説明

流れ制御のためのセンサ及び制御ユニット、並びに流体の制御送達のための方法

本発明は、センサ102及びこのセンサと協働するための制御ユニット702に関する。このセンサ102は、導管306を流れる流体308の速度を測定するのに役立つ。前記センサ102は、熱測定原理を使用し、この測定原理は、加熱素子106により損失される電力量に作用する外乱に関してロバストである。センサ受信器110は、前記センサ102と協働するための制御ユニット702に含まれる制御送信器722により発生する電磁放射線を受信するために配される。この電磁放射線は、前記流体を加熱するために配される加熱素子106に給電するために使用される。前記センサ102に含まれるトランスデューサ装置により発生する測定信号に基づいて、制御アクチュエータ724は、前記流体の速度を制御する。この目的のために、センサ送信器116は、前記測定信号を制御受信器に送信するために配される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導管(channel)を流れる流体の速度を測定するためのセンサに関する。
【0002】
本発明はさらに、前記センサと協働するための制御ユニットにも関する。
【0003】
さらに本発明は、前記センサ及び前記制御ユニットを有するシステムにも関する。
【0004】
本発明はさらに、医療応用における前記システムの使用にも関する。
【0005】
その上、本発明は、液剤の送達のための方法にも関する。
【背景技術】
【0006】
米国特許番号US-A 5,533,412号において、流体が流れるための管、流体に熱パルスを発生させるための前記管の内側にある加熱素子、及び前記管の内側にあり、前記加熱素子より下流に位置付けられる2つの間隔を介したセンサを有する流量計が開示され、ここで前記流体は、熱パルスを前記管を介して前記2つの間隔を介したセンサに搬送し、この2つの間隔を介したセンサ間の熱パルスの通過時間が流体の流速を測定する。この流量計はさらに、前記加熱素子に電力パルスを供給するために、前記管に取り付けられている回路を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
米国特許番号US-A 5,533,412号に開示される技術は、導管が定期的に取り替えられる応用、例えば静脈内注射、麻酔の流れ制御、尿道カテーテルのような滅菌状態で行われる医療応用には適していない。このような医療介入中、一般に多数の導管が患者毎に連続して使用される。US-A 5,533,412号に開示される流量計は、導管が取り替えられる度に廃棄されるのでは費用がかかりすぎる。US-A 5,533,412号に開示される流量計のリサイクルもその流量計を他の導管で使用するのに必要な労力を考えると、経済的可能性があるオプションではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の目的は、導管が定期的に取り替えられる応用、特に滅菌医療応用において速度を測定するためのセンサを提供することである。
【0009】
本発明の第2の目的は、前記センサと協働するための制御ユニットを提供することである。
【0010】
本発明の第3の目的は、前記センサ及び前記導管を有するシステムを提供することである。
【0011】
本発明の第4の目的は、前記導管が定期的に交換される応用において、液剤の制御送達のための方法を提供することである。
【0012】
本発明の前記第1の目的は、本発明による前記センサにより達成され、このセンサは、導管を流れる流体、すなわち液体又は気体の速度を測定するために配され、並びにチップ及びセンサ受信器を有し、前記チップは前記流体を加熱するための加熱素子及び導管を流れる流体の速度を示す測定信号を発生させるためのトランスデューサ装置を有し、前記測定信号は第1の空間温度差と第2の空間温度差との比に基づき、並びに前記センサ受信器は前記加熱素子に給電するための電磁放射線を受信するために配されている。
【0013】
前記測定信号を第1の空間温度差と第2の空間温度差との比に基づかせることにより、この測定信号は、前記加熱素子に供給される実際の電力レベルと無関係である。すなわち、前記第1の空間温度差と前記第2の空間温度差は共に、少なくとも様々な流体の流速に対し、アフィン方法(affine way)での加熱素子により損失される電力に関する。アフィン関係は、一次式の定数項が零に等しい場合に、一次関係となる。従って、前記第1の空間温度差と前記第2の空間温度差との比をとることにより、加熱素子により損失される電力とは無関係である関係が得られる。前記測定信号をこの関係と結び付けたとしても、前記測定信号は、加熱素子により損失される電力量に作用する外乱に関してロバストである。
【0014】
加熱素子の電気抵抗及びセンサに含まれるチップに関する制作公差の変化のような外乱は別として、電磁放射線を介して電力を供給する技術は、加熱素子に供給される及び加熱素子により損失される電力量にかなりの外乱を受けやすい。例えば、送信装置に対するセンサ受信器の位置は、機械的衝撃の影響下又はセンサの取り替えによって変化してもよい。
【0015】
前記センサは、加熱素子に給電するための電磁放射線を受信するためのセンサ受信器を有する。ここで、加熱素子は、電磁放射線自身に含まれるエネルギーを介して給電されることができる。代わりに、この電磁放射線は、例えば小型バッテリーのようなエネルギー貯蔵を可能にするために用いられ、この小型バッテリーが加熱素子に給電する。両方の場合において、電圧レベルを制御するための整流器及び付随する回路は、センサ受信器と加熱素子との間に挿入されない。すなわち、小型整流器及び付随する制御回路は、加熱素子に給電するのに必要な電力レベルを取り扱うことができない。結果として、加熱素子により損失される電力量は制御されることができず、従って変動する可能性が高い。
【0016】
前記測定信号は、加熱素子により損失される電力量に作用する外乱に関してロバストであるので、電磁放射線を介して電力を供給する技術は、流体の流速を正確に測定するためのセンサの応用に対し実現可能になる。
【0017】
電磁放射線を介して電力が供給される、すなわち電力がワイヤレスで供給されるという事実により、前記センサは、面倒な配線が無くなるので簡単に取り扱うことを可能にする。さらに、前記センサは、例えば医療応用において本質的に存在している電気接点という汚染の危険性が寧ろ制限されるので、簡単な取り扱い及び信頼できる応用を可能にする。
【0018】
さらに、前記センサは、使い捨て物品に容易に用いられることができる、すなわち、前記センサを廃棄することによる金銭的損失はかなり小さい。明らかに、前記センサは必ずしも廃棄される必要はない、すなわちセンサは継続使用を可能にする。特に、導管が取り替えられる場合、前記センサは、この導管と一緒に廃棄されることができるのに対し、システム全体の最も高価な部分である他の回路は再使用されることができる。そのおかげで、前記センサは特に、導管が定期的に取り替えられる応用、特に静脈内注射、麻酔の流れ制御、尿道カテーテル、呼吸制御並びに経腸栄養及び非経口栄養法の流量測定のような殺菌医療応用における、経済的に魅力のある使用を可能にする。センサの廃棄可能性のおかげで、前記センサを再び滅菌する極端に大きな労働力を要する処理が効果的に避けられる。
【0019】
医療応用とは別に、前記センサは、例えばきれいな水の製造、ケミカルリファイナリー(chemical refinery)、石油開発及びディーゼルエンジンのような応用において、流体の流速を測定するのにもよく適している。
【0020】
本発明の第2の目的は、本発明による制御ユニットにより達成され、この制御ユニットは、前記センサと協働するために配され、電磁放射線をセンサ受信器に送信するための制御送信器を有する。この制御送信器を含むことにより、前記制御ユニットは、加熱素子に給電するための電磁放射線を供給することが可能である。結果として、前記センサと前記制御ユニットとの間における協働は、物理的に接続することなく達成される。後者の特性は、前記センサが容易に制御ユニットから取り外すことができるので、前記導管が定期的に取り替えられる応用において経済的に魅力的な使用を保証し、この制御ユニットは再使用されることができる一方、前記センサは廃棄されることを可能にする。
【0021】
本発明の第3の目的は、本発明による前記システムにより達成され、このシステムは、本発明によるセンサと本発明による制御ユニットとの両方を有する。
【0022】
本発明の第4の目的は、本発明による方法により達成され、この方法は、液剤の制御送達のために配され、所定の流速を設定するステップ、前記制御ユニットを前記導管に取り外しできるように接続するステップ、前記センサ及びアクチュエータを用いることにより、前記導管を通る液剤の制御送達のためのステップ、前記制御ユニットを前記導管から取り外すステップ、並びに前記導管を廃棄するステップを有する。前記制御ユニット及び前記導管は互いに分離されている、すなわち導管は廃棄される一方、制御ユニットは再使用されるステップは、この導管が定期的に交換される応用において前記方法の経済的に魅力的な使用を保証する。
【0023】
本発明によるセンサの実施例において、第1の空間温度差は、加熱素子より前の流体の温度と加熱素子より後の流体の温度との数値差であり、第2の空間温度差は、加熱素子より下流の地点における流体の温度間の数値差に加えられる、加熱素子より上流の地点における流体の温度間の数値差である。この実施例の利益は、加熱素子に対して対称形状となることである。結果として、この実施例は、流れる方向に関して特定の方位を仮定しない。
【0024】
本発明によるセンサの他の実施例において、前記センサ受信器は、アンテナにより実施され、そのアンテナに加熱素子が組み込まれている。
【0025】
両方の場合において、電圧レベルを制御するための整流器及び付随する回路は、センサ受信器と加熱素子との間に挿入されない。すなわち、小型整流器及び付随する制御回路は、加熱素子に給電するのに必要な電力レベルを取り扱うことができない。結果として、加熱素子により損失される電力量は制御されることできず、従って変動する可能性が高い。
【0026】
本発明によるセンサの他の実施例において、前記センサは導管の壁内又は壁に置かれている。結果として、前記センサは、測定信号の精度のレベルを上げさせることを目的として、流体と流量センサとの間にある熱抵抗を減少させるために、導管を流れる流体のかなり近くに挿入されることができる。前記センサを導管の壁に組み込むことにより、このセンサは流体と物理的に接しない。後者の特性は、静脈内注射又は尿道カテーテルの流れ制御のような医療応用に不可欠である。すなわち、これらの応用において、前記センサ又はその一部が外れ、次いで流体の流れにより人間又は動物の身体に運ばれてしまう緊急事態を防ぐことが重要である。
【0027】
本発明によるセンサの他の実施例において、センサは導管と略同軸に配される。この文章において、同軸とは軸方向に共通する軸を共有する本体又は表面の配置と解釈される。故に、円形及び非円形の本体並びに表面は、同軸配置を可能にする。前記センサ及び前記導管を略同軸に配することにより、トランスデューサ装置により発生する測定信号の精度は上がる。
【0028】
本発明によるセンサの他の実施例において、前記チップは、測定信号を送信するためのセンサ送信器を有する。結果として、前記センサは、このセンサを駆動させ、このセンサに含まれるトランスデューサ装置により発生する測定信号に応答する如何なる回路からも物理的に全てが切り離されている。
【0029】
本発明による制御ユニットの他の実施例において、この制御ユニットは、導管を流れる流体の流速を制御するためのアクチュエータを有する。その結果、例えば重力のような前記流速の外的環境への依存は避けられる。
【0030】
本発明による制御ユニットの他の実施例において、制御ユニットは、この制御ユニットを導管に取り外しできるように接続するための機能を備える。そのおかげで、制御ユニット及びこの制御ユニットに含まれるアクチュエータは、センサ及び導管の廃棄可能性を妨げることなく、この導管における流体の速度を制御することが可能である。この特性は、センサを含む導管が定期的に、通例は1日に1回取り替えられる医療応用に特に利益である。すなわち、導管及び制御ユニットを取り外しできるように接続することにより、前記導管は廃棄可能である一方、制御ユニットは再使用されることができる。明らかに、配線が無いことは、センサを含む導管の交換を大きく容易にする。
【0031】
本発明による制御ユニットの他の実施例において、アクチュエータは、所定の流速とセンサに含まれるトランスデューサ装置により発生する測定信号との間の偏差に関する信号により制御可能である。結果として、例えば医師又は救急医療隊員(paramedic)の介入は、所定の投薬計画の流速に合わせるために、前記測定信号の値に基づいてアクチュエータの設定を調整する必要はない。
【0032】
本発明による制御ユニットの他の実施例において、アクチュエータは、センサに含まれるトランスデューサ装置により発生する測定信号を受信するためのアクチュエータ受信器を有する。そのおかげで、前記センサ及び前記アクチュエータは、如何なるハードウェアとも接続せずに操作可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明によるシステムの第1の実施例を概略的に表示し、センサは、2つの熱電対列(thermopile)からできているトランスデューサ装置を有する。
【図2】図2は、本発明によるセンサの第2の実施例を概略的に描き、センサは導管の壁に置かれている。
【図3】図3は、本発明によるシステムの第2の実施例を概略的に表示し、センサ受信器により受信される電磁放射線は加熱素子に給電するためのバッテリーを使用可能にする。
【図4】図4は、本発明によるセンサの第1の実施例及び第3の実施例に含まれるトランスデューサ装置による測定可能な量の説明を概略的に提供している。
【図5】図5は、本発明によるセンサの第4の実施例を概略的に表し、センサは、導管の壁内に置かれ、3つの熱電対列からできているトランスデューサ装置を有する。
【図6】図6は、本発明によるセンサの第5の実施例の断面図を概略的に示し、センサは導管と同軸に位置合わせされている。
【図7】図7は、本発明によるシステムの実施例を概略的に示し、本発明による制御ユニットは、本発明によるセンサと協働するために配されている。
【図8】図8は、制御ユニットが再使用されている本発明による方法の実施例を示しているフローチャートを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、ポリイミドから作られる基板を持つチップ104を有するセンサ102を表示している。後者の材料の利益は、それの比較的低いRF電力損失にある。ここで、RFは無線周波数を指し、約1MHzから約10GHzまでを範囲とする周波数を示している。センサ102はさらに、電磁放射線を受信するためのアンテナ110を有する。この電磁放射線に含まれるエネルギーは、加熱素子106に給電するために用いられ、この加熱素子106は、流体を加熱するために配されている。この加熱素子106は、前記アンテナ110に比較的大きな電気抵抗を局所的に供給することにより、このアンテナ110と一体化する。アンテナ110がより高い電気抵抗を持つ材料を局所的に備えるか、又は代わりにアンテナ110がより小さな断面積を局所的に備える。結果として、電力は比較的大きな電気抵抗に沿って損失され、この損失は熱となる。アンテナ110、少なくとも前記流体を加熱するために配されていないそのアンテナ110の一部は、チップ104上に置かれない。
【0035】
チップ104は、トランスデューサ装置108を有し、このトランスデューサ装置108は、第1の熱電対列112及び第2の熱電対列114を有する。この文書において、熱電対列は、複数の熱電対(thermocouple)の直列接続を指している。熱電対列は、絶対温度を測定するよりも、局所的な温度勾配又は温度差に関する出力を発生させる。第1の熱電対列112は、線Aでの温度と線Bでの温度との差を記録する。故に、この第1の熱電対列112は、加熱素子106の温度と基準位置での温度との差を測定し、この基準位置での温度はさらに基準温度とも呼ばれる。同様に、第2の熱電対列114は、線Cでの温度と線Dでの温度との差を測定する。それ故に、この第2の熱電対列114は、加熱素子106を通過した後の流体の温度と、加熱素子106を通過する前の流体の温度との差を測定する。トランスデューサ装置108は、第1の熱電対列112及び第2の熱電対列114の出力に基づいて、導管を流れる流体の速度を示す測定信号を発生させるために配される。前記チップはさらに、トランスデューサ装置108により発生する測定信号を送信するためのセンサ送信器116を有する。さらに、このチップは、メモリ118を有する。このメモリ118にデータが記憶され、このデータは、センサ102により速度が測定される流体が流れている導管の較正品質を含むことができる。導管と協働するセンサ102の使用が図2に開示され、この図は、本発明によるセンサの第2の実施例に関する。
【0036】
図2は、本発明による第2の実施例を表示し、ここでセンサ202は、導管206を流れる流体208の速度v[m/s]を測定するために、この導管206の壁204に置かれる。加熱素子210は、流体208を加熱するために配されている。第1の熱電対列212は、加熱素子210の温度Theat[K]と、この加熱素子210の下流の距離xrefに記録される(図4参照)基準温度Trefとの間の差を測定するために配される。この第1の熱電対列212の出力、すなわちTheat−Trefは、以下の関係、
【数1】

に従って、加熱素子21に供給される電力P[W]及び導管206における流体208の流速vに関係する。ここで、
【数2】

【数3】

【数4】

であり、lheatは、加熱素子の長さを示し、dは、センサ202から流体208までの距離であり、hは、流す導管の高さであり(図4参照)、図解は、上述した分量に対し与えられる。さらに、bheatは加熱素子210の幅であり、aflは、流体208の熱拡散率であり、lflは流体208の熱伝導率であり、λwallは壁204の熱伝導率、すなわちセンサ202と流体208との間にある物質の熱伝導率である。
【0037】
第2の熱電対列214は、加熱素子210を通過した後の流体208の温度Tafterと、加熱素子210を通過する前の流体208の温度Tprior[K]との差を測定するために配される。第2の熱電対列214の出力、すなわちTafter−Tpriorは、以下の関係、
【数5】

に従って、導管206における流体208の流速v及び温度Tに関係する。ここで、
【数6】

であり、xprior及びxafterは、加熱素子110から、第2の熱電対列214によりTprior及びTafterが記録されている位置までの上流距離及び下流距離を夫々示す(図4参照)。
【0038】
センサ202に含まれるトランスデューサ装置(図示せず)により発生する測定信号は、第1の熱電対列212の出力と第2の熱電対列214の出力との比τに基づいている。P≠0のとき、比τは、以下の無次元関係
【数7】

から得られ、ここでα及びαは夫々数式[III]及び[VI]から得られる。前記比τは、加熱素子210により損失される電力Pとは無関係である。故に、前記測定信号は、加熱素子210により損失される電力に作用する外乱に関してロバストである。さらに、関係[V]に従う測定信号は、周囲温度が変化する状態にあって不変である。故に、温度に関してオフセットはない。さらに、前記測定信号は、導管206を流れる流体208の速度vのかなり広範囲に対し感受性がある。結果として、前記測定信号は、速度vを示すかなり広い範囲を供給する。
【0039】
センサ202は、幅広い速度に対し比τを測定し、このセンサ202に含まれるメモリ(図示せず)にあるルックアップテーブルを用いて前記較正を記憶することにより較正される。この較正に基づいて、速度vは、τを測定し、次いでルックアップテーブルを用いることにより使用中に決められる。代わりに、速度vは、比τを測定し、次いで例えばニュートン・ラプソン法又は2分法のような、数式
【数8】

が零に等しくなるvの計算を意味する反復方式を用いることにより、[V]に基づいて計算されることができる。後者の手法の利点は、例えば流体の特性の変更が説明されることができるという事実である。
【0040】
数式[I]から[V]において、速度vは流路管206の断面積216を横断する一様な分布(profile)を持つと推定される。しかしながら、層流様式に対し、放物線状の速度分布が得られるだろう。比較的広範囲の流速内において、前記一様な速度分布は、前記放物線状の速度分布と明確に関連付けられることができる。それ故に、上述した矛盾は、センサ202の精度に関し制限を課さない。
【0041】
図3は、ポリイミドから作られた基板を持つチップ304及びセンサ受信器310を表示する。このセンサ受信器310は、電磁放射線を受信するために配されている。チップ304は、加熱素子306及びトランスデューサ装置308を有する。ここで、電磁放射線に含まれるエネルギーは、好ましい小型バッテリー312を可能にするために用いられている。このバッテリー312に蓄えられるエネルギーは、加熱素子306に給電するために用いられる。前記トランスデューサ装置308は、第1の熱電対列314、第2の熱電対列316及び第3の熱電対列318を有する。
【0042】
前記第1の熱電対列314は、線Aでの温度と線Bでの温度との数値差を記録する。故に、第1の熱電対列314は、加熱素子306より前の2地点における流体の温度差を測定する。同様に、第2の熱電対列316は、線Cでの温度と線Dでの温度との差を測定する。故に、前記第2の熱電対列316は、加熱素子306を通過した後の流体の温度と、加熱素子306を通過する前の流体の温度との差を測定する。前記第3の熱電対列318は、線Eでの温度と線Fでの温度との数値差を記録する。故に、前記第3の熱電対列は、加熱素子306より後の2地点における流体の温度差を測定する。トランスデューサ装置308は、第1の熱電対列314、第2の熱電対列316及び第3の熱電対列318の出力に基づいて導管を流れる流体の速度を示す測定信号を発生させるために配される。チップ304はさらに、トランスデューサ装置308により発生する前記測定信号を送信するためのセンサ送信器302を有する。センサ302により速度が測定される流体が流れる導管と協働してセンサ302の使用が図5に開示され、この図は、本発明の第4の実施例に関する。
【0043】
図5は、本発明によるセンサの実施例が表示され、センサ502は、導管506を流れる流体508の速度v[m/s]を測定するために、この導管506の壁504に置かれている。加熱素子510は、この流体508を加熱するために配されている。
【0044】
第1の熱電対列512は、加熱素子510より上流の2地点における流体508の温度Tprior'[K]とTprior"[K]との差を測定するために配される。この第1の熱電対列512の出力、すなわちTprior'−Tprior"は、以下の関係
【数9】

に従って、導管506における流体508の速度v及び温度Tに関係している。ここで、Tは数式[II]から得られ、αは数式[III]から得られる。
【0045】
第2の熱電対列514は、加熱素子510を通過した後の流体508の温度Tafterと、加熱素子510を通過する前の流体508の温度Tpriorとの差を測定するために配される。この第2の熱電対列514の出力、すなわちTafter−Tpriorは、数式[V]に従って、導管506における流体508の速度v及び温度Tに関係している。
【0046】
第3の熱電対列516は、加熱素子510より下流の2地点における流体508の温度Tafter'[K]とTafter"[K]との差を測定するために配される。この第3の熱電対列516の出力、すなわちTafter'−Tafter"は、以下の関係
【数10】

に従って、導管506における流体508の速度v及び温度Tに関係している。ここで、Tは数式[II]から得られ、αは数式[III]から得られる。
【0047】
センサ502に含まれるトランスデューサ装置(図示せず)により発生する測定信号は、第1の熱電対列512、第2の熱電対列514及び第3の熱電対列516の出力の比τ'に基づいている。P≠0のとき、前記比τ'は、以下の無次元関係
【数11】

から得られる。ここで、α及びαは夫々、数式[III]及び[VI]から得られる。前記比τ'は、加熱素子510により損失される電力Pとは無関係である。故に、前記測定信号は、加熱素子510により損失される電力に作用する外乱に関してロバストである。さらに、関係[V]に従う測定信号は、周囲温度が変化する状態にあって不変である。故に、温度に関してオフセットはない。さらに、前記測定信号は、導管506を流れる流体508の速度のかなり広範囲に対し感受性がある。結果として、前記測定信号は、前記速度vを示すかなり広い範囲を供給する。
【0048】
図6は、導管606を流れる流体608の速度を測定するために、センサ602がこの導管606の壁604に置かれている好ましい実施例を表示している。この導管606の壁604は、適切なプラスチック、例えばポリイミドから作られる。導管606は、内半径R及び外半径Rを持つ。センサ602は、R<R≦Rを保つ半径Rで導管606と同軸上に配される。好ましくは、センサ602に含まれるトランスデューサ装置(図示せず)により発生する測定信号の精度レベルを上げることを目的として、流体と流量センサとの間にある熱抵抗を減少させるために、距離R−Rは、かなり小さい、例えば約60μmである。明らかに、センサ602は、導管606を流れる流体608と物理的に接触していない。好ましくは、センサ602は、このセンサ602に含まれるトランスデューサ装置(図示せず)により発生する測定信号の精度を上げるために、前記流体608をかなりの程度まで覆う。
【0049】
図7は、本発明によるシステムの実施例を表示している。このシステムは、制御ユニット702及びセンサ704を有する。前記センサは、導管708の壁706に置かれている。制御ユニット702は、センサ704と協働するために配される。制御ユニット702は、第1のボディ710及び第2のボディ712を有する。本実施例において、これらボディは共に細長いボディである。本実施例において、第1のボディ710及び第2のボディ712は、ヒンジ装置714を介して接続されている。故に、第1のボディ710、第2のボディ712及びヒンジ装置は、外皮(casing)を構成する。代わりに、第1及び第2のボディは、ねじ、スナップ留め又はクランプを用いて接続することができる。
【0050】
ヒンジ装置714は、第1のボディ710及び第2のボディ712に対し、回転軸716に沿った相互の回転自由度φを設定する。第1のボディ710は、第1の窪み718を持つ第1の面717を有するのに対し、第2のボディは、第2の窪み720を持つ第2の面719を有する。相互の回転自由度φが零になる、すなわち前記面717及び719が互いに接触する、故に前記外皮が閉じた場合、第1の窪み718及び第2の窪み720の構成は、導管708を包み込むことができる。
【0051】
制御ユニット702は、センサ704に含まれる加熱素子(図示せず)に給電するために、このセンサ704に含まれるセンサ受信器(図示せず)に電磁放射線を送信するための制御送信器722を有する。ここで、加熱素子は、この電磁放射線自身に含まれているエネルギーを介して給電される。代わりに、この電磁放射線は、前記センサに含まれる小型バッテリー(図示せず)のようなエネルギー貯蔵を可能にするために用いられ、この小型バッテリーは加熱素子に給電する。
【0052】
制御ユニット702はさらに、導管708を流れる流体726の流速を制御するための制御アクチュエータ724を有する。従って、重力のような前記流速の外的環境への依存は避けられる。アクチュエータ724は、電磁モーター732により旋回軸730の周りを偏心して回転可能である好ましくは円筒体728により実施される。電磁モーター732は、導管708における流体726の所定の流速と、センサ724におけるトランスデューサ装置(図示せず)により発生する測定信号により示される速度との間の偏差に関連する信号により制御可能である。故に、所定の投薬計画の導管708における流体726の速度に合わせるために、例えば医師又は救急医療隊員の介入がアクチュエータ724の設定を調節する必要はない。アクチュエータ724は、センサ704に含まれるトランスデューサ装置により発生する測定信号を受信するためのアクチュエータ受信器734を有する。比較器736は、アクチュエータ受信器734により受信された測定信号を導管708における流体726の速度に対する所定の基準値と比較し、この基準値は、所定の投与計画に基づいている。
【0053】
相互回転軸716に沿った回転自由度φを零にすることを介して、導管708を適切に包む込むことにより、アクチュエータ724に含まれる偏心して回転可能であるボディ728は、導管708の断面の大きさを制御することができる。それによって、導管708における流体726の流速vは効果的に制御される。
【0054】
第1の窪み718は、第1の複数の円形空洞738を有する。この第1の複数の円形空洞738は、前記第1の窪み718に比べ平行方位ではない。同様に、第2の窪み720は、第2の複数の円形空洞740を有する。この第2の複数の円形空洞740は、前記第1の複数の円形空洞738の方位に一致する方位を持つ。第1の複数の円形空洞738及び第2の複数の円形空洞740は、導管708の上に取り付けられる複数の出っ張り(bulge)742を包み込むために配される。相互回転軸716に沿った回転自由度φを零にすることを介して、導管708を適切に包み込むことにより、並びに複数の出っ張り742を前記第1の複数の円形空洞738及び前記第2の複数の円形空洞740と位置合わせすることにより、導管708及び制御ユニット702の相互の軸位置が設定される。
【0055】
制御ユニット702及びセンサ704を有する前記システムは、導管708を流れる流体726の速度に関する情報を記憶、表示及び分析するシステムに組み込まれてもよい。
【0056】
このようなシステムの例は、患者監視システムである。患者監視システムにおいて、幾つかの装置が例えば、患者の血圧及び心拍数のような生命兆候を測定し、これら生命兆候を監視装置に送信する。この監視装置は、前記生命兆候に関する情報を記憶し、例えば医療専門家の要求に応じて情報を分析及び表示する。センサ704により供給される、導管708を流れる流体726の速度に関する情報は、例えば静脈内注射のような応用において、前記患者監視システムにより監視するためには不可欠である。この目的のために、制御ユニットは、他の制御送信器744と共に用いられ、この送信器は好ましくは患者監視システムとのワイヤレス接続を提供する。
【0057】
センサ704の応用は、おそらくは様々な企業により製造される、ポンプ、医療用重力点滴又は使い捨てポンプシステムの範囲と併用する応用を可能にすることが強調されている。そのおかげで、センサ704は、流体輸送システムと上述した患者監視システムとの間の標準インターフェースとして働くことができる。
【0058】
図8は、本発明による方法の実施例を示しているフローチャートを表示している。この方法は、液剤の送達、特に滅菌状態下での液剤の静脈内送達のために用意される。ステップ802は、特定の治療法に基づいて、速度vに対する所定の値を設定するステップを有する。ステップ804は、本発明によるシステムの実施例と併用して、前記制御ユニットを導管に取り外しできるように接続するステップを有し、この導管は、壁に本発明によるセンサの第1の実施例に従ってセンサを含んでいる。ステップ806は、速度に対する所定のレベルと、センサに含まれるトランスデューサ装置により発生する測定信号により示される速度との間にある偏差に関する信号に基づいて、前記制御ユニットに含まれる制御アクチュエータを制御することにより、液剤の制御送達を有する。ステップ808は、前記制御ユニットを導管から切り離すステップを有する。前記速度vの所定の値を設定するステップは、複数回、すなわち例えば流体の送達中に実行されることができる。
【0059】
本発明が図面及び上記記載において詳細に説明及び開示されているのに対し、これら説明及び開示は事例的又は例示的であると考えるべきであり、制限的であると考えるべきではない。本発明は、開示される実施例に制限されない。本発明によるセンサ及び制御ユニット並びにそれら構成要素の全ては、それ自体は知られている処理及び材料を適用することにより作られることができる。特許請求の範囲及び明細書において、「有する」という言葉は、他の構成要素を排除するものではなく、複数あることを述べないことがそれが複数あることを排除するものではない。請求項における如何なる参照符号もその請求の範囲を制限すると解釈されるべきではない。特許請求の範囲に規定されるような特徴の全ての可能な組み合わせが本発明の一部であることもさらに述べておく。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導管を流れる流体の速度を測定するためのセンサであり、チップ及びセンサ受信器を有するセンサにおいて、前記チップは、前記流体を加熱するための加熱素子及び前記導管を流れる流体の速度を示す測定信号を発生させるためのトランスデューサ装置を有し、前記測定信号は、第1の空間温度差と第2の空間温度差との比に基づき、並びに前記センサ受信器は、前記加熱素子に給電するための電磁放射線を受信するために配されているセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサにおいて、前記第1の空間温度差は、前記加熱素子より前の前記流体の温度と前記加熱素子より後の温度との数値差であり、前記第2の空間温度差は、前記加熱素子より後の地点における前記流体の温度間の差に加えられる、前記加熱素子より前の地点における前記流体の温度間の数値差であるセンサ。
【請求項3】
前記センサ受信器は、アンテナであり、当該アンテナは前記加熱素子を有する請求項1に記載のセンサ。
【請求項4】
前記チップは、前記測定信号を送信するためのセンサ送信器を有する請求項1に記載のセンサ。
【請求項5】
前記センサは、前記導管の壁内又は壁に置かれる請求項1に記載のセンサ。
【請求項6】
前記センサは、前記導管と略同軸に配される請求項5に記載のセンサ。
【請求項7】
前記チップは、データを記憶するためのメモリを有する請求項1に記載のセンサ。
【請求項8】
請求項1に記載のセンサと協働するための制御ユニットにおいて、
前記電磁放射線を前記センサ受信器に送信するための制御送信器を有する制御ユニット。
【請求項9】
前記制御ユニットは、当該制御ユニットを前記導管に取り外しできるように接続する機能を有する請求項8に記載の制御ユニット。
【請求項10】
前記制御ユニットは、前記導管を流れる前記流体の流速を制御するための制御アクチュエータを有する請求項8に記載の制御ユニット。
【請求項11】
前記制御アクチュエータは、所定の流速と請求項1に記載のセンサに含まれる前記トランスデューサ装置により発生する前記測定信号に示される速度との偏差に関する信号により制御可能である、請求項10に記載の制御ユニット。
【請求項12】
前記アクチュエータは、請求項1に記載のセンサに含まれる前記トランスデューサ装置により発生する前記測定信号を受信するためのアクチュエータ受信器を有する請求項11に記載の制御ユニット。
【請求項13】
請求項1に記載のセンサ及び請求項8に記載の制御ユニットを有するシステム。
【請求項14】
医療応用における請求項13に記載のシステムの使用。
【請求項15】
液剤の制御送達のための方法において、
所定の流速を設定するステップ、
請求項4に記載の制御ユニットを前記導管に取り外しできるように接続するステップ、
請求項1に記載のセンサ及び請求項8に記載のアクチュエータを用いることによる、前記導管を介する前記液剤の制御送達のためのステップ、
を有する薬剤の制御送達のための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−527749(P2011−527749A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517286(P2011−517286)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052874
【国際公開番号】WO2010/004484
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】