流体機械
【課題】高効率でしかも大容量を実現することができる、スクロール式流体装置を用いた流体機械を提供する。
【解決手段】主軸11と、複数の副軸12と、前記主軸11と前記複数の副軸12との間で動力を伝達する連動機構14,16と、それぞれ前記各副軸12に連結された複数のスクロール式流体装置18とを備える。より好ましくは、前記連動機構14,16を、主軸11に設けられた主ギヤ14と、各副軸12に設けられると共に主ギヤ14に噛み合う副ギヤ16とによって構成し、主ギヤ14を内歯14Aを有するリングギヤとし、副ギヤ16を主ギヤ14の内歯14Aに噛み合うように内周側に配置する。
【解決手段】主軸11と、複数の副軸12と、前記主軸11と前記複数の副軸12との間で動力を伝達する連動機構14,16と、それぞれ前記各副軸12に連結された複数のスクロール式流体装置18とを備える。より好ましくは、前記連動機構14,16を、主軸11に設けられた主ギヤ14と、各副軸12に設けられると共に主ギヤ14に噛み合う副ギヤ16とによって構成し、主ギヤ14を内歯14Aを有するリングギヤとし、副ギヤ16を主ギヤ14の内歯14Aに噛み合うように内周側に配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、スクロール式流体装置を備えた流体機械に関し、例えば、ランキンサイクルを利用した発電装置の膨張機等に好適に利用することができる流体機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ランキンサイクルを利用した発電装置は、エンジン等の機関排熱を回収して作動媒体を蒸気にする蒸発器と、蒸気によって駆動される蒸気タービン(膨張機)と、蒸気タービンにより作動する発電機と、蒸気タービンから流出した蒸気を凝縮させる凝縮器と、凝縮後の作動媒体を昇圧する復水ポンプ等とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の発電装置としては、事業用等の比較的大型のものが実用化されている。しかし、膨張機として用いる蒸気タービンは小型化すると効率が悪化するため、蒸気タービンを用いた小型の発電装置は実現が困難である。
【特許文献1】特開2002−161716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願出願人は、上記のようなランキンサイクル発電装置の膨張機として、小型で効率が悪化する蒸気タービンではなく、小型であっても高効率なスクロール式膨張機を用いることを考えた。しかし、このスクロール式膨張機は、蒸気タービンとは逆に、容量を増大するために大型化すると寸法精度が低くなり、効率が悪くなるという問題がある。また、スクロール式膨張機の形態をそのままにして寸法を大型に設計(相似設計)すると、出力増加に比べて、切削等の加工量の増える割合が高くなり、結果として、製造コストが大幅に増大するという問題がある。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑み、高効率でしかも大容量化を実現することができる、スクロール式流体装置を用いた流体機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、主軸と、複数の副軸と、前記主軸と前記各副軸との間で動力を伝達する連動機構と、それぞれ前記各副軸に連結された複数のスクロール式流体装置と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記連動機構が、前記主軸に設けられた主ギヤと、前記各副軸に設けられると共に前記主ギヤに噛み合う副ギヤと、を備えており、前記主ギヤがリング状に形成されるとともに内周に内歯を有し、前記各副ギヤが、前記主ギヤの内周側に配置されるとともに前記内歯に噛み合っていることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記連動機構が、前記主軸に設けられた主ギヤと、前記各副軸に設けられると共に前記主ギヤに噛み合う副ギヤと、を備えており、前記主ギヤが外周に外歯を有し、前記各副ギヤが、前記主ギヤの外周側に配置されるとともに前記外歯に噛み合っていることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の発明において、前記副ギヤが、前記スクロール式流体装置とのバランスを図るバランサを構成していることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記副軸の両端部に前記スクロール式流体装置を備えており、各スクロール式流体装置が、互いに前記副軸の軸心に対して同じ位相で重心が偏心した揺動スクロールを備え、両スクロール式流体装置の間に、該副軸の軸心に対して前記揺動スクロールと反位相で重心が偏心したバランサを備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項2又は3に記載の発明において、前記副軸の両端部に前記スクロール式流体装置を備えるとともに、両スクロール式流体装置の間に前記副ギヤを備えており、各スクロール式流体装置が、互いに前記副軸の軸心に対して同じ位相で重心が偏心した揺動スクロールを備え、前記副ギヤが、前記副軸の軸心に対して前記揺動スクロールと反位相で重心が偏心したバランサを構成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、各副軸に連結される個々のスクロール式流体装置を大型化することなく、全体としての容量を増大し、出力を高めることができる。個々のスクロール式流体装置は、小型のものを用いることができるので、効率が低下することはない。小型のスクロール式流体装置として、大量生産されているものを用いることができるのでコストを低減することができる。
【0013】
請求項2及び3の発明によれば、連動機構として、主軸に設けた主ギヤと、各副軸に設けた副ギヤを噛み合わせているので、1つの主ギヤから複数の副ギヤへ、又は複数の副ギヤから1つの主ギヤへ、簡単な構造で動力を伝達することができる。また、主軸と副軸との間で容易に減速又は増速して動力を伝達することができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、副軸に設けた副ギヤをバランサとして用いることで、別途バランサを設ける場合に比べて、構造の簡素化及びコンパクト化を図ることができる。
【0015】
請求項5の発明によれば、流体機械の容量を容易に増大することができるとともに、一方の揺動スクロールを他方のスクロール式流体装置に対するバランサをして用いることができ、構造の簡素化及びコンパクト化を図ることができる。
【0016】
請求項6の発明によれば、流体機械の容量を容易に増大することができるとともに、一方の揺動スクロールを他方のスクロール式流体装置に対するバランサをして用いることができ、構造の簡素化及びコンパクト化を図ることができる。さらに、副ギヤを各スクロール式流体装置のバランサとして用いているので、別途バランサを設ける場合に比べて、一層の構造の簡素化及びコンパクト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
(流体機械の全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る流体機械1を示す概略図であり、図2は、図1の矢印IIから見た流体機械の概略図である。この流体機械1は、主軸11と、該主軸11と平行に配置された複数(図2の例では3本)の副軸12とを備えている。主軸11は、軸受13によって回転自在に支持され、一端部に連結部材17を介して大径の主ギヤ(連動機構)14を備えている。主ギヤ14は、リングギヤ(アウターギヤ)であり、内周面に内歯14Aを備えている。
【0018】
各副軸12は、それぞれ軸受15によって回転自在に支持され、主軸11の軸心O1回りに等間隔に配置されている。各副軸12の一方の端部には、副ギヤ16が設けられている。各副ギヤ16は、主ギヤ14の内周側に配置されるとともに内歯14Aに噛み合っている。したがって、副ギヤ16は、所謂プラネタリーギヤを構成している。各副軸12の他方の端部には、スクロール式流体装置18が連結されている。
【0019】
この流体機械1は、各スクロール式流体装置18に流体(作動媒体)を供給して各副軸12を回転し、副軸12の回転動力を副ギヤ16及び主ギヤ14を介して主軸11から出力する膨張機として用いる場合と、主軸11に動力を入力して主ギヤ14及び副ギヤ16を介して副軸12を回転し、スクロール式流体装置18を駆動して流体を圧縮する圧縮機として用いる場合との双方に利用することができる。このスクロール式流体装置18で用いる流体は、例えば、水やアンモニアであるが、その他のHFC系の流体を用いることもできる。
【0020】
(流体機械の利用形態)
図3は、流体機械1の利用形態の1つとして、該流体機械1をランキンサイクル発電装置2に適用した例を示すブロック図である。この場合、流体機械1は膨張機を構成している。該発電装置2は、蒸気発生器21、発電機22、膨張機(流体機械)1、凝縮器23、復水ポンプ24、作動媒体通路25A〜25Cを有している。なお、点線で示す通路25A、25Bは、作動媒体が気体(気相)の状態、又は、気体及び液体(液相)の状態である場合を示し、実線で示す通路25Cは、作動媒体が液体の状態である場合を示す。
【0021】
発電機22は、膨張機1の出力軸(主軸)11(図1)に直接的又は間接的に接続されている。膨張機1は、蒸気発生器21から通路25Aを介して供給された蒸気(作動媒体)により作動し、発電機22を駆動する。膨張機1を経た作動媒体は通路25Bを通って凝縮器23に供給され、冷却水によって凝縮され、液体になる。更に、作動媒体は、復水ポンプ24によって凝縮器23から通路25Cを通って蒸気発生器21に供給され、蒸気発生器21で高温ガスによって蒸発する。このサイクルを繰り返し行うことで、発電機1により発電を行うようになっている。
【0022】
(スクロール式流体装置の詳細構造)
次に、流体機械1に用いられている各スクロール式流体装置18について詳細に説明する。図4は、スクロール式流体装置の縦断面図である。スクロール式流体装置18は、ハウジング(軸受ハウジング)31、クランク軸32、揺動スクロール33、固定スクロール34、スラスト軸受35等を備えている。副軸12の端部は軸受36を介してハウジング31に回転自在に連結されている。副軸12の、ハウジング31に支持された部分よりも軸端部側には、副軸12の軸心O2に平行で、偏心した軸心O3を有するクランク軸32が設けられている。
【0023】
揺動スクロール33は、円盤状の台板38の一側面に筒形のボス部39をクランク軸32の軸心O3方向に突設し、台板38の他側面にインボリュート曲線からなる渦巻き型のラップ部40を軸心O3方向に突設してなる。ボス部39は、その内周側に嵌装した軸受41を介してクランク軸32に回転自在に支持されている。
【0024】
固定スクロール34は、揺動スクロール33を挟んでハウジング31の反対側に配設され、揺動スクロール33のラップ部40の先端面に僅かな隙間をもって対向する外壁部43と、外壁部43の外周部から揺動スクロール33側に屈曲して延びる周壁部44と、周壁部44の端部から径方向外側に延びるフランジ部45とを有する。周壁部44の径方向内側には、外壁部43から揺動スクロール33側に突出する渦巻き型のラップ部46が形成されている。このラップ部46は、揺動スクロール33のラップ部40に噛み合い、先端面が台板38に僅かな隙間を持って対向している。これにより、揺動スクロール33と固定スクロール34との間には、複数の室47(膨張室又は圧縮室)が形成されるようになっている。
【0025】
ハウジング31の外周部には、フランジ部48が設けられている。このフランジ部48と、固定スクロール34のフランジ部45とは、スラスト軸受35の外周部を間に挟んでボルト49によって連結されている。スラスト軸受35はリング形状であり、スラスト軸受35の内周部は、揺動スクロール33の台板38の背面(ボス部39側の面)に摺動自在に当接している。
【0026】
揺動スクロール33は、クランク軸32の軸心O3上に重心が配置されるように、台板38の背面にバランサ51を備えている。また、揺動スクロール33とハウジング31との間には、揺動スクロール33が副軸12回りに公転するのを許容するとともに、クランク軸32回りに自転するのを規制するリング状の規制部材52が配置されている。規制部材52の一方の側面には係合突起54が設けられ、該係合突起54は、台板38の背面に形成した被係合部56に係合している。
【0027】
クランク軸32の外周側でハウジング31の内周面には、リング部材57が嵌合されており、該リング部材57には、径方向に延びる被係合溝57Aが形成されている。該被係合溝57Aには、規制部材52の反揺動スクロール33側に突出した係合部材55が係合している。なお、図4では、理解を容易にするために、規制部材52の一側面の係合部材54と他側面の係合部材55とを同じ平面上に示しているが、実際は、互いに90°位相がずれた配置となっている。
【0028】
規制部材52は、リング部材57の被係合溝57Aに沿って径方向に移動可能となっている。また、揺動スクロール33は、この規制部材52の移動可能な方向に直交する方向に移動可能である。したがって、揺動スクロール33は、自転することなく固定スクロール34に対して副軸12の軸心O2回りに公転(揺動旋回)することができる。
【0029】
図4に示すように、固定スクロール34の外壁部43の略中央には、流体の第1流通口61が貫通して形成されており、同じく、外壁部43の外周部には、流体の第2流通口62が形成されている。図3に示すように、流体機械1を膨張機として用いる場合は、第1流通口61が流体(作動媒体)の入口となり、第2流通口62が流体の出口となる。また、流体機械1を圧縮機として用いる場合は、第2流通口62が流体の入口となり、第1流通口61が流体の出口となる。
【0030】
(スクロール式流体装置の作動形態)
図5は、流体機械1を膨張機として用いた場合のスクロール式流体装置18の作動状態を示す説明図である。揺動スクロール33のラップ部40と固定スクロール34のラップ部46との間には、複数の膨張室が形成されている。まず、図5の(1)において、スクロール式流体装置18には、中央の第1流通口61から中央の第1膨張室47Aに作動媒体の蒸気が流入する。そして、(2)において、蒸気の圧力によって第1膨張室47Aが拡大し、揺動スクロール33が副軸12の軸心O1(図4)回りに公転し始め、これによってクランク軸32(図4)を介して副軸12が回転する。(3)では、更に第1膨張室47Aが拡大するともに、中央側に新たな膨張室(第2膨張室)47Bが形成され、該第2膨張室47Bに第1流通口61から継続して蒸気が流入する。その後、(4)(5)において、第1,第2膨張室47A,47Bがそれぞれ拡大するとともに揺動スクロール33が公転し、(6)において、揺動スクロール33のラップ部40の外周端が固定スクロール34のラップ部46から離れたところで第1膨張室47Aが開放され、蒸気が排気される。排気された蒸気は、図4に示す第2流通口61から外部に排出される。
【0031】
このような動作を繰り返し行うことによって、スクロール式流体装置18を具備した複数の副軸12が連続的に回転し、副ギヤ16及び主ギヤ14を介して主軸11が減速して回転する。
【0032】
(流体機械のバランサ構造)
図1に示すように、流体機械1には、揺動スクロール33の遠心力に対する静バランスを図るための第1バランサ64が、副軸12に対するクランク軸32(揺動スクロール33)の偏心側とは180°反対側に偏心して設けられている。さらに、揺動スクロール33及び第1バランサ64の遠心力で生じたモーメントに対する動バランスを図るための第2、第3バランサ65,66が設けられている。第2バランサ65は、副軸12に対して第1バランサ64と同じ側に偏心して設けられ、第3バランサ66は、副軸12に対して揺動スクロール33と同じ側に偏心して設けられている。
【0033】
第1バランサ64は、図4にも示すように、副軸12に一体回転自在に固定されている。また、図1に示すように、第2バランサ65も副軸12に一体回転自在に固定されている。これに対して第3バランサ66は副ギヤ16に設けられており、実質的には、副ギヤ16自体が第3バランサ66を構成するようになっている。
【0034】
図6〜図8は、副ギヤ16自体を第3バランサ66として構成するための例を示している。図6に示す例は、副ギヤ16の片側に、貫通孔や有底の凹部(穴)等のヌスミ68を形成し、反対側の重量を相対的に大きくすることによってバランサ66として構成したものである。図7及び図8に示す例は、副ギヤ16の側面に形成してあるリム69の片側を切除し(切除した部分を2点差線で示す)、反対側の重量を相対的に大きくすることによってバランサ66を構成したものである。
【0035】
(第1実施形態の作用効果)
上記構成の第1実施形態によって次のような作用効果を奏する。
(1)本実施形態の流体機械は、主軸11と、複数の副軸12と、主軸11と全副軸12との間で動力伝達をする連動機構(主ギヤ14及び副ギヤ16)と、各副軸12に設けられたスクロール式流体装置18とを備えているので、各スクロール式流体装置18として小型のものを用いたとしても全体として大容量となり、出力を高めることができる。また、スクロール式流体装置18として小型のものを用いることができるので、高い寸法精度で製作することができ、高効率で作動することができる。また、大量生産されている小型のスクロール式流体装置18を用いることによって製造コストを低減することができる。
【0036】
(2)主軸11と副軸12との間で動力伝達をする連動機構14,16は、主軸11に設けられた主ギヤ(リングギヤ;アウターギヤ)14と、副軸12に設けられると共に主ギヤ14に噛み合う副ギヤ(プラネタリーギヤ)16とで構成されているため、主軸11と複数の副軸12との間の動力伝達を簡素な構造で行うことができる。また、主ギヤ14を内歯14Aを有するリングギヤとし、該内歯14Aに副ギヤ16を噛み合わせているので、副軸12から主軸11へ動力伝達する場合(流体機械1を膨張機とした場合)は、高い減速比で減速することができ、主軸11から副軸12へ動力伝達する場合(流体機械1を圧縮機とした場合)は、高い増速比で増速することができる。
【0037】
(3)揺動スクロール33とのバランスを図るバランサのうち、第3バランサ66が副ギヤ16自体によって構成されているので、別途バランサを副軸12に取り付ける必要が無く、部品点数減及びコンパクト化を図ることができる。
【0038】
〔第2実施形態〕
図9は、第2実施形態に係る流体機械1の概略図である。本実施形態では、主ギヤ14が、外周に外歯14Bを有するサンギヤを構成し、副ギヤ16が、主ギヤ14の外周側に等間隔で配置されるとともに、外歯14Bに噛み合ったものである。また、本実施形態では、副ギヤ16が、図6〜図8に示したような形態で、第2及び第3バランサ65,66を構成するものとなっている。その他の構成は第1実施形態と同一であるため、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0039】
図例では、主ギヤ14が副ギヤ16よりも大径となっているため、副軸12から主軸11へ動力伝達する場合は、減速となり、主軸11から副軸12へ動力伝達する場合は増速となる。また、本実施形態は、主ギヤ14よりも副ギヤ16を大径とすることが可能であり、この場合は、増減速が逆になる。
【0040】
副ギヤ16は、第2、第3バランサ65,66を構成しているので、第1実施形態よりも更に部品点数減及びコンパクト化を図ることができる。
【0041】
〔第3実施形態〕
図10は、第3実施形態に係る流体機械1の概略図である。本実施形態では、副軸12の中央部に副ギヤ16が設けられ、副軸12の両端にそれぞれスクロール式流体装置18,18が設けられている。副軸12両端の各スクロール式流体装置18,18は、それぞれ副軸12を同じ方向に回転させる配置となっている。すなわち、各スクロール式流体装置18,18は、互いに、揺動スクロール33のラップ部40及び固定スクロール34のラップ部46の渦巻き方向が反対方向となっている。
【0042】
さらに、各スクロール式流体装置18,18の揺動スクロール33,33は、副軸12の軸心O2に対して同じ側に偏心して配置され、これによって、一方のスクロール式流体装置18の揺動スクロール33が、他方のスクロール式流体装置18に対する第3バランサ66を構成するようになっている。本実施形態も第2実施形態と同様に、外歯14Bを有する主ギヤ(サンギヤ)14と、外歯14Bに噛み合う副ギヤ16とで連動機構が構成されている。その他の構成は、第1実施形態と同様であるため、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0043】
本実施形態では、1本の副軸12につき2つのスクロール式流体装置18を備えているため、第1,第2実施形態と比べて、さらに大容量及び高出力を実現することができる。また、第1,第2実施形態に比べてバランサを少なくすることができるため、スクロール式流体装置18の数を増やすことに伴う大型化や構造の複雑化を抑制することができる。
【0044】
〔第4実施形態〕
図11は、第4実施形態に係る流体機械1の概略図である。本実施形態では、大略第3実施形態と同様の構成であるが、第1,第2バランサ64,65が副ギヤ16自体によって構成されている。したがって、第3実施形態に比べて小型化や構造の簡素化を図ることができる。
【0045】
〔その他の実施形態〕
その他本発明は、以下のように実施することができる。
(1)第1実施形態(図1)における第2、第3バランサ65,66の配置を第2実施形態に適用することができ、逆に、第2実施形態(図9)の第2,第3バランサ65,66の配置を第1実施形態に適用することができる。
【0046】
(2)上記実施形態では、主として流体機械1を膨張機として用いた例を説明したが、圧縮機として用いることができる。
【0047】
(3)副軸12及びスクロール式流体装置18の数は上記実施形態に限定されるものではなく、出力及び効率等の観点から適宜選択することができる。
【0048】
(4)図1において、揺動スクロール33及び第3バランサ66に対して反位相の第1,第2バランサ64,65は、1つのバランサによって構成することができる。
【0049】
(5)連動機構は、主ギヤ14及び副ギヤ16によって構成しているが、例えばチェーン、ベルトの巻掛伝導機構等を用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、ランキンサイクル発電装置の膨張機や各種空調機器の圧縮機等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態に係る流体機械を示す概略図である。
【図2】主として副軸及びスクロール式流体装置の配置を示す、図1の矢印IIから見た流体機械の概略図である。
【図3】流体機械をランキンサイクル発電装置2に適用した例を示すブロック図である。
【図4】スクロール式流体装置の縦断面図である。
【図5】流体機械を膨張機として用いた場合のスクロール式流体装置の作動状態を示す説明図である。
【図6】副ギヤ自体を第3バランサとして構成するための例を示す側面図である。
【図7】副ギヤ自体を第3バランサとして構成するための他の例を示す側面図である。
【図8】同正面図である。
【図9】第2実施形態に係る流体機械の概略図である。
【図10】第3実施形態に係る流体機械の概略図である。
【図11】第4実施形態に係る流体機械の概略図である。
【符号の説明】
【0052】
1 流体機械
11 主軸
12 副軸
14 主ギヤ
16 副ギヤ
18 スクロール式流体装置
64 第1バランサ
65 第2バランサ
66 第3バランサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、スクロール式流体装置を備えた流体機械に関し、例えば、ランキンサイクルを利用した発電装置の膨張機等に好適に利用することができる流体機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ランキンサイクルを利用した発電装置は、エンジン等の機関排熱を回収して作動媒体を蒸気にする蒸発器と、蒸気によって駆動される蒸気タービン(膨張機)と、蒸気タービンにより作動する発電機と、蒸気タービンから流出した蒸気を凝縮させる凝縮器と、凝縮後の作動媒体を昇圧する復水ポンプ等とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の発電装置としては、事業用等の比較的大型のものが実用化されている。しかし、膨張機として用いる蒸気タービンは小型化すると効率が悪化するため、蒸気タービンを用いた小型の発電装置は実現が困難である。
【特許文献1】特開2002−161716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願出願人は、上記のようなランキンサイクル発電装置の膨張機として、小型で効率が悪化する蒸気タービンではなく、小型であっても高効率なスクロール式膨張機を用いることを考えた。しかし、このスクロール式膨張機は、蒸気タービンとは逆に、容量を増大するために大型化すると寸法精度が低くなり、効率が悪くなるという問題がある。また、スクロール式膨張機の形態をそのままにして寸法を大型に設計(相似設計)すると、出力増加に比べて、切削等の加工量の増える割合が高くなり、結果として、製造コストが大幅に増大するという問題がある。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑み、高効率でしかも大容量化を実現することができる、スクロール式流体装置を用いた流体機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、主軸と、複数の副軸と、前記主軸と前記各副軸との間で動力を伝達する連動機構と、それぞれ前記各副軸に連結された複数のスクロール式流体装置と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記連動機構が、前記主軸に設けられた主ギヤと、前記各副軸に設けられると共に前記主ギヤに噛み合う副ギヤと、を備えており、前記主ギヤがリング状に形成されるとともに内周に内歯を有し、前記各副ギヤが、前記主ギヤの内周側に配置されるとともに前記内歯に噛み合っていることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記連動機構が、前記主軸に設けられた主ギヤと、前記各副軸に設けられると共に前記主ギヤに噛み合う副ギヤと、を備えており、前記主ギヤが外周に外歯を有し、前記各副ギヤが、前記主ギヤの外周側に配置されるとともに前記外歯に噛み合っていることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の発明において、前記副ギヤが、前記スクロール式流体装置とのバランスを図るバランサを構成していることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記副軸の両端部に前記スクロール式流体装置を備えており、各スクロール式流体装置が、互いに前記副軸の軸心に対して同じ位相で重心が偏心した揺動スクロールを備え、両スクロール式流体装置の間に、該副軸の軸心に対して前記揺動スクロールと反位相で重心が偏心したバランサを備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項2又は3に記載の発明において、前記副軸の両端部に前記スクロール式流体装置を備えるとともに、両スクロール式流体装置の間に前記副ギヤを備えており、各スクロール式流体装置が、互いに前記副軸の軸心に対して同じ位相で重心が偏心した揺動スクロールを備え、前記副ギヤが、前記副軸の軸心に対して前記揺動スクロールと反位相で重心が偏心したバランサを構成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、各副軸に連結される個々のスクロール式流体装置を大型化することなく、全体としての容量を増大し、出力を高めることができる。個々のスクロール式流体装置は、小型のものを用いることができるので、効率が低下することはない。小型のスクロール式流体装置として、大量生産されているものを用いることができるのでコストを低減することができる。
【0013】
請求項2及び3の発明によれば、連動機構として、主軸に設けた主ギヤと、各副軸に設けた副ギヤを噛み合わせているので、1つの主ギヤから複数の副ギヤへ、又は複数の副ギヤから1つの主ギヤへ、簡単な構造で動力を伝達することができる。また、主軸と副軸との間で容易に減速又は増速して動力を伝達することができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、副軸に設けた副ギヤをバランサとして用いることで、別途バランサを設ける場合に比べて、構造の簡素化及びコンパクト化を図ることができる。
【0015】
請求項5の発明によれば、流体機械の容量を容易に増大することができるとともに、一方の揺動スクロールを他方のスクロール式流体装置に対するバランサをして用いることができ、構造の簡素化及びコンパクト化を図ることができる。
【0016】
請求項6の発明によれば、流体機械の容量を容易に増大することができるとともに、一方の揺動スクロールを他方のスクロール式流体装置に対するバランサをして用いることができ、構造の簡素化及びコンパクト化を図ることができる。さらに、副ギヤを各スクロール式流体装置のバランサとして用いているので、別途バランサを設ける場合に比べて、一層の構造の簡素化及びコンパクト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
(流体機械の全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る流体機械1を示す概略図であり、図2は、図1の矢印IIから見た流体機械の概略図である。この流体機械1は、主軸11と、該主軸11と平行に配置された複数(図2の例では3本)の副軸12とを備えている。主軸11は、軸受13によって回転自在に支持され、一端部に連結部材17を介して大径の主ギヤ(連動機構)14を備えている。主ギヤ14は、リングギヤ(アウターギヤ)であり、内周面に内歯14Aを備えている。
【0018】
各副軸12は、それぞれ軸受15によって回転自在に支持され、主軸11の軸心O1回りに等間隔に配置されている。各副軸12の一方の端部には、副ギヤ16が設けられている。各副ギヤ16は、主ギヤ14の内周側に配置されるとともに内歯14Aに噛み合っている。したがって、副ギヤ16は、所謂プラネタリーギヤを構成している。各副軸12の他方の端部には、スクロール式流体装置18が連結されている。
【0019】
この流体機械1は、各スクロール式流体装置18に流体(作動媒体)を供給して各副軸12を回転し、副軸12の回転動力を副ギヤ16及び主ギヤ14を介して主軸11から出力する膨張機として用いる場合と、主軸11に動力を入力して主ギヤ14及び副ギヤ16を介して副軸12を回転し、スクロール式流体装置18を駆動して流体を圧縮する圧縮機として用いる場合との双方に利用することができる。このスクロール式流体装置18で用いる流体は、例えば、水やアンモニアであるが、その他のHFC系の流体を用いることもできる。
【0020】
(流体機械の利用形態)
図3は、流体機械1の利用形態の1つとして、該流体機械1をランキンサイクル発電装置2に適用した例を示すブロック図である。この場合、流体機械1は膨張機を構成している。該発電装置2は、蒸気発生器21、発電機22、膨張機(流体機械)1、凝縮器23、復水ポンプ24、作動媒体通路25A〜25Cを有している。なお、点線で示す通路25A、25Bは、作動媒体が気体(気相)の状態、又は、気体及び液体(液相)の状態である場合を示し、実線で示す通路25Cは、作動媒体が液体の状態である場合を示す。
【0021】
発電機22は、膨張機1の出力軸(主軸)11(図1)に直接的又は間接的に接続されている。膨張機1は、蒸気発生器21から通路25Aを介して供給された蒸気(作動媒体)により作動し、発電機22を駆動する。膨張機1を経た作動媒体は通路25Bを通って凝縮器23に供給され、冷却水によって凝縮され、液体になる。更に、作動媒体は、復水ポンプ24によって凝縮器23から通路25Cを通って蒸気発生器21に供給され、蒸気発生器21で高温ガスによって蒸発する。このサイクルを繰り返し行うことで、発電機1により発電を行うようになっている。
【0022】
(スクロール式流体装置の詳細構造)
次に、流体機械1に用いられている各スクロール式流体装置18について詳細に説明する。図4は、スクロール式流体装置の縦断面図である。スクロール式流体装置18は、ハウジング(軸受ハウジング)31、クランク軸32、揺動スクロール33、固定スクロール34、スラスト軸受35等を備えている。副軸12の端部は軸受36を介してハウジング31に回転自在に連結されている。副軸12の、ハウジング31に支持された部分よりも軸端部側には、副軸12の軸心O2に平行で、偏心した軸心O3を有するクランク軸32が設けられている。
【0023】
揺動スクロール33は、円盤状の台板38の一側面に筒形のボス部39をクランク軸32の軸心O3方向に突設し、台板38の他側面にインボリュート曲線からなる渦巻き型のラップ部40を軸心O3方向に突設してなる。ボス部39は、その内周側に嵌装した軸受41を介してクランク軸32に回転自在に支持されている。
【0024】
固定スクロール34は、揺動スクロール33を挟んでハウジング31の反対側に配設され、揺動スクロール33のラップ部40の先端面に僅かな隙間をもって対向する外壁部43と、外壁部43の外周部から揺動スクロール33側に屈曲して延びる周壁部44と、周壁部44の端部から径方向外側に延びるフランジ部45とを有する。周壁部44の径方向内側には、外壁部43から揺動スクロール33側に突出する渦巻き型のラップ部46が形成されている。このラップ部46は、揺動スクロール33のラップ部40に噛み合い、先端面が台板38に僅かな隙間を持って対向している。これにより、揺動スクロール33と固定スクロール34との間には、複数の室47(膨張室又は圧縮室)が形成されるようになっている。
【0025】
ハウジング31の外周部には、フランジ部48が設けられている。このフランジ部48と、固定スクロール34のフランジ部45とは、スラスト軸受35の外周部を間に挟んでボルト49によって連結されている。スラスト軸受35はリング形状であり、スラスト軸受35の内周部は、揺動スクロール33の台板38の背面(ボス部39側の面)に摺動自在に当接している。
【0026】
揺動スクロール33は、クランク軸32の軸心O3上に重心が配置されるように、台板38の背面にバランサ51を備えている。また、揺動スクロール33とハウジング31との間には、揺動スクロール33が副軸12回りに公転するのを許容するとともに、クランク軸32回りに自転するのを規制するリング状の規制部材52が配置されている。規制部材52の一方の側面には係合突起54が設けられ、該係合突起54は、台板38の背面に形成した被係合部56に係合している。
【0027】
クランク軸32の外周側でハウジング31の内周面には、リング部材57が嵌合されており、該リング部材57には、径方向に延びる被係合溝57Aが形成されている。該被係合溝57Aには、規制部材52の反揺動スクロール33側に突出した係合部材55が係合している。なお、図4では、理解を容易にするために、規制部材52の一側面の係合部材54と他側面の係合部材55とを同じ平面上に示しているが、実際は、互いに90°位相がずれた配置となっている。
【0028】
規制部材52は、リング部材57の被係合溝57Aに沿って径方向に移動可能となっている。また、揺動スクロール33は、この規制部材52の移動可能な方向に直交する方向に移動可能である。したがって、揺動スクロール33は、自転することなく固定スクロール34に対して副軸12の軸心O2回りに公転(揺動旋回)することができる。
【0029】
図4に示すように、固定スクロール34の外壁部43の略中央には、流体の第1流通口61が貫通して形成されており、同じく、外壁部43の外周部には、流体の第2流通口62が形成されている。図3に示すように、流体機械1を膨張機として用いる場合は、第1流通口61が流体(作動媒体)の入口となり、第2流通口62が流体の出口となる。また、流体機械1を圧縮機として用いる場合は、第2流通口62が流体の入口となり、第1流通口61が流体の出口となる。
【0030】
(スクロール式流体装置の作動形態)
図5は、流体機械1を膨張機として用いた場合のスクロール式流体装置18の作動状態を示す説明図である。揺動スクロール33のラップ部40と固定スクロール34のラップ部46との間には、複数の膨張室が形成されている。まず、図5の(1)において、スクロール式流体装置18には、中央の第1流通口61から中央の第1膨張室47Aに作動媒体の蒸気が流入する。そして、(2)において、蒸気の圧力によって第1膨張室47Aが拡大し、揺動スクロール33が副軸12の軸心O1(図4)回りに公転し始め、これによってクランク軸32(図4)を介して副軸12が回転する。(3)では、更に第1膨張室47Aが拡大するともに、中央側に新たな膨張室(第2膨張室)47Bが形成され、該第2膨張室47Bに第1流通口61から継続して蒸気が流入する。その後、(4)(5)において、第1,第2膨張室47A,47Bがそれぞれ拡大するとともに揺動スクロール33が公転し、(6)において、揺動スクロール33のラップ部40の外周端が固定スクロール34のラップ部46から離れたところで第1膨張室47Aが開放され、蒸気が排気される。排気された蒸気は、図4に示す第2流通口61から外部に排出される。
【0031】
このような動作を繰り返し行うことによって、スクロール式流体装置18を具備した複数の副軸12が連続的に回転し、副ギヤ16及び主ギヤ14を介して主軸11が減速して回転する。
【0032】
(流体機械のバランサ構造)
図1に示すように、流体機械1には、揺動スクロール33の遠心力に対する静バランスを図るための第1バランサ64が、副軸12に対するクランク軸32(揺動スクロール33)の偏心側とは180°反対側に偏心して設けられている。さらに、揺動スクロール33及び第1バランサ64の遠心力で生じたモーメントに対する動バランスを図るための第2、第3バランサ65,66が設けられている。第2バランサ65は、副軸12に対して第1バランサ64と同じ側に偏心して設けられ、第3バランサ66は、副軸12に対して揺動スクロール33と同じ側に偏心して設けられている。
【0033】
第1バランサ64は、図4にも示すように、副軸12に一体回転自在に固定されている。また、図1に示すように、第2バランサ65も副軸12に一体回転自在に固定されている。これに対して第3バランサ66は副ギヤ16に設けられており、実質的には、副ギヤ16自体が第3バランサ66を構成するようになっている。
【0034】
図6〜図8は、副ギヤ16自体を第3バランサ66として構成するための例を示している。図6に示す例は、副ギヤ16の片側に、貫通孔や有底の凹部(穴)等のヌスミ68を形成し、反対側の重量を相対的に大きくすることによってバランサ66として構成したものである。図7及び図8に示す例は、副ギヤ16の側面に形成してあるリム69の片側を切除し(切除した部分を2点差線で示す)、反対側の重量を相対的に大きくすることによってバランサ66を構成したものである。
【0035】
(第1実施形態の作用効果)
上記構成の第1実施形態によって次のような作用効果を奏する。
(1)本実施形態の流体機械は、主軸11と、複数の副軸12と、主軸11と全副軸12との間で動力伝達をする連動機構(主ギヤ14及び副ギヤ16)と、各副軸12に設けられたスクロール式流体装置18とを備えているので、各スクロール式流体装置18として小型のものを用いたとしても全体として大容量となり、出力を高めることができる。また、スクロール式流体装置18として小型のものを用いることができるので、高い寸法精度で製作することができ、高効率で作動することができる。また、大量生産されている小型のスクロール式流体装置18を用いることによって製造コストを低減することができる。
【0036】
(2)主軸11と副軸12との間で動力伝達をする連動機構14,16は、主軸11に設けられた主ギヤ(リングギヤ;アウターギヤ)14と、副軸12に設けられると共に主ギヤ14に噛み合う副ギヤ(プラネタリーギヤ)16とで構成されているため、主軸11と複数の副軸12との間の動力伝達を簡素な構造で行うことができる。また、主ギヤ14を内歯14Aを有するリングギヤとし、該内歯14Aに副ギヤ16を噛み合わせているので、副軸12から主軸11へ動力伝達する場合(流体機械1を膨張機とした場合)は、高い減速比で減速することができ、主軸11から副軸12へ動力伝達する場合(流体機械1を圧縮機とした場合)は、高い増速比で増速することができる。
【0037】
(3)揺動スクロール33とのバランスを図るバランサのうち、第3バランサ66が副ギヤ16自体によって構成されているので、別途バランサを副軸12に取り付ける必要が無く、部品点数減及びコンパクト化を図ることができる。
【0038】
〔第2実施形態〕
図9は、第2実施形態に係る流体機械1の概略図である。本実施形態では、主ギヤ14が、外周に外歯14Bを有するサンギヤを構成し、副ギヤ16が、主ギヤ14の外周側に等間隔で配置されるとともに、外歯14Bに噛み合ったものである。また、本実施形態では、副ギヤ16が、図6〜図8に示したような形態で、第2及び第3バランサ65,66を構成するものとなっている。その他の構成は第1実施形態と同一であるため、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0039】
図例では、主ギヤ14が副ギヤ16よりも大径となっているため、副軸12から主軸11へ動力伝達する場合は、減速となり、主軸11から副軸12へ動力伝達する場合は増速となる。また、本実施形態は、主ギヤ14よりも副ギヤ16を大径とすることが可能であり、この場合は、増減速が逆になる。
【0040】
副ギヤ16は、第2、第3バランサ65,66を構成しているので、第1実施形態よりも更に部品点数減及びコンパクト化を図ることができる。
【0041】
〔第3実施形態〕
図10は、第3実施形態に係る流体機械1の概略図である。本実施形態では、副軸12の中央部に副ギヤ16が設けられ、副軸12の両端にそれぞれスクロール式流体装置18,18が設けられている。副軸12両端の各スクロール式流体装置18,18は、それぞれ副軸12を同じ方向に回転させる配置となっている。すなわち、各スクロール式流体装置18,18は、互いに、揺動スクロール33のラップ部40及び固定スクロール34のラップ部46の渦巻き方向が反対方向となっている。
【0042】
さらに、各スクロール式流体装置18,18の揺動スクロール33,33は、副軸12の軸心O2に対して同じ側に偏心して配置され、これによって、一方のスクロール式流体装置18の揺動スクロール33が、他方のスクロール式流体装置18に対する第3バランサ66を構成するようになっている。本実施形態も第2実施形態と同様に、外歯14Bを有する主ギヤ(サンギヤ)14と、外歯14Bに噛み合う副ギヤ16とで連動機構が構成されている。その他の構成は、第1実施形態と同様であるため、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0043】
本実施形態では、1本の副軸12につき2つのスクロール式流体装置18を備えているため、第1,第2実施形態と比べて、さらに大容量及び高出力を実現することができる。また、第1,第2実施形態に比べてバランサを少なくすることができるため、スクロール式流体装置18の数を増やすことに伴う大型化や構造の複雑化を抑制することができる。
【0044】
〔第4実施形態〕
図11は、第4実施形態に係る流体機械1の概略図である。本実施形態では、大略第3実施形態と同様の構成であるが、第1,第2バランサ64,65が副ギヤ16自体によって構成されている。したがって、第3実施形態に比べて小型化や構造の簡素化を図ることができる。
【0045】
〔その他の実施形態〕
その他本発明は、以下のように実施することができる。
(1)第1実施形態(図1)における第2、第3バランサ65,66の配置を第2実施形態に適用することができ、逆に、第2実施形態(図9)の第2,第3バランサ65,66の配置を第1実施形態に適用することができる。
【0046】
(2)上記実施形態では、主として流体機械1を膨張機として用いた例を説明したが、圧縮機として用いることができる。
【0047】
(3)副軸12及びスクロール式流体装置18の数は上記実施形態に限定されるものではなく、出力及び効率等の観点から適宜選択することができる。
【0048】
(4)図1において、揺動スクロール33及び第3バランサ66に対して反位相の第1,第2バランサ64,65は、1つのバランサによって構成することができる。
【0049】
(5)連動機構は、主ギヤ14及び副ギヤ16によって構成しているが、例えばチェーン、ベルトの巻掛伝導機構等を用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、ランキンサイクル発電装置の膨張機や各種空調機器の圧縮機等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態に係る流体機械を示す概略図である。
【図2】主として副軸及びスクロール式流体装置の配置を示す、図1の矢印IIから見た流体機械の概略図である。
【図3】流体機械をランキンサイクル発電装置2に適用した例を示すブロック図である。
【図4】スクロール式流体装置の縦断面図である。
【図5】流体機械を膨張機として用いた場合のスクロール式流体装置の作動状態を示す説明図である。
【図6】副ギヤ自体を第3バランサとして構成するための例を示す側面図である。
【図7】副ギヤ自体を第3バランサとして構成するための他の例を示す側面図である。
【図8】同正面図である。
【図9】第2実施形態に係る流体機械の概略図である。
【図10】第3実施形態に係る流体機械の概略図である。
【図11】第4実施形態に係る流体機械の概略図である。
【符号の説明】
【0052】
1 流体機械
11 主軸
12 副軸
14 主ギヤ
16 副ギヤ
18 スクロール式流体装置
64 第1バランサ
65 第2バランサ
66 第3バランサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸と、複数の副軸と、前記主軸と前記各副軸との間で動力を伝達する連動機構と、それぞれ前記各副軸に連結された複数のスクロール式流体装置と、を備えていることを特徴とする流体機械。
【請求項2】
前記連動機構が、前記主軸に設けられた主ギヤと、前記各副軸に設けられると共に前記主ギヤに噛み合う副ギヤと、を備えており、
前記主ギヤがリング状に形成されるとともに内周に内歯を有し、
前記各副ギヤが、前記主ギヤの内周側に配置されるとともに前記内歯に噛み合っていることを特徴とする、請求項1に記載の流体機械。
【請求項3】
前記連動機構が、前記主軸に設けられた主ギヤと、前記各副軸に設けられると共に前記主ギヤに噛み合う副ギヤと、を備えており、
前記主ギヤが外周に外歯を有し、
前記各副ギヤが、前記主ギヤの外周側に配置されるとともに前記外歯に噛み合っていることを特徴とする、請求項1に記載の流体機械。
【請求項4】
前記副ギヤが、前記スクロール式流体装置とのバランスを図るバランサを構成していることを特徴とする、請求項2又は3に記載の流体機械。
【請求項5】
前記副軸の両端部に前記スクロール式流体装置を備えており、
各スクロール式流体装置が、互いに前記副軸の軸心に対して同じ位相で重心が偏心した揺動スクロールを備え、両スクロール式流体装置の間に、該副軸の軸心に対して前記揺動スクロールとは反位相で重心が偏心したバランサを備えていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の流体機械。
【請求項6】
前記副軸の両端部に前記スクロール式流体装置を備えるとともに、各スクロール式流体装置の間に前記副ギヤを備えており、
各スクロール式流体装置が、互いに前記副軸の軸心に対して同じ位相で重心が偏心した揺動スクロールを備え、前記副ギヤが、前記副軸の軸心に対して前記揺動スクロールと反位相で重心が偏心したバランサを構成していることを特徴とする、請求項2又は3に記載の流体機械。
【請求項1】
主軸と、複数の副軸と、前記主軸と前記各副軸との間で動力を伝達する連動機構と、それぞれ前記各副軸に連結された複数のスクロール式流体装置と、を備えていることを特徴とする流体機械。
【請求項2】
前記連動機構が、前記主軸に設けられた主ギヤと、前記各副軸に設けられると共に前記主ギヤに噛み合う副ギヤと、を備えており、
前記主ギヤがリング状に形成されるとともに内周に内歯を有し、
前記各副ギヤが、前記主ギヤの内周側に配置されるとともに前記内歯に噛み合っていることを特徴とする、請求項1に記載の流体機械。
【請求項3】
前記連動機構が、前記主軸に設けられた主ギヤと、前記各副軸に設けられると共に前記主ギヤに噛み合う副ギヤと、を備えており、
前記主ギヤが外周に外歯を有し、
前記各副ギヤが、前記主ギヤの外周側に配置されるとともに前記外歯に噛み合っていることを特徴とする、請求項1に記載の流体機械。
【請求項4】
前記副ギヤが、前記スクロール式流体装置とのバランスを図るバランサを構成していることを特徴とする、請求項2又は3に記載の流体機械。
【請求項5】
前記副軸の両端部に前記スクロール式流体装置を備えており、
各スクロール式流体装置が、互いに前記副軸の軸心に対して同じ位相で重心が偏心した揺動スクロールを備え、両スクロール式流体装置の間に、該副軸の軸心に対して前記揺動スクロールとは反位相で重心が偏心したバランサを備えていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の流体機械。
【請求項6】
前記副軸の両端部に前記スクロール式流体装置を備えるとともに、各スクロール式流体装置の間に前記副ギヤを備えており、
各スクロール式流体装置が、互いに前記副軸の軸心に対して同じ位相で重心が偏心した揺動スクロールを備え、前記副ギヤが、前記副軸の軸心に対して前記揺動スクロールと反位相で重心が偏心したバランサを構成していることを特徴とする、請求項2又は3に記載の流体機械。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−170284(P2007−170284A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369500(P2005−369500)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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