提供される。この方法において、先に第一の活性炭は活性化され、第2の活性炭が形成される。ここで第二の活性炭のキャパシタンスは第一の活性炭のキャパシタンスよりも少なくとも20%大きい。
【0029】
別の実施態様では、活性炭を形成する方法が示される。この方法において、先に化学的に活性化された炭素は物理的に活性化され、第二の活性炭を形成する。ここで第2の活性炭のキャパシタンスは少なくとも80F/gである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、実施例1によるメソポーラスな複合活性化活性炭の細孔径分布を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例1によるメソポーラスな複合活性化活性炭の累積的な細孔径分布を示すグラフである。
【図3】図3は、比較例2による等価物活性炭と比較した、実施例1による複合活性化活性炭のサイクリックボルタモグラムを示すグラフである。
【図4】図4は、実施例2による複合活性化活性炭のサイクリックボルタモグラムを示すグラフである。
【図5】図5は、実施例2による複合活性化活性炭の定電流充電/放電グラフである。
【図6】図6は、実施例2による複合活性化活性炭のスイープ速度を変えたサイクリックボルタモグラムを示すグラフである。
【図7】図7は単独で活性化された炭素と、シーケンシャルに活性化された炭素とのサイクリックボルタモグラムの比較を示すグラフである。
【図8】図8は、シーケンシャルに活性化された炭素間のサイクリックボルタモグラムの比較を示すグラフである。
【図9】図9は、異なる処理温度でシーケンシャルに活性化された炭素のサイクリックボルタモグラムの比較を示すグラフである。
【図10】図10はシーケンシャルに活性化された炭素のサイクリックボルタモグラムを示すグラフである。
【図11】図11は、ミリング前の活性炭の粒度分布を示すグラフである。
【図12】図12は、ミリング前後の活性炭の粒度分布を示すグラフである。
【図13】図13は、ミリングの前後の活性炭間のサイクリックボルタモグラムの比較を示すグラフである。
【図14】図14は、粉砕された後の炭素の粒度分布を示すグラフである。
【図15】図15は、ミルにかけられた後の炭素の粒度分布を示すグラフである。
【図16】図16は、図14と15の活性化後の炭素のサイクリックボルタモグラム間の比較を示すグラフである。
【図17】図17は、金属アセチルアセトネートでのコーティングを利用して炭素繊維内に触媒的にエッチングし、ついで空気および不活性ガスで活性化するか、または水蒸気活性化した、しわの寄ったルゴース表面特徴を示す写真である。
【図18】図18は、金属アセチルアセトネートでのコーティングを利用して炭素繊維内に触媒的にエッチングし、ついで空気および不活性ガスで活性化した、しわの寄ったルゴース表面特徴を示す写真である。
【図19】図19は、金属アセチルアセトネートでのコーティングを利用して炭素繊維内に触媒的にエッチングし、ついで空気および不活性ガスで活性化し、ついで水蒸気活性化した、しわの寄ったルゴース表面特徴を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
活性炭を製造するための改良された方法が発見され、本明細書に記載される。改良された方法は、先駆物質の選択、先駆物質のミリング、メソポロシティのコントロール、触媒コーティングを利用する複合活性化および多段階活性化技術を含む活性炭の製造のいくつかの態様に注目する。当該技術分野の当業者は、向上されたルゴシティ、メソポロシティ、エネルギー密度および/または出力密度を備えた活性炭が、本明細書に記載された実施態様の1つ以上、あるいは示された実施態様の一部の組み合わせを利用して製造されることができることを理解するだろう。
【0032】
定義
【0033】
炭素に関して使用される用語「ルゴシティ」は、化学用語のIUPAC勧告、第二版(1997)中の定義に従って、実際の表面積と理論的な幾何学的表面積との間の差をいう。例えば、1枚の通常の紙やすりの砂側は紙側より本質的に高いルゴシティを有している。
【0034】
先駆物質と活性炭に関して使用される用語「粒子」は、直径で、約1ミクロンから100ミクロン以上までの分布を有する。そのような粒子状物質は、従来技術により物理的または化学的活性化の前および/または後に調製することができ、たとえば米国特許5,877,935、米国特許6,643,119および米国特許7,214,646に記載されている。
【0035】
ポリマーと炭素に関して使用される用語「ファイバー」は、例えば約20ミクロン未満の、および好ましくは約10ミクロン未満の直径のような細い直径の繊維材料をいう。そのようなファイバーは、公知の溶剤紡糸または溶融紡糸プロセス、または電気紡糸のような従来行われていなかった紡糸方法によって得ることができる。そのようなファイバーは、公知のミルにかけられた約150ミクロンの長さと15から30のアスペクト比、少なくとも7ミクロンの直径を有する炭素繊維のように、短い部分にされたときは、粒子も構成するものとして使用される。
【0036】
先駆物質材料のサイズに関して使用される用語「バルク」は、大きすぎて、キャパシターに商業的に利用することができない材料をいう。30ミクロンを越えるD50を備えた材料は「バルク」先駆物質物質であると考えられる。
【0037】
粒度分布を生じさせるために使用する用語「ミリング」は、粗い先駆物質材料からより細かい粉末を作るために使用される任意のプロセス、たとえばボールミリング、ジェットミリング、パンミリングなどをいう。多くのミリング法が公知であり、本明細書において使用することができる。
【0038】
炭素に関して使用される用語「メソポーラスな」は、IUPACの標準定義に従って合計の細孔容積の少なくとも約20%が、約2nmから約50nmのサイズを有するという孔径の分布をいう。
【0039】
炭素に関して使用される句「触媒的に活性化された」は、触媒的に制御された差別的な活性化(例えばエッチング)プロセスによって、炭素粒子またはファイバーの外側表面から内部へメソポアが形成された、炭素の多孔性表面をいう。いくつかの実施態様では、選択された平均サイズを有する金属および/または金属酸化物粒子が好適な触媒として作用し、金属酸化物の少なくとも一部は活性化プロセスの後に炭素内に、あるいは炭素上に残る。
【0040】
触媒粒子に関して使用される句「ナノ粒子」は、2nmより大きく50nm未満の平均粒径を有するナノスケール材料を意味する。
【0041】
反応性化学コーティングを利用する複合炭素活性化
【0042】
1つの実施態様では、活性炭を製造する方法の改良は、炭素と化学反応する化学物質で前駆体をコーティングし、高温で不活性ガス中で活性化し、ついで高温でエッチャントガスを利用する第二の活性化を行い、多孔質とすることを含む。
【0043】
繊維の先駆物質の直径およびしたがってその外部/内部比率は、活性前のファイバー自体によって決定される。繊維の先駆物質は、PCT/US2005/033178および米国特許公開2007/0178310によって示されるように、電極出力密度のための最適のアスペクト比へ、ミルにかけることにより容易にすることができるというさらなる長所を有する。ファイバーは希望の最終直径を既に持ち、単に希望の長さ分布へ折る必要があるだけなので、ファイバーのミリング/シービングプロセスは、かなり温和とすることができる。例えばJ.Applied Electrochemistry 35:1067−1072(2005)を参照。多くの先駆物質材料が、約7ミクロンから20ミクロンの範囲の細い直径で、商業的に粉砕された電気炭素の多くの直径と同様の直径の高純度の繊維に、溶融紡糸または溶剤紡糸することができる。例えば活性化されたKynol炭素繊維についてはCarbon 43:1303−1310(2005)を、活性化された溶融紡糸メソピッチ繊維についてはCarbon 43:1533−1545(2005)を、キャパシターの電極を作るのに使用される典型的な粒子分布については米国特許6,643,119を参照。
【0044】
先駆物質炭素は、石炭のような天然由来物質、加工品(木、ココナッツシェル、食品加工残留物(パルプ、ピッチ、バガス)あるいは砂糖)、様々な石油あるいはタールピッチ材料を始めとする十分な純度を有する任意の原料(酸洗浄のような付加的な化学的精製工程を備えても、あるいは備えなくともよい)から調製することができる。特に米国特許6,660,583に記載されたピッチ前駆体、、あるいはレーヨン、テンセル(登録商標)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)あるいはフェノールノボロイド(Kynol)のような合成高分子材料から調製することができる。実施態様はこれらに制限されず、炭化され活性化されることができる任意の化学的に適切な先駆物質も含む。
【0045】
得られる活性炭の比キャパシタンスは最終電極材料中へ、活性化中に引き起こされたルゴシティを部分的に保存することに依存する。1つの実施態様では、先駆物質物質は、ほぼ最終の所望の寸法に最初に処理される。バルク物質については、これは炭化/活性化プロセスに先立ち所望の粒径分布にミリングすることにより、多くの物質(たとえば砂糖およびメソピッチ)について達成できる。好ましくは、最終の物質直径分布は、好適な直径のファイバーに「グリーン」先駆物質を紡糸することにより達成される。任意に、前記の繊維はミリングすることができ、好ましくは米国特許公開2007/0178310により、最終の所望のアスペクト比粒子サイズ分布(得られた開裂面は大きく考慮されていない)への活性化の後に繊維をミルにかけることができる。
【0046】
1つの実施態様では、プロセスは、一般に3工程で進む。別の実施態様では、グリーン体でない先駆物質が使用される場合、プロセスは一般に2工程で進む。第一工程では、グリーン炭素前駆体は、好適にはミルにかけられ、または紡糸され、炭素と化学反応する化学溶液でコーティングされ、活性化の下にルゴシティおよび多孔質性を引き起こす。グリーン体先駆物質は好ましくはレーヨン繊維である;しかしながら、上記のように他の先駆物質炭素も使用されることができる。炭素と化学反応する化学溶液は好ましくはリンベースの化学溶液である;しかしながら、ヒ素ベースの溶液、塩化亜鉛のような金属塩、並びに水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムのような塩基も使用されることができる。塩と塩基は、追加の活性化後洗浄工程により除去される必要がある場合がある金属性の残留物を残すことがある。したがって、リン関連物質が好ましい。1つの実施態様では、物質は、所定期間、反応性化合物の浴の中に沈められる。物質をコーティングした後に、物質はオーブンで乾燥し、または空気中で乾燥することができる。
【0047】
第二の工程で、化学的にコーティングされたグリーン体先駆物質は、具体的物質について公知の炭化法によって炭化される。好ましくは、化学的にコーティングされた先駆物質は不活性雰囲気中で高温を使用して炭化される。高温は、約500℃と約1100℃の間の温度である。1つの好ましい実施態様では、不活性雰囲気は安価な窒素である。しかしながら、他の実施態様では、他の不活性ガスが使用されてもよい。ある程度の化学活性化が、この工程の間に生じる。
【0048】
任意に、メソピッチまたは石炭のようなグリーン体でない先駆物質が使用される場合、グリーン体でない先駆物質は好適にミルにかけられ、炭素と化学的に反応する化学溶液でコーティングされ、上記の第一工程で記載されたように活性化の下に多孔質性を引き起こす。したがって、先駆物質がグリーン体でない先駆物質である場合、炭化工程は必要ではない。
【0049】
次の工程で、複合活性化が、エッチャントガスの導入によって遂行される。エッチャントガスは典型的には250℃以上の温度で炭素の酸化を引き起こすものである。エッチャントガスは好ましくは二酸化炭素または水蒸気である;しかしながら、酸素(窒素フロー中の空気の比率としての)または一酸化炭素が使用されてもよい。グリーン体先駆物質が使用される1つの好ましい実施態様では、化学的コーティングを施した先駆物質が所定期間の後に炭化された後、エッチャントガスは導入される。別の実施態様では、エッチャントガスは炭化する工程全体の間、導入される。グリーン体でない先駆物質が使用される実施態様では、グリーン体でない先駆物質は、エッチャントガスの導入に先立ち、コーティングされ、所定期間、高温に熱される。
【0050】
エッチャントガスは、グリーン状態からの得られる製品の質量減少が20%から85%、より好ましくは30%から70%、さらに好ましくは40%から65%になるまで導入される。好ましい実施態様では、エッチャントガスは2時間未満で導入され、より好ましくは1時間半未満である。得られる物質は、炭化/活性化に先立った化学物質コーティングのない比較物質よりも、高度に活性化された表面、より高いメソポロシティ、より高い比キャパシタンスを示す。
【0051】
当該技術分野の当業者は、比較的短期間で、炭化および活性化の完全な処理を遂行できることを認識するであろう。炭化と活性化の完全な処理時間は約3時間またはより少ない時間であり、より好ましくは約2時間半以下でありえる。非グリーン体先駆物質が使用される場合、活性化のための処理時間は約2時間以下、またはより好ましくは約1時間またはそれ以下でありえる。
【0052】
次の比較例は較正されたMicrometrics ASAP 2010で測定された。
【0053】
比較例1:
【0054】
反応性化学物質でコーティングされていない通常のレーヨン繊維のグリーン体先駆物質(ノースアメリカレーヨン社、Bright 4242,1630/720/2oz.フィラメント,以下「レーヨン」と呼ぶ ) を、窒化下850℃で60分間炭化した。その後、物質は800℃で30分、水蒸気を使用して、物理的に活性化された。活性化された物質は、90%の質量減少を示し、1129m/gのBET表面積、および0.44564cc/gの合計細孔容積(以下「TPV」)および90.8%のDFTミクロポア割合を示した。大きな質量減少(物質の10%だけが残った)、比較的低いBET表面積およびTPVは、この期間のそのような公知の水蒸気活性化方法がこの物質で有用ではないことを示唆する。
【0055】
比較例2:
【0056】
比較例1のレーヨンは850℃で窒素下、60分間炭化され、次に、85O℃で60分、二酸化炭素を使用して物理的に活性化された。活性化された物質は、18.7%だけの質量減少を示し、760m/gのBET表面積、0.3269cc/gのTPV、93.6%のDFTミクロポア割合を示した。低い質量減少、低いBET表面積、および低いTPVは、1時間のそのような公知の二酸化炭素活性化方法がこの物質で有用ではないことを示唆する。生成物の測定された比キャパシタンスは、わずか14.1F/gであると分かった。これはあまりにも低く、有用なエレクトロカーボンではない。
【0057】
実施例1:
【0058】
比較例1のレーヨンは、30分間、5%の燐酸二アンモニウム((NH4)HPO、以下「DAP」)水溶液に沈められた。DAPは、植物肥料および難燃剤として使用される一般的なリン誘導体である。DAPをコーティングしたレーヨンはついでオーブンで乾燥された。DAPでコーティングされたレーヨンは850℃で60分間、窒素下で、炭化/活性化され、ついで850℃で60分間、200mL/分でCOを加えることにより複合活性化された。活性炭質量減少は83.7%だった。BET表面積は2452m/gで、TPVは1.12943cc/gだった。また、ミクロポア割合はわずか44.8%だった。物質は55.4%のメソポーラスだった。
これは比較例1より少ない質量減少であるが、まだ非常に高い表面積(2倍以上)、TPV(2倍以上)、およびメソポア体積および表面積(2倍以上)である。この物質は二酸化炭素を単独で利用した比較例2より大きい総表面積の合計を有している。そして重要なことは、それぞれ図1と図2に示されたポアサイズ分布と累積的なポアサイズ分布から理解されるように、望ましいメソポアの多さである。この活性炭は、単純にコーティングし、単一の温度での約2時間の総処理時間で作られた。そのような炭素は濾過システムにおいてメソポーラス濾過炭素として高い利用性を有している。
【0059】
さらに、実施例1の炭素は優れたエレクトロカーボンである。複合活性化されたファイバーは、粒子状物質へ粉砕され、電極にされ、有機電解質として、炭酸プロピレン溶剤中のトリエチルメチルアンモニウムフルオロボレート(1.8モルTEMA/PC)を使用して、二重層キャパシター装置を作動させる2つの電極としてテストした。20mV/sのスイープ速度で測定された作業装置のサイクリックボルタモグラム(CV)は、図3に示される。それは、1ボルトで104.1F/gの優れた比キャパシタンスを示し、望ましい直線/平行四辺形であって、電気化学二重層キャパシタンスへの理想型である。
【0060】
比較例2および実施例1の結果は、以下の表1に要約される。また、比較例2および実施例1のサイクリックボルタモグラムは図3で比較される。
【0061】
【表1】

【0062】
実施例1のレーヨンは、約20ミクロンの比較的大きな直径を有し、濾過炭素には好適であるが、エレクトロカーボンにはそれほど望ましくない。付加的な電気化学的に有用なしわの寄ったルゴースな外側表面のためには、より小さな直径の粒子状物質または繊維が望ましい;レーヨン繊維は、0.9デイール(またはdtex)で、10ミクロン以下の直径に容易に紡糸される。繊維工業では、1デニール以下の材料はマイクロファイバーとして知られている。
【0063】
実施例2:
【0064】
Lenzing AG社からののテンセル(登録商標)レーヨン繊維は12ミクロン(テンセルH100119、dtex 1.7)の望ましいより小さな平均直径を備え、実施例1の方法によって複合的に活性化されてエレクトロカーボンを生成した。グリーン体ファイバーからの質量減少は63.7%だった。BET表面積は2134平方メートル/グラムだった。細孔容積の合計は0.85082cc/gだった。また、メソポア割合は19.3%だった。この物質の1.8モルTEMA/PC電解質を備えた作業装置中の比キャパシタンスは1ボルトで133.9F/gであり、図4に示されるような理想に近いCVを有していた。比較例2および実施例2の結果は、以下の表2に要約される。
【0065】
【表2】

【0066】
定電流充電放電試験は、5A/gまでの高電流密度で実施例2の物質で作られた装置について行なわれた。これらのテストの結果は図5に示される。このテストは、高い電流密度においてさえ、真の二重層キャパシタンスが実施例2の複合活性化された物質によって示されることを当業者に示す。チャージ/放電曲線の実質的な直線性は真の二重層キャパシタンスを示す。
【0067】
サイクリックボルタモグラムも、100mV/sの高いスイープ速度で、実施例2の物質で作られた装置に実行された。これらのテストの結果は図6に示される。このテストは、実施例2の複合活性化材料は、ほとんどの他の活性化された炭素とは異なり、出力密度、高いキャパシタンス、中性電解質中での迅速な電圧変化の下においてさえ直線/平行四辺形形のほぼ理想的な形を維持することを当業者に示す。当業者は、本質的に直線の形は物質が本質的に高出力な電力であることを示すことを認識する。
【0068】
実施例3:
【0069】
実施例2のテンセルレーヨン繊維dtex 1.7は実施例1および2でのように複合活性化された。しかしながら、二酸化炭素での活性化は850℃で75分に増加された。グリーン体ファイバーからの質量減少は、71.3%(実施例2よりも長い活性化時間による)だった。得られたBET表面は、1グラム当たり2307平方メートルだった(実施例2より8%だけ大きい)。細孔容積の合計は、1.07cc/g(望ましく実施例2より25%多い)だった。また、メソポア割合は45%(望ましく実施例2より25.7%多い)だった。得られた物質の比キャパシタンスは、1.5ボルトチャージ、20mV/sで160.1F/g、および1.0ボルトチャージで156.5F/gだった。直流定電流充電放電カーブは、2.5アンペア/gでは真実の二重層容量を示す。また、インピーダンス分光法は、非常に高いエネルギー密度にもかかわらず優れた質量輸送および非常に高い出力密度を示して、ナイキストプロット上のワールブルグインピーダンスの驚くべき小さな領域を示した。
【0070】
多くの炭素前駆体が実施態様の中で利用されることができるが、レーヨンはいくつかの特別の長所を有している。レーヨンは木材パルプから作られた、再生セルロースである。そのため、それは最も安い種類の合成繊維の1つである。さらに、それは既に化学的に純化されており、したがって酸洗浄工程を回避することができるので、レーヨンは好ましい先駆物質である。クラッシング(crushing)と、任意に空気分級のみが所望の長さ分布を達成するために必要とされるので、所望の粒子サイズを達成するために従来の潜在的に破壊的なミリングをレーヨンは要求しない。
【0071】
再生セルロース生成物は、いくつかの方法で作ることができる。3つのより一般的な方法は酢酸セルロースプロセス(アセテート布帛)、1894年に開発されたビスコースレーヨンプロセス、(米国のレーヨン布帛、および他の国でのビスコース布帛)、そして最も最近のN−メチルモルホリンN−オキシド(NMMO)を使用するリヨセルプロセス(テンセル(登録商標)繊維)である。プロセス間の違いは、木材パルプセルロースのための溶剤、および紡糸後のファイバーの固体化のための反応物である。
【0072】
生じる再生されたセルロース生成物は異なる特性を有している。リヨセルはフィブリル化を示す。そこでは、ナノファイバーが主ファイバーから突き出て、経時的に布帛のピリングに帰着する。フィブリルのミクロ構造は、主ファイバーの構造から明らかであり、ビスコースが示さない特徴を有する。H.Fink,P.Weigel,H.J.Purz,J.Ganster,Structure formation of regenerated cellulose materials from NMMO−solutions,Prog.Polym.Sci.26(2001)1473,図18を参照。リヨセル中のラメラ状のセルロース結晶束は、プロセス条件に依存して直径25nmから50nmの間にあり、これはエレクトロカーボン活性化には望ましい。したがって、等価な炭化および活性化条件の下では、リヨセルファイバーはグリーン体先駆物質の固有の微構造のためにビスコースファイバーよりわずかに高い比キャパシタンスを与える。
【0073】
実施例4:
【0074】
実験のために、Lenzingから、1.0dtex(9−10ミクロン)MicroModalファイバー(ビスコース)、および0.9dtex(8−9ミクロン)MicroTencel(リヨセル)の2つのファイバーが得られた。どちらもオーストラリア製である。同一の複合的な活性化条件(5%のDAP中で30分浸漬、オーブン乾燥、850℃で1工程で安定化し炭化し、その後、850℃、200ml/分でCOで90分間活性化)で活性化した。MicroModalは116F/gで、20mV/sのスイープ速度で、CVs上で1.5Vで測定したところ、MicroTencelは128.7F/gであった。先駆物質としてのリヨセル微構造の利点を実証した。
【0075】
実施例5:
【0076】
dtex(繊維直径、望ましくは小さい)の外側表面への影響、および対応する比キャパシタンスへの影響を示すために、0.9、1.25、1.4および1.7 dtexのテンセルファイバーが同じ複合的な活性化条件(5%のDAP中で30分浸漬、オーブン乾燥、850℃で1工程で安定化し炭化し、その後、850℃、COで90分間活性化)を利用して処理された。同一に作られたセルの測定されたキャパシタンスは表3に示される:
【0077】
【表3】

【0078】
したがって、1つの実施態様では、より細いレーヨンは望ましく、炭素前駆体としてより細いリヨセルはより望ましい。
【0079】
広く利用可能な高純度の、ファイバー先駆物質は向上された活性炭を生産するために、化学・物理的手段を同時に使用して、一工程複合活性化方法を利用することができる。この実施態様では、120F/g以上の比キャパシタンスが、一工程複合活性化工程で、高純度非炭素化先駆物質から得ることができる。この実施態様は単純化されたプロセスを利用し、設備稼動率を改善し、エネルギーコストを低下させて、先駆物質のための酸洗浄精製工程を除去する。
【0080】
上記の例から、当該技術分野の当業者は、先駆物質の化学的条件、コーティングの化学物質濃度、炭化時間および温度、並びに複合的な活性化時間、温度および反応ガス濃度を変えることによって、異なる有用な特性を有する広範囲の活性炭がこの方法により簡単に速く作られることができることを、過度の実験作業を必要とすることなく認識するであろう。
【0081】
シーケンシャルな炭素活性化
【0082】
別の実施態様において、化学的に活性化された別のシーケンシャルな活性化プロセスを、好ましくは第一の活性化として標準的なリン酸手段を使用して行い、連続して物理的な手段を使用して第二のシーケンシャルな活性化を、好ましくは水蒸気で行い、有機電解質中100F/g以上を有するエレクトロカーボンを生産する。
【0083】
標準的な(リン酸)化学的活性化と、引き続く適度な温度での適度な期間の物理的(たとえば水蒸気またはCO)活性化は、安価な炭素であって、電気化学的にアルカリ活性化材料、および標準的なRP−20と同様の性能を有し、単純にリン酸で活性化された炭素や単純に物理的に活性化された濾過用炭素よりも実質的に良好である。
【0084】
従来のリン酸活性化濾過用炭素、たとえばNoritによって生産されたものは、約500℃で「数時間」を要して製造されたのに対し、水蒸気活性化エレクトロカーボンは800℃以上で「数時間から数日」を要した。それに比較して、このシーケンシャル活性化プロセスの総処理時間は、水蒸気により活性化されるエレクトロカーボンよりも短いだけでなく、アルカリ薬品活性化(例えば、500℃から1000℃で20時間で、最良の材料は800℃から900℃で、3から5時間の活性化を開示する米国特許5,877,935を参照)よりも短く、一般により低温であり、追加の工程が必要ない(例えば前または後アルカリ活性化工程についての米国特許7,214,640を参照)。低減された処理時間は、エレクトロカーボンのコストを低下させるのに有用である。
【0085】
先駆物質炭素粒子またはファイバーは、石炭のような天然由来物質、植物(木、ココナッツシェル、食品加工残留物(パルプ、ピッチ、バガス)あるいは砂糖)、様々な石油あるいはタールピッチ材料を始めとする十分な純度を有する任意の原料(酸洗浄のような付加的な化学的精製工程を備えても、あるいは備えなくともよい)から調製することができる。特に米国特許6,660,583に記載されたピッチ前駆体、あるいはポリアクリロニトリル(PAN)またはポリ塩化ビニリデン(PVDC)のような合成高分子材料から調製することができる。1つの実施態様では、ビスコース法を使用して作成されたレーヨン布帛または繊維が利用されることがある。別の実施態様では、リヨセルプロセスによって作成されたテンセル(登録商標)布帛または繊維が利用されることがある。先駆物質は、ここでの記載および他の実施態様に記載された方法または考察の任意のものを利用して選ばれることができる。実施態様は、炭化および活性化できる任意の化学的に好適な先駆物質を利用することができる。
【0086】
先に議論されたように、アルカリ活性化により生じる物質の細孔径分布および平均孔径が他の活性化プロセスのものとは本質的に異ならないという事実にもかかわらず、向上された比キャパシタンスを与えることが従来知られていた。対照的に、従来の物理的な活性化は、主に異なる寸法のルゴシティを生産する。活性化プロセスの2つの異なる種類からのいくつかの表面のルゴシティ特性は、少なくとも1桁異なる。シーケンスの順番がオーダーが小さなものの前に大きなものを行うのであれば、ルゴシティを向上するためのシーケンシャルな活性化により、これらの外部特徴を組み合わせることができる。理論によって拘束されるものではないが、このシーケンシャル活性化プロセスは、ルゴシティだけではなく、使用可能な表面の合計またはPCT/US2007/004182に定義されるような「隣接外表面(proximate exterior)}をも向上させる。事実、2つの異なる活性化プロセスによって作成された2つの別個のルゴシティのサイズ寸法は、比較的より大きなサイズの隆起(bump)およびホール上に、またはその中に、比較的より小さなサイズの隆起およびホールを作成するために連続して使用できる。1つの実施態様では、100nmよりも大きな隆起およびホール上、またはその中に約10nmのサイズの隆起およびホールを置くことにより、大きさが少なくとも1桁異なるルゴース形状が組み合わされることができる。異なる実施態様では、物理的な活性化プロセスによって作成される約1nmから約100nmの間の隆起およびホール形状が、化学物質活性化プロセスによって最初に作成される、約100nmより大きな平均サイズの隆起とホール形状の上に作成できる。シーケンスは作成されたより多くの形状を破壊しないように、正確な順序で、適切な温度および期間で行われなければならない。
実施態様のこの説明から、化学物質活性化と引き続く化学物質活性化、または物理的活性化と引き続く物理的活性化は、一般にこの驚くべき結果を生まない。また、第一の活性化特徴を腐食することがある極端な第二の物理的な活性化条件も驚くべき結果を生まない。
【0087】
第一の活性化は好ましくは化学的手段を使用する;しかしながら、他の活性化プロセスも使用されることができる。当業者は、所望の活性化を達成するために、任意の具体的な炭素前駆体および活性化プロセスのための適切な時間および温度に精通しているであろう。例えば、具体的な炭素前駆体およびプロセスのための適切な時間および温度の詳細な議論のためには、米国特許公開6,660,583、米国特許公開2005/0207961およびProceedings of 16th ISDLC:95(2006)が参照される。所望の活性化は、好ましくは活性化が容積キャパシタンスをもはや増加しない点で止められる。より低い活性化温度およびより短い活性化時間が好ましい。
他の活性化特性がさらに望ましいことがある。好ましくは、単純なリン酸活性化が第一の活性化プロセスで使用される。第一の活性化は、物質の表面の本質的な部分の上に約100nmより大きな平均サイズを有する隆起とホールが存在する表面を作ることはさらに好ましい。
【0088】
第2の活性化は、さらに粒子または繊維のルゴシティ、隣接外部、内部炭素のメソポロシティおよび総表面積を増加させるために好ましくは物理的な活性化を使用する。物理的な活性化は、単純な水蒸気活性化、二酸化炭素活性化または他の好適な物理的な活性化プロセスによって遂行されることができる。第2の活性化は、先に活性化された物質の表面の本質的な部分の上に、約100nm未満の平均サイズを有する隆起とホールの形成に好ましくは帰着する。好ましくは、適度な水蒸気または二酸化炭素活性化が使用される。適度な活性化だけが第一の活性化によって作成された表面特徴の破壊を防ぐために好まれる。この点では、第2の活性化の最高温度および時間は、第2の活性化プロセスによる対象物質の活性化のための既知の温度および時間パラメータに従って選択されることができ、選ばれたパラメータで容積比キャパシタンスがもはや増加しない点まで活性化を行う。その点を超えての活性化は、第一の活性化によって作成された形状を破壊することがある。容積キャパシタンスがもはや増加しない点の前までの活性化は、第一の活性化によって作成された形状が維持されており、第2の活性化によって作成された、より小さな形状が形成される最適の第2の活性化を提供することが見出された。
【0089】
本発明の実施態様によってシーケンシャルに活性化される物質は、実質的にBETまたはメソポロシティを増加させることなく、単一活性化炭素に比較して20%またはより大きく増加したキャパシタンスを有することができる。その結果、ホワイトオーク、レーヨンまたはヌチャー(Nuchar)(登録商標)のような、標準的で比較的安い先駆物質物質を、第二のプロセスで低い費用で活性化し、80F/gを越えたキャパシタンスを得ることができる。
【0090】
比較例3:
【0091】
1つの実施態様を実験的に定量化するために、通常の硬材木炭を先駆物質炭素として使用した。1時間700℃で標準30%の水蒸気/Nで活性化された、粉砕先駆物質木炭(D50144.1ミクロン)の単純な水蒸気活性化は、790m/gのBET表面積、および63.8%のミクロポアである、0.396cc/gの合計細孔容積を備えた物質を生産した。細孔容積およびミクロポアおよびメソポアのパーセントは、Micromeretics ASAP 2010上でDFTを使用して測定された。
この水蒸気活性化炭素は2つの、1.8モルTEMA/PC電解質を使用する対称な炭素/炭素ウルトラキャパシタセルにされた。2.0ボルトまでの20mV/sのスイープ速度を使用して測定された機能的なEDLC装置の比キャパシタンスは、わずか40.9F/gだった。そのような低い値は、比較的小さい総表面積、高いミクロポア割合、および比較的大きな粒径(基礎的なユークリッド立体幾何は、外側表面積を減らすと、内部のアクセス不能な体積とポア表面を増加させる)から期待される。Norit(Norit, Proceedings of 16th ISDLC: 95 (2006)を参照)によって記載されるように、合理的なエレクトロカーボンの達成は、長時間の注意深い活性化を要し、より小さな粒子状物質で作られた電極を与える。
【0092】
比較例4:
【0093】
代替として、ホワイトオーク硬材が同時に炭化され、HPO(リン酸)で化学的に活性化され、75.3ミクロンのD50へ粉砕され、1396m/gのBET表面、1.053cc/gのDFT総細孔容積および29.9%のミクロポアを得た。
水蒸気活性炭と同じ条件の下で測定され、等価な2個の電極セルへ作られた。この単一に活性化された物質は、58.5F/gの比キャパシタンスを示した。水蒸気活性炭との差は、従来より大きな表面積および総細孔容積、低いミクロポア割合、およびより小さな(まだ、比較的大きいが)粒径から期待されている。
【0094】
どちらの単一活性化炭素も商業的に有用なエレクトロカーボンではない。
それらは、典型的には、少なくとも80から100F/g以上に及ぶ比キャパシタンスを有し、(例えばNorit,Proceedings of 16th ISDLC:101−102(2006),およびMeadWestvaco(MWV),Proceedings of 16th ISDLC:139−140(2006))を参照)約8ミクロンのメディアン粒径を有する。
【0095】
実施例6:
【0096】
比較例4のリン酸で活性化された硬材木炭は、30分間800℃で、30%の水蒸気中で第二の活性化に供された。生じるシーケンシャルに活性化されたBET表面積は11%のみ増加して1554m/gになり、一方(望ましい)細孔容積の合計は0.981cc/gに6.8%減少した。また、(望ましくない)ミクロポア割合は16%から34.8%に増加した。粒径は本質的に変わらなかった。75ミクロン前後の望ましくないメディアン粒子径を有しているにもかかわらず、等価な作動セルにされ、同じ方法でテストされたこの連続活性化炭素の比キャパシタンスは97.1F/gだった。約66%の改良は、従来のBET表面、細孔容積またはメソポロシティの変化によっては説明できない。その改良は、ルゴシティおよび隣接外部の重要性へ直接つながる。連続して活性化された物質は、大きな粒子のハンディキャップにもかかわらずNoritとMWVからのものに匹敵する優れたエレクトロカーボンである。
【0097】
図7に示されたように、単にリン酸を使用して活性化された材料を使用したセルと、この連続して活性化された物質からの作動セルのサイクリックボルタモグラム(CV)の比較は、好適な適度な条件を使用して、正確なシーケンスでの連続した活性化の有用性を実証する。従来の考えと異なり、この結果は本質的にBET表面およびメソポロシティを増加させることに起因するべきである。この実験中のシーケンシャルな活性化でのBET表面は、単に1396m/gから1554m/gまで増加した。その一方でメソポロシティは、驚くべきことに1.0528cc/gの69.5%から0.9811cc/gの65.1%まで減少した。連続して活性化された物質について直線状CVおよび直線の定電流充電/放電プロットは、さらに二重層キャパシタンスが、酸化還元反応の偽キャパシタンスの多くの様々な形式、またはバッテリーのようなイオン挿入に惑わされずに測定されることを当業者に実証する。比較例3、比較例4および実施例6の結果は、以下の表4中に要約される。
【0098】
【表4】

【0099】
さらに、Tartu報告による第2の活性炭の検査結果と比較すると、リン酸で活性化された硬材の第2の物理的な活性化は驚くべき結果を生む。下記の表5および6は、試験結果の差を例証する。
【0100】
【表5】

【0101】
【表6】

【0102】
上記の表から理解されるように、本発明の実施態様による連続する活性化は、BETの比較的小さな増加とともにキャパシタンスの実質的増加を与える。水蒸気活性化に続く水蒸気活性化を使用するTartu報告では対照的に、BETの実質的な増加と、キャパシタンスの比較的小さな増加に帰着した。
【0103】
実施例7:
【0104】
第二の実施態様では、化学的に活性化された通常の(安価な)商用MeadWestvaco Nuchar(登録商標)濾過炭素(MeadWestvaco社、Covington、Virginia)を、30分間800℃で第二の水蒸気活性化に供した。図8に示されたように、この連続して活性化された炭素は、100F/g(20mV/sのスイープ速度を使用して、1ボルトで測定したとき102.5F/g)以上の比キャパシタンスを有していた。再び、従来の考えに反して、BET表面は、当初のNuchar(登録商標)の1329m/gから1511m/gに連続する活性化の後に増加した。その一方でメソポロシティは、0.88cc/gの61.9%から0.97cc/gの60.5%に変化した。驚くべき結果は、優れたエレクトロカーボンを生産するために、本発明のプロセスにより、通常の低価格濾過炭素をさらに安価に処理できるということである。これは、図8の中で示される、2つの連続して活性化された炭素から作られた試験器具のCVの比較にはっきり示される。
【0105】
実施例8:
【0106】
3番目の実験では、実施例7の第2の活性化条件は30分間800℃から850℃まで変更された。図9の中で示されるように、800℃物質から作られたセルの102.5F/gと比較して、850℃物質から作られたセルの比キャパシタンスは、102.2F/gだった。
変化はなかった。
【0107】
実施例9:
【0108】
4番目の例において、実施例7の第2の活性化条件は30分間900℃に変更された。得られる物質は、2543mの非常に高いBET表面、および2.35876cc/gの非常に高い総細孔容積および非常に低い17.8%のミクロポア割合を有していた。さらに、この極端な第二の活性化によって引き起こされた質量減少は、90.8%と非常に高かった。高いポロシティおよび残る結合炭素の少ない量は、そのような材料を抵抗性とし、作動装置の等価直列抵抗(ESR)を望ましくなく増大させることが従来知られていた。図9に示されるように、900℃炭素から作られた作動セルの比キャパシタンスは、先の理論的な説明に従って予想通りにわずか113.3F/gだった。当業者は、さらにセルがCVの上向きの傾斜によって示されるような本質的な不適当なESRを有していることを容易に認識するだろう。(例えばCarbon 39:937−950(2001)の940を参照)この実験は、より極端な温度、反応的な濃度または期間ではなく、比較的穏やかな第二の活性化が望ましいことを実証する。
【0109】
実施例10:
【0110】
別の実験では、グリーン体レーヨン(North American Rayon Corporation社製、Elizabethton、TN)は、5%(NHHPO中に浸漬され、850℃で60分間同時に炭化されリン活性化された。その後、物質は、CO(500ml/分)で、800℃で、60分の間、第二の活性化プロセスで物理的に活性化された。生じる物質は、1Vで104.1F/gの平均キャパシタンスを有していた。実施例10の物質のCVは図10に示される。
【0111】
活性炭のミリング
【0112】
1つの実施態様では、活性炭を調製する方法の改良は、最終活性化の前に、連続して活性化された炭素のルゴシティを維持するためにミリングすることを含んでいる。活性炭をミリングすることはルゴシティおよびしたがって外側表面に有害である。従来は、バルク炭素前駆体または大きな炭素粒子は活性化され、後で粉砕するかミリングして、最終粒度分布にした。例えばProceedings of 16th ISDLC(2006)での、Norit Nederland B.V.(ヨーロッパでの最大の供給者)プレゼンテーション95,およびMeadWestvaco(MWV)(米国の最大の供給者)プレゼンテーション141を参照。1つの連続的な高温プロセスで例えば木のおがくずを炭化し活性化し、その後最終の粒子分布へミリングしたほうが、炭化し、(冷却し)、ミリングし、(加熱し)、その後ミリングするよりも安価である。活性化の前および後の活性化ミリングを開示する米国特許7,214,646に記載されたアルカリ活性化手順をさらに参照。したがって、従来の考えの下では、少なくともそれが追加の時間およびエネルギーコストを必要とするので、活性化の前のミリングは不利益とされていた。これは従来では、内部の孔表面だけが重要で、外側表面はそうではないと考えられていたからである。
【0113】
活性炭をミリングする1つの欠点は、本質的にミリングが活性単のルゴシティを破壊するということである。当初のより大きな粒子状物質をミリングして得られたフラグメントは主として劈開表面を有している。劈開表面は、主としてマイクロポアの寸法の、活性炭の内部の形態である。活性化により得られるルゴシティは、活性化の後にミリングすることにより、このように失われる。次の実験は、従来方法におけるルゴシティの損傷を実証する。また1つの実施態様での活性化に先立ち先駆物質をミルにかける有用性を示す。
【0114】
1つの実験では、リン酸で活性化された硬材(ホワイトオーク)は、図11のグラフに示される粒度分布を有する、75.3ミクロンのD50に粉砕された。この大きな粒子の活性炭は、1396m/gのBET表面、および1.053cc/gのDFT細孔容積の合計を有し、69.3%がメソポアであった。細孔容積とパーセントはMicromeretics ASAP 2010の上でDFTを使用して測定された。この物質は1.8モルTEMA/PC電解質を使用して、二重層キャパシターセルにされた。2.0ボルトまで20mV/sのスイープ速度を使用して測定された、機能的な2つの電極のキャパシター装置の比キャパシタンスは、高いメソポロシティにもかかわらずわずか58.5F/gだった。
【0115】
これらの粒子状物質はしわが寄ったルゴース形状であるが、従来のエレクトロカーボンより望ましくなく大きい。したがって、他の活性炭について行われたように、先行技術に従って、75ミクロンのD50を備えたリン酸で活性化された物質は、18.2ミクロンのメディアン径に(ボール)ミルにかけられた。ミリングの後の生じる粒度分布は、図12のグラフに示される。2.0ボルトまで20mV/sのスイープ速度を使用して測定された機能的な2つの電極のキャパシター装置の比キャパシタンスは、わずか59.2F/gだった。
【0116】
18.2ミクロンのメディアン径がカーバイド由来の炭素の表面/体積の利点、すなわち、より小さな粒径による与えられた体積のための外側表面の幾何学的な増加の幾分かを伝えると期待される。75ミクロンのD50を有するリン酸で活性化された材料から作られた作動セルと、引き続いて18.2ミクロンのメディアン粒子径まで(ボール)ミルにかけられた材料から作られた作動セルとのサイクリックボルタモグラム(CV)の比較が図13に示された。これはキャパシタンスが本質的に不変であることを明らかにする。ミリングは本質的に活性化ルゴシティを破壊するので、実質的増加はない。より小さな粒子表面/体積の効果は、活性化ルゴシティの損失を補うことのみである。CVの当業者は、さらに固有抵抗のような問題の増加を認識するだろう。この実験は、活性化後のミリングの欠点を実証する。
【0117】
活性化ルゴシティの重要性は、エレクトロカーボン用の製造工程の改良を示唆する。1つの実施態様では、最終粒度分布を生成するために使用されるポスト活性化ミリング法の欠点から活性化ルゴシティを保護するために、ミリングは活性化の後ではなく前に行われるべきである。活性化の前のほぼ最終粒度分布への炭素前駆体のミリングは、活性化ルゴシティから発生する比キャパシタンスの増分を維持し、物質の粒度分布が意図した用途に適合することを可能にする。例えば、エネルギー密度については、表面積が大きいがより高いESRの電極を与えるより細かいメディアン粒子径が選択されるが、出力密度については、低いESRの電極を与え、また低いエネルギー密度のものを与えるより大きな粒子径が選択される。
【0118】
先に述べたように、微粉(ミリング生成物)はより高い等価直列抵抗(ESR)およびより低い装置出力密度を与えることは知られている。理論によって制限されるものではないが、累積的な粒界接触抵抗の増加と、より多くの回旋状で屈折した電極のボイド構造(粒子間のボイドの微細化)による平均イオン路程の増加は、従来は増加したESRに寄与する機構であると思われていた。したがって、MeadWestvacoのようなメーカーは、よりしっかりと粒度分布をコントロールし、微粉が除去された粒子分布を有するふるい分けされた、または空気分級されたオプションを提示する。
例えば、Proceedings of 16th ISDLC:141(2006)を参照。
【0119】
1つの実施態様では、先駆物質炭素は、石炭のような天然由来物質、加工品(木、ココナッツシェル、食品加工残留物(パルプ、ピッチ、バガス)あるいは砂糖)、様々な石油あるいはタールピッチ材料を始めとする十分な純度を有する任意の原料(酸洗浄のような付加的な化学的精製工程を備えても、あるいは備えなくともよい)から調製することができる。特に米国特許6,660,583に記載されたピッチ前駆体、あるいはポリアクリロニトリル(PAN)およびポリ塩化ビニリデン(PVDC)のような合成高分子材料から調製することができる。実施態様はそれに制限されず、炭化でき、活性化されることのできる任意の化学的に適当な先駆物質も含まれる。
【0120】
得られた活性炭の比キャパシタンスは、最終電極材料中の活性化に引き起こされたルゴシティが維持された割合に依存する。1つの実施態様では、先駆物質は、所望の粒径に最初にミルにかけられる。ミリング後のみに先駆物質が活性化される。活性化の前にミリングすることによって、ルゴシティは維持される。次の例は、実施態様の実際的な有用性を例証する。
【0121】
実施例11:
【0122】
図14の粒子分布によって示されるように、硬材木炭は、D50が約144ミクロンの粒子に粉砕された。例において、Cowboy hardwood charcoal(Cowboy Charcoal,Co.,Brentwood,TN)が使用された;しかしながら、他の容易に利用可能で安いバルク先駆物質木炭も使用できる。その後、木炭は1時間700℃で標準30%の水蒸気/N中で活性化され、790m/gのBET表面、0.396cc/gの細孔容積の合計を有し、63.8%のミクロポアを備えた物質を得た。細孔容積およびミクロポアおよびメソポアパーセンテージはMicromeretics ASAP 2010でDFTを使用して測定された。この水蒸気活性された炭素は1.8モルTEMA/PC電解質を使用して、キャパシターセルにされた。2.0ボルトまで20mV/sのスイープ速度を使用して測定された機能セルの比キャパシタンスは、わずか40.9F/gだった。結果は、比較的低いBET表面、および低い細孔容積、高いミクロポア割合および不利に大きなメディアン径のためと考えられる。
【0123】
実施例12:
【0124】
その後、同じ先駆物質木炭は、活性化の前に図15の粒子分布によって示されるような約24ミクロンのD50になるようにミルにかけられた(依然として従来のエレクトロカーボン微粒子より3倍大きい)。ミルにかけられた木炭はついで30分だけ、750℃で水蒸気活性化された。生成物のBET表面は738m/g、細孔容積の合計は0.455cc/gであり、48.1%のミクロポアだった。生成物のBET表面は、1時間(2倍長い)活性化されたより大きな粒子状物質より52m/g少なかつた。等価なキャパシターセルでは、この炭素は、55.1F/gの比キャパシタンスを有していた。この例は、活性化に先立った粒径の低下の利点を例証する。キャパシタンスは3分の1を越えて増加される。一方、活性化時間は半分に減少し、温度は単にわずかに増加させられる。この実施態様中の活性化の前にミリングする有用性は、図16のグラフ中で示される2台の例示の作動装置のCVの比較により明白に実証される。
【0125】
メソポロシティのコントロール
【0126】
1つの実施態様では、活性炭を調製する改良方法は、活性化プロセスでの触媒ナノ粒子状物質の使用を通じて活性炭のルゴシティを改善することを含んでいる。ナノ粒子は、炭素中のメソポア形成を触媒し、したがって炭素メソポロシティは触媒ナノ粒子の存在下で炭素活性化プロセスを変えることによりコントロールされることができる。
【0127】
有機金属の先駆物質を使用した一般的な溶剤コーティングと、引き続く熱分解によりナノ粒子状物質に分解されて形成される金属/金属酸化物ナノ粒子状物質は、金属および活性化条件に依存して、実質的に異なる平均触媒ポアサイズと、直径を有する。当業者は、炭素上へのナノ粒子のコーティングが有機金属の先駆物質での炭素をコーティングすることを含むことができると理解するだろう。2つの異なる金属/金属酸化物ナノ粒子活性化が、直径が平均約13ミクロンである、活性化されていないが、完全に炭化されたKYNOLファイバー先駆物質(アメリカのKynol社、Pleasantville、NYから利用可能)を使用して、この違いを例証する。鉄とニッケルの両方のナノ粒子状物質が、テトラヒドロフランに溶かされた0.25%(金属:炭素重量)の金属アセチルアセトネートの溶剤堆積、および引き続く溶剤の蒸発により調製された。その後900℃で7分、空気:窒素の1:1を使用して、当初の金属酸化物ナノ粒子と触媒メソポアが形成された。KYNOL上で40nmから60nmの範囲のニッケルと鉄のナノ粒子状物質は、SEMの分解限界付近で目視できた。これらのナノ粒子状物質は望ましいものより大きいが、それらが画像化可能なので有用である。図17の中の画像中で示されるように、これらの条件下でナノ粒子状物質によって引き起こされるメソポアを含む表面のルゴシティの深さおよび直径は明白に変化する。
【0128】
ニッケルはそれほど反応的ではなく、より浅く、幾分小さな直径のメソポアを生ずる。ニッケルと鉄の両方について、空気活性化は差別的に炭素内に穴を開けてナノ粒子をもたらし、水蒸気活性化は触媒ナノ粒子の孔開けとともに炭素塊も差別的に活性化する。空気と水蒸気活性化との比較が図17に示され、鉄で炭素質量減少パーセントによって比較された。7分だけの間800℃で1:1の空気:窒素中で活性化された0.25%のFe(acac)3は、17.8%の質量減少に帰着した。その一方で60分の900℃での30%の水蒸気中の活性化は8.3%だけの質量減少に帰着した。
【0129】
先駆物質炭素は、石炭のような天然由来物質、加工品(木、ココナッツシェル、食品加工残留物(パルプ、ピッチ、バガス)あるいは砂糖)、様々な石油あるいはタールピッチ材料を始めとする十分な純度を有する任意の原料(酸洗浄のような付加的な化学的精製工程を備えても、あるいは備えなくともよい)から調製することができる。特に米国特許6,660,583に記載されたピッチ前駆体、あるいはポリアクリロニトリル(PAN)およびポリ塩化ビニリデン(PVDC)あるいはフェノールノボロイド(Kynol)のような合成高分子材料から調製することができる。1つの実施態様では、ビスコース法を使用して作成されたレーヨン布帛または繊維が利用されることがある。
別の実施態様では、リヨセルプロセスによって作成されたテンセル(登録商標)布帛または繊維が利用されることがある。先駆物質は、上記記載または他の実施態様に記載された方法または考察のうちの任意のものを利用することができる。
実施態様は、炭化でき、活性化できる任意の化学的に好適な先駆物質を含む。
【0130】
いくつかの実施態様では、ナノ粒子状物質は約50nm以下の直径を有し、他の実施態様では約15nm以下の直径を有し、他の実施態様では約8nm以下の直径を有し、他の実施態様では約4nm以下の直径を有し、他の実施態様では約2nmの直径を有する。好ましい粒径モードは、電解質の選択および装置必要条件に依存する。例えば、出力密度は、好ましくは、より少ない表面およびより低いエネルギー密度の合計を犠牲にして、拡散障害を低減するためにより大きなメソポアを要求することがある。
【0131】
いくつかの実施態様では、金属および/または金属酸化物ナノ粒子状物質は鉄、ニッケル、コバルト、チタン、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、イットリウム、パラジウムまたはプラチナ、あるいはそれらの組み合わせ、あるいはそれらの合金を含む。他の実施態様では、金属/酸化物ナノ粒子状物質は酸化ニッケルを含む。他の実施態様では、金属/酸化物ナノ粒子状物質は酸化鉄を含む。別の実施態様では、ナノ粒子状物質は、ニッケルと鉄の合金を含む。
【0132】
触媒ナノ粒子活性化に起因する炭素メソポロシティおよび合計表面ルゴシティは、金属もしくは金属酸化物のタイプ(触媒の性能)、ナノ粒子サイズ、ナノ粒子添加量(つまり(炭素の被覆、単位炭素外側表面当たりのナノ粒子の数)、炭素前駆体、および炭素活性化条件、たとえば温度、中性雰囲気(つまり窒素)の割合としてのエッチャントガス(つまり水蒸気または二酸化炭素または空気)、および時間の関数である。
【0133】
したがって、2つ以上の異なる活性化方法が第一に炭素粒子または繊維内に所望の深さで触媒ナノ粒子を誘導するために使用され、ついで炭素を活性化し、触媒ナノ粒子により形成されたより大きな炭素外側表面の上に、ピッティング(pitting)およびスポーリング(spalling)を介して公知の活性化ルゴシティと、公知の内部炭素活性化ポロシティの両方を形成する。
【0134】
この実施態様の有用性の実際的な例は次の実験によって例証される。
ニッケルおよび鉄の2つの金属アセチルアセトネートが、市販の炭化されたKYNOLファイバー上に、0.1%(金属:炭素、重量基準で)の濃度で溶剤コーティングされ、ついで溶剤は蒸発された。最初の空気活性化は、ナノ粒子状物質によって触媒現象的にエッチングされた大きなメソポアを導入した。これは、図18の中で示される画像において容易に目に見える。
【0135】
炭素内へナノ粒子状物質を入れるために、この第一の活性化は不活性ガスとともに空気(または他の酸素含有ガス)を使用する。好適な不活性ガスとしては窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノンおよびそれらの混合物があげられる。空気が使用される場合、不活性ガスと空気の比率は典型的には0.1:1〜1:0.1まで、好ましく1:1である。この第一の活性化のための時間は温度、および所望の最終表面およびポロシティに依存する。高温では、より少ない時間が要求される。エッチングの当業者は適切な時間および温度を熟知しているであろう。一般に、第一の活性化の温度は700℃から1000℃の間であり、好ましくは900℃である。一般に、活性化は、1〜15分間、好ましくは5−10分行われる。この第一の活性化の後のファイバーの質量減少は、一般に約30%未満であり、好ましくは約20−30%の間である。
【0136】
引き続く水蒸気または二酸化炭素による活性化は、さらにファイバーの隣接外部、炭素内部のポロシティおよび繊維の総表面積を向上させた。
炭素活性化の当業者は、この第二のエッチング工程で使用する適切な時間および温度を熟知しているであろう。向上された隣接外部は、図19(ここでは水蒸気活性化が使用された)の中で示される画像において容易に目に見える。オリジナルの炭素と比較されたファイバーの質量減少は、約35%より多く、好ましくは約40%より多く、より好ましくは約45%である。
【0137】
さらに実験的にプロセスの有用性を定量化するために、相対的な炭素質量減少は、エッチングされた質量により形成された表面の相対量を示す。炭化されたKYNOLについてのこの特定の手段によって形成された、0.1%のニッケルおよび鉄のナノ粒子状物質についての質量減少は、60分900℃の30%の水蒸気中で、それぞれ平均17.8%および10.2%であった。最初の同じ温度で10分間での1:1の空気:窒素活性化では、それぞれ27.7%および29.6%であった。空気に続く第二の900℃の同じ温度での第二の水蒸気活性化の後、全質量減少はそれぞれ45.5%および39.8%であった。正確に加算性でないが、これらの相対的な減少は、異なる活性のナノ粒子状物質と異なる活性化条件の相対的な触媒作用の向上を使用して、シーケンシャルな活性化工程の連続的な寄与を明らかに示す。
【0138】
この実施態様の商業的な有用性の例は、4.7ミクロンの平均粒径を有する無煙炭「Minus 100」微粒子パウダの2倍の活性化である。「Minus 100」炭素パウダは、THFに溶かされた1.5%の鉄アセチルアセトネートでスプレーコーティングされ、次に、900℃で10分間、空気:窒素の1:1で活性化され、ついで20分間900℃で水蒸気活性化された。この実験で形成された触媒ナノ粒子状物質は、利用可能なSEMの分解能より小さい。物質のBET表面は760.3m/gであった。また、細孔容積の合計は0.30429cc/gだった。両方ともMicromeretics ASAP 2010を使用して測定された。1.8mTEMA/PC電解質を使用して、この物質から作られた、機能的な2つの電極キャパシター装置の比キャパシタンスは、純粋な二重層容量を示すサイクリックボルタモグラム(CV)で、2.0ボルトまで20mV/sのスイープ速度を使用して、1ボルトで100.0F/g、2ボルトで約108F/gだった。それは商業用エレクトロカーボンの100%から150%多いBET表面に匹敵する(名目上の2000m/gまで)。13.16μF/cmは、処理時間はわずか30分だったが、この炭素は商業用MeadWestvacoエレクトロカーボンの標準化された値の約2倍であった(Walmet in the Proceedings of the 16th International Seminar on DLC at 139−140では、5.14μF/cmから7.11μF/cmと報告された)。
【0139】
先の詳細な説明は、説明と例示のために提供されており、特許請求の範囲を制限するようには意図されない。ここに例証された本発明の好ましい実施態様における多くの変化は、当業者に明白であり、特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲とされる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む活性炭の形成方法:
(a)リンベースの化学物質溶液で炭素前駆体物質をコーティングし、コーティングされた物質を形成する工程;および
(b)該コーティングされた物質を物理的に活性化し、活性炭を形成する工程。
【請求項2】
以下の工程を含む活性炭の形成方法:
(a)炭素と化学反応する化学物質の溶液でグリーン体炭素前駆体物質をコーティングし、コーティングされた炭素物質を形成する工程;
(b)該コーティングされた炭素物質を炭化する工程;および
(c)該炭化工程の少なくとも一部分において該コーティングされた炭素物質を物理的に活性化し、活性炭を形成する工程。
【請求項3】
以下の工程を含む活性炭の形成方法:
(a) 活性化の前に炭素物質を所定の粒子サイズに粉砕し、粉砕された粒子状物質を形成する工程;および
(b) 該粉砕された粒子状物質を活性化し、活性炭粒子状物質を形成する工程。
【請求項4】
以下の工程を含む活性炭を形成する方法:
(a)炭素または炭素前駆体のいずれかである炭素を提供する工程、
(b)ナノ粒子状物質で炭素をコーティングする工程、
(b2)炭素が炭素前駆体の場合には、その後前駆体を炭化して炭素を形成する工程、
(c) 空気および不活性ガス中で炭素を触媒的に活性化し、触媒的に活性化された炭素を形成する工程、
ここで、触媒的に活性化された炭素の質量は先の炭素の質量よりも小さい、
(d) 触媒的に活性化された炭素を水蒸気または二酸化炭素中で物理的に活性化し、活性炭を形成する工程、
ここで、得られる活性炭の質量は該触媒的に活性化された炭素の質量よりも小さく、活性炭はメソポーラスである。
【請求項5】
前もって活性化された第一の活性炭を活性化し、第二の活性炭を形成することを含む活性炭を形成する方法であって、第二の活性炭のキャパシタンスが第一の活性炭のキャパシタンスよりも少なくとも20%大きい、活性炭を形成する方法。
【請求項6】
前もって化学的に活性化された炭素を物理的に活性化して第二の活性炭を形成することを含む活性炭を形成する方法であって、第二の活性炭のキャパシタンスが少なくとも80F/gである方法。
【請求項7】
活性炭は、少なくとも50F/gの比キャパシタンスを有する、請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
活性炭は、少なくとも80F/gの比キャパシタンスを有する、請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
活性炭は炭素繊維である、請求項1、2または4記載の方法。
【請求項10】
活性炭は直径を有する微粒子である、請求項1、2または4記載の方法。
【請求項11】
粒子はD50が30ミクロンよりも小さいメディアン径を有する、請求項3または10記載の方法。
【請求項12】
ナノ粒子状物質は少なくとも2つの異なる金属酸化物を含む、請求項4記載の方法。
【請求項13】
ナノ粒子状物質は鉄、ニッケル、コバルト、チタン、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、イットリウム、パラジウム、プラチナまたはそれらの組み合わせ、またはそれらの合金を含む、請求項4または12記載の方法。
【請求項14】
工程cの後の炭素の質量減少は約30%未満である、請求項4記載の方法。
【請求項15】
工程dの後の炭素の全質量減少は約35%より大きい、請求項4記載の方法。
【請求項16】
炭素前駆体物質がグリーン体であり、コーティングされた前駆体を炭化する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
物理的な活性化工程および炭化する工程が、少なくとも部分的に同時に行われる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
リンベースの化学物質が燐酸二アンモニウムである、請求項1記載の方法。
【請求項19】
物理的な活性化は二酸化炭素活性化を含む、請求項1、2、4または6記載の方法。
【請求項20】
第一の活性化された炭素が、活性化された炭素の表面の実質的な部分の上に約100nmよりも大きい平均サイズのルゴース形状を有する、請求項5記載の方法。
【請求項21】
第2の活性化された炭素が、活性化された炭素の表面の実質的な部分の上に約1nmから約100nmの平均サイズのルゴース形状を有する、請求項5または20記載の方法。
【請求項22】
炭素前駆体が再生セルロース物質である、請求項1、2または4記載の方法。
【請求項23】
再生セルロース物質がリヨセルプロセスによって形成される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
再生セルロース物質がビスコースレーヨンプロセスによって形成される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか1項記載の方法により形成された活性炭、およびバインダーを含む材料。
【請求項26】
請求項1から25のいずれか1項記載の方法により形成された活性炭または材料を含む装置。
【請求項27】
電気化学装置、キャパシター、水素貯蔵装置、濾過装置または触媒基体である、請求項26記載の装置。
【請求項28】
キャパシターである、請求項26記載の装置。
【請求項29】
濾過システムである、請求項26記載の装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−517920(P2010−517920A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549621(P2009−549621)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/001963
【国際公開番号】WO2008/100573
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(508057416)
【出願人】(310001414)ユニバーシティ オブ ケンタッキー リサーチ ファウンデーション インク. (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF KENTUCKY RESEARCH FOUNDATION INC.
【Fターム(参考)】