説明

活性B−C−N材料及びその製造方法

【課題】従来、吸着剤としての利用が考えられなかったB−C−N材料を有害物質の吸着除去、特に排ガス浄化のための吸着剤として提供する。
【解決手段】炭素、窒素、及びホウ素からなる活性B−C−N材料であって、比表面積が100〜3000m/g、平均細孔径が0.4〜50nm、及びB−C−N材料の酸素含有量が1〜20質量%であることを特徴とする活性B−C−N材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素、窒素、及びホウ素からなる活性B−C−N材料、及びその製造方法に関するものであり、詳しくは大気汚染物質や水質汚染物質を吸着除去するための、特に、排ガスに含まれる有害物質を効率的に吸着除去するための活性B−C−N材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼル車が排出する排ガスは酸素濃度が高く、かつ、NOx含有量に比べて相対的にプロピレンなどの還元性炭化水素の含有量が低いので(通常、酸素濃度は10%以上であり、酸素濃度が1%以上である排ガスはリーンバーン排ガスと呼ばれている)、NOをNOに酸化する能力が高いとされる白金触媒でもNOx浄化率は非常に低い。そのため、触媒にNOx吸収剤を添加し、排ガス中に含まれるNOxを補助的に吸収除去することが行われており、例えば、特許文献1に開示されているようなアルカリ金属やアルカリ土類金属からなる塩基性物質を含有したNOx吸蔵還元型触媒が一般的に使用されている。しかし、これらの塩基性NOx吸収剤は、NOxやSOxの酸性酸化物と容易に化合するので吸収能力の経時的な低下が起きるという問題がある。吸収能力を復元するために高温下(通常750℃以上)での焼成再生処理が提案されているが、白金等の触媒活性成分のエージング(触媒性能の熱的老化)を生じるので好ましくない。また、ディーゼル車が排出する過渡走行時の低温排ガス(通常、120℃〜200℃)を効率的に浄化するための触媒材料は現在でも未開発であるので、優れた新材料の開発が期待されている。
活性炭の比表面積は通常1000m/g以上であり、吸着力が大きく、多くの種類の吸着サイトを有することから、従来、大気汚染物質や水質汚染物質を吸着除去するための一般的な吸着剤として使用されている。しかし、可燃性物質であるために自動車等の内燃機関が排出する排ガス中に含まれるNOx、SOx、炭化水素、PM(パティキュレート)等の有害物質の吸着除去の目的には通常、使用されていない。
【0003】
一方、1970年頃、炭素、窒素、及びホウ素からなる耐熱性の黒鉛類似構造B−C−N(炭窒化ホウ素、boron carbide nitride、又はsolid solution of carbon and boron nitrideと呼ばれている)材料がロシアで研究され、この成果が非特許文献1に報告された。その後、近年に至って、高硬度物質及びその前駆物質、リチウム電池の電極材料、半導体材料、等の目的のために、多くの種類のB−C−N材料が開発された。B−C−N材料には、大別して黒鉛類似構造のものと立方晶構造のものが知られている。黒鉛類似構造のものは、例えば、特許文献2に開示されているような不活性気流下、アミン、ニトリルなどの含窒素有機物の蒸気とハロゲン化ホウ素のガスを高温帯域で反応させる方法(熱CVD法)、特許文献3に開示されているようなアミン、ニトリルなどの含窒素有機物をハロゲン化ホウ素と反応後に不活性気流下で加熱処理する方法(化学反応法)、特許文献4に開示されているような揮発性の有機物、窒素ガス、及びジボランをプラズマCVD法によって反応させる方法(プラズマCVD法)、特許文献5に開示されているような炭素源、窒素源、及びホウ素源を高周波加熱することによって基板上に薄膜状の炭窒化ホウ素を形成させる方法(高周波加熱法)、特許文献6に開示されているような炭素と窒化ホウ素を高温高圧処理する方法(高温高圧処理法)、等によって製造されることが報告されている。立方晶構造のものは、例えば、特許文献7に開示されているような黒鉛類似構造のB−C−N材料を衝撃圧縮することによって製造されることが報告されている(衝撃圧縮法)。また、黒鉛類似構造B−C−N材料には、例えば、非特許文献2に開示されているように黒鉛よりも耐熱性が改善された材料も知られている。しかし、一般的に、これらの黒鉛類似B−C−N材料及び立方晶B−C−N材料は比表面積が非常に小さく(通常、数m/g〜数10m/g程度)、吸着力も非常に小さいので活性炭のような吸着剤としての利用は殆ど期待できないことから、上記に述べたような自動車排ガス浄化用の吸着除去剤としての利用は殆ど困難である。
【0004】
また、最近、特許文献8に開示されているように、メソポーラスカーボンと酸化ホウ素、ホウ素、又はBC等のホウ素原料との混合物を窒素気流中1300−1800℃で加熱することによって多孔性の炭窒化ホウ素材料を製造する方法が報告された。しかし、上記非特許文献1に報告されているように、炭素、ホウ素、及び窒素からの直接合成は1800−2000℃での加熱条件が最適であり、これ以下の温度ではB−C−N材料以外に炭素とBCが副生すると述べられているので、特許文献8の方法で作られる材料が、炭素、窒素、ホウ素が化合した単一物質であるということには疑問が残る。いずれにしても、特許文献8の方法で作られる材料は、表面積が大きく多くの細孔が存在するものと推定されるが、吸着力を示すような官能基を生成するための製造方法ではないので、この方法で作られる材料は吸着剤としての利用は殆ど期待できない。
【0005】
【特許文献1】特表平06−509374号公報
【特許文献2】特開平06−219730号公報
【特許文献3】特開2003−081615号公報
【特許文献4】特開2002−293516号公報
【特許文献5】特開2002−19597号公報
【特許文献6】特開平04−161240号公報
【特許文献7】特開平06−316411号公報
【特許文献8】特開2007−031170号公報
【非特許文献1】Poroshkovaya Metallurgiya, 1971, 1, 27-33.
【非特許文献2】J. Chem. Soc., Faraday Trans., 1996, 92(24), 5067-5071.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑み、大気汚染物質や水質汚染物質を効率的に吸着除去するための、特に、自動車の排ガスに含まれる有害物質を効率的に吸着除去するための活性B−C−N材料及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、賦活処理を行ったB−C−N材料が排ガス中のNOx等の有害物質の除去に非常に有効であることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
(1)炭素、窒素、及びホウ素からなる活性B−C−N材料であって、比表面積が100〜3000m/g、平均細孔径が0.4〜50nm、及び酸素含有量が1〜20質量%であることを特徴とする活性B−C−N材料、
(2)比表面積が0.1〜50m/gであるB−C−N材料を酸化剤によって賦活処理することを特徴とする上記(1)に記載の活性B−C−N材料の製造方法、
(3)酸化剤が強塩基性物質であることを特徴とする上記(2)に記載の活性B−C−N材料の製造方法、
(4)酸化剤がオキソ酸、又はオキソ酸塩であることを特徴とする上記(2)に記載の活性B−C−N材料の製造方法、
(5)酸化剤が超臨界水であることを特徴とする上記(2)に記載の活性B−C−N材料の製造方法、
(6)上記(1)に記載の活性B−C−N材料を排ガス浄化に用いることを特徴とする排ガス浄化方法、に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明活性B−C−N材料を排ガス浄化のために用いることによって、これまで浄化困難であったリーンバーン排NOxを低温領域から中温領域に渡って極めて効率よく浄化することができる。例えば、酸素濃度10%の一酸化窒素含有有害ガスを触媒上で還元剤としてプロピレンを用いて浄化したとき、触媒としてアルカリ土類金属の酸化物(NOx吸蔵剤)を含有したNOx吸蔵還元型触媒を使用した場合には250℃付近から反応が開始しNOx浄化率は最大でも40%程度であるが、本発明活性化炭窒化ホウ素材料をNOx吸着剤として含有した白金触媒の場合には150℃付近から反応が始まり、160℃〜400℃の広い温度範囲において90%以上のNOx浄化率が達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるB−C−N材料とは、炭素原子、ホウ素原子、及び、窒素原子からなる炭窒化ホウ素(boron carbide nitride)材料のことである。それぞれの原子は化学結合によって相互に結合しており、別名、炭素と窒化ホウ素の固溶体(a solid solution of carbon and boron nitride)とも呼ばれている。炭素、窒素、及びホウ素が化合してできた単一物質であり、炭素と窒化ホウ素の混合物とは異なる。
該B−C−N材料の化学式BxCyNzにおける組成比x:y:zは特に限定するものではない。含有するホウ素原子は、該材料の耐熱酸化性を向上させる上で重要な成分である。窒素原子は、ホウ素原子を窒化ホウ素として固定化する上で重要な成分である。炭素原子と窒素原子は、吸着活性点を形成する上で重要な成分である。したがって、本発明では組成比x:y:zを特定するものではないが、吸着性能及び耐久性の観点からy=(0.1〜100)xでありx≒Zであるような炭窒化ホウ素材料が好ましく、y=(1〜20)xでありx≒zであるような炭窒化ホウ素材料がさらに好ましいことがわかった。炭素の成分比率がホウ素又は窒素の100倍を超える場合でも高い吸着性能を有するが、耐熱性が活性炭の性質に近づくので、100倍以下であるのが好ましい。また、炭素の成分比率がホウ素又は窒素の10分の1未満になると吸着サイトの性質が親水性から親油性になってくるので、10分の1以上であるのが好ましい。
【0010】
本発明活性B−C−N材料は、吸着性の乏しい通常のB−C−N材料に賦活処理を施すことによって製造するので、使用するB−C−N材料の物理的性状(例えば、比表面積とか結晶構造など)がどのようなものであっても賦活処理は可能であるが、吸着性の乏しいB−C−N材料に共通した性質は、表面官能基がほとんどないこと、細孔が実質的に存在しないか、あるいはあったとしても非常に少ないこと、であるのでこのようなB−C−N材料が賦活処理の対象となる。細孔量は、比表面積とも直接関係しており、細孔が少ないということは比表面積が小さいことでもある。従来、B−C−N材料の比表面積に関する知見は非常に少ないので、おおよその数値を推定すると、膜状のものは0.1〜1m/gの範囲にあり、粒子状のものは1〜50m/gの範囲にあるものと推定される。従って、本発明において原料として用いるB−C−N材料の比表面積は、通常、0.1〜50m/gの範囲にあるが、一般的には、薄膜状の材料よりも粒子状の材料を賦活処理するほうが生産的に有利であるので、好ましい比表面積は1〜50m/gである。また、細孔の量的尺度は、一般的に、細孔容積で表すことができる。細孔が実質的に存在しないかあるいはあったとしても非常に少ないということを厳密に数値表現することは困難であるが、従来の吸着性の乏しいB−C−N材料の殆どは、その細孔容積が0.1cm/g以下である。
【0011】
本発明において原料として用いるB−C−N材料は、前記[背景技術]に述べたような特許文献2〜8に記載の製造方法によって製造することができる。これらの方法で製造されるB−C−N材料は、通常、黒鉛類似構造(グラファイト構造やグラファイト構造よりもc軸方向の対称性がよくないturbostratic構造などの総称)もしくは明確なX線回折パターンを持たない無定形の材料や緻密な立方晶構造をもつものである。しかし、一般的に、従来のB−C−N材料は、比表面積が小さい、細孔がほとんどない、吸着のための官能基がほとんどない、等の理由から吸着剤としての機能はもっていない。本発明活性B−C−N材料は、このような吸着性の乏しいB−C−N材料を原料として使用する。本発明活性B−C−N材料を製造するためには、賦活処理が比較的容易で量産可能な黒鉛類似構造もしくは無定形のB−C−N材料のほうが好ましい。
賦活処理によって得られる本発明活性B−C−N材料の比表面積は、通常、100〜3000m/gであり、好ましくは200〜1000m/gである。100m/g未満では吸着性能が不十分であるので100m/g以上であることが好ましく、また、3000m/gを越えると機械的な耐久性の低下が大きくなるので3000m/g以下であることが好ましい。
【0012】
本発明活性B−C−N材料は、賦活処理によって比表面積が増大しているだけでなく微細な細孔と親水性の官能基を多量に含有している。賦活処理によって新たに生成する細孔の細孔分布は、通常、0.4nm〜50nmの範囲が好ましく、0.6nm〜20nmの範囲がさらに好ましく、0.8nm〜3nmの範囲が最も好ましい。0.4nm未満では被吸着物質の細孔内拡散が不十分であるので0.4nm以上であることが好ましく、また、50nmよりも大きいと吸着性能が不十分となるので50nm以下であることが好ましい。また、賦活処理によって新たに生成する親水性の官能基は、水酸基(OH)、アルコール性水酸基(ROH)、カルボニル基(CO)、カルボキシル基(COH)、アミノ基(NH)等であり、これらの官能基のトータル濃度は酸素含有量換算で、通常、B−C−N材料当たり1〜20質量%の範囲であることが好ましく、5〜15質量%の範囲であることがさらに好ましい。1質量%未満では、吸着性能が不十分であるので1質量%以上であることが好ましく、また、20質量%よりも大きくなると機械的な耐久性の低下が大きくなるので20質量%以下であることが好ましい。
【0013】
本発明活性B−C−N材料は、前記に述べたように比表面積の小さい炭窒化ホウ素材料を原料に用いてこれを賦活処理することによって製造される。賦活処理に用いる薬剤としては酸化剤を用いるのが有害物質吸着のための表面官能基を形成する上で好ましい。酸化剤としては、強塩基性物質、オキソ酸、オキソ酸塩、超臨界水、ハロゲン、過酸化水素、オゾン、二酸化窒素、二酸化硫黄、三酸化硫黄、五酸化リン、五酸化バナジウム、等を用いることができるが、これらの中で強塩基性物質、オキソ酸、オキソ酸塩、及び超臨界水が酸化力と取扱性の点から好ましい。強塩基性物質としては、アルカリ金属、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属の過酸化物、アルカリ金属の超酸化物、アルカリ金属の硝酸塩、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の過酸化物、アルカリ土類金属の超酸化物、アルカリ土類金属の硝酸塩、等が好ましく、中でもアルカリ金属の水酸化物、及びアルカリ土類金属の水酸化物は塩基性が高く取扱性も比較的容易なのでさらに好ましい。オキソ酸及びオキソ酸塩としては、硝酸、硫酸、燐酸、王水、混酸(硫酸と硝酸の混合液)、過塩素酸、過塩素酸塩、次亜ハロゲン酸、次亜ハロゲン酸塩、鉄酸塩、ヘテロポリ酸、ヘテロポリ酸塩、及び過マンガン酸塩は酸化力が高く取扱性も比較的容易なのでさらに好ましい。また、本発明における超臨界水とは、臨界定数を超える状態にある水分子のことである。水の臨界定数は、臨界温度がTc=647.3K、臨界圧力がPc=22.12MPaであるのでこの温度−圧力状態では、水分子は液体と気体の二相が相平衡している。また、500℃以上、36.65MPa以上は通常、超臨界状態と言われ、水分子のラジカル分解が生じているので、非常に強い酸化性を示す。本発明における超臨界水とはこのような超臨界状態にある水のことをいう。
強塩基性物質による賦活処理は、B−C−N材料に含有される炭素原子をアルコール基(ROH)、カルボニル基(CO)、カルボキシル基(COH)等に酸化するだけでなく窒素原子を塩基性の官能基であるアミノ基に変換する特徴がある。オキソ酸及びオキソ酸塩による賦活処理は、水酸基を生成する他、炭窒化ホウ素材料に含有される炭素原子をカルボニル基(CO)、カルボキシル基(COH)等に酸化する特徴がある。また、超臨界水による賦活処理は、新たに水酸基を生成する特徴がある。
【0014】
以上の薬剤(超臨界水を除く)を用いた賦活処理は、通常、薬剤の水溶液中に原料であるB−C−N材料を加え室温〜該水溶液の沸点の温度で数10分〜数100時間処理することによって可能であるが、溶融状態の薬剤、又は、気体状態の薬剤を用いて室温〜500℃の範囲で数10分〜数100時間処理することも可能である。賦活処理の加熱温度、処理時間、等の賦活処理条件は、用いる酸化剤の酸化力に従って適宜調整を行なわなければならない。例えば、強塩基性のアルカリ水酸化物を用いる場合には、水溶液中で賦活処理を行った時と融点以上の温度で行った時とでは得られる活性B−C−N材料の比表面積、細孔径、官能基の生成量、及びB/C/Nの組成比が大きく異なる場合があるからである。通常、マイルドな条件では、処理時間は長くなるけれどもB/C/Nの組成比を原料の組成比とあまり変えることなく活性化ができるが、過酷な条件では、短時間で活性化を行うことができるが、材料の質量損失がかなり大きく、また窒素及びホウ素の含有量がかなり減少する。オキソ酸やオキソ酸塩、又は超臨界水を用いる場合も基本的に強塩基性物質の場合と同様である。
【0015】
上記の強塩基性物質による賦活処理、オキソ酸またはオキソ酸塩による賦活処理、及び超臨界水による賦活処理の中で、強塩基性物質による賦活処理が比表面積の増大、細孔径の分布、及び官能基の生成において適度に調和しているのでもっとも好ましい方法である。
以上の賦活処理では、酸素含有の官能基やアミノ基などが新たに導入されるのであるが、酸素含有量の調整やアミノ基の含有量を調整するために上記の賦活処理を行った後にさらに還元剤を用いて還元処理を行うこともできる。このような還元処理は、水素、ヒドラジン、アンモニア、等を用いた気流中での還元処理や水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、過酸化水素、チオ硫酸塩、等を用いた溶液中での還元処理、等によって行うことができる。
本発明活性B−C−N材料は、原料であるB−C−N材料と同様に耐酸化性が活性炭よりも非常に優れており、空気中400℃以上に加熱しても活性炭のように完全燃焼することはなく、600℃付近から質量減少が始まるが800℃付近で質量減少がほぼ停止し、1200℃でも60%程度質量が保持される。したがって、従来、使用困難であった自動車の排ガス浄化のための吸着材料として使用できる。
【0016】
本発明活性B−C−N材料は、排ガス中のNOx、SOx等の有害物質を低温領域から中温領域に渡って効率的に吸着除去するのに適している。自動車の排ガス浄化に用いる際は、通常、本発明活性B−C−N材料料と白金等の酸化触媒を組み合わせて用いる。その理由は、活性B−C−N材料による吸脱着のサイクルを触媒的に回転させるためである。被吸着物質の吸着速度は、気相における被吸着物質の濃度と活性B−C−N材料に吸着した被吸着物質の濃度との濃度差に依存するので、活性B−C−N材料に吸着した被吸着物質を速やかに排除することが大切であり、そのためには活性B−C−N材料よって吸着された被吸着物質を触媒上で還元性物質によって還元除去するのがよいからである。
白金等の酸化触媒としては、従来のγアルミナに担持した白金−ロジウム触媒を使用することができるが、比表面積が非常に大きく平均細孔径が2〜50nmのメソ領域にあるメソポーラス材料に白金等を担持した触媒のほうが良い成績を与えるので好ましい。中でも、比表面積が400〜2000m/gであり平均細孔径が数nmである非晶性(細孔配列に規則性がないことをいう)のメソポーラスシリカ材料に白金等を担持した触媒は非常に良い成績を与えるので好ましい。
【0017】
本発明活性B−C−N材料の粉体を排ガス浄化槽に充填して用いる場合には、白金触媒等の酸化触媒の粉末と混合して使用することができるが、本発明活性B−C−N材料を自動車用ハニカム支持体に塗布して用いる場合には、ハニカム支持体に本発明活性B−C−N材料を塗布した後でその上に白金触媒等の酸化触媒を塗布するのがよい(ダブルウオッシュコートという)。その理由は、本発明活性B−C−N材料と酸化触媒を混合した均一混合スラリーをハニカム支持体に塗布すると、活性B−C−N材料によって酸化触媒表面が部分的に被覆されるために触媒性能が損なわれるので、それを防止するためである。ダブルウオッシュコートの塗布層は少なくとも二層から構成されており、最上層(排ガスと直接接触する層)に白金触媒等の酸化触媒を設け、下層に本発明活性B−C−N材料の塗布層を設けるのは、最上層で排ガス中の一酸化窒素をNOに酸化し、生成NOを下層の本発明活性B−C−N材料で吸着させるためである。吸着したNOの一部は吸着した炭化水素によって還元処理され、また一部は脱着して上層の酸化触媒上で炭化水素によって還元処理される。
また、本発明活性B−C−N材料は、トラックやバス等の排ガスを浄化するための尿素SCR法式に用いる触媒と複合して用いると、100℃付近からNOx浄化が開始するので、大型ディーゼル車の排ガス浄化剤としても非常に好ましい。
【実施例】
【0018】
以下に実施例などを挙げて本発明を具体的に説明する。
実施例中のX線回折パターンはX線回折装置(リガク株式会社製造品:RINT-UltimaIII)を用いて測定した。比表面積、細孔容積、及び細孔分布は、脱吸着の気体として窒素を用い、カルロエルバ社製ソープトマチック1800型装置によって測定した。比表面積及び細孔容積はBET法によって求めた。細孔分布は、0.4〜200nmの範囲を測定し、BJH法で求められる微分分布で示した。細孔分布曲線は指数関数的に左上がりの分布を描き、特定の細孔直径の位置にピークを示すとき、このピークを与える細孔直径を平均細孔径とした。官能基は、赤外吸収スペクトル測定装置(JASCO FT-IR460)によって測定した。元素分析は元素分析装置(パーキンエルマー株式会社製造品:2400II CHNS/O元素分析装置)を用いて測定した。ホウ素の分析は、ICP−MS分析装置(VG-Elemental Plasmatrace ICP-mass Analyzer)を用いて測定した。排ガスのモデルガスとしてヘリウムで希釈した一酸化窒素(NO)−酸素(O)−プロピレン(C)の混合ガスを用いた。NOxの処理率は、減圧式化学発光法NOx分析計(日本サーモ株式会社製造品:モデル42i−HL及び46C−H)によって処理後のガスに含まれるNOxを測定し、以下の式(1)によって算出した。なお、NOx濃度は、一酸化窒素の濃度と二酸化窒素の濃度の合計である。
[数1]
{1−(反応後のガスに含まれるNOxの濃度÷反応前のガスに含まれるNOxの濃度)}×100(%) (1)
【0019】
「製造例1」BCN材料の製造
石英製の三口フラスコにメラミン50gを入れ200℃に加熱した。これに三塩化ホウ素ガスを導入し、三塩化ホウ素ガスの吸収が収まるまで反応を続けた。反応終了後、フラスコ内を窒素ガスで置換し、窒素ガスを流しながら500℃まで昇温しこの温度で1時間加熱を続けた。室温まで放冷後、この中間生成物をアルミナ製の坩堝に移し、電気炉に入れ、窒素気流下で1500℃まで昇温し、この温度で2時間加熱を続けた。室温まで放冷後、生成物を取り出した。元素分析の結果、組成比は、ホウ素:炭素:窒素≒1:1:1であった。赤外吸収スペクトルは、1400cm−1に強いピーク(ヘテロ環伸縮振動に帰属される)と794cm−1(ヘテロ環変角振動に帰属される)に弱いピークを示した。X線回折測定の結果、黒鉛類似の六方晶系に帰属され、a=0.245nm、c=0.696nmであった。また、比表面積は15m/g、細孔容積は0.06cm/gであり、左上がりの細孔分布曲線には約4nmと約80nmの位置に非常に小さなピークを示した。これらの結果から、生成物は黒鉛類似BCN材料であり、比表面積が小さく、細孔がほとんど存在しない材料であることが確認された。
【0020】
「製造例2」BCN材料の製造
石英製の三口フラスコにアセトニトリルの液体50gを入れ、これに三塩化ホウ素ガスを導入し、三塩化ホウ素ガスの吸収が収まるまで反応を続けた。反応終了後、フラスコ内を窒素ガスで置換し、窒素ガスを流しながら500℃まで昇温しこの温度で1時間加熱を続けた。室温まで放冷後、この中間生成物をアルミナ製の坩堝に移し、電気炉に入れ、窒素気流下で1500℃まで昇温し、この温度で2時間加熱を続けた。室温まで放冷後、生成物を取り出した。元素分析の結果、組成比は、ホウ素:炭素:窒素≒1:2:1であった。赤外吸収スペクトルは、1387cm−1に強いピークと794cm−1に弱いピークを示した。X線回折測定の結果、黒鉛類似の六方晶系に帰属され、a=0.240nm、c=0.682nmであった。また、比表面積は18m/g、細孔容積は0.07cm/gであり、左上がりの細孔分布曲線には約4nmと約80nmの位置に非常に小さなピークを示した。これらの結果から、生成物は黒鉛類似BCN材料であり、比表面積が小さく細孔がほとんど存在しない材料であることが確認された。
【0021】
「製造例3」BCN材料の製造
石英製の三口フラスコにポリアクリロニトリル(旭化成製造品:分子量約1万のアクリロニトリルのホモポリマー)の粉末50gを入れ、これに三塩化ホウ素ガスを導入し、三塩化ホウ素ガスの吸収が収まるまで反応を続けた。反応終了後、フラスコ内を窒素ガスで置換し、窒素ガスを流しながら500℃まで昇温しこの温度で1時間加熱を続けた。室温まで放冷後、この中間生成物をアルミナ製の坩堝に移し、電気炉に入れ、窒素気流下1500℃まで昇温し、この温度で2時間加熱を続けた。室温まで放冷後、生成物を取り出した。元素分析の結果、組成比は、ホウ素:炭素:窒素≒1:5:1であった。赤外吸収スペクトルは、1400cm−1に強いピークと794cm−1に弱いピークを示した。X線回折測定の結果、黒鉛類似の六方晶系に帰属され、a=0.242nm、c=0.676nmであった。また、比表面積は17m/g、細孔容積は0.07cm/gであり、左上がりの細孔分布曲線には約4nmと約80nmの位置に非常に小さなピークを示した。これらの結果から、生成物は黒鉛類似BCN材料であり、比表面積が小さく、細孔がほとんど存在しない材料であることが確認された。
【0022】
「製造例4」BC10N材料の製造
石英製の三口フラスコに1,10−ジアミノデカン50gを入れ100℃に加熱した。これに三塩化ホウ素ガスを導入し、三塩化ホウ素ガスの吸収が収まるまで反応を続けた。反応終了後、フラスコ内を窒素ガスで置換し、窒素ガスを流しながら500℃まで昇温しこの温度で1時間加熱を続けた。室温まで放冷後、この中間生成物をアルミナ製の坩堝に移し、電気炉に入れ、窒素気流下1500℃まで昇温し、この温度で2時間加熱を続けた。室温まで放冷後、生成物を取り出した。元素分析の結果、組成比は、ホウ素:炭素:窒素≒1:10:1であった。赤外吸収スペクトルは、1400cm−1に強いピークと794cm−1に弱いピークを示した。X線回折測定の結果、黒鉛類似の六方晶系に帰属され、a=0.240nm、c=0.670nmであった。また、比表面積は16m/g、細孔容積は0.06cm/gであり、左上がりの細孔分布曲線には約4nmと約80nmの位置に非常に小さなピークを示した。これらの結果から、生成物は黒鉛類似BC10N材料であり、比表面積が小さく、細孔がほとんど存在しない材料であることが確認された。
【0023】
「製造例5」アルカリ水溶液での賦活処理による活性BCN材料の製造
ビーカーに製造例1のBCN材料の粉体を10g入れ、これに50質量%の水酸化カリウム水溶液100gを加えて、2時間沸騰させた。室温まで放冷後、これに1リットルの蒸留水を加えて攪拌した液を減圧濾過、ろ液がほぼ中性になるまで十分に水洗した後、120℃で5時間真空乾燥した。元素分析の結果、組成比は、ホウ素:炭素:窒素:水素:酸素≒1:2:1:0.2:0.2であり、酸素含有量は約6質量%であった。赤外吸収スペクトルは、1560cm−1付近にブロードな弱いピーク(C=C伸縮振動及びC=O伸縮振動に帰属される)、1400cm−1付近にブロードな中程度のピーク(ヘテロ環伸縮振動に帰属される)、1020cm−1付近にブロードな中程度のピーク(C−O伸縮振動に帰属される)、795cm−1に弱いピーク(ヘテロ環変角振動に帰属される)を示した。粉末X線回折測定の結果、黒鉛類似の六方晶系に帰属され、a=0.240nm, c=0.682nmであった。また、比表面積は120m/g、細孔容積は0.12cm/gであり、平均細孔径は2.4nmであった。これらの結果から、生成物は活性BCN材料であることがわかった。
【0024】
「製造例6」溶融アルカリ条件での賦活処理による活性BCN材料の製造
磁製皿に製造例1のBCN材料の粉体を10g入れ、これに50質量%の水酸化カリウム水溶液20gを加えて、蒸発乾固した後、約400℃まで昇温しこの温度で1時間加熱を続けた。室温まで放冷後、これに1リットルの蒸留水を加えて固形物を分散させた分散液を減圧濾過、ろ液がほぼ中性になるまで十分に水洗した後、120℃で5時間真空乾燥した。元素分析の結果、組成比は、ホウ素:炭素:窒素:水素:酸素≒1:6:1:3:0.6であり、酸素含有量は約8質量%であった。赤外吸収スペクトルは、2920cm−1及び2950cm−1に非常に小さなピーク(C−H伸縮振動に帰属される)、1560cm−1付近にブロードな弱いピーク、1400cm−1付近にブロードな弱いピーク、1020cm−1付近にブロードな中程度のピークを示した。粉末X線回折測定の結果、黒鉛類似の六方晶系に帰属され、a=0.240nm,c=0.682nmであった。また、比表面積は430m/g、細孔容積は0.36cm/gであり、平均細孔径は1.0nmであった。これらの結果から、生成物は活性BCN材料であることがわかった。
【0025】
「製造例7」溶融アルカリ条件での賦活処理による活性BC12N材料の製造
磁製皿に製造例2のBCN材料の粉体を10g入れ、これに50質量%の水酸化カリウム水溶液20gを加えて、蒸発乾固した後、約400℃まで昇温しこの温度で1時間加熱を続けた。室温まで放冷後、これに100倍量の蒸留水を加えて分散させた分散液を減圧濾過、ろ液がほぼ中性になるまで十分に水洗した後、120℃で5時間真空乾燥した。元素分析の結果、組成比は、ホウ素:炭素:窒素:水素:酸素≒1:12:1:6:1であり、酸素含有量は約8質量%であった。赤外吸収スペクトルは、2920cm−1及び2950cm−1に非常に小さなピーク、1560cm−1付近にブロードな弱いピーク、1400cm−1付近にブロードな弱いピーク、1020cm−1にブロードな中程度のピークを示した。粉末X線回折測定の結果、黒鉛類似の六方晶系に帰属され、a=0.242nm,c=0.711nmであった。また、比表面積は330m/g、細孔容積は0.28cm/gであり、平均細孔径は0.8nmであった。これらの結果から、生成物は活性BC12N材料であることがわかった。
【0026】
「製造例8」溶融アルカリ条件での賦活処理による活性BC20N材料の製造
磁製皿に製造例3のBCN材料の粉体を10g入れ、これに50質量%の水酸化カリウム水溶液20gを加えて、蒸発乾固した後、約400℃まで昇温しこの温度で1時間加熱を続けた。室温まで放冷後、これに100倍量の蒸留水を加えて分散させた分散液を減圧濾過、ろ液がほぼ中性になるまで十分に水洗した後、120℃で5時間真空乾燥した。元素分析の結果、組成比は、ホウ素:炭素:窒素:水素:酸素≒1:20:8:2であり、酸素含有量は約10質量%であった。赤外吸収スペクトルは、2920cm−1及び2950cm−1に非常に小さなピーク、1580cm−1付近にブロードな弱いピーク(C=C伸縮振動及びC=O伸縮振動に帰属される)、1400cm−1付近にブロードな弱いピーク、1020cm−1にブロードな中程度のピークを示した。粉末X線回折測定の結果、黒鉛類似の六方晶系に帰属され、a=0.240nm,c=0.720nmであった。また、比表面積は650m/g、細孔容積は0.48cm/gであり、平均細孔径は1.0nmであった。これらの結果から、生成物は活性BC20N材料であることがわかった。
【0027】
「製造例9」オキソ酸を用いた賦活処理による活性BC20N材料の製造
ビーカーに混酸200g(質量比が濃硫酸:濃硝酸=8:2の混合液)を入れ、これに製造例2のBCN材料の粉体を10g入れ、室温で1時間攪拌した。2リットルの蒸留水を加えて希釈した後、ガラスフィルターで固形物を濾別した。該固形物を10%の炭酸水素ナトリウム水溶液100gに入れ、沈殿物をガラスフィルターで濾別し、蒸留水で濾液がほぼ中性になるまで十分に洗浄した後、120℃で5時間真空乾燥した。元素分析の結果、組成比は、ホウ素:炭素:窒素:水素:酸素≒1:20:1:10:3であり、酸素含有量は約15質量%であった。赤外吸収スペクトルは、1732cm−1付近にブロードな弱いピーク(カルボキシル基の伸縮振動に帰属される)、1600cm−1付近にブロードな中程度のピークを示した(C=C伸縮振動及びC=O伸縮振動に帰属される)。粉末X線回折測定の結果、黒鉛類似の六方晶系に帰属され、a=0.240nm,c=0.730nmであった。また、比表面積は820m/g、細孔容積は0.70cm/gであり、平均細孔径は1.0nmであった。これらの結果から、生成物は活性BC20N材料であることがわかった。
【0028】
「製造例10」オキソ酸塩を用いた賦活処理による活性BC16N材料の製造
ビーカーに20質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液200gを入れ、これに製造例4のBC10N材料の粉体を10g入れ、1時間沸騰させた。ガラスフィルターで固形物を濾別し、10質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液100gを用いて洗浄後、蒸留水で濾液がほぼ中性になるまで十分に洗浄した後、120℃で5時間真空乾燥した。元素分析の結果、組成比は、ホウ素:炭素:窒素:水素:酸素≒1:16:1:1:1であり、酸素含有量は約7質量%であった。赤外吸収スペクトルは、1590cm−1付近にブロードな弱いピーク(C=C伸縮振動及びC=O伸縮振動に帰属される)、1400cm−1付近にブロードな中程度のピーク、1020cm−1にブロードな弱いピーク、795cm−1に小さいピークを示した。粉末X線回折測定の結果、黒鉛類似の六方晶系に帰属され、a=0.240nm,c=0.682nmであった。また、比表面積は210m/g、細孔容積は0.18cm/gであり、平均細孔径は1.0nmであった。これらの結果から、生成物は活性BC16N材料であることがわかった。
【0029】
「製造例11」超臨界水を用いた賦活処理による活性BC20N材料の製造
鉄製の耐圧容器に製造例1のBCN材料の粉体を10g入れ、蒸留水100gを加えて、密閉後、電気炉に入れ500℃で5時間加熱した。室温まで放冷後、内容物を取り出し減圧濾過、蒸留水で洗浄した後、120℃で5時間真空乾燥した。元素分析の結果、組成比は、ホウ素:炭素:窒素≒1:20:1:10:4であり、酸素含有量は約19質量%であった。赤外吸収スペクトルは、2920cm−1及び2950cm−1に非常に小さなピーク、1580cm−1付近にブロードな中程度のピーク(C=C伸縮振動及びC=O伸縮振動に帰属される)、1400cm−1付近にブロードな弱いピーク、1020cm−1にブロードな中程度のピークを示した。粉末X線回折測定の結果、黒鉛類似の六方晶系に帰属され、a=0.240nm,c=0.740nmであった。また、比表面積は1860m/g、細孔容積は2.60cm/gであり、平均細孔径は1.0nmであった。これらの結果から、生成物は活性BC20N材料であることがわかった。
【0030】
「製造例12」〔Pt−Rh/γアルミナ〕触媒の製造
蒸留水20gにHPtCl・6HOを0.6642g、及び塩化ロジウムを0.0153g加えて溶解させた。この水溶液を蒸発皿に入れ、これに市販のγアルミナ(日揮化学株式会社製造品:比表面積250m/g、平均細孔径6.2nm)5gを入れて、均一にかき混ぜ、スチームバスで蒸発乾固した後、真空乾燥機に入れ100℃−3時間真空乾燥を行った。この試料を石英管に入れ、ヘリウム希釈水素ガス(10v/v%)気流下500℃で3時間還元を行った。γアルミナに担持された白金、及びロジウムのそれぞれの担持量は、5質量%、及び0.15質量%であった。
【0031】
「製造例13」NOx吸蔵還元型触媒の製造
蒸留水20gにHPtCl・6HOを0.6642g、塩化ロジウムを0.0153g、及び炭酸バリウムを1.762g加えて溶解させた。この水溶液を蒸発皿に入れ、これに市販のγアルミナ(日揮化学株式会社製造品:比表面積250m/g、平均細孔径6.2nm)5gを入れて、均一にかき混ぜ、スチームバスで蒸発乾固した後、真空乾燥機に入れ100℃−3時間真空乾燥を行った。この試料を石英管に入れ、ヘリウム希釈水素ガス(10v/v%)気流下500℃−3時間還元を行った。γアルミナに担持された白金、ロジウム、及びバリウムのそれぞれの担持量は、5質量%、0.15質量%、及び10質量%であった。
【0032】
「製造例14」〔Pt−Rh/メソポーラスシリカ〕触媒の製造
蒸留水300gにエタノール240g、及びドデシルアミン30gを入れ、溶解させた。攪拌下でテトラエトキシシラン125gを加えて室温で22時間攪拌した。生成物を濾過、水洗し、110℃で5時間温風乾燥した後、空気中550℃5時間焼成して含有するドデシルアミンを分解除去し、メソポーラスシリカを製造した。該メソポーラスシリカを小角X線回折測定した結果、2θ角が2.72度(d=3.25nm)の所に1本のブロードな回折ピークを示した。また、透過型電子顕微鏡観察の結果、細孔の配列には規則的な配列が観測されず無秩序に分散している状態が観測された。これらの結果から、製造したメソポーラスシリカは、細孔配列について非晶性であることが確認された。また、細孔分布及び比表面積測定の結果、約2.5nmの位置に細孔ピークがあり、比表面積が1123m/g、及び細孔容積が0.89cm/gであった。
次に、蒸留水20gにHPtCl・6HOを0.6642g、及び塩化ロジウムを0.0153g溶解した水溶液を蒸発皿に入れ、これに上記のメソポーラスシリカ材料5gを加え、スチームバスで蒸発乾固した後、真空乾燥器に入れ100℃−3時間真空乾燥を行った。この試料を石英管に入れ、ヘリウム希釈水素ガス(10v/v%)気流下500℃で3時間還元を行った。メソポーラスシリカに担持された白金、及びロジウムの担持量は、それぞれ5質量%、及び0.15質量%であった。
【0033】
「製造例15」〔Pt−Rh/γアルミナ〕触媒とアルカリ賦活活性BCN材料を混合した触媒の製造
製造例12の触媒80mgと製造例5の活性BCN材料100mgを乳鉢に入れ均一混合物を製造した。
「製造例16」〔Pt−Rh/メソポーラスシリカ〕触媒とアルカリ賦活活性BCN材料との混合触媒の製造
製造例14の触媒80mgと製造例6の活性BCN材料100mgを乳鉢に入れ均一混合物を製造した。
「製造例17」〔Pt−Rh/メソポーラスシリカ〕触媒とアルカリ賦活活性BC12N材料との混合触媒の製造
製造例14の触媒80mgと製造例7の活性BC12N材料100mgを乳鉢に入れ均一混合物を製造した。
【0034】
「製造例18」〔Pt−Rh/メソポーラスシリカ〕触媒とアルカリ賦活活性BC20N材料との混合触媒の製造
製造例14の触媒80mgと製造例8の活性BC20N材料100mgを乳鉢に入れ均一混合物を製造した。
「製造例19」〔Pt−Rh/メソポーラスシリカ〕触媒とオキソ酸賦活活性BC20N材料との混合触媒の製造
製造例14の触媒80mgと製造例9の活性BC20N材料100mgを乳鉢に入れ均一混合した触媒を製造した。
「製造例20」〔Pt−Rh/メソポーラスシリカ〕触媒とオキソ酸塩賦活活性BC16N材料との混合物の製造
製造例14の触媒80mgと製造例10の活性BC16N材料100mgを乳鉢に入れ均一混合物を製造した。
「製造例21」〔Pt−Rh/メソポーラスシリカ〕触媒と超臨界水賦活活性化BC20N材料との混合物の製造
製造例14の触媒80mgと製造例11の活性BC20N材料100mgを乳鉢に入れ均一混合物を製造した。
【0035】
「製造例22」〔Pt−Rh/メソポーラスシリカ〕触媒とアルカリ賦活活性BCN材料を塗布したハニカム触媒の製造
製造例6の活性BCN材料の粉末12.5gを蒸留水100mLに加え、攪拌してスラリーを調整した(スラリーA)。また、製造例14の触媒10gとシリカゾル1gを蒸留水100mlに加え、攪拌してスラリーを調整した(スラリーB)。スラリーAに、市販のコージェライトモノリス成形体(4.5mil/400cells/in、直径143.8mm×長さ118mm)から切り出したミニ成形体(直径38mm×長さ50mm)を浸漬し、ミニ成形体を取り出し風乾した後、窒素気流中で500℃−3時間熱処理した。次にこのミニ成形体をスラリーBに浸漬し、ミニ成形体を取り出し風乾した後、窒素気流中で500℃−3時間熱処理した。ミニ成形体当たりの活性BCN材料の付着量は6g、メソポーラスシリカ担持白金−ロジウム触媒の付着量は4.6gであった。
【0036】
「製造例23」〔Pt−Rh/メソポーラスシリカ〕触媒と未処理BCN材料との混合触媒の製造
製造例14の触媒80mgと製造例3の未処理BCN材料100mgを乳鉢に入れ均一混合物を製造した。
「比較例1」〔Pt−Rh/γアルミナ〕触媒のNOx浄化性能
製造例12の触媒80mgと海砂1mlを均一に混合し、石英製の連続流通式反応管(外径20mm×内径16mm×長さ200mm)に充填し、管状電気炉に入れ、ヘリウムで濃度調整したNOx含有の模擬ガスを流通して、NOx浄化を行った。模擬ガスの成分モル濃度は、一酸化窒素250ppm、酸素10%、プロピレン400ppmとした。反応管に導入した模擬ガスの流量は毎分500mlとした。反応管入口での模擬ガスの温度を150℃から400℃に調整した。処理後のガスに含まれるNOx濃度をオンライン測定し、NOx処理率を求めた。結果を表1に示した。
【0037】
「比較例2」NOx吸蔵還元型触媒のNOx浄化性能
製造例13の触媒80mgと海砂を均一混合した粉末1mlを用いて比較例1と同様の方法によりNOx処理率を求めた。結果を表1に示した。
「比較例3」〔Pt−Rh/メソポーラスシリカ〕触媒のNOx浄化性能
製造例14の触媒80mgと海砂を均一混合した粉末1mlを用いて比較例1と同様の方法によりNOx処理率を求めた。結果を表1に示した。
「比較例4」〔Pt−Rh/メソポーラスシリカ〕触媒と未処理BCN材料との混合物のNOx浄化性能
製造例23の触媒180mgと海砂を均一混合した粉末1mlを用いて比較例1と同様の方法によりNOx処理率を求めた。結果を表1に示した。
【0038】
「実施例1」〔Pt−Rh/γアルミナ〕触媒+アルカリ賦活活性BCN材料のNOx浄化性能
製造例15の触媒180mgと海砂を均一混合した粉末1mlを用いて比較例1と同様の方法によりNOx処理率を求めた。結果を表1に示した。
「実施例2」〔Pt−Rh/メソポーラスシリカ〕触媒+アルカリ賦活活性BCN材料のNOx浄化性能
製造例16の触媒180mgと海砂を均一混合した粉末1mlを用いて比較例1と同様の方法によりNOx処理率を求めた。結果を表1に示した。
「実施例3」〔Pt−Rh/メソポーラスシリカ〕触媒+アルカリ賦活活性BC12N材料のNOx浄化性能
製造例17の触媒180mgと海砂を均一混合した粉末1mlを用いて比較例1と同様の方法によりNOx処理率を求めた。結果を表1に示した。
【0039】
「実施例4」〔Pt−Rh/メソポーラスシリカ〕触媒+アルカリ賦活活性BC20N材料のNOx浄化性能
製造例18の触媒80mgと海砂を均一混合した粉末1mlを用いて比較例1と同様の方法によりNOx処理率を求めた。結果を表1に示した。
「実施例5」〔Pt−Rh/メソポーラスシリカ〕触媒+オキソ酸賦活活性BC20N材料のNOx浄化性能
製造例19の触媒80mgと海砂を均一混合した粉末1mlを用いて比較例1と同様の方法によりNOx処理率を求めた。結果を表1に示した。
「実施例6」〔Pt−Rh/メソポーラスシリカ〕触媒+オキソ酸塩賦活活性BC16N材料のNOx浄化性能
製造例20の触媒180mgと海砂を均一混合した粉末1mlを用いて比較例1と同様の方法によりNOx処理率を求めた。結果を表1に示した。
【0040】
「実施例7」〔Pt−Rh/メソポーラスシリカ〕触媒+超臨界水賦活活性BC20N材料のNOx浄化性能
製造例21の触媒180mgと海砂を均一混合した粉末1mlを用いて比較例1と同様の方法によりNOx処理率を求めた。結果を表1に示した。
「実施例8」〔Pt−Rh/メソポーラスシリカ〕触媒+アルカリ賦活の活性BCN材料を塗布したハニカム触媒のNOx浄化性能
製造例22のハニカム触媒を石英製の連続流通式反応管(外径46mm×内径40mm×長さ500mm)に充填し、管状電気炉に入れ、ヘリウムで濃度調整したNOx含有の模擬ガスを流通して、NOx浄化を行った。模擬ガスの成分モル濃度は、一酸化窒素250ppm、酸素10%、プロピレン400ppmとした。反応管に導入した模擬ガスの流量は毎分27.5リットルとした。反応管入口での模擬ガスの温度を160℃から400℃に調整した。処理後のガスに含まれるNOx濃度をオンライン測定し、NOx処理率を求めた。結果を表2に示した。
【0041】
【表1】

表1の結果から、本発明活性B−C−N材料は、低温領域の排ガス浄化に効果があるだけでなく中温領域でも優れた性能を発揮することがわかる。
【0042】
【表2】

表2の結果から、本発明活性B−C−N材料を塗布した自動車排ガス浄化用ハニカム触媒は、低温から中温領域の全温度領域に渡って優れた浄化性能を示すので、自動車排ガス浄化用に好適であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明活性B−C−N材料は、有害物質の吸着除去に用いることができる。特に、自動車用排ガス浄化のための吸着除去材として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素、窒素、及びホウ素からなる活性B−C−N材料であって、比表面積が100〜3000m/g、平均細孔径が0.4〜50nm、及びB−C−N材料の酸素含有量が1〜20質量%であることを特徴とする活性B−C−N材料。
【請求項2】
比表面積が0.1〜50m/gであるB−C−N材料を酸化剤によって賦活処理することを特徴とする請求項1に記載の活性B−C−N材料の製造方法。
【請求項3】
酸化剤が強塩基性物質であることを特徴とする請求項2に記載の活性B−C−N材料の製造方法。
【請求項4】
酸化剤がオキソ酸、又はオキソ酸塩であることを特徴とする請求項2に記載の活性B−C−N材料の製造方法。
【請求項5】
酸化剤が超臨界水であることを特徴とする請求項2に記載の活性B−C−N材料の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の活性B−C−N材料を排ガス浄化に用いることを特徴とする排ガス浄化方法。

【公開番号】特開2009−119423(P2009−119423A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298778(P2007−298778)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【出願人】(000173924)財団法人野口研究所 (108)
【Fターム(参考)】