説明

流体射出アセンブリ

第1の通路(154/254)が内部に形成された少なくとも1つの内側層(50/150/250)と、少なくとも1つの内側層の両側に配置された第1の外側層及び第2の外側層(30/40)とを有する流体射出アセンブリ。第1の外側層と第2の外側層はそれぞれ、少なくとも1つの内側層に隣接する面(32/42)を有し、その面に形成された液滴射出素子(70)と、液滴射出素子に連通する流体通路(80)とを有する。第1の外側層と第2の外側層の流体通路は、少なくとも1つの内側層の流体通路に連通し、少なくとも1つの内側層と第1の外側層の流体通路によって第1のノズル(13)列(61)が形成され、少なくとも1つの内側層と第2の外側層の流体通路によって第2のノズル(13)列(2)が形成される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
インクジェット印刷システムは流体射出システムの一実施形態であり、プリントヘッド、プリントヘッドに液体インクを供給するインク供給源、及び、プリントヘッドを制御する電子コントローラを含む。プリントヘッドは流体射出装置の一実施形態であり、複数のオリフィス又はノズルを通して用紙のような印刷媒体に対してインク滴を射出することにより、印刷媒体に対して印刷を行う。一般に、オリフィスは1以上のアレイ状に配置される。そして、プリントヘッドと印刷媒体を相対移動させながらオリフィスから適当な順番でインクを射出することにより、印刷媒体上に、文字その他の画像が印刷される。
【0002】
インクジェット印刷システムの印刷速度を向上させる1つの方法は、システムのノズルの数を増やし、1秒当たりに射出可能なインク滴の総数を増やすことである。ワイドアレイインクジェット印刷システムと一般に呼ばれる一実施形態では、複数の個別のプリントヘッド又はプリントヘッドダイを共通の担体に搭載することにより、ノズル数を増やしている。不都合なことに、複数の個別のプリントヘッドダイを共通の担体に搭載すると、その製造は複雑になる。また、プリントヘッドダイ間の位置ずれは、インクジェット印刷システムの印刷精度に悪影響を与えることがある。
【0003】
上記のような理由及びその他の理由から、本発明が必要となる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態は流体射出アセンブリである。流体射出アセンブリは、内部に流体通路が画定された少なくとも1つの内側層を有し、少なくとも1つの内側層の両側に配置された第1の外側層及び第2の外側層を有する。第1の外側層及び第2の外側層はそれぞれ、少なくとも1つの内側層に隣接する面を有し、その面に形成された液滴射出素子と、液滴射出素子と連通する流体通路とを有する。第1の外側層及び第2の外側層の流体通路は少なくとも1つの内側層の流体通路に連通し、少なくとも1つの内側層と第1の外側層の流体通路によって第1のノズル列が形成され、少なくとも1つの内側層と第2の外側層の流体通路によって第2のノズル列が形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
下記の詳細な説明では添付の図面を参照する。図面は本発明を実施する特定の実施形態を例として描いたものである。これに関し、「上」、「下」、「前」、「後ろ」、「先」、「後」のような方向を表す用語は、説明している図面の向きを基準として使用される。本発明の種々の実施形態の構成要素は多数の異なる姿勢で配置することができるので、方向を表す用語は例として使用するものであり、そこに制限の意図は全くない。本発明の範囲から外れることなく他の実施形態を採用したり、構造的又は論理的な変更を施したりすることも可能であると考えられる。従って、下記の詳細な説明を制限の意味で解釈してはならない。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲により規定される。
【0006】
図1は、本発明によるインクジェット印刷システム10の一実施形態を示している。インクジェット印刷システム10は流体射出システムの一実施形態であり、プリントヘッドアセンブリ12のような流体射出アセンブリと、インク供給アセンブリ14のような流体供給アセンブリとを含む。図示の実施形態の場合、インクジェット印刷システム10は、取り付けアセンブリ16、媒体搬送アセンブリ18、及び電子コントローラ20を更に有している。
【0007】
プリントヘッドアセンブリ12は流体射出アセンブリの一実施形態であり、本発明の一実施形態に従って構成され、複数のオリフィス又はノズル13から1以上のカラーインク又はUV可読インクのインク滴を射出する。下記の説明は、プリントヘッドアセンブリ12からのインクの射出に関するものとなっているが、透明の流体を含む、他の液体、流体又は流動性物質をプリントヘッドアセンブリ12から射出することも可能である。
【0008】
一実施形態において、インク滴は印刷媒体19のような媒体に向けて射出され、印刷媒体19に印刷される。ノズル13は通常1以上の列又はアレイとして配置される。一実施形態では、プリントヘッドアセンブリ12と印刷媒体19が相対移動される際に、ノズル13から適当な順序でインクが射出され、印刷媒体19上に文字、記号及び/又は他の図形又は画像が印刷される。
【0009】
印刷媒体19には、紙、カード用紙、封筒、ラベル、透明シート、マイラーのような、任意のタイプの適当なシート材料が含まれる。一実施形態において印刷媒体19には、連続用紙や連続ロール印刷媒体19が使用される。従って、印刷媒体19は未印刷の連続ロール紙であってもよい。
【0010】
インク供給アセンブリ14は流体供給アセンブリの一実施形態であり、プリントヘッドアセンブリ12にインクを供給するように構成され、インクを収容するリザーバ15を有している。従って、リザーバ15からプリントヘッドアセンブリ12へインクが流れる。一実施形態において、インク供給アセンブリ14とプリントヘッドアセンブリ12は再循環インク供給システムを形成する。その場合、インクはプリントヘッドアセンブリ12からリザーバ15へ戻される。一実施形態において、プリントヘッドアセンブリ12とインク供給アセンブリ14は、インクジェットカートリッジ(又はペン)又は流体噴射カートリッジ(又はペン)の中に一緒に収容される。他の実施形態において、インク供給アセンブリ14は、プリントヘッドアセンブリ12とは別に構成され、供給チューブのようなインタフェース接続を通してインクをプリントヘッドアセンブリ12に供給する場合がある。
【0011】
取り付けアセンブリ16は、プリントヘッドアセンブリ12を媒体搬送アセンブリ18に対して位置決めし、媒体搬送アセンブリ18は、印刷媒体19をプリントヘッドアセンブリ12に対して位置決めする。その結果、プリントヘッドアセンブリ12がインクを付着させる範囲である印刷ゾーン17は、プリントヘッドアセンブリ12と印刷媒体19の間の範囲においてノズル13の近くに画定される。印刷中は、媒体搬送アセンブリ18により、印刷ゾーン17を通して印刷媒体19が送られる。
【0012】
一実施形態において、プリントヘッドアセンブリ12は走査型プリントヘッドアセンブリである。従って、取り付けアセンブリ16によってプリントヘッドアセンブリ12を媒体搬送アセンブリ18及び印刷媒体19に対して移動させながら、印刷媒体19にスワスが印刷される。他の実施形態において、プリントヘッドアセンブリ12は非走査型プリントヘッドアセンブリである場合もある。その場合、プリントヘッドアセンブリ12は取り付けアセンブリ16により、媒体搬送アセンブリ18に対して所定の位置に固定される。そして、媒体搬送アセンブリ18により、印刷媒体19をその所定の位置を通して移動させながら、印刷媒体19上にスワスが印刷される。
【0013】
電子コントローラ20は、プリントヘッドアセンブリ12、取り付けアセンブリ16、及び媒体搬送アセンブリ18に接続されている。電子コントローラ20は、コンピュータのようなホストシステムからデータ21を受信するように構成され、そのデータ21を一時的に記憶するメモリを有している。データ21は通常、電子、赤外線、光又はその他の情報伝達経路によりインクジェット印刷システム10に送信される。データ21は、例えば印刷すべき文書及び/又はファイルに相当する。従って、データ21は、インクジェット印刷システム10に対する印刷ジョブを形成し、1以上の印刷ジョブコマンド及び/又はコマンドパラメータを含む。
【0014】
一実施形態において、電子コントローラ20は、ノズル13からインク滴を射出するタイミング制御を含めて、プリントヘッドアセンブリ12の制御を行う。従って、印刷媒体19上に文字、記号及び/又は他の図形又は画像を形成する射出インク滴パターンは、電子コントローラ20によって定義される。このタイミング制御(従って、射出インク滴パターン)は、印刷ジョブコマンド及び/又はコマンドパラメータによって決定される。一実施形態において、電子コントローラ20の一部を構成する論理駆動回路はプリントヘッドアセンブリ12上に配置される。他の実施形態では、論理駆動回路はプリントヘッドアセンブリ12の外に配置される場合もある。
【0015】
図2は、プリントヘッドアセンブリ12の一部の一実施形態を示している。一実施形態において、プリントヘッドアセンブリ12は多層アセンブリであり、外側層30、40と、少なくとも1つの内側層50とを含む。外側層30、40は表面又は面32、42をそれぞれ有し、面32、42に連続する縁34、44をそれぞれ更に有する。外側層30、40は内側層50の両側に配置され、面32、42が内側層50と向かい合い、且つ面32、42が内側層50に隣接するように配置される。従って、内側層50と外側層30、40は、軸29に沿って積み重なるように配置される。
【0016】
図2の実施形態に示すように、内側層50と外側層30、40は、ノズル13の1以上の列60を形成するように配置される。例えば、ノズル13の列60は、軸29に対して実質的に垂直な方向にわたって形成される。従って、一実施形態において、軸29は、印刷方向に対応し、即ち、プリントヘッドアセンブリ12と印刷媒体19の間の相対移動の方向に対応している。従って、プリントヘッドアセンブリ12により印刷媒体19に印刷されるスワス(帯)のスワス高さ(印刷幅)は、ノズル13の列60の長さによって決まる。一実施形態において、ノズル13の列60の長さは、約2インチ(約5.1センチメートル)未満の距離である。他の実施形態において、ノズル13の列60の長さは、約2インチより長い場合もある。
【0017】
一実施形態において、内側層50及び外側層30、40は、ノズル13の2つの列61及び62を形成する。具体的には、内側層50と外側層30によって、外側層30の縁34に沿って並ぶノズル13の列61が形成され、内側層50と外側層40によって、外側層40の縁44に沿って並ぶノズル13の列62が形成される。従って、一実施形態において、ノズル13の列61と列62は互いに離れた位置にあり、且つ互いに実質的に平行な方向に並んでいる。
【0018】
図2に示すように、一実施形態において、列61のノズルと列62のノズル13は、実質的に位置合わせされる。具体的には、列61の各ノズル13は、軸29に対して実質的に平行な方向の印刷ライン上にある列62の1つのノズル13に実質的に位置合わせされる。このように図2の実施形態では、所与の印刷ライン上にある複数のノズルを通して流体(又はインク)を射出することができるため、ノズル冗長性が得られる。従って、欠陥ノズルや動作不能なノズルは、同一ライン上にある他のノズルで補うことができる。また、ノズル冗長性があれば、同一ライン上にある複数のノズルを互い違いに作動させる機能を実現することも可能である。
【0019】
図3は、プリントヘッドアセンブリ12の一部に関する他の実施形態を示している。プリントヘッドアセンブリ12’は、プリントヘッドアセンブリ12と同様の多層アセンブリであり、外側層30’、40’及び内側層50を含む。また、外側層30’、40’は、外側層30、40と同様に内側層50の両側に配置されている。従って、内側層50及び外側層30’、40’は、ノズル13の2つの列61’、62’を形成する。
【0020】
図3の実施形態に示すように、列61’のノズルと列62’のノズルは互いにずらして配置されている。具体的には、軸29に対して実質的に平行な方向の印刷ラインに沿って見た場合、列61’の各ノズル13は、列62’のノズル13に対して互い違いに、即ち互いにずらして配置されている。このように、図3の実施形態は、軸29に対して実質的に垂直なライン上の印刷可能なドット数/インチ(dpi)が増えるため、高い解像度(分解能)を有する。
【0021】
図4に示すように、一実施形態において、外側層30、40(図4にはそのうちの一方しか描いていない。また、外側層30’、40’も同様)は、それぞれの面32、42に液滴射出素子70及び流体通路80が形成されている。液滴射出素子70及び流体通路80は、流体通路80が液滴射出素子70に連通し、流体(又はインク)が液滴射出素子70に供給されるように配置される。一実施形態において、液滴射出素子70及び流体通路80は、各外側層30、40の面32、42に実質的に直線配列で配置される。従って、外側層30の液滴射出素子70及び流体通路80は全て、単一の層、即ちモノリシック層に形成され、外側層40の液滴射出素子70及び流体通路80は全て、単一の層、即ちモノリシック層に形成される。
【0022】
後で説明するように、一実施形態において、内側層50(図2)には流体マニホルド又は流体通路が画定され、それによって、例えばインク供給アセンブリ14から供給された流体が、外側層30、40に形成された流体通路80や液滴射出素子70に供給される。
【0023】
一実施形態において、流体通路80は、各外側層30、40の面32、42に形成された障壁82によって画定される。従って、外側層30、40が内側層50の両側に配置されたとき、内側層50(図2)と外側層30の流体通路80により、縁34に沿ってノズル13の列61が形成され、内側層50(図2)と外側層40の流体通路80により、縁44に沿ってノズル13の列62が形成される。
【0024】
図4の実施形態に示すように、各流体通路80は流体入口84、流体チャンバ86、及び流体出口88を有し、流体チャンバ86は、流体入口84及び流体出口88に連通するように構成される。後で説明するように、流体入口84は流体(又は、インク)供給源に連通していて、流体チャンバ86に流体(又は、インク)を供給する。流体出口88は流体チャンバ86に連通していて、一実施形態において、外側層30、40が内側層50の両側に配置されたときに、流体出口88及び流体チャンバ86は各ノズル13の一部を形成する。
【0025】
一実施形態において、各液滴射出素子70は、各流体通路80の流体チャンバ86内に形成された発射抵抗器72からなる。発射抵抗器72は例えば加熱抵抗器からなり、通電によって流体チャンバ86内の流体を加熱し、流体チャンバ86内に泡を生成し、ノズル13から流体の滴を射出させる。このように、一実施形態において、各流体チャンバ86、発射抵抗器72及びノズル13は、液滴射出素子70の液滴発生器を形成する。
【0026】
一実施形態において、動作時には、流体入口84から流体が流体チャンバ86の中に流れ込む。そして、各発射抵抗器72の駆動に応じて、流体の滴が流体チャンバ86から流体出口88及びノズル13を通って射出される。従って、流体の滴は、各外側層30、40の面32、42に対して実質的に平行な方向に媒体に向けて射出される。このように、一実施形態においてプリントヘッドアセンブリ12は、エッジ設計又は「サイドシュータ」設計によって構成される。
【0027】
図5に示すように、一実施形態において、外側層30、40(図5にはそのうちの一方しか描いていない。また、外側層30’、40’も同様である)はそれぞれ、基板90と、基板90上に形成された薄膜構造92とを含む。そして、液滴射出素子70の発射抵抗器72と、流体通路80の障壁82は、薄膜構造92上に形成される。前述のように、外側層30、40は内側層50の両側に配置され、各液滴射出素子70の流体チャンバ86及びノズル13を形成する。
【0028】
一実施形態において、内側層50と、外側層30、40の基板90は、同じ材料からなる。従って、内側層50の熱膨張率と、外側層30、40の熱膨張率は実質的に同じになる。従って、内側層50と外側層30、40の間の熱勾配は最小になる。内側層50と外側層30、40の基板90に適した材料の例には、ガラス、金属、セラミック材料、炭素複合材料、金属マトリクス複合材料、又は任意の他の化学的に不活性で熱的に安定した材料などがある。
【0029】
一実施形態において、内側層50と外側層30、40の基板90には、Corning(R)1737又はCorning(R)1740ガラスが使用される。一実施形態において、内側層50と外側層30、40の基板90が、金属材料又は金属マトリクス複合材料を含む場合、基板90の金属材料又は金属マトリクス複合材料の上に酸化物層が形成される。
【0030】
一実施形態において、薄膜構造92は、液滴射出素子70の駆動回路74を含む。駆動回路74は、例えば液滴射出素子70に対して電源、グラウンド及びロジックを提供する働きをし、具体的には、発射抵抗器72に対してそれらを提供する働きをする。
【0031】
一実施形態において、薄膜構造92は、例えば二酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、タンタル、ポリシリコンガラス、又は他の適当な材料から形成された1以上のパッシベーション層又は絶縁体層を含む。また、薄膜構造92は、例えばアルミニウム、金、タンタル、タンタルアルミニウム、又は他の金属又は合金から形成された1以上の導電体層を更に含む。一実施形態において、薄膜構造92は、液滴射出素子70の駆動回路74の一部を形成する薄膜トランジスタを含む場合がある。
【0032】
図5の実施形態に示すように、流体通路80の障壁82は、薄膜構造92上に形成される。一実施形態において、障壁82は、プリントヘッドアセンブリ12内を通って射出される流体(又はインク)に適合性のある非導電材料から形成される。障壁82に適した材料の例には、感光性ポリマーやガラスがある。感光性ポリマーには、SU8のような繊維材料や、DuPontVacrelo(R)のようなドライフィルム材料がある。
【0033】
図5の実施形態に示すように、外側層30、40(外側層30’、40’も同様)は、障壁82の部分で内側層50に接合される。一実施形態において、障壁82が感光性ポリマー又はガラスから形成される場合、外側層30、40は、温度や圧力によって内側層50に結合される。ただし、他の適当な接合技術又は結合技術を使用して、外側層30、40を内側層50に接合してもよい。
【0034】
図6に示すように、一実施形態において、内側層50は、単一の内側層150からなる。単一の内側層150は、第1の面151と、第1の面151とは反対の第2の面152とを有する。一実施形態において、外側層30、40が内側層50の両側に配置される場合、外側層30の面32は第1の面151に隣接し、外側層40の面42は第2の面152に隣接する。
【0035】
一実施形態において、単一の内側層150には流体通路154が画定される。流体通路154は、例えば、単一の内側層150の第1の面151から第2の面152まで連通する、単一の内側層150の両面の間に延びる開口155からなる。従って、外側層30、40が単一の内側層150の両側に配置される場合、流体通路154は、単一の内側層150を通して外側層30、40の流体通路80に流体を供給する。
【0036】
図6の実施形態に示すように、単一の内側層150は、少なくとも1つの流体ポート156を有する。一実施形態において、単一の内側層150は、流体通路154にそれぞれ連通する流体ポート157、158を有する。一実施形態において、流体ポート157は流体通路154の流体入口を形成し、流体ポート158は、流体通路154の流体出口を形成する。従って、流体ポート157、158はインク供給アセンブリ14に連通していて、インク供給アセンブリ14とプリントヘッドアセンブリ12との間で流体(又は、インク)を循環させることができる。
【0037】
図7に示すように、他の実施形態では、内側層50は、複数の内側層250を含む場合がある。一実施形態において、内側層250は内側層251、252、253からなり、内側層253は内側層251と内側層252の間に挟まれるように構成される。従って、外側層30、40が内側層250の両側に配置されたとき、外側層30の面32は内側層251に隣接し、外側層40の面42は内側層252に隣接する。
【0038】
一実施形態において、内側層251、252、253は、ガラスフリットボンディングによって互いに結合される。その場合、内側層251、252及び/又は253の上に、ガラスフリット材料を付着させ、パターニングし、それらに温度と圧力を加えて、内側層251、252、253を互いに結合させる。従って、内側層251、252及び253の間の接合は熱的に整合される。他の実施形態において、内側層251、252、253は陽極接合によって接合される場合もある。その場合、内側層251、252及び253は、密着接点となり、層の両側に電圧が印加される。そして、補助材料を使用していないため、内側層251、252、253の間の接合は、熱的に整合され化学的に安定したものになる。更に他の実施形態では、内側層251、252及び253は、接着剤結合によって接合される場合もある。ただし、他の適当な接合技術又は結合技術を使用して、内側層251、252、253を接合してもよい。
【0039】
一実施形態において、内側層250には、流体マニホルド又は流体通路254が画定される。流体通路254は、例えば、内側層251に形成された開口255、内側層252に形成された開口256、及び内側層253に形成された開口257からなる。開口255、256及び257は、内側層253が内側層251と内側層252の間に挟まれたときに、内側層253の開口257が、内側層251の開口255及び内側層252の開口256に連通するように形成配置される。従って、外側層30、40が内側層250の両側に配置されたときに、流体通路254は、内側層250を通して流体を外側層30、40の流体通路80に供給する働きをする。
【0040】
図7の実施形態に示すように、内側層250は、少なくとも1つの流体ポート258を有する。一実施形態において、内側層250は、内側層251、252にそれぞれ形成された流体ポート259、260を含む。そして、内側層253が内側層251と内側層252の間に配置されたとき、流体ポート259、260は、内側層253の開口257に連通する。一実施形態において、流体ポート259、260は、流体通路254の流体入口及び流体出口を形成する。従って、流体ポート259、260はインク供給アセンブリ14に連通し、インク供給アセンブリ14とプリントヘッドアセンブリ12との間で流体(又は、インク)を循環させることが可能になる。
【0041】
一実施形態では、液滴射出素子70及び流体通路80を外側層30、40に形成し、内側層50の両側に外側層30、40を配置することにより、前述のように、様々な長さのプリントヘッドアセンブリ12が形成される。プリントヘッドアセンブリ12の幅は、例えば公称ページ幅であってもよいし、公称ページ幅よりも短くても長くてもよい。一実施形態において、プリントヘッドアセンブリ12は、ノズル13の列61及び62が公称ページ幅全体にわたって形成されるように、ワイドアレイ又はページ幅アレイとして形成される。
【0042】
本明細書では特定の実施形態について図示説明しているが、本発明の範囲を外れることなく、それらの図示説明した実施形態に代えて様々な代替実施形態及び/又は均等実施形態を採用することが可能であることは、当業者にとって明らかである。出願人は、本明細書に記載した特定の実施形態の変形又は変更も全て、本発明の範囲に含めることを意図している。従って、本発明は、特許請求の範囲とその均等によってしか制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明によるインクジェット印刷システムの一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明によるプリントヘッドアセンブリの一実施形態を示す略斜視図である。
【図3】図2のプリントヘッドアセンブリの他の実施形態を示す略斜視図である。
【図4】図2のプリントヘッドアセンブリの外側層の一部の一実施形態を示す略斜視図である。
【図5】図2のプリントヘッドアセンブリの一部の一実施形態を示す略断面図である。
【図6】図2のプリントヘッドアセンブリの内側層の一実施形態を示す略平面図である。
【図7】図2のプリントヘッドアセンブリの内側層の他の実施形態を示す略平面図である。
【符号の説明】
【0044】
13 ノズル
30、40 外側層
32、42 面
50、150、250 内側層
61 第1列
62 第2列
70 液滴射出素子
80 流体通路
154、254 流体通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路(154/254)が内部に画定された少なくとも1つの内側層(50/150/250)と、
前記少なくとも1つの内側層の両側に配置された第1の外側層及び第2の外側層(30/40)であって、該第1の外側層及び第2の外側層のそれぞれが、前記少なくとも1つの内側層に隣接する面(32/42)を有し、その面に液滴射出素子(70)が形成され、該液滴射出素子に連通する流体通路(80)を有する、第1の外側層及び第2の外側層とからなり、
前記第1の外側層の流体通路及び前記第2の外側層の流体通路は、前記少なくとも1つの内側層の流体通路に連通し、
前記少なくとも1つの内側層と前記第1の外側層の流体通路によって第1のノズル(13)列(61)が形成され、前記第1の内側層と前記第2の外側層の流体通路によって第2のノズル(13)列(62)が形成される、流体射出アセンブリ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの内側層は、前記第1の面に対向する第1の面(151)及び第2の面(152)を有する単一の内側層(150)からなり、前記第1の外側層は該第1の面に隣接し、前記第2の外側層は該第2の面に隣接する、請求項1に記載の流体射出アセンブリ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの内側層は、前記第1の外側層に隣接する第1の内側層(251)と、前記第2の外側層に隣接する第2の内側層(252)と、前記第1の内側層と前記第2の内側層の間に配置された第3の内側層(253)とからなる、請求項1に記載の流体射出アセンブリ。
【請求項4】
前記第1の外側層の液滴射出素子は、前記第1の外側層の面に対して実質的に平行な前記第1のノズル列を通して流体の滴を射出するように構成され、前記第2の外側層の液滴射出素子は、前記第2の外側層の面に対して実質的に平行な前記第2のノズル列を通して流体の滴を射出するように構成される、請求項1に記載の流体射出アセンブリ。
【請求項5】
前記第1の外側層及び前記第2の外側層は、それぞれの面に連続する縁(34/44)をそれぞれ有し、前記第1のノズル列は前記第1の外側層の縁に沿って形成され、前記第2のノズル列は前記第2の外側層の縁に沿って形成される、請求項1に記載の流体射出アセンブリ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの内側層と前記第2の外側層はそれぞれ共通の材料からなり、該共通の材料は、ガラス、セラミック材料、炭素複合材料、金属、及び、金属マトリクス複合材料のうちのいずれか1つからなる、請求項1に記載の流体射出アセンブリ。
【請求項7】
前記第1の外側層及び前記第2の外側層の各流体通路は、流体入口(84)、該流体入口に連通する流体チャンバ(86)、及び、該流体チャンバに連通する流体出口(88)を有し、前記第1の外側層及び前記第2の外側層の各液滴射出素子は、前記流体通路のうちの1つの前記流体チャンバ内に形成された発射抵抗器(72)を含む、請求項1に記載の流体射出アセンブリ。
【請求項8】
前記第1の外側層及び前記第2の外側層はそれぞれ、基板(90)及び該基板上に形成された薄膜構造(92)を含み、各液滴射出素子の発射抵抗器は、前記第1の外側層及び前記第2の外側層の薄膜構造上に形成される、請求項7に記載の流体射出アセンブリ。
【請求項9】
前記第1の外側層及び前記第2の外側層のそれぞれの前記基板は非導電性材料を含み、該非導電性材料は、ガラス、セラミック材料、炭素複合材料、及び、上に酸化物が形成された金属又は金属マトリクス複合材料、のうちのいずれか1つからなる、請求項8に記載の流体射出アセンブリ。
【請求項10】
前記薄膜構造は前記液滴射出素子の駆動回路(74)を含み、該駆動回路は薄膜トランジスタからなる、請求項8に記載の流体射出アセンブリ。
【請求項11】
前記第1の外側層及び前記第2の外側層はそれぞれ、前記流体通路間に形成された障壁(82)を有し、該障壁は、前記第1の外側層及び前記第2の外側層の薄膜構造上に形成され、感光性ポリマー又はガラスから形成される、請求項8に記載の流体射出アセンブリ。
【請求項12】
流体射出アセンブリを形成する方法であって、
少なくとも1つの内側層(50/150/250)に流体通路(154/254)を画定するステップと、
第1の外側層及び第2の外側層(30/40)のそれぞれの面(32/42)に液滴射出素子(70)を形成するステップと、
前記第1の外側層及び前記第2の外側層のそれぞれの面に流体通路(80)を形成し、該流体通路を前記液滴射出素子に連通させるステップと、
前記第1の外側層及び前記第2の外側層を前記少なくとも1つの内側層の両側に配置し、前記第1の外側層及び前記第2の外側層の前記流体通路を前記少なくとも1つの内側層の流体通路に連通させ、前記少なくとも1つの内側層と前記第1の外側層の前記流体通路によって第1のノズル(13)列(61)を形成し、前記少なくとも1つの内側層と前記第2の外側層の流体通路によって第2のノズル(13)列を形成するステップと
からなる方法。
【請求項13】
前記流体通路を画定するステップは、第1の面及び該第1の面とは反対の第2の面を有する単一の内側層(150)に流体通路を画定することを含み、前記第1の外側層及び前記第2の外側層を配置するステップは、前記第1の層を該第1の面に隣接して配置し、前記第2の層を該第2の面に隣接して配置することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記流体通路を画定するステップは、第1の内側層(151)、第2の内側層(152、及び、前記第1の内側層と前記第2の内側層の間に配置された第3の内側層(153)に前記流体通路を画定することを含み、前記第1の外側層及び前記第2の外側層を配置するステップは、前記第1の外側層を前記第1の内側層に隣接して配置し、前記第2の外側層を前記第2の内側層に隣接して配置することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のノズル列を形成するステップは、前記第1の層の面に隣接する前記第1の外側層の縁(34)に沿って前記第1のノズル列を形成することを含み、前記第2のノズル列を形成するステップは、前記第2の外側層の面に隣接する前記第2の外側層の縁(44)に沿って前記第2ののノズル列を形成することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記流体通路を画定するステップは、流体入口(84)を形成し、該流体入口を流体チャンバ(86)に連通させ、該流体チャンバ(88)を流体出口に連通させることからなり、前記液滴射出素子を形成するステップは、前記流体通路のうちの1つの前記流体チャンバ内に発射抵抗器を形成することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
第1の外側層及び第2の外側層を形成し、該第1の外側層及び第2の外側層のそれぞれの基板上に薄膜構造を形成するステップを更に含み、前記液滴射出素子を形成するステップは、前記第1の外側層及び前記第2の外側層の薄膜構造上に各液滴射出素子の発射抵抗器を形成することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の外側層及び前記第2の外側層のそれぞれの基板は非導電性材料を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記薄膜構造を形成するステップは、前記液滴射出素子の駆動回路(74)を形成することを含み、該駆動回路は薄膜トランジスタからなる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
流体射出アセンブリを動作させる方法であって、
少なくも1つの内側層(50/150/250)の両側に配置された第1の外側層及び第2の外側層(30/40)に形成された流体通路(80)に流体を供給し、その際に、該流体を前記少なくとも1つの内側層に画定された流体経路を通して前記流体通路に供給するステップと、
前記流体通路のそれぞれに連通する前記第1の外側層及び前記第2の外側層に形成された液滴射出素子(70)から流体の滴を射出し、その際に、該流体の滴を前記少なくとも1つの内側層と前記第1の外側層の前記流体通路によって形成された第1のノズル列(61)を通して射出するとともに、該流体の滴を前記少なくとも1つの内側層と前記第2の外側層の前記流体通路によって形成された第2のノズル列(62)を通して射出するステップと
からなる方法。
【請求項21】
前記流体通路に流体を供給するステップは、各流体通路の流体チャンバ(86)に流体を供給することを含み、前記流体の滴を射出するステップは、各流体通路の流体チャンバ内にそれぞれ形成された発射抵抗器(72)によって前記流体の滴を射出することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記流体の滴を射出するステップは、前記液滴射出素子が内部に形成された前記第1の外側層及び前記第2の外側層のそれぞれの面(32/42)に対して実質的に平行な前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を通して前記流体の滴を射出することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記流体の滴を射出するステップは、前記第1の外側層及び前記第2の外側層のそれぞれの薄膜構造(92)に形成された駆動回路(74)によって前記流体の滴を射出することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記流体通路に流体を供給するステップは、前記第1の外側層及び前記第2の外側層のそれぞれの前記薄膜構造に形成された障壁間に流体を供給することを含む、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−527332(P2007−527332A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518699(P2006−518699)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/020677
【国際公開番号】WO2005/007412
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】