説明

流体作動式調節弁装置及びそれを使用した自動機器の制御機構

【課題】配管内の作動流体の流通を制御する自動機器の制御機構に使用される流体作動式調節弁装置において、流体作動式調節弁装置を分解することなく、外部からシリンダー内部のピストン等の可動部分の状態を視認することができるようにした流体作動式調節弁装置を提供する。
【解決手段】流体作動式調節弁装置1は配管に着脱自在であり、配管内の作動流体の流通を制御する自動機器の制御機構を構成する。流体作動式調節弁装置1は進退動作により作動流体の流通を制御する弁体を有し、弁体は流体作動式調節弁装置1を配管に取り付けた状態で、配管の作動流体流通部に設けられている弁室に収まる。シリンダー16は一部又は全部が透明体又は半透明体で形成されており、シリンダー16内部のピストン17を含む可動部を外部から視認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体作動式調節弁装置及びそれを使用した自動機器の制御機構に関するものである。更に詳しくは、流体作動式調節弁装置を分解することなく、外部からシリンダー内部のピストン等の可動部分の状態を視認することができるようにした流体作動式調節弁装置及びそれを使用した自動機器の制御機構に関する。
【背景技術】
【0002】
空気等の流体の圧力を利用して作動し、配管内の作動流体の流通を制御する流体作動式調節弁装置は、例えばタイヤの加硫装置等、作動流体の制御を伴う各種自動機器に広く使用されている。このような流体作動式調節弁装置としては、例えば特許文献1に開示されている「弁体作動装置」がある。
【0003】
この弁体作動装置は、配管に着脱自在であり、配管内の作動流体の流通を制御する配管構造を構成する弁体作動装置であって、進退動作により作動流体の流通を制御する弁体を有し、配管に取り付けた状態では、弁体は配管の作動流体流通部に設けてある弁室に収まるように構成されており、小型軽量化を図ることにより、配管への取り付け又は取り外し作業の作業性を向上させることができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−226385
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の弁体作動装置には次のような課題があった。
すなわち、弁体作動装置を備えた配管構造を、例えばタイヤ加硫装置等の自動機器の制御配管内の作動流体の流れを制御する機器として使用する場合において、通常は多数使用されている弁体作動装置のうちのどれかが故障した場合には、タイヤ加硫装置の運転を停止しなければならないので、故障した弁体作動装置を速やかに特定して修理又は交換を行う必要がある。
【0006】
故障した弁体作動装置を特定する作業は、通常は多数の弁体作動装置のうち適当な弁体作動装置を順番にピックアップして、例えばハウジングを分解し、その内部のピストン等の可動部分に故障があるかどうかを検査している。しかも、弁体作動装置を備えた配管構造は、通常、暗く狭い所に設置されており、この作業は容易ではない。また、この方法では、故障した弁体作動装置が、全弁体作動装置のうち最後に見つかることも考えられ、きわめて効率が悪い。
【0007】
(本発明の目的)
そこで本発明の目的は、各種自動機器のアクチュエーターに送られる作動流体の流通を制御する流体作動式調節弁装置において、流体作動式調節弁装置を分解することなく、ハウジング外部からハウジング内部のピストンやダイヤフラム等の動きを視認することができるようにして、例えば多数使用されている流体作動式調節弁装置のうちのどれかが故障した場合、故障した流体作動式調節弁装置を容易に判別して特定することができる流体作動式調節弁装置及びそれを使用した自動機器の制御機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
(1)本発明は、
自動機器のアクチュエーターに送られる作動流体の流通を制御する流体作動式の調節弁装置であって、
ハウジングと、
該ハウジング内に設けられており、進退動作をすることにより前記作動流体が流れる流通口を開閉するか又は該流通口を通る作動流体の流量を調節する弁体と、
流体の圧力で前記弁体を作動させる作動手段と、
を備えており、
前記ハウジングは、一部又は全部が透明体又は半透明体で形成されており、透明体又は半透明体で形成された部分を通してハウジング内の前記作動手段の動きを外部から視認できるようにしてある、
流体作動式調節弁装置である。
【0009】
(2)本発明は、
自動機器のアクチュエーターに送られる作動流体の流通を制御する流体作動式の調節弁装置であって、
シリンダーを有するハウジングと、
該ハウジング内に設けられ、進退動作をすることにより前記作動流体が流れる流通口を開閉するか又は該流通口を通る作動流体の流量を調節する弁体と、
流体の圧力で前記弁体を作動させるピストンと、
を備えており、
前記シリンダーは、一部又は全部が透明体又は半透明体で形成されており、透明体又は半透明体で形成された部分を通してシリンダー内の前記ピストンの動きを外部から視認できるようにしてある、
流体作動式調節弁装置である。
【0010】
(3)本発明は、
自動機器のアクチュエーターに送られる作動流体の流通を制御する流体作動式の調節弁装置であって、
カバーを有するハウジングと、
該ハウジング内に設けられ、進退動作をすることにより前記作動流体の流通口を開閉するか又は該流通口を通る作動流体の流量を調節する弁体と、
流体の圧力で前記弁体を作動させるダイヤフラムと、
を備えており、
前記カバーは、一部又は全部が透明体又は半透明体で形成されており、透明体又は半透明体で形成された部分を通してカバー内の前記ダイヤフラムの動きを外部から視認できるようにしてある、
流体作動式調節弁装置である。
【0011】
(4)本発明は、
透明体又は半透明体の部分は、ポリカーボネートで形成されている、
前記(1)、(2)又は(3)の流体作動式調節弁装置である。
【0012】
(5)本発明は、
自動機器のアクチュエーターに作動流体を送る配管に弁箱体が設けられており、
弁体は、前記弁箱体の弁室に収まるように構成されている、
前記(1)、(2)、(3)又は(4)の流体作動式調節弁装置である。
【0013】
(6)本発明は、
調節弁装置が弁室を有する弁箱体を備えており、弁体は、前記弁室に収まっている、
前記(1)、(2)、(3)又は(4)記載の流体作動式調節弁装置である。
【0014】
(7)本発明は、
自動機器のアクチュエーターに送られる作動流体の流通を制御する自動機器の制御機構であって、
複数の自動機器のアクチュエーターに作動流体を送る配管構造を備えており、該配管構造には、前記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)の流体作動式調節弁装置が取り付けられている、
自動機器の制御機構である。
【0015】
シリンダーやカバーを有するハウジングを形成する透明体又は半透明体としては、例えばポリカーボネート(Polycarbonate:ポリカルボナートと呼称される場合もある)を挙げることができるが、これに限定するものではなく、温度や圧力等の使用条件に対し十分な強度及び耐久性を有するものであれば、ポリカーボネート以外の各種合成樹脂や強化ガラス等を採用することができる。
【0016】
ポリカーボネートの物性は、例えば密度:1.20 g/cm3、可用温度:−100 ℃to+180℃、融点:約250℃、屈折率:1.585 ± 0.001、光透過率:90% ± 1%、熱伝導率:0.19W/mkである。
本発明に係る流体作動式調節弁装置において、弁体を進退させるために使用される流体としては、例えば空気や空気以外の各種ガスの他、水や水以外の各種液体を挙げることができる。
【0017】
(作用)
本発明に係る流体作動式調節弁装置及び自動機器の制御機構の作用を説明する。なお、ここでは、説明で使用する各構成要件に、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与するが、この符号は、特許請求の範囲の各請求項に記載した符号と同様に、あくまで内容の理解を容易にするためであって、各構成要件の意味を前記各部に限定するものではない。
【0018】
流体作動式調節弁装置(1,3)のシリンダー(16)又はカバー(36)等を有するハウジング(10,30)は、一部又は全部が透明体又は半透明体で形成されており、シリンダー(16)内部のピストン(17)又はカバー(36)内部のダイヤフラム(37)を含む作動手段(17,37)の動きを透明体又は半透明体部分を通して外部から視認できるようにしているので、自動機器に使用される流体作動式調節弁装置において、流体作動式調節弁装置(1,3)を分解することなく、ピストン(17)やダイヤフラム(37)等の動き又は状態を確認することができる。
【0019】
これにより、例えば自動機器おいて、多数使用されている流体作動式調節弁装置(1)のうちのどれかが故障した場合、点検者が装置外部からシリンダー(16)やカバー(36)内部の可動部を視認して、ピストン(17)やダイヤフラム(37)の動き又は状態(位置や形態を含む)が正常な作動の場合と異なることがわかれば、その流体作動式調節弁装置(1,3)が故障していると判断することができる。このように、故障した流体作動式調節弁装置(1,3)を分解することなく容易に判別して特定することができるので、配管を有する各種自動機器の短時間での復旧が可能になる。
【0020】
また、自動機器のアクチュエーターに作動流体を送る配管に弁箱体(2)が設けられており、弁体(15)は、弁箱体(2)の弁室(6)に収まるように構成されているものは、流体作動式調節弁装置(1)を配管に取り付けることで弁体(15)を弁室(6)内に収めることができるので、流体作動式調節弁装置(1)自体に弁箱を設ける必要はなく、流体作動式調節弁装置(1)を小型軽量化することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る流体作動式調節弁装置は、シリンダー又はカバー等、ハウジングの一部又は全部が透明体又は半透明体で形成されており、シリンダー又はカバー内部のピストンやダイヤフラムの動きを透明体又は半透明体部分を通して外部から視認できるようにしているので、流体作動式調節弁装置を分解することなく、シリンダー又はカバー内部のピストンやダイヤフラム等の動き又は状態を確認することができる。
これにより、例えば自動機器において、多数使用されている流体作動式調節弁装置のうちのどれかが故障した場合、点検者が装置外部から可動部分を視認して、例えばピストンやダイヤフラムの動き又は状態が正常な作動の場合と異なることがわかれば、その流体作動式調節弁装置が故障していると判断することができる。このように、故障した流体作動式調節弁装置を容易に判別して特定することができるので、配管を有する自動機器の短時間での復旧が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る流体作動式調節弁装置の実施の形態を示すと共に、流体作動式調節弁装置を使用した自動機器の制御機構の一実施の形態を示す側面視説明図。
【図2】図1においてp3部分のピストンを備えた流体作動式調節弁装置と弁箱体を示し、(a)は流体作動式調節弁装置を弁箱体から分離した状態を示す正面視説明図、(b)は流体作動式調節弁装置の側面視一部断面説明図。
【図3】図2(a)に示す流体作動式調節弁装置の断面説明図。
【図4】流体作動式調節弁装置を弁箱体に取り付けた状態の要部断面説明図。
【図5】図1に示すダイヤフラムを備えた流体作動式調節弁装置の要部断面説明図。
【図6】ピストン弁装置の他の使用形態を示し、ピストン弁装置を弁箱体に取り付けた状態の一部断面説明図。
【図7】ピストン弁装置の第2の実施の形態及び更に他の使用形態を示し、ピストン弁装置を弁箱体に取り付けた状態の一部断面説明図。
【図8】ピストン弁装置の第3の実施の形態を示す一部断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1乃至図4を参照する。図1乃至図4は、本発明に係る自動機器の制御機構及びそれを構成する流体作動式調節弁装置の実施の形態を示す説明図である。
【0024】
(自動機器の制御機構)
図1には、例えば作動流体の制御を伴う自動機器であるタイヤ加硫装置に接続される自動機器の制御機構Pを示している。
自動機器の制御機構Pは、配管を構成する管状の弁箱体2に着脱できるようにしたピストン弁装置1を有している。ピストン弁装置1は、ハウジング10内部にピストン17を備えた流体作動式調節弁装置である。ピストン弁装置1は、弁箱体2と共に弁装置(符号省略)を構成するものである。
【0025】
また、符号3は、ピストン弁装置1と同様に配管に着脱できるようにしたコントロール弁装置である。コントロール弁装置3は、ハウジング30内部にダイヤフラム37を備えた流体作動式調節弁装置であり、弁箱体4と共に弁装置(符号省略)を構成するものである。
【0026】
始めに、図1を参照して自動機器の制御機構Pにおける作動流体の流れを簡単に説明する。
本実施の形態では、配管の中を空気等の作動流体が流通する。なお、図1において右側に示している上下方向の部材(丸棒体)は配管を支える足部材41であり、作動流体は流通しない。また、同じく図1において中央の下部に設けられている部材も足部材42であり、作動流体は流通しない。更に、足部材42の上方に位置する部材は、配管を連結するための連結部材43であり、同じく作動流体は流通しない。
【0027】
そして、右端の矢印A近傍に位置するフランジ44側の接続口(図示省略)に供給管(図示省略)が接続され、ここから作動流体が矢印A方向に供給される。なお、フランジ44と反対側に位置するフランジ44a側は閉塞されている。作動流体は、配管451を通ってコントロール弁装置3、3側へ分岐し、コントロール弁装置3、3が設けられている配管(符号省略)を通ってフランジ46、47側の接続口(図示省略)から排出される。各接続口には、図示していない自動機器に作動流体を供給する供給管(図示省略)が接続されている。
【0028】
自動機器を作動させた作動流体は、再びこの自動機器の制御機構Pに戻る。自動機器から排出された作動流体が送られてくる二本の排出管(図示省略)は、図1に示す各連結部材43、43の奥側に位置するフランジ48、48側の接続口(図示省略)にそれぞれ接続されている。フランジ48、48側の接続口から先の二つの弁装置(図1で四角で囲ったp1部分とp2部分)は、同じ構造のものが上下に並設されており、末端の排出用のフランジ49、49側の接続口(図示省略)には、排出用の配管(図示省略)が接続されており、作動流体はこの配管を通り矢印B方向へ排出される。
【0029】
p1部分とp2部分の弁装置における作動流体の流れを説明する。
フランジ48の接続口から送られてくる作動流体は、ダスト等の不純物を除くストレーナ40を通り、図1において下方へ流れる。そして、後述する弁室6を備えた弁箱体2内に流入し、前記ピストン弁装置1によって作動流体の流通が制御される。
【0030】
弁箱体2は三方弁用であり、作動流体の出入口を三方向に有する。そして、ピストン弁装置1による制御により、ストレーナ40を通った作動流体が図1において右を向いたフランジ49側の接続口から矢印B方向に排出されるか、あるいは弁箱体2の背面側に位置するフランジ50の接続口(図示省略)から図1において奥方向に排出される。
【0031】
(ピストン弁装置1及び弁箱体2)
図2乃至図4を主に参照する。なお、図2は、p3部分を縦にして表しており、図4では、説明の便宜上、図2で実線で示したフランジを備えたエルボ491を想像線で示している。
【0032】
図1のp3部分のピストン弁装置1及び弁箱体2の構造について説明する。
ピストン弁装置1は、作動流体の流通口を開閉し、作動流体の流通を制御するものである。ピストン弁装置1は、配管側の弁箱体2の嵌合部に着脱自在に嵌め入れる筒状の弁箱取着体11を有している。そして、図4に示すように、ピストン弁装置1側のフランジ12と弁箱体2側のフランジ21を対向させた状態で、固着具である固定用ボルト13をネジ孔22に螺着することによって、ピストン弁装置1は弁箱体2に固着されている。
【0033】
なお、前記したようにピストン弁装置1は弁箱体2と共に三方弁を構成するが、後述するように、二方向の作動流体の出入口を備えた二方弁用の弁箱体2にも装着できる。すなわち、ピストン弁装置1は、作動流体の出入口の数が異なる弁室を備えた複数種類の弁箱体に対応できる兼用型である。
【0034】
ピストン弁装置1について、更に詳しく説明する。
図3、図4に示すように、弁箱取着体11には進退自在な弁棒14が収容されており、その先端部に設けられている円形の流通口111(図4に図示)から弁棒14の先部が突出している。弁棒14の先端部には弁体15が設けられており、弁体15は弁箱取着体11の先方に位置している。弁棒14の先部側の一部は、やや細く括れた状態で形成された括れ部141(図4に図示)を有している。弁棒14が突出した状態では、この括れ部141が流通口111に差し入れられた状態となり、流通口111と括れ部141の間に形成される隙間(図示省略)から作動流体が流通するようになっている。
【0035】
弁体15は、フッ素樹脂等の合成樹脂製でリング状の当接部材151、152を有している。先部側の当接部材151と基部側の当接部材152は、後述する弁座732、112に当たって摩耗するため、通常、定期的な交換を行うようになっている。
図3のように、ピストン弁装置1を弁箱体2から取り外した状態では、弁体15は外部に露出するので、当接部材151、152の検査や交換といった弁体15のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0036】
弁棒14は弁箱取着体11の中から外(先端側)へ突出するようになっている。弁箱取着体11の先端縁は弁体15の基部側の当接部材152を受ける弁座112を構成している。弁箱取着体11の周面部には、作動流体が流通自在な円形の流通口である側方流通口113が四箇所に設けられている。側方流通口113は、弁棒14の軸心を中心として放射状に四方向に開口している。
【0037】
ピストン弁装置1はハウジング10を有し、ハウジング10はボディ16aとシリンダー部材16で構成されている。シリンダー部材16は、ボディ16aに複数の固着具(ボルト・ナット)160によって固着されている。シリンダー部材16は、半透明体であるポリカーボネートで形成されている。シリンダー部材16は、本実施の形態では、光透過率が90%のほぼ透明に近いポリカーボネートが採用されており、内部のピストン17の動き又は位置や形態をシリンダー部材16を通して外部から確認することができる。
【0038】
弁棒14は、シリンダー部材16内のピストン17の往復運動により進退する。ピストン17は、シリンダー部材16内に収容された復帰バネ18によって図3で上方向へ付勢されている。ピストン17は、弁棒14及び後述する復帰バネ18と共に作動手段を構成する。符号19はピストンリングであり、ピストンリング19は、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン等)製で断面コ字状(後述する接続口161側が開放されている)のリング体190の空間部にコイルバネ191を全周にわたり収容した構造である。コイルバネ191は、コイルを倒し幅を狭くしてリング体190に収容されており、これによりリング体190の側壁部は拡がる方向へ付勢されている。
【0039】
シリンダー部材16において弁棒14と同軸上の中心部には、ネジ部を有する接続口161が設けられており、接続口161には給気管162が接続されている。そして、給気管162からシリンダー部材16内への空気の供給及び供給停止を繰り返すことによってピストン17が往復運動し、弁体15を備えた弁棒14が進退するようになっている。
【0040】
配管側の弁箱体2について、更に詳しく説明する。
弁箱体2は、ピストン弁装置1の弁箱取着体11が嵌め入れられる嵌合孔24をフランジ21側に備えている。弁箱体2は、ピストン弁装置1の弁体15を収める弁室6を備えている。弁室6は、ピストン弁装置1側にではなく、配管の作動流体流通部に設けられている。
【0041】
また図4に示すように、嵌合孔24のうち、ピストン弁装置1の各側方流通口113が位置する部分は、その内径が弁箱取着体11の外形よりも大きく形成され、軸周方向に連続した凹溝241を構成している。これにより、弁箱取着体11の先端の流通口111から流入した作動流体は、各側方流通口113を通って凹溝241を通り抜け、後述する流通口である流出口23へ流れるようになっている。
【0042】
弁箱体2は、弁室6を挟んで嵌合孔24と反対側(図4で下部側)に嵌入孔25を有しており、嵌入孔25に嵌め入れられた弁蓋7が固着具である固定用ボルト71によって固着されている。弁蓋7は取り外すことができ、嵌入孔25は弁箱体2内のダスト等を取り除く際のメンテナンス用の作業口として使用することができる。
【0043】
弁蓋7は、底面視円形状の基体72と、基体72から突出した有底円筒状の嵌入体73を備えている。嵌入体73の先端部から中間部にかけては、作動流体が通る流通部731が軸線方向に設けられ、流通部731は弁室6と繋がっている。また、流通部731は、嵌入体73に設けられている流通孔74と繋がっている。流通孔74は円形の孔であり、流通部731の軸心を中心として放射状に四方向に開口している。
【0044】
嵌入孔25において、各流通孔74が位置する部分は、その内径が嵌入体73の外形よりも大きく形成され、軸周方向に連続した凹溝251を構成している。これにより、流通部731内に流入した作動流体は、各流通孔74を通って凹溝251を抜け、エルボ491側の流通口である流出口27へ流れるようになっている。更に、嵌入体73の先端縁(図4で上端部)は、弁体15の当接部材151が当接する弁座732を構成している。弁蓋7を装着した状態では、弁座732は弁室6との境界部分に位置している。
【0045】
弁箱体2は、作動流体の流通口である流入口26と、前記したように二つの流出口23、27を備えている。流入口26は弁箱体2の長手方向に対して直交する方向(図4で左右方向)に開口しており、流入側の配管452と繋がっている。ピストン弁装置1に近い側の一方の流出口23(図4で上側)は、前記した弁箱取着体11の嵌合孔24が設けられた弁箱体2の凹溝241が形成されている箇所に設けられている。この流出口23は、排出側のフランジ50を備えた配管453(図1乃至図4では見えない。参考:後述する図6、図7)と繋がっている。
【0046】
ピストン弁装置1と遠い側の他方の流出口27(図4で下側)は、前記嵌合孔24と反対側の弁箱体2の凹溝251が形成されている箇所に設けられている。この流出口27は、排出側のフランジ49を備えたエルボ491と繋がっている。
【0047】
図5を参照する。
前記したように、図1、図5で示したコントロール弁装置3は、配管側に設けられた弁箱体4に着脱自在である。各コントロール弁装置3は、弁棒34の進退ストロークの調節によって作動流体の流量、圧力、流れの方向などを制御するものである。
【0048】
コントロール弁装置3の弁体(図では見えない)を作動させる内部構造は、ハウジング30の内部に、弁棒34、復帰バネ38と共に作動手段を構成するダイヤフラム37を備えたものであり、その構造は公知のものと同様であるので、詳細な説明は省略する。なお、弁箱体4は弁室(図では見えない)を有しており、コントロール弁装置3と弁箱体4の取付構造は、ピストン弁装置1と弁箱体2の場合と同様であるため、説明を省略する。
【0049】
また、ハウジング30は、ボディ35とカバー部材36で構成されており、カバー部材36はボディ35に複数の固着具(ボルト・ナット)39によって固着されている。カバー部材36は、半透明体であるポリカーボネートで形成されている。カバー部材36は、本実施の形態では前記シリンダー部材16と同様に光透過率が90%のほぼ透明に近いポリカーボネートが採用されており、内部のダイヤフラム37がどのような動き又は位置や形態になっているかをカバー部材36を通して外部から確認することができる。
【0050】
(作用)
図2乃至図4を参照してピストン弁装置1及び弁箱体2の作用を説明する。
ピストン弁装置1は、弁箱取着体11を弁箱体2の嵌合孔24に嵌め入れて、固定用ボルト13で弁箱体2に固着されている。この状態では、ピストン弁装置1の弁体15は、配管の作動流体流通部に設けてある弁室6内に収まっている。
【0051】
また、弁棒14が図4で最上部に位置する状態では、弁体15の基部側の当接部材152が弁箱取着体11の弁座112に当接している。このときは、流入側の配管452から流入した作動流体は弁室6を通り、図4で下側の弁蓋7の流通部731を抜けて流通孔74からエルボ491側へ排出される。
【0052】
また、弁棒14が図4で最下部に位置する状態(想像線で図示)では、弁体15の先部側の当接部材151が弁蓋7の弁座732に当接する。このときは、流入側の配管452から流入した作動流体は弁室6を通り、図4で上側の弁箱取着体11の流通口111を通り抜けて側方流通口113から排出側の配管453へ排出される。
【0053】
このように、ピストン弁装置1の弁体15を収めるための弁室6を配管の作動流体流通部に設けたので、ピストン弁装置1に弁箱を設ける必要はない。したがって、ピストン弁装置1を小型軽量化することができ、それによって配管への取り付け又は取り外し作業の作業性を向上させることができる。また従来のように、配管側に弁箱体を取り付けるための配管ブロックを設ける必要もないので、全体の部品点数を減らすことができる。その結果、製造コスト及び導入コストを抑えることができる。
【0054】
弁体15のメンテナンス作業を行う場合には、配管からピストン弁装置1を取り外す。取り外したピストン弁装置1の弁体15は露出した状態となっているので、リング状の当接部材151、152の摩耗状態の検査や交換等の弁体15のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
なお、コントロール弁装置3は、弁体部分が前記ピストン弁装置1と同様の構造を有しているので、作用についてもピストン弁装置1と同様の作用を有しており、ここでは詳細な説明は省略する。
【0055】
また、ピストン弁装置1のシリンダー部材16及びコントロール弁装置3のカバー部材36は、全体が半透明体であるポリカーボネートで形成されており、シリンダー部材16内部のピストン17又はカバー部材36内部のダイヤフラム37や復帰バネ18、38を含む可動部を外部から視認できるようにしているので、ピストン弁装置1又はコントロール弁装置3を分解することなく、外部から内部の可動部分の状態を確認することができる。
【0056】
これにより、例えば自動機器の制御機構Pにおいて、多数使用されているピストン弁装置1又はコントロール弁装置3のうちのどれかが故障した場合、点検者が装置外部から内部の可動部分を視認して、例えばピストン17の位置が正常な作動の場合と異なることがわかれば、そのピストン弁装置1が故障していると判断することができる。このように、故障したピストン弁装置1又はコントロール弁装置3を容易に判別して特定することができるので、短時間での復旧が可能になる。
【0057】
図6を参照し、ピストン弁装置の他の使用形態を説明する。
なお、図6に示すピストン弁装置1は、前記ピストン弁装置1と同一のものであるので、構造の説明は省略する。また、弁箱体2aについては、前記弁箱体2と同一又は同等箇所には同一の符号を付して示し、構造及び作用について重複する説明は省略し、主に相異点のみ説明する。
【0058】
ピストン弁装置1は、二方向に作動流体の出入口を有する弁室6aを備えた二方弁用の弁箱体2aに装着されている。すなわち、前記したようにピストン弁装置1は、二方向又は三方向といった作動流体の出入口の数が異なる弁室を備えた複数種類の弁箱体2、2bに対応できる兼用型である。
【0059】
ピストン弁装置1と弁箱体2aから構成される弁装置(符号省略)は、常態では弁が閉じられているクローズ型の二方弁である。図4で示した三方弁用の弁箱体2と比較して説明すると、弁箱体2は下側が弁蓋7aで閉塞された構造となっている。
【0060】
そして、弁棒14が図6で最上部に位置する通常の状態では、弁体15の基部側の当接部材152が弁箱取着体11の弁座112に当接して、流通口111が閉鎖され、弁が閉じている。そして、弁棒14が図6で最下部に位置すると、弁体15の先部側の当接部材151が弁蓋7aの弁座732aに当接し、流通口111が開放され、弁が開く。
【0061】
このように、ピストン弁装置1を作動流体の出入口の数が異なる複数種の弁箱体2、2bに対し兼用できるので、二方弁や三方弁が混在して複雑に組み合わされた自動機器の制御機構Pでは、弁箱体(弁室)の種類を一つ一つ確認せずに、どの弁箱体にも同じピストン弁装置1を取り付けることができる。よって、取り付け作業が容易である。
【0062】
図7を参照し、ピストン弁装置の第2の実施の形態及び更に他の使用形態を説明する。
なお、ピストン弁装置1b及び弁箱体2bについては、前記ピストン弁装置1及び弁箱体2と同一又は同等箇所には同一の符号を付して示し、構造について重複する説明は省略し、主に相異点のみ説明する。
【0063】
ピストン弁装置1bと弁箱体2bから構成される弁装置(符号省略)は、図6に示すものと相違して、図7に示す通常の状態では弁が開いているオープン型の二方弁である。ピストン弁装置1bは、弁箱取着体11bを含む弁棒14bの長さが前記ピストン弁装置1の弁棒14より短く形成されており、弁体15は嵌合孔24b側の弁室6b内に収まっている。
【0064】
弁棒14bが図7で最上部に位置する通常の状態では、弁体15の基部側の当接部材152が弁箱取着体11bの弁座112bに当接し、弁体15の先方に位置する弁室6bの流通口61は開放され、弁は開いている。そして、弁棒14bが図7において最下部に位置する状態(想像線で示す)では、弁体15の先部側の当接部材151が前記流通口61に設けられている弁座611に当接して、流通口61を閉鎖し、弁を閉じる。
【0065】
図8を参照し、ピストン弁装置の第3の実施の形態を説明する。
ピストン弁装置1cは、前記ピストン弁装置1、1bと相違して、弁箱体と別体ではなく、弁箱体8と一体となった流体作動式調節弁装置である。
ピストン弁装置1cの弁箱体8は三方弁用である。ピストン弁装置1cの弁体15は、弁室80に収まっており、進退動することにより流通口81、82を開閉し、作動流体の流通方向を切り替える。そして、ピストン弁装置1cは、弁箱体を有していない自動機器の制御機構(図示省略)に取り付けて使用される。
【0066】
なお、本明細書で使用している用語と表現はあくまで説明上のものであって、限定的なものではなく、前記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。また、本発明は図示した実施の形態に限定されるものではなく、技術思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0067】
P 自動機器の制御機構
1 ピストン弁装置
10 ハウジング
11 弁箱取着体
111 流通口
112 弁座
113 側方流通口
12 フランジ
13 固定用ボルト
14 弁棒
141 括れ部
15 弁体
151 先部側の当接部材
152 基部側の当接部材
16 シリンダー部材
16a ボディ
160 固着具
161 接続口
162 給気管
17 ピストン
18 復帰バネ
19 ピストンリング
190 リング体
191 コイルバネ
1b 流体作動式調節弁装置
11b 弁箱取着体
112b 弁座
14b 弁棒
2 弁箱体
21 フランジ
22 ネジ孔
23 流出口
24 嵌合孔
241 凹溝
25 嵌入孔
251 凹溝
26 流入口
27 流出口
2a 弁箱体
2b 弁箱体
24b 嵌合孔
3 コントロール弁装置
30 ハウジング
34 弁棒
35 ボディ
36 カバー部材
37 ダイヤフラム
38 復帰バネ
39 固着具
4 弁箱体
40 ストレーナ
41 足部材
42 足部材
43 連結部材
44、44a フランジ
46、47 フランジ
48 フランジ
49 フランジ
50 フランジ
451 配管
452 配管
453 配管
491 エルボ
6 弁室
61 流通口
611 弁座
6a 弁室
6b 弁室
7 弁蓋
71 固定用ボルト
72 基体
73 嵌入体
731 流通部
732 弁座
74 流通孔
7a 弁蓋
732a 弁座
8 弁箱体
80 弁室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動機器のアクチュエーターに送られる作動流体の流通を制御する流体作動式の調節弁装置であって、
ハウジング(10,30)と、
該ハウジング(10,30)内に設けられており、進退動作をすることにより前記作動流体が流れる流通口を開閉するか又は該流通口を通る作動流体の流量を調節する弁体(15)と、
流体の圧力で前記弁体(15)を作動させる作動手段(17,37)と、
を備えており、
前記ハウジング(10,30)は、一部又は全部が透明体又は半透明体で形成されており、透明体又は半透明体で形成された部分を通してハウジング(10,30)内の前記作動手段(17,37)の動きを外部から視認できるようにしてある、
流体作動式調節弁装置。
【請求項2】
自動機器のアクチュエーターに送られる作動流体の流通を制御する流体作動式の調節弁装置であって、
シリンダー(16)を有するハウジング(10)と、
該ハウジング(10)内に設けられ、進退動作をすることにより前記作動流体が流れる流通口を開閉するか又は該流通口を通る作動流体の流量を調節する弁体(15)と、
流体の圧力で前記弁体(15)を作動させるピストン(17)と、
を備えており、
前記シリンダー(16)は、一部又は全部が透明体又は半透明体で形成されており、透明体又は半透明体で形成された部分を通してシリンダー(16)内の前記ピストン(17)の動きを外部から視認できるようにしてある、
流体作動式調節弁装置。
【請求項3】
自動機器のアクチュエーターに送られる作動流体の流通を制御する流体作動式の調節弁装置であって、
カバー(36)を有するハウジング(30)と、
該ハウジング(30)内に設けられ、進退動作をすることにより前記作動流体の流通口を開閉するか又は該流通口を通る作動流体の流量を調節する弁体(15)と、
流体の圧力で前記弁体(15)を作動させるダイヤフラム(37)と、
を備えており、
前記カバー(36)は、一部又は全部が透明体又は半透明体で形成されており、透明体又は半透明体で形成された部分を通してカバー(36)内の前記ダイヤフラム(37)の動きを外部から視認できるようにしてある、
流体作動式調節弁装置。
【請求項4】
透明体又は半透明体の部分は、ポリカーボネートで形成されている、
請求項1、2又は3記載の流体作動式調節弁装置。
【請求項5】
自動機器のアクチュエーターに作動流体を送る配管に弁箱体(2)が設けられており、
弁体(15)は、前記弁箱体(2)の弁室(6)に収まるように構成されている、
請求項1、2、3又は4記載の流体作動式調節弁装置。
【請求項6】
調節弁装置が弁室(80)を有する弁箱体(8)を備えており、弁体(15)は、前記弁室(80)に収まっている、
請求項1、2、3又は4記載の流体作動式調節弁装置。
【請求項7】
自動機器のアクチュエーターに送られる作動流体の流通を制御する自動機器の制御機構であって、
複数の自動機器のアクチュエーターに作動流体を送る配管構造を備えており、該配管構造には、請求項1、2、3、4、5又は6記載の流体作動式調節弁装置(1,3)が取り付けられている、
自動機器の制御機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−17793(P2012−17793A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155066(P2010−155066)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(394005889)フジタ技研工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】