説明

流体ポンプ装置

【課題】本体部を小型・軽量化して設置場所の自由度を向上させることにある。
【解決手段】吸引ポート12、吐出ポート14及び排気ポート16を有する本体部28と、前記吸引ポート12から吸引された流体を圧縮して前記吐出ポート14に圧送するスクロール式圧縮部24と、回転駆動部36の駆動作用下に回転して冷却エアを送風するファン部38とを備え、前記ファン部38には、本体部28の外壁に沿って延在するダクト20が設けられ、前記ダクト20を流通する冷却エアによって前記スクロール式圧縮部24の発熱部位が冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種流体の吸引・圧縮・膨張・圧送を行う流体ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、スクロール式圧縮機は、騒音、振動等を低減させるために、防振・防音構造が採用されている。例えば、特許文献1には、冷却ダクトの内壁に吸音材を設けることが開示されている。また、前記スクロール式圧縮機には、圧縮工程で発生する熱を冷却するための冷却(空冷・油冷)回路が設けられている。さらに、前記スクロール式圧縮機には、一時的に機械性能を上回る流体の送出が必要になるときの補助を目的にレシーバタンク等を備えている。
【0003】
このように、本体カバーの内部には圧縮機本体以外の種々の機器が配置されており、概して圧縮機本体の外形寸法に対し機械全体の外形寸法は大きいものとなっている。さらに、この種のスクロール圧縮機には、運転を制御するための制御部や運転状態を示す表示部、外部から電源の供給を受けるための電源接続部等が圧縮機本体に組み込まれており、より一層大型化する要素を含んでいる。
【0004】
【特許文献1】実開平5−78988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記スクロール式圧縮機では、圧縮機本体の構成上必要不可欠な構造部分として圧縮熱の冷却回路に加え、必ずしも圧縮機本体に含まれなくても良い部分が全てパッケージングされており、作業者にとっては個別に揃えたり設置したりしなくて良いというメリットはあるが、それにより圧縮機本体が大型化し、例えば、工場の設備毎にスクロール式圧縮機を設置したいと思っても、その設置スペースが狭小で困難であるか、又は設置スペースがないという問題がある。
【0006】
本発明は前記の点に鑑みてなされたものであり、本体部を小型・軽量化して設置場所の自由度を向上させることが可能な流体ポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明は、吸引ポート、吐出ポート及び排気ポートを有する本体部と、
前記本体部に設けられた回転駆動部と、
前記本体部に固定された固定スクロールと、前記回転駆動部の駆動作用下に回転する旋回スクロールとを有し、前記固定スクロールと前記旋回スクロールとの係合作用下に前記吸引ポートから吸引された流体を圧縮して前記吐出ポートに圧送するスクロール式圧縮部と、
前記回転駆動部の駆動作用下に回転して冷却エアを送風するファン部と、
を備え、前記ファン部には、本体部の外壁に沿って延在するダクトが設けられ、前記ダクトを流通する冷却エアによって前記スクロール式圧縮部の発熱部位が冷却されることを特徴とする。
【0008】
この場合、前記固定スクロールの上面に、複数の突条からなるフィンを設けることにより、前記スクロール式圧縮部の発熱部位がさらに冷却されて好適である。
【0009】
さらに、前記本体部が収容されるケーシングが設けられ、前記ケーシングの外側面には、制御部と電気的に接続されるコネクタを配設することにより、制御部を本体部と別個独立に分離構成することができる。
【0010】
本発明によれば、図示しない電源を付勢し図示しない制御部からコネクタを介して電源信号及び制御信号が回転駆動部に導入されて前記回転駆動部の駆動軸が所定方向に回転動作を開始する
前記回転駆動部の駆動作用下に、固定スクロールに対して旋回スクロールが旋回し、且つファン部が回転して前記回転駆動部に対する冷却作用がなされると共に、冷却エアがダクトを介してスクロール式圧縮部に対して送給される。
【0011】
この場合、スクロール式圧縮部において流体の圧縮作用がなされる際に圧縮熱が発生するが、ファン部から送給される冷却エアが本体部の外壁に沿って設けられたダクト内を流通し、スクロール式圧縮部の周辺を通過することにより発熱部位が前記冷却エアによって冷却される。さらに、ケーシング内を流通して固定スクロールの上部に設けられたフィンによって冷却される。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、通常、本体部と一体的に組み込まれている制御部を本体部から分離構成すると共に、本体部の外壁に沿って延在するダクトを配設することにより、小型・軽量化を達成し且つ設置場所に応じて制御部の配置方法を適宜選択することができると共に、設置スペースを最小限としてレイアウトの自由度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る流体ポンプ装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0014】
図1〜図3において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る流体ポンプ装置を示す。
【0015】
この流体ポンプ装置10は、上部側に吸引ポート12、吐出ポート14及び排気ポート16を有し、防音材によって形成された直方体状のケーシング18と、前記ケーシング18の横方向に沿った外壁面に連結され、該ケーシング18と別体で略L字状に屈曲して形成されたダクト20と、前記ケーシング18の横方向に沿った一側面に連結され、図示しないケーブルによって制御部(図示せず)と電気的に接続されるコネクタ22と、前記コネクタ22の上方に配置され後述するスクロール式圧縮部24によって圧縮された圧縮エアの圧力を表示する圧力ゲージ26とを含む。
【0016】
前記ケーシング18の内部には本体部28が収容され、図2に示されるように、前記本体部28は、略正方形状に形成された基板30と、前記基板30の下部の四隅角部に連結されて本体部28を支持する4個の円盤部材32と、前記基板30の上部の四隅角部にそれぞれ鉛直方向に沿って立設された4本のフレームからなる支柱34とを有する。なお、前記円盤部材32に代替して図示しないキャスターを用いて移動可能に構成するとよい。
【0017】
この場合、吸引ポート12は、図1及び図2に示されるように、外部に露呈するケーシング18の上部側に設けられ、開口部に雌ねじ部が刻設されている。従って、前記吸引ポート12の雌ねじ部に対して図示しない管体の雄ねじ部をねじ締結することにより、例えば、工場内の設備の排気を閉回路によって集合配管することができる。また、前記吸引ポート12に図示しない空圧機器の排気ポートを接続し、差圧を小さくしてスクロール式圧縮部24の圧縮比を下げて運転効率を向上させることができる。なお、前記スクロール式圧縮部24における圧縮比を下げて運転させることにより、発熱量が減少して後述するスクロール部品の樹脂成形化が可能となる。
【0018】
前記本体部28の高さ方向に沿った中間部には、例えば、インダクションモータ等からなる回転駆動部36が前記支柱34に固定され、前記回転駆動部36はその上部側駆動軸36a及び下部側駆動軸36bが上下方向にそれぞれ突出した両軸モータによって構成される。前記回転駆動部36の上部側には、吸引ポート12から吸引された流体(例えば、エア)を圧縮及び膨張させて圧送するスクロール式圧縮部24が配置され、前記スクロール式圧縮部24は前記支柱34によって支持される。
【0019】
前記回転駆動部36の下部側には、該回転駆動部36を冷却すると共に前記スクロール式圧縮部24に対して冷却エアを送風するファン部38が基板30上に固定される。前記ファン部38は、回転駆動部36の下部側駆動軸36bによって回転駆動力が伝達されることにより、図示しない換気扇が回転するシロッコファンによって構成される。なお、前記ファン部38には、ダクト20内の送風路と連通し前記ダクト20に向かって冷却エアを送給する吹き出し口40(図2参照)が設けられる。
【0020】
前記スクロール式圧縮部24と回転駆動部36との間には、回転駆動部36の回転駆動力をスクロール式圧縮部24に対して伝達する駆動力伝達機構42が設けられる。この駆動力伝達機構42は、図4に示されるように、回転駆動部36の上部側駆動軸36aに連結され、前記上部側駆動軸36aの軸心から所定間隔だけオフセットした偏心軸からなるセンタクランク軸44と、前記センタクランク軸44を回転自在に軸支する第1ベアリング部材46a、46bと、周方向に沿って120度の離間角度を有し第2ベアリング部材48によって回転自在に軸支されて後述する旋回スクロール50の自転を防止する3本のサブクランク軸52と、前記旋回スクロール50の旋回作用によって発生するイナーシャを減衰させるカウンタバランス54とを有する。
【0021】
スクロール式圧縮部24は、支柱34の上部に固定された固定スクロール56と、前記固定スクロール56の下部側に配置され前記センタクランク軸44によって偏心しながら周方向に旋回する旋回スクロール50とを含む。
【0022】
前記スクロール式圧縮部24の上面には、複数の突条が略平行に併設されスクロール式圧縮部24によってエアが圧縮される際に発生する熱を冷却する冷却用フィン58と、排気ポート16に近接配置されファン部38の回転が停止したときに冷却作用を補助的に営むた補助冷却ファン60と、図示しないコイルスプリングによってボール(図示せず)を押圧し設定値を超えた内圧が前記コイルスプリングの押圧力に打ち勝つことによりボールが浮上して前記内圧(圧縮エア)を外部に排気する安全弁62とが設けられる。
【0023】
さらに、前記スクロール式圧縮部24の上面には、図3に示されるように、前記固定スクロール56と前記旋回スクロール50との係合作用下に吸引・圧縮されたエアの圧力を検出する圧力センサ64と、前記エアの圧縮温度を検出する温度センサ66と、前記吐出ポート14に連通する管体68中に設けられ該吐出ポート14に向かって流通する圧縮エアが逆流することを防止するチェック弁70とが配設される。
【0024】
本発明の実施の形態に係る流体ポンプ装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0025】
図示しない電源を付勢し図示しない制御部からコネクタ22を介して電源信号及び制御信号が回転駆動部36に導入されて前記回転駆動部36の両駆動軸が所定方向に回転動作を開始すると共に、前記制御信号に基づいて回転駆動部36の回転運動が制御される。
【0026】
前記回転駆動部36の両駆動軸がそれぞれ回転し、上部側駆動軸36aに連結されたセンタクランク軸44を介して旋回スクロール50が偏心した状態で旋回する。同時に、下部側駆動軸36bに連結されたファン部38(シロッコファン)が回転して前記回転駆動部36に対する冷却作用がなされると共に、冷却エアがダクト20を介してスクロール式圧縮部24に対して送給される。
【0027】
この場合、固定スクロール56に対して偏心した旋回スクロール50が係合することにより、吸引ポート12を介して流体(例えば、エア)が吸入され、前記吸入された流体が圧縮・膨張された後、管体68を流通して吐出ポート14から吐出される。
【0028】
スクロール式圧縮部24において流体の圧縮作用がなされる際に圧縮熱が発生するが、図5の矢印に示されるように、ファン部38によって送給される冷却エアが本体部28の外壁に沿って設けられたダクト20内を流通し、回転駆動部36の上部側のスクロール式圧縮部24の周辺を通過することにより発熱部位が前記冷却エアによって冷却される。さらに、ケーシング18の上部側を流通して固定スクロール56の上部に設けられた冷却用フィン58によって冷却される。
【0029】
その際、ファン部38による冷却作用は、回転駆動部36の回転運動が停止したとき、すなわち、スクロール式圧縮部24の圧縮動作が停止すると同時に止まってしまうため、外部に設けられた図示しない制御部がその後の温度が高いと判断した場合、前記制御部は補助冷却ファン60に付勢信号を導出し、本体部28の上面に設けられた補助冷却ファン60を回転駆動させることによって強制的に冷却される。
【0030】
このように、通常、本体部28と一体的に組み込まれている制御部を本体部28から分離構成すると共に、本体部28の外壁に沿って延在するダクト20を配設することにより、小型・軽量化を達成し且つ設置場所に応じて制御部の配置方法を適宜選択することができると共に、設置スペースを最小限としてレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0031】
本実施の形態では、本体部28の体積(容積)に占める割合が高いレシーバタンク(図示せず)を取り除き、必要に応じて別途取り付けることができるため、より一層小型・軽量化を図ることができる。また、圧縮熱冷却回路の全てを本体部28の内部に納めるのではなく、送風に必要なダクト20(導管部)を本体部28の外部壁面に配設している。さらに、図示しない操作部、表示部、電源接続部を分離可能な筺体に配し、設置場所や使用条件に合わせて遠隔操作をすることができる。
【0032】
また、本実施の形態では、潤滑油を全く使用していないオイルフリー構造としているため、潤滑油の供給が不要であると共に、メンテナンス作業を容易に遂行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態に係る流体ポンプ装置の斜視図である。
【図2】図1に示す流体ポンプ装置からケーシングを除去した本体部の斜視図である。
【図3】前記流体ポンプ装置の平面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿った縦断面図である。
【図5】図1のV−V線に沿った縦断面図である。
【符号の説明】
【0034】
10…流体ポンプ装置 12…吸引ポート
14…吐出ポート 16…排気ポート
18…ケーシング 20…ダクト
22…コネクタ 24…スクロール式圧縮部
28…本体部 34…支柱
36…回転駆動部 36a、36b…駆動軸
38…ファン部 40…吹き出し口
42…駆動力伝達機構 44…センタクランク軸
50…旋回スクロール 56…固定スクロール
58…冷却用フィン 60…補助冷却ファン
62…安全弁 64…圧力センサ
66…温度センサ 70…チェック弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引ポート、吐出ポート及び排気ポートを有する本体部と、
前記本体部に設けられた回転駆動部と、
前記本体部に固定された固定スクロールと、前記回転駆動部の駆動作用下に回転する旋回スクロールとを有し、前記固定スクロールと前記旋回スクロールとの係合作用下に前記吸引ポートから吸引された流体を圧縮して前記吐出ポートに圧送するスクロール式圧縮部と、
前記回転駆動部の駆動作用下に回転して冷却エアを送風するファン部と、
を備え、前記ファン部には、本体部の外壁に沿って延在するダクトが設けられ、前記ダクトを流通する冷却エアによって前記スクロール式圧縮部の発熱部位が冷却されることを特徴とする流体ポンプ装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記固定スクロールの上面には、複数の突条からなるフィンが設けられることを特徴とする流体ポンプ装置。
【請求項3】
請求項1記載の装置において、
前記本体部が収容されるケーシングが設けられ、前記ケーシングの外側面には、制御部と電気的に接続されるコネクタが配設されることを特徴とする流体ポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−321563(P2007−321563A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149212(P2006−149212)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】