説明

流体搬送導管

【課題】圧縮気体水素の搬送を長距離に亘って水素の加熱無しに可能とする集合配置構造の流体搬送導管を提供する。
【解決手段】集合配置構造の外装体内に、流体搬送パイプ1、該流体搬送パイプ1を内部に収容した冷媒戻りパイプ2、及び冷媒供給パイプ3とを内包させ、冷媒戻りパイプ2と冷媒供給パイプ3が互いに直接熱伝導可能に接触配置されており、各パイプを内包する集合配置構造が外被チューブ4によって被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に圧縮気体水素の搬送に好適な流体搬送導管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば水素燃料供給スタンドには、複数のパイプを束ねて外装体内に配置した集合配置構造の流体搬送導管が水素の搬送に使用されている。この場合、25〜900バールの圧力に圧縮された水素が圧縮機から気体の状態で供給充填ポンプへそれぞれ搬送される。通常、これにより圧縮水素は約−20℃に冷却される。圧縮機又は凝縮器と供給充填ポンプとの間の距離、即ち導管長さは一般的には1〜70mの範囲内である。従来の搬送導管では、その長さが10〜12mを超えると圧縮水素が周囲温度へ向けて加熱されるという望ましくない現象が起きる結果となっている。
【0003】
圧縮水素の周囲温度への加熱は搬送導管を断熱するだけでは防ぐことはできず、その理由は、水素はそれ自身の高い熱遷移特性により自身の寒冷を瞬時に導管へ放出し、導管から瞬時に熱を取り込むからである。
【0004】
この問題を解決するため、圧縮気体水素を−60℃まで冷却することが屡々行われている。しかしながら、このような対応策では比較的エネルギー消費量が大きくなるだけでなく、相応に長い搬送導管に対しては有効ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明で課題とするところは、以上に述べた問題を解消して圧縮気体水素の搬送を特に長距離に亘って水素の加熱無しに可能とするような集合配置構造の流体搬送導管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するための集合配置構造の流体搬送導管を提供するものであり、集合配置構造の外装体内に、流体搬送パイプと、該流体搬送パイプを内部に収容した冷媒戻りパイプと、冷媒供給パイプとを内包させたことを特徴とするものである。ここで集合配置構造とは、複数本のパイプを束ねて外装体の内部に配置した構造を意味する。
【0007】
本発明の基本理念によれば、例えば圧縮気体水素の導管として機能する事実上の流体搬送パイプは冷媒戻りパイプの内部に同軸配置され、従って流体搬送パイプの外周は冷媒戻りパイプの内部で冷媒に囲まれるようになっている。冷媒戻りパイプには、例えばサーモオイル(熱媒体油)や二酸化炭素等の適切な冷媒が−40〜−60℃、好ましくは−45℃の低温で流体搬送パイプ内に流れる流体と逆方向又は順方向の流れとして導かれる。例えば水素冷却用蓄冷器設備が既に近傍に設置されていれば、この蓄冷器の冷却流を冷媒に利用することができる。
【0008】
本発明による集合配置構造には冷媒供給パイプも外装体の内部に内包されており、この冷媒供給パイプは冷媒戻りパイプへ冷媒を供給し、また冷媒戻りパイプから冷媒を排出する機能を果たすものである。従って本発明による集合配置構造の流体搬送導管によれば、例えば実際の水素燃料供給スタンドで要求されるような充分に長い距離に亘る圧縮気体水素の搬送が可能となるものである。
【0009】
本発明の好適な一実施形態によれば、冷媒戻りパイプと冷媒供給パイプは互いに直接熱伝導可能に接触配置されている。
【0010】
本発明の別の実施形態によれば、各パイプを内包する集合配置構造が外被チューブによって被覆されている。換言すれば、前記外装体の外周面が外被チューブで被覆されていることを意味する。
【0011】
本発明の更に別の実施形態によれば、外被チューブが可撓チューブとして構成されている。
【0012】
本発明の更に別の実施形態によれば、外被チューブと冷媒戻りパイプとの間の空間が部分的又は好ましくは全体的に断熱材で満たされている。この場合、断熱材としては好ましくはポリウレタンフォームが用いられ、特に好ましくはアルマフレックス(Armaflex:商標)として知られているポリウレタンフォームが用いられる。更にこの空間は、ポリウレタンフォームの充填と真空断熱との組合せによる断熱空間としてもよい。
【0013】
本発明の更に別の実施形態によれば、外被チューブの内部に流体搬送パイプと冷媒戻りパイプと冷媒供給パイプとの少なくとも一つを安定支持するための固定手段が設けられている。
【0014】
本発明による集合配置構造の流体搬送導管の特徴と利点を添付図面に示す実施形態と共に詳述すれば以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態による集合配置構造の流体搬送導管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明による集合配置構造の流体搬送導管を横断面で示しているが、縮尺は実際のものではなく誇張してある。この集合配置構造では、搬送すべき流体が内部を流れる事実上の流体搬送パイプ1と、この流体搬送パイプ1の周囲を囲む冷媒戻りパイプ2と、冷媒供給パイプ3とが、いずれも外装体の内部に配置されている。
【0017】
これらのパイプ1〜3を内包するように取り囲む外被チューブ4は好ましくは可撓チューブとして構成される。一つの有利な形態によれば、パイプ1〜3と外被チューブとの間の空間は、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に、断熱材5により満たされている。この断熱材は好ましくはポリウレタンフォームであるが、この空間は、そのような発泡断熱材の充填と真空断熱との組合せ、又は真空断熱のみによる断熱空間としてもよい。
【0018】
このような断熱構造により、周囲から係る集合配置構造の内部へ、更には流体搬送パイプへと向かう望ましくない熱の進入を効果的に抑制することができる。
【0019】
図1には示されていないが、外被チューブ4の内部には、流体搬送パイプ1と冷媒戻りパイプ2と冷媒供給パイプ3との少なくとも一つを安定支持するための固定手段が配置されており、例えばこの固定手段として、断熱性の剛性材料からなるスティフナ桁部材が各パイプと外被チューブとの間に渡されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮気体水素を搬送するための集合配置構造の流体搬送導管であって、集合配置構造の外装体内に、流体搬送パイプ(1)と、該流体搬送パイプ(1)を内部に収容した冷媒戻りパイプ(2)と、冷媒供給パイプ(3)とが内包されていることを特徴とする流体搬送導管。
【請求項2】
冷媒戻りパイプ(2)と冷媒供給パイプ(3)が互いに直接熱伝導可能に接触配置されていることを特徴とする請求項1に記載の流体搬送導管。
【請求項3】
各パイプを内包する集合配置構造が外被チューブ(4)によって被覆されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体搬送導管。
【請求項4】
外被チューブ(4)が可撓チューブとして構成されていることを特徴とする請求項3に記載の流体搬送導管。
【請求項5】
外被チューブ(4)と冷媒戻りパイプ(2)との間の空間が部分的又は全体的に断熱材(5)で満たされていることを特徴とする請求項3又は4に記載の流体搬送導管。
【請求項6】
前記空間に断熱材(5)としてポリウレタンフォームが充填されているか、該ポリウレタンフォームを充填した空間が真空断熱との組合せによる断熱空間として構成されていることを特徴とする請求項5に記載の流体搬送導管。
【請求項7】
外被チューブ(4)の内部に流体搬送パイプ(1)と冷媒戻りパイプ(2)と冷媒供給パイプ(3)との少なくとも一つを安定支持するための固定手段が設けられていることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の流体搬送導管。

【図1】
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【公開番号】特開2009−287773(P2009−287773A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127186(P2009−127186)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(391009659)リンデ アクチエンゲゼルシヤフト (106)
【氏名又は名称原語表記】LINDE AKTIENGESELLSCHAFT
【住所又は居所原語表記】Klosterhofstrasse 1, 80331 Munchen, Bundesrepublik Deutschland
【Fターム(参考)】