説明

流体力計測装置

【課題】流体力の計測精度を向上させることができる流体力計測装置を提供する。
【解決手段】流体計測部5を揺動させることにより流体から受ける力を計測可能な流体力計測装置1において、加振器8と、加振器8に接続され、加振器8により軸方向に振動可能な加振軸7と、一端を加振軸7に接続し、加振軸7の振動によって揺動可能な支持棒6と、支持棒6の他端に接続された流体計測部5と、支持棒6の支点P2となる支持部15と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体から受ける力を計測する流体力計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような流体力計測装置として、例えば、流路壁に囲まれた構造物を加振させることにより、構造物の周囲を流れる流体から受ける力を測定する流動振動実験装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この流動振動実験装置は、流路壁に囲まれた構造物と、剛支持棒を介して構造物に取り付けられた加振器と、剛支持棒に取り付けた荷重計と、流路壁と構造物との間の変位を計測する変位計と、荷重計と変位計と接続された制御装置とを備えている。そして、流動振動実験装置は、加振器により剛支持棒を介して構造物を加振させると共に、加振させることによって得られた荷重計および変位計の検出結果に基づいて、制御装置が、構造物の周囲を流れる流体から受ける力、すなわち流体力を導出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−62297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の流動振動実験装置によれば、剛支持棒の一端には構造物が取り付けられ、剛支持棒の他端には加振器が接続されている。このため、加振器により剛支持棒を振動させると、構造物および剛支持棒が一体となって振動することから、構造物の振動は、加振器の振動と同位相となる。これにより、加振器の最大加振変位が、構造物の最大加振変位となる。このとき、加振器の最大加振変位が小さい場合、構造物の加振変位は小さなものとなるため、変位計は、構造物の加振変位を計測することが困難となる場合がある。この場合、従来の流動振動実験装置では、流体力の計測精度を向上させることが困難となってしまう。
【0005】
また、構造物は剛支持棒を介して加振器に直結されていることから、構造物、剛支持棒および加振器を一体の構造物としてみた場合、その剛性が弱いために、固有振動数が低くなってしまうことがある。この場合、加振器によって構造物を振動させると、固有振動数が低いために共振が起こり易くなってしまい、従来の流動振動実験装置では、共振の影響によって、流体力の計測を好適に行うことが困難となる場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、流体力の計測精度を向上させることができる流体力計測装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の流体力計測装置は、流体計測部を揺動させることにより流体から受ける力を計測可能な流体力計測装置において、加振器と、加振器に接続され、加振器により軸方向に振動可能な加振軸と、一端を加振軸に接続し、加振軸の振動によって揺動可能な支持棒と、支持棒の他端に接続された流体計測部と、支持棒の支点となる支持部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、加振器によって加振軸を振動させると、加振軸は、接続された支持棒の一端を揺動させることにより、支持部を支点として、支持棒の他端を揺動させ、これにより、支持棒の他端に接続された流体計測部を揺動させる。つまり、流体計測部は、支点を中心に加振軸によって揺動するため、流体計測部の揺動の位相と、加振軸の振動の位相とは、支点を挟んで逆となる。このため、支持部の位置を適宜調整することにより、流体計測部における加振変位を、加振軸の最大加振変位に応じて適切なものとすることができる。このため、流体計測部の加振変位を、好適に計測することが可能となるため、流体力の計測精度を向上させることが可能となる。また、支持棒を支持部によって支持することができるため、支持棒周りの剛性を高めることができ、これにより、固有振動数を高めることができる。よって、加振器により流体計測部を加振させても、固有振動数が高いために共振が起こり難くなるため、流体力の計測を好適に行うことが可能となる。
【0009】
この場合、加振軸と支持棒との接続部分が力点となり、流体計測部が作用点となっており、力点から支点に至る長さは、支点から作用点に至る長さに比して、短くなるように構成されていることが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、加振軸の最大加振変位よりも、流体計測部の加振変位を大きくすることができるため、流体計測部の加振変位を、好適に計測することが可能となる。
【0011】
この場合、少なくとも流体計測部、支持棒および支持部を格納する容器を更に備えたことが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、容器内に支持棒全体を格納することができるため、支持棒の揺動を、容器によって阻害することがない。これにより、支持棒の加振変位を大きくすることができるため、支持棒に接続された流体計測部の加振変位も大きくすることができる。
【0013】
この場合、加振器は、容器の外部に配設され、加振軸は、容器の内部と外部とを挿通するように配設されており、加振軸と容器との間には、容器内外における流体の漏洩を抑制するシール部が設けられていることが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、シール部は、加振軸と容器との間において流体の漏洩を抑制することができる。これにより、流体の漏洩による流体力の測定精度の悪化を抑制することができる。
【0015】
この場合、シール部は、金属ベローズで構成されていることが、好ましい。
【0016】
この構成によれば、シール部を金属ベローズで構成することにより、加振器から入力された力の損失を線形の応答とすることができ、これにより、流体力の測定精度を向上させることができる。つまり、シール部を、例えばゴム材等で構成した場合、加振軸は、シール部との間で摺動するが、このとき、シール部は、加振軸との間で摩擦が生じる。これにより、シール部は、加振器から入力された力を損失させるが、このとき、加振器から入力された力は、流体計測部に対し、非線形な応答となってしまう。つまり、加振器から入力された力は、不安定な状態で、流体計測部に出力される。一方、シール部を金属ベローズで構成すれば、加振器から入力された力の損失を線形の応答とすることができる。このため、加振器から入力された力は、流体計測部に対し、安定させた状態で出力することができるため、流体力の測定精度を向上させることができる。
【0017】
この場合、シール部は、Oリングで構成されていることが、好ましい。
【0018】
この構成によれば、シール部を簡易な構成とすることができるため、安価な構成とすることすることができる。
【0019】
この場合、支持部は、板バネで構成されていることが、好ましい。
【0020】
この構成によれば、支持部を板バネで構成することにより、摩擦などによる力の損失を抑制することができるため、加振器から入力された力は、流体計測部に対し、線形な応答とすることができる。また、安価な材料で支持部を構成することができるため装置コストを低減することができる。
【0021】
この場合、支持部は、ダイヤフラムで構成されていることが、好ましい。
【0022】
この構成によれば、支持部をダイヤフラムで構成することにより、摩擦などによる力の損失を抑制することができるため、加振器から入力された力は、流体計測部に対し、線形な応答とすることができる。また、支持部をダイヤフラムで構成することにより、剛性を高めることができる。
【0023】
この場合、支持部は、張力を調整可能なワイヤーで構成されていることが、好ましい。
【0024】
この構成によれば、支持部をワイヤーで構成することにより、摩擦などによる力の損失を抑制することができるため、加振器から入力された力は、流体計測部に対し、線形な応答とすることができる。また、支持部をワイヤーで構成することにより、ワイヤーの張力を調整することで、その剛性を調整することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の流体力計測装置によれば、加振器の最大加振変位を超えて、流体計測部を加振変位させることができるため、流体計測部の加振変位を、好適に計測することが可能となり、流体力の計測精度を向上させることが可能となる。また、支持部により支持棒周りの剛性を高めることにより、固有振動数を高めることができるため、共振の影響による流体力の計測精度の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本実施例に係る流体力計測装置を模式的に表した概略構成図である。
【図2】図2は、図1の支持部周りにおけるA−A’断面図である。
【図3】図3は、変形例1に係る支持部の説明図である。
【図4】図4は、変形例2に係る支持部の説明図である。
【図5】図5は、変形例3に係る支持部周りの概略構成図である。
【図6】図6は、変形例3に係る支持部の外観斜視図である。
【図7】図7は、変形例4に係る支持部の外観斜視図である。
【図8】図8は、変形例5に係るシール部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係る流体力計測装置について説明する。なお、以下の実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0028】
本発明に係る流体力計測装置は、流体から受ける力、すなわち流体力を計測するものであり、流体は、流れている状態であってもよいし、滞留している状態であってもよい。本実施例に係る流体力計測装置で計測対象となる流体は、具体的に、原子炉の蒸気発生器に設けられた伝熱管の周囲を流れる流体であり、この流体は、高温高圧の状態となっている。なお、本実施例において、流体は、蒸気発生器に設けられた伝熱管の周囲を流れる構成としたが、これに限らず、例えば、流体は、給水加熱器の配管の周囲を流れる構成としてもよい。
【0029】
図1に示すように、流体力計測装置1は、流体からの力を受ける流体計測部5と、流体計測部5に接続された支持棒6と、支持棒6に接続された加振軸7と、加振軸7に接続された加振器8と、を備え、流体計測部5、支持棒6および加振軸7の一部は、容器10に格納されている。また、支持棒6には、支持部15が設けられると共に、支持棒6の先端側(図示左側)には、非接触の変位計20が配置されている。さらに、加振軸7と加振器8との間には、荷重計21が設けられている。そして、荷重計21および変位計20は、制御装置25と接続されている。
【0030】
容器10は、高温高圧の流体が流れる流路Rと連通するように形成されている。容器10は、流路R内を流れる流体の流れ方向に直交する直交方向に延在するように設けられた円筒形状の支持棒収容部30と、支持棒収容部30の径方向に延在するように設けられた有底の円筒形状の加振軸収容部31と、でL字型に構成されている。そして、加振軸収容部31の軸方向は、流路Rの流れ方向と同方向となっている。支持棒収容部30は、その先端側が流路Rと連通しており、その後端側が、加振軸収容部31と連通している。また、加振軸収容部31は、その加振器8側の底面(図示下側端面)35に、加振軸7が挿通可能な貫通孔36が形成され、この貫通孔36に加振軸7が挿通される。
【0031】
流体計測部5は、その一方の端部(後端部)が支持棒6に接続されており、伝熱管を模した中空の丸管で構成されている。なお、本実施例では、流体計測部5を伝熱管に模して構成したが、これに限らず、例えば、流体計測部5を給水加熱器に配設される配管を模して構成してもよい。つまり、流体計測部5は、流体が作用する構造であれば、どのような形状であってもよい。また、流体計測部5は、その軸方向が、流路R内を流れる流体の流れ方向に対し、直交するように配設されている。そして、この流体計測部5は、加振器8が振動することにより、支持棒6を介して揺動する作用点となっており、具体的に、流体計測部5は、流体の流れ方向に沿った揚力方向と、流体の流れ方向に抗う抗力方向とに交互に移動する。
【0032】
支持棒6は、流体計測部5と同軸上に設けられており、流体計測部5が接続される先端側(作用点側)がひずみ計測用ロッド40となっており、加振軸7が接続される後端側(力点側)が支持棒本体41となっている。
【0033】
ひずみ計測用ロッド40は、その先端側の端部が流体計測部5に接続されている。また、ひずみ計測用ロッド40の周面には、ひずみゲージ42が取り付けられている。ひずみ計測用ロッド40は、加振器8によって流体計測部5が揺動することによって撓むため、ひずみ計測用ロッド40の周面に取り付けられたひずみゲージ42は歪む。そして、ひずみゲージの歪みから、流体計測部5に加わる加振荷重を導出することができる。このひずみゲージ42は、制御装置25に接続されており、流体計測部5に加わる流体力は、ひずみゲージ42の検出結果および後述する変位計20の検出結果に基づいて導出することができる。
【0034】
支持棒本体41は、その先端部がひずみ計測用ロッド40に接続されており、その断面は円形に形成されている。そして、支持棒本体41は、ひずみ計測用ロッド40に比して大径に形成されている。支持棒本体41の先端部は、先細りとなるテーパー形状となっており、支持棒本体41の中間部および後端部は、円筒形状となっている。そして、円筒形状となる支持棒本体41の中間部に、後述する支持部15が設けられている。
【0035】
図2は、図1のA−A’断面図であり、支持部15は、板バネ45で構成されている。板バネ45は、支持棒本体41の周面に複数設けられており、具体的には4つ設けられている。4つの板バネ45は、支持棒本体41の中間部に設けられ、支持棒本体41の軸心を中心にして十字状に配置されることにより、支持棒6周りの剛性を高めることができる。このとき、4つの板バネ45は、支持棒本体41の軸心の径方向天側(図示上側)を0°とし、支持棒本体41の軸心の径方向地側(図示下側)を180°とした場合、45°、135°、225°および315°の位置にそれぞれ配設されている。そして、各板バネ45は、その一端が支持棒本体41に接続され、その他端が容器10内部に接続されることにより、4つの板バネ45は、支持棒6を容器10内部に支持することができ、支持棒6の支点として機能させることができる。
【0036】
変位計20は、ひずみ計測用ロッド40の加振変位を計測するものである。そして、変位計20は、計測した加振変位を、接続された制御装置25へ向けて送信している。これにより、変位計20は、流体の流れ方向に沿った揚力方向における加振変位や、流体の流れ方向に抗う抗力方向における加振変位を計測することができる。
【0037】
加振軸7は、その一方の端部が支持棒本体41に接続されており、その他方の端部が加振器8に接続されている。加振軸7は、その軸方向に振動可能に構成されており、容器10に形成した加振軸収容部31の貫通孔36に挿通して設けられている。そして、加振軸7には、加振軸収容部31に収容された部分に、段付のフランジ部47が形成されている。段付きのフランジ部47は、径方向外側に突出して形成された大径の大径フランジ部47aと、大径フランジ部47aよりも小径に形成され、径方向外側に突出して形成された小径フランジ部47bとで一体に構成されている。そして、小径フランジ部47bは、大径フランジ部47aの加振器8側(図示下側)に配置されており、この段付のフランジ部47には、後述する金属ベローズ55の一端が接続されている。
【0038】
ここで、容器10内は高圧となっているため、加振軸7が挿通された貫通孔36から流体が漏洩しないように、容器10と加振軸7との間には、シール部50が設けられている。シール部50は、例えば、金属ベローズ55で構成されている。金属ベローズ55は、金属で構成された蛇腹の管であり、貫通孔36からの流体の漏洩を抑制している。金属ベローズ55は、加振軸7の径方向内側に配設された内側ベローズ55aと、内側ベローズ55aの径方向外側に配設された外側ベローズ55bと、で構成されている。内側ベローズ55aは、その一端が加振軸7に設けられた小径フランジ部47bに接続され、その他端が容器10の加振軸収容部31に形成された貫通孔36より径方向外側の底面35に接続されている。外側ベローズ55bは、内側ベローズ55aよりも大径に構成されており、その一端が加振軸7に設けられた大径フランジ部47aに接続され、その他端が容器10の加振軸収容部31に接続された小径フランジ部47bの接続部分よりも径方向外側の底面35に接続されている。
【0039】
また、加振軸7には、その容器10外部の部分に荷重計21が介設されている。この荷重計21は、加振軸7に形成された段付のフランジ部47に加わる軸方向への荷重を計測している。そして、荷重計21は、計測した荷重を、接続された制御装置25へ向けて送信している。
【0040】
ここで、容器10内には、圧力計58が設けられており、圧力計58は、制御装置25に接続されている。また、流体力計測装置1には、外側ベローズ55bと内側ベローズ55aとの間のシール空間56内の圧力と、容器10内の圧力と、を調整する圧力調整部59が、容器10の外部に設けられている。つまり、容器10内は高圧となっていることから、加振軸7に形成された段付のフランジ部47は、加振軸7の軸方向の外側へ向けて圧力が加わる。このため、圧力調整部59は、荷重計21の検出結果および圧力計58の検出結果に基づいて、シール空間56内の圧力と、容器10内の圧力とを調整することにより、段付のフランジ部47に加わる軸方向外側への圧力を打ち消している。
【0041】
加振器8は、加振軸7の他方の端部に接続されており、加振軸7を軸方向に振動させている。そして、加振器8は、接続された制御装置25によって、その振動が制御されている。
【0042】
制御装置25は、荷重計21から入力された荷重のデータおよび圧力計58から入力された圧力のデータに基づいて、圧力調整部59により、シール空間56内の圧力と容器10内の圧力とを調整している。また、制御装置25は、加振器8を制御して加振軸7を振動させることにより、変位計20から入力された加振変位のデータおよびひずみゲージ42から入力された歪みのデータに基づいて、流体から受ける流体力を導出している。
【0043】
圧力調整部59によりシール空間56内の圧力と容器10内の圧力とを調整する場合、制御装置25は、圧力計58によって計測した圧力に、所定の係数を乗算し、乗算された圧力となるように圧力調整部59を制御する。また、制御装置25は、荷重計21によって計測した荷重が、加振軸7の軸方向においてバランスするように、すなわち、計測した荷重がゼロとなるように、上記の係数を適宜変化させる。つまり、制御装置25は、荷重計21によって計測した荷重がゼロとなるような係数を、圧力計58によって計測した圧力に乗算する。
【0044】
次に、流体から受ける流体力を導出する場合の制御装置25の動作について説明する。加振器8によって流体計測部5が加振する場合、流体計測部5には、加振によって流体から受ける流体力と、流体計測部5の慣性力とが加わる。このため、流体計測部5に加わる加振荷重は、流体力と慣性力とを足し合わせたものとなっている。これにより、流体力を導出する場合、制御装置25では、流体計測部5に加わる加振荷重から慣性力を引くことで、流体力を導出している。
【0045】
つまり、流体力は、「流体力=流体計測部5に加わる加振荷重−流体計測部5に加わる慣性力」の式によって求められる。ここで、流体計測部5に加わる加振荷重は、「流体計測部5に加わる加振荷重=ひずみゲージ42の計測値×力への換算係数」の式によって求められる。なお、力への換算係数は、「力への換算係数=気中状態において流体計測部5に加えた荷重/ひずみゲージの計測値」により導出される。また、流体計測部5に加わる慣性力は、「流体計測部5に加わる慣性力=流体計測部5の質量×変位計20の計測値の2階微分」の式によって求められる。なお、気中状態とは、計測する流体が流れていない定常状態のことである。
【0046】
従って、流体力計測装置1は、支持棒6と加振軸7との接続部分を力点P1とし、支持棒6を支持する支持部15を支点P2とすると共に、この支点P2を中心に、作用点P3となる流体計測部5を揺動させている。このとき、流体力計測装置1は、その力点P1から支点P2にまでに至る長さが、支点P2から作用点P3までに至る長さに比して短く構成されている。これにより、作用点P3における加振変位は、力点P1における加振変位よりも大きくすることができる。つまり、流体計測部5における加振変位は、加振軸7における加振変位よりも大きくすることができる。
【0047】
次に、流体力計測装置1を用いて流体の受ける力を計測する一連の動作について説明する。制御装置25によって加振器8を振動させると、加振器8に接続された加振軸7は軸方向に振動する。振動した加振軸7は、その振動を支持棒6の後端部に伝達することで、支持棒6は、支点P2を中心に、その先端部が揺動する。このとき、支持棒6の先端部における位相と、支持棒6の後端部における位相とは、支点P2を挟んで逆となる。支持棒6の先端部が揺動すると、支持棒6に接続された流体計測部5が、揚力方向および抗力方向に交互に移動することで揺動し、揺動した流体計測部5は流体からの力、すなわち流体力を受ける。
【0048】
流体計測部5が流体力を受けると、支持棒6のひずみ計測用ロッド40が撓むため、ひずみゲージ42は、計測した歪みのデータを制御装置25へ向けて送信し、また、変位計20は、計測した加振変位を制御装置25へ向けて送信する。この後、制御装置25は、ひずみゲージ42によって計測した歪みのデータに基づいて、上記の式により加振荷重を導出する。また、制御装置25は、変位計20によって計測した加振変位に基づいて、上記の式により流体計測部5の慣性力を導出する。そして、制御装置25は、加振荷重から慣性力を引くことで、流体計測部5に加わる流体力を導出する。
【0049】
以上の構成によれば、作用点P3となる流体計測部5は、支点P2を中心に揺動する。このとき、力点P1から支点P2に至る長さは、支点P2から作用点P3に至る長さに比して、短くなっているため、流体計測部5における加振変位は、加振軸7の最大加振変位よりも大きくすることができる。また、支持棒6を支持部15によって支持することができるため、支持棒6周りの剛性を高めることができ、これにより、固有振動数を高めることができる。よって、加振器8により流体計測部5を加振させても、固有振動数が高いために共振が起こり難くなるため、流体力の計測を好適に行うことが可能となる。
【0050】
また、容器10内に支持棒6全体を格納することができるため、支持棒6の揺動を、容器10によって阻害することがないため、支持棒6の加振変位を大きくすることができ、支持棒6に接続された流体計測部5の加振変位も大きくすることができる。
【0051】
さらに、金属ベローズ55によって、加振軸7と容器10との間における流体の漏洩を抑制することができるため、流体の漏洩による流体力の測定精度の悪化を抑制することができる。また、金属ベローズ55を用いることにより、加振器8から入力された力の損失の応答を線形とすることができるため、流体計測部5に出力される力は、加振器8から入力された力に対し、線形な応答とすることができる。これにより、流体計測部5に出力される力を線形な応答とすることができるため、流体力の測定精度を向上させることができる。
【0052】
なお、本実施例では、支持部15を板バネ45により構成したが、これに限らず、例えば、図3に示す変形例1のように、支持部15をダイヤフラム60により構成してもよい。つまり、支持棒本体41と容器10との間に、薄膜の金属板を設けることにより、流体力計測装置1は、流体計測部5を、支点P2を中心に揺動させることができる。また、ダイヤフラム60を用いることで、支持棒本体41の全外周と容器10の全内周とを接続することができるため、支持部15周りの剛性を高めることができ、これにより、固有振動数を高めることができる。
【0053】
また、本実施例では、支持部15を板バネ45により構成したが、これに限らず、例えば、図4に示す変形例2のように、支持部15を、張力を調整可能なワイヤー61により構成してもよい。つまり、ワイヤー61は、支持棒本体41の周面に複数設けられており、具体的には4本設けられている。4本のワイヤー61は、支持棒本体41の中間部に設けられ、支持棒本体41の軸心を中心にして十字状に配置されている。なお、ワイヤー61の配置は、板バネ45と同位置であることが好ましい。これにより、流体力計測装置1は、流体計測部5を、支点P2を中心に揺動させることができる。また、ワイヤー61を用いることで、ワイヤー61の張力を調整することにより、支持部15周りの剛性を調整することができる。
【0054】
さらに、本実施例では、支持部15を板バネ45により構成したが、これに限らず、例えば、図5および図6に示す変形例3のような支持部15としてもよい。具体的に説明するに、この支持部15は、支持棒収容部30の内周に設けられた径方向内側に突出する円環状の突出フランジ部70と、支持棒本体41の外周に設けられた径方向外側に突出する複数の突起部71と、突出フランジ部70と各突起部71とを連結する複数の連結部材72と、で一体に構成されている。そして、複数の突起部71は、支持棒本体41の軸心から放射状となるように、周方向に等間隔に配置されている。この構成においても、流体力計測装置1は、支持棒6を支持部15によって支持することができるため、支持棒6周りの剛性を高めることができ、これにより、固有振動数を高めることができる。
【0055】
また、本実施例では、支持部15を板バネ45により構成したが、これに限らず、例えば、図7に示す変形例4のような支持部15としてもよい。具体的に説明するに、この支持部15は、支持棒収容部30の内周に設けられた径方向内側に突出する円環状の内側突出フランジ部75と、支持棒本体41の外周に設けられた径方向外側に突出する円環状の外側突出フランジ部76と、内側突出フランジ部75と外側突出フランジ部76とを連結する円筒状の連結部材77と、で一体に構成されている。そして、連結部材77には、その外周面に、軸方向に延在するスリット78が周方向に亘って複数形成されている。この構成においても、流体力計測装置1は、支持棒6を支持部15によって支持することができるため、支持棒6周りの剛性を高めることができ、これにより、固有振動数を高めることができる。
【0056】
さらに、本実施例では、シール部50を金属ベローズ55により構成したが、これに限らず、例えば、図5に示す変形例5のように、シール部50をOリング62により構成してもよい。これにより、加振軸7と容器10との間における流体の漏洩を抑制することができるため、流体の漏洩による流体力の測定精度の悪化を抑制することができる。また、Oリング62という安価な部材を用いるため、装置コストを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明に係る流体力計測装置は、流体から受ける力を精度よく計測する場合において有用であり、特に、原子炉の蒸気発生器の伝熱管の周囲を流れる流体の流体力を計測する場合に適している。
【符号の説明】
【0058】
1 流体力計測装置
5 流体計測部
6 支持棒
7 加振軸
8 加振器
10 容器
15 支持部
20 変位計
21 荷重計
25 制御装置
30 支持棒収容部
31 加振軸収容部
35 底面
36 貫通孔
40 ひずみ計測用ロッド
41 支持棒本体
42 ひずみゲージ
45 板バネ
47 フランジ部
47a 大径フランジ部
47b 小径フランジ部
50 シール部
55 金属ベローズ
55a 内側ベローズ
55b 外側ベローズ
58 圧力計
59 圧力調整部
60 ダイヤフラム
61 ワイヤー
62 Oリング
70 突出フランジ部
71 突起部
72 連結部材
75 内側突出フランジ部
76 外側突出フランジ部
77 連結部材
78 スリット
R 流路
P1 力点
P2 支点
P3 作用点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体計測部を揺動させることにより流体から受ける力を計測可能な流体力計測装置において、
加振器と、
前記加振器に接続され、前記加振器により軸方向に振動可能な加振軸と、
一端を前記加振軸に接続し、前記加振軸の振動によって揺動可能な支持棒と、
前記支持棒の他端に接続された前記流体計測部と、
前記支持棒の支点となる支持部と、を備えたことを特徴とする流体力計測装置。
【請求項2】
前記加振軸と前記支持棒との接続部分が力点となり、前記流体計測部が作用点となっており、
前記力点から前記支点に至る長さは、前記支点から前記作用点に至る長さに比して、短くなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体力計測装置。
【請求項3】
少なくとも前記流体計測部、前記支持棒および前記支持部を格納する容器を更に備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の流体力計測装置。
【請求項4】
前記加振器は、前記容器の外部に配設され、
前記加振軸は、前記容器の内部と外部とを挿通するように配設されており、
前記加振軸と前記容器との間には、前記容器内外における流体の漏洩を抑制するシール部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の流体力計測装置。
【請求項5】
前記シール部は、金属ベローズで構成されていることを特徴とする請求項4に記載の流体力計測装置。
【請求項6】
前記シール部は、Oリングで構成されていることを特徴とする請求項4に記載の流体力計測装置。
【請求項7】
前記支持部は、板バネで構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の流体力計測装置。
【請求項8】
前記支持部は、ダイヤフラムで構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の流体力計測装置。
【請求項9】
前記支持部は、張力を調整可能なワイヤーで構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の流体力計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−137644(P2011−137644A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295982(P2009−295982)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】