説明

流体エネルギー回収装置

【課題】CO2や養溶などの流体を栽培場に供給する際の圧力エネルギーを有効に回収して電力消費を低減する。
【解決手段】ボイラや発電所・工場等のCO2排出源1から排出された排気ガスをコンプレッサ2で圧縮していったん貯蔵容器3に貯留し、供給管4を通してそれを植物工場5等へ供給する。供給管4の途中または出口には、発電機構6や圧電素子のような圧電変換器を設け、これにコンプレッサ2で増圧した高圧のCO2を含む排気ガスを作用させて発電する。発電した電力により植物工場で消費する電力の一部を賄う。養液や灌水の供給経路に圧電変換器を設置してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物工場や施設園芸場(ビニールハウス)等の閉じた空間のほか露地農場等において、光合成に必要な炭酸ガスや灌水などの流体を作物に供給する際、流体の持つ動的な圧力エネルギーを回収し、これを電気エネルギーに変換し、人工照明等の電力に充当するための流体エネルギー回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物工場は、環境の調節が可能な閉鎖された空間において、光、温度、湿度、炭酸ガス濃度、照度、養液濃度、pHなど、植物成長に影響を与える生育環境を人工的に制御することで、露地栽培に比べ天候不順などの自然環境や病虫害などに左右されずに、高品質の無農薬野菜等を一年中栽培できる。その結果、作物の価格が安定し収穫量も安定的に供給できるというメリットがあるが、半面、栽培室内に換気装置やヒータ、クーラ、加湿器、照明装置など多くの電気機器を設置し、栽培室内の環境条件をコントロールするので、ランニングコストが嵩み、特に電力消費がコストのうちで大きな割合を占めるという問題がある。
このような問題は露地農場でも同様で、例えば、灌水を供給するポンプの電力消費が嵩むという問題がある。
【0003】
このような電力消費を抑える方法の一つとして、例えば特許文献1に提案されているように、都市ガスの供給圧力エネルギーを動力として回収し、発電するなどが考えられる。栽培植物の光合成速度を高めるため、大量のCO2を供給する植物工場においても、これと同じようにCO2を供給する際の圧力エネルギーを回収したり、灌水や養液の流れる圧力を回収できれば、電力消費を大幅に低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−217800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は以上のような点であり、本発明は、CO2や水などの流体を供給する際の圧力エネルギーを有効に回収して、作物栽培場における電力消費を低減することを目的になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため本発明は、作物の栽培場にCO2や水などの流体を供給する途中に、その供給圧力を電気エネルギーに変換する圧電変換器を設置し、生成した電気エネルギーにより栽培場で使用する電力の一部を賄うことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来無駄に消失していた流体の供給圧力を回収して電気エネルギーに変換するので、作物栽培場における電力消費量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明を実施したCO2供給エネルギー回収装置の構成図である。
【図2】発電機構の構成図である。
【図3】発電機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
図1に、本発明を実施したCO2供給エネルギー回収装置の構成図を示す。
CO2供給エネルギー回収装置は、ボイラや発電所・工場等のCO2排出源1から排出された排気ガスをコンプレッサ2で圧縮していったん貯蔵容器3に貯留し、供給管4を通してそれを植物工場5等の密閉空間へ供給する。供給管4の途中には発電機構6を設け、発電機構6にはコンプレッサ2で増圧した高圧のCO2を含む排気ガスを流通させる。
【0011】
図2に、発電機構の構成図を示す。
発電機構6は、非磁性材料の供給管4の外側と内側に磁石M1、M2を配置し、その間の供給管4の外周にコイルCを巻回する。磁石M2は羽根車Tの先端に取り付け、羽根車Tの軸Sは軸受Bによって回転自在に支持される。
【0012】
羽根車Tは、流れと回転面が直角なタービン式のもので、軸Sの周囲に取り付けた羽根に高圧のCO2を含む排気ガスの流れを受けて軸Sが回転する。羽根車Tは、これ以外に、流れと回転面が平行な水車式のものでもよい。
【0013】
以上のような構成で、供給管4内を流れる高圧のCO2を含む排気ガスによって羽根車Tが回転し、図3に示すように、先端の磁石M2が磁石M1の前を通るたびに、磁束が変化してコイルCに誘導起電力が発生する。このようにCO2の供給エネルギーをいったん羽根車Tの回転エネルギーに変換し、電磁誘導の法則に基づいて羽根車Tの回転エネルギーから電気エネルギーを得る仕組みである。
【0014】
発電機構6は、このように羽根車Tに取り付けた磁石M2を回転させることによって、羽根車Tの外周に固定されたコイルCに誘導起電力を発生させるが、このような非接触式の他に、羽根車Tの軸Sにマイクロ発電機を取り付けて直接駆動する機械式のものでもよい。
【0015】
コンプレッサ2は10気圧未満の非高圧で圧縮する。これにより貯蔵容器3に10気圧耐用の通常のLPGタンク(バルク貯槽)の流用を可能にする。
【0016】
供給は、CO2を必要とする植物工場5内の区画毎に設置したCO2センサ7により、植物の炭酸ガス消費や植物工場の扉の開閉によるCO2の植物工場外への流出によりCO2濃度が低下したことを検知したときに行い、該当区画に放散パイプ8を介して貯蔵容器3からCO2を含む排気ガスを放散する。
【0017】
貯蔵容器3内のCO2が不足した際は、液化炭酸ガスの入ったCO2ボンベ9からCO2を補充し、ガス切れを防止する。
【0018】
発電機構6の代りに圧電素子を利用してCO2が吹き出す風圧を電気エネルギーに変換してもよい。この場合、植物工場5内のCO2出口たとえば放散パイプ8の出口に対向して圧電素子(図示省略)を設置し、CO2の風圧により圧電素子を作動して発電する。発電した電気は蓄電器に溜め、必要なときに蓄電器から取り出して使用してもよい。
【0019】
植物工場や水耕栽培施設では養液をポンプで循環させて作物の根に供給したり、露地農地では灌水ポンプで水を圃場に引き込んだりする。図2の発電機構6を、これら養液や灌水の流路の途中に設けることにより、電気エネルギーを得ることができる。またスプリンクラーのような高い水圧が発生する箇所に圧電素子を対向して設置して発電させることもできる。
【符号の説明】
【0020】
1 CO2排出源
2 コンプレッサ
3 貯蔵容器
4 供給管
5 植物工場
6 発電機構
7 CO2センサ
8 放散パイプ
9 CO2ボンベ
B 軸受
C コイル
M 磁石
S 軸
T 羽根車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物の栽培場にCO2や水などの流体を供給する途中に、その供給圧力を電気エネルギーに変換する圧電変換器を設置し、生成した電気エネルギーにより栽培場で使用する電力の一部を賄うことを特徴とする流体エネルギー回収装置。
【請求項2】
前記圧電変換器が、流体の供給圧力を受けて回転する羽根車と羽根車の回転により発電する発電機構から成り、この羽根車が流体の供給圧力の流れと回転面が直角なタービン式であることを特徴とする請求項1記載の流体エネルギー回収装置。
【請求項3】
前記発電機構が、羽根車に取り付けた磁石を回転させることによって、羽根車の外周に固定されたコイルCに誘導起電力を発生させる非接触式であることを特徴とする請求項1記載の流体エネルギー回収装置。
【請求項4】
前記圧電変換器が圧電素子から成り、この圧電素子が流体の出口に対向して設置されていることを特徴とする請求項1記載の流体エネルギー回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−27263(P2013−27263A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162769(P2011−162769)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000141794)株式会社宮入バルブ製作所 (12)
【Fターム(参考)】