説明

流体噴射装置及び流体噴射装置のクリーニング方法

【課題】吸引動作不良を防止しつつクリーニング処理と記録処理とを迅速に切り替えることができる流体噴射装置及び流体噴射装置のクリーニング方法を提供する。
【解決手段】インクを噴射する複数のノズル17が設けられたノズル形成面21Aからインクを記録用紙Pに噴射する記録ヘッド6を備えるインクジェットプリンター1であって、記録ヘッド6と対向して配置され、複数のノズル17を囲むようにノズル形成面21Aと当接可能なリップ部71Aを備えるキャップ部材71と、記録用紙Pを搬送する搬送路の一部を構成すると共に記録ヘッド6とキャップ部材71との間を遮る遮蔽位置と、上記遮蔽位置から退避する非遮蔽位置との間を移動自在なプラテン81と、上記遮蔽位置に位置するプラテン81にリップ部71Aを当接させるキャップ部材移動装置71Bとを有するという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置及び流体噴射装置のクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体に流体を噴射する流体噴射装置として、例えば下記特許文献1及び特許文献2に記載のインクジェットプリンターが知られている。
特許文献1におけるインクジェットプリンターは、複数のインクジェットヘッドをメンテナンスすべく、インクジェットヘッドの下方に配置されている紙葉類を支持する無端状の搬送ベルトを弛ませてインクジェットヘッドと搬送ベルトとの間を離間させた後、メンテナンスユニットを上昇させてインクジェットヘッドのノズル面にキャップを密着させて所望のクリーニング処理を行う構成となっている。
特許文献2におけるインクジェットプリンターは、キャップ内の残存インクを効率よく吸引除去すべく、インクジェットヘッドからキャップを取り外す際に、キャップを斜めの姿勢で離間させ、離間後のキャップの姿勢を吸引口が設けられる側を下方に下げる姿勢とする構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−321239号公報
【特許文献2】特開2003−237092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1において、無端状の搬送ベルトは、そのつなぎ目の強度の確保が難しく、小さい角度で湾曲することができないため、必然的に搬送ベルト用のローラの径が大きくなり、搬送ベルトの下方に配置されたメンテナンスユニットがインクジェットヘッドから離れてしまう。したがって、上記のような大掛かりな機構が必要とされ、メンテナンスユニットの昇降動作に時間がかかるという問題がある。
また、特許文献2においては、大気開放中の吸引によりキャップ内のインクを除去するため、残存インクを十分に除去できないという問題がある。特に、キャップ内にスポンジ等のインクを吸収する吸収体が設けられている場合は、インクが吸収体に保持されるため吸引がし難くなり、残存インクが徐々に吸収体に堆積してしまう問題がある。
さらに、残存したインクが、メンテナンス時以外の待機中において時間の経過と共に増粘し、キャップ内壁や吸収体に付着して吸引動作不良を引き起こす問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、吸引動作不良を防止しつつクリーニング処理と記録処理とを迅速に切り替えることができる流体噴射装置及び流体噴射装置のクリーニング方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、流体を噴射する複数のノズルが設けられた噴射面から上記流体を媒体に噴射する流体噴射ヘッドを備える流体噴射装置であって、上記流体噴射ヘッドと対向して配置され、上記複数のノズルを囲むように上記噴射面と当接可能な当接部を備えるキャップ部材と、上記媒体を搬送する搬送路の一部を構成すると共に上記流体噴射ヘッドと上記キャップ部材との間を遮る遮蔽位置と、上記遮蔽位置から退避する非遮蔽位置との間を移動自在な媒体支持部材と、上記遮蔽位置に位置する上記媒体支持部材に上記当接部を当接させるキャップ部材当接装置とを有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、対向する流体噴射ヘッドとキャップ部材との間に配置された媒体支持部材を、遮蔽位置から非遮蔽位置に移動させることによりキャップ部材を露出させ、流体噴射ヘッドとキャップ部材とを直接対向させることが可能となり、当接部を媒体支持部材に当接させることで、キャップ部材のための特別な蓋部材を別途設けずにキャップ部材内の残存流体の増粘を防止することができる。また、紙屑や浮遊ゴミ等が待機中のキャップ部材内に侵入することを防止することができる。
【0007】
また、本発明においては、上記媒体支持部材は、上記流体噴射ヘッドが設けられる側に上記媒体を支持する支持部を有する略板形状であるという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、流体噴射ヘッドとキャップ部材との間の距離を短くすることができるため、キャップ部材を流体噴射ヘッドに当接させる時間の短縮、あるいはキャップ部材を動かさずにフラッシング動作を行うことが可能となる。
【0008】
また、本発明においては、上記キャップ部材当接装置は、上記キャップ部材と上記媒体支持部材との間において気密室を形成するように、上記当接部を上記媒体支持部材に当接させるという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、キャップ部材と媒体支持部材との間に気密室が形成されるため、残存流体の増粘がより確実に防止される。
【0009】
また、本発明においては、上記キャップ部材を介して吸引動作を行う吸引装置を有し、上記吸引装置は、上記当接部と上記媒体支持部材とが当接した状態で上記吸引動作を行うという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、当接部と媒体支持部材とが当接した状態で吸引動作を行うとキャップ部材と媒体支持部材との間が負圧状態となるため、大気開放時と比べて残存流体を著しく減少させることができる。
【0010】
また、本発明においては、上記媒体支持部材の移動方向は、上記媒体の搬送方向であるという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、キャップ部材の短辺方向に媒体支持部材を移動させることが可能となるため、遮蔽位置と非遮蔽位置との間の移動距離を短くすることができる。
【0011】
また、本発明においては、上記媒体支持部材は、第1媒体支持部及び第2媒体支持部を有し、上記第1媒体支持部及び第2媒体支持部は、互いに隣り合う上記遮蔽位置と、互いに離間する上記非遮蔽位置との間を、互いに逆方向で同時に移動するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、一方の領域でのキャップ部材を遮蔽する占有面積を低減でき、遮蔽位置と非遮蔽位置との間の移動に要する距離及び時間の短縮を図ることが可能となる。
【0012】
また、本発明においては、上記流体噴射ヘッドと、上記キャップ部材と、上記媒体支持部材と、上記キャップ部材当接装置とを有するユニットを上記媒体の搬送方向に沿って複数備え、上記媒体の位置に応じて各ユニットの上記媒体支持部材の移動を上記搬送方向に沿って順次実行させる制御装置を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、媒体に対する記録処理を停止あるいは中断することなくクリーニング処理を行うことが可能となる。例えば、一方の媒体支持部材上から媒体が移動し終えたら、その媒体支持部材を遮蔽位置から非遮蔽位置へ移動させ、フラッシング動作を行う。このとき他方(媒体の搬送方向前方側)の媒体支持部材上には媒体が存在するので、流体噴射ヘッドで媒体への噴射を行う。このため、一方の流体噴射ヘッドでフラッシング動作を行いつつ他方の流体噴射ヘッドで媒体への噴射を行うことができる。
【0013】
また、本発明においては、先に記載の流体噴射装置のクリーニング方法であって、上記媒体支持部材を上記遮蔽位置から上記非遮蔽位置に移動させる第1移動工程と、上記第1移動工程の後に、上記流体噴射ヘッドから上記キャップ部材に上記流体を噴射するフラッシング動作を含むクリーニング工程と、上記クリーニング工程の後に、上記媒体支持部材を上記非遮蔽位置から上記遮蔽位置に移動させる第2移動工程と、上記第2移動工程の後に、上記当接部を上記媒体支持部材に当接させる当接工程とを有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、対向する流体噴射ヘッドとキャップ部材との間に配置された媒体支持部材を、遮蔽位置から非遮蔽位置に移動させることによりキャップ部材を露出させ、流体噴射ヘッドとキャップ部材とを直接対向させることにより、流体噴射ヘッドからキャップ部材へのフラッシング動作を含むクリーニング処理が実行可能となる。上記工程の後、当接部を媒体支持部材に当接させることで、キャップ部材のための特別な蓋部材を別途設けずともキャップ部材内の残存流体の増粘を防止することができる。さらに、紙屑や浮遊ゴミ等が待機中のキャップ部材内に侵入することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態におけるインクジェットプリンターの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるインクジェットプリンターの要部構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるインクジェットプリンターの要部構成を示す断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態におけるインクジェットプリンターの要部構成を示す平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態におけるノズル形成面におけるノズルの配列状態を示す図である
【図6】本発明の第1実施形態における記録ヘッドの内部構成を示す部分断面図である
【図7】本発明の第1実施形態におけるクリーニング処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1実施形態におけるインクジェットプリンターの動作を説明する図である。
【図9】本発明の第1実施形態における吸引工程を説明する図である。
【図10】本発明の第2実施形態におけるインクジェットプリンターの要部構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の第3実施形態におけるプラテンの構成を示す平面図である。
【図12】本発明の第4実施形態におけるインクジェットプリンター1の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る流体噴射装置の各実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、本発明に係る流体噴射装置として、インクジェット式プリンター(以下、インクジェットプリンターと称する)を例示する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態におけるインクジェットプリンター1の概略構成を示すブロック図である。
図2は、本発明の第1実施形態におけるインクジェットプリンター1の要部構成を示す斜視図である。
図3は、本発明の第1実施形態におけるインクジェットプリンター1の要部構成を示す断面図である。
図4は、本発明の第1実施形態におけるインクジェットプリンター1の要部構成を示す平面図である。
なお、図2〜図4に示すように、記録用紙(媒体)Pの搬送方向をX方向と、該搬送方向と直交する搬送路幅方向をY方向と、X方向及びY方向と直交する高さ方向をZ方向と称して以下説明する場合がある。
【0017】
インクジェットプリンター1は、記録用紙Pにインク(流体)を噴射することで記録用紙に所定の情報や画像を印字する記録処理を行うものである。このインクジェットプリンター1は、図1に示すように入力装置2と、記憶装置3と、制御装置4と、記録用紙搬送装置5と、記録ヘッド(流体噴射ヘッド)6と、キャッピング装置7と、プラテン移動装置8とを有する。
【0018】
入力装置2は、制御装置4に外部からの記録処理に係る各種指令やデータを入力するものであり、使用者が操作する操作パネルや、外部から印字データ等を入力する通信装置等を含む。
記憶装置3は、記録処理に係る各種構成機器の動作プログラムや入力装置2から入力されるデータを記憶するものである。
制御装置4は、各種構成機器の動作を電気的に制御するものであり、入力装置2、記憶装置3、記録用紙搬送装置5、記録ヘッド6、キャッピング装置7、プラテン移動装置8との間でデータ授受を行う各種入出力インターフェイス回路や、該データに基づき所定の演算処理等を行うCPU等を有する。
【0019】
記録用紙搬送装置5は、図3に示すように、X方向に延びる搬送路に沿って記録用紙Pを搬送する複数の搬送ローラ51を有する。搬送ローラ51は、Y方向に延びる回転軸周りに回転することにより記録用紙Pを+X方向に移動させる構成となっている。
【0020】
記録ヘッド6は、インクを噴射する複数のノズル17が設けられたノズル形成面(噴射面)21Aを有する。この記録ヘッド6は、ノズル形成面21Aが−Z方向に向くように配置されており、本実施形態では、搬送方向において所定間隔を空けて計2つ(記録ヘッド6a,6b)が設けられている。
【0021】
ここで、図5及び図6を参照して記録ヘッド6の構成について説明する。
図5は、本発明の第1実施形態におけるノズル形成面21Aにおけるノズル17の配列状態を示す図である。
図6は、本発明の第1実施形態における記録ヘッド6の内部構成を示す部分断面図である。
【0022】
図5に示すように、ノズル17はノズル形成面21Aにおいて搬送路の幅方向に沿って複数設けられ、ノズル列16を形成する。このノズル列16は、搬送方向に沿って計5列設けられる。ノズル列16Y、16M、16C、16K1、16K2は、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K1)、顔料ブラック(K2)の各色に応じたインクを噴射する構成となっている(図4参照)。
なお、記録ヘッド6同士をノズル17間のピッチの半分だけY方向ずらして配置してもよい。これにより、記録用紙Pに対して印字する解像度を向上させることができる。
【0023】
図6に示すように、記録ヘッド6は、ヘッド本体18と、ヘッド本体18に接続された流路形成ユニット22とを備えている。流路形成ユニット22は、振動板19と、流路基板20と、ノズル基板21とを備えると共に、共通インク室29と、インク供給口30と、圧力室31とを形成する。さらに、流路形成ユニット22は、ダイヤフラム部として機能する島部32と、共通インク室29内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部33とを備える。ヘッド本体18には、固定部材26と共に駆動ユニット24を収容する収容空間23と、インクを流路形成ユニット22に案内する内部流路28とが形成される。
【0024】
上記構成の記録ヘッド6によれば、ケーブル27を介して駆動ユニット24に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮する。これにより、振動板19がキャビティに接近する方向及び離れる方向に変形(移動)する。このため、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズル17から、インクが噴射される。
【0025】
図3に戻り、記録用紙Pを搬送する搬送路の一部を構成するプラテン(媒体支持部材)81(81a,81b)は、プラテン移動装置8により、記録ヘッド6とキャップ部材71との間を遮る遮蔽位置と該遮蔽位置から退避する非遮蔽位置との間を、搬送方向(X方向)に沿って往復移動自在な構成となっている。プラテン81は、搬送方向に延びる略板形状を有し、記録ヘッド6が設けられる表面(支持部)81A側で記録用紙Pを支持する。なお、プラテン81の表面81Aには、記録用紙Pを平らに支持するためのリブ(凹凸)を有していても良い。
プラテン移動装置8は、プラテン81のキャップ部材71が設けられる側(裏面81B側)に設けられた不図示のラックと、該ラックと噛合可能で、搬送路の幅方向に延びる回転軸周りに回転自在なピニオン82とを有する。プラテン移動装置8は、ピニオン82を回転させることにより、プラテン81を遮蔽位置と非遮蔽位置との間を移動させる構成となっている。なお、遮蔽位置においては、プラテン81a及びプラテン81bは互いの端部81Cを当接させて記録用紙Pを支持する連続的支持面を形成する構成となっている。
【0026】
キャッピング装置7は、各記録ヘッド6と対応して設けられており、キャップ部材71と、吸引ポンプ(吸引装置)72と、大気開放バルブ73と、廃インクタンク74とを備える。
キャップ部材71は、記録ヘッド6に対向する側が開口する略枡形状を有する(図2参照)。なお、キャップ部材71の開口縁部をリップ部(当接部)71Aと称する。リップ部71Aは、ゴム部材等の弾性部材から形成され、複数のノズル17を囲うようにノズル形成面21Aと当接可能な構成となっている。キャップ部材71の内には、インクを吸収するスポンジ等の吸収部材75が設けられている。このキャップ部材71は、キャップ部材移動装置(キャップ部材当接装置)71B(図2において不図示、図3参照)により、上下方向(Z方向)に移動可能な構成となっている。
【0027】
キャップ部材移動装置71Bは、制御装置4の制御の下にキャップ部材71を、プラテン81と所定距離を空けて離間する位置(図3に示す位置、以下、離間位置と称する)と、プラテン81の裏面21Bとリップ部71Aとが当接する位置(図8(a)及び図9に示す位置、以下、プラテン当接位置と称する)と、記録ヘッド6のノズル形成面21Aとリップ部71Aとが当接する位置(図8(c)に示す位置、以下、ノズル形成面当接位置と称する)との間を移動させる構成となっている。キャップ部材移動装置71Bの構成の一例としては、ラック・ピニオン機構やカム機構等の周知の構成を採用できる。
【0028】
吸引ポンプ72は、キャップ部材71の底部に接続された配管76に設けられ、キャップ部材71を介して吸引動作を行うものである。なお、キャップ部材71を当接位置に位置させ、記録ヘッド6とキャップ部材71との間に気密室を形成した後、吸引ポンプ72を駆動させて該気密室を負圧状態にし、各ノズル17から粘性が高くなったインクや付着したゴミ等を吸引してメニスカスを調整し、記録ヘッド6から正常にインクを噴射させる動作をインク吸引動作と呼ぶ。また、記録ヘッド6からキャップ部材71にインクを噴射させる動作をフラッシング動作と呼ぶ。このインク吸引動作とフラッシング動作を併せてクリーニング処理と呼ぶ。なお、吸引ポンプ72による吸引動作は、インク吸引動作のほかに、フラッシング動作によりキャップ部材71内に溜まったインクを廃インクタンク74に廃棄する動作も含む。
大気開放バルブ73は、上記気密室の負圧状態を解除するものであり、キャップ部材71の底部に接続された配管77に設けられる。
廃インクタンク74は、各配管76と接続され各キャップ部材71からのインクを貯溜する構成となっている。
【0029】
キャップ部材71の側部には、プラテン移動装置8による移動に伴って、プラテン81の裏面81Bを清掃する清掃部材9が設けられる。清掃部材9は、プラテン81の遮蔽位置から非遮蔽位置に移動する方向側のキャップ部材71の側部に設けられる。この清掃部材9は、キャップ部材71が離間位置にあるときにプラテン81の裏面21Bと当接可能な位置まで+Z方向に突出している。清掃部材9は、キャップ部材71がプラテン当接位置に位置するときに、キャップ部材71とプラテン81との間の密着不良を生じさせないように、Z方向に弾性変形が可能なゴムやスポンジ等、また、復元性を有する部材から構成されるのが望ましい。
【0030】
続いて、図7〜図9を参照して、上記構成のインクジェットプリンター1のクリーニング処理(クリーニング方法)について説明する。
図7は、本発明の第1実施形態におけるクリーニング処理を示すフローチャートである。
図8は、本発明の第1実施形態におけるインクジェットプリンター1の動作を説明する図である。
図9は、本発明の第1実施形態における吸引工程を説明する図である。
初期状態では、図8(a)に示すように、プラテン81は遮蔽位置に位置している。また、キャップ部材71は、プラテン当接位置に位置している。このとき、キャップ部材移動装置71Bは、キャップ部材71とプラテン81との間に気密室を形成するように、リップ部71Aをプラテン81の裏面81Bに当接させる。このため、キャップ部材71内のインクの増粘が抑制される。また、装置内に浮遊する紙屑やゴミ等がキャップ部材71内に侵入することが抑制される。なお、清掃部材9は、裏面81Bと当接してZ方向に弾性変形するため、キャップ部材71とプラテン81との間の密着性を阻害することはない。
この状態で、インクジェットプリンター1は、記録用紙Pを搬送し、記録ヘッド6からインクを噴射して記録処理を行う。インクジェットプリンター1は、所定の駆動時間毎あるいは印字枚数(例えば5〜10枚)毎に、記録ヘッド6のフラッシング動作を実施する。
【0031】
先ず、制御装置4は、キャップ部材移動装置71Bに駆動指令を与えて、キャップ部材71をプラテン当接位置から離間位置に移動させる(ステップS1:キャップ部材移動工程)。なお、キャップ部材71とプラテン81とが気密室を形成するように密着している場合は、大気開放バルブ73を開状態にした後に、キャップ部材71を移動させることが望ましい。
【0032】
次に、制御装置4は、プラテン移動装置8に駆動指令を与えて、プラテン81を遮蔽位置から非遮蔽位置に移動させる(ステップS2:第1移動工程)。
プラテン81の遮蔽位置から非遮蔽位置への移動に伴って、図8(b)に示すように、清掃部材9は、プラテン81と摺接し、裏面81Bに付着しているインクを清掃する(ステップS3:プラテン清掃工程)。すなわち、本実施形態では、残存インクの増粘を防止するためリップ部71Aをプラテン81に当接させることから、インクがプラテン81の裏面81Bを汚染する場合がある。また、このインクが外気に触れて固化するとキャップ部材71とプラテン81との間の密着性を阻害し、後述する吸引工程におけるキャップ部材71を介した吸引動作に影響をあたえる場合があるため、該プラテン清掃工程において裏面81Bに付着しているインクを除去する。
【0033】
上記工程で、プラテン81を移動させたことでキャップ部材71と記録ヘッド6とが直接対向した状態となる。このように、プラテン81がキャップ部材71上から完全に退避した状態となった後、制御装置4は、キャップ部材移動装置71Bに駆動指令を与えて、キャップ部材71を離間位置からノズル形成面当接位置に移動させる(ステップS4:キャップ部材移動工程)。キャップ部材71のリップ部71Aは、図8(c)に示すように、複数のノズル17を囲うようにノズル形成面21Aと当接する。
【0034】
次に、制御装置4は、記録ヘッド6からキャップ部材71へインクを吐出(噴射)するフラッシング動作を実行させる(ステップS5:クリーニング工程)。記録ヘッド6は、使用時間によってノズル17内のインク増粘、あるいはノズル17開口近傍へのゴミの付着によって吐出不良が生じてくるおそれがある。そのため、非記録処理時にノズル17からインクを予備噴射させて増粘したインクやゴミ等を排出させるフラッシング動作を行うことで、記録ヘッド6の噴射特性を維持或いは回復させる。
なお、ここで、キャップ部材71をノズル形成面当接位置に位置させ、記録ヘッド6とキャップ部材71との間に気密室を形成した後、吸引ポンプ72を駆動させて該気密室を負圧状態にし、各ノズル17から粘性が高くなったインクや付着したゴミ等を強制的に吸引するインク吸引動作を行ってもよい。
また、フラッシング動作は、キャップ部材71を記録ヘッド6に当接させず、キャップ部材を待機位置にて行っても良い。本実施形態のプラテン81は、記録用紙Pを支える作用とキャップ部材71を清掃する作用を持っているだけなので略板形状に薄くすることができ、キャップ部材71が待機位置にいても記録ヘッド6との隙間は大きくならず、フラッシング動作時に噴射されたインクがミスト化することがない。
【0035】
次に、制御装置4は、キャップ部材移動装置71Bに駆動指令を与えて、キャップ部材71をノズル形成面当接位置から離間位置に移動させる(ステップS6:キャップ部材移動工程)。そして、制御装置4は、プラテン移動装置8に駆動指令を与えて、図8(d)に示すように、プラテン81を非遮蔽位置から遮蔽位置に移動させる(ステップS7:第2移動工程)。
【0036】
次に、制御装置4は、キャップ部材移動装置71Bに駆動指令を与えて、キャップ部材71を離間位置からプラテン当接位置に移動させる(ステップS8:キャップ部材移動工程(当接工程))。このとき、キャップ部材移動装置71Bは、キャップ部材71とプラテン81との間に気密室を形成するように、リップ部71Aをプラテン81の裏面81Bに当接させる(図9参照)。なお、前工程で、リップ部71Aに付着していたインクが除去されるため、リップ部71Aと裏面81Bとの間における密着不良が解消され、後の工程の吸引動作を円滑に行わせることができる。
【0037】
次に、制御装置4は、大気開放バルブ73を閉状態にした後、吸引ポンプ72に駆動指令を与えて、キャップ部材71を介した吸引動作を行わせ、クリーニング工程にてキャップ部材71内に溜まったインク(吸収部材75に吸収されたインクを含む)を廃インクタンクに廃棄する(ステップS9:吸引工程)。吸引ポンプ72は、図9に示すように、リップ部71Aとプラテン81とが当接した気密状態で吸引動作(チョーク空吸引)を行うことによって、キャップ部材71とプラテン81との間を負圧状態とさせ、キャップ部材71内のインクを吸引し、さらには吸収部材75に吸収保持されているインクを搾り出すように吸引することが可能となる。このため、キャップ部材71内の残存インクを著しく減少させることができる。
【0038】
以上の工程が完了したら、インクジェットプリンター1は、再び記録用紙Pを搬送し、記録ヘッド6からインクを噴射して記録処理を行う。
【0039】
したがって、上述した第1実施形態によれば、インクを噴射する複数のノズル17が設けられたノズル形成面21Aからインクを記録用紙Pに噴射する記録ヘッド6を備えるインクジェットプリンター1であって、記録ヘッド6と対向して配置され、複数のノズル17を囲むようにノズル形成面21Aと当接可能なリップ部71Aを備えるキャップ部材71と、記録用紙Pを搬送する搬送路の一部を構成すると共に記録ヘッド6とキャップ部材71との間を遮る遮蔽位置と、上記遮蔽位置から退避する非遮蔽位置との間を移動自在なプラテン81と、上記遮蔽位置に位置するプラテン81にリップ部71Aを当接させるキャップ部材移動装置71Bとを有するという構成を採用することによって、対向する記録ヘッド6とキャップ部材71との間に配置されたプラテン81を、遮蔽位置から非遮蔽位置に移動させることによりキャップ部材71を露出させ、記録ヘッド6とキャップ部材71とを直接対向させることが可能となるため、記録ヘッド6とキャップ部材71との間の距離を短くすることができ、また、リップ部71Aをプラテン81に当接させることで、キャップ部材71のための特別な蓋部材を別途設けずにキャップ部材71内の残存インクの増粘を防止することができる。また、紙屑や浮遊ゴミ等が待機中のキャップ部材71内に侵入することを防止することができる。
したがって、第1実施形態によれば、吸引動作不良を防止しつつクリーニング処理と記録処理とを迅速に切り替えることができるインクジェットプリンター1が得られる。
【0040】
また、第1実施形態においては、プラテン81は、記録ヘッド6が設けられる側に記録用紙Pを支持する略板形状であるという構成を採用することによって、記録ヘッド6とキャップ部材71との間の距離を短くすることができるため、キャップ部材71を記録ヘッド6に当接させる時間の短縮、あるいはキャップ部材71を動かさずにフラッシング動作を行うことが可能となる。したがって、クリーニング処理と記録処理とを迅速に切り替えることができる効果がある。
【0041】
また、第1実施形態においては、キャップ部材移動装置71Bは、キャップ部材71とプラテン81との間において気密室を形成するように、リップ部71Aをプラテン81に当接させるという構成を採用することによって、残存インクの増粘をより確実に防止することができる。
【0042】
また、第1実施形態においては、キャップ部材71を介して吸引動作を行う吸引ポンプ72を有し、吸引ポンプ72は、リップ部71Aとプラテン81とが当接した状態で上記吸引動作を行うという構成を採用することによって、キャップ部材71とプラテン81との間を負圧状態とさせて残存インクを吸引することができるため、大気開放時と比べて残存インクを著しく減少させることができる。
【0043】
また、第1実施形態においては、キャップ部材71内には、インクを吸収可能な吸収部材75が設けられているという構成を採用することによって、キャップ部材71内に吸収部材75が設けられる場合であっても、リップ部71Aをプラテン81に当接させることで、キャップ部材71内の残存インクの増粘を防止することができる。また、リップ部71Aとプラテン81とが当接した状態で吸引動作を行うことによって、キャップ部材71とプラテン81との間が負圧状態となるため、吸収部材75に保持されているインクを搾り出すことが可能となり、残存インクを著しく減少させることができる。
【0044】
また、第1実施形態においては、キャップ部材71に設けられ、プラテン81の移動に伴ってプラテン81に摺接して清掃する清掃部材9を有するという構成を採用することによって、リップ部71Aをプラテン81に当接させるためにプラテン81がインクにより汚染される場合があるが、キャップ部材71に設けられた清掃部材9が上記移動に伴ってプラテン81のリップ部71Aに摺接するため、特別な移動機構を別途設けずにプラテン81に付着したインクを除去することが可能となる。また、インクを除去することで、リップ部71Aと裏面81Bとの間における密着不良が解消される。
【0045】
また、第1実施形態においては、プラテン81の移動方向は、記録用紙Pの搬送方向であるという構成を採用することによって、キャップ部材71の短辺方向にプラテン81を移動させることが可能となるため、遮蔽位置と非遮蔽位置との間の移動距離を短くすることができる。
【0046】
また、第1実施形態においては、先に記載のインクジェットプリンター1のクリーニング方法であって、プラテン81を上記遮蔽位置から上記非遮蔽位置に移動させる第1移動工程と、上記第1移動工程の後に、記録ヘッド6からキャップ部材71にインクを噴射するフラッシング動作を含むクリーニング工程と、上記クリーニング工程の後に、プラテン81を上記非遮蔽位置から上記遮蔽位置に移動させる第2移動工程と、上記第2移動工程の後に、リップ部71Aをプラテン81に当接させる当接工程とを有するという構成を採用することによって、対向する記録ヘッド6とキャップ部材71との間に配置されたプラテン81を、遮蔽位置から非遮蔽位置に移動させることによりキャップ部材71を露出させ、記録ヘッド6とキャップ部材71とを直接対向させることにより、記録ヘッド6からキャップ部材71へのフラッシング動作を含むクリーニング処理が実行可能となる。また、上記工程の後、リップ部71Aをプラテン81に当接させることで、キャップ部材71のための特別な蓋部材を別途設けずともキャップ部材71内の残存インクの増粘を防止することができる。さらに、紙屑や浮遊ゴミ等が待機中のキャップ部材71内に侵入することを防止することができる。
【0047】
また、第1実施形態においては、リップ部71Aとプラテン81とが当接した状態で、キャップ部材71を介した吸引動作を行う吸引工程を有するという構成を採用することによって、キャップ部材71とプラテン81との間を負圧状態とさせて残存インクを吸引することができるため、大気開放時と比べて残存インクを著しく減少させることができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、図10を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と構成を同じくする部分の説明は割愛することとする。
図10は、本発明の第2実施形態におけるインクジェットプリンター1の要部構成を示す斜視図である。
第2実施形態におけるインクジェットプリンター1は、プラテン81が搬送路の幅方向(Y方向)に移動する点で、上記実施形態と異なる。第2実施形態における清掃部材9は、プラテン81の−Y側の側部に設けられる。この構成によれば、プラテン移動装置8によって、プラテン81がY方向に往復移動することにより、清掃部材9がプラテン81の裏面81Bに摺接して清掃することとなる。また、上記実施形態と異なり清掃部材9の長さがリップ部71Aの短辺の長さ分で済むため、軽量化やコスト安に寄与することができる。
【0049】
(第3実施形態)
次に、図11を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態及び第2実施形態と構成を同じくする部分の説明は割愛することとする。
図11は、本発明の第3実施形態におけるプラテン81の構成を示す平面図である。
なお、図11(a)は、プラテン81aが遮蔽位置に位置するときを示し、図11(b)は、プラテン81aが非遮蔽位置に位置するときを示す。
第3実施形態におけるインクジェットプリンター1は、プラテン81が搬送路の幅方向において2つに分割され、それぞれが互いに隣り合う遮蔽位置と、互いに離間する非遮蔽位置との間を、互いに逆方向で同時に移動する点で、上記実施形態と異なる。第3実施形態における清掃部材9は、キャップ部材71のY方向両側の側部にそれぞれ設けられる。この構成によれば、プラテン移動装置8によって、プラテン(第1媒体支持部)81a1とプラテン(第2媒体支持部)81a2とがY方向に往復移動することにより、清掃部材9がプラテン81の裏面81Bに摺接して清掃することとなる。また、この構成によれば、一方の領域でのキャップ部材71を遮蔽する占有面積を低減でき、遮蔽位置と非遮蔽位置との間の移動に要する距離が2分の1となるため、移動時間が短縮され、上記実施形態よりも記録処理及びクリーニング処理の迅速な切り替えが可能となる。
【0050】
(第4実施形態)
次に、図12を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。なお、上記実施形態と構成を同じくする部分の説明は割愛することとする。
図12は、本発明の第4実施形態におけるインクジェットプリンター1の動作を説明する図である。
上述したように、インクジェットプリンター1は、記録ヘッド6、キャップ部材71、プラテン81、キャップ部材移動装置71Bを有するユニットを、記録用紙Pの搬送方向(X方向)に沿って複数(本実施形態では2つ)備えている。第4実施形態における制御装置4は、図12に示すように、記録用紙Pの位置に応じて各ユニットのプラテン81a、81bの移動を搬送方向に沿って順次実行させて、記録用紙Pに対する記録処理を停止あるいは中断させることなくクリーニング処理を行う点で、上記実施形態と異なる。
【0051】
具体的に、先ず、制御装置4は、記録用紙搬送装置5による記録用紙Pの搬送量及び記録用紙Pのサイズに基づいて、記録用紙Pの現在位置を求める。次に、制御装置4は、記録用紙Pが所定の位置まで来たら、次の記録用紙Pを給紙するか否か、とフラッシング動作が必要か否か、とを判断する。制御装置4は、次の記録用紙Pへの記録データがあれば、次の記録用紙Pを給紙させる。しかし、制御装置4は、フラッシング動作が必要か否かに応じてその給紙のタイミングを異ならせる。
【0052】
なお、給紙するか否かを判断する所定の位置とは、フラッシング動作をせずに次の記録用紙Pを給紙したときに、現在の記録用紙Pと重ならず、かつ、無駄に時間がかからないように離れすぎない位置である。このため、フラッシング動作判断が否の場合(通常の給紙の場合)の給紙のタイミングは、様々な誤差を考慮して、現在の記録用紙Pとは、例えば5〜10mmくらい離れるようなタイミングとしている。しかし、フラッシング動作が必要な場合は、フラッシング動作判断が否のときに比べて、時間を置いてから給紙を行う。それは、フラッシング動作をするときは次のような動作が行うからである。
【0053】
制御装置4は、記録用紙Pの現在位置からプラテン81a、81bが記録用紙Pを支持しているか否かを判断する。なお、プラテン81a、81bが記録用紙Pを支持しているか否かの判断は、プラテン81a、81bにそれぞれ記録用紙Pの有無を検知するセンサを備えて判断してもよい。また、プラテン81a、81bより上流側の記録用紙Pの搬送経路中にセンサを備えて、センサの検知と記録用紙Pの搬送量から記録用紙Pの位置を判断し、プラテン81a、81bが記録用紙Pを支持しているか否かの判断をしてもよい。
【0054】
制御装置4は、図12(a)に示すように、プラテン81a上から記録用紙Pが移動し終えたと判断したら、プラテン移動装置8に駆動指令を与えて、プラテン81aを遮蔽位置から非遮蔽位置に移動させ、記録ヘッド6aのフラッシング動作を行う。一方、制御装置4は、プラテン81b上には記録用紙Pが存在するので、プラテン81bを遮蔽位置のまま待機させ、記録ヘッド6bで記録用紙Pに記録処理を行う。
【0055】
記録ヘッド6aのフラッシング動作(時間にして0.2秒程度)が終了したら、制御装置4は、次に搬送される記録用紙Pに備えるべく、プラテン移動装置8に駆動指令を与えて、プラテン81aを非遮蔽位置から遮蔽位置に移動させる(図12(b)参照)。一方、記録ヘッド6bにおいては、記録用紙Pの後端までの記録処理が終了する。
【0056】
つまり、記録用紙Pの後端がプラテン81aを外れてから、プラテン81aが遮蔽位置から非遮蔽位置へ移動し、記録ヘッド6aがフラッシング動作をし、プラテン81aが非遮蔽位置から遮蔽位置へ移動した後、次の記録用紙Pはプラテン81a上に移動してくる。制御装置4は、フラッシング動作が必要な場合、記録用紙Pの間がこのような間隔となるように時間を置いて給紙を行わせる。
【0057】
さらに、制御装置4は、図12(c)に示すように、プラテン81b上から記録用紙Pが移動し終えたと判断したら、プラテン移動装置8に駆動指令を与えて、プラテン81bを遮蔽位置から非遮蔽位置に移動させ、記録ヘッド6bのフラッシング動作を行う。一方、制御装置4は、プラテン81a上に新たに搬送された記録用紙Pが存在するので、プラテン81aを遮蔽位置のまま待機させ、記録ヘッド6aで記録用紙Pに記録処理を行う。
そして、記録ヘッド6bのフラッシング動作が終了したら、制御装置4は、プラテン81aに支持されている記録用紙Pを受け取るべく、プラテン移動装置8に駆動指令を与えて、プラテン81bを非遮蔽位置から遮蔽位置に移動させることとなる(図12(d)参照)。
【0058】
上述したように、第4実施形態によれば、一方の記録ヘッド6の記録処理を行っている間に、他方の記録ヘッド6のフラッシング動作を行うことができ、記録用紙Pに対する記録処理を停止あるいは中断させることなくクリーニング処理を行うことが可能となるため、記録ヘッド6のメンテナンスの間、記録用紙Pを搬送できないという問題を解消できる効果がある。
【0059】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0060】
例えば、上述の実施形態においては、流体噴射装置がインクジェットプリンター1である場合を例にして説明したが、インクジェットプリンターに限られず、複写機及びファクシミリ等の装置であってもよい。
【0061】
また、上述の実施形態においては、流体噴射装置が、インク等の流体(液状体)を噴射する流体噴射装置である場合を例にして説明したが、本発明の流体噴射装置は、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に適用することができる。流体噴射装置が噴射可能な流体は、流体、機能材料の粒子が分散又は溶解されている液状体、ジェル状の流状体、流体として流して噴射できる固体、及び粉体(トナー等)を含む。
【0062】
また、上述の実施形態において、流体噴射装置から噴射される流体(液状体)としては、インクのみならず、特定の用途に対応する流体を適用可能である。流体噴射装置に、その特定の用途に対応する流体を噴射可能な噴射ヘッドを設け、その噴射ヘッドから特定の用途に対応する流体を噴射して、その流体を所定の物体に付着させることによって、所定のデバイスを製造可能である。例えば、本発明の流体噴射装置(液状体噴射装置)は、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、及び面発光ディスプレイ(FED)の製造等に用いられる電極材、色材等の材料を所定の分散媒(溶媒)に分散(溶解)した流体(液状体)を噴射する流体噴射装置に適用可能である。
【0063】
また、流体噴射装置としては、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる流体を噴射する流体噴射装置であってもよい。
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置、トナーなどの粉体を例とする固体を噴射するトナージェット式記録装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…インクジェットプリンター(流体噴射装置)、4…制御装置、6…記録ヘッド(流体噴射ヘッド)、9…清掃部材、17…ノズル、21A…ノズル形成面(噴射面)、71…キャップ部材、71A…リップ部(当接部)、71B…キャップ部材移動装置(キャップ部材当接装置)、72…吸引ポンプ(吸引装置)、75…吸収部材、81…プラテン(媒体支持部材)、81A…表面(支持部)、S2…第1移動工程、S5…クリーニング工程、S7…第2移動工程、S8…キャップ部材移動工程(当接工程)、S9…吸引工程、P…記録用紙(媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を噴射する複数のノズルが設けられた噴射面から前記流体を媒体に噴射する流体噴射ヘッドを備える流体噴射装置であって、
前記流体噴射ヘッドと対向して配置され、前記複数のノズルを囲むように前記噴射面と当接可能な当接部を備えるキャップ部材と、
前記媒体を搬送する搬送路の一部を構成すると共に前記流体噴射ヘッドと前記キャップ部材との間を遮る遮蔽位置と、前記遮蔽位置から退避する非遮蔽位置との間を移動自在な媒体支持部材と、
前記遮蔽位置に位置する前記媒体支持部材に前記当接部を当接させるキャップ部材当接装置とを有することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記媒体支持部材は、前記流体噴射ヘッドが設けられる側に前記媒体を支持する支持部を有する略板形状であることを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記キャップ部材当接装置は、前記キャップ部材と前記媒体支持部材との間において気密室を形成するように、前記当接部を前記媒体支持部材に当接させることを特徴とする請求項1または2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記キャップ部材を介して吸引動作を行う吸引装置を有し、
前記吸引装置は、前記当接部と前記媒体支持部材とが当接した状態で前記吸引動作を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記媒体支持部材の移動方向は、前記媒体の搬送方向であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記媒体支持部材は、第1媒体支持部及び第2媒体支持部を有し、
前記第1媒体支持部及び第2媒体支持部は、互いに隣り合う前記遮蔽位置と、互いに離間する前記非遮蔽位置との間を、互いに逆方向で同時に移動することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項7】
前記流体噴射ヘッドと、前記キャップ部材と、前記媒体支持部材と、前記キャップ部材当接装置とを有するユニットを前記媒体の搬送方向に沿って複数備え、
前記媒体の位置に応じて各ユニットの前記媒体支持部材の移動を前記搬送方向に沿って順次実行させる制御装置を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に流体噴射装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の流体噴射装置のクリーニング方法であって、
前記媒体支持部材を前記遮蔽位置から前記非遮蔽位置に移動させる第1移動工程と、
前記第1移動工程の後に、前記流体噴射ヘッドから前記キャップ部材に前記流体を噴射するフラッシング動作を含むクリーニング工程と、
前記クリーニング工程の後に、前記媒体支持部材を前記非遮蔽位置から前記遮蔽位置に移動させる第2移動工程と、
前記第2移動工程の後に、前記当接部を前記媒体支持部材に当接させる当接工程とを有することを特徴とする流体噴射装置のクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−201787(P2010−201787A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49860(P2009−49860)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(390002129)デュプロ精工株式会社 (351)
【Fターム(参考)】