説明

流体噴射装置

【課題】光の出力低下を防ぐことができると共に、複雑な構成を用いることなく限られたスペースに十分配置することが可能な発光ユニット及び流体噴射装置を提供すること。
【解決手段】所定の光の照射を受けて硬化する材料を含む流体を媒体へ向けて噴射する流体噴射装置に設けられる発光ユニットであって、基体と、前記基体上に設けられて前記所定の光を光射出部から射出する発光素子と、少なくとも前記光射出部を覆うように設けられて前記所定の光を透過させる第1材料からなる第1保護層と、前記第1保護層上に交換可能に設けられて前記所定の光を透過させる第2材料からなる第2保護層とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ユニット及び流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線硬化型インクは、紫外線を照射するまでは硬化が非常に遅く、紫外線を照射すると急速に硬化するという、印刷インクとして好ましい特性を有する。また、硬化にあたって溶剤を揮発させることがないので環境負荷が小さいという利点もある。
【0003】
更に、紫外線硬化型インクは、ビヒクルの組成により種々の媒体に高い付着性を発揮すると共に、硬化した後は化学的に安定しており、接着性、耐薬剤性、耐候性、耐摩擦性等が高く、屋外環境にも耐える等の優れた特性を有する。
【0004】
このため、紙、樹脂フィルム、金属箔等の薄いシート状の媒体の他、光記録媒体のレーベル面、テキスタイル製品など、ある程度立体的な表面形状を有するものに対しても画像を形成できる。
【0005】
紫外線硬化型インクを媒体に付着させる方法としては、塗布、印刷等もあり得るが、刷版なしに任意の画像またはパターンを精度よく形成できるインクジェット式記録装置の利用が期待されている。また、インクを吐出する記録ヘッドを移動させる主走査と、主走査方向に対して交差する方向に媒体を移動させる副走査とを組み合わせる構造により、限られた寸法のノズルを用いて、長尺あるいは面積の広い媒体に対しても任意の領域に画像が記録できる。
【0006】
下記特許文献1には、インクジェット記録装置において、インクに紫外線硬化剤を含有させて、記録直後の記録面に紫外線を照射することにより、記録面の速乾性を向上させることが記載されている。より具体的には、インクジェットプリンタにおいて、インクとして紫外線硬化型インクを使用して、記録ヘッドの主走査方向の両端に設置された紫外線ランプにより媒体に付着させたインクを即座に硬化させて定着させることが記載されている。
【0007】
紫外線硬化型インクを媒体に噴射する際、当該紫外線硬化型インクの溶媒が飛散し、ミストが生じやすいという問題がある。例えば特許文献1に記載のインクジェット記録装置では、記録ヘッドに隣接する位置に紫外線の光源が設けられているため、生じたミストが光源の光射出部に堆積し、紫外線の出力が弱くなってしまうという問題があった。
【0008】
これに対して、特許文献2に示すように、光源と記録用紙との間に光透過フィルムを配置する構成が提案されている。この構成によれば、紫外線を透過するフィルムを光源と記録用紙との間に配置することで、ミストが光源に堆積するのを回避できるようになっている。当該特許文献2には、光透過フィルムを巻き取り可能に設ける構成についても提案されている。この構成によれば、ミストの堆積の度合いに応じて当該光透過フィルムを巻き取ることで、光透過フィルムのうちミストが堆積していない部分を光射出部上に配置できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−155046号公報
【特許文献2】特開2004−223961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の光透過フィルムは、巻き取りの構造が複雑かつ大掛かりであり、インクジェットプリンタ本体内の限られたスペースに配置するのは困難である。
【0011】
上述した事情に鑑み、本発明は、光の出力低下を防ぐことができると共に、複雑な構成を用いることなく限られたスペースに十分配置することが可能な発光ユニット及び流体噴射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係る発光ユニットは、所定の光の照射を受けて硬化する材料を含む流体を媒体へ向けて噴射する流体噴射装置に設けられる発光ユニットであって、基体と、前記基体上に設けられて前記所定の光を光射出部から射出する発光素子と、少なくとも前記光射出部を覆うように設けられて前記所定の光を透過させる第1材料からなる第1保護層と、前記第1保護層上に交換可能に設けられて前記所定の光を透過させる第2材料からなる第2保護層とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、所定の光を透過させる第1材料からなる第1保護層が少なくとも光射出部を覆うように設けられており、さらに所定の光を透過させる第2材料からなる第2保護層がこの第1保護層上に交換可能に設けられているので、所定の光をほとんど減衰させることなく、流体のミストが光源に付着するのを2重の保護層によって確実に保護することができる。本発明では、流体のミストが付着しやすい上層の第2保護層が交換可能に設けられているので、ある程度のミストが第2保護層に付着したときに交換することができ、第2保護層の光透過率を保持することができる。加えて、第1保護層及び第2保護層は少なくとも光射出部を覆う部分に設けられていれば良く、巻き取り機構のような複雑な機構を必要とすることも無いため、限られたスペースであっても十分に配置することができる。これにより、光の出力低下を防ぐことができると共に、複雑な構成を用いることなく限られたスペースに十分配置することが可能な発光ユニットを得ることができる。本発明において、第1材料及び第2材料については、同一の材料であっても異なる材料であっても構わない。
【0014】
上記の発光ユニットは、前記所定の光は紫外線であり、前記第1材料はシリコーン樹脂であり、前記第2材料はシリコーンオイルであることを特徴とする。
紫外線はシリコーン層をほとんど減衰することなく透過することが知られている。本発明によれば、所定の光が紫外線であり、第1材料がシリコーン樹脂であり、第2材料がシリコーンオイルであることとしたので、所定の光として紫外線を用いた場合において、光の出力低下を防ぐことができると共に、複雑な構成を用いることなく限られたスペースに十分配置することが可能な発光ユニットを得ることができる。
【0015】
本発明に係る流体噴射装置は、所定の光の照射を受けて硬化する材料を含む流体を媒体へ向けて噴射する噴射ヘッドと、前記媒体へ向けて前記所定の光を照射する光源とを備える流体噴射装置であって、前記光源として、上記の発光ユニットを用いることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、所定の光の照射を受けて硬化する材料を含む流体を媒体へ向けて噴射する噴射ヘッドと、この媒体へ向けて所定の光を照射する光源とを備える流体噴射装置について、光源として光の出力低下を防ぐことができると共に、複雑な構成を用いることなく限られたスペースに十分配置することが可能な上記の発光ユニットを用いることとしたので、媒体へ向けて照射する所定の光の出力が低下することのない信頼性の高い流体噴射装置を得ることができると共に、簡単な構成の流体噴射装置を得ることができる。
【0017】
上記の流体噴射装置は、前記発光ユニットに設けられた前記第2保護層を交換する交換機構を更に備えることを特徴とする。
上述した巻取り型の光透過フィルムは、一通りフィルムを巻き終えた後にこの光透過フィルムを手作業で交換する必要がある。これに対して、本発明によれば、発光ユニットに設けられた第2保護層を交換する交換機構を更に備えることとしたので、第2保護層を手作業で交換する手間を省くことができる。これにより、メンテナンスを簡単にすることができる。
【0018】
上記の流体噴射装置は、前記交換機構は、前記第2保護層を除去する除去機構と、前記第2保護層が設けられる位置に前記所定の材料を供給する供給機構とを有することを特徴とする。
本発明によれば、交換機構が、第2保護層を除去する除去機構と、第2保護層が設けられる位置に所定の材料を供給する供給機構とを有することとしたので、交換機構の第2保護層の除去機能を有する除去機構と第2保護層の供給機能を有する供給機構とを分散させて配置することができる。これにより、交換機構が大型化するのを回避することができる。
【0019】
上記の流体噴射装置は、前記噴射ヘッド及び前記光源を保持する保持部材を更に備え、 前記除去機構及び前記供給機構のうち少なくとも一方は、前記保持部材の内部に設けられていることを特徴とすることを特徴とする。
本発明によれば、噴射ヘッド及び光源を保持する保持部材を更に備え、除去機構及び供給機構のうち少なくとも一方が保持部材の内部に設けられていることとしたので、除去機構及び供給機構を配置するスペースを節約することができる。
【0020】
上記の流体噴射装置は、前記噴射ヘッドをメンテナンスするメンテナンス部を更に備え、前記除去機構及び前記供給機構のうち少なくとも一方は、前記メンテナンス部に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、流体噴射装置が噴射ヘッドをメンテナンスするメンテナンス部を更に備え、除去機構及び供給機構のうち少なくとも一方は、メンテナンス部に設けられていることとしたので、噴射ヘッドのメンテナンスの際に第2保護層の交換を併せて行うことができる。これにより、メンテナンスに要する時間を節約することができる。
【0021】
上記の流体噴射装置は、前記除去機構は、前記第2保護層を掻き取る掻き取り部を有することを特徴とする。
本発明によれば、交換機構のうち除去機構が第2保護層を掻き取る掻き取り部を有することとしたので、第2保護層は当該掻き取り部によって物理的に除去されることとなる。これにより、第2保護層及び第2保護層に付着した流体のミストを確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンタの概略構成図。
【図2】記録ヘッド周辺の要部平面図。
【図3】記録ヘッドのノズル形成面を示す平面図。
【図4】キャリッジの構成を示す側断面図。
【図5】メンテナンス部の構成を示す側断面図。
【図6】プリンタの動作を示す工程図。
【図7】同、工程図。
【図8】同、工程図。
【図9】同、工程図。
【図10】同、工程図。
【図11】同、工程図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。本実施形態では、本発明に係る液体噴射装置として、シリアル方式のインクジェットプリンタ(以下、プリンタ1という)を例示する。
図1は、本実施形態に係るプリンタ1の概略構成を示す一部分解図である。
プリンタ1は、プリンタ本体5と、当該プリンタ本体5内に設けられたキャリッジ4とを有している。キャリッジ4には、サブタンク2、記録ヘッド(噴射ヘッド)3及び紫外線照射部(発光ユニット)7が搭載されている。
【0024】
プリンタ本体5には、キャリッジ移動機構65と、記録ヘッド3のクリーニング動作や保湿動作、紫外線照射部7の保守動作等のメンテナンス動作を行うメンテナンス部14と、サブタンク2に供給されるインクLを貯留するインクカートリッジ6とが設けられている。また、プリンタ本体5には、記録紙を搬送する不図示の紙送り機構が設けられている。紙送り機構は紙送りモータなどから構成されており、この紙送り機構によって記録紙が記録(印字・印刷)動作に連動するようにプラテン13上に順次送出されるようになっている。また、プリンタ本体5には、プリンタ1の動作を統括的に制御する制御部60が設けられている。
【0025】
キャリッジ移動機構65はプリンタ本体5の長手方向(幅方向)に沿ってキャリッジ4を往復移動させる移動機構であり、プリンタ本体5の幅方向に架設されたガイド軸8と、パルスモータ9と、パルスモータ9の回転軸に接続された駆動プーリー10と、プリンタ本体5の幅方向の端部に設けられた遊転プーリー11と、駆動プーリー10と遊転プーリー11との間に掛け渡されたタイミングベルト12を有している。キャリッジ4はタイミングベルト12に接続されている。パルスモータ9の駆動によってキャリッジ4が駆動プーリー10と遊転プーリー11との間をガイド軸8に沿って往復移動するようになっている。
【0026】
メンテナンス機構14は、キャップ部材15及び保護液供給機構16を有している。キャップ部材15は例えばゴム等の弾性材から構成されたトレー形状の部材であり、キャリッジ4の移動領域内のうち記録領域から外れた場所、例えばプリンタ本体5の端部(駆動プーリー10側)に配置されている。キャップ部材15が配置されている場所はキャリッジ4のホームポジションとなる。ホームポジションとは、プリンタ1の電源がオフになっている場合や長時間にわたって記録が行われない場合などに、キャリッジ4が待機する場所である。キャップ部材15には吸引ポンプ15aが設けられている。保護液供給機構16は紫外線照射部7の照射面を保護する保護液を供給する。
【0027】
インクカートリッジ6は記録に用いられるインクLが貯留された流体貯留部である。インクカートリッジ6とサブタンク2との間はインク供給チューブ(流体流通部)34によって接続されている。インクカートリッジ6内のインクLはインク供給チューブ34内を流通してサブタンク2に供給されるようになっている。本実施形態ではブラック(B)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4種類のインクLを使用する構成になっている。
【0028】
図2はサブタンク2及び記録ヘッド3の構成を説明する断面図である。
同図に示すように、サブタンク2はインク供給チューブ34の端部に設けられた拡幅部であり、ポリプロピレン等の樹脂製材料によって成型されている。このサブタンク2は、インク室27、弾性シート26、針接続部28、接続流路29及びタンク部フィルタ30を有している。
【0029】
インク室27は断面視擂鉢状の凹部であり、インク供給チューブ34から供給されるインクを保持する部位である。このインク室27は不図示のインク流入口を介してインク供給チューブ34に接続されている。インク室27の図中左側は幅が狭くなるように形成されており、図中右側は開口部になっている。
【0030】
弾性シート26はインク室27の開口部に貼り付けられた透明なシートである。この弾性シート26はインク室27を収縮させる方向及びインク室27膨張させる方向の両方向に変形可能になっている。弾性シート26の変形によってインクLの圧力変動が吸収され、サブタンク2内で圧力変動が吸収された状態でインクLが記録ヘッド3側に供給されるようになっている。このようにサブタンク2は圧力ダンパとして機能するようになっている。
【0031】
針接続部28はインク導入針22が挿入される部位であり、サブタンク2の下方に突出するように設けられている。針接続部28にはシール部材31が嵌め込まれている。このシール部材31はインク導入針22が液密に嵌入されるようになっている。接続流路29はインク室27と針接続部28との間でインクを流通させる流路である。タンク部フィルタ30はインク室27から接続流路29へと移動するインクを濾過するフィルタであり、接続流路29とインク室27との境界に取り付けられている。
【0032】
記録ヘッド3は、導入針ユニット17と、ヘッドケース18と、流路ユニット19と、アクチュエータユニット20とを有している。
導入針ユニット17は、インク導入針22、フィルタ21及びインク導入路23を有している。インク導入針22は上端部が先細りになった筒状部材であり、この先細りの上端部がサブタンク2に装着された状態になっている。インク導入針22の上端部にはサブタンク2からインクLを導入針内部に導入するための導入口が設けられている。フィルタ21はインク導入針22の下端面を覆うように配置されている。インク導入路23はフィルタ21を介してインク導入針22の内部に連通されている。インク導入路23の下端はパッキン24を介してヘッドケース18内部に接続されている。
【0033】
図3は記録ヘッド3のヘッドケース18及び流路ユニット19の構成を示す断面図である。
同図に示すように、ヘッドケース18の底部に流路ユニット19が接合された状態になっている。
【0034】
ヘッドケース18は合成樹脂製の中空箱体状部材であり、ヘッドケース18の内部にはケース流路25及び収容空部37が形成されている。ケース流路25はヘッドケース18の高さ方向を貫通するように形成されている。ケース流路25の上端はパッキン24を介して導入針ユニット17のインク導入路23に連通されている。ケース流路25の下端は、流路ユニット19内の共通インク室44に連通されており、インク導入針22から導入されたインクLがインク導入路23及びケース流路25を通じて共通インク室44側に供給されるようになっている。
【0035】
収容空部37の上端面にはパッキン24を介在した状態で導入針ユニット17が取り付けられている。収容空部37内にはアクチュエータユニット20が収容されている。アクチュエータユニット20は、櫛歯状に配列された複数の圧電振動子38と、この圧電振動子38が接合される固定板39と、プリンタ本体側からの駆動信号を圧電振動子38に供給する配線部材としてのフレキシブルケーブル40とから構成される。各圧電振動子38は固定端部側が固定板39上に接合され自由端部側が固定板39の先端面よりも外側に突出しており、いわゆる片持ち梁の状態で固定板39上に取り付けられている。各圧電振動子38を支持する固定板39は、例えば厚さ1mm程度のステンレス鋼によって構成されている。アクチュエータユニット20は、収容空部37を区画するケース内壁面に固定板39の背面を接着することで収容空部37内に収納・固定されている。
【0036】
流路ユニット19は、振動板(封止板)41、流路基板42及びノズル基板43を有している。これら振動板41、流路基板42及びノズル基板43はこの順に積層された状態になっており、不図示の接着剤で接合され一体化されている。振動板41、流路基板42及びノズル基板43は、共通インク室44からインク供給口45及び圧力室46を通りノズル開口47に至るまでの一連のインク流路(液体流路)を形成する部材である。圧力室46は、ノズル開口47の配列方向(ノズル列方向)に対して直交する方向に細長い空間として形成されている。共通インク室44は、ケース流路25と連通されており、インク導入針22側からのインクLが導入される空間である。共通インク室44に導入されたインクLは、インク供給口45を通じて各圧力室46に分配されるようになっている。
【0037】
ノズル基板43は例えばステンレス鋼などの金属からなる板材であり、ドット形成密度に対応したピッチ(例えば180dpi)で配列された複数のノズル開口47が形成されている。ノズル開口47は各サブタンク2に対応して合計22列設けられた状態になっている。1つのノズル列は、例えば、180個のノズル開口47によって構成されている。
【0038】
ノズル基板43と振動板41との間に配置される流路基板42は、インク流路となる流路部、具体的には、共通インク室44、インク供給口45及び圧力室46となる空部が区画形成された板状の部材である。流路基板42は例えば結晶性を有する基材であるシリコンウェハーを異方性エッチング処理することによって作製されている。振動板41は、ステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムをラミネート加工した二重構造の複合板材である。この振動板41の圧力室46に対応する部分には、エッチングなどによって支持板を環状に除去することで、圧電振動子38の先端面が接合される島部48が形成されている。この島部48は、ダイヤフラム部として機能する。
【0039】
振動板41は、圧電振動子38の作動に応じて島部48の周囲の弾性フィルムが弾性変形するように構成されており、流路基板42の一方の開口面を封止し、コンプライアンス部49として機能するようにもなっている。このコンプライアンス部49に相当する部分についてはダイヤフラム部と同様にエッチングなどにより支持板が除去され弾性フィルムだけが残った状態になっている。
【0040】
上記の記録ヘッド3において、フレキシブルケーブル40を通じて駆動信号が圧電振動子38に供給されると、この圧電振動子38が素子長手方向に伸縮し、これに伴い島部48が圧力室46に近接する方向或いは離隔する方向に移動するようになっている。島部48の移動によって圧力室46の容積が変化し、圧力室46内のインクLに圧力変動が生じ、この圧力変動によってノズル開口47からインク滴Dが吐出されるようになっている。
【0041】
図4は、キャリッジ4上の構成を示す断面図であり、特に紫外線照射部7の構成を詳細に示している。
同図に示すように、紫外線照射部7は、記録ヘッド3に対してキャリッジ4の移動方向の両側に例えば1つずつ設けられている。この紫外線照射部7は、基板71、発光素子72、枠部材73、第1保護層74、第2保護層75、ヒートパイプ76及びファン77を有している。発光素子72、枠部材73、第1保護層74及び第2保護層75は基板71の下面71a側に設けられており、ヒートパイプ76及びファン77は基板71の上面71b側に設けられている。
【0042】
基板71には外部に接続された不図示の配線が設けられている。発光素子72は、例えば電気信号によって紫外線を射出するLED素子であり、基板71に例えばワイヤー72aを介して実装されている。ワイヤー72aは基板上に設けられた不図示の配線に接続されており、当該ワイヤー72a及び不図示の配線を介して外部から発光素子72へ電気信号が供給されるようになっている。枠部材73は発光素子72を囲うように基板71の外周に沿って配置されている。
【0043】
第1保護層74は、発光素子72から射出される紫外線を透過する材料、例えばシリコーンゴムなどの材料によって構成されており、発光素子72及びワイヤー72aの全体を覆うように設けられている。本実施形態では、第1保護層74が発光素子72及びワイヤー72aの全体を覆うように設けられているが、この第1保護層74は少なくとも発光素子72の光射出面72bを覆うように設けられていれば良い。したがって、例えば当該第1保護層74が光射出面72b上のみに設けられている構成であっても構わない。
【0044】
第2保護層75は、例えば紫外線を透過するシリコーンオイルなどの材料によって構成されており、第1保護層74の表面74aに配置されている。この第2保護層75は、例えば構成材料であるシリコーンオイルを取り替えることによって交換可能に設けられている。
【0045】
ヒートパイプ76は、吸熱部材76a、放熱部材76b及び循環部材76cを有している。吸熱部材76aは例えば熱伝導率の高い材料、例えば金属などの材料によって構成されており、基板71の上面71b上に接触するように配置されている。放熱部材76bは吸熱部材76aとは離れた位置に設けられており、熱伝導率の高い材料、例えば金属などの材料によって構成されている。放熱部材76bは放熱の効率が高くなるように薄板状に複数層設けられており、各層が間隔を空けて配置されている。循環部材76cは吸熱部材76aと放熱部材76bとに接するように設けられた管状部材であり、管内には例えば水などの熱容量の高い液体が封入されている。ファン77はヒートパイプ76の放熱部材76bの近傍に設けられており、ヒートパイプ76の放熱部材76bによって放出される熱を拡散するようになっている。
【0046】
図5は、メンテナンス部14の構成を示す側断面図である。
同図に示すように、メンテナンス部14には、キャップ部材15と、保護液供給機構(供給機構)16とが設けられている。保護液供給機構16は、キャップ部材15に対してキャリッジ4の移動方向の両側に例えば1つずつ設けられている。
【0047】
キャリッジ4の移動により記録ヘッド3がキャップ部材15に平面視で重なる位置に配置された状態において、2つの紫外線発光部7はそれぞれ保護液供給機構16に平面視で重なる位置に配置されるようになっている。このように、キャップ部材15と保護液供給機構16との位置関係は記録ヘッド3と紫外線発光部7との位置関係に対応している。
【0048】
保護液供給機構16は、保護液収容部材16a、保護液層16b及び保護液塗布部材16cを有している。保護液収容部材16aは枡状に形成されており、収容部には保護液層16bとして上記の第2保護層75の構成材料であるシリコーンオイルが収容されている。
【0049】
保護液塗布部材16cは、例えばスポンジなどによって構成されており、保護液層16bに接触するように保護液収容部材16a内部に設けられている。保護液層16cに接触した状態で、保護液塗布部材16cにはシリコーンオイルが含浸されている。各保護液供給機構16は、それぞれ独立してキャリッジ4に近づく方向及びキャリッジ4から遠ざかる方向(図中上下方向)に移動可能に設けられている。
【0050】
図1及び図5に示すように、メンテナンス部14とプラテン13との間の領域にはスクレーバ33が設けられている。スクレーバ33は、紫外線照射部7の第2保護層75を除去する除去機構である。このスクレーバ33は、軸部33a、支持部33b及び掻き取り部33cを有しており、側面視でL字状に形成されている。
【0051】
軸部33aは図中上下方向に立設された部分であり、自身の軸を中心に回動可能に設けられている。支持部33bは軸部33aの先端から当該軸部33aの延在方向に対して折れ曲がる方向に設けられており、掻き取り部33cを支持している。掻き取り部33cは、支持部33bの先端に取り付けられている。このスクレーバ33は、図中上下方向に移動可能に設けられている。
上記保護液供給機構16とスクレーバ33とによって、第2保護層75を交換する交換機構80を構成している。
【0052】
次に、上記のように構成されたプリンタ1の動作を説明する。
記録用紙Rに記録を行う場合、まず図6に示すように、プラテン13上に記録用紙Rを配置し、キャリッジ4を移動させながら記録ヘッド3からインクを噴射して記録用紙R上にインクを配置する。インクの噴射により、記録ヘッド3と記録用紙Rとの間にミストが発生し、当該ミストの一部が第2保護層75に付着する。付着したミストは第2保護層75内に入り込み、当該第2保護層75内に浮遊した状態で保持される。
【0053】
インクの噴射時には紫外線照射部7の発光素子72に外部から電気信号を供給し、光射出面72aから紫外線UVが射出された状態としておく。発光素子72上に設けられた第1保護層74及び第2保護層75を構成する材料は紫外線を透過するシリコーンであるため、射出された紫外線UVは第1保護層74及び第2保護層75を倒壊して記録用紙R上に到達する。
【0054】
紫外線UVを射出し続けると、発光素子72が発熱する。この熱は基板71からヒートパイプ76の吸熱部材76aに吸収される。ヒートパイプ76においては、循環部材76c内を循環する液体を介して放熱部材76bに熱が移動し、放熱部材76bから熱が放出される。放熱部材76bから放出される熱を拡散できるように、紫外線の射出時にはファン77を回転させておくようにする。
【0055】
紫外線を射出しながらキャリッジ4を移動させることにより、図7に示すように、記録用紙Rに配置されたインクに紫外線が照射される。インクに紫外線が照射されることによって当該インクは固化し、記録用紙R上に定着する。このようにして記録用紙Rへの記録が行われる。
【0056】
この記録ヘッド3及び紫外線照射部7のメンテナンスを行う場合、キャリッジ4をメンテナンス部14へと移動させて行う。まず、発光素子72への電気信号の供給を停止し、紫外線の射出を停止させる。この状態でキャリッジ4をメンテナンス部14へ向けて移動させる。
【0057】
キャリッジ4がプラテン13とメンテナンス部14との間に到達したとき、図8に示すように、スクレーバ33をキャリッジ4に近づけ、スクレーバ33の先端の掻き取り部33cが第2保護層75に食い込ませる。この状態で、キャリッジ4を移動させながらスクレーバ33を回動させると、掻き取り部33cによって第1保護層74の表面74a上が摺動され、ミストの入り込んだ第2保護層75が掻き取られる。
【0058】
キャリッジ4がメンテナンス部14に到達した後、図9に示すようにキャップ部材15を記録ヘッド3に当接させてインク吐出部分を密閉し、吸引機構15aによって密閉空間を吸引する。この吸引によってノズルのメニスカスが整えられる。
【0059】
吸引後、キャップ部材15を定位置に戻し、保護液塗布機構16を紫外線照射部7へ近づける。図8に示す工程においてミストを含んだ第2保護層75を除去したため、第1保護層74の表面74が露出した状態になっている。この状態において、図10に示すように、保護液塗布部材16cの表面16dを第1保護層74の表面74aに押し付け、当該保護液塗布部材16cに含浸されていたシリコーンオイルを第1保護層74の表面74a上に塗布する。
【0060】
シリコーンオイルの塗布後、保護液塗布機構16を元の位置に戻すと、図11に示すようにシリコーンオイルが第1保護層74の表面74a上に層状に保持された状態で残る。この層状に保持されたシリコーンオイルの層が新たな第2保護層75となる。第1保護層74の表面74a上に第2保護層75を形成した後、キャリッジ4を再びプラテン13の方へと移動させ、新たに記録用紙Rに記録を行う。
【0061】
このように、本実施形態によれば、紫外線を透過させるシリコーンゴムからなる第1保護層74が発光素子72の光射出面72bを覆うように設けられており、さらに紫外線を透過させるシリコーンオイルからなる第2保護層75がこの第1保護層74上に交換可能に設けられているので、紫外線をほとんど減衰させることなく、インク噴射時のミストが光射出面72bに付着するのを2重の保護層によって確実に保護することができる。
【0062】
本実施形態では、ミストが付着しやすい上層の第2保護層75が交換可能に設けられているので、ある程度のミストが第2保護層75に付着したときに交換することができ、第2保護層75の光透過率を保持することができる。加えて、第1保護層74及び第2保護層75は光射出面72aを覆う部分に設けられていれば良く、巻き取り機構のような複雑な機構を必要とすることも無いため、限られたスペースであっても十分に配置することができる。これにより、紫外線の出力低下を防ぐことができると共に、複雑な構成を用いることなく限られたスペースに十分配置することが可能な紫外線照射部7を得ることができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、紫外線硬化型インクを記録用紙Rへ向けて噴射する記録ヘッド3と、この記録用紙Rへ向けて紫外線UVを照射する光源とを備えるプリンタ1について、光源として光の出力低下を防ぐことができると共に、複雑な構成を用いることなく限られたスペースに十分配置することが可能な上記の紫外線照射部7を用いることとしたので、記録用紙Rへ向けて照射する紫外線UVの出力が低下することのない信頼性の高いプリンタ1を得ることができると共に、簡単な構成のプリンタ1を得ることができる。
【0064】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
紫外線を減衰させることなく透過させる材料であれば、シリコーンとは異なる材料、あるいはシリコーンと当該シリコーンとは異なる材料との混合材料であっても構わない。
【0065】
また、上記実施形態においては、スクレーバ33がプラテン13とメンテナンス部14との間に配置された構成を説明したが、これに限られることは無く、例えばスクレーバ33をメンテナンス部14に配置する構成であっても構わない。逆に、上記実施形態においては、保護液供給機構16がメンテナンス部14に配置された構成を説明したが、これに限られることは無く、例えば保護液供給機構16をプラテン13とメンテナンス部14との間に配置された構成であっても構わない。また、スクレーバ33及び保護液供給機構16をキャリッジ4に搭載する構成であっても構わない。
【0066】
また、上記実施形態では、スクレーバ33が先端に掻き取り部33cを有する構成を説明したが、これに限られることは無く、例えば掻き取り部33cの代わりにスポンジなどの吸収部材を配置する構成であっても構わない。
【0067】
また、上記実施形態では、保護液供給機構16が保護液塗布部材16cによって第1保護層74の表面74a上にシリコーンオイルを塗布する構成としたが、これに限られることは無く、例えば第1保護層74の表面74a上にシリコーンオイルを直接流し込むことができる機構を配置しても構わない。
【符号の説明】
【0068】
1…プリンタ(流体噴射装置) 3…記録ヘッド(噴射ヘッド) 7…紫外線照射部(発光ユニット、光源) 14…メンテナンス部 16…保護液供給機構(供給機構) 33…スクレーバ(除去機構) 33c…掻き取り部 71…基板(基体) 72…発光素子 72b…光射出面(光射出部) L…インク(流体) 記録用紙R…(媒体) UV…紫外線(所定の光)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の光の照射を受けて硬化する材料を含む流体を媒体へ向けて噴射する流体噴射装置に設けられる発光ユニットであって、
基体と、
前記基体上に設けられて前記所定の光を光射出部から射出する発光素子と、
少なくとも前記光射出部を覆うように設けられて前記所定の光を透過させる第1材料からなる第1保護層と、
前記第1保護層上に交換可能に設けられて前記所定の光を透過させる第2材料からなる第2保護層と
を備えることを特徴とする発光ユニット。
【請求項2】
前記所定の光は紫外線であり、
前記第1材料はシリコーン樹脂であり、
前記第2材料はシリコーンオイルである
ことを特徴とする請求項1に記載の発光ユニット。
【請求項3】
所定の光の照射を受けて硬化する材料を含む流体を媒体へ向けて噴射する噴射ヘッドと、前記媒体へ向けて前記所定の光を照射する光源とを備える流体噴射装置であって、
前記光源として、請求項1又は請求項2に記載の発光ユニットを用いる
ことを特徴とする流体噴射装置。
【請求項4】
前記発光ユニットに設けられた前記第2保護層を交換する交換機構を更に備える
ことを特徴とする請求項3に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記交換機構は、
前記第2保護層を除去する除去機構と、
前記第2保護層が設けられる位置に前記所定の材料を供給する供給機構と
を有することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記噴射ヘッド及び前記光源を保持する保持部材を更に備え、
前記除去機構及び前記供給機構のうち少なくとも一方は、前記保持部材の内部に設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載の流体噴射装置。
【請求項7】
前記噴射ヘッドをメンテナンスするメンテナンス部を更に備え、
前記除去機構及び前記供給機構のうち少なくとも一方は、前記メンテナンス部に設けられている
ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の流体噴射装置。
【請求項8】
前記除去機構は、前記第2保護層を掻き取る掻き取り部を有する
ことを特徴とする請求項5から請求項7のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−14148(P2013−14148A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−236389(P2012−236389)
【出願日】平成24年10月26日(2012.10.26)
【分割の表示】特願2008−26692(P2008−26692)の分割
【原出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】