説明

流体吐出装置、ノズル検査方法、及び、ノズル検査プログラム

【課題】ノズル検査後にメンテナンスされない不安定状態のノズルを減らすことを課題とする。
【解決手段】流体吐出装置は、ノズル23から流体(FL1)を吐出可能な吐出ヘッド(24)と、前記ノズル23からの流体(FL1)の吐出状態を検査するノズル検査部U1と、前記ノズル23から流体(FL3)を吐出して前記ノズル検査部U1による検査処理を実行する際、前記ノズル23からフラッシングのために流体(FL2)を吐出するフラッシング処理を行ってから検査処理を実行する制御部U2と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから流体を吐出する流体吐出装置、ノズル検査方法、及び、ノズル検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンター等の流体吐出装置は、ノズルから吐出されるインクによる電圧変化に基づいてノズルを検査し、ノズルが目詰まり状態等の場合にメンテナンスとしてクリーニング処理等の回復処理を実行している。ノズルからインクが正常に吐出されない原因として、ノズルに露出したインクの表面(メニスカス)が大気に晒されることにより溶媒が蒸発してインクが増粘したり、圧力発生室等に気泡が混入してこの気泡により圧力発生室内の圧力変化が吸収されたりすることが挙げられる。このため、吐出検査処理においてインクが正常に吐出されないノズルが検出された場合、正常な状態に回復するために、ノズルに対して回復処理を行う。
例えば、特許文献1に記載の流体吐出装置は、複数のノズル列と1対1に対応してクリーニングボックスが設けられ、各クリーニングボックスに電極が配置され、ノズルから吐出される流体による電圧変化の検出手段に接続する電極を切り替えて流体が吐出されたか否かを判定する。流体が吐出されなかったと判定されたノズル列にはクリーニング処理が実行される。
【0003】
回復処理を実行しても、ごく微小な気泡(例えば、直径数十μmの気泡)に対しては、メンテナンス時の圧力変動を十分に付与することができず、完全に除去することは困難である。そこで、特許文献2に記載の液体吐出装置は、クリーニング処理を行った後にインクを繰り返し吐出するフラッシング動作を実行して吐出ヘッド内に滞留した気泡をインクと共に排出させるようにしている。このフラッシング動作では、圧電素子に印加するフラッシング用駆動パルスの駆動電圧(最高電位から最低電位までの電位差)を最大限まで高めて単位時間当たりの圧力差を大きくすることが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−226616号公報
【特許文献2】特開2010−167684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ノズルの状態が正常でない場合には、ノズルから流体が吐出されない目詰まり状態の他、流体の吐出方向が不安定であったり流体の吐出量が少なくなったりする等の不安定状態がある。ノズルから吐出される流体による電圧変化等の電気的変化が閾値よりも大きくなると、不安定状態のノズルが正常状態であると判定されてメンテナンスが実行されず、不安定状態のノズルが印刷に使用され、印刷画質が低下することがある。
【0006】
以上を鑑み、本発明の目的の一つは、ノズル検査後にメンテナンスされない不安定状態のノズルを減らすことにある。
【課題を解決するための手段及びその作用・効果】
【0007】
上記目的の一つを達成するため、本発明は、ノズルから流体を吐出可能な吐出ヘッドと、
前記ノズルからの流体の吐出状態を検査するノズル検査部と、
前記ノズルから流体を吐出して前記ノズル検査部による検査処理を実行する際、前記ノズルからフラッシングのために流体を吐出するフラッシング処理を行ってから検査処理を実行する制御部と、
を備えることを態様の一つとしている。
【0008】
すなわち、検査処理前にフラッシング処理が行われるので、このフラッシング処理により不安定状態のノズルを正常状態にすることができる。従って、本態様は、ノズル検査後にメンテナンスされない不安定状態のノズルを減らすことができ、不安定状態のノズルが印刷に使用されることを抑制することができる。
【0009】
ここで、上記流体吐出装置は、例えば、プリンター単体に設けられてもよいし、プリンターと外部装置とに跨って設けられてもよい。
上記流体の吐出状態の検査には、ノズルが正常状態であるか否かを検出すること、ノズルが正常状態と目詰まり状態と不安定状態のいずれかであるかを検出すること、等が含まれる。
【0010】
ところで、前記制御部は、前記検査処理によりドット抜けが検出された場合に、前記フラッシング処理及び前記検査処理を再度実行してもよい。印刷データが取得されてから1回目の前記検査処理の場合と、再度実行される前記検査処理の場合とで、前記フラッシング処理を終了してから前記検査処理を開始するまでの時間が等しくされてもよい。本態様は、メンテナンスの好適な構成を提供することができる。
なお、前記吐出ヘッドは、駆動パルスに従って前記ノズルから流体を吐出させる駆動素子を有していてもよい。前記制御部は、前記フラッシング処理の際、記録媒体への流体吐出に用いられる記録用駆動パルスとは異なるフラッシング用駆動パルスを前記駆動素子に供給させることにより前記ノズルからフラッシングのために流体を吐出させてもよい。記録用駆動パルスとは異なるフラッシング用駆動パルスに従ってノズルから流体が吐出するので、本態様は、ノズル検査後にメンテナンスされない不安定状態のノズルを減らす好適な構成を提供することができる。
さらに、前記フラッシング用駆動パルスの駆動周波数は、前記記録用駆動パルスの駆動周波数よりも低くされてもよい。前記フラッシング用駆動パルスに従って前記ノズルから吐出される流体の速度は、前記記録用駆動パルスに従って前記ノズルから吐出される流体の速度よりも遅くされてもよい。これらの態様は、ノズル検査後にメンテナンスされない不安定状態のノズルをさらに減らす好適な構成を提供することができる。一方、このような態様が好ましいものの、前記フラッシング用駆動パルスが前記記録用駆動パルスと同じにされても、ノズル検査後にメンテナンスされない不安定状態のノズルを減らす効果が得られる。
【0011】
前記吐出ヘッドが前記ノズルを複数有する場合、前記ノズルのそれぞれについて前記フラッシング処理を終了してから前記検査処理を開始するまでの時間が均等にされてもよい。フラッシング処理終了後から検査処理が実行されるまでの時間が各ノズル均等にされるので、本態様は、ノズル検査後にメンテナンスされない不安定状態のノズルを減らす好適な構成を提供することができる。
【0012】
前記制御部は、第一のノズルについての前記検査処理と第二のノズルについての前記フラッシング処理とを並行して実行してもよい。第一のノズルについての検査処理と第二のノズルについてのフラッシング処理とが並行して実行されるので、本態様は、ノズル検査を迅速に行うことができる。
【0013】
前記吐出ヘッドがメンテナンスの実行単位とされた第一及び第二のノズル群を少なくとも含む場合、前記制御部は、前記第一のノズル群に含まれる前記第一のノズルについての前記検査処理と前記第二のノズル群に含まれる前記第二のノズルについての前記フラッシング処理とを並行して実行してもよい。メンテナンスの異なる実行単位のノズル群で検査処理とフラッシング処理とが並行して実行されるので、本態様は、ノズル検査を迅速に行うことができる。
【0014】
前記制御部は、第一のノズルについて前記フラッシング処理を行ってから前記検査処理を実行した後に第二のノズルについて前記フラッシング処理を行ってから前記検査処理を実行してもよい。第一のノズルについてフラッシング処理と検査処理との一連の処理が終わった後に第二のノズルについてフラッシング処理と検査処理との一連の処理が行われるので、本態様は、ノズル検査後にメンテナンスされない不安定状態のノズルを減らす好適な構成を提供することができる。
【0015】
上述した態様は、ノズル検査装置、印刷装置、印刷制御装置、これらの装置を備えるシステム、例えば制御工程といった工程を備えるノズル検査方法、流体吐出方法、印刷方法、印刷制御方法、例えば制御機能といった機能を備えるノズル検査プログラム、流体吐出プログラム、印刷プログラム、印刷制御プログラム、これらのプログラムを記録したコンピューター読み取り可能な媒体、等に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ノズル検査方法の概念を模式的に例示する図。
【図2】本発明の一実施形態に係る流体吐出装置を適用したプリンター20の構成の概略を例示する図。
【図3】印刷ヘッド24の電気的接続を模式的に例示する図。
【図4】(a)は印刷ヘッド24の構成の概略を例示する断面図、(b)は駆動素子48に供給されるフラッシング用駆動パルスP1を例示する図、(c)は駆動素子48に供給される記録用駆動パルスP2を例示する図。
【図5】プリンター20の構成の概略を例示する図。
【図6】(a)〜(c)は気泡除去フラッシングによる気泡除去のメカニズムを模式的に例示する図。
【図7】ノズル検査処理を例示するフローチャート。
【図8】フラッシング+ノズル判定処理を例示するフローチャート。
【図9】印刷実行時の処理を例示するフローチャート。
【図10】(a)〜(d)はノズル毎のフラッシング処理及びノズル判定処理のシーケンスを例示する図。
【図11】変形例に係るプリンター20の構成の概略を示す図。
【図12】変形例に係るフラッシング+ノズル判定処理を示すフローチャート。
【図13】別の変形例に係るフラッシング+ノズル判定処理を示すフローチャート。
【図14】比較例に係る印刷実行時の処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(1)ノズル検査方法の概略:
まず、図1〜5を参照して本発明の一態様に係るノズル検査方法の概略を説明する。
図2,5は、本発明の一実施形態に係る流体吐出装置を適用したインクジェット式のプリンター20の構成の概略を示している。プリンター20は、印刷ヘッド(吐出ヘッド)24を備えるとともに、図5に示されるノズル検査装置50を備えている。印刷ヘッド24は、ノズル列(ノズル群)43に含まれる各ノズル23からインク(流体)FL1を吐出可能である。ノズル検査装置50に含まれるノズル検査部U1は、ノズル23からのインクFL1の吐出状態を検査する。例えば、ノズル検査部U1は、ノズル23から吐出されるインクFL1による電圧変化(電気的変化)を検出し、検出される電圧変化と閾値Vrefとを対比してノズル23の状態が正常であるか否かを判定する。ノズル検査装置50に含まれる制御部U2は、ノズル23からインクFL3を吐出してノズル検査部U1による検査処理を実行する。その際、制御部U2は、ノズル23からフラッシングのためにインクFL2を吐出するフラッシング処理を行ってから検査処理を実行する。このフラッシング処理は、増粘したインクをノズルから排出し、該ノズルのメニスカスをノズル検査に適した形状のメニスカスにする処理ともいえる。
【0018】
ノズル23の状態が正常でない場合には、目詰まり状態の他、不安定状態がある。ここで、目詰まり状態は、ノズルからインク滴が吐出していない状態であり、所謂ドット抜けが発生する状態である。不安定状態は、ノズルからインク滴が吐出しているものの、インク滴の飛行方向や吐出量が異常な状態を意味している。例えば、印刷面に対してインク滴が垂直に飛行せずに曲がったり、一つのノズルから複数の方向にインク滴が飛び散ったり、吐出されるインク量が少なくなったりしている異常吐出状態がある。不安定状態の原因としては、吐出インクのミストが発生してノズル面に付着すること、ノズルに微小な気泡が混入すること、等が考えられる。
【0019】
図1の上段は、”抜け”状態(目詰まり状態)のノズル231,232や、”曲がり”状態(不安定状態)のノズル233や、”細り”状態(不安定状態)のノズル234が生じた印刷ヘッド24を例示している。従来のようにフラッシング無しにノズル検査を行うと、不安定状態のノズル233,234について、目詰まり状態ではないので正常状態であると判定されることがある。この場合、記録紙に印刷する際に不安定状態のノズル233,234から吐出されるインク滴のドットが印刷画質を低下させることがある。本流体吐出装置は、図1の中段に示すように、ノズル検査の直前に気泡除去フラッシング等のフラッシング処理を実行する。これにより、”曲がり”状態であったノズル233を正常状態に回復させ、”細り”状態であったノズル234を正常状態に回復させ、”抜け”状態であったノズルの一部(ノズル231)を正常状態に回復させることができる。従って、フラッシング処理後のノズル検査では、図1の下段に例示するように、不安定状態であったノズル233,234が正常状態と判定されても実際に正常状態に変わっていることになり、目詰まり状態であったノズル231が正常状態と判定されても実際に正常状態に変わっていることになる。むろん、”抜け”状態のノズル232が残っていれば、クリーニング等のメンテナンス処理が実行される。
【0020】
以上説明したように、本ノズル検査方法は、検査処理前にフラッシング処理が行われるので、このフラッシング処理により不安定状態のノズルを正常状態にすることができ、不安定状態のノズルが印刷に使用されないようにすることができる。従って、本ノズル検査方法は、ノズル検査後にメンテナンスされない不安定状態のノズルを減らすことができる。
【0021】
(2)プリンターの構成:
図2に例示するプリンター20は、紙送り機構31、プリンター機構21、キャッピング装置40、図5に示すノズル検査部U1、コントローラー70、操作パネル79、等を備える。紙送り機構31は、駆動モーター33による紙送りローラー35の駆動により記録紙といった記録媒体M1を搬送方向DR2へ搬送する。
【0022】
プリンター機構21は、キャリッジモーター34a、従動ローラー34b、キャリッジベルト32、キャリッジ22、インクカートリッジ26、印刷ヘッド(吐出ヘッド)24、等を備え、紙送り機構31によりプラテン38上に搬送された記録媒体M1に印刷ヘッド24からインク滴を吐出して印刷を行う。キャリッジモーター34aは、メカフレーム80に対してキャッピング装置40とは反対側に配置されている。従動ローラー34bは、メカフレーム80に対してキャッピング装置40側に配置されている。キャリッジベルト32は、キャリッジモーター34aと従動ローラー34bとに架設されている。キャリッジ22は、キャリッジモーター34aの駆動に伴ってキャリッジベルト32によりガイド28に沿って主走査方向DR1に往復動する。インクカートリッジ26は、水(溶媒)に染料又は顔料といった着色剤を含有したイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のインクを個別に収容し、キャリッジ22に搭載されている。キャリッジ22の背面にはキャリッジ22の位置を検出するリニア式エンコーダー36が配置され、このリニア式エンコーダー36によりキャリッジ22のポジションが管理される。
【0023】
図3,4に例示する印刷ヘッド24は、ノズルプレート27、キャビティプレート25、振動板49、駆動素子48、駆動パルス生成回路47、温度検出部24t、を備える。ノズルプレート27は、ステンレス製等とされ、複数個のノズル23を搬送方向DR2に並べたノズル列43が形成されている。図3の例では、C,M,Y,Kのノズル23C,23M,23Y,23Kが色毎に180個ずつ1列に配置された複数列のノズル列43C,43M,43Y,43Kが示されている。各ノズル23は、圧力室44bからノズル面27aに向かって次第に径が小さくなるテーパー部分23tを有する微小な貫通孔とされている。キャビティプレート25は、ノズルプレート27、振動板49と共にノズル23に連通するインク室(44a,44b)を形成する。共通インク室44aは、インク流路44cによって圧力室44bと連通し、圧力室44bに対してインクのバッファー領域として機能し、インクカートリッジ26から充填されたインクを圧力室44bへ送る。駆動素子48は、ピエゾ素子といった圧電素子、静電駆動素子、インクを加熱して膜沸騰による気泡(バブル)の圧力を利用してノズルから流体を吐出させるヒーター、等を用いることができる。図4に示す駆動素子48は、振動板49のキャビティプレート25とは反対側に接合され、供給される駆動パルスに従ってノズル23からインクを吐出させる。駆動素子48に使用可能な圧電素子は、ジルコニアセラミック製といったセラミック製等とされる。駆動パルス生成回路47は、ヘッド駆動用基板30上に形成され駆動素子48に駆動信号を出力する駆動回路とされている。印刷ヘッド24は、コントローラー70の制御に従って、駆動パルス生成回路47から駆動素子48に電圧を印加して駆動素子48で圧力室44bの上壁を押し下げることによりインクを加圧してインク滴を吐出する。印刷ヘッド24に設けられた温度検出部24tは、例えば温度センサーで構成され、印刷ヘッド24の動作環境温度を検出し、その検出信号をコントローラー70へ送信する。
【0024】
図4に例示する駆動素子48は、圧電体と内部電極とを交互に積層して構成された積層型の圧電振動子であって、印加される電圧に応じて積層方向に直交する縦方向(矢印で図示)に伸縮可能な縦振動モードの圧電振動子とされている。この駆動素子48を固定する固定基材44dは、駆動素子48の振動を効率よく振動板49に伝えるのに十分な剛性を有する部材によって構成されている。振動板49は、駆動素子48が当接する厚肉部と、その外周に弾性を有する薄肉部とを備えた板状部材であり、厚肉部が駆動素子48の伸縮に応じて振動する。
むろん、駆動素子には、共通上電極と駆動電極と共通下電極とを積層した横振動モードの圧電素子等を用いることもできる。
【0025】
図3に例示する駆動パルス生成回路47は、原信号生成回路60により生成された原信号ODRVと印刷信号PRTnとを入力し、これらの信号ODRV,PRTnに基づいて駆動信号DRVnを生成して駆動素子48に出力する。信号PRTn,信号DRVnの末尾のnは、ノズル列に含まれるノズルを特定するための番号である。原信号生成回路60は、所定のパルスを繰り返し単位とした信号を駆動パルス生成回路47に出力する。駆動パルス生成回路47は、原信号ODRV、及び、別途入力した印刷信号PRTnに基づいて駆動信号DRVnを生成して駆動素子48に出力する。例えば、電位差の比較的小さいパルス状の駆動信号DRVnが駆動素子48に出力されるとノズル23から1ショットのインク滴が吐出されて記録媒体M1に小ドットが形成され、中間の電位差とされたパルス状の駆動信号DRVnが駆動素子48に出力されるとノズル23から1ショットのインク滴が吐出されて記録媒体M1に中ドットが形成され、電位差の比較的大きいパルス状の駆動信号DRVnが駆動素子48に出力されるとノズル23から1ショットのインク滴が吐出されて記録媒体M1に大ドットが形成される。
【0026】
図5に例示するキャッピング装置40は、キャップ41、吸引ポンプ45、大気開放バルブ46、昇降装置90、を備え、プラテン38の一端となるホームポジションに対向する位置に設けられている。キャップ41は、略直方体等とされ、上部が開口している。吸引ポンプ45は、キャップ41の底部に接続された伸縮性のチューブ45aに取り付けられている。大気開放バルブ46は、キャップ41の底部に接続された伸縮性のチューブ46aに取り付けられている。昇降装置90は、キャップ41の上面とノズルプレート27面との当接とその解除とを行うためにキャップ41を昇降させる。キャッピング装置40は、ノズル23内のインクの増粘(乾燥)を抑制するために、印刷休止中に印刷ヘッド24をキャッピング装置40に対向するホームポジションに移動させた状態でキャップ41を上昇させてノズルプレート27を封止する。また、キャッピング装置40は、所定のタイミングでノズルプレート27を封止した状態で大気開放バルブ46を閉じ、吸引ポンプ45を駆動することにより、印刷ヘッド24とキャップ41とにより形成される内部空間を負圧にしてノズル23内のインクを強制的に吸引する。この処理は、クリーニングと呼ばれる。
【0027】
図5に例示するノズル検査部U1は、電極52、電圧印加回路54、電圧検出回路56、比較回路57、等を備える。
電極52は、キャップ41内に配置されている。電極52は、メッシュ状のステンレス等とすることができる。電極52の上側には、インク滴が着弾するインク吸収体(例えば導電性スポンジ)が設けられてもよい。電極52の下側には、下方に透過したインクを吸収するインク吸収体(例えばフェルトといった不織布)が設けられてもよい。ノズル検査部U1は、ノズル23から帯電したインク滴(FL1)をキャップ41内に吐出することによってインク滴(FL1)がキャップ41に着弾する際に電極52に生じる電圧変化ΔV1を検出することにより、ノズル23からインク滴(FL1)が正常に吐出されたか否かを判定する。
【0028】
電圧印加回路54は、プリンター20の内部で引き回される数ボルトの電気配線の電圧を昇圧回路で数百ボルトや千数百ボルトの直流電圧に昇圧した高圧電源Veが抵抗回路R1(例えば1MΩの抵抗素子)とスイッチSW1とを順に介して電極52に接続されている。スイッチSW1をオンにすると電極52と高圧電源Veとを接続することができ、スイッチSW1をオフにすると電極52から高圧電源Veを切り離してグランドに接地することができる。一方、印刷ヘッド24のノズルプレート27は、メカフレーム80と共にグランドに接地されている。従って、スイッチSW1がオンの時、ノズルプレート27と電極52との間には電位差が生じる。
【0029】
電圧検出回路56は、電極52に接続され、電極52で発生する電圧変化を検出するための回路とされている。検出する電圧変化は、電圧検出回路56に入力される電圧信号の最高電圧と最低電圧との差などとすることができる。また、電圧検出回路56は、入力されるアナログ電圧をA/D変換部(アナログ−デジタル変換部)でデジタル値に変換してもよい。帯電したインク滴がキャップ41に着弾する際に電極52に生じる電圧変化を大きくするため、電極52に生じた電圧波形のピーク値を抽出してホールドし、該ホールドしたピーク値を積算し、該積算した電圧信号を増幅してもよい。このような増幅信号も、本技術の電圧変化(電気的変化)ΔV1に含まれる。
【0030】
比較回路57は、電圧検出回路56で検出される電圧変化ΔV1と対比するための閾値Vrefをコントローラー70から入力して保持する。そして、電圧変化ΔV1と閾値Vrefとを対比して、電圧変化ΔV1が閾値Vrefよりも高い(閾値Vrefから高い側である)時にハイレベルHの電圧の判定信号(対比結果)Voutをコントローラー70へ出力し、電圧変化ΔV1が閾値Vrefよりも低い(閾値Vrefから低い側である)時にローレベルLの電圧の判定信号(対比結果)Voutをコントローラー70へ出力する。ここで、電圧変化ΔV1が閾値Vrefよりも高いことには、電圧変化ΔV1が閾値Vref以上であること、電圧変化ΔV1が閾値Vrefよりも大きいこと、の両方が含まれる。電圧変化ΔV1が閾値Vrefよりも低いことには、電圧変化ΔV1が閾値Vref以下であること、電圧変化ΔV1が閾値Vrefよりも小さいこと、の両方が含まれる。また、閾値は、検出される電圧変化といった電気的変化と対比する対象であればよく、検出される電気的変化がデジタル値で表される場合にはデジタル値の閾値、検出される電気的変化が階調値で表される場合には階調値の閾値、検出される電気的変化が電圧状態といったアナログで表される場合にはアナログの閾値、等、種々の態様が含まれる。
【0031】
なお、比較回路57は、閾値Vrefを閾値レジスターに記憶し、電圧変化ΔV1のデジタル値と閾値レジスターの閾値Vrefとを電圧比較部で比較し、比較結果(対比結果)を比較結果レジスターに記憶し、この比較結果レジスターの比較結果を判定信号Voutとしてコントローラー70へ出力してもよい。この比較結果は、例えば、電圧変化のデジタル値が閾値Vrefよりも高い時にHを表す「1」とし、電圧変化のデジタル値が閾値Vrefよりも低い時にLを表す「0」とすればよい。
【0032】
電極52に生じる電圧変化ΔV1は、ノズル23からインク滴が吐出されなかったり通常よりも小さかったりしたときには正常にインク滴が吐出されたときに比べて小さくなる。そこで、これを区別する閾値Vrefを設定することにより、ノズル23の状態が正常であるか否かを判定することができる。
【0033】
図2,5に例示するコントローラー70は、CPU(Central Processing Unit)72、ROM(Read Only Memory)73、RAM(Random Access Memory)74、不揮発性メモリー75、I/F(インターフェイス)76、入出力ポート、等を備え、プリンター20全体を制御する。ROM73は、ノズル検査プログラムを含む各種処理プログラムを記憶している。このノズル検査プログラムは、コンピューターであるコントローラー70を制御部U2として機能させる。ノズル検査プログラムは、コンピューター読み取り可能な外部の記録媒体に記録されてもよい。RAM74は、印刷バッファー領域が設けられており、この印刷バッファー領域にホスト装置10からI/F76を介して送られてきた印刷データを一時的に記憶する。不揮発性メモリー75には、フラッシュメモリー等を用いることができる。I/F76は、ホスト装置10からの印刷ジョブを入力したり、ホスト装置10への印刷ステータス情報等を出力したりする。入力ポートには、比較回路57からの判定信号Vout、リニア式エンコーダー36からのキャリッジ22のポジション信号、等が入力される。コントローラー70は、駆動パルス生成回路47や駆動素子48を含む印刷ヘッド24への制御信号、スイッチSW1への切替信号、原信号生成回路60への制御信号、駆動モーター33への駆動信号、キャリッジモーター34aへの駆動信号、昇降装置90への駆動信号、閾値Vref、等を出力ポートから出力する。本コントローラー70は、原信号生成回路60とともに制御部U2を構成する。
ホスト装置10は、パーソナルコンピューター等のコンピューター、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話、等が考えられる。
【0034】
(3)フラッシング処理の説明:
フラッシング処理では、ノズル23からのインクの空吐出を実行してインク滴とともに気泡や増粘インクをノズル23から出す。「空吐出」とは、インク滴の本来の用途、すなわち、印刷以外の目的のために行われる吐出を意味する。フラッシング実行時、コントローラー70は、印刷ヘッド24をホームポジションへ移動させ、キャップ41をノズル面27aから離れた状態に維持する。空吐出は、所定回数繰り返し行われる。連続したインク滴の空吐出工程を連続フラッシングセットと呼ぶことにする。
フラッシングのうち、特に気泡を除去することを目的とした気泡除去フラッシングでは、記録媒体M1への流体吐出に用いられる記録用駆動パルスP2とは異なるフラッシング用駆動パルスP1を駆動素子48に供給することによりノズル23からインクFL2を吐出させる。気泡除去フラッシングは、所定回数繰り返し行われる。これを、連続気泡除去フラッシングセットと呼ぶことにする。
【0035】
なお、連続フラッシングセットを実行する前に、温度検出部24tによって印刷ヘッド24の環境温度を検出し、環境温度に応じてノズルからのインク吐出量を略一定に制御したり、環境温度に応じて吐出回数を変更したりしてもよい。環境温度が高くなるほどインク吐出量が増加する場合、環境温度の上昇によるインク吐出量の増加量を差し引くようにインク吐出量を制御すればよい。また、環境温度が高くなるほど連続フラッシングセットの吐出回数を増やしてもよい。
【0036】
図4(b)は、気泡除去フラッシングの実行時に駆動素子48に供給されるフラッシング用駆動パルスP1を例示している。図4(c)は、通常の印字を行う際に駆動素子48に供給される記録用駆動パルスP2を例示している。図4(b),(c)において、横軸は時間、縦軸は電圧である。
図4(b)に示すフラッシング用駆動パルスP1は、上昇パルス部分Pwcと、下降パルス部分Pwdと、両パルス部分Pwc,pwdの間にある中間パルス部分Pwhとを有している。上昇パルス部分Pwcでは、時刻t0から時刻t1の間に駆動素子48の電圧値が基底状態(例えば電圧値0)からピーク電圧値(V1)まで一定比率で増加する。V1は、フラッシング用駆動パルスP1の駆動電圧の一種であり、フラッシング用駆動パルスP1における最高電位と最低電位との電位差である。中間パルス部分Pwhでは、時刻t1から時刻t2の間、駆動素子48の電圧値がピーク電圧値(V1)のまま一定に保持される。下降パルス部分Pwdは、時刻t2から時刻t3の間に駆動素子48の電圧値が一定比率でピーク電圧値(V1)から基底状態に戻る部分であり、インク滴が吐出される期間である。ノズル23からインク滴を所定回数繰り返し吐出するため、フラッシング用駆動パルスP1は所定回数繰り返し駆動素子48に供給される。
図4(c)に示す記録用駆動パルスP2は、上昇パルス部分(時刻t10〜t11)、ピーク部分(時刻t11〜t12)、下降パルス部分(時刻t12〜t13)、底部分(時刻t13〜t14)、及び、復帰部分(時刻t14〜t15)を有している。ノズル23からインク滴を所定回数繰り返し吐出するため、記録用駆動パルスP2は所定回数繰り返し駆動素子48に供給される。
【0037】
連続気泡除去フラッシングセットにおけるフラッシング用駆動パルスP1の周期T1は、通常の印字を行う際の記録用駆動パルスP2の周期T2と比べて長いのが特徴である。すなわち、フラッシング用駆動パルスP1の駆動周波数は、記録用駆動パルスP2の駆動周波数よりも低い(例えば1〜5kHz)。また、気泡除去フラッシングで吐出されるインク滴の速度は、通常の印字を行う際に吐出されるインク滴の速度よりも遅いのが特徴である。すなわち、フラッシング用駆動パルスP1は、記録用駆動パルスP2により吐出されるインク滴の速度よりも遅くなるように設計される。フラッシング用駆動パルスP1の駆動電圧V1については、記録用駆動パルスP2の駆動電圧V2と同じでもよいし、V1>V2などV2と異なっていてもよい。
なお、印字中に行われる記録時フラッシングや印字直前に行われる印字前フラッシングの駆動パルスの駆動電圧は、例えば、記録用駆動パルスP2の駆動電圧V2と同じにされる。記録時フラッシングや印字前フラッシングの駆動パルスが記録用駆動パルスP2と同じにされることもある。ノズル23からインク滴を所定回数繰り返し吐出するため、通常フラッシング用の駆動パルスは所定回数繰り返し駆動素子48に供給される。通常フラッシング時、インク滴は、例えば、ノズル列43単位でノズル列43に含まれる全ノズル23から同時に吐出される。
【0038】
図6(a)〜(c)は、気泡除去フラッシングによる気泡除去のメカニズムを模式的に例示している。図6(a)は、連続気泡除去フラッシングセットを行う前(図4(b)の時刻t0以前)の圧力室44bの状態を例示している。この圧力室44bにはインクFL1が充填され、インクFL1には気泡AR1が混入している。図6(b)は、図4(b)の時刻t0〜t2における圧力室44bの状態を例示している。駆動素子48は、上昇パルス部分Pwcが供給されると印加電圧の増加に伴って収縮する。すると、振動板49が圧力室44bの外側(図6(b)の上側)に向かって湾曲し、圧力室44b内のインクFL1に負圧が生じる。このときノズル23に生じるメニスカスME1は、振動板49と同様の方向に湾曲の度合いが増大する。圧力室44b内の圧力低下に伴って、気泡AR1が増大する。図6(c)は、時刻t2〜t3における圧力室44bの状態を例示している。下降パルス部分Pwdによって駆動素子48への印加電圧値が基底値に戻り、駆動素子48が伸張して基底状態に戻り、振動板49が平坦な状態へ戻る。気泡AR1は、インクFL1の吐出に伴ってノズル23に次第に近付いてゆき、最終的にはノズル23から外部に排出される。
以上説明したように、連続気泡除去フラッシングセットによれば、微小径の気泡であっても除去することが可能である。
【0039】
(4)ノズル検査処理の説明:
次に、図7を参照して、コントローラー70で行われるノズル検査処理の例を説明する。この処理は、例えば、ノズル検査が指示されたときに実行される。ノズル検査の指示には、ユーザーからプリンター20へのノズル検査を指示するための所定の操作入力、ホスト装置10からプリンター20へのノズル検査を指示するための所定の信号入力、等が含まれる。また、電源投入時、ホスト装置10から印刷ジョブを受信した時、記録媒体M1への1ページの印刷終了時、記録媒体M1への所定ページ数の印刷終了時、キャリッジ主走査の所定パス数の終了時、等にノズル検査処理を実行してもよい。
【0040】
ノズル検査処理が開始すると、コントローラー70は、キャリッジモーター34aを駆動してキャリッジ22をホームポジションに移動させる(ステップS102。以下、「ステップ」の記載を省略)。これにより、印刷ヘッド24のノズルプレート27とキャッピング装置40とが互いに向かい合う状態となる。このとき、ノズル23と電極52との所定の隙間(ギャップ)GA1(図5参照)が生じている。S104では、スイッチSW1をオン側に切り替えて電圧印加回路54をオンにし、電極52に高圧電源Veの電圧を印加する。S106では、メンテナンス処理の実行回数を表すカウンターCをRAM74に設け、このカウンターCに1を代入する。S108では、後述するフラッシング+ノズル判定処理を行い、判定結果をRAM74等のメモリーに格納する。
【0041】
S110では、ドット抜けを検出したか否か、すなわち、ノズル、好ましくは全ノズルの状態が正常であるか否かを判断する。例えば、RAM74等のメモリーに格納された判定結果が正常であることを表す情報であるか否かを判断すればよい。ドット抜けが検出されなかった場合、コントローラー70は、スイッチSW1をオフ側に切り替えて電圧印加回路54をオフにして電極52から切り離し(S120)、ノズル検査処理を終了させる。
【0042】
ドット抜けが検出された場合、コントローラー70は、カウンターCがカウンター閾値Crefを超えているか否かを判断する(S112)。カウンター閾値Crefは、メンテナンス処理の繰り返し回数の上限として設定されるものであり、例えば2回等のように定められる。C≦Crefの場合、コントローラー70は、例えばクリーニング処理といったメンテナンス処理を行う(S114)。クリーニング処理では、ノズルプレート27を封止した状態で印刷ヘッド24とキャップ41とにより形成される内部空間を負圧にしてノズル23内のインクを強制的に吸引する。これにより、ノズル23内に詰まったインクが吸引除去される。メンテナンス処理の際には、ワイピング処理など吸引動作を含まないメンテナンス処理を行ってもよい。ワイピング処理は、キャップ41の傍ら等に設けられるワイパーでノズル面27aを拭き取る処理である。メンテナンス処理後、コントローラー70は、カウンターCに1を加え(S116)、処理をS108に戻す。
【0043】
一方、S112でC>Crefであった場合、メンテナンス処理を繰り返したにもかかわらずノズル23の状態が正常にならないため、コントローラー70は、操作パネル79の表示部にノズルの異常状態が解消されない旨のエラー表示を行う(S118)。その後、コントローラー70は、電圧印加回路54をオフにして(S120)、ノズル検査処理を終了させる。
【0044】
(5)第一のフラッシング+ノズル判定処理:
図8は、図7のS108で行われる第一のフラッシング+ノズル判定処理をフローチャートにより例示している。本処理は印刷ヘッド24に設けられた全ノズル23を対象として行われるが、簡略化のため、ノズル列43C,43M,43Y,43Kのいずれか一つ(例えばノズル列43K)の180ノズル(23K)を対象として説明する。なお、ノズル列43別にノズル判定処理を行う場合には、ノズル列43C,43M,43Y,43Kのそれぞれについて図8の処理を行えばよい。ここで、閾値よりも高いことを「以上」と記載し、閾値よりも低いことを「以下」で記載している。従って、「以上」の記載は「より大」であることが含まれ、「以下」の記載は「より小」であることが含まれる。これらの前提は、断りが無い限り以下の説明でも同様である。
【0045】
第一のフラッシング+ノズル判定処理が開始すると、コントローラー70は、気泡除去フラッシング用の駆動パルス(P1)を繰り返し駆動素子48に供給させる制御を印刷ヘッド24に対して行い、全ノズル23からインクFL2を吐出するフラッシング処理を実行する(S130)。例えば、図10(a)のシーケンス例に示すように、全180ノズルから同時にインクFL2を吐出するフラッシング処理が行われる。これにより、図1の上段で示したノズル233,234のように不安定状態のノズルがあっても、図1の中段で示したように気泡除去フラッシングによってノズルが正常状態に回復する。
【0046】
フラッシング処理後、コントローラー70は、ノズル検査部U1による検査処理を実行する。まず、コントローラー70は、判定対象ノズルの設定回数を表すカウンターnをRAM74に設け、このカウンターnに1を代入する(S132)。S134では、第nノズルから所定ショット数のインクFL3が吐出されるように印刷ヘッド24を制御する。すなわち、ノズル判定処理時のインク滴吐出は、ノズル1本ずつ行われる。前記所定ショット数は、8〜24ショット等、プリンターの機種等に応じて設定すればよい。このとき、電圧検出回路56は、第nノズルからのインク滴吐出により生じる電圧変化ΔV1を検出する。比較回路57は、この電圧変化ΔV1と閾値Vrefとを対比し、ΔV1がVrefよりも高い場合にHの判定信号Voutを生成してコントローラー70へ出力し、ΔV1がVrefよりも低い場合にLの判定信号Voutを生成してコントローラー70へ出力する。
【0047】
コントローラー70は、入力ポートに入力される判定信号Voutの状態を読み(S136)、判定信号Voutの状態に応じて処理を分岐させる(S138)。コントローラー70は、判定信号Voutの状態がL(ΔV1がVref以下)であれば第nノズルを正常状態でないノズルとしてRAM74等のメモリーに登録する(S140)。S142では、カウンターnがカウンター閾値Nrefを超えているか否かを判断する。カウンター閾値Nrefは、状態を判定するノズル数として設定されるものであり、180の全ノズルの状態を判定する場合には180に定められる。n≦Nrefの場合、コントローラー70は、カウンターnに1を加え(S144)、処理をS134に戻す。一方、n>Nrefの場合、コントローラー70は、フラッシング+ノズル判定処理を終了させる。図10(a)の例では、第1ノズルから第180ノズルの順にノズル判定処理(検査処理)が行われることが示されている。従って、第nノズルにおいてフラッシング処理を終了してから検査処理を開始するまでの時間をTInで表すと、全180ノズルの時間TInが異なり、第1ノズルの時間TI1から第180ノズルの時間TI180まで各ノズルの検査時間Tcずつ順に時間が長くなる。ノズル判定処理の総時間はプリンターの機種により異なり例えば百ミリ秒オーダーから1秒オーダー程度とされるが、最初の第1ノズルの時間TI1はノズル判定処理の総時間よりも短い一方、最後の第180ノズルの時間TI180はノズル判定処理の総時間よりも長くなる。なお、ノズル毎のノズル判定処理を並行して行うことができないのは、全ノズルに対して電極52が一つしか無く、複数のノズルからインク滴を吐出すると各ノズルの吐出状態が正常であるか否かを判定することができないためである。
以上のようにして、ノズル毎に正常状態であるか否かが判定される。
【0048】
ここで、検査処理前にS130のフラッシング処理によって図1上段のノズル233,234のような不安定状態のノズルが正常状態に回復するので、ノズル検査後にメンテナンスされない不安定状態のノズルが減る。また、図1上段のノズル231のような目詰まり状態のノズルも正常状態に回復することがあるので、総合的に見てクリーニング等のメンテナンス処理が少なくなり、インクの消費量が少なくなる。むろん、図1中段のノズル232のようにフラッシング処理後に目詰まり状態のノズルが残っていれば、クリーニング等のメンテナンス処理が実行され、ノズルが正常状態に回復する。
【0049】
上述したノズル検査処理は、インクカートリッジからのインクの初期充填時、非印刷時の所定期間毎、マニュアルクリーニング処理の操作入力の受付時、印刷処理の継続時、等の様々な場面に適用することができる。
【0050】
図9は、印刷処理の途中で上述したノズル検査処理を実行する一例をフローチャートにより示している。コントローラー70は、印刷実行命令とともに印刷データをホスト装置10から受け取ると(S202)、この印刷データに応じてプリンター機構21や紙送り機構31を駆動して印刷処理を実行する(S204)。
コントローラー70は、印刷を開始してから所定の時間経過後に印刷処理を一時中断し、上述したノズル検査処理を実行する(S206)。このノズル検査処理は、印刷ヘッド24をホームポジションへ移動させ、気泡除去フラッシング用の駆動パルス(P1)を繰り返し駆動素子48に供給させてフラッシング処理を行ってから検査処理を実行する「気泡除去フラッシング+ノズル検査処理」を行うものである。S208では、ドット抜けを検出したか否かを判断する。ドット抜けが検出されなかった場合、コントローラー70は、処理をS204に戻し、引き続き印刷処理を実行する。一方、ドット抜けが検出された場合、図7のS114でクリーニング等のメンテナンス処理が行われており、コントローラー70は、処理をS206に戻し、再び「気泡除去フラッシング+ノズル検査処理」を実行する。
【0051】
最初にS206の「気泡除去フラッシング+ノズル検査処理」が行われる時、フラッシング処理が行われてから、ノズル検査部U1による検査処理が実行される。すなわち、最初にノズル23からインクFL3を吐出して検査処理を実行する時にも、直前にフラッシング処理が行われる。
【0052】
図14は、比較例に係る印刷実行時の処理をフローチャートにより示している。本比較例のコントローラーは、印刷実行命令とともに印刷データをホスト装置10から受け取ると(S902)、この印刷データに応じてプリンター機構や紙送り機構を駆動して印刷処理を実行する(S904)。このコントローラーは、印刷を開始してから所定の時間経過後に印刷処理を一時中断し、フラッシング処理を伴わない「フラッシング無しノズル検査処理」を実行する(S906)。この「フラッシング無しノズル検査処理」は、例えば、図7のS102〜S104及び図8のS132〜S144の処理とすることができる。S908では、ドット抜けを検出したか否かを判断する。ドット抜けが検出されなかった場合、コントローラーは、処理をS904に戻し、引き続き印刷処理を実行する。一方、ドット抜けが検出された場合、ここで初めて気泡除去フラッシングを行い(S910)、処理をS906に戻して再びノズル検査処理を実行する。
【0053】
比較例の場合、最初にS906のノズル検査処理が行われる時、図1上段で示したノズル233,234のように不安定状態のノズルがあると、不安定状態のノズルについて正常状態であると判定されることがある。この場合、不安定状態のノズルが印刷に使用され、不安定状態のノズルから吐出されるインク滴のドットが印刷画質を低下させることがある。
【0054】
図9で示した態様は、ノズル検査の直前にフラッシング処理が行われるので、不安定状態のノズルが正常状態に回復する。従って、フラッシング処理後のノズル検査では、図1下段で例示したように、不安定状態であったノズルが正常状態と判定されても実際に正常状態に変わっていることになり、ノズル検査後にメンテナンスされない不安定状態のノズルが減る。なお、印刷データが取得されてから1回目の検査処理の場合と、再度実行される検査処理の場合とで、フラッシング処理を終了してから検査処理を開始するまでの時間が等しい。
以上より、本技術は、最初から検査処理の直前にフラッシング処理を実行する側面を有する。また、本技術は、検査処理の前には必ずフラッシング処理を実行する側面、ノズル検査処理の一環としてフラッシング処理を実行する側面、ノズル検査処理としてフラッシング処理と検査処理とを一連の動作として実行する側面、検査処理を実行する所定時間前にフラッシング処理を実行する側面、等を有する。
【0055】
以上説明したように、本態様は、フラッシング処理により不安定状態のノズルを正常状態にすることができるので、ノズル検査後にメンテナンスされずに印刷に使用される不安定状態のノズルを減らすことができ、印刷画質の低下を抑制することができる。
【0056】
(6)第二のフラッシング+ノズル判定処理:
上述した第一のフラッシング+ノズル判定処理は、図10(a)で示したように、フラッシング処理を終了してから検査処理を開始するまでの時間TInがノズル毎に異なっていた。しかし、フラッシング処理が終了してからのインク増粘の違いによる吐出状態への影響を少なくするためには、図10(b)〜(d)に例示するように時間TInを均等にするのが好ましい。
【0057】
図10(b)は、ノズル検査部U1に電極52が一つしか設けられていない場合にノズル23のそれぞれについて時間TInがTI0と均等にされているシーケンス例を示している。この場合、あるノズルについてフラッシングのためにインクFL2を吐出すると、この吐出が電圧変化として電圧検出回路56に検出されてしまう。従って、同時に別のノズルについてノズル検査のためにインクFL3を吐出すると、インクFL2の吐出による電圧変化のために当該別のノズルが正常状態であるか否かを判定することができない。そこで、全180ノズルについてインクFL2を吐出した後に最初の第1ノズルのノズル判定処理(検査処理)を開始している。
【0058】
第二のフラッシング+ノズル判定処理は、図8で示したS130のフラッシング処理を変更するだけで図8のフローに従って行うことができる。すなわち、S130において第1ノズルから第180ノズルまで各ノズルの検査時間Tcずつ順にインクの吐出開始を遅らせ、ノズル判定処理において第1ノズルから第180ノズルまで各ノズルの検査時間Tcずつ順にインクの吐出開始を遅らせるとよい。これにより、フラッシング処理終了後から検査処理が実行されるまでの時間TInが各ノズル均等にされる。従って、本態様は、ノズル検査後にメンテナンスされない不安定状態のノズル23を減らす好適な構成を提供することができる。
【0059】
(7)第三のフラッシング+ノズル判定処理:
ノズル毎に電極52を設ける等、電極52を増やしてフラッシング処理と検査処理とを並行して行うことができると、フラッシング処理を終了してから検査処理を開始するまでの時間TInを短くすることができる。
【0060】
図10(c)は、ノズル毎に電極52が設けられている場合にノズル23のそれぞれについて時間TInが均等にされているシーケンス例を示している。例えば、第1ノズルのノズル判定処理(検査処理)と第4ノズルのフラッシング処理とが並行して実行される。この場合、第1ノズルが本発明にいう第一のノズルに相当し、第4ノズルが本発明にいう第二のノズルに相当する。このように、あるノズルについての検査処理と別のノズルについてのフラッシング処理とが並行して実行されると、ノズル検査を迅速に行うことができる。
【0061】
また、ノズル毎に電極52が設けられていなくても、ノズル検査部U1に複数の電極52が設けられていれば、あるノズルについては第一の電極を用いたフラッシング処理を行うのと同時に別のノズルについては第二の電極を用いた検査処理を行うことができる。
【0062】
図11は、ノズル列(ノズル群)43単位でキャップ41が分割された変形例を示している。このキャップ41は、ノズル列43C,43M,43Y,43Kにそれぞれ対向する分割キャップ41C,41M,41Y,41Kを備えている。従って、ノズル列43C,43M,43Y,43Kは、クリーニング等のメンテナンスの実行単位とされている。
【0063】
分割キャップ41C,41M,41Y,41Kの内部には、それぞれ電極52C,52M,52Y,52Kが設けられている。ノズル検査部U1には、電極52C,52M,52Y,52Kと電圧検出回路56とに介装されたスイッチSW2が設けられている。このスイッチSW2は、コントローラー70からの指示に従って、電圧検出回路56に接続する電極を52C,52M,52Y,52Kの中から一つ選択する。例えば、スイッチSW2が電極52Kに切り替えられると、ノズル列43Kのノズル23Kから吐出されるインク滴による電圧変化ΔV1が検出され、ノズル列43C,43M,43Yのノズル23C,23M,23Yからインク滴が吐出されても電圧変化として検出されない。従って、ノズル列43C,43M,43Yのノズル23C,23M,23Yの少なくとも一部についてフラッシング処理を行いながらノズル列43Kのノズル23Kについて検査処理を行うことができる。この場合、ノズル列43Kが本発明にいう第一のノズル群に相当し、ノズル23Kが第一のノズル群に含まれる第一のノズルに相当し、ノズル列43C,43M,43Yが本発明にいう第二のノズル群に相当し、ノズル23C,23M,23Yが第二のノズル群に相当する第二のノズルに相当する。
【0064】
図12は、第一のノズル群に含まれる第一のノズルについての検査処理と第二のノズル群に含まれる第二のノズルについてのフラッシング処理とを並行して実行する第三のフラッシング+ノズル判定処理をフローチャートにより示している。本処理は、全ノズル列43C,43M,43Y,43Kを対象として行われる。
第三のフラッシング+ノズル判定処理が開始すると、コントローラー70は、判定対象ノズルの設定回数を表すカウンターnをRAM74に設け、このカウンターnに1を代入する(S302)。S304では、Kの第nノズルの駆動素子48に気泡除去フラッシング用の駆動パルス(P1)を繰り返し供給させる制御を行い、Kの第nノズルからインクFL2を吐出するフラッシング処理を実行する。S306では、Kの第nノズルのフラッシング処理開始から検査時間Tcの後に、同様の駆動パルスを供給させて、Cの第nノズルからインクFL2を吐出するフラッシング処理を実行する。S308では、Cの第nノズルのフラッシング処理開始から検査時間Tcの後に、同様の駆動パルスを供給させて、Mの第nノズルからインクFL2を吐出するフラッシング処理を実行する。S310では、Mの第nノズルのフラッシング処理開始から検査時間Tcの後に、同様の駆動パルスを供給させて、Yの第nノズルからインクFL2を吐出するフラッシング処理を実行する。
【0065】
S312では、Kの第nノズルのフラッシング処理が終了するまで待機する。S314では、フラッシング処理を終了してから検査処理を開始するまでの時間TI0の後に、Kの第nノズルから所定ショット数のインクFL3を吐出する検査処理を実行する。S316では、判定信号Voutの状態がL(ΔV1がVref以下)であればKの第nノズルを正常状態でないノズルとして登録する。S318では、Kの第nノズルの検査処理開始から検査時間Tcの後に、Cの第nノズルから所定ショット数のインクFL3を吐出する検査処理を実行する。S320では、判定信号Voutの状態がLであればCの第nノズルを正常状態でないノズルとして登録する。S322では、Cの第nノズルの検査処理開始から検査時間Tcの後に、Mの第nノズルから所定ショット数のインクFL3を吐出する検査処理を実行する。S324では、判定信号Voutの状態がLであればMの第nノズルを正常状態でないノズルとして登録する。S326では、Mの第nノズルの検査処理開始から検査時間Tcの後に、Yの第nノズルから所定ショット数のインクFL3を吐出する検査処理を実行する。S328では、判定信号Voutの状態がLであればYの第nノズルを正常状態でないノズルとして登録する。
コントローラー70は、S304〜S328の処理をNref回実行し(S330〜S332)、第三のフラッシング+ノズル判定処理を終了させる。
【0066】
以上の処理により、例えば、ノズル23Kについての検査処理とノズル23C,23M,23Yについてのフラッシング処理とを並行して実行可能であり、ノズル23Cについての検査処理とノズル23M,23Yについてのフラッシング処理とを並行して実行可能であり、ノズル23Mについての検査処理とノズル23Yについてのフラッシング処理とを並行して実行可能である。従って、本態様は、ノズル検査を迅速に行うことができる。
むろん、電圧検出回路56もノズル列毎に設けると、ノズル列毎に独立してフラッシング+ノズル判定処理を行うことができる。
【0067】
(8)第四のフラッシング+ノズル判定処理:
図10(d)は、ノズル検査部U1に電極52が一つしか設けられていない場合にフラッシング処理を終了してから検査処理を開始するまでの時間TI0を短くするシーケンス例を示している。例えば、第1ノズルについて「フラッシング+ノズル判定処理」が終了した後に第2ノズルについて「フラッシング+ノズル判定処理」を実行する。この場合、第1ノズルが本発明にいう第一のノズルに相当し、第2ノズルが本発明にいう第二のノズルに相当する。
【0068】
図13は、時間TI0を短くする第四のフラッシング+ノズル判定処理をフローチャートにより示している。本処理は、図8で示した処理からS130が削除されS150が追加されている。
第四のフラッシング+ノズル判定処理が開始すると、コントローラー70は、判定対象ノズルの設定回数を表すカウンターnをRAM74に設け、このカウンターnに1を代入する(S132)。次に、第nノズルの駆動素子48に気泡除去フラッシング用の駆動パルス(P1)を繰り返し供給させる制御を行い、第nノズルからインクFL2を吐出するフラッシング処理を実行する(S150)。その後、第nノズルから所定ショット数のインクFL3が吐出されるように印刷ヘッド24を制御し(S134)、判定信号Voutの状態がLであれば第nノズルを正常状態でないノズルとして登録する(S136〜S140)。コントローラー70は、S150,S134〜S140の処理をNref回実行し(S142〜S144)、第四のフラッシング+ノズル判定処理を終了させる。
【0069】
以上の処理により、第一のノズルについてフラッシング処理と検査処理との一連の処理が終わった後に第二のノズルについてフラッシング処理と検査処理との一連の処理が行われる。従って、本態様は、ノズル検査後にメンテナンスされない不安定状態のノズルを減らす好適な構成を提供することができる。
【0070】
(9)変形例:
上述した実施形態は、以下のような形態に変更することもできる。
ノズル検査はホームポジション以外の領域で行われてもよく、この領域に電極52を設けてもよい。
電気的変化を検出する電気的変化検出手段は、ノズル23から吐出される流体による電流変化を検出する回路等で構成されてもよい。
【0071】
上述した処理は、ホスト装置10等、プリンターに接続される外部装置で行われてもよい。この場合、外部装置にノズル検査装置が設けられ、プリンターと外部装置とに跨って流体吐出装置が設けられる。むろん、プリンターと外部装置とが協働して上述した処理を行ってもよい。この場合、プリンターと外部装置とに跨ってノズル検査装置及び流体吐出装置が設けられる。すなわち、プリンターと外部装置を含むシステムで本発明の流体吐出装置を構成してもよい。
上述した処理の各ステップの順番は、適宜、変更可能である。例えば、図7のノズル検査処理において、S114のメンテナンス処理の前にS116のカウンターCの加算処理を行ってもよい。
【0072】
上述した実施形態ではノズルが正常状態であるか否かという二者択一の検出を行ったが、ノズルが正常状態と目詰まり状態と不安定状態のいずれかであるかを検出する等、3以上の状態を検出してもよい。
電圧検出回路56で検出される電圧変化ΔV1の値を読み取り可能なコントローラーを用いる場合も、上述した処理を行うことにより、ノズル23の状態が正常であるか否かを判定することができる。すなわち、本態様は、コントローラーが電圧変化の値を読み取ることができるか否かにかかわらず実施可能であるという、良好な汎用性を有する。
【0073】
印刷装置は、カラーのインクジェット式プリンターの他、単色機、ドットインパクト式プリンター、レーザープリンター、スキャナーや測色機といった読取手段を備える複合機、記録媒体の幅方向一杯に長く形成された印刷ヘッドに対して記録媒体を搬送して印刷を行うラインプリンター、等でもよい。記録媒体は、紙の他、樹脂シート、金属製フィルム、布、フィルム基板、樹脂基板、半導体ウェハ、光ディスクや磁気ディスクといった記憶媒体、等でもよい。記録媒体の形状は、カットシートの他、長尺状、立体形状、等でもよい。
【0074】
本発明を適用可能な流体吐出装置は、プリンターの他、微小量の液滴を噴射(吐出)する液体吐出ヘッド等を備える液体吐出装置等、インク以外の流体を吐出する装置でもよい。ここでいう液滴は、液体吐出装置から吐出される液体の状態を言い、粒状、涙状、糸状に尾を引くもの等を含まれる。ここでいう液体は、液体吐出装置が吐出させることができるような材料であればよく、例えば、物質が液相であるときの状態のものとして、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、等が含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子といった固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたもの等が含まれる。インクや液晶等は、液体の代表的な例である。前記インクは、一般的な水性インク及び油性インク、並びに、ジェルインク、ホットメルトインク、等の各種液体組成物を包含するものとする。液体吐出装置には、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造等に用いられる電極材や色材といった材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を吐出する装置が含まれる。また、液体吐出装置には、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を吐出する装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する装置、捺染装置、マイクロディスペンサ、時計やカメラといった精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)等を形成するために紫外線硬化樹脂といった透明樹脂液を基板上に吐出する装置、基板等をエッチングするために酸やアルカリといったエッチング液を吐出する装置、等が含まれる。
また、流体は、非気体の流体が好ましいものの、トナー等の粉粒体でもよい。
【0075】
なお、一つのノズルを対象としてフラッシング処理を行ってから検査処理を実行する態様も、本発明に含まれる。
むろん、従属請求項に係る構成要件を有しておらず独立請求項に係る構成要件のみからなる装置、システム、方法、プログラム、等でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
【0076】
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、ノズル検査後にメンテナンスされない不安定状態のノズルを減らす技術等を提供することができる。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりして本発明を実施することも可能であり、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりして本発明を実施することも可能である。従って、本発明は、上述した実施形態や変形例に限られず、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0077】
10…ホスト装置、20…プリンター、21…プリンター機構、22…キャリッジ、23,23C,23M,23Y,23K…ノズル、24…印刷ヘッド(吐出ヘッド)、24t…温度検出部、27…ノズルプレート、27a…ノズル面、40…キャッピング装置、41…キャップ、41C,41M,41Y,41K…分割キャップ、43,43C,43M,43Y,43K…ノズル列(ノズル群)、48…駆動素子、50…ノズル検査装置、52,52C,52M,52Y,52K…電極、54…電圧印加回路、56…電圧検出回路、57…比較回路、60…原信号生成回路、70…コントローラー、80…メカフレーム、90…昇降装置、AR1…気泡、FL1,FL2,FL3…インク(流体)、M1…記録媒体、ME1…メニスカス、P1…フラッシング用駆動パルス、P2…記録用駆動パルス、T1…フラッシング用駆動パルスの周期、T2…記録用駆動パルスの周期、TIn…フラッシング処理を終了してから検査処理を開始するまでの時間、Tc…検査時間、U1…ノズル検査部、U2…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから流体を吐出可能な吐出ヘッドと、
前記ノズルからの流体の吐出状態を検査するノズル検査部と、
前記ノズルから流体を吐出して前記ノズル検査部による検査処理を実行する際、前記ノズルからフラッシングのために流体を吐出するフラッシング処理を行ってから検査処理を実行する制御部と、
を備える流体吐出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記検査処理によりドット抜けが検出された場合に、前記フラッシング処理及び前記検査処理を再度実行し、
印刷データが取得されてから1回目の前記検査処理の場合と、再度実行される前記検査処理の場合とで、前記フラッシング処理を終了してから前記検査処理を開始するまでの時間が等しい、請求項1に記載の流体吐出装置。
【請求項3】
前記吐出ヘッドは、前記ノズルを複数有し、
前記ノズルのそれぞれについて前記フラッシング処理を終了してから前記検査処理を開始するまでの時間が均等にされている、請求項1又は請求項2に記載の流体吐出装置。
【請求項4】
前記ノズルに少なくとも第一のノズルと第二のノズルとが含まれ、
前記制御部は、前記第一のノズルについての前記検査処理と前記第二のノズルについての前記フラッシング処理とを並行して実行する、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の流体吐出装置。
【請求項5】
前記吐出ヘッドは、メンテナンスの実行単位とされた第一及び第二のノズル群を少なくとも含み、
前記制御部は、前記第一のノズル群に含まれる前記第一のノズルについての前記検査処理と前記第二のノズル群に含まれる前記第二のノズルについての前記フラッシング処理とを並行して実行する、請求項4に記載の流体吐出装置。
【請求項6】
前記ノズルに少なくとも第一のノズルと第二のノズルとが含まれ、
前記制御部は、前記第一のノズルについて前記フラッシング処理を行ってから前記検査処理を実行した後に前記第二のノズルについて前記フラッシング処理を行ってから前記検査処理を実行する、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の流体吐出装置。
【請求項7】
吐出ヘッドに設けられたノズルから流体を吐出し、前記ノズルからの流体の吐出状態を検査するノズル検査方法であって、
前記ノズルから流体を吐出して検査処理を実行する際、前記ノズルからフラッシングのために流体を吐出するフラッシング処理を行ってから検査処理を実行する、ノズル検査方法。
【請求項8】
吐出ヘッドに設けられたノズルから流体を吐出し、前記ノズルからの流体の吐出状態を検査するためのノズル検査プログラムであって、
前記ノズルから流体を吐出して検査処理を実行する際、前記ノズルからフラッシングのために流体を吐出するフラッシング処理を行ってから検査処理を実行する機能をコンピューターに実現させる、ノズル検査プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−236300(P2012−236300A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105928(P2011−105928)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】