説明

流体処理方法及び流体処理装置

【課題】空気及び水等の汚染された媒体の純化及び消毒を効果的に行う。
【解決手段】流体を処理する方法に関し、オゾンを媒体の中で発生させ、上記オゾンを、発生させると同時に紫外線に暴露して分解して、遊離基を得ることを特徴とする。また、上記方法による装置にも関し、この装置は、少なくとも1つの入口(2)及び少なくとも1つの出口(3)が設けられているエンクロージャ(1)を備えている。本装置は、酸化部材(4)をエンクロージャ(1)の中に設けて、オゾンを発生すると同時に、該オゾンを遊離基に分解するという特徴を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体を処理するための方法及び装置に関する。この意味において、流体は、気体及び液体の媒体、並びに、サスペンション及びエマルジョンとして理解すべきである。
【背景技術】
【0002】
近年、人間が存在する総ての環境に対して、要求が益々高まって来ている。その理由は多数存在する。一つの理由は、現代の人間が、種々の地理的な領域の間を移動するということは、病原菌が、極めて毒性の高い菌体を発育させるための繁殖可能な増殖地を見つけるということを意味する。これにより、未だ治療法が存在しない深刻な病気を生じる可能性がある。
【0003】
病院においては、病原菌が、ある患者から別の人間(患者及び看護要員の両方)に伝染する可能性があり、そのような病原菌は、更に、直接的に、又は、器具、衣服、食品又は同様なものを介して間接的に伝染する。病院の織物又は繊維は、多かれ少なかれ病原菌で汚染されている。一つの問題は、洗濯方法が、病院の織物又は繊維から病原菌を除去することに関しては、完全に満足すべきものではないことである。また、例えば、通常の殺菌方法を許容しない内視鏡器具及びカテーテルの如き敏感な器具に関して、また、外科手術の間に汚染されてしまう可能性がある(例えば、外科医が、特殊な器具、インプラント等を落とす可能性がある)ので器具を直接的に且つ迅速に殺菌する必要がある処置において、殺菌を行うためのより良い簡単な方法が必要とされている。
【0004】
病原菌及び他のタイプの汚染物が拡散し、空気が悪いという問題を有することが多い他の環境は、学校、託児所、食品店、台所、船室、事業所等であり、特に換気が悪い建物である。問題となる別の場所は、ラドン、カビ、ヘキサミン等がある「病的な」建物、並びに、塗装、壁紙張り、床張り等が行われている建物である。
【0005】
水が他の領域であり、そのような領域においては、飲み水及び排水を処理する際の純化及び環境汚染を極力少なくすることの両方に関して要求が益々高まっている。
【0006】
そのような媒体、及び、別の方法で汚染された媒体が、大きな不安、並びに、効果的な汚染除去のプロセスの必要性を生じている。
【0007】
上述の問題を処理するための多くの提案が、過去数年の間に提出されており、例えば、良好な換気、あるいは、空気及び水を純化するための種々のタイプのフィルタ及び薬品が提案されている。塩素は、それ自体が環境に負担すなわち負荷を与えるので、幾つかの国々においては、飲料水設備及び浴場施設においてオゾン(O)で水を純化する方法、並びに、水に溶解したオゾンを用いて物品の洗浄、消毒及び殺菌を行う方法が開発されている。オゾンの反応処理能力(電気化学的な酸化電位が2.07ボルト)は、オゾンが強力な酸化剤であるという事実に帰因される。その高い化学的な反応性は、他の分子から電子を捜す不安定な電子配列と組み合わされる(従って、遊離基が形成されることを意味する)。このプロセスにおいては、オゾン分子が分解する。オゾンは、その酸化効果によって、ある種の無機物質及び有機物質に急激に作用する。ある種の炭化水素、炭水化物、農薬等に対するその酸化効果は、オゾンがある種のプロセスにおける薬品の良好な選択肢であるということを意味する。オゾン、酸素、ヒドロペルオキシド及び紫外線を組み合わせることは、多くの遊離基が生成することにより、反応がかなり迅速に且つ効率的に進行することを意味する。
【0008】
オゾン及び遊離基の助けによる微生物の不活性化は、酸化反応であると考えられる。微生物の膜は、最初に酸化作用を受けるものである。膜/細胞壁の中では、オゾン及び遊離基が、細胞/ウィルス/胞子の内側の核物質を破壊する。大部分の微生物の場合の不活性化反応は、オゾンの投与量、及び、形成される遊離基の量に応じて、数分以内に生ずる。
【0009】
多くの場合には、オゾンは、オゾン水の形態で、以下の作業を行うために使用される。
すなわち、
− 水純化工程において、薬品(化学物質)、染料、重金属、臭気を除去又は減少させ、また、病原菌を破壊する作業、
− 藻類、菌類、沈殿物を除去し、水冷装置及び熱交換器における薬品の使用量を減少させる作業、
− プール、水族館及び養魚場において水を処理する作業、及び、
− 飲料産業及び食品産業で使用される瓶及びジャー(広口瓶)を殺菌する作業。
【0010】
オゾンは、冷たい水におけるその溶解度にも拘わらず、空気中の場合と同様に迅速に分解され(すなわち、消費され)て、非常に多くの種々の遊離基を発生すると共に、アルデヒド、臭素酸塩及びカルボン酸の如き不安定な副生物を多少なりとも発生する。分解の度合いは、pH、露呈(暴露)される物質、及び、温度に依存する。ある種の物質は、オゾンによって容易に分解される。しかしながら、多くの物質及び分子は、オゾンによって形成される遊離基、及び、オゾン処理された媒体によって、より効率的に酸化される。ある種の遊離基は、オゾンよりも高い電気化学的な酸化電位を有している(ヒドロキシルラジカルに関しては、2.8ボルトであり、酸素(一重項)に関しては、2.42ボルトである)。形成することのできる代表的な酸化剤の例は、ヒドロキシルラジカル(HO・)、ペルオキシルラジカル(RO・)、(一重項)酸素()、ジラジカル(R−O・)、及び、アルコキシラジカル(RO・)である。
【0011】
有機分子の酸化は、HO・、RO・、RO・及びの各ラジカルの反応に関する2つの同様な経路に基づいて最も良く理解することができる。気体としての空気と混合される多くの有機薬品は、HO・ラジカルによって酸化される。脂肪族分子は、種々の反応を受けることのできるRO・ラジカルを与え、そのような種々の反応の中の最も重要なものは、NOによるアルコキシルラジカル(RO・)への転化である。RO・ラジカルの反応は、迅速であり、H原子の劈開又は分子内移動により、新しい炭素ラジカルを生ずる。H原子の分子内移動、新しいRO・ラジカルの形成、対応するRO・ラジカルへの転化、及び、最後に、更に別の分子内反応の反応サイクルは、より高度に酸化された炭素鎖を生じさせることができる。
【0012】
芳香族分子は、HO・ラジカルによって迅速に酸化して、炭素ラジカル及びフェノールを形成する。一重項の酸素()は、アミノ酸、メルカプタン、硫化物及び多環状芳香族炭化水素を含む、非常に多くの有機化学物質を酸化させるために重要である。これらも、迅速な酸化プロセスである。
【0013】
結局、オゾンは、2つの必須的な経路を通って、汚染物質と反応する。オゾンは、分子オゾン(O)として、選択的な反応によって直接的に反応する。一般的に、活性化された化合物(フェノール、レゾルシノール、サリチル酸塩)、オレフィン、及び、単純アミンは、ある種の微生物と同様に、分子オゾンと反応すると予想される。
【0014】
また、オゾンは、間接的なルートを通って汚染物質と反応することができ、上記間接的なルートにおいては、オゾンの分解によって、また、幾つかの反応によって生ずる遊離基が、酸化剤として作用する。ラジカル型の上記間接的な反応は、迅速であり、選択性がな
い。
【0015】
脂肪族系酸、アルデヒド、ケトン及び芳香族炭化水素の如き有機汚染物質は、非選択的なラジカルルートを通って、大幅に分子オゾンとゆっくりと反応する。従って、紫外線の如きオゾンを分解する条件は、形成される遊離基が強い酸化剤である間接的な且つ非選択的な反応を優先させる。空気の場合には、ラジカルルートは、大部分の酸化プロセスにおいて支配的な役割を果たす。オゾンと汚染物質との間の最初の酸化作用が直接的なルートを通って行われる状況においてさえも、ラジカルが発生し、これにより、その後の酸化は、ラジカル反応プロセスによって効果的且つ迅速に起こる。
【0016】
上記ラジカルは、非選択的であるので、総ての還元された物質を酸化し、分子オゾンの場合のように特定のクラスの汚染物質に限定されない。
【0017】
上述のように、紫外線は、オゾンの迅速な分解を優先させて、その後ラジカルを形成する。汚染物質が紫外線を吸収する場合(例えば、テトラクロルエチレン(四塩化エチレン))においては、汚染物質の直接的な光分解が酸化の度合いすなわち程度に貢献する。
【0018】
多くの装置においては、オゾンは、コロナ放電によって発生する。6−7eVの電子が、酸素分子(O)と相互作用する場合には、解離が生ずる。形成された酸素原子(O+O)は、即座に酸素分子と結合して、オゾン(O)を形成する。
【0019】
また、約183nmの波長を有する紫外線は、空気中でオゾンを発生させることが知られている。しかしながら、多くの場合に必要とされることのある大量のオゾンを発生させるように、ランプの効果を適正にすることは困難である。
【0020】
空気をオゾンで純化する多くの試みが行われており、そのような試みは、例えば、特許文献1(米国特許第5,186,907号公報)に記載されている。上記米国特許は、有機溶媒として有毒な成分を含む有機排気ガスの処理を行うための装置を記載している。上記ガスは、ファンによってエンクロージャ(封入容器)の中に吸入され、該エンクロージャの中で、例えば、紫外線ランプの如き第1の酸化部材に暴露され、該第1の酸化部材は、空気中の酸素をオゾンにする。オゾンの酸化効果は、大部分の有機溶液が過酸化物を形成することを意味する。次に、上記過酸化物は、この場合には365nmの波長の放射線を発生する紫外線ランプである第2の酸化部材によって照射され、これにより、上記過酸化物は、酸化によってほぼ完全に分解されて、二酸化炭素、水、及び、無機物のガス成分になる。同時に、上記第1の酸化部材及びオゾンによって酸化されなかった上記有機ガスの部分は、上記第2の酸化部材によって酸化されて分解する。
【0021】
上記米国特許の装置は、イソプロピルアルコールの如き有機溶媒を目標にしており、この装置においては、第1の酸化部材が溶液を過酸化物に転化し、該過酸化物は、次に、365nmの波長を有する紫外線ランプからの放射線によって、酸化される。上記装置の応用範囲は狭く、特に、ある種の限定された有機溶媒の処理に応用される。
【0022】
特許文献2(米国特許第5,260,036号公報)においては、気体状のハロゲン有機化合物を光化学的に酸化する方法が開示されている。上記米国特許によれば、上記化合物を紫外線に暴露して気体状の酸化生成物にし、該気体状の酸化生成物を酸化室の中の表面と反応させる。該表面の材料は、上記気体状の酸化生成物と化学的に反応して、上記酸化室の側壁に含まれる固体の反応生成物を生じさせるような材料である。上記化学的な吸収性を有する内側表面の材料は、1−3ヶ月の寿命を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第5,186,907号公報
【特許文献2】米国特許第5,260,036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
上述の事柄から、オゾンは、ある種の分野である種の物質に関して、純化、消毒及び殺菌を行うために効果的に用いることができることは明らかである。しかしながら、オゾンから遊離基を得る目的のためにオゾンを使用することは、効率、応用範囲、及び、安全にすることのできる物質の範囲をかなり増大させなければならない。上記方法は、現在まで効果的に使用されていない。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の目的は、空気、水及び固体物質の如き汚染された媒体の純化及び消毒に関する上述の一連の問題に取り組んで、物品の消毒及び殺菌を従来の方法及び装置よりもより効率的に行うことである。この目的は、請求の範囲に記載された方法及び装置によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の装置の断面図である。
【図2】図2は、本発明の装置を展開したものの断面図である。
【図3】図3は、本発明の装置を更に展開したものの断面図である。
【図4】図4は、閉鎖された空間の中で固体物質を殺菌する殺菌性の気体を発生するための本装置の変形例及びその使用例を示す。
【図5】図5は、液体に適用される本発明の装置の別の変形例を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の方法は以下の通りである。処理すべき媒体は、何等かの形態のエンクロージャ(封入容器)の中に導入されるのが好ましい。上記エンクロージャの中で、上記媒体は、180−400nmの範囲のスペクトル分布を有する紫外線に露呈すなわち暴露される。特に183.7nmの波長が、媒体の中の酸素をオゾン分子(O)に転化する。形成されたオゾン分子は、同時に、上述の波長範囲(特に、254nmの波長)の放射線によって分解される。また、同時に、形成されたOが分解されて、原子状の酸素を形成する。遊離基(特に、HO・遊離基)が発生する間の効率を高めるために、酸化物を触媒として加える。より多量のオゾン、従って、より多量の遊離基を得るために、媒体が照射される前に、更にオゾンを発生させる。
【0028】
上述の方法に基づく装置が、図1に示されている。この装置は、少なくとも1つの入口2と1つの出口3とを有するエンクロージャ(封入容器)として構成されている。酸化部材4が、上記エンクロージャの中に設けられており、好ましい実施例においては、180−400nmの範囲のスペクトル分布を有する多数の紫外線ランプ(UVランプ)が設けられている。上記ランプ4は、エンクロージャの中のランプ4の周囲の領域5全体がほぼ同じ強度で照射されるように配列されるのが好ましい。エンクロージャ1の内壁は、少なくともランプの周囲の領域5において、ランプ4からの光線を良好に反射させるように、配列されている。空気を循環させるための部材(例えば、ファン)7が、処理すべき空気を装置1に導入するために、出口3に設けられている。
【0029】
多数の触媒8をエンクロージャの領域5に設けることも好ましい。上記触媒は、例えば、エンクロージャの内側の反射壁に適宜な態様で取り付けることができる。好ましい実施例においては、触媒は、貴金属、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、及び、これらの混合物の如き、金属及び/又は金属酸化物を含んでいる。
【0030】
本装置は、以下の通り機能する。装置を使用する時には、ランプ4への電流のスイッチを入れ、ファン7を回転させる。ファン7は、空気を入口2に吸入し、該空気は、エンクロージャ1、及び、ランプが空気に紫外線を照射する領域5に流れる。ランプの領域5の壁部は反射性を有しているので、空気は、より強く紫外線に暴露され、従って、効率が高くなる。紫外線ランプのスペクトル分布は、オゾン分子(O)が上記空気の中の酸素によって、特に、183.7nmの放射線によって発生されることを意味する。同時に、放射線は、245−400nmの範囲のランプによって発生され、上記波長範囲において、オゾン分子は、分解して酸素及び遊離基になり、汚染物質を遊離基にする。特に重要なことは、254nmの波長、及び、364.9nmの波長であり、これらの波長において、遊離基の発生効率が高くなる。領域5に設けられた触媒は、単位時間当たりの遊離基の量を増大させることによって、プロセスをより効果的にする。遊離基は、酸化を受けやすい
ので、上記空気の中の汚染物質と連鎖反応を起こす。上記遊離基、及び、ある程度のオゾンは、上記空気を汚染している分子の原子間結合を効果的に破壊する。例えば、病原菌の如き微生物が迅速に死滅し、有機物質及び無機物質から、多かれ少なかれ反応性を有している新しい遊離基が形成される。最終的な生成物は、主として、水蒸気、空気、及び、二酸化炭素である。本装置のこの実施例は、基本的には、例えば、オフィスの建物、学校、体育館、喫煙室、船室、トイレの如き場所における空気の浄化を行うことを意図されている。
【0031】
図2は、図1の装置の展開を示している。図2においては、同じ要素は図1と同じ参照符号を有している。図2の装置においては、エンクロージャ1のセクション1Iが、更に、エンクロージャの入口2に接続されている。この新しいセクション11は、適宜なタイプのオゾン発生器9を有している。好ましい実施例においては、オゾン発生器9は、小型の暗放電ユニットである。電極の間のギャップには、シリコン又は同様な粉末が充填されるか、あるいは、誘電材料(セラミック)と混合されており、これにより、パワーが増大し、発生器の寸法を小型化することができる。他のオゾン発生器を考えることもでき、例えば、電極板を設け、これら電極板の間に、放電が行われるエアギャップを形成することができ、また、ある種の波長の紫外線を放出する紫外線ランプを設けることもできる。オゾンの量を増大させることにより、パワーはかなり増大する。オゾン発生器によって形成されるオゾンは、一方では、上記空気の中の汚染物質と直接的に反応して分解され、他方では、上記紫外線ランプによって分解されて、多量の遊離基を形成する。この実施例は、基本的に、広い場所、及び/又は、工場の建物、煙で汚れた建物、畜舎等の如き汚染度の高い場所の空気を浄化することが意図されている。
【0032】
図3は、本発明の装置の第3の実施例を示している。この実施例においては、セクション1IIが、図1及び図2の装置の出口3の下流側に設けられている。上記セクション1IIは、フィルタ10を備えている。フィルタ10は、多孔質の酸化物セラミック、酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、並びに、活性炭及び炭酸塩から構成されている。フィルタには、多数の通路11が設けられており、これらの通路は、好ましい実施例においては、フィルタと空気との間の接触面を増大させるために、流れ方向Fに対して若干傾斜している。フィルタを備える本装置は、基本的には、最終的な生成物が特定することのできない場所、あるいは、塩素化溶媒、アルコール、ケトン、芳香族化合物、ダイオキシン、ヘキサミン(ヘキサメチレンテトラミン)、ホルムアルデヒド、アンモニア、殺虫剤、及び、除草剤が存在する場所である、有機ガスを含む建物で使用することを意図されている。上記フィルタは、上述の最終的な生成物を効果的に不活性化し、水蒸気、二酸化炭素、及び、空気だけを出口から出す。
【0033】
オゾン、及び、特に遊離基の寿命は短いので、オゾン及び遊離基を連続的に発生することが必要である。ファンの回転速度、従って流量は、装置の最適な機能を得るために、また、未処理のオゾンが周囲環境に逃げないように発生されるオゾンの量になるように設定される。本装置は、例えば、特定の時間間隔でこの装置を切り換えるタイマを備えることができる。本装置を通過する空気の流れは、電子要素を冷却すると共にフィルタ10を暖めてその効率を高める目的も有している。
【0034】
異なるセクションを有するモジュール型の装置であるために、この装置をその運転条件に調節することが簡単である。従って、紫外線ランプを有する1つのセクション1から、順次設けられる幾つかのセクション1、オゾン発生器9及びフィルタ10が連続的に接続されたものまで構成することができる。ファン7は、セクション12(図3)に設けることができ、従って、これもモジュール型のユニットを形成する。各セクションは、適宜な保持棚13(図3)に設けることができ、上記保持棚は、適宜なサポートに設けることができる。上記保持棚は、電気的な接続部、回路ブレーカ、及び、選択的に設けられるタイ
マを収容する。各セクションと保持棚13との間の電気的な接続部は、プラグイン型(差し込み型)にするのが好ましい。このようにすると、大幅な柔軟性及び保守の容易性が得られ、その理由は、故障したセクションだけを交換するか修理するだけで良く、装置全体を分解する必要がないからである。
【0035】
図4は、モジュール型の本装置の応用範囲の一例及び利点を示しており、この例は、例えば、通常の方法を用いては、最適な結果で殺菌することの出来なかった作動供給及びカテーテルの如き物品を殺菌するために使用される。図4は、キャビネット20又は他の良好に形成されたエンクロージャを示しており、該キャビネット又はエンクロージャには、閉じた時に気密にシールするドア、ハッチ又は同様な要素(図示せず)が設けられている。処理すべき物品は、キャビネット20の中の例えば有孔棚21に置かれる。処理すべき物品に特に適したホルダを使用することもできる。重要なことは、遊離基を有する空気を物品の周囲で自由に循環させることである。空気は、閉鎖可能な弁23が設けられた入口22に吸入される。入口22に最初に接続されているのは、セクション1Iであり、このセクションには、流入空気の中の酸素をオゾン分子に転化するオゾン発生器が設けられている。オゾン発生器を有するセクション1Iの流れ方向で見た場合の下流側には、紫外線ランプ及び触媒を有する第2のセクション1が設けられている。紫外線ランプからの放射線が、オゾンを形成して該オゾン及びそれ以前に形成されたオゾン分子を分解して遊離基を発生し、これらの多量の遊離基は、上記キャビネットに流入して、棚21の上に置かれた物品を殺菌する。キャビネットの上縁部には、ファンセクション12が設けられており、また、出口24に設けられたフィルタを有するセクション1IIも設けられている。上記出口には、閉鎖可能な弁25が設けられている。上記ファンセクション12は、入口22からキャビネットを通り出口24から出る空気流を発生する。キャビネットには、装置が運転している時に上記ドアを閉じ、例えばランプによってその状態を表示する部材を設けるのが好ましい。上記キャビネットには、装置のタイマ制御装置も設けられており、また、上記キャビネットは、スペースのサイズ、及び、処理すべき物品の寸法及び形状に適合されている。キャビネット20は、処理すべき物品に応じて、別の寸法にすることができる。キャビネットは、例えば、病院、製薬産業、屠畜場、電子産業等で使用される作業衣の形態の繊維すなわち織物を消毒及び殺菌するようにすることができる。
【0036】
上述の方法及び装置は、勿論、一方では、汚染された水を純化するために使用することができ、また、他方では、器具、電子デバイス、生物適合性の物質及び繊維等を洗浄、消毒及び殺菌するために遊離基が富化された水を使用するために用いることができる。図5は、水を処理する(水の汚染除去、又は、水を遊離基で富化する)ために本発明を用いる例を示している。この実施例においては、紫外線ランプを有する1又はそれ以上のセクション1が、水流30の中に設けられている。セクション1の上流側に適正に配置されているのは、接続部31であり、この接続部31に対して、オゾン発生器9を有するセクション1I及びファンセクション12が接続されている。接続部31と水流30との間には、何等かの形態の逆止弁が設けられている。装置に水を循環させる必要がある場合、すなわち、装置に外部の流れが存在しない場合には、ポンプ32を使用する。流れる水は、最初に、オゾン発生器9からのオゾンに暴露される。上記オゾンは、ファン7によって水の中に入れられる。従って、オゾンは、連続的に水に供給され、そのようなオゾン水は、直ちに、紫外線によって照射されて、オゾンが分解され、遊離基が得られる。水の汚染度が高い場合、あるいは、水の中に多量の遊離基が必要とされる場合には、超音波装置(33)を水流の中に設ける。高強度の超音波が、遊離基を発生して、汚染物質を分解する。また、上述の装置と同様な態様で、水を純化するためのこの装置は、モジュール型の装置によって、種々の態様で組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の方法は、多くの応用分野において、多くの有機物質及び無機物質、並びに、空気中、水中、及び、固形物上に存在する汚染物質及び微生物を、より効果的に浄化、消毒
及び殺菌することができる。利点すなわち効果の例としては、エネルギ消費量が少なく、対象物、空気又は水を加熱する必要がなく、薬品/洗浄剤を必要とせず、装置を小型化でき、有毒な副生物を生じることがなく、使用寿命が長く、保守の頻度が低く、用途が広いことが挙げられる。
【0038】
本発明の方法及び装置は、上述の事柄に限定されるものではなく、以下の請求の範囲の範囲内で変更することができることは、理解されよう。
【符号の説明】
【0039】
1 エンクロージャ、2 入口、3 出口、4 ランプ、5 エンクロージャの領域、7 ファン、8 触媒、9 オゾン発生器、10 フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の処理方法であって、媒体の中でオゾンを発生させ、該オゾンが発生されると同時に該オゾンを紫外線に暴露し、これにより、前記オゾンを分解すると共に、汚染物質を破壊する遊離基を得ることを特徴とする流体処理方法。
【請求項2】
請求項1の流体処理方法において、前記流体は、水または空気を含むことを特徴とする流体処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2の流体処理方法において、前記オゾン及び汚染物を分解するために放出される前記紫外線は、245nm−400nmの波長を有していることを特徴とする流体処理方法。
【請求項4】
請求項3の流体処理方法において、前記オゾンを分解するために放出される前記紫外線は、254nmの波長を有していることを特徴とする流体処理方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかの流体処理方法において、前記遊離基の量を増大させるために、前記媒体を照射する間に酸化物を加えることを特徴とする流体処理方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかの流体処理方法を用いて、固体の対象物の洗浄、消毒及び殺菌を行うことを特徴とする方法。
【請求項7】
少なくとも1つの入口(2)、及び、少なくとも1つの出口(3)が設けられているエンクロージャ(1)を備える流体処理装置であって、酸化部材(4)が前記エンクロージャ(1)の中に設けられており、前記酸化部材は、オゾンを発生させると同時に、該オゾンを遊離基に分解することを特徴とする流体処理装置。
【請求項8】
請求項7の流体処理装置において、前記媒体は、空気及び水を含むことを特徴とする流体処理装置。
【請求項9】
請求項7又は8の流体処理装置において、前記酸化部材(4)は、少なくとも1つの紫外線ランプであり、該紫外線ランプは、180−400nmの範囲内のスペクトル分布を有する放射線を放出することを特徴とする流体処理装置。
【請求項10】
請求項9の流体処理装置において、前記紫外線ランプは、183.7nm及び254nmの波長の放射線を放出することを特徴とする流体処理装置。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれかの流体処理装置において、当該流体処理装置には、流動部材(7)が設けられており、該流動部材は、処理すべき媒体を前記エンクロージャ(1)を通して移動させることを特徴とする流体処理装置。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれかの流体処理装置において、更に、前記酸化部材(4)の上流側に設けられるオゾン発生器(9)を備えることを特徴とする流体処理装置。
【請求項13】
請求項7乃至12のいずれかの流体処理装置において、何等かの形態の少なくとも1つの触媒(8)を備えることを特徴とする流体処理装置。
【請求項14】
請求項13の流体処理装置において、前記触媒は、貴金属、二酸化チタン、酸化アルミニウム、又は、酸化ケイ素、及び、これらの混合物であることを特徴とする流体処理装置。
【請求項15】
請求項13又は14の流体処理装置において、前記触媒(8)は、前記酸化部材(4)の付近の領域(5)に設けられていることを特徴とする流体処理装置。
【請求項16】
請求項7乃至15のいずれかの流体処理装置において、フィルタ(10)が、前記酸化部材(4)の下流側に設けられていることを特徴とする流体処理装置。
【請求項17】
請求項16の流体処理装置において、前記フィルタ(10)は、多数の通路(11)を有する多孔質の酸化セラミックから構成されていることを特徴とする流体処理装置。
【請求項18】
請求項17の流体処理装置において、前記フィルタ(10)は、活性炭及び炭酸塩も含むことを特徴とする流体処理装置。
【請求項19】
請求項7乃至18のいずれかの流体処理装置において、当該流体処理装置の運転を制御するためのタイマを備えることを特徴とする流体処理装置。
【請求項20】
請求項7乃至19のいずれかの流体処理装置において、当該流体処理装置は、異なる要素を各々有する複数のセクションから構成されていて、モジュール型のシステムを提供することを特徴とする流体処理装置。
【請求項21】
固体の対象物を殺菌するための統合型の装置であって、入口(22)及び出口(24)を有する閉鎖空間(20)を備えており、少なくとも1つのオゾン発生器(9)が、前記入口に設けられており、少なくとも1つの酸化部材(4)が、前記オゾン発生器(9)の下流側に設けられており、更に、前記出口(24)には流動部材(7)が設けられていることを特徴とする統合型の装置。
【請求項22】
請求項21の統合型の装置において、前記出口には、酸化フィルタ(10)が設けられていることを特徴とする統合型の装置。
【請求項23】
請求項22の統合型の装置において、前記フィルタ(10)は、多数の通路(11)を有する多孔性の酸化セラミックから構成されていることを特徴とする統合型の装置。
【請求項24】
請求項23の統合型の装置において、前記フィルタ(10)は、活性炭及び炭酸塩も含むことを特徴とする統合型の装置。
【請求項25】
請求項21又は22の統合型の装置において、前記入口(22)及び前記出口(24)には、閉鎖可能な弁(23、25)が設けられていることを特徴とする統合型の装置。
【請求項26】
統合型の液体処理装置であって、形成された液体流(30)の中に、オゾンを発生して該オゾンを液体に供給するための部材(9、12、31)が設けられており、該部材の下流側には、オゾンを発生すると同時に該オゾンを遊離基に分解するための少なくとも1つの酸化部材(4)が設けられていることを特徴とする統合型の液体処理装置。
【請求項27】
請求項24の統合型の液体処理装置において、前記液体流(30)の入口には、超音波装置(33)が設けられており、これにより、前記液体流は、超音波作用を受けることを特徴とする統合型の液体処理装置。
【請求項28】
請求項24の統合型の液体処理装置において、前記液体流(30)は、固体の対象物を洗浄、消毒又は殺菌するための洗浄装置に接続されていることを特徴とする統合型の液体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−139686(P2012−139686A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−67072(P2012−67072)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【分割の表示】特願2006−241975(P2006−241975)の分割
【原出願日】平成7年12月22日(1995.12.22)
【出願人】(505133892)ベンラッド・アクチボラゲット (3)
【氏名又は名称原語表記】BENRAD AB
【Fターム(参考)】