説明

流体スプレー噴霧用ノズル装置

【課題】 圧縮空気による圧力・風量等によらずに各種の流体を微細で且つ同等なミスト径のものとして噴霧でき、また噴霧時の騒音を極力小さくできるようにする。
【解決手段】 空気圧噴出用のノズル2を先端に備えた空気圧移送管4と、金属もしくは非金属の粒体の焼結によって噴霧孔Pを形成して成る多孔質材料による流体噴出部5を先端に備えた流体移送管7とを備え、ノズル2の内側に流体噴出部5を配して構成する。流体噴出部5は、非金属粒体を加圧成形したものを融点以下の温度で熱処理したときに非金属粒体間結合によって固化して生成される例えばセラミックス粒集合体によって形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば離型剤、潤滑剤、グリス等のスプレーノズル、またはガソリン、石油等の燃料供給ノズル、その他エンジン燃焼器のノズル等の種々の流体の噴霧器として使用される流体スプレー噴霧用ノズル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば離型剤等の粘性ある流体の噴霧器としては、流体噴出部を一端に有する混合室に、空気圧移送管と流体移送管とを接続させた構成となっている。使用に際し、空気圧移送管と流体移送管とによってそれぞれ圧縮空気と粘性流体とを混合室内に送り、該混合室内で両者を攪拌混合させて噴霧状にしてから流体噴出部によって外部に噴射するようにしている。このとき、噴霧状となる流体のミスト粒径は混合室内の圧力・風量等に比例しており、例えば圧力が大きいとミスト粒径が小さくなる。
【特許文献1】特になし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来における上述した噴霧器は、混合室内での圧縮空気による圧力・風量等が小さいと、流体の粘着力の方が圧縮空気による攪拌分解力に比して大きくなるため、混合室内に送られた圧縮空気と流体との混合が不十分となり、流体のミスト径が極端に大きくなってしまう。逆にミスト径を小さくするために噴霧時の圧縮空気による圧力・風量等を大きくすれば、かえって騒音が大きくなってしまうという問題点を有していた。
【0004】
そこで本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、圧縮空気による圧力・風量等の調整によらずに各種の流体を微細にし、且つミスト径を小さくでき、しかも噴霧時の騒音も極力小さくできるようにした流体スプレー噴霧用ノズル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明にあっては、空気圧噴出用のノズル2を先端に備えた空気圧移送管4と、金属もしくは非金属の粒体の焼結によって噴霧孔Pを形成して成る多孔質材料による流体噴出部5を先端に備えた流体移送管7とを備え、前記ノズル2の内側に前記流体噴出部5を配して成る流体スプレー噴霧用ノズル装置1とする。
空気圧移送管4のノズル2はラッパ形状を有し、該ノズル2の噴出口よりも内側の狭小な奥部11に前記流体噴出部5を配して成るものとでき、例えばノズル2形状をラバル形状しと、その狭小なスロート空間部に流体噴出部5を配して構成する。
流体噴出部5は、非金属粒体を加圧成形したものを融点以下の温度で熱処理したときに非金属粒体間結合によって固化して生成されるセラミックス粒集合体によって形成されているものとできる。
流体噴出部5は、その外形状が円柱状、球形状、楕円形状、円錐形状、多角形状のいずれかに形成されて成るものとできる。
【0006】
以上のように構成された本発明に係る流体スプレー噴霧用ノズル装置1にあって、流体移送管7の先端にある、多孔質材料によって噴霧孔Pが形成された流体噴出部5は、空気圧移送管4からの空気圧によって空気圧噴出用のノズル2から空気を噴出するに際し、空気圧移送管4からノズル2までの空気流速によって流体噴出部5内側を負圧の状態にさせるため、流体移送管7からの各種の流体を当該流体噴出部5から微細で且つ同等なミスト径となして噴出させると共に、ノズル2内での空気との攪拌混合によって当該ノズル2からミスト化された流体を外方に噴霧させる。
ラッパ形状のノズル2の狭小な奥部11に配された流体噴出部5は、当該奥部11で空気圧移送管4からの空気流速を加速させ、奥部11からノズル2の噴出口までの断面が広がることによる空気の膨張によってさらに加速させるものとなって、当該流体噴出部5内側での負圧効果を向上させ、ノズル2の噴出口からの噴霧量を増大させる。
セラミックス粒集合体によって形成されている流体噴出部5は、当該セラミックス粒集合体の個々の粒子相互間に形成された噴霧孔Pを通して各種の流体を、微細で且つ同等なミスト径となして噴霧させる。
外形状が円柱状、球形状、楕円形状、円錐形状、多角形状のいずれかに形成されて成る流体噴出部5は、外形状が円柱状、球形状、楕円形状、円錐形状、多角形状のいずれかによるノズル2の形状に対応して流体噴出部5を変更可能にさせる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、圧縮空気による圧力・風量等の調整によらずに各種の流体を微細にし、しかもこれと同等なミスト径として噴霧させるばかりでなく、噴霧時の圧縮空気等による騒音等も極力小さくできる。
【0008】
すなわち、これは本発明が、空気圧噴出用のノズル2を先端に備えた空気圧移送管4と、金属もしくは非金属の粒体の焼結によって噴霧孔Pを形成して成る多孔質材料による流体噴出部5を先端に備えた流体移送管7とを備え、前記ノズル2の内側に前記流体噴出部5を配して成るからであり、これにより、従来の圧縮空気の3分の1程度の圧力・風量であっても、多孔質材料による流体噴出部5を通して流体を噴霧するため、粘性流体の微細で且つ同等なミスト径による噴霧が可能となり、しかも3分の1程度の圧力・風量で済むため噴霧時の騒音も極力小さくなる。
【0009】
空気圧移送管4のノズル2はラッパ形状を有し、該ノズル2の噴出口よりも内側の狭小な奥部11に前記流体噴出部5を配して成るので、ノズル2の開口径を大きくすることができ、微細にミスト化された各種の流体の噴霧による被噴霧面の塗布面積もしくは供給量を大きくすることができる。
【0010】
流体噴出部5は、非金属粒体を加圧成形したものを融点以下の温度で熱処理したときに非金属粒体間結合によって固化して生成されるセラミックス粒集合体によって形成されているので、セラミックス粒集合体の個々の粒子相互間に形成された噴霧孔Pを通して各種流体の微細で且つ噴霧孔Pと同等なミスト径による噴霧が可能となる。また、セラミックス粒集合体を形成している個々の粒径の大きさを熱処理温度の制御によって例えば0.2mmと0.5mmとの範囲で任意に設定することでミスト径の大きさを任意に変更することができる。しかも、セラミックス自体がその材質の選定によって嫌油性・親水性のものとすることで、噴霧孔Pを油の付着によって目詰まりするのを未然に防止でき、浸潤してきた流体を離れやすくすることができる。
【0011】
流体噴出部5は、その外形状が円柱状、球形状、楕円形状、円錐形状、多角形状のいずれかに形成されて成るので、外形状が円柱状、球形状、楕円形状、円錐形状、多角形状のいずれかによるノズル2の形状に対応して流体噴射部を変更することができる。
【0012】
尚、上記の課題を解決するための手段、発明の効果の項夫々において付記した符号は、図面中に記載した構成各部を示す部分との参照を容易にするために付したもので、図面中の符号によって示された構造・形状に本発明が限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下図面を参照して本発明を実施するための最良の一形態を説明すると、図において示される符号1は、例えば離型剤、潤滑剤、グリス等の高濃度な粘性ある各種流体の噴霧器、あるいは例えばガソリン、石油、水等のさらさらした低粘性流体の噴霧器等として使用される流体スプレー噴霧用ノズル装置である。この流体スプレー噴霧用ノズル装置1は、例えば嫌油性材質による空気圧噴出用の円柱状のノズル2をネジ締めリング3を介して先端に取り付けて成る例えば大口径L字管状の空気圧移送管4と、金属もしくは非金属の粒体の焼結によって噴霧孔Pを形成して成る多孔質材料による例えば円筒状の流体噴出部5をネジキャップ部6を介して先端にネジ込んで成る小口径直管状の流体移送管7とから構成されている。
【0014】
すなわち、図示を省略した圧縮空気圧源に接続された空気圧移送管4においての例えばL字状に屈曲した箇所の背後側から当該空気圧移送管4の水平部分に沿って、同じく図示を省略した流体源に接続された流体移送管7が内挿され、空気圧移送管4先端にあるノズル2の噴出口よりも内側の位置に流体移送管7先端の流体噴出部5が配置されるようにしてある。
【0015】
また、流体噴出部5の外形状は、ノズル2の円筒形状に対応して略円筒状に形成されているが、これに限らず、中空な球形状、楕円形状、円錐形状、多角形状のいずれかに形成されて成るノズル2に対応して、外形状が略球形状、略楕円形状、略円錐形状、略多角形状等のいずれかに形成されていても良い。
【0016】
流体噴出部5の具体的な構成としては、例えば嫌油性・親水性を有しているセラミックスの非金属粒体を加圧成形したものを融点以下の温度で熱処理したときに表面エネルギーを減少する方向に非金属粒体相互間の結合が生じるのを利用して形成され、このような癒着によって固化した際にセラミックス粒集合体の個々の粒子相互間に極めて微細少な噴霧孔Pが形成されるものである。この噴霧孔Pを各種の流体が通過することによって微細で且つ噴霧孔P径と同等なミスト径による当該流体の噴霧が形成されるようにしてある。例えば、セラミックス粒集合体を形成している個々の粒径の大きさを熱処理温度の制御によって例えば0.2mmと0.5mmとの範囲で任意に設定することでミスト径の大きさを任意に変更できるのであり、噴霧径を所定のものとして形成するに際し、これらに限定されないことは勿論である。
【0017】
次に、上記構成による使用動作について説明すれば、先ず、空気圧移送管4を通して空気圧噴出用のノズル2から空気を噴出させる。このとき、空気圧移送管4からノズル2までの空気流速によって流体噴出部5内側が負圧の状態となる。そして流体移送管7を通して先端にある多孔質材料による流体噴出部5まで各種の流体を移送させると空気圧移送管4の空気流速によって流体は流体噴出部5から微細で且つ同等なミスト径となって噴出し、ノズル2内での空気との攪拌混合によって当該ノズル2から外方に流体が噴霧するものとなる。尚、流体としては粘性の有無、また粘性の大小等にかかわりなく、各種のものを噴霧対象とすることができる。
【0018】
図2には本実施の形態の他例が示されており、この場合には、空気圧移送管4のノズル2を略ラッパ管状の所謂ラバルノズル型に形成したものである。そして、ノズル2の噴出口よりも内奥側の略ネック状となる奥部11の狭小なスロート空間部に前記流体噴出部5を配してある。
【0019】
具体的には、後部開口側がスカート状に拡開された基部筐体12に、ラバル状のノズル2の奥部(スロート空間部)11側に形成されたネジ筒部13がOリング14を介してネジ込まれている。このときネジ筒部13の内奥側の小径円筒状の奥部11と、基部筐体12の狭径開口側との間には環状の隙間15が形成され、ネジ筒部13の側面に配設した空気圧移送管4が当該隙間15に連通されている。
【0020】
また、隙間15に対向したスロート空間部11の後端部側内周面は円弧状の湾曲部16が形成されており、空気圧移送管4から給送される空気圧流速がこの湾曲部16に沿って流れることでコアンダー効果が得られるようにしてある。尚、この基部筐体12には図示を省略した首振り機構を設けることができ、こうすることでノズル2自体を自由自在に任意の方向に向けることができ、噴霧対象物に満遍なく噴霧塗布できるようにしてある。
【0021】
さらにこの湾曲部16と奥部11との間には流体移送管7が挿入配置され、当該流体移送管7の先端に接続されて奥部11の略中央に位置するよう略U字型キャップ状の内部筐体17が当該内部筐体17の開口部側をノズル2の噴出口に向けて配置されている。この内部筐体17の開口側には金属もしくは非金属の粒体の焼結によって噴霧孔Pを形成して成る多孔質材料による例えば円筒状の流体噴出部5が嵌着されている。尚、この内部筐体17には図示を省略した首振り機構を設けることで流体噴出部5自体が自由自在に任意の方向に向けられるようにしても良い。
【0022】
次に、本実施の形態における構成の使用動作について説明すれば、先ず、空気圧移送管4を通して空気圧噴出用のノズル2から空気を噴出させる。このとき湾曲部16を通じての奥部11で空気圧移送管4からの空気流速を加速させ、奥部11からノズル2の噴出口までの断面が広くなることによる空気の膨張によってさらに空気流速が加速する。そして、流体移送管7を通して先端にある多孔質材料による流体噴出部5まで各種の流体を移送させると空気圧移送管4の空気流速によって流体は当該流体噴出部5から微細で且つ同等なミスト径となって噴出され、ノズル2内での空気との攪拌混合によって当該ノズル2の拡径された空気圧噴出口から広い面積にわたって外方にミスト化された流体が均一に噴霧されるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を実施するための最良の形態を示す断面図である。
【図2】本実施の形態の他例を示す使用状態の断面図である。
【符号の説明】
【0024】
P…噴霧孔
1…流体スプレー噴霧用ノズル装置 2…ノズル
3…ネジ締めリング 4…空気圧移送管
5…流体噴出部 6…ネジキャップ部
7…流体移送管
11…奥部 12…基部筐体
13…ネジ筒部 14…Oリング
15…隙間 16…湾曲部
17…内部筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気圧噴出用のノズルを先端に備えた空気圧移送管と、金属もしくは非金属の粒体の焼結によって噴霧孔を形成して成る多孔質材料による流体噴出部を先端に備えた流体移送管とを備え、前記ノズルの内側に前記流体噴出部を配して成ることを特徴とする流体スプレー噴霧用ノズル装置。
【請求項2】
空気圧移送管のノズルはラッパ形状を有し、該ノズルの噴出口よりも内側の狭小な奥部に前記流体噴出部を配して成る請求項1記載の流体スプレー噴霧用ノズル装置。
【請求項3】
流体噴出部は、非金属粒体を加圧成形したものを融点以下の温度で熱処理したときに非金属粒体間結合によって固化して生成されるセラミックス粒集合体によって形成されている請求項1または2記載の流体スプレー噴霧用ノズル装置。
【請求項4】
流体噴出部は、その外形状が円柱状、球形状、楕円形状、円錐形状、多角形状のいずれかに形成されて成る請求項1乃至3のいずれか記載の流体スプレー噴霧用ノズル装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−122733(P2006−122733A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−310591(P2004−310591)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(399027015)ロボテック株式会社 (10)
【Fターム(参考)】