説明

流体噴射装置

【課題】保湿液収容体とキャップ装置との位置合わせを必要とせず、小型化及び簡素化が可能な流体噴射装置を提供する。
【解決手段】インクを収容したインクカートリッジ34と、保湿液を収容した保湿液カートリッジ35と、インクカートリッジから供給されるインクをノズル形成面31に形成されたノズルから噴射する記録ヘッド29と、開口部62が他部材に覆われることにより密閉状態になる空間域67を有すると共に該空間域内に保湿液カートリッジから供給された保湿液を貯留可能なメンテナンスキャップ63と、インクカートリッジ及び保湿液カートリッジに加圧力を作用させることによりインクカートリッジ内からインクを記録ヘッドに向けて導出させると共に保湿液カートリッジ内から保湿液をメンテナンスキャップの空間域内に向けて導出させる加圧ポンプ38とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンタなどの流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、流体をターゲットに対して噴射させる流体噴射装置として、インクジェット式プリンタ(以下、「プリンタ」という。)が広く知られている。このプリンタは、記録ヘッド(流体噴射ヘッド)に供給されるインク(流体)を記録ヘッドに形成されたノズルから噴射することによりターゲットとしての用紙に印刷(画像形成)を施すようになっている。
【0003】
このようなプリンタでは、インクが噴射されない期間が長くなると、ノズル内のインクが増粘してその噴射精度が低下してしまう。そのため、例えば特許文献1に記載されるように、こうしたプリンタでは、キャップ(キャップ装置)によって記録ヘッドのノズル形成面を覆うと共に、記録ヘッドと共に移動する保湿液タンク(保湿液収容体)からキャップ内に保湿液を滴下させるようにしている。すなわち、キャップ内を保湿してノズルからのインクの蒸発を抑制している。
【特許文献1】特開2001−18408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のプリンタの場合は、保湿液タンクがインクカートリッジと共にキャリッジに搭載されているため、キャップ内に保湿液を滴下させる際には、キャリッジを駆動して位置合わせをする必要あった。
【0005】
また、保湿液タンクをキャリッジ外に配置する場合には、保湿液タンクの交換及び保湿液の補充が困難なため、大型のタンクが必要となると共に保湿液の供給にポンプ等の専用の機構を追加する必要があった。そのため、その構成が大型化、複雑化しまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、保湿液収容体とキャップ装置との位置合わせを必要とせず、小型化及び簡素化が可能な流体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の流体噴射装置は、流体を収容した流体収容体と、保湿液を収容した保湿液収容体と、前記流体収容体から供給される前記流体をノズル形成面に形成されたノズルから噴射する流体噴射ヘッドと、開口部が他部材に覆われることにより密閉状態になる空間域を有すると共に該空間域内に前記保湿液収容体から供給された前記保湿液を貯留可能なキャップ装置と、前記流体収容体及び前記保湿液収容体に加圧力を作用させることにより前記流体収容体内から前記流体を前記流体噴射ヘッドに向けて導出させると共に前記保湿液収容体内から前記保湿液を前記キャップ装置の前記空間域内に向けて導出させる加圧機構とを備えた。
【0008】
この構成によれば、加圧機構により流体収容体及び保湿液収容体の双方に加圧力を作用させ、それぞれに収容された流体及び保湿液を供給することができる。すなわち、保湿液を保湿液収容体からキャップ装置の空間域に向けて導出する加圧機構を備えることにより、保湿液収容体とキャップ装置との位置合わせが不要となり、その位置関係に関わらず保湿液の供給が可能となる。したがって、例えばキャップ装置がノズル形成面を覆った状態を維持したまま保湿液を供給することができる。さらに、流体収容体内の流体を流体噴射ヘッドに向けて導出させる加圧機構が保湿液を導出させる機構を兼ね備えている。そのため、保湿液を導出させる機構を個別に備える必要がなく、その構成を小型化及び簡素化することができる。
【0009】
本発明の流体噴射装置において、前記キャップ装置には、前記保湿液収容体からの供給に基づき前記空間域内に貯留される前記保湿液の液面が予め設定した閾値液面以上の高さとなった場合に、前記保湿液を前記キャップ装置の外部に流出させるオーバーフロー穴が形成されている。
【0010】
この構成によれば、キャップ装置の空間域内に供給された保湿液は、閾値液面以上の高さとなった場合にオーバーフロー穴からキャップ装置の外部に流出される。そのため、簡単な構成でキャップ装置内に一定量の保湿液を残存させることができる。さらに、キャップ装置の開口部からの保湿液の溢れ出しを抑制することができる。すなわち、余分になった保湿液の流出経路を形成することにより保湿液の回収を容易にし、流体噴射装置内の汚染を抑制することができる。
【0011】
本発明の流体噴射装置において、前記保湿液収容体から前記空間域内に前記保湿液を供給可能な保湿液供給路を有し、前記保湿液供給路の途中からは保湿液排出路が分岐され、該保湿液排出路の下流端は前記オーバーフロー穴と連通している。
【0012】
この構成によれば、保湿液供給路は、キャップ装置の空間域内に保湿液を供給するため、該空間域と連通している。そして、保湿液排出路は、保湿液供給路の途中から分岐しているため、該保湿液供給路を介してキャップ装置の空間域と連通していることとなる。したがって、保湿液供給路から供給される保湿液は、キャップ装置の空間域内に供給された保湿液の高さがオーバーフロー穴と対応する高さ位置以上となると、保湿液排出路を介して排出されるようになる。したがって、キャップ装置からの保湿液の溢れ出しを抑制し、キャップ装置内に一定量の保湿液を残存させることができる。また、キャップ装置の空間域は、保湿液供給路及び保湿液排出路内に残存する保湿液により大気と遮断されているため、その密閉度を高めることにより保湿効率を向上させることができる。
【0013】
本発明の流体噴射装置において、前記キャップ装置には、前記流体噴射ヘッドをメンテナンスするメンテナンス装置が前記キャップ装置の前記開口部を前記他部材が覆った場合に前記空間域内に封じ込められる配置態様で収容されている。
【0014】
この構成によれば、保湿液が供給されるキャップ装置と他部材とに覆われた空間域内にメンテナンス装置を設けているため、該メンテナンス装置を保湿することができる。したがって、メンテナンス装置に付着した流体の乾燥を抑制し、乾燥して増粘した流体が流体噴射ヘッドに付着するのに伴う該流体噴射ヘッドの汚染を抑制することができる。
【0015】
本発明の流体噴射装置において、前記キャップ装置は、前記流体噴射ヘッド又は該流体噴射ヘッドを支持する支持体に前記開口部を覆われることで密閉状態となる空間域を有する第1キャップ装置と、該第1キャップ装置に前記開口部を覆われることで密閉状態となる空間域を有する第2キャップ装置とを含んで構成され、前記メンテナンス装置は、前記第2キャップ装置の前記空間域内に収容されている。
【0016】
この構成によれば、第1キャップ装置は、流体噴射ヘッド又は該流体噴射ヘッドを支持する支持体によって、開口部がノズル形成面のノズルを囲繞する配置態様にて覆われることにより、流体噴射ヘッドを保湿することができる。また、第2キャップ装置は、第1キャップ装置により開口部を覆われるため、第2キャップ装置の空間域内に収容されるメンテナンス装置を保湿することができる。そして、複数のキャップ装置を設ける場合には、キャップ装置の開口部を他のキャップ装置によって覆うことにより、開口部を覆う他部材を別途設けることなくキャップ装置内を密閉状態とすることが可能となり、流体噴射装置の構成を簡素化することができる。
【0017】
本発明の流体噴射装置において、前記キャップ装置は、前記開口部が前記他部材に覆われることにより密閉状態とされる前記空間域と大気とを連通させる大気開放孔と、該大気開放孔を閉塞して前記空間域と大気との連通状態を切替える大気開放弁とをさらに備え、該大気開放弁は、前記加圧機構が前記保湿液収容体に加圧力を作用させてキャップ装置へ保湿液を供給する供給時には前記空間域と大気とを連通させる開弁状態とすると共に、非供給時には前記空間域と大気とを遮断する閉弁状態とする。
【0018】
この構成によれば、キャップ装置の空間域は、開口部が他部材により覆われて密閉状態であっても、保湿液の供給時には大気開放弁が開弁状態とされるため、保湿液が供給されて圧力が高まったキャップ装置内の気体は大気開放孔を介して排出される。したがって、内圧の高まりが抑制されて保湿液を容易に供給することができる。さらに、保湿液の非供給時には大気開放弁は閉弁状態とされるため、大気開放孔を通じたキャップ装置外への保湿液の蒸散を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明をラテラル方式のインクジェット式プリンタに具体化した一実施形態を図1〜図14に従って説明する。なお、以下における明細書中の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は、図1等の図面に矢印で示した方向を基準として示すものとする。
【0020】
図1に示すように、流体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ(以下、「プリンタ」という。)11は、直方体状の本体ケース12を備えている。本体ケース12内には、長尺状のターゲットとしての連続紙13を繰り出す繰り出し部14と、その連続紙13に流体としてのインクの噴射により印刷が施される印刷室15と、その印刷によりインクが付着した連続紙13に乾燥処理を施す乾燥装置16と、そのように乾燥処理が施された連続紙13を巻き取る巻き取り部17が設けられている。
【0021】
すなわち、本体ケース12内における上下方向の中央部よりもやや上寄りの位置には、本体ケース12内を上下に区画する平板状の基台18が設けられており、この基台18よりも上側の領域が矩形板状のプラテン19を基台18上に支持してなる印刷室15となっている。そして、基台18よりも下側の領域において、連続紙13の搬送方向で上流側となる左側寄りの位置に、繰り出し部14が配設されると共に、下流側となる右側寄りの位置に、乾燥装置16及び巻き取り部17が配設されている。
【0022】
図1に示すように、繰り出し部14には、前後方向に延びる巻き軸20が回転自在に設けられ、その巻き軸20に対して連続紙13が予めロール状に巻かれた状態で巻き軸20と一体回転可能に支持されている。すなわち、連続紙13は、巻き軸20が回転することにより、繰り出し部14から繰り出されて搬送方向の下流側に搬送されるようになっている。また、繰り出し部14の右側方には、巻き軸20から繰り出された連続紙13を右側下方から巻き掛けることにより、その連続紙13の搬送方向を鉛直上方向に変換する第1ローラ21が巻き軸20と平行な態様で前後方向に延びるように設けられている。
【0023】
一方、印刷室15内において、プラテン19の左側であって下側の第1ローラ21と上下方向で対応する位置には、第2ローラ22が下側の第1ローラ21と平行な態様で前後方向に延びるように設けられている。そして、第1ローラ21によって搬送方向が鉛直上方向に変換された連続紙13は、この第2ローラ22に左側下方から巻き掛けられることにより、その搬送方向が水平右方向に変換されてプラテン19の上面に摺接するようになっている。
【0024】
また、印刷室15内において、プラテン19の右側には、プラテン19を挟んで左側の第2ローラ22と左右方向で対向する第3ローラ23が第2ローラ22と平行な態様で前後方向に延びるように設けられている。なお、第2ローラ22及び第3ローラ23は各々の周面の頂部がプラテン19の上面と同一高さとなるように各々の設置される位置が調整されている。
【0025】
そのため、印刷室15内で左側の第2ローラ22により搬送方向が水平右方向に変換された連続紙13は、プラテン19の上面に摺接しつつ下流側となる右側に搬送された後、第3ローラ23に右側上方から巻き掛けられることにより搬送方向が鉛直下方向に変換されて基台18よりも下側の乾燥装置16に向けて搬送されるようになっている。そして、乾燥装置16内を通過することにより乾燥処理を施された連続紙13は、更に鉛直下方向に搬送されるようになっている。
【0026】
図1に示すように、乾燥装置16の下方には、乾燥装置16内を通過して鉛直下方向に搬送される連続紙13を左側上方から巻き掛けることにより、その連続紙13の搬送方向を水平右方向に変換する第4ローラ24が前後方向に延びるように設けられ、この第4ローラ24の右側に巻き取り部17が配設されている。そして、巻き取り部17には、第4ローラ24と平行な態様で前後方向に延びる巻き取り軸25が図示しない搬送モータの駆動力に基づいて回転するように設けられ、この巻き取り軸25に対して連続紙13の搬送方向下流端となる先端が巻きつけられている。
【0027】
図1に示すように、印刷室15内におけるプラテン19の前後両側には、左右方向に延びるガイドレール26(図1では2点鎖線で示す)が対をなすように設けられている。ガイドレール26の上面はプラテン19の上面よりも高くなっており、両ガイドレール26の上面には、矩形状のキャリッジ27が図示しない駆動機構の駆動に基づき両ガイドレール26に沿って左右方向への往復移動可能な状態で支持されている。そして、このキャリッジ27の下面側には支持体としての支持板28を介して流体噴射ヘッドとしての記録ヘッド29が支持されている。
【0028】
印刷室15内においては、プラテン19の左端から右端までの一定範囲が印刷領域とされており、この印刷領域単位で連続紙13は間欠的に搬送されるようになっている。そして、この印刷領域単位での間欠搬送によってプラテン19上に停止した状態にある連続紙13に対してキャリッジ27の往復移動に伴い記録ヘッド29からインクが噴射されることで連続紙13に対して印刷が施されるようになっている。また、印刷室15内において、第3ローラ23よりも右側となる非印刷領域には、非印刷時に記録ヘッド29のメンテナンスを行うためのメンテナンス機構30が設けられている。
【0029】
図2に示すように、キャリッジ27の下面側に支持された支持板28には複数個(本実施形態では15個)の記録ヘッド29が連続紙13の搬送方向(図2において白抜き矢印で示す方向)と直交する幅方向(前後方向)に亘って千鳥状の配置態様となるように支持されている。そして、各記録ヘッド29の下面となるノズル形成面31には、多数のノズル32により前後方向に沿う複数列(本実施形態では4列)のノズル列33が左右方向に所定間隔をおいて規則的に形成されている。
【0030】
また、図3に示すように、本体ケース12内には、互いに色の異なるインクを収容した複数(本実施形態では4つ、但し、図3には1つのみ図示)の流体収容体としてのインクカートリッジ34と、グリセリン等を含む保湿液を収容した保湿液収容体としての保湿液カートリッジ35とが着脱可能に装着されている。そして、各インクカートリッジ34はインク供給チューブ36を介して記録ヘッド29に接続される一方、保湿液カートリッジ35は保湿液供給路を構成する保湿液供給チューブ37を介してメンテナンス機構30に接続されている。
【0031】
さらに、図3に示すように、本体ケース12内には、加圧機構としての加圧ポンプ38が設けられている。加圧ポンプ38には、下流側が複数に分岐した空気供給チューブ39の上流端が接続され、その空気供給チューブ39の各下流端が各インクカートリッジ34及び保湿液カートリッジ35に接続されている。また、空気供給チューブ39における分岐位置よりも下流側のチューブ部分において、その下流端がインクカートリッジ34に接続されるチューブ部分にはインク供給バルブ40が設けられると共に、その下流端が保湿液カートリッジ35に接続されるチューブ部分には保湿液供給バルブ41が設けられている。
【0032】
そして、インク供給バルブ40が開弁された状態において、加圧ポンプ38から空気供給チューブ39を介して各インクカートリッジ34に加圧空気が供給されることにより、各インクカートリッジ34からインク供給チューブ36を介して記録ヘッド29側にインクが導出されるようになっている。また、保湿液供給バルブ41が開弁した状態において、加圧ポンプ38から空気供給チューブ39を介して保湿液カートリッジ35に加圧空気が供給されることにより、保湿液カートリッジ35から保湿液供給チューブ37を介してメンテナンス機構30側に保湿液が導出されるようになっている。
【0033】
次に、メンテナンス機構30について説明する。
図3に示すように、メンテナンス機構30は、非印刷領域において記録ヘッド29よりも下方となる位置で水平方向への移動自在に配置される保湿ユニット50と、該保湿ユニット50よりも更に下方となる位置で上下方向への移動自在に配置されるメンテナンスユニット51とを備えている。そして、同図に示すように、メンテナンス機構30は、保湿ユニット50の水平方向での移動位置により、保湿ユニット50とメンテナンスユニット51とが上下方向において重なった配置態様を取り得るように構成されている。
【0034】
図3及び図4に示すように、保湿ユニット50は、その長さ方向となる左右方向の寸法が各記録ヘッド29を支持する支持板28の左右方向の寸法よりも長い前後一対の帯状板52と、両帯状板52上に支持可能とされる第1キャップ装置としての保湿キャップ53とを主体に構成されている。各帯状板52上の左右各端部には鉛直上方向に向けてガイド部としてのガイド棒54が立設されると共に、各帯状板52の下面には左右方向に沿ってラック55が形成されている。そして、各帯状板52のラック55に対してメンテナンスユニット51から見た場合に印刷領域とは反対側となる右側の位置で前後方向に沿う軸線を中心に回転するピニオン56が噛合している。
【0035】
このピニオン56には、正逆両方向への回転を制御される移動モータ57(図9参照)が動力伝達可能に連結されている。そして、この移動モータ57の駆動に伴ってピニオン56が回転することにより、そのピニオン56とラック55が噛合した前後一対の帯状板52は、その水平状態を維持しつつ、図3に実線で示す干渉位置と、該干渉位置から水平方向右側に離間した同じく図3に二点鎖線で示す非干渉位置との間を往復移動するようになっている。
【0036】
また、保湿キャップ53は、平面視形状が支持板28よりも大きな矩形状に形成された基板部58を有し、その基板部58の上面からは支持板28の周縁形状よりは小さく且つ千鳥状に配置された各記録ヘッド29の配置領域よりは大きな矩形環状をなす周壁部59が上方に向けて突出形成されている。そして、保湿キャップ53は、全記録ヘッド29を一括して囲繞するように周壁部59の上端部を他部材である支持板28に当接させることによって周壁部59の開口部60が支持板28で覆われた場合には、その周壁部59内の空間域61が密閉状態となるように構成されている。そのため、図示はしないが、保湿キャップ53における周壁部59の上端部には弾性材料からなるシール部材が矩形環状をなすように付設されている。
【0037】
また、保湿キャップ53における基板部58の四隅には、帯状板52から立設された各ガイド棒54を挿通可能とするガイド孔58aが形成されている。そして、これらのガイド孔58aに帯状板52のガイド棒54が挿通されることにより、保湿キャップ53は、帯状板52上に水平方向への移動が規制された載置状態で支持されるようになっている。したがって、移動モータ57の駆動に伴ってピニオン56にラック55を噛合させた帯状板52が左右方向に往復移動した場合には、その帯状板52と共に保湿キャップ53も干渉位置と非干渉位置との間を左右方向に往復移動することになる。この点で、本実施形態においては、移動モータ57、ピニオン56、ラック55及び帯状板52により、第1キャップ装置としての保湿キャップ53を干渉位置と非干渉位置との間で移動させる第1キャップ装置移動機構が構成されている。
【0038】
一方、メンテナンスユニット51は、矩形状をなす開口部62の大きさが保湿キャップ53の基板部58よりも小さく形成された有底箱形状の支持部材及び第2キャップ装置としてのメンテナンスキャップ63を備えている。このメンテナンスキャップ63は、非印刷領域における記録ヘッド29のホームポジションの下方位置で上下方向への移動自在に支持されており、一斉移動機構としてのシリンダ等からなる昇降装置64の駆動に基づき上下方向に移動するようになっている。
【0039】
すなわち、メンテナンスキャップ63は、昇降装置64の駆動に基づき、図13に示すように後述する複数のメンテナンス装置68が各々対応する記録ヘッド29に対して接近した位置状態となるメンテナンス位置と、図3に示すように各メンテナンス装置68が各々対応する記録ヘッド29から下方へ大きく離間した位置状態となる退避位置との間を上下方向に移動する。なお、その場合のメンテナンスキャップ63の上下方向の高さ位置は、リニアポテンショメータ等からなる昇降センサ65(図9参照)によって検出されるようになっている。
【0040】
そして、メンテナンスキャップ63は、その周壁部66の上端部を保湿キャップ53の基板部58に当接させることによって開口部62が他部材である保湿キャップ53により覆われた場合には、周壁部66内の空間域67が密閉状態となるように構成されている。そのため、図示はしないが、メンテナンスキャップ63における周壁部66の上端部にも弾性材料からなるシール部材が矩形環状をなすように付設されている。
【0041】
また、図3に示すように、メンテナンスキャップ63の下端部には保湿液供給チューブ37の下流端が保湿液を供給可能に接続される保湿液流路84が周壁部66の下端外側面から底壁部内を貫通してメンテナンスキャップ63の内底面に供給口85を開口するようにして形成されている。保湿液流路84は保湿液供給チューブ37と共に保湿液供給路を構成するものであり、その保湿液流路84の途中からは保湿液排出路86が周壁部66内を鉛直上方に向かって延びるように分岐形成されている。
【0042】
この保湿液排出路86は、その下端が保湿液流路84の水平流路部分に接続されると共に、その上端が保湿液流路84において最上位置となる供給口85よりも更に上方となる位置で周壁部66の外側面に向けて水平に屈曲されることにより、周壁部66の外側面にオーバーフロー穴としての排出口87を開口形成している。そのため、保湿液カートリッジ35から加圧ポンプ38の駆動に基づき保湿液供給チューブ37及び保湿液流路84を介してメンテナンスキャップ63内に供給された保湿液は、その液面88が排出口87の開口位置と同じ高さ(例えば、内底面から1〜2mm程度の高さ)の液面(閾値液面)になった場合には、水頭差により保湿液排出路86の排出口87からメンテナンスキャップ63外に排出されるようになっている。
【0043】
また、図3に示すように、メンテナンスキャップ63の周壁部66における排出口87よりも上方となる位置には、メンテナンスキャップ63の内外間を連通させる大気開放孔89が貫通形成されている。そして、その大気開放孔89内には電磁弁からなる大気開放弁90が配設されている。この大気開放弁90は、メンテナンスキャップ63の開口部62が他部材である保湿キャップ53により覆われた状態において、メンテナンスキャップ63内の空間域67に保湿液を供給しようとするときに開放されるように、制御部91により開閉制御される。
【0044】
図3及び図5に示すように、メンテナンスキャップ63内には、キャリッジ27の支持板28に支持された記録ヘッド29と同数(本実施形態では15個)のメンテナンス装置68が、各記録ヘッド29と個別に対応した配置状態となるように収容されている。各メンテナンス装置68は、対応する記録ヘッド29のノズル形成面31に対して全てのノズル列33を囲んだ状態で当接し得るように形成された有底箱形状のキャップ部材69と、対応する記録ヘッド29のノズル形成面31に対して撓み変形を伴って摺接可能な弾性片からなるワイパ部材70とを主体に構成されている。
【0045】
なお、キャップ部材69には、図示しないインク排出チューブが吸引ポンプ96(図9参照)を介して接続されている。そして、キャップ部材69は、その上端の開口部を対応する記録ヘッド29のノズル形成面31に全ノズル列33を囲うように当接させた状態で吸引ポンプ96が駆動されることにより、その記録ヘッド29内から増粘等したインクを図示しない廃インクタンクにインク排出チューブを介して強制的に排出するようになっている。また、ワイパ部材70は、その上端を対応する記録ヘッド29のノズル形成面31に対して弾性変形を伴いながら摺接させることにより、ノズル形成面31に付着しているインクを払拭するようになっている。
【0046】
図5に示すように、メンテナンスキャップ63内には、前後方向の幅寸法が右側半分と左側半分とで異なる略T字状をなす複数枚(本実施形態では3枚)の可動プレート71a〜71cが前後方向で隣接する可動プレート71a〜71c同士の向きを入れ違いにして各々が上下方向への移動自在に配設されている。そして、これらの各可動プレート71a〜71cに対して各メンテナンス装置68が、前後方向に一連の千鳥状配置をなす所定数(本実施形態では5つ)のメンテナンス装置68で構成されるメンテナンス装置群72a〜72c毎に振り分けられ、そのメンテナンス装置群72a〜72c単位で対応する可動プレート71a〜71c上に支持されている。
【0047】
すなわち、図5に示すように、メンテナンスキャップ63内の後方位置で千鳥状配置をなす5つのメンテナンス装置68からなる第1メンテナンス装置群72aは、前後方向で最後部に位置する第1可動プレート71aに支持されている。また、メンテナンスキャップ63内の中央位置で千鳥状配置をなす5つのメンテナンス装置68からなる第2メンテナンス装置群72bは、前後方向で中央部に位置する第2可動プレート71bに支持されている。さらに、メンテナンスキャップ63内の前方位置で千鳥状配置をなす5つのメンテナンス装置68からなる第3メンテナンス装置群72cは、前後方向で最前部に位置する第3可動プレート71cに支持されている。
【0048】
図3及び図6に示すように、メンテナンスキャップ63内における可動プレート71a〜71cよりも下側には、前後方向に延びる一本の回転軸73が図示しない軸受けにより回転自在に支持されている。そして、その回転軸73には、複数(本実施形態では3つ)のカム部材74〜76が前後方向に間隔をおいて回転軸73と一体回転可能に軸支されている。なお、図3に示すように、回転軸73は、メンテナンスキャップ63内に供給されて貯留される保湿液の液面88が閾値液面の高さ(オーバーフロー穴としての排出口87と対応する高さ)になった場合にも各カム部材74〜76を保湿液の液面88よりも上方に位置させ得る高さに支持されている。そして、本実施形態では、このような回転軸73及び各カム部材74〜76により、各メンテナンス装置68をメンテナンス装置群72a〜72c毎に移動させるために変位動作する変位部材が構成されている。
【0049】
すなわち、各カム部材74〜76は、各メンテナンス装置群72a〜72cを支持する各可動プレート71a〜71cと上下方向で個別に対応する配置態様となるように回転軸73に軸支されており、回転軸73の回転に伴い対応する可動プレート71a〜71cに下側からカム係合するようになっている。ちなみに、最後部の第1可動プレート71aの下側には図7(a)に示す第1カム部材74が、中央部の第2可動プレート71bの下側には図7(b)に示す第2カム部材75が、そして、最前部の第3可動プレート71cの下側には図7(c)に示す第3カム部材76が、それぞれ回転軸73に軸支された状態で配置されている。
【0050】
また、図6に示すように、メンテナンスキャップ63内の最前部には、左右方向に延びる一本の動力伝達軸77が、その左端部をメンテナンスキャップ63外に突出させると共に、その右端部を回転軸73の前端部に上側から直交させた配置態様で、図示略の軸受けにより回転自在に支持されている。そして、動力伝達軸77におけるメンテナンスキャップ63外に突出した左端部(すなわち、突出端)には、回転軸側の歯車としての従動歯車78が動力伝達軸77と一体回転可能に軸支される一方、動力伝達軸77の右端部には、回転軸73の前端部に軸支された図示しないウォームホイールに噛合するウォーム79が動力伝達軸77と一体回転可能に設けられている。
【0051】
また、図6に示すように、メンテナンスキャップ63の外側において動力伝達軸77の左端部(突出端)の近傍位置には、駆動源としてのカムモータ80が出力軸81を動力伝達軸77と平行な左右方向に沿わせるようにして配置されている。そして、カムモータ80の出力軸81の先端には、動力伝達軸77側の従動歯車78と噛合関係を有して動力伝達歯車機構を構成する駆動歯車82が駆動源側の歯車として出力軸81と一体回転可能に軸支されている。
【0052】
ここで、カムモータ80における出力軸81の先端に軸支された駆動歯車82は、図3に示すように、昇降装置64の駆動に基づきメンテナンスキャップ63がその底面を所定の基準面83から距離Aだけ上方に位置させた最下方の退避位置状態にある場合に、動力伝達軸77の従動歯車78に対して噛合可能とされている。すなわち、昇降装置64の駆動に基づきメンテナンスキャップ63が図3に示す退避位置状態よりも上方に移動した場合には、その突出端に従動歯車78を軸支した動力伝達軸77もメンテナンスキャップ63と共に上昇することになる。その一方、出力軸81に駆動歯車82を軸支したカムモータ80は基準面83の近傍に固定配置されたままであり、駆動歯車82の高さは何ら変化しない。そのため、メンテナンスキャップ63が図3に示す退避位置状態から上方の他の位置状態(例えば図10〜図14の位置状態)へ移動した場合は、カムモータ80の出力軸81に軸支された駆動歯車82と動力伝達軸77に軸支された従動歯車78とは両者の噛み合い状態が解除されるようになっている。
【0053】
次に、各カム部材74〜76のカム形状について説明する。
図7(a)〜(c)及び図8に示すように、各カム部材74〜76は、それぞれ同一のカム形状をなすように形成されており、回転軸73に対して他のカム部材とは回転軸73の回転方向に角度ずれした態様で軸支されている。具体的には、第1カム部材74の回転軸73に対する角度位置を基準として、第2カム部材75は、回転軸73の逆回転方向(図7(a)〜(c)における時計方向)に45度だけ角度ずれする一方、第3カム部材76は、回転軸73の正回転方向(図7(a)〜(c)における反時計方向)に45度だけ角度ずれした態様に軸支されている。
【0054】
さらに、各カム部材74〜76の周面には、回転中心からの距離が相対的に長くされた円弧凸面状のカム機能部74a,74c,75a,75c,76a,76cと、回転中心からの距離がカム機能部よりも短くされた非カム機能部74b,74d,75b,75d,76b,76dが周方向へ交互配置で連なるように形成されている。そして、各カム部材74〜76は、回転軸73の回転に伴い回転した場合において、カム機能部が回転軸73の真上となる0度の角度位置(以下、「カム作用位置」という。)に位置するときには、対応する可動プレート71a〜71cの下面に押し上げ力を伴ってカム係合することにより、その可動プレート71a〜71cを上方に押し上げ可能となっている。その一方、各カム部材74〜76は、非カム機能部がカム作用位置に位置することになる場合には可動プレート71a〜71cに対して押し上げ力を付与しないようになっている。
【0055】
すなわち、各カム部材74〜76は、カム作用位置にカム機能部が位置する場合には、図13に示すように昇降装置64がメンテナンスキャップ63をメンテナンス位置に移動させた際に、カム機能部で押し上げた可動プレート71a〜71c上のメンテナンス装置68が対応する記録ヘッド29に当接して該記録ヘッド29をメンテナンス可能な位置状態となる上側の当接位置にメンテナンス装置群72a〜72cを移動させる。その一方、各カム部材74〜76は、カム作用位置に非カム機能部が位置する場合には、昇降装置64がメンテナンスキャップ63をメンテナンス位置に移動させた際に、可動プレート71a〜71c上のメンテナンス装置68が対応する記録ヘッド29から離間した位置状態となる下側の離間位置(当接位置よりも低い位置)にメンテナンス装置群72a〜72cを移動させる。
【0056】
まず、図7(a)に示す第1カム部材74は、回転軸73の回転角度が同図に示すように初期角度(0度)の状態から正回転方向(同図で反時計方向)に回転した場合における回転角度が90度〜180度となったときにカム作用位置に位置することになる周面部位に、広角の第1カム機能部74aが形成されている。また、同様に、回転軸73の回転角度が270度となったときにカム作用位置に位置することになる周面部位には、狭角の第2カム機能部74cが形成されている。そして、回転軸73の正回転方向で第1カム機能部74aに隣接する周面部位には広角の第1非カム機能部74bが形成されると共に、回転軸73の逆回転方向で第1カム機能部74aに隣接する周面部位には狭角の第2非カム機能部74dが形成されている。
【0057】
また、図7(b)に示す第2カム部材75は、同図に示す初期角度(0度)の状態から回転軸73が正回転方向(同図で反時計方向)に回転した場合における回転角度が135度〜225度となったときにカム作用位置に位置することになる周面部位に、広角の第1カム機能部75aが形成されている。また、同様に、回転軸73の回転角度が315度となったときにカム作用位置に位置することになる周面部位には、狭角の第2カム機能部75cが形成されている。そして、回転軸73の正回転方向で第1カム機能部75aに隣接する周面部位には広角の第1非カム機能部75bが形成されると共に、回転軸73の逆回転方向で第1カム機能部75aに隣接する周面部位には狭角の第2非カム機能部75dが形成されている。
【0058】
また、図7(c)に示す第3カム部材76は、同図に示す初期角度(0度)の状態から回転軸73が正回転方向(同図で反時計方向)に回転した場合における回転角度が45度〜135度となったときにカム作用位置に位置することになる周面部位に、広角の第1カム機能部76aが形成されている。また、同様に、回転軸73の回転角度が225度となったときにカム作用位置に位置することになる周面部位には、狭角の第2カム機能部76cが形成されている。そして、回転軸73の正回転方向で第1カム機能部76aに隣接する周面部位には広角の第1非カム機能部76bが形成されると共に、回転軸73の逆回転方向で第1カム機能部76aに隣接する周面部位には狭角の第2非カム機能部76dが形成されている。
【0059】
したがって、メンテナンスキャップ63が図3に示す退避位置状態にあって、従動歯車78と駆動歯車82が噛合している場合において、カムモータ80が駆動されると、その駆動力が動力伝達軸77を介して回転軸73に伝達される結果、各カム部材74〜76は回転軸73と共に一体回転することになる。そして、各カム部材74〜76は、回転軸73の回転角度に応じて、第1カム機能部74a,75a,76a、第1非カム機能部74b,75b,76b、第2カム機能部74c,75c,76c、及び第2非カム機能部74d,75d,76dのうち何れか一つの周面部位が回転軸73の真上となる0度の角度位置(すなわち、カム作用位置)に位置することになる。なお、この場合における回転軸73及び各カム部材74〜76の回転角度は、回転軸73の近傍位置に配設されるロータリポテンショメータ等からなる角度センサ95(図9参照)により測定される。
【0060】
ちなみに、図3、図7(a)(b)(c)及び図8に示す状態(回転軸73の回転角度が初期角度(0度)の状態)を第1角度状態とすると、この第1角度状態では、カム作用位置に、各カム部材74〜76は各々の第1非カム機能部74b,75b,76bが位置する。すなわち、第1角度状態では、何れのカム部材74〜76も可動プレート71a〜71cに押し上げ力を付与可能なカム機能部74a,74c,75a,75c,76a,76cがカム作用位置に位置しない。したがって、第1角度状態では、各可動プレート71a〜71cに支持されている全てのメンテナンス装置群72a〜72cがその上下二位置のうち下側の離間位置に位置することになる。
【0061】
次に、第1角度状態から回転軸73を正回転方向に45度だけ回転させた第2角度状態では、カム作用位置に、第1カム部材74は第1非カム機能部74bが、第2カム部材75は第1非カム機能部75bが、第3カム部材76は第1カム機能部76aが、それぞれ位置する。そのため、第2角度状態では、カム作用位置に第1カム機能部76aを位置させた第3カム部材76と対応する第3可動プレート71cだけが上方に押し上げられることになる。したがって、第2角度状態では、第3可動プレート71cに支持された第3メンテナンス装置群72cだけが上側の当接位置に位置する一方、第1可動プレート71a及び第2可動プレート71bに支持された第1メンテナンス装置群72a及び第2メンテナンス装置群72bは下側の離間位置に位置することになる。
【0062】
次に、第2角度状態から回転軸73を正回転方向に45度だけ回転させた第3角度状態では、カム作用位置に、第1カム部材74は第1カム機能部74aが、第2カム部材75は第1非カム機能部75bが、第3カム部材76は第1カム機能部76aが、それぞれ位置する。そのため、第3角度状態では、カム作用位置に第1カム機能部74a,76aを位置させた第1カム部材74及び第3カム部材76と対応する第1可動プレート71a及び第3可動プレート71cが上方に押し上げられることになる。したがって、第3角度状態では、第1可動プレート71a及び第3可動プレート71cに支持された第1メンテナンス装置群72a及び第3メンテナンス装置群72cが上側の当接位置に位置する一方、第2可動プレート71bに支持された第2メンテナンス装置群72bは下側の離間位置に位置することになる。
【0063】
次に、第3角度状態から回転軸73を正回転方向に45度だけ回転させた第4角度状態では、カム作用位置に、全てのカム部材74〜76の第1カム機能部74a,75a,76aが位置する。そのため、第4角度状態では、全てのカム部材74〜76が対応する各可動プレート71a〜71cを上方に押し上げることになる。したがって、第3角度状態では、各可動プレート71a〜71cに支持された全てのメンテナンス装置群72a〜72cが上側の当接位置に位置することになる。
【0064】
次に、第4角度状態から回転軸73を正回転方向に45度だけ回転させた第5角度状態では、カム作用位置に、第1カム部材74は第1カム機能部74aが、第2カム部材75は第1カム機能部75aが、第3カム部材76は第2非カム機能部76dが、それぞれ位置する。そのため、第5角度状態では、カム作用位置に第1カム機能部74a,75aを位置させた第1カム部材74及び第2カム部材75と対応する第1可動プレート71a及び第2可動プレート71bが上方に押し上げられることになる。したがって、第5角度状態では、第1可動プレート71a及び第2可動プレート71bに支持された第1メンテナンス装置群72a及び第2メンテナンス装置群72bが上側の当接位置に位置する一方、第3可動プレート71cに支持された第3メンテナンス装置群72cは下側の離間位置に位置することになる。
【0065】
次に、第5角度状態から回転軸73を正回転方向に45度だけ回転させた第6角度状態では、カム作用位置に、第1カム部材74は第2非カム機能部74dが、第2カム部材75は第1カム機能部75aが、第3カム部材76は第2カム機能部76cが、それぞれ位置する。そのため、第6角度状態では、カム作用位置に第1カム機能部75a及び第2カム機能部76cを位置させた第2カム部材75及び第3カム部材76と対応する第2可動プレート71b及び第3可動プレート71cが上方に押し上げられることになる。したがって、第6角度状態では、第2可動プレート71b及び第3可動プレート71cに支持された第2メンテナンス装置群72b及び第3メンテナンス装置群72cが上側の当接位置に位置する一方、第1可動プレート71aに支持された第1メンテナンス装置群72aは下側の離間位置に位置することになる。
【0066】
次に、第6角度状態から回転軸73を正回転方向に45度だけ回転させた第7角度状態では、カム作用位置に、第1カム部材74は第2カム機能部74cが、第2カム部材75は第2非カム機能部75dが、第3カム部材76は第1非カム機能部76bが、それぞれ位置する。そのため、第7角度状態では、カム作用位置に第2カム機能部74cを位置させた第1カム部材74と対応する第1可動プレート71aだけが上方に押し上げられることになる。したがって、第7角度状態では、第1可動プレート71aに支持された第1メンテナンス装置群72aが上側の当接位置に位置する一方、第2可動プレート71b及び第3可動プレート71cに支持された第2メンテナンス装置群72b及び第3メンテナンス装置群72cは下側の離間位置に位置することになる。
【0067】
次に、第7角度状態から回転軸73を正回転方向に45度だけ回転させた第8角度状態では、カム作用位置に、第1カム部材74は第1非カム機能部74bが、第2カム部材75は第2カム機能部75cが、第3カム部材76は第1非カム機能部76bが、それぞれ位置する。そのため、第8角度状態では、カム作用位置に第2カム機能部75cを位置させた第2カム部材75と対応する第2可動プレート71bだけが上方に押し上げられることになる。したがって、第8角度状態では、第2可動プレート71bに支持された第2メンテナンス装置群72bが上側の当接位置に位置する一方、第1可動プレート71a及び第3可動プレート71cに支持された第1メンテナンス装置群72a及び第3メンテナンス装置群72cは下側の離間位置に位置することになる。そして、この第8角度状態から回転軸73を正回転方向に更に45度回転させると、前述した第1角度状態になる。
【0068】
次に、上記プリンタ11の電気的構成について図9に基づき以下説明する。
図9に示すように、このプリンタ11における制御部91は、中央処理装置として機能するCPU92を備え、そのCPU92には、ROM93及びRAM94が接続されている。ROM93には、プリンタ11の稼働状態を制御するための各種の制御プログラムが記憶されている。また、RAM94には、プリンタ11の駆動中にCPU92により適宜書き換えられる各種の情報が記録されるようになっている。
【0069】
制御部91の入力側には、昇降センサ65及び角度センサ95が接続されると共に、制御部91の出力側には、加圧ポンプ38、移動モータ57、昇降装置64、カムモータ80、大気開放弁90、及び吸引ポンプ96の各駆動回路が接続されている。そして、制御部91は、昇降センサ65及び角度センサ95から入力される検出信号に基づき、加圧ポンプ38、移動モータ57、昇降装置64、カムモータ80、大気開放弁90、及び吸引ポンプ96の各駆動状態を制御するようになっている。
【0070】
そこで次に、本実施形態のプリンタ11の作用に関して、特にメンテナンス機構30によるメンテナンス作用に着目して以下説明する。
まず、プリンタ11の電源がオフされる時には、キャリッジ27が非印刷領域まで移動し、記録ヘッド29がホームポジション(図3、図10〜図14の位置)となる位置で停止する。そして、その時点で保湿キャップ53が図3に二点鎖線で示す非干渉位置にある場合は、第1キャップ装置移動工程が実行され、移動モータ57がピニオン56を図3で反時計方向に回転させる方向に駆動制御される。
【0071】
すると、そのピニオン56にラック55を噛合させている帯状板52が非干渉位置から図3に実線で示す干渉位置まで移動する。そのため、その帯状板52に載置状態で支持されている保湿キャップ53も非干渉位置から干渉位置に移動する。なお、保湿キャップ53が電源オフ時点で既に干渉位置に位置している場合には移動モータ57は駆動されない。
【0072】
そして次には、昇降装置64の駆動により、メンテナンスキャップ63が図10に示すように底面を基準面83から距離B(距離B>距離A)だけ上方に位置させる待機位置まで上昇させられる。なお、その前提として、メンテナンスユニット51では、カム部材74〜76を一体回転可能に軸支する回転軸73の角度状態が第1角度状態以外になっている場合には、その角度状態が第1角度状態となるように回転軸73を回転させるべく、制御部91によりカムモータ80が駆動制御される。
【0073】
すなわち、その場合は、メンテナンスキャップ63が昇降装置64の駆動により図3に示す退避位置まで下降させられる。そして、動力伝達軸77に軸支された従動歯車78とカムモータ80の出力軸81に軸支された駆動歯車82とが噛合した状態で制御部91が角度センサ95の検出信号に基づきカムモータ80を回転軸73が第1角度状態となるように駆動制御する。
【0074】
すると、カムモータ80の駆動力が、駆動歯車82から従動歯車78に動力伝達され、更に動力伝達軸77からウォーム79及びウォームホイールを介して回転軸73へと伝達される。そして、回転軸73が第1角度状態になると、カム作用位置には各カム部材74〜76における第1非カム機能部74b,75b,76bが位置するため、メンテナンスキャップ63内でメンテナンス装置群72a〜72cを支持する各可動プレート71a〜71cは各カム部材74〜76の周面において回転中心からの距離がカム機能部よりも短くされた非カム機能部に当接した低位置に支持される。その結果、メンテナンスキャップ63内において各可動プレート71a〜71c上に支持された状態にある全てのメンテナンス装置群72a〜72cが上下二位置のうち下側の離間位置となり、各メンテナンス装置68は各上端(例えばワイパ部材70の上端)がメンテナンスキャップ63の開口部62から上方には突出しない位置状態となる。
【0075】
そして、その状態において昇降装置64の駆動によりメンテナンスキャップ63が図3の退避位置から図11に示すように底面を基準面83から距離C(距離B>距離C>距離A)だけ上方に位置させるメンテナンス装置保湿位置(以下、「保湿位置」と略称する。また、図11には「保湿位置」と略示)まで上昇させられる。すると、メンテナンスキャップ63は、その上昇移動に伴い、周壁部66の上端が干渉位置に位置する保湿キャップ53の基板部58の下面に当接し、開口部62が他部材である保湿キャップ53により覆われる。なお、この場合、メンテナンスキャップ63が退避位置から上方に移動すると、従動歯車78と駆動歯車82との噛合関係が解除されるため、第1角度状態にある回転軸73が空回転してしまう虞があるが、本実施形態では動力伝達軸77のウォーム79と回転軸73のウォームホイールとの噛み合いが空回転を抑制する。
【0076】
そして、図11に示す保湿位置からメンテナンスキャップ63が昇降装置64の駆動により更に上方に上昇させられると、第2キャップ装置移動工程において、その上昇するメンテナンスキャップ63によって保湿キャップ53が記録ヘッド29のある上方に向けて押し上げられる。なお、このとき保湿キャップ53は基板部58の四隅に形成したガイド孔58aに帯状板52から立設されたガイド棒54が挿通された状態でガイド棒54にガイドされつつ上下移動するため、水平方向での位置ずれを抑制された状態で上昇する。
【0077】
そして、昇降装置64の駆動によりメンテナンスキャップ63が図10に示す待機位置まで上昇すると、そのメンテナンスキャップ63上に積層状態となっている保湿キャップ53の周壁部59が記録ヘッド29を支持する支持板28の下面に全ての記録ヘッド29を囲んだ状態となって当接し、開口部60が他部材である支持板28により覆われる。その結果、保湿キャップ53は内部の空間域61が密閉された状態となり、その空間域61内に記録ヘッド29が封じ込められた状態となる。したがって、記録ヘッド29は、大気とは遮断された密閉雰囲気中に存在することになるので、電源オフの期間中にノズル32からのインク溶媒の蒸発によりインク粘度が増大したりノズル32から気泡が混入したりすることが抑制される。
【0078】
一方、図10に示す待機位置において、メンテナンスキャップ63は、電源オフとなる前に大気開放孔89の大気開放弁90が開弁状態とされる。そして、制御部91の制御により加圧ポンプ38が駆動されて保湿液カートリッジ35から保湿液供給チューブ37を介して保湿液がメンテナンスキャップ63内の空間域67に供給される。このとき、加圧ポンプ38の加圧力でメンテナンスキャップ63内の空間域67に加圧供給される保湿液は、その空間域67内での液面88の高さが閾値液面の高さ以上になると、保湿液排出路86の排出口87からメンテナンスキャップ63の外部に排出される。
【0079】
そして、メンテナンスキャップ63内の空間域67に対する保湿液の供給が一通り完了すると、制御部91の制御により大気開放弁90が閉弁状態に切り替えられる。すると、メンテナンス装置68等を収容したメンテナンスキャップ63内の空間域67は内底面上に貯留された保湿液による保湿雰囲気が密閉された空間域67となる。そのため、かかる保湿雰囲気によって、キャップ部材69とワイパ部材70を主体とするメンテナンス装置68及び回転軸73と各カム部材74〜76を主体とする変位部材が機構的に保湿状態を維持される。その結果、メンテナンス装置68の表面上に付着したインクが乾燥固化してしまうようなこともなくなる。このとき、キャップ部材69とワイパ部材70は他の部材と接触していないのが望ましい。これにより他の部材との接触部分で張り付いてしまうことを防止できる。また、キャップ部材69内部も保湿状態とすることができる。
【0080】
その後、プリンタ11の電源がオン状態となり、連続紙13に対して印刷を行う場合には、昇降装置64の駆動によりメンテナンスキャップ63が図10の待機位置から図11に示す保湿位置まで下降させられる。すると、そのメンテナンスキャップ63と共に保湿キャップ53も一緒に下降し、それまでは保湿キャップ53内に位置していた記録ヘッド29が保湿キャップ53の開口部60よりも上方空域に位置するようになる。その結果、記録ヘッド29を搭載したキャリッジ27は非印刷領域から印刷領域への移動が可能となる。そして、印刷領域において記録ヘッド29からインクが噴射されることにより連続紙13に対して印刷が実行される。
【0081】
ところで、そうした印刷の実行途中に記録ヘッド29のノズル32から印刷とは無関係の制御信号に基づきインクを廃インクとして吐出する、所謂フラッシングを行う場合がある。このフラッシングには、所定頁分の印刷が行われる毎に少量の廃インクを吐出する弱フラッシングと、一定期間の経過毎に弱フラッシングよりは量の多い廃インクを吐出する強フラッシングがある。弱フラッシングの場合は、プラテン19の前後両側に設けられた図示略のフラッシングボックスの上方位置まで記録ヘッド29を搭載したキャリッジ27が移動し、そのフラッシングボックス内に記録ヘッド29から廃インクが吐出される。
【0082】
一方、強フラッシングの場合は、メンテナンスユニット51のメンテナンス装置68が備えるキャップ部材69内に記録ヘッド29から廃インクが吐出される。そのため、この強フラッシングを行う場合は、保湿ユニット50が干渉位置から非干渉位置へと水平方向右側に移動し、メンテナンスユニット51におけるメンテナンスキャップ63の上下移動の経路上から左右方向に離間した位置態様となる。
【0083】
すなわち、昇降装置64の駆動によりメンテナンスキャップ63が若干下降し、基板部58との当接状態が解除される。そして、移動モータ57が制御部91によりピニオン56が図11において時計方向に回転するように駆動制御され、そのピニオン56にラック55を噛合させた帯状板52が図11の干渉位置から図12に示すように非干渉位置まで水平移動する。その結果、この帯状板52上に載置状態で支持されている保湿キャップ53も帯状板52と共に干渉位置から非干渉位置へと水平移動する。
【0084】
すると次に、昇降装置64の駆動によりメンテナンスキャップ63が図11の保湿位置から図12に示すように底面を基準面83から距離D(距離D>距離B)だけ上方に位置させるフラッシング位置まで上昇させられる。すると、メンテナンスキャップ63は周壁部66の上端が記録ヘッド29のノズル形成面31の直ぐ下側に位置して各メンテナンス装置68のキャップ部材69が個別対応する記録ヘッド29のノズル形成面31の直下に僅かな距離をおいて位置するようになる。そして、その状態で記録ヘッド29のノズル32から直下のキャップ部材69内に廃インクが吐出される。
【0085】
なお、この場合も、各カム部材74〜76を一体回転可能に軸支した回転軸73の回転角度は動力伝達軸77のウォーム79と回転軸73のウォームホイールとが噛み合うことにより第1角度状態に維持される。そして、そのようなフラッシングが終了すると、記録ヘッド29を搭載したキャリッジ27は再び非印刷領域から印刷領域に移動し、印刷領域において記録ヘッド29から再び連続紙13に対して印刷のためのインクが噴射される。
【0086】
次に、各記録ヘッド29のノズル32からインクを強制的に排出させるクリーニングを行う場合には、前述した強フラッシングを行う場合と同様に、まず、保湿ユニット50が非干渉位置に移動させられる。そして、メンテナンスユニット51では、メンテナンスキャップ63が昇降装置64の駆動により図3に示す退避位置まで下降させられ、動力伝達軸77に軸支された従動歯車78とカムモータ80の出力軸81に軸支された駆動歯車82とが噛合される。そして、制御部91が、クリーニングを実施したい記録ヘッド29とその時点での角度センサ95の検出信号に基づきカムモータ80を駆動制御する。
【0087】
例えば、全ての記録ヘッド29においてクリーニングを実行させる場合は、第1〜第3の全てのカム部材74〜76が第1カム機能部74a,75a,76aをカム作用位置に位置させ得る回転角度(この場合135度)である第4角度状態になるようにカムモータ80の回転方向及び回転量が制御される。また、第1可動プレート71aに支持された第1メンテナンス装置群72aと個別対応する後方側で千鳥状配置をなす5つの記録ヘッド29を選択的にクリーニングしたい場合は、第1可動プレート71aと対応する第1カム部材74だけがカム作用位置に第2カム機能部74cを位置させる第7角度状態となるようにカムモータ80が駆動制御される。
【0088】
すなわち、回転軸73の回転角度が45度間隔で第1角度状態から第8角度状態まで多段階に切り替え制御されることにより、各記録ヘッド29と個別に対応するキャップ部材69がカム部材74と回転軸73とからなる変位部材の変位動作に基づき個別に昇降移動される(個別移動工程)。そして、そのような個別の昇降移動制御によって、メンテナンス装置68による記録ヘッド29の選択クリーニングが可能とされる。
【0089】
そして、回転軸73の回転に伴ってカム作用位置にカム機能部が位置することになったカム部材74〜76と対応する可動プレート71a〜71c上に支持されたメンテナンス装置群72a〜72cが、例えば図12に示す下側の離間位置から図13に示す上側の当接位置に可動プレート71a〜71cと共に上昇する。なお、この場合の昇降ストロークはカム部材74〜76の周面に形成されたカム機能部と非カム機能部とにおける回転中心からの距離の差であり、距離的には僅かなストローク長であるため、第1〜第3の各可動プレート71a〜71cの間で昇降時に誤差が生じる虞も少ない。
【0090】
そして次に、昇降装置64の駆動によりメンテナンスキャップ63が最下方の退避位置から図13に示すように底面を基準面83から距離E(距離E>距離D)だけ上方に位置させる最上方のメンテナンス位置まで上昇させられる。すると、メンテナンスユニット51では、カム機能部がカム作用位置に位置するカム部材74〜76によって上方へ押し上げられた可動プレート71a〜71c上のメンテナンス装置68のキャップ部材69が、対応する記録ヘッド29のノズル形成面31に対して当該ノズル形成面31に形成された全ノズル列33を囲繞するように当接する。
【0091】
なお、この場合は、カム部材74〜76のカム機能部と非カム機能部との回転中心からの距離差に応じた小さな昇降ストロークでの個別昇降とは異なり、全てのメンテナンス装置68を内部の空間域67に収容したメンテナンスキャップ63と共にメンテナンス位置と退避位置との高低差(距離E−距離A)に相当する昇降ストロークで一斉に昇降移動させる(一斉移動工程)。その際、一斉に昇降移動させるための駆動源は単一の昇降装置64だけで済む。そして、図13に示す状態において吸引ポンプ96が制御部91により駆動制御されると、記録ヘッド29のノズル形成面31に当接したキャップ部材69内が負圧になり、その記録ヘッド29のノズル32から廃インクが強制的に吸引排出される。
【0092】
そして次に、そのようにクリーニングが終了した記録ヘッド29のノズル形成面31を払拭清掃するワイピング時には、メンテナンスキャップ63が昇降装置64の駆動により図14に示すように底面を基準面83から距離F(距離E>距離F≒距離D)だけ上方に位置させるワイピング位置まで下降させられる。そして、その状態において、記録ヘッド29を搭載したキャリッジ27が左右方向(図14の場合は左方向)に移動すると、その記録ヘッド29のノズル形成面31に各メンテナンス装置68のワイパ部材70が上端側を撓ませつつ摺接する。そして、その摺接作用により記録ヘッド29のノズル形成面31からインクが払拭される。
【0093】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)記録ヘッド29と対応する複数のメンテナンス装置68はメンテナンスキャップ63に支持されている。そして、昇降装置64は、メンテナンスキャップ63を移動させることにより全てのメンテナンス装置68を一斉にメンテナンス位置まで移動させる。そのため、各メンテナンス装置68における昇降(移動)ストロークの誤差は各メンテナンス装置68を個別に退避位置からメンテナンス位置へ移動させる場合と比べて低減させることができる。さらに、個別移動機構を構成する各カム部材74〜76は、少なくとも1つのメンテナンス装置68を含んでなる複数のメンテナンス装置群72a〜72cを、それぞれ記録ヘッド29に対して接近及び離間する方向に移動させる。そのため、カム部材74〜76を回転させることにより記録ヘッド29に接近した当接位置まで移動させられたメンテナンス装置群72a〜72cによって記録ヘッド29の選択メンテナンスが可能となる。したがって、記録ヘッド29の選択クリーニングを構成の簡素化を図りつつ確実に実行することができる。
【0094】
(2)カム部材74〜76は、メンテナンスキャップ63が退避位置に位置している状態でメンテナンス装置群72a〜72cを移動させる。すなわち、退避位置に位置したメンテナンス装置群72a〜72cは記録ヘッド29から離間しているため、カム部材74〜76によるメンテナンス装置群72a〜72cの移動を記録ヘッド29との接触を避けて行うことができる。したがって、メンテナンス装置群72a〜72cは退避位置において移動した場合にも記録ヘッド29には接触しないため、カム部材74〜76及びカムモータ80からなる動力伝達機構の耐久性を向上させることができる。
【0095】
(3)カムモータ80をメンテナンスキャップ63とは別位置に設置しているため、昇降装置64によってメンテナンスキャップ63、メンテナンス装置68が移動された場合でも、カムモータ80は、その位置状態が保存される。すなわち、昇降装置64が移動させる機構を軽量化することにより昇降装置64の駆動負荷を低減できる。
【0096】
(4)カム部材74〜76を回転させることでメンテナンス装置群72a〜72cを移動させるため、メンテナンス装置群72a〜72cの位置の切替えの応答性を向上させることができる。さらに、駆動歯車82及び従動歯車78を設けることにより、そのような歯車同士の噛み合い、及び噛み合い状態の解除により、簡単な構成で動力伝達の切換を行うことができる。
【0097】
(5)昇降装置64によりメンテナンス位置に移動されると共に、カム部材74〜76により当接位置に移動されたメンテナンス装置群72a〜72cは、該メンテナンス装置群72a〜72cが含むメンテナンス装置68を対応する記録ヘッド29に当接させることが可能となって円滑にメンテナンスを施すことができる。
【0098】
(6)昇降装置64がメンテナンスキャップ63をフラッシング位置に移動させた場合に、キャップ部材69は退避位置よりも記録ヘッド29に近い位置においてインクを受け止めることができる。そのため、フラッシングに伴って噴射されたインクの飛散を抑制してプリンタ11の汚染を抑制することができる。
【0099】
(7)昇降装置64がワイパ部材70を含んで構成されるメンテナンス装置68をメンテナンスキャップ63と共に一斉にワイピング位置まで移動させるため、ワイパ部材70を個別に移動させる場合と比べてそのストローク誤差を低減させることができる。
【0100】
(8)加圧ポンプ38によりインクカートリッジ34及び保湿液カートリッジ35の双方に加圧力を作用させ、それぞれに収容されたインク及び保湿液を供給することができる。すなわち、保湿液を保湿液カートリッジ35から保湿キャップ53及びメンテナンスキャップ63の空間域61,67に向けて導出する加圧ポンプ38を備えることにより、保湿液カートリッジ35と保湿キャップ53及びメンテナンスキャップ63の位置合わせが不要となり、その位置関係に関わらず保湿液の供給が可能となる。したがって、例えば保湿キャップ53がノズル形成面31を覆った状態を維持したまま保湿液を供給することができる。さらに、インクカートリッジ34内のインクを記録ヘッド29に向けて導出させる加圧ポンプ38が保湿液を導出させる機構を兼ね備えている。そのため、保湿液を導出させる機構を個別に備える必要がなく、その構成を小型化及び簡素化することができる。
【0101】
(9)保湿キャップ53及びメンテナンスキャップ63の空間域61,67内に供給された保湿液は、液面88が閾値液面以上の高さとなった場合に排出口87からメンテナンスキャップ63の外部に流出される。そのため、簡単な構成でメンテナンスキャップ63内に一定量の保湿液を残存させることができる。さらに、メンテナンスキャップ63の開口部60からの保湿液の溢れ出しを抑制することができる。すなわち、余分になった保湿液の流出経路を形成することにより保湿液の回収を容易にし、プリンタ11内の汚染を抑制することができる。
【0102】
(10)保湿液供給路を構成する保湿液供給チューブ37及び保湿液流路84を介して供給される保湿液は、メンテナンスキャップ63の空間域67内に供給された保湿液の液面88の高さが排出口87と対応する高さ位置以上となると、保湿液排出路86を介して排出口87から排出されるようになる。したがって、メンテナンスキャップ63からの保湿液の溢れ出しを抑制し、メンテナンスキャップ63内に一定量の保湿液を残存させることができる。また、メンテナンスキャップ63の空間域67は内部に供給されて貯留される保湿液により大気と遮断された密閉空間内の保湿効率を高めることができる。
【0103】
(11)保湿液が供給されるメンテナンスキャップ63内の空間域67にメンテナンス装置68を収容し、その空間域67の開口部62を保湿キャップ53により覆って密閉するようにした。そのため、その密閉空間内に収容されるメンテナンス装置68は、該装置を構成するキャップ部材69及びワイパ部材70を保湿することができる。したがって、キャップ部材69及びワイパ部材70に付着したインクの乾燥を抑制し、乾燥して増粘したインクが記録ヘッド29に付着するのに伴う該記録ヘッド29の汚染を抑制することができる。
【0104】
(12)保湿キャップ53は、記録ヘッド29又は該記録ヘッド29を支持する支持板28によって、開口部60がノズル形成面31のノズル32を囲繞する配置態様にて覆われることにより、記録ヘッド29を保湿することができる。また、メンテナンスキャップ63は、保湿キャップ53により開口部62を覆われるため、メンテナンスキャップ63の空間域67内に収容されるキャップ部材69及びワイパ部材70を保湿することができる。そして、保湿キャップ53及びメンテナンスキャップ63を設ける場合には、メンテナンスキャップ63の開口部62を他の保湿キャップ53によって覆うことにより、開口部62を覆う他部材を別途設けることなくメンテナンスキャップ63内を密閉状態とすることが可能となり、プリンタ11の構成を簡素化することができる。
【0105】
(13)メンテナンスキャップ63の空間域67は、開口部62が他部材により覆われて密閉状態であっても、保湿液の供給時には大気開放弁90が開弁状態とされるため、保湿液が供給されて圧力が高まったメンテナンスキャップ63内の気体は大気開放孔89を介して排出される。したがって、内圧の高まりが抑制されて保湿液を容易に供給することができる。さらに、保湿液の非供給時には大気開放弁90は閉弁状態とされるため、大気開放孔89を通じたメンテナンスキャップ63外への保湿液の蒸散を抑制することができる。
【0106】
(14)保湿キャップ53は密閉状態となる空間域61によってノズル32を囲繞することにより、ノズル32内のインクの乾燥を抑制することができる。また、メンテナンスキャップ63は保湿キャップ53により開口部62を覆われるため、メンテナンスキャップ63の空間域67内に収容されるキャップ部材69及びワイパ部材70の乾燥を抑制することができる。そのため、乾燥して増粘したインクの付着に伴う記録ヘッド29の汚染を抑制することができる。さらに、干渉位置に位置する保湿キャップ53は、昇降装置64の駆動力に基づき移動するメンテナンスキャップ63に押されるように記録ヘッド29へ接近する。そのため、帯状板52及びピニオン56は、昇降装置64の移動方向と交差する前後方向において保湿キャップ53を移動させる構成とすればよい。すなわち、保湿キャップ53を、干渉位置と非干渉位置との移動方向(前後方向)、及び昇降装置64による移動方向(左右方向)の2方向へ簡単な構成で移動させることができる。
【0107】
(15)干渉位置に位置する保湿キャップ53は、メンテナンスキャップ63の移動に伴って記録ヘッド29へ接近する際にガイド棒54によってガイドされる。したがって、保湿キャップ53と記録ヘッド29とのずれが抑制されて、キャッピングの信頼性を向上させることができる。さらに、昇降装置64がメンテナンスキャップ63を記録ヘッド29から離間する方向へ移動させる場合にも、保湿キャップ53はメンテナンスキャップ63と共にガイド棒54にガイドされつつ記録ヘッド29から離間する。したがって、再び干渉位置に位置した際の保湿キャップ53のずれが抑制されて、帯状板52及びピニオン56による干渉位置と非干渉位置との間の移動誤差を低減することができる。
【0108】
(16)連続紙13に対して印刷を施す場合に、メンテナンス装置68を収容したメンテナンスキャップ63の空間域67は保湿キャップ53により密閉される。したがって、メンテナンス装置68を構成するキャップ部材69及びワイパ部材70に付着したインクの乾燥が抑制され、該キャップ部材69及びワイパ部材70により記録ヘッド29の良好なクリーニング及びワイピングが可能となる。
【0109】
(17)キャップ部材69とワイパ部材70を主体に構成されたメンテナンス装置68をメンテナンスキャップ63内においてカム部材74〜76を軸支した回転軸73の回転に基づき上側の当接位置と下側の離間位置との二位置間で位置調整することができる。そして、メンテナンス装置68を上側の当接位置に移動させた場合には、メンテナンス装置68の上端がメンテナンスキャップ63の開口部62から上方に突出した状態となるので、メンテナンスキャップ63をメンテナンス位置へ上昇させれば、対応する記録ヘッド29にメンテナンス装置68が当接してメンテナンス可能となる。一方、メンテナンス装置68を下側の離間位置に移動させた場合には、メンテナンス装置68の上端がメンテナンスキャップ63の開口部62から上方には突出しないので、保湿位置から待機位置へと上昇するメンテナンスキャップ63により保湿キャップ53を下から押し上げることができる。
【0110】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、1つの記録ヘッド29に対して複数のメンテナンス装置68を対応させるようにしてもよい。
【0111】
・上記実施形態において、メンテナンス装置68は、キャップ部材69及びワイパ部材70の何れか一方のみからなる構成としてもよく、また、キャップ部材69及びワイパ部材70に加えて更に可動のフラッシングボックスなど他の機構を備えて構成されたものであってもよい。
【0112】
・上記実施形態において、カムモータ80はメンテナンスキャップ63に装備されて、昇降装置64の駆動に伴いメンテナンスキャップ63と共に上下移動する構成としてもよい。すなわち、駆動歯車82と従動歯車78は噛合状態を常に維持していてもよい。
【0113】
・上記実施形態において、カムモータ80の出力軸81に軸支された駆動歯車82は、メンテナンスキャップ63が昇降装置64の駆動によってメンテナンス位置などの上方の位置へ移動された際に、そのメンテナンスキャップ63と一緒に上下移動する動力伝達軸77に軸支された従動歯車78と噛合可能な状態となる位置に固定配置してもよい。
【0114】
・上記実施形態において、メンテナンス装置群72a〜72cは、各メンテナンス装置群72a〜72cに対して個別に設けられたジャッキなどの昇降機構によって昇降させてもよい。
【0115】
・上記実施形態において、メンテナンスキャップ63は大気開放孔89及び大気開放弁90を備えない構成としてもよい。この場合、メンテナンスキャップ63の空間域67内に保湿液を加圧供給するときにはメンテナンスキャップ63の開口部62が保湿キャップ53によって覆われないように、メンテナンスキャップ63を下降させればよい。
【0116】
・上記実施形態において、保湿液の供給時には、昇降装置64を駆動してメンテナンスキャップ63を下降させて開口部62を開放状態にすることにより、空間域67を大気開放させてもよい。
【0117】
・上記実施形態において、保湿液は、保湿キャップ53内にも供給するようにしてもよい。
・上記実施形態において、保湿キャップ53は、少なくとも1つの記録ヘッド29を個別に囲むようにしてもよい。すなわち、空間域61内において周壁部59と連続するとともに記録ヘッド29間と対応する位置に区画壁を形成し、周壁部59及び区画壁により各記録ヘッド29に対応する保湿キャップ群としてもよい。また、基板部58に、各記録ヘッド29と個別に対応した配置状態となるように保湿キャップ群を設けてもよい。そして、保湿キャップ群を構成する各保湿キャップ内に保湿液を供給するようにしてもよい。
【0118】
・上記実施形態において、電源オフ時に保湿液が空間域67に供給されて貯留しているメンテナンスキャップ63を支持板28に当接させることにより、ノズル形成面31を囲繞するようにしてもよい。この場合、保湿キャップ53は非干渉位置に移動させる。
【0119】
・上記実施形態において、保湿ユニット50はガイド部としてガイド棒54を備えない構成としてもよい。
・上記実施形態では、流体噴射装置をインクジェット式プリンタ11に具体化したが、インク以外の他の流体及び液体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置及び液体噴射装置を採用してもよい。例えば、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】実施形態のプリンタの正面模式図。
【図2】記録ヘッドのノズル形成面を示す模式図。
【図3】メンテナンス機構の模式図。
【図4】図3を4−4線で矢視した保湿ユニットの平面模式図。
【図5】図3を5−5線で矢視したメンテナンスユニットの平面模式図。
【図6】図3を6−6線で矢視したメンテナンスユニットの断面模式図。
【図7】(a)〜(c)は各カム部材のカム形状を示す側面図。
【図8】カム部材と回転軸からなる変位部材の斜視図。
【図9】制御構成のブロック図。
【図10】プリンタの電源オフ時のメンテナンス機構の作用説明図。
【図11】プリンタの印刷時のメンテナンス機構の作用説明図。
【図12】プリンタのフラッシング時のメンテナンス機構の作用説明図。
【図13】プリンタのクリーニング時のメンテナンス機構の作用説明図。
【図14】プリンタのワイピング時のメンテナンス機構の作用説明図。
【符号の説明】
【0121】
11…プリンタ(流体噴射装置)、13…連続紙(ターゲット)、28…支持板(支持体)、29…記録ヘッド(流体噴射ヘッド)、31…ノズル形成面、32…ノズル、34…インクカートリッジ(流体収容体)、35…保湿液カートリッジ(保湿液収容体)、37…保湿液供給チューブ(保湿液供給路)、38…加圧ポンプ(加圧機構)、52…帯状板(第1キャップ装置移動機構)、53…保湿キャップ(第1キャップ装置)、54…ガイド棒(ガイド部)、55…ラック(第1キャップ装置移動機構)、56…ピニオン(第1キャップ装置移動機構)、57…移動モータ(第1キャップ装置移動機構)、60,62…開口部、61,67…空間域、63…メンテナンスキャップ(支持部材、第2キャップ装置)、64…昇降装置(一斉移動機構)、68…メンテナンス装置、69…キャップ部材、70…ワイパ部材、71a〜71c…可動プレート、72a〜72c…メンテナンス装置群、73…回転軸(変位部材)、74〜76…カム部材(変位部材)、78…従動歯車(動力伝達歯車機構)、80…カムモータ(駆動源)、82…駆動歯車(動力伝達歯車機構)、84…保湿液流路(保湿液供給路)、86…保湿液排出路、87…排出口(オーバーフロー穴)、88…液面、89…大気開放孔、90…大気開放弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を収容した流体収容体と、
保湿液を収容した保湿液収容体と、
前記流体収容体から供給される前記流体をノズル形成面に形成されたノズルから噴射する流体噴射ヘッドと、
開口部が他部材に覆われることにより密閉状態になる空間域を有すると共に該空間域内に前記保湿液収容体から供給された前記保湿液を貯留可能なキャップ装置と、
前記流体収容体及び前記保湿液収容体に加圧力を作用させることにより前記流体収容体内から前記流体を前記流体噴射ヘッドに向けて導出させると共に前記保湿液収容体内から前記保湿液を前記キャップ装置の前記空間域内に向けて導出させる加圧機構と
を備えたことを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記キャップ装置には、前記保湿液収容体からの供給に基づき前記空間域内に貯留される前記保湿液の液面が予め設定した閾値液面以上の高さとなった場合に、前記保湿液を前記キャップ装置の外部に流出させるオーバーフロー穴が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記保湿液収容体から前記空間域内に前記保湿液を供給可能な保湿液供給路を有し、前記保湿液供給路の途中からは保湿液排出路が分岐され、該保湿液排出路の下流端は前記オーバーフロー穴と連通していることを特徴とする請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記キャップ装置には、前記流体噴射ヘッドをメンテナンスするメンテナンス装置が前記キャップ装置の前記開口部を前記他部材が覆った場合に前記空間域内に封じ込められる配置態様で収容されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記キャップ装置は、前記流体噴射ヘッド又は該流体噴射ヘッドを支持する支持体に前記開口部を覆われることで密閉状態となる空間域を有する第1キャップ装置と、該第1キャップ装置に前記開口部を覆われることで密閉状態となる空間域を有する第2キャップ装置とを含んで構成され、
前記メンテナンス装置は、前記第2キャップ装置の前記空間域内に収容されていることを特徴とする請求項4に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記キャップ装置は、前記開口部が前記他部材に覆われることにより密閉状態とされる前記空間域と大気とを連通させる大気開放孔と、
該大気開放孔を閉塞して前記空間域と大気との連通状態を切替える大気開放弁と
をさらに備え、
該大気開放弁は、前記加圧機構が前記保湿液収容体に加圧力を作用させてキャップ装置へ保湿液を供給する供給時には前記空間域と大気とを連通させる開弁状態とすると共に、非供給時には前記空間域と大気とを遮断する閉弁状態とすることを特徴とする請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−142982(P2010−142982A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320065(P2008−320065)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】