説明

流体制御弁

【課題】大型化することなく、流量の多い流体に適用できる流体制御弁を提供する。
【解決手段】流体を流入させる流入路31と、流体を流出させる流出路32と、弁座21と、弁座21と当接・離間することにより流入路31と流出路32の間を遮断・連通させる弁体13と、通電により発生する磁力を弁体13に作用させるソレノイド20と、を備えている。流入路31がソレノイド20のコア21に貫通形成され、流入路31においてコア21と流体とが接触するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御弁、特に、車両の冷却水の流れを制御する流体制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両にはエンジン等の内燃機関を冷却するための冷却水をエンジン等とラジエータの間を循環させる冷却装置が搭載されている。また、このような冷却装置には、冷却水の温度を制御するために、冷却水の流れを制御する流体制御弁が備えられているものもある。
【0003】
例えば、特許文献1にはこのような流体制御弁としての電子制御サーモスタットが開示されている。この特許文献1の電子制御サーモスタットは、弁体を開閉作動させるピストンを有するサーモエレメントが備えられており、ラジエータ出口側の冷却水の温度をサーモエレメントのエレメント感温部に伝達し、弁体の開閉を実現している。これにより、冷却水の温度を検知するセンサ等を備えることなく、弁体の開閉を行うことができる。
【0004】
しかし、特許文献1の電子制御サーモスタットでは、エンジンによって加熱された冷却水の熱が感温室から放熱され、エレメント感温部に十分な熱が伝達されないおそれがある。その場合には、弁体の開弁が遅れ、好ましくない。
【0005】
このような問題を解決するために、特許文献2の電磁弁を流体制御弁に使用することも考えられる。特許文献2の電磁弁では、コイル内部に可動コアが配設され、コイルに通電することにより可動コアを移動させることにより、弁の開閉を制御している。したがって、流体の温度によりコイルへの通電を制御するように構成しておけば、流体の温度変化への追随性がよい流体制御弁を構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−328753号公報
【特許文献2】特開2002−340219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、特許文献2の電磁バルブを用いれば追随性のよい流体制御弁を構成することができる。しかし、磁力を発生させるためにコイルに電流を印加するとコイルからの発生する熱が発生し、その排熱の問題が生じる。コイルからの熱を排熱するために、別途冷却装置を備えると、流体制御弁の大型化、重量の増大を招くこととなり、好ましくない。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、大型化することなく、流量の多い流体に適用できる流体制御弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の流体制御弁は、エンジンと熱交換器との間に流体を循環させる循環流路に備えられ、前記流体を流入させる流入路と、前記流体を流出させる流出路と、弁座と、前記弁座と当接・離間することにより前記流入路と前記流出路の間を遮断・連通させる弁体と、通電により発生する磁力を前記弁体に作用させるソレノイドと、を備え、前記流入路が前記ソレノイドのコアに貫通形成され、当該流入路において当該コアと前記流体とが接触するように構成している。
【0010】
一般的に、ソレノイドのコイルの温度が高くなると抵抗が高くなる。したがって、高温状態のソレノイドにより低温状態のソレノイドと同じ強さの磁力を発生させるためには印加する電流を強くするか、コイルの巻数を増やす必要がある。しかし、これらは消費電力の増大や流体制御弁の大型化を招くため、好ましくない。そのため、上記構成では、流体を流体制御弁の内部に流入させる流入路をソレノイドのコアに貫通形成し、その流入路においてコアを流体に接触させている。これにより、コイルから発生した熱が流体に逃げ易くなり、コイルの温度上昇を抑制することができる。したがって、消費電力の増大や流体制御弁の大型化を招くことなく、弁体の制御に必要な磁力を発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の流体制御弁を適用したエンジンの冷却システムの模式図である。
【図2】本発明の流体制御弁の閉鎖状態の断面図である。
【図3】本発明の流体制御弁の開放状態の断面図である。
【図4】本発明の流体制御弁のプランジャの平面図である。
【図5】本発明の流体制御弁の拡大断面図である。
【図6】本発明の流体制御弁の別構成の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を用いて本発明の流体制御弁を説明する。図1は、本発明の流体制御弁を適用したエンジンの冷却システムの模式図である。エンジン2には冷却水(流体)の流出路が2系統あり、一方はラジエータ3、他方はヒータコア6(本発明の熱交換器の例)に接続されている。
【0013】
ラジエータ3の流出路はサーモスタットバルブ5に接続し、サーモスタットバルブ5の流出路はウォータポンプ4に接続している。また、ウォータポンプ4の流出路はエンジン2の流入路に接続している。これらの流路により、エンジン2で暖められた冷却水はラジエータ3に入力し、ラジエータ3で冷却され、サーモスタットバルブ5およびウォータポンプ4を介して、エンジン2に還流する。
【0014】
一方、エンジン2からヒータコア6への流路の間には流体制御弁1が備えられている。また、ヒータコア6の流出路はサーモスタットバルブ5のもう一つの流入路に接続している。これらの流路により、エンジン2により温められた冷却水は流体制御弁1を介してヒータコア6に入力し、ヒータコア6で車室内の空気を暖めることにより冷却された後、サーモスタットバルブ5およびウォータポンプ4を介してエンジン2に還流する。
【0015】
本発明の流体制御弁1は、上述のように、エンジン2からヒータコア6への流路中に備えられており、冷却水のヒータコア6側への流出を制御するために用いられている。本発明の流体制御弁1は、冷却水の液圧が生じていない状態では閉弁しており、冷却水の液圧により開弁し、流体制御弁1に通電することにより閉弁状態を維持するものである。具体的には以下のように動作する。
【0016】
運転者がイグニッションキー等を操作し、エンジンが始動する前、すなわち、ウォータポンプ4が作動する前に流体制御弁1に通電を行う。上述したように、流体制御弁1は、冷却水の液圧が生じていない状態では閉弁状態であるが、閉弁状態で流体制御弁1に通電することにより、その後液圧が生じても閉弁状態を維持することができる。これにより、冷却水がヒータコア6に流れなくなり、より早く冷却水を温めることができる。また、冷却水の温度が低い場合にはサーモスタットバルブ5も閉弁しているため、冷却水はラジエータ3にも流れず、より早く冷却水の温度を上昇させることができる。このように冷却水の温度を早く上昇させることにより、エンジンオイル等の温度上昇も早くなり、燃費向上に寄与する。
【0017】
その後、冷却水が所定の温度に達する(暖機運転の終了)と流体制御弁1への電力が遮断される。これにより、冷却水の液圧により流体制御弁1は開弁状態となり、冷却水はヒータコア6側に流出する。
【0018】
図2は、本発明の流体制御弁1の断面図である。この流体制御弁11のハウジングは、第2ハウジング12に対して第1ハウジング11を固定することにより構成されている。第2ハウジング12の内部には、ソレノイド20が備えられている。
【0019】
ソレノイド20は、コア21、ボビン22、コイル23、ヨーク24を備えている。コア21は鉄や電磁鋼等の強磁性体からなり、図2に示すように中空な円筒形状、すなわち、筒状に形成されている。このコア21の中空部分は、流体制御弁1の内部に冷却水を導入する流入路31を構成し、エンジン2からの流路が接続されている。また、このコア21は後述するように弁座として機能する。
【0020】
さらに、コア21がその内側に挿通するようにコイル23を巻いたボビン22が備えられており、ボビン22よりも径方向外側にはヨーク24が備えられている。ヨーク24の材料としては鉄や電磁鋼等が用いられる。
【0021】
このコイル23に対して電源(図示せず)からの電力を供給することにより、ソレノイド20は磁気(磁束)を発生する。発生した磁気は、コア21からプランジャ13を介してヨーク24へと流れる。したがって、弁体としてのプランジャ13(後述)が弁座としてのコア21に引き付けられ、冷却水の液圧が生じても流体制御弁1は閉弁状態(流入路31と流出路32との間が遮断状態)を維持することができる。なお、本発明の流体制御弁1は、冷却水の液圧が生じていない状態(初期状態)では閉弁状態であり、ソレノイド20は液圧が生じた後でも閉弁状態を維持するためのものであるため、ソレノイド20の磁力により開弁状態から閉弁状態に移行させるような流体制御弁に比べて、コイル23等のソレノイド20を構成する部材を小さくすることができる。
【0022】
一般的に、コイル23の温度が上昇すると抵抗が高くなる。そのため、高抵抗のコイル23と低抵抗のコイル23との磁力を同じにするためには、高抵抗のコイル23に流す電流を強くするか、高抵抗のコイル23の巻数を増やす必要があり、消費電力の増大やソレノイド20の大型化を招き、好ましくない。これらの問題を解決する一つの手段として、コイル23を冷却することが考えられる。そのため、本実施形態では、上述したようにコア21の内部に流入路21を形成している。さらに、樹脂等により被覆されているコア21の少なくとも内壁面(流入路31の壁面)を被覆せず、コア21の材質そのものを冷却水に接触させている。これにより、コイル23に通電した際に発生する熱が、コア21を介して流入路31を流れる冷却水に伝達され易くなる。したがって、コイル23の温度が上昇することを防ぐことができる。
【0023】
第1ハウジング11は、中空の第1筒状部11aと中空で第1筒状部11aよりも大きな半径を持つ第2筒状部11bとが、それぞれの軸芯が一致するように一体形成されることにより構成されている。第1ハウジング11と第2ハウジング12とを固定する場合には、第2筒状部11bを第2ハウジング12に固定する。なお、第1筒状部11aの中空部は冷却水を流体制御弁1の外部に流出させる流出路32を構成しており、流出路32はサーモスタットバルブ5の流入路に接続されている。
【0024】
また、第2筒状部11bの内部(中空部)には、鉄等の磁性体からなる弁体としてのプランジャ13、プランジャ13をコア21側に付勢する付勢バネ14が備えられている。プランジャ13は弁体として機能するため、プランジャ13のコア21側の面(以下、底面と称する)はコア21との密着性を高めるために研磨されている。冷却水の液圧が小さいときには弁体としてのプランジャ13は弁座としてのコア21のプランジャ13側の端面に当接し、流体制御弁1は閉弁状態となる(図2参照)。なお、流体制御弁1をプランジャ13がコア21の上側となる姿勢で用いる場合には、プランジャ13の自重によりプランジャ13とコア21とが当接するため、付勢バネ14を備えなくとも構わない。
【0025】
一方、冷却水の液圧が付勢バネ14の付勢力を上回ると、プランジャ13は液圧によりコア21から離間する方向に移動し、プランジャ13とコア21との当接状態が解除される。このとき、プランジャ13の第1ハウジング11側の面は、第2筒状部11bのプランジャ13に対向する内壁面に設けられたプランジャ13側に突出する移動規制部11cに当接する。これにより、プランジャ13の上面は第2筒状部11bの内壁面と当接せず、一定の間隔を有する位置となる。
【0026】
本実施形態におけるプランジャ13は図4に示すように、コア21の半径よりも径方向外側に4つの流路13bを有している。そのため、冷却水の液圧によりプランジャ13がコア21から離間する方向に移動すると、上述したようにプランジャ13は第2筒状部11bの内壁面から一定距離の位置となり、流入路31と流出路32とは流路13bを介して連通状態(開弁状態)となる。すなわち、プランジャ13がコア21から離間する方向に移動すると、流体制御弁1は開弁状態となる。
【0027】
このように、弁体としてのプランジャ13に流路13bを形成することにより、プランジャ13の径方向外側に流路を設ける必要がなくなるため、流体制御弁1の小型化を図ることができる。
【0028】
また、図4に示すように、4つの流路13bは平面視においてコア21よりも外径方向の同一円周上に同間隔(均等)で形成されている。そのため、冷却水の液圧がプランジャ13の底面(コア21側の面)に対して均一に負荷される。これにより、冷却水の液圧に脈動がある場合でもプランジャ13の姿勢が安定し、プランジャ13のガイド部13aの磨耗の低減やプランジャ13とコア21との接触による異音の発生を抑制することができる。
【0029】
なお、本実施形態では、流路13bは孔により形成したが、切り欠きによって形成しても構わない。また、流路13bの断面積の大きさは、冷却水の流量やプランジャ13に作用する磁力の強さ等に基づいて適宜変更可能である。さらに、流路13bの数や断面積形状も適宜変更可能である。なお、上述したようにソレノイド20により発生された磁気はコア21からプランジャ13を介してヨーク24に流れる。この点を考慮すると、磁気(磁束)がこれらの部材を通る断面積が同一またはコア21,プランジャ13,ヨーク24の順に大きくなることが好ましい。
【0030】
したがって、磁気は、コア21をコア21の軸芯方向に、プランジャ13をプランジャ13の外径方向に流れることを考慮すると、コア21の軸芯方向視における断面積(コア21とプランジャ13とが当接する面積)よりも、プランジャ13の軸芯を中心とし流路13b上を通る円のうち最小半径となる円の円周位置におけるプランジャ13の流路13b以外の部分の断面積が大きくなるように流路13bの大きさを決定することが好ましい。ここで、プランジャ13の円周位置におけるプランジャ13の流路13b以外の部分の断面積とは、その円の円周長から流路13b内を通っている部分を除外した長さにプランジャ13の厚みを乗じた値である。
【0031】
また、本実施形態では、ヨーク24はプランジャ13の軸芯方向においてプランジャ13と対向するように位置しているが、プランジャ13とヨーク24とは接触することがない。そのため、磁気の流れの点からは、プランジャ13のヨーク24と対向する部分の面積を大きくする方が好ましい。そのため、本実施形態では、プランジャ13のヨーク24と対向する部分の面積がプランジャ13のコア21と対向する部分の面積以上となるように、流路13bの開口形状を決定している。
【0032】
このようにして磁気の流れを効率化することにより、ソレノイド20が発生する磁力を小さくすることができ、ソレノイド20に印加する電流の小電力化、コイルの巻数の低減による小型化に寄与することができる。
【0033】
図5は、本実施形態における流体制御弁1の拡大断面図である。図に示すように、プランジャ13の外周部にはソレノイド20と逆方向(図中上方向)に立設するガイド部13aが形成されている。このガイド部13aは第1ハウジング11または第2ハウジング12の内壁と接している。したがって、プランジャ13が移動する際には、ガイド部13が第1ハウジング11または第2ハウジング12の内壁に対して接した状態となる。これにより、プランジャ13の移動の姿勢が安定し、バルブスティック等の動作不良を回避することができる。なお、ガイド部13aはプランジャ13の外周部に立設させることは必須ではなく、プランジャ13aの外周面をガイド部13aとして機能させても構わない。
【0034】
また、図5に示すように、本実施形態では、コア21のプランジャ13側の端面はヨーク24のプランジャ13側の端面よりもプランジャ13側に突出させている。このように構成すると、付勢バネ14の付勢力またはソレノイド20の磁力によりプランジャ13がコア21側に付勢または吸着される際に、プランジャ13はコア21のみに当接する。これにより、シール性を向上させるとともに、冷却水からの受圧面積を小さくすることができる。受圧面積が小さくなるということは、冷却水から受ける力が小さくなり、その力に対抗する磁力を小さくすることができる。すなわち、冷却水からの受圧面積を小さくすることは、コイル23の巻数を少なくすることができるため、流体制御弁1の小型化に寄与することができる。
【0035】
また、図6に示すように、コア21のプランジャ13側の端面とヨーク24のプランジャ13側の端面とを略同位置とし、プランジャ13の底面にコア21側に突出する凸部13cを形成しても構わない。このような構成によっても、図5の構成と同様に、シール性の向上と流体制御弁の小型化に寄与することができる。
【0036】
この凸部13cは、少なくとも流入路31の断面積よりも大きな断面積を有している。特に、コア21の軸芯を中心とし、凸部13cをコア21と同程度の半径を持つ円盤状に形成すると、冷却水からの受圧面積を小さくでき、小さな磁力で密着性を高めることができるため、ソレノイド20を小さく構成でき、好適である。
【0037】
さらに、コア21とヨーク24との位置関係を図5のように構成した上で、プランジャ13の底面に凸部13cを形成しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、車両の冷却水やオイル等の流体の流れを制御する流体制御弁に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1:流体制御弁
2:エンジン
6:ヒータコア(熱交換器)
13:プランジャ(弁体)
20:ソレノイド
21:コア(弁座)
31:流入路
32:流出路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと熱交換器との間に流体を循環させる循環流路に備えられ、
前記流体を流入させる流入路と、
前記流体を流出させる流出路と、
弁座と、
前記弁座と当接・離間することにより前記流入路と前記流出路の間を遮断・連通させる弁体と、
通電により発生する磁力を前記弁体に作用させるソレノイドと、を備え、
前記流入路が前記ソレノイドのコアに貫通形成され、当該流入路において当該コアと前記流体とが接触するように構成した流体制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−97835(P2012−97835A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246377(P2010−246377)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】