説明

流体の濃度調整方法及び調整装置、並びに該装置を用いた有機性排水の処理機構

【課題】所定の濃度に混合した流体を配管内を閉塞させずにスムーズに移送でき、沈殿を生じさせずに簡単に自動的に濃度の調整を行い移送することができる方法及び装置を提供する。
【解決手段】一次流体を貯留し水位検知器3が設けられた主タンク1と、主タンク1から輸送された一次流体を送液するポンプ4と、ポンプ4から輸送された一次流体の流量を調整しかつ圧力を制御する定流量弁5と、定流量弁5から輸送された一次流体の流量を計測する流量計6と、二次流体を貯留し水位検知器10が設けられた少なくとも1基の副タンク8と、副タンク8毎に設けられ、流量計6から輸送された一次流体に該副タンク8から輸送された二次流体を混入させるポンプ11とで流体の濃度調整装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品加工排水、生活系排水、畜産排水、水産加工排水又は各種産業排水などの処理における流体の濃度調整方法及び調整装置、並びに該装置を用いた有機性排水の処理機構に関するものであり、さらに詳しくは、混合流体の濃度を簡単に所定の濃度に自動で調整することを特徴とする流体の濃度調整方法及び調整装置、並びに該装置を用いた有機性排水の処理機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の流体を混合させ所定の濃度に自動で調整する方法及び装置としては数々知られているが、大別して、次の2つの手法が挙げられる。
【0003】
1つはタンク内で混合させる手法である。図4に示すように、複数の原液をロードセル114に支持された混合タンク101に供給し、それらを混合タンク101内で混合して所定濃度に混合する薬液混合設備において、各原液の供給装置が、大流量用の供給配管110,112と微小流量用の供給配管111,113とを有し、前記大流量用の供給配管110,112には、送液ポンプ102,104と制御弁106,108を装備し、前記微小流量用の供給配管111,113には、定量ポンプ103,105と制御弁107,109を装備した構成である。
【0004】
以上のように構成することにより、大流量供給時の供給量は、混合タンク101を支持するロードセル114の重量測定値を読み込み制御し、微小流量供給時の供給量は、定量ポンプ103,105の動作回数で供給量を制御することにより、混合液の濃度が所望の濃度範囲から外れても補正で原液を正確に供給することができ、薬液混合時間が短縮され、混合の失敗もなくなり、高精度の混合液を短時間で得ることができる。また、混合タンク101に近い、混合タンク101側に制御弁を取り付け、制御弁後流側から混合タンク101までの配管を鋭角で曲折している短い鍵型配管とし、例えば蛇腹を使った縁切り配管等とすることにより、配管が直接混合タンクに接続されている場合のタンク重量測定値に対する配管から受ける応力の影響を回避することにより、ロードセル114の測定精度を向上させることができるものである(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、前記の方法においては、混合する一方の薬液が化合物からなる流体であり混合することによって、流体中にあらかじめ微量存在する微生物が薬液中の成分である有機性化合物を餌として繁殖し、その結果生物膜などのような異物を発生するような流体である場合、混合タンク101から貯留タンク115へ送液ポンプ116にて移送する際、送液ポンプ116の2次側にフィルタは付いているものの、混合タンク101からフィルタに至るラインで異物による閉塞が起こってしまい、高精度の濃度のものを得ることができず、さらにはその量も制御することが難しく設備自体の機能を果たすことができない。また、受入タンク117,118内で沈殿物を生じるような取り扱いの難しい流体の場合、受入タンク117,118内で貯留中に沈殿物が生じることによって濃度の低下が生じ、混合タンク101へ移送するための定量ポンプ103,105の稼動時間の延長が生じ機器の消耗が早くなってしまうとともに、定量ポンプ103,105への引き抜き箇所が受入タンク117,118の底部にあるような場合は、沈殿物によりその引き抜き箇所が閉塞してしまい、メンテナンスの必要が出てくるという問題が生じる。また、本発明の構成では装置が大掛かりであり、スペースが狭い場所には設置が困難である。
【0006】
一方、別の手法であり、上記の問題を解決する装置としては次に挙げるようなものがある。図5に示すように、薬液供給装置は、薬液貯槽201と、薬液注入部208を有する用水供給配管203と、薬液貯槽201の薬液を薬液注入部208に供給する薬液供給配管202とを備えている。薬液供給配管202には、定量ポンプ204及び/又は定流量弁205と、積算流量を検出する薬液流量計206と、その下流側の開閉弁209とが設けられており、所定流量の薬液が所定の積算流量に達するまで薬液注入部208に自動注入される。また、用水供給配管203には流量計207が設けられている。
【0007】
以上のように構成することにより、一般的な薬液供給装置に設けられていた計量槽が不要となり、小型かつコンパクトで安価な装置により効率的な薬注が行え、必要とする設置スペースを大幅に減少させることができ、計量槽、レベル計、自動弁開閉機構、特殊設計のエジェクター等が不要となり、装置コストが廉価となる。また、計量工程と送液工程との2工程を必要とせず、薬液貯槽の薬液を直接送液できるため、薬注時間が短縮される(特許文献2参照)。
【0008】
しかしながら、前記の方法では薬液は定流量弁205によって一定流量を維持しているが、用水は流量計207による監視のみであるため、流量計207の1次側の圧力が変動したときに、流量を制御することができず、薬液注入部208において濃度を一定に調整することができなくなる。すなわち、薬液の供給量は正確に制御できるが、濃度は正確に調整することができない。また、薬液が化合物からなる流体の混合物である場合は、薬液貯槽201での沈殿物の発生のため、濃度勾配が生じることがある。流量計207で移送量自体は所定の量に保たれるが、定量ポンプ204で移送される流体の濃度の変化は免れず、適切な濃度調整ができなくなる。また、定量ポンプ204への引き抜き箇所が薬液貯槽201の底部にあるような場合は、沈殿物によりその引き抜き箇所が閉塞してしまい、薬液貯槽201や薬液供給配管202の洗浄や定量ポンプ204の分解清掃などのメンテナンスの必要が出てくるという問題が生じる。
【0009】
また、図6に示すような薬液供給システムもある。前記薬液供給システムは、洗浄用の薬液が原液の状態で貯蔵される薬液貯蔵タンク303と、薬液貯蔵タンク303と連結され薬液供給を能動的に行なう薬液供給装置304と、薬液供給装置304と連結され、薬液が混合する超純水の通路となる供給流路を形成する配管系305と、洗浄チャンバー301内で設置されるウェハ302の各表面と対向するように配管系305の端部に設けられ、前記各表面に洗浄液を供給する一対の吐出ノズル306,307とを主要素として構成されている。
【0010】
以上のように構成することにより、薬液貯蔵タンク303を含む洗浄液供給系の大幅な小型化・簡易化を図るとともに、洗浄に必要なときに正確な薬液濃度の洗浄液を簡易且つ迅速に調合し供給することが可能となり、パーティクル等の発生及び洗浄液への混入を極限まで抑止することができる。
【0011】
しかしながら、前記の方法はフィードバック制御を伴う複雑な制御方法であり、また、流体が流れている配管に別流体を混入する箇所が流量調節手段及び濃度調節手段の前にあるので、薬液が化合物からなる流体の混合物である場合は、水と混合することによって生物膜などの異物が発生する恐れがある。配管内で発生した異物により、その流量調節手段及び濃度調節手段の誤作動を招き、正確な濃度調整ができない。
【0012】
【特許文献1】特開2000−218143号公報
【特許文献2】特開2000−229237号公報
【特許文献3】特開2000−265945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のように、混合時間の短縮や装置の小型化や薬液の簡易且つ迅速な調合などの問題は解決するが、薬剤に起因し発生する異物などによる配管の閉塞や機器の誤作動という課題が未だ解決されずにいた。
【0014】
本発明は、以上のような従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、所定の濃度に混合した流体を配管内を閉塞させずにスムーズに移送でき、沈殿を生じさせずに簡単に自動的に濃度の調整を行い移送することができる方法及び装置に関するものであり、さらには該装置を用いた有機性排水の処理機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための本発明における流体の濃度調整方法及び調整装置、並びに該装置を用いた有機性排水の処理機構の構成を図1に基づいて説明すると、本発明の第一は、任意の一次流体が流れる配管内に二次流体を混入して、流体の濃度を任意の設定濃度に調整する方法において、該一次流体を貯留し水位を検知する手段が設けられた主貯留手段と、
該主貯留手段から輸送された一次流体を送液する手段と、該送液する手段から輸送された一次流体の流量を調整し且つ圧力を制御する手段と、該流量を調整しかつ圧力を制御する手段から輸送された一次流体の流量を計測する手段と、該二次流体を貯留し水位を検知する手段が設けられた副貯留手段と、該流量を計測する手段から輸送された一次流体に該副貯留手段から輸送された二次流体を一定流量混入させる手段を有することを特徴とし、下記の構成を好ましい態様として含む。
【0016】
前記二次流体を貯留する前記副貯留手段に、該二次流体を攪拌する手段を設けたこと。
【0017】
前記流体の流量を計測する手段から輸送された一次流体に前記副貯留手段から輸送された二次流体を一定流量混入させる手段が行われる時点の前又は後に、該流体の流量を計測する手段から輸送された一次流体が一定時間供給されること。
【0018】
本発明の第二は、任意の一次流体が流れる配管内に二次流体を混入して、流体の濃度を任意の設定濃度に調整する装置において、該一次流体を貯留し水位センサーが設けられた主タンクと、該主タンクから輸送された一次流体を送液するポンプと、該ポンプから輸送された一次流体の流量を調整しかつ圧力を制御する定流量弁と、該定流量弁から輸送された一次流体の流量を計測する流量計と、該二次流体を貯留し水位センサーが設けられた少なくとも1基の副タンクと、該副タンク毎に設けられ、該流量計から輸送された一次流体に該副タンクから輸送された二次流体を混入させるポンプとで構成されていることを特徴とし、下記の構成を好ましい態様として含む。
【0019】
前記二次流体を貯留する前記副タンクに、攪拌機を設けたこと。
【0020】
本発明の第三は、濃度調整装置を用いた有機性排水の処理機構において、流入する有機性排水の流量を調整する流量調整槽と、該流量調整槽から流入した有機性排水を生物処理するばっ気槽と、該ばっ気槽から供給された有機性排水を汚泥と上澄み液とに分離する沈殿槽と、該沈殿槽で分離された汚泥の一部または全部をばっ気槽および/またはばっ気槽の上流側に返送する汚泥返送手段と、前記本発明の流体の濃度調整装置とで構成されたことを特徴とし、下記の構成を好ましい態様として含む。
【0021】
前記有機性排水の処理機構のばっ気槽を含む上流側または汚泥返送手段の少なくともどちらか一方に前記濃度調整装置で濃度を調整された流体が添加されること。
【0022】
また、本発明の第一乃至第三においては、前記二次流体が、ポリフェノール類から選ばれる少なくとも一種、もしくは、ポリフェノール類から選ばれる少なくとも一種と有機酸金属塩から選ばれる少なくとも一種との混合物のいずれかを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明における濃度調整方法及び調整装置、並びに該装置を用いた有機性排水の処理機構は、以上説明した構成になっているので、以下のような優れた効果が得られる。
(1)構造が簡単であるため、複雑な制御を行わなくても、流体の濃度を任意の設定濃度に調整することができ、配管の閉塞を防ぐことができるため、自動添加をすることができ労力削減できる。
(2)流体がよく攪拌されることにより、タンク内で流体が固まらないので配管を閉塞させるような異物が発生しない。
(3)貯槽内において、流体の成分が偏りにくいため、一定の濃度の二次流体を供給することができ、任意の設定濃度に調整できる。
(4)配管内を洗浄することで、二次流体の滞留をなくすことにより、配管内での異物の発生を防ぐことができる。
(5)配管が閉塞しないので、メンテナンスにかかる労力を削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図1を参照にして説明するが、本発明が本実施形態に限定されないことは言うまでもない。図1は本発明の実施形態の概略構成を示す模式図である。図2は本発明における有機性排水の処理フローチャートを示したものである。図3は本発明における実施例の比較例の一様態を示した模式図である。
【0025】
本発明において一次流体とは、水道水や地下水や井戸水や排水処理後の処理水などの比較的きれいな流体のことである。
【0026】
また、本発明において水位検知手段とは、電極式水位検知器、圧力式水位検知器、フロート式水位検知器、超音波式水位検知器、マイクロウェーブ式水位検知器、静電容量式水位検知器、光電式水位検知器など水位の上限と下限を検知できればよく特に限定されない
が、導電性の液体の水位検知に最適であり、かつ電極棒の長さを変えるだけで自在に検出水位を調節できるという理由から、好ましくは電極式水位検知器である。
【0027】
本発明において一次流体を送液する手段としてはマグネットポンプやチュービングポンプ、ダイヤフラムポンプ、定量ポンプなど特に限定されるものではないが、幅広い流量域を制御でき、かつシンプル、コンパクトでありメンテナンスが容易に行えるという理由から、好ましくはマグネットポンプである。
【0028】
また、本発明において流体の流量調整及び圧力制御手段としては特に限定されないが、動力源を必要としないという理由から、好ましくは定流量弁である。
【0029】
さらに、本発明において流体の流量を計測する手段としては、超音波式やインペラ式流量計、カルマン渦流量計、タービン流量計など特に限定されるものではないが、より感度が高く駆動部がないという理由から、好ましくは超音波式流量計である。
【0030】
本発明において、バルブは電磁弁や電動弁、エア弁など特に限定されるものではないが、より小型という理由から、電磁弁が好ましい。
【0031】
また、本発明において二次流体を配管に供給する手段としては特に限定されないが、微小流量の流体を正確に供給することができるという理由から、定量ポンプが好ましい。
【0032】
さらに、二次流体を撹拌する手段としては、撹拌羽根による撹拌、ポンプ循環による撹拌など特に限定されるものではないが、撹拌効率が高いという理由から、好ましくは撹拌羽根による撹拌である。
【0033】
本発明において、二次流体は、好ましくは、ポリフェノール類から選ばれる少なくとも一種、もしくは、ポリフェノール類から選ばれる少なくとも一種と有機酸金属塩から選ばれる少なくとも一種との混合物のいずれかを含む。
【0034】
有機酸金属塩としては、蟻酸ナトリウム、蟻酸カリウム、蟻酸マグネシウム、蟻酸カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カルシウム、酪酸ナトリウム、酪酸カリウム、酪酸マグネシウム、酪酸カルシウムなどが挙げられ特に限定されないが、より調整がしやすく取り扱いが容易で溶け易いという理由から、なかでも蟻酸ナトリウム、蟻酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムが好ましいものとして挙げられる。
【0035】
また、ポリフェノール類としては、タンニン、ルチン、ケルセチン、アントシアニン、クロロゲン酸などが挙げられ特に限定されないが、より入手しやすいという理由から、なかでもタンニン、ルチン、ケルセチンが好ましいものとして挙げられる。
【0036】
本発明の濃度調整装置の実施形態について、図1に基づいて説明する。主タンク1は、一次流体を導入するためのバルブ2と主タンク1内の水位を検知するための水位検知器3とを有しており、一次流体を配管に送り出すためのポンプ4が側面に設けられている。ポンプ4には一次流体を輸送するための管が接続されており、さらに、該管には定流量弁5、流量計6が設置されている。一方、副タンク8は二次流体を撹拌するための撹拌機9と副タンク8内の水位を検知するための水位検知器10とを有しており、二次流体を送り出すためのポンプ11が側面に設けられている。さらに二次流体は、流量計6の下流側で、流量計6から輸送された一次流体と混合される構造になっている。さらに一次流体と二次流体の流量を制御するための制御盤12が設けられている。
【0037】
次に本実施の形態の作用について説明する。水位検知器3により、主タンク1内の一次流体の水位が低いと検知された時、バルブ2が開となり、一次流体がバルブ2を通過し、水位検知器3により規定の水位と検知されるまで主タンク1に導入される。そこから一次流体はポンプ4により送液され、途中定流量弁5を経由し一定流量に調整される。一定流量送液されていることを流量計6で目視による確認を行いつつ、2箇所のばっ気槽へ送液される。本実施形態では送液される場所は、2箇所であるが、1箇所または複数箇所であってもよい。1箇所に送液すればよい場合は、送液しないほうのバルブ7を閉止する。また、複数箇所の場合は、バルブ7により送液する場所を切り替える。本実施形態で2箇所としているのは、送液される場所は1箇所、または2箇所の場合が多く、2箇所へ送液する構造をしていれば、1つのタイプでどちらの場合でも送液することが可能であるためである。
【0038】
一方、副タンク8に貯留された二次流体は、沈殿物等が底部に沈殿しポンプ11の閉塞を起こさないよう撹拌機9により定期的に撹拌される。また、二次流体の不足によるポンプ11の空運転を防ぐため、設置された水位検知器10が水位の検知を行っている。そして、流量計6から輸送された一次流体が一定時間流れた後に、ポンプ11により、流量計6の下流側に二次流体が供給され始め、また、二次流体の供給後も一定時間流量計6から輸送された一次流体は流れ続ける。この位置に供給することで、流量計6から輸送された一次流体に二次流体が混入することによって、流体中にあらかじめ微量存在する微生物が薬液中の成分である有機性化合物を餌として繁殖し、その結果として配管内で発生する恐れのある生物膜などの異物による、定流量弁5や流量計6の誤作動を防ぐことができる。また、二次流体の供給の前後に、一定の時間を設けることで配管内を洗浄し、二次流体の滞留による配管の閉塞を防ぐことができる。
【0039】
また、一定流量送液されている流量計6から輸送された一次流体に、ポンプ11で定量的に二次流体を混入することで、二次流体の濃度を任意の設定濃度に調整することができる。なおかつ、生物膜などの異物が発生する恐れがある流体であっても、所定濃度のものを所定量添加場所へ添加することができるので、例えば、それが余剰汚泥を削減することができるような薬剤であれば、効率的にその効果を発揮することができる。
【0040】
次に本発明の有機性排水の処理機構について、図2に基づいて説明する。有機性排水の処理機構は流量調整槽14と、ばっ気槽15と、沈殿槽16と、汚泥返送手段17と、前記濃度調整装置とで構成されている。汚泥返送手段17は、配管にポンプとバルブを有した構成になっている。
【0041】
次に本発明の有機性排水の処理機構の作用について説明する。有機性排水13は流量調整槽14で流量を調整され、生物処理を行うばっ気15槽へ流入される。ばっ気槽15から沈殿槽16に供給された有機性排水13は、沈殿槽16で汚泥と上澄み液とに分離される。沈殿槽16で分離された汚泥の一部または全部は、汚泥返送手段17であるポンプにより送り出され、バルブの切り替えにより配管を通ってばっき槽15に返送される。汚泥の一部または全部が返送される場所はばっき槽15の上流側であってもよい。さらに、ばっ気槽15に前記濃度調整装置で濃度を調整された流体が添加される。発明の実施の形態では、ばっ気槽15に前記濃度調整装置で濃度を調整された流体を添加しているが、添加する位置は、ばっ気槽15の上流側または汚泥返送手段17中の返送汚泥であってもよい。
【0042】
本発明の濃度調整装置により、二次流体の濃度を任意の設定濃度に調整することができるので、生物膜などの異物が発生する恐れがある流体であっても、所定濃度のものを所定量添加場所へ添加することができ、その濃度調整装置を有機性排水の処理機構を用いることにより効率のよい処理ができる。また、二次流体が余剰汚泥を削減することができるような薬剤であれば、さらに効率的にその効果を発揮することができる。
【実施例】
【0043】
次に、本発明の実施の形態の装置を用いて、図2に示すようなフローの実際の排水処理機構にて試験を行った。その結果について以下に示す。尚、比較例1としては、図3に示すような混合タンク24内で所定の濃度に調整し、調整後に添加場所に移送する方法に基づいた装置を用いて試験を行った。また、比較例2としては、図1のポンプ11による配管への供給ポイントが定流量弁5の上流側である装置を用いた試験を行った。
【0044】
次に試験の測定方法を以下に示す。
(1)調整移送濃度の測定
濃度既知の成分にて吸光光度法により検量線を作成し、その検量線に基づき測定を行った。
(2)移送量の測定
3Lビーカーに採取した量の測定を行った。
(3)余剰汚泥発生量の測定
図2において、試験期間中は沈殿槽16から汚泥処理工程への引き抜きを停止し、試験前後にばっ気槽15、沈殿槽16に存在する汚泥量の差より算出した。
(4)余剰汚泥削減効果の算出
試験前の余剰汚泥発生量を100%として、そこからどれだけ発生量が削減したか算出した。
【0045】
表1に本試験の条件を示す。一次流体に水道水を用い、二次流体には汚泥削減効果を有する薬剤を使用した。それぞれ、貯留タンクには同濃度の薬剤を投入し、処理槽に送液する濃度及び量とも同一条件となるように装置の設定を行った。まず、実施例1の装置にて3ヶ月間運転を行い、その後、比較例1の装置にて3ヶ月間運転し、それぞれ3ヶ月後の調整濃度、投入量、余剰汚泥削減効果を比較した。余剰汚泥削減効果については、実施例1の運転前の3ヶ月間に発生していた余剰汚泥量を基準にしている。さらに3ヶ月の運転後、配管内、定流量弁内部や定量ポンプを分解・洗浄した直後に調整移送濃度、移送量の測定を行った。
【0046】
【表1】

【0047】
表2は3ヶ月間運転した後の各項目を測定した結果を示す。流体濃度及び移送量は処理槽に移送した測定結果である。表2から、処理槽に移送される調整移送濃度については、表1の初期設定値と実施例1、比較例2は変化なく良好であったのに対し、比較例1では濃度の低下が確認された。また、移送量についても、実施例1は初期設定量に対し変化はなかったが、比較例1については60%もの移送量の低下、比較例2について20%の移送量の低下が確認された。それに伴い、余剰汚泥発生量は実施例1では126kg、削減率として30%の効果が確認された一方で、比較例1では164kg、削減率としては実施例1の約1/3の9%の効果、比較例2では140kg、削減率としては3/4の22%の効果となった。なお、配管・機器洗浄後は、調整移送濃度、移送量ともに初期設定値に回復した。メンテナンスをこまめにすれば実施例と同じになるが、コンスタントにメンテナンスを行うことは作業効率を悪くする。本発明によれば頻繁にメンテナンスをする必要はなく、メンテナンスの回数を大幅に減らすことができ、メンテナンス期間中、有機性排水の処理を停止する必要はなくなるので効果的である。
【0048】
【表2】

【0049】
以上のことから、本発明の濃度調整方法及び調整装置を用いれば、有機性化合物を含む薬剤により配管内に発生した異物で管が閉塞することもなく、所定の濃度に混合した流体を配管内を閉塞させずにスムーズに移送でき、タンク内に沈殿を生じさせることもなく、また複雑な制御を必要とせずに、簡単に自動的に濃度の調整を行い移送することができる。装置も頻繁にメンテナンスする必要もなく、メンテナンスフリーに高精度に簡単に所定の濃度に混合流体を調整し移送することができる。さらに有機性排水の処理機構に本発明の濃度調整方法及び調整装置を用いれば、薬剤を自動で濃度調整し正確な量を添加することができるので、余剰汚泥の削減に大きな効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明における濃度調整装置の一実施様態を示した模式図である。
【図2】本発明における有機性排水の処理フローチャートを示したものである。
【図3】本発明における実施例の比較例の一様態を示した模式図である。
【図4】従来の濃度調整方法の概略系統図である。
【図5】従来の濃度調整装置の模式的な図である。
【図6】従来の濃度調整システムの模式的な図である。
【符号の説明】
【0051】
1 主タンク
2 バルブ
3 水位検知器
4 ポンプ
5 定流量弁
6 流量計
7 バルブ
8 副タンク
9 撹拌機
10 水位検知器
11 ポンプ
12 制御盤
13 有機性排水
14 流量調整槽
15 ばっ気槽
16 沈殿槽
17 汚泥返送手段
18 タンク
19 ポンプ
20 ポンプ
21 バルブ
22 撹拌機
23 水位検知器
24 混合タンク
25 制御盤
101 混合タンク
102 送液ポンプ
103 定量ポンプ
104 送液ポンプ
105 定量ポンプ
106 制御弁
107 制御弁
108 制御弁
109 制御弁
110 供給配管
111 供給配管
112 供給配管
113 供給配管
114 ロードセル
115 貯留タンク
116 送液ポンプ
117 受入タンク
118 受入タンク
201 薬液貯槽
202 薬液供給配管
203 用水供給配管
204 定量ポンプ
205 定流量弁
206 薬液流量計
207 流量計
208 薬液注入部
209 開閉弁
301 洗浄チャンバー
302 ウェハ
303 薬液貯蔵タンク
304 薬液供給装置
305 配管系
306 吐出ノズル
307 吐出ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の一次流体が流れる配管内に二次流体を混入して、流体の濃度を任意の設定濃度に調整する方法において、
該一次流体を貯留し水位を検知する手段が設けられた主貯留手段と、
該主貯留手段から輸送された一次流体を送液する手段と、
該送液する手段から輸送された一次流体の流量を調整し且つ圧力を制御する手段と、
該流量を調整しかつ圧力を制御する手段から輸送された一次流体の流量を計測する手段と、
該二次流体を貯留し水位を検知する手段が設けられた副貯留手段と、
該流量を計測する手段から輸送された一次流体に該副貯留手段から輸送された二次流体を一定流量混入させる手段を有することを特徴とする流体の濃度調整方法。
【請求項2】
前記二次流体を貯留する前記副貯留手段に、該二次流体を攪拌する手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の流体の濃度調整方法。
【請求項3】
前記流体の流量を計測する手段から輸送された一次流体に前記副貯留手段から輸送された二次流体を一定流量混入させる手段が行われる時点の前又は後に、該流体の流量を計測する手段から輸送された一次流体が一定時間供給されることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体の濃度調整方法。
【請求項4】
前記二次流体が、ポリフェノール類から選ばれる少なくとも一種、もしくは、ポリフェノール類から選ばれる少なくとも一種と有機酸金属塩から選ばれる少なくとも一種との混合物のいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の流体の濃度調整方法。
【請求項5】
任意の一次流体が流れる配管内に二次流体を混入して、流体の濃度を任意の設定濃度に調整する装置において、
該一次流体を貯留し水位センサーが設けられた主タンクと、
該主タンクから輸送された一次流体を送液するポンプと、
該ポンプから輸送された一次流体の流量を調整しかつ圧力を制御する定流量弁と、
該定流量弁から輸送された一次流体の流量を計測する流量計と、
該二次流体を貯留し水位センサーが設けられた少なくとも1基の副タンクと、
該副タンク毎に設けられ、該流量計から輸送された一次流体に該副タンクから輸送された二次流体を混入させるポンプとで構成されていることを特徴とする流体の濃度調整装置。
【請求項6】
前記二次流体を貯留する前記副タンクに、攪拌機を設けたことを特徴とする請求項5に記載の流体の濃度調整装置。
【請求項7】
前記二次流体が、ポリフェノール類から選ばれる少なくとも一種、もしくは、ポリフェノール類から選ばれる少なくとも一種と有機酸金属塩から選ばれる少なくとも一種との混合物のいずれかを含むことを特徴とする請求項5又は6に記載の流体の濃度調整装置。
【請求項8】
流入する有機性排水の流量を調整する流量調整槽と、
該流量調整槽から流入した有機性排水を生物処理するばっ気槽と、
該ばっ気槽から供給された有機性排水を汚泥と上澄み液とに分離する沈殿槽と、
該沈殿槽で分離された汚泥の一部または全部をばっ気槽および/またはばっ気槽の上流側に返送する汚泥返送手段と、
請求項5乃至7のいずれかに記載の流体の濃度調整装置とで構成されたことを特徴とする有機性排水の処理機構。
【請求項9】
前記有機性排水の処理機構のばっ気槽を含む上流側または汚泥返送手段の少なくともどちらか一方に前記濃度調整装置で濃度を調整された流体が添加されることを特徴とする請求項8に記載の有機性排水の処理機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−189969(P2009−189969A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34080(P2008−34080)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000117102)旭有機材工業株式会社 (235)
【Fターム(参考)】