説明

流体状サンプルを受取る装置およびその使用方法

本発明は、電気化学電池内の電極、たとえば対向電極または作用電極を形成するように設計された、流体状サンプルを受取る装置(1)に関する。本発明の装置は、少なくとも1の空洞(3)を持つ端部を含み、該空洞は、開口を介して外部に開いており、かつ底面を備えている。本発明は、端部が流体中に浸漬されそして次にそこから取り出されたときに空洞が流体の一部を毛細管作用によって保持するように、空洞開口に隣接した第1の電気絶縁性疎水性帯域(8)、および該第1帯域に隣接しかつ空洞の底面を少なくとも部分的に覆う第2の電気伝導性親水性帯域(4、5)を、前述の端部が含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体状サンプルを受取るための装置およびその使用方法に関する。本発明は特に、採取帯域で少量の流体を採取することおよび採取されたサンプルを堆積帯域で基体上に堆積するために輸送することを特に可能にする装置に関する。
【0002】
本発明の装置は、電気化学マイクロ電池として使用されることもできる。
【0003】
本発明は、とりわけバイオテクノロジー分野で、および特に現在最大規模で拡張中の生物学的サンプルの分析の分野で、または1以上の他の分子と比較された、分子の反応性若しくは親和性の研究に使用されることができる。本発明は、材料分析のもっと一般的な分野で使用されることもできる。
【背景技術】
【0004】
生体起源の流体状サンプルを輸送する装置、または生体外(in vitro)で若しくは生体内(in vivo)でつくられた精製された分子を収納する装置は、現在ますます重要になっている。この分野の最近の傾向の一つは、装置を小型化すること並びに使用されるべき試薬の量および/または分析されるべき若しくは研究されるべき生成物の量を最小化することであることが知られている。実際、利用できる生成物の量はしばしば非常に少ないか、あるいは生成物は非常に高価である。これらの理由から、マイクロアレイに配置されたスポット堆積を適当な基体上に実施することを可能にする装置がますます利用されている。これらの基体はその後、マイクロアレイに堆積された分子(一または複数の分子)に関して相互作用(反応性または親和性)を持つかもしれない既知または未知の生成物に接触させられる。分析がそれから検出系を使用して実施され、該検出系は、たとえば光学的、化学的、電気化学的等であることができる。
【0005】
基体と機械的接触をしてまたはしないで堆積する装置が存在する。
【0006】
接触なしの堆積の場合には、たとえば生物学的関心の対象である分子を含有する流体を採取帯域から採取し、そして次に装置を基体の堆積帯域の上方に置き、そして装置が基体と接触することなく一滴の液体を送達することが原理である。そのような装置は、たとえば米国特許第5763278号に記載されている。小容積の室を圧縮し、そして選択されたタイプの顕微鏡カバーガラスの基体上にまたは任意の他の適当な支持体上にそれによって一滴の液体を排出し、その後、相互作用を実証するための計器を使用した分析を許す圧電性構成要素を、この米国特許の装置は含む。このような装置は、その上に液体が堆積されなければならない表面を変えない利点を持つが、一般に(堆積されるべき液滴が形成される場所である)装置の下端は非常に壊れやすいので、該装置は取扱いに細心の注意を要する。このような装置は、かなり大きいサンプル量を要求する欠点も持つ。加えて、とりわけ使用される材料、特に時間とともにおよび印加された電圧により変形する傾向を持つ圧電性セラミックスの性質の故に、該装置の製作および焼成の複雑さは、その使用をかなり限定する。
【0007】
堆積装置の中で、あるものは動力源を含む流動手段(ピストン、バルブ、ポンプ)を使用するが、これは製作の複雑さおよび漏れの、配管の詰まりの若しくは気泡の形成の危険の両方に関連した欠点を持つ。
【0008】
上述のように、基体との接触によって作動する装置も存在する。これらの装置のあるものは、毛細管作用の現象によってのみ作動する。これは、米国特許第5770151号、第5807522号および第6101946号に記載された装置の場合であり、これらは以下に検討される。
【0009】
米国特許第5770151号は、一端が閉じられかつ他端が開いている中空の管を含む、液状サンプルを採取しそしてこのサンプルの微小滴を堆積する装置を記載する。管の壁は、開端の領域で長さ方向の隙間を持ち、これは開端部分が当該液体中に浸積されたときに、毛細管作用による少量の液体の採取を促進する。開端を固形表面上の複数のスポットと次々と接触させることによって、微小滴がその後、毛細管作用によって堆積される。
【0010】
米国特許第5807522号は、横方向の隙間を含み端がチップになっている細長い毛細管流路を形成するような、互いに離れた同一方向に拡がる2の構成員を含む、液状サンプルを採取しそして堆積する装置を記載する。チップ領域を液体中に浸積することによって、サンプルは毛細管流路内に保持され、そしてチップが固形支持体と十分な衝撃をもって接触すると、液状サンプルの底面のメニスカスが破壊され、これは液状サンプルの微小滴が支持体上に堆積されることを許す。
【0011】
米国特許第6101946号は、液状サンプルの微小滴を堆積することによって、支持体上にマイクロアレイを印刷するためのピンを記載する。点の端に向かってより近接するようにされた2のチップを形成する長さ方向の隙間を含む、四角形底面を持つピラミッドの形にカットされた点を、このピンは含む。このようなピンの製作は高精度の機械加工を要求し、したがって非常に高価である。
【0012】
以上に検討された3特許に記載されたすべての装置は、比較的大量の液体の毛細管作用による保持を促進する目的を持った長さ方向の隙間を含む。これらの隙間の製造は、これらの装置の製作を複雑にし、かつ特に米国特許第5807522号および第6101946号の装置については高価な機械加工を要求し、加えて、サンプルが懸濁粒子を含有するならば、これらの毛細管系は塞がれてしまい、またその上これらの装置は汚染を除くのがかなり困難である。
【0013】
以降にて判るように、本発明の装置は、特に電気化学的方法によって基体上に配位子(配位子の特性を分析しまたは研究するための反応試薬と、あるいは関心の対象である検出されるべきおよび/または定量されるべき分子と、相互作用する能力のある生物学的物質または任意の分子)を堆積しそして固定するために使用されることができる。
【0014】
仏国特許第2789401号は、アレイに似た様式で配位子を堆積しそしてそれを伝導性支持体上に電気化学的に固定する方法を記載する。この方法は特に、絶縁性材料(ポリプロピレン)からつくられた、流体状反応媒体を収納する円錐形の貯留部および電極を含む装置を使用して実施されることができる。流体状媒体は、2種類の電解重合性単量体、すなわち第一にピロールおよび第二に配位子に共役結合されたピロールを含有する。円錐の端は開いていて小さい直径を持つ。電極に対して陽極の電圧を印加された伝導性支持体とこの端を接触させることによって、基体との接触領域上にピロール重合体を堆積することが可能であり、その単位のいくつかは配位子に共役結合されている。このような装置では、貯留部は比較的大量の流体状媒体を収納し、また円錐の端はサンプル採取機能を持たず、また貯留部は動力源を含む流動系(ポンプ、バルブ等)の手段によって充填されなければならない。他の実施態様では、流体状反応媒体を収納する容器に浸漬されている電線(wire)の形態をした電極が使用される。電極が流体から出てきたときに、電極はその端に一滴の流体を保持している。電極はその後、液滴が電極と接触したままで同時に支持体と接触するように伝導性支持体上に持ってこられる。適当な電圧を印加することによって、前と同じようにピロール重合体の堆積物の形成が得られる。このような方法は、電極−支持体間隔の非常に精密な制御を要求する。実際、短絡は重合を妨げるだろうから、電極ではなく液滴のみが支持体と接触しなければならない。このことから、このような方法は、さらには比較的に非再現性でもあり、工業用途に適していないとの結論になる。さらに、ピンによって輸送される流体の量は、比較的に非再現性であり、また乾燥を受けやすい。
【0015】
国際特許出願公開第00/25925号は、基体上に流体の液滴を堆積する装置を記載する。この装置は、毛細管流路を介して外側と通じることができる空洞を含む。
【特許文献1】米国特許第5763278号公報
【特許文献2】米国特許第5770151号公報
【特許文献3】米国特許第5807522号公報
【特許文献4】米国特許第6101946号公報
【特許文献5】仏国特許第2789401号公報
【特許文献6】国際特許出願公開第00/25925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の主題は特に、流体を採取しそして輸送する装置であり、採取されるべき流体の源である流体状サンプルが非常に少量でしか利用できないときを包含する。動力源を含む流動手段、たとえばピストン、ポンプまたはバルブなしに作動することができるこの装置は、製作するのが非常に簡単であり、したがって比較的低い原価を持つ。これは、何ら壊れやすい構成要素を含まず、したがって長期間にわたって使用されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の主題は、流体状サンプルを、特に採取しそして輸送するために、受取る装置であって、該装置が、開口を介して外部に開いている少なくとも1の空洞を持つ端部を含み、当該空洞が底面を備えており、当該端部が当該流体中に浸漬されそして次にそこから出てきたときに当該空洞が当該流体の一部を毛細管作用によって保持するように、空洞開口に隣接した第一の疎水性帯域および該第一帯域に隣接しかつ空洞の底面を少なくとも部分的に覆う第二の親水性帯域を、当該端部が呈することを特徴とする、上記の装置である。
【0018】
本発明に従う受取り装置は好ましくは、電気化学電池の電極、特に対向電極または作用電極を形成するように設計される。
【0019】
本発明に従うと、「疎水性帯域」の語は、考慮中の流体、特に液体への、親水性帯域よりも弱い親和性を示す帯域を意味するように意図される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
特定の実施態様では、本発明の装置は、以下の特徴を単独でまたは適当な場合には組み合わせて持つこともできる。
−疎水的性質が、疎水性コーティングによって付与される。
−当該疎水性コーティングが、当該端部上に少なくとも当該開口の周辺に堆積される(このコーティングは、開口を塞いでしまってはいけないことが理解される)。
−疎水性帯域は、空洞内に、任意的にその底面まで、底面を完全には覆うことなく拡がっており、および/または装置の外壁上に拡がっている。
−疎水性帯域が、電気絶縁性材料からつくられている。
−当該疎水性コーティングは、例としてTeflon(商標)、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、パーフルオロアルコキシ(PFA)、エチレンの、プロピレンの、若しくはイソプレンの単独重合体または共重合体、ポリウレタン並びにエポキシ樹脂から選ばれた材料からつくられるが、このリストは限定的なものではない。
−親水性帯域が、金属性または非金属性の電気伝導性材料からつくられる。
−電気伝導性材料からつくられているおよび/または電気伝導性材料で被覆されている本体を端部が含み、空洞がこの本体によって少なくとも部分的に形成される。
−当該電気伝導性材料が、特に鋼鉄、チタン、白金、金、銀、黒鉛および炭素繊維から選ばれるが、このリストは限定的なものではない。
−当該空洞が、以下の特徴の少なくとも1を持つ。
●それが、0.1ピコリットル〜1μl、および特には1〜50nlの範囲の流体状サンプル量を保持するのに十分な容積を持つ。
●それが、5μm〜200μmの深さを持つ。
●空洞の深さ/開口直径比が、0.01〜1、たとえば0.1〜1の範囲で色々であることができる。
●空洞は、円形または多角形の横断面を持つことができる。
●空洞は、実質的に円柱状若しくは円錐状の形を持つことができ、または円錐状の底面によって拡げられた円柱状の壁を持つことができる。
−当該流体状サンプルを固形基体の上に堆積するために当該装置がその端部を介して固形基体と接触したときに、当該装置に影響を与えるかもしれない衝撃を低減するための減衰要素を、当該装置は含んでも含まなくてもよく、当該減衰要素は、たとえばばねである。
−当該装置は、ロッドを含み、ロッドは弾性変形する能力のある材料からつくられることができ、また減衰要素の役割を果たすSの形をした少なくとも1の部分を含むことができる。
−当該装置は、他の部分、特に減衰要素の役割を果たすように設計された円筒に滑り込むことができるロッドを含む。
−親水性帯域の親水的性質は、親水性材料からつくられたコーティングによって付与されることができる。
【0021】
好ましくは、流体状サンプルを受取る空洞は、毛細管流路の関与なくして、外部に直接開いている。
【0022】
したがって、空洞は、比較的容易に空にされそして浄化されることができる。
【0023】
特定の実施態様に従うと、本発明の装置は、端部の側面に、その外側または内側に、ロッドの端を超えて伸びる突出部を持つスリーブを備えたロッドを含む。空洞は、この場合、スリーブの内壁の突出部とロッド端面とからなる。スリーブは、たとえば疎水性材料からつくられる。特に、ロッドは伝導性材料から、またスリーブは絶縁性材料からつくられることができ、そして装置を電極として使用することが望まれるならば、より安定な電極を得るように、当該ロッド端面は研磨されおよび/または比較的非反応性の金属、たとえば白金若しくは金で被覆されることができる。
【0024】
突き出しスリーブは、伝導性材料からつくられることもできる。この場合に、突出部の少なくとも端は、疎水性材料、好ましくは電気絶縁性材料の層で被覆される。疎水性コーティングは、伝導性スリーブの外壁上および、任意的に、突き出る内壁の一部上に拡がることができる。
【0025】
本発明の主題は、上に定義された装置を使用して流体状サンプルを特に採取しそして輸送する方法でもある。この方法は、動力源を含む流動手段を使用することなく作動することができ、
a)当該空洞を含む端部を、採取されるべき流体を収納する容器に浸漬し、そして次にそこからそれを取り出すこと、および
b)当該端部を固形基体と接触させること
より成る段階を含む。
【0026】
特定の実施態様に従うと、
−基体上の堆積として一滴の流体状サンプルを残すように、端部はその後、基体から離され、
−所望であれば、当該基体上にマトリックスアレイの形に堆積を形成するように、同一または異なった複数の流体状サンプルを固形基体上に堆積するために必要なだけ何回も段階a)およびb)が繰り返される。サンプルが異なるときは、すすぎ洗い−乾燥操作が必要だろう。
【0027】
この方法は特に、基体上に堆積されるべきおよび/または固定化されるべき生物学的分子または物質を含有する流体状サンプルに使用されることができる。これは、たとえば希釈物を製造するために、1の流体を他の流体溶液に輸送するために使用されることもできる。
【0028】
本発明の方法は、受取り装置を電極として使用することも可能にする。このためには、装置は伝導性材料からつくられた本体を含み、そして当該端部は絶縁性および疎水性のコーティングまたは空洞開口をもちろん塞いでしまわないスリーブを備えている。基体は、伝導性材料からつくられまたは1以上の伝導性帯域を含有し、そして接触の当該段階後に、アッセンブリは、少なくとも2の独立した電極を含む電気化学電池を形成する。1以上の追加の電極(一または複数の電極)が、該装置にまたは基体に加えられることができる。
【0029】
流体は、電解質および任意的に他の懸濁化合物を含むことができる。
【0030】
本発明の方法は、採取された溶液または懸濁物の電気化学タイプの分析を実施することに本質がある段階を含むことができる。
【0031】
本発明の方法は、上述のアッセンブリを電気化学電池として使用すること、および伝導性本体と基体との両方に接触している電解質含有サンプルを介して、当該端部と当該基体との間または端部と基体の伝導性帯域との間に電流を通すことまたは単にその間の電位差を測定することに本質がある段階を含むことができる。定電流法または定電位法のアッセンブリを使用して、サンプルの組成の何らの顕著な変化なしに、分析されるべく採取された流体状サンプルのまたは基体の電流および電位の特性を測定することが可能である。というのは、溶解された電気活性物質の濃度は、実施された測定によっては実質上変化しないからである。
【0032】
たとえば本発明の装置を作用電極として、および伝導性支持体、特に金属細片を対向電極として使用すると、装置の空洞は、特に作用電極で起きる反応を研究するための電解質マイクロ電池を構成する。このような装置は、作用電極と対向電極との間に同じ間隔を常に持つことを可能にする。
【0033】
電着の電気化学的方法に従って、1以上の生物学的分子または物質を伝導性基体上に固定化するために本発明の方法を使用することも可能である。この場合には、基体は作用電極を構成し、また受取り装置の端は対向電極の役割をする。
【0034】
このような電着の方法は特に、たとえば陽極酸化によって電解重合可能である単量体を流体が含有するときに実施されることができる。その場合、本体と基体との間に電流が通され、当該基体を重合体生成に要求される電位に導く。このようにして、単量体が伝導性基体と接触して陽極酸化によって重合し、そして当該基体上に付着する、スポットとも呼ばれる点堆積を形成するように、伝導性物質からつくられた採取装置の端は、対向電極の役割を果たす。このような方法は、したがって、任意的にアレイとして配置された、重合体のマイクロスポットを伝導性表面上に製造することを可能にする。
【0035】
本発明の主題は、電気化学電池を形成する方法において、該方法が以下の
−開口を介して外部に開いている少なくとも1の空洞を持つ端部を含む受取り装置であって、当該空洞が底面を備えており、この端部が空洞開口に隣接した第1の電気絶縁性疎水性帯域および該第1帯域に隣接しかつ空洞の底面を少なくとも部分的に覆う第2の電気伝導性親水性帯域を呈する、上記の受取り装置を用意すること、
−少なくとも1の伝導性帯域を持つ、受取り表面、特に基体を用意すること、
−流体状サンプルを受取り装置によって採取すること、および
−受取り装置の端部を受取り表面の伝導性帯域に接触させ、ここで第1の疎水性帯域が、第2の伝導性親水性帯域を受取り表面の伝導性帯域から電気絶縁するように配置されていること
の段階を含む、上記の方法でもある。
【0036】
本発明の主題は、以下の
−開口を介して外部に開いている少なくとも1の空洞を持つ端部を含む受取り装置であって、当該空洞が底部を備えており、この端部が空洞開口に隣接した第1の電気絶縁性疎水性領域および該第1領域に隣接しかつ空洞の底部を少なくとも部分的に覆う第2の電気伝導性親水性領域を示す、上記受取り装置を用意すること、
−少なくとも1の伝導性帯域を持つ、受取り表面、特に基体を用意すること、
−受取り装置によって流体状サンプルを採取すること、
−受取り装置の端部を受取り表面の伝導性帯域に接触させ、ここで第1の疎水性帯域が、第2の伝導性親水性帯域を受取り表面の伝導性帯域から電気絶縁するように設計されていること、および
−受取り装置の親水性帯域と基体の伝導性帯域との間に電流を通すこと、または受取り装置の伝導性帯域と受取り支持体の伝導性帯域との間の電気的パラメータ、たとえば電位差を測定すること
の段階を含む方法でもある。
【0037】
本発明の方法は、以下の
−受取り装置の空洞内に収納された物質を重合するために、受取り装置の親水性帯域と基体の伝導性帯域との間に電流、特にパルス状電流を通すこと
を含むことができる。
【0038】
本発明の方法は、変種として以下の
−受取り装置の伝導性帯域と伝導性表面、たとえば鋼鉄シートとの間の電気的パラメータ、特に電位差を測定すること、および
−伝導性表面について、得られた測定値を使用して、物理的または化学的特性、たとえば酸化状態に関するマップ作成を実施するために前の段階を繰り返すこと
の段階を含むことができる。
【0039】
本発明の特定の実施態様が、これからもっと詳細に、例示の目的で、添付された図面を引用して記載される。
【0040】
図1に表されているのは、非常に概略な図で、本発明に従う受取り装置1である。
【0041】
装置1はロッド2、端部2’を含み、端部2’は受取り空洞3を備えている。
【0042】
考慮されるこの実施例では、空洞3は、ロッド2に平行な軸Xを持つ円柱の形をしており、内壁4および底面5を持つ。
【0043】
ロッド2は、その端に疎水性コーティング8で覆われた部分6を持つ。
【0044】
考慮されるこの実施例では、ロッド2は、親水的特性を示す伝導性材料からつくられ、この伝導性材料は、たとえば金、白金または316Lステンレス鋼タイプのステンレス鋼であることが可能である。
【0045】
部分6は、空洞3の開口7の周辺まで拡がっている。
【0046】
図1の実施例では、コーティング8は、空洞3の中にもロッド2の外壁10の上にも拡がることなく、部分6の上にのみ拡がっている。
【0047】
変種として、コーティング8は、図2に示されたように、空洞3の中まで内壁4を部分的に覆って拡がることができる。
【0048】
このコーティング8は、底面5に届いても届かなくてもよい。
【0049】
コーティング8は、ロッド2の外壁10の上まで拡がることもできる。
【0050】
上に記載された実施例では、受取り空洞3は、ロッド自体のくり抜きで製造される。
【0051】
図3に表されているのは、本発明の実施の他の例に従う受取り装置15であり、この中で受取り空洞16が、ロッド18の一端にはめ込まれたスリーブ17によって形成されている。
【0052】
空洞16は、ロッド18の部分19によって画定された底面を持つ。
【0053】
スリーブ17は、ロッド18の上にかみ合わされた第1の部分17aおよび部分19から突き出ている第2の部分17bを含む。
【0054】
スリーブ17は、プラスチックからつくられた熱収縮性の鞘からたとえばなる疎水性材料からつくられる。
【0055】
図4に示された実施の例では、ロッド18’は、スリーブ17がその上にはめ込まれた環状の口絞り部20を含む。
【0056】
図5に表されているのは、ロッド2’の端が少なくとも部分的に斜角に、たとえば半分斜角にまたは完全に斜角になっている事実の故に、図1を引用して記載されたものとは異なる受取り装置である。
【0057】
図6に示された実施の例では、受取り装置20はロッド21を含み、その一端に受取り空洞23を含む金属挿入物22が付けられている。
【0058】
挿入物22は、疎水性コーティング25で覆われた円筒状の外壁24を含む。
【0059】
図7に表されているのは、一端に頭37を持つ金属ロッド36を備えた受取り装置35であり、ロッド36の一部およびこの頭37が、疎水性材料からつくられたコーティング38中に埋め込まれている。
【0060】
このコーティング38は、流体状サンプルを受取るための空洞39を頭37に対して直角に含む。
【0061】
図8に表されているのは、金属ロッド31を含む本発明に従う装置30であり、減衰器を形成する弾性変形可能な帯域を画定するように設計された、Sの形に折りたたまれた部分32を持つ。
【0062】
この減衰器は、このように特に簡単な様式でつくり出されることができ、基体33の面に垂直な方向の衝撃を減衰することを可能にする。考慮されるこの実施例では、基体33は金板を含む。
【0063】
ロッド31の下端34は、図6を引用して記載された受取り装置20を画定する。
【0064】
図9に示された実施の例では、受取り装置はロッド41に付けられており、ロッド41は、上端に支持体40の筐体内にはめ込まれた頭42を持つ。
【0065】
この頭42は、ロッド41とは別個のばね43によってその出発位置に戻される。
【0066】
したがって、ロッド41は、図8を引用して記載されたもののようなSの形に折りたたまれた部分を持たなくて済むことができる。
【0067】
ばね43は、たとえばエラストマー材料のような弾性的な復元を持つ任意の他の構成要素によって置き換えられることができる。
【0068】
この支持体40は、ロッドを水平および垂直方向に動かすための自動化された装置の操作アームに付けられることができる。
【0069】
このような自動化された装置は、複数の受取り装置を作動させることが可能なように設計されることができる。
【0070】
自動化された3軸の装置を使用して、マトリックスアレイに従って基体上に液滴を堆積することが可能である。
【0071】
典型的な使用の方法は、受取り装置を採取帯域の上方に持ってきて、そしてロッドをその端が、輸送されるべき流体中に浸漬されるまで垂直下方に動かすことにその本質がある。この後、基体上の堆積帯域と鉛直になるまでの水平な動き、そして基体と接触するまでの垂直な降下、そして毛細管作用による微小滴の堆積が、それに続く。次に、装置は垂直上方に戻され、そしてそれからたとえば水噴流および次に乾燥のための空気噴流によって端を浄化する帯域に動かされる。操作は、それから同じ流体状サンプルまたは他の流体状サンプルを用いて繰り返されることができる。
【0072】
疎水性コーティングまたはスリーブが絶縁性材料からつくられていると、本発明の装置を電極として使用することが可能であり、空洞23は電気化学マイクロ電池の役目を果たす。
【0073】
本発明の各種の用途が、これからもっと詳細に以降に記載される。
【実施例1】
【0074】
電気化学的堆積によるたんぱく質チップの製造
これは、6の異なった分子の、それぞれの10謄本が固定化された60のスポットを含むチップを製造することを含み、各スポットの中心間に700μmの間隔を持つ8×8スポットの実質的に四角形の格子パターン上に、および5×5mmの全表面積上に、各スポットは配置される。4の帯域は生物学種を用いて機能化されないで、基体は「裸」のままにされるだろう。
【0075】
6の異なった分子は抗体、すなわち抗hCG抗体(シグマ社製)、抗ペプチドmAb 11E12(Sanofi Diagnostics Pasteur社製)、抗HSA抗体(シグマ社製)、抗アビジン抗体(シグマ社製)、抗ウサギIgG抗体(シグマ社製)および抗BSA抗体(シグマ社製)である。
【0076】
実験の最終目的は、チップに接触して次々に注入されたこれらの抗体と、これらの抗体が仕向けられた分子との相互作用を表面プラズモン共鳴イメージング法、たとえば国際特許出願公開第02/48689号に記載されたものによって、並行して、リアルタイムで、および標識なしに観察することである。すべてのこれらの分子は、予めピロール単量体とそのNH2d結合上で結合されている。この後、1以上のピロール分子と結合された各たんぱく質は、50mMのNaHPO(シグマ社製)+50mMのNaCl(Merck社製)からなる反応媒体中10μMの濃度で、6.8のpHで、円錐状の底の96ウェルのマイクロプレートのウェルの1つの底に置かれる。数マイクロリットル、典型的には5μl以下の生成物が、生物種当たり数十の堆積物を実現することを可能にするのに十分である。
【0077】
この実施例で使用された基体は、12.5×25mmの底面および9mmの高さを持つプリズム形の(BK7またはSF11のガラスからつくられた)基体であり、その上に付加層の役割をする約20オングストロームのクロムの層および約500オングストロームの金の層が堆積されている(堆積は真空下の蒸着によって実施された)。これらのタイプの基体は、表面プラズモン共鳴によってなされる測定に特に適している。
【0078】
金の層が次に、作用電極の出口を形成するEGG 273タイプのポテンシオスタットに接続される。この電気化学電池の対向電極の役割に関しては、手順は以下の通りである。
−受取り装置、たとえば図8を引用して記載された受取り装置30は、図10に示されたように装置30を受取るくり抜き部51を持つステンレス鋼の円筒50内に挿入される。
−空洞23は、250μmの内直径の円形の断面を持ち、絶縁性スリーブ25の外直径は450μmであり、また空洞23の深さは50μmであり、これは約2.5nlの全空洞容積に相当する。
−くり抜き部51内に装置30を保持するために、ステンレス鋼のブロックねじ52が使用され、これは装置30の空洞23の伝導性部分と対向電極端子との電線53を介した電気的接続を達成することも可能にする。
−円筒50は、チャックで垂直な位置に保たれることができるか、あるいはたとえばTECAN社によって販売されているGENESISと呼ばれる、たとえば3軸の動きを備えた工業的な自動化された装置の、図10に非常に概略に破線として表された操作アーム54に、この円筒の上部にねじ切りされた刻み目によって取り付けられることができ、この場合には参照電極は、対向電極に直接接続されるので、無用であることが注記される。
【0079】
円筒50を保持する操作アーム54は、抗hCG抗体を収納するウェルに垂直に置かれる。
【0080】
操作アーム54は、装置30の空洞23が溶液中に完全に浸漬されるようにウェル中に降下する。
【0081】
ウェルの底との機械的接触は可能であり、装置の機能性を損なわない。溶液のいくらか、この場合には数nlが、空洞内に毛細管作用によって浸透する。
【0082】
操作アーム54は、垂直上方に戻され、そして金で覆われたプリズム形の基体の堆積帯域の上方に、もっと特定するとアレイの所定の帯域の1つの上方に移される。操作アーム54は次に、装置30と基体との機械的接触が得られるまで降下する。
【0083】
空洞23の伝導性底面と基体との間で伝導性反応媒体を介してなされる電気的接触は、受取り装置30が基体と機械的接触をしていることを必ずしも要求しない。しかし、そのような機械的接触を達成することは好ましい。
【0084】
アーム54が固定された後、EGG 273ポテンシオスタットによって対向電極と作用電極との間に+2.4Vの電位差が250ミリ秒間達成される。すると基体上にポリピロールの薄膜の形成が起き、それによって生体分子、すなわち抗hCG抗体が金で被覆されたプリズム形の基体に結合される。
【0085】
操作アーム54はそれから、上方に戻されそしてもう1つのサンプルを取るために前のウェル中に戻される。装置のすすぎ洗いおよび乾燥は、同じ生成物が数回採取されるので、この場合には必須ではない。
【0086】
同じ工程に従って10のスポットが形成された後、操作アーム54は超純水を充填されたマイクロプレートのウェルに対して垂直であるように動かされる。アーム54はそれから、装置30を適切にすすぎ洗いするようにこのウェルに3回入れ出しされ、装置30は、それの将来の機能性を損なうことがないようにウェルの底に接触してもしなくてもよく、違いはない。操作アーム54はそれから、吸収紙、たとえばKodak社によって販売される光学紙と接触させられる。この乾燥操作は、吸収紙の3の異なった場所で3回実施される。
【0087】
この乾燥段階の後、上記の順序に従って第2の抗体、たとえば抗HSAを採取する目的で、10のスポットを電気化学的に堆積するように操作アーム54が制御される。該工程は、他の4の生物種についてこのように実施される。
【0088】
同じように、各電着の最後に浄化−すすぎ洗い−乾燥段階を実行することによって、異なった生物種の96のスポットが堆積されることができる。
【実施例2】
【0089】
嚢胞性線維症の研究に関連するDNA配列を示す384スポットチップの製造(受動吸着による堆積)
この実施例では、基体は、その上に約20オングストロームのクロムの層および約500オングストロームの金の層が予め堆積された顕微鏡スライド(75×25×1mm、VWR International社によってESCOの名前で販売されている。)である(堆積は真空蒸着によって実施された。)。
【0090】
このスライドは、生体分子の固定化を静電気相互作用によって促進するコーティングを用いて機能化される。これは、金の上に堆積された11−メルカプトウンデカン酸(MUA)の単分子層そしてそれからポリエチレンイミン(PEI)の単分子層である(該方法はBassilらによって、Sensors and Actuators誌、B94巻、(2003年) 313〜324頁に記載されている。)。この表面はそれから、PBS(Sigma社製)中0.2g/lのエクストラアビジン(Sigma社製)の溶液と30分間接触させられ、その後水ですすぎ洗いされる。エクストラアビジンは、すると静電気相互作用によってPEIに結合する。
【0091】
基体は、3軸の自動化された装置、たとえばGenetix社によってQ−Arrayの名前で販売されているものの作動帯域内に置かれ、該3軸の自動化された装置は、減衰がその自重下に生じる一体化された減衰装置を含む支持体を備え、この形式の顕微鏡スライドについておよびまた標準マイクロプレートについての位置を既に予め設定しており、そしてその中にたとえば図9を引用して記載された装置40が挿入される。
【0092】
装置の大きさは、この場合、以下の通りである。サンプルを受取る空洞の内直径は100μmであり、その深さは50μmであり、また外側の絶縁性PTFEスリーブ直径は300μmである。
【0093】
ビオチンを用いて5’の位置で機能化されたいくつかのオリゴヌクレオチド配列(全部で300の異なった配列)が、384ウェルのマイクロプレートのウェル中に、PBS緩衝液中で、生物種がチップ上であまりにも急速に乾き切るのを防ぐために1.5Mのベタインを存在させて、別々に入れられる。該配列の濃度は、それぞれのウェル中1μMである。嚢胞性線維症に関与している変異のタイプを確実性を持って決定するように、これらの配列は選ばれた。互いに400μm離れた16×64点(全部で1024測定点)から構成された実質的に長方形のアレイの上にランダムに分布されて、各生物種の3謄本が堆積される。
【0094】
前述の装置を担うアームが、マイクロプレートのウェルの1つの中へとロッドを下げる。ロッドがオリゴヌクレオチドを含有する液体中に浸漬されたときに、生成物が毛細管作用によって採取される。
【0095】
操作アーム54はそれから、上に戻りそしてアレイの点の1つの上方に位置を取る。アームは垂直に降下し、そして基体と装置との間で機械的接触が起きたときに、約1〜2nlの体積を持つ微小滴の形で、採取された量の一部を、後者は基体上に堆積する。
【0096】
アーム54はそれから、前と同じウェルの上に戻り、同じ生物種のもう2つのスポットを製造するために、前の循環過程をさらに2回実行する。
【0097】
それぞれの生物種の3スポットが付けられた後、アームは再び上に戻り、そして空洞内または装置の外壁上に依然存在する流体を除くために、ロッドに超純水をスプレーする泉に対して垂直に置かれる。
【0098】
アームはその後、たとえば熱い乾燥空気の流れをつくり出す乾燥構成要素の上に装置を置き、そして数十秒間そこに留める。
【0099】
装置はそれから、他のウェルから後続の生成物を採取する用意をして、最後にすべてのタイプのオリゴヌクレオチド配列が採取されそして堆積されてしまう。
【実施例3】
【0100】
蛍光法
最後に、チップの分析は蛍光法によって実施されることができる。目的は罹患患者の発現プロファイルを正常患者に対して比較することである。これをするために、正常患者のDNAが予め蛍光ラベル(たとえばSigma社のCy3)で標識され、また罹患患者のそれが他の蛍光ラベル(たとえばSigma社のCy5)で標識される。該2患者の血清は混合されそしてこの混合物は機能化されたチップと接触させられる。生成物は37℃で30分間接触させて置かれる。チップはそれからすすぎ洗いされそして蛍光読取装置、たとえばGenechip(商標)Scanner 3000内に挿入される。次に、各種のオリゴヌクレオチド配列に対応するそれぞれのスポット上の2のラベルの蛍光の分析は、正常患者に比較して罹患患者においてどれが過大発現されまたは過小発現された遺伝子型であるかを決定することを可能にする。
【実施例4】
【0101】
同時堆積
本発明は、電気化学法によってまたはよらないで、1536ウェルのプレートからおよそ8の異なった基体を採取する8ロッド(たとえば、TECAN社によって販売されたGENESISと呼ばれる自動化された装置に設置された8ロッド)を用いて同時堆積について実施されることができる。
【実施例5】
【0102】
受取り装置を指示電極または作用電極として使用する方法
以下の2の実施例では、ロッドは、2電極電気化学マイクロ電池の作用電極として使用される。このタイプの装置は、たとえば還元若しくは酸化状態にある分子を特性付けしまたは重合体の電気化学による合成を研究することを可能にする。
【実施例6】
【0103】
低電流方式での使用方法
非常に小さい、1mmの程度の表面積を持つ、指示電極と呼ばれる電極を使用して、実質的に組成の変化なしに、すなわち電解液に溶解された電気活性物質の濃度を、電流の通過にもかかわらず、実質的に変えないように系を保ちながら、同時に電流−電位特性を測定することが可能である。
【0104】
図11に示された固形電極60は、白金、金、銀、黒鉛またはステンレス鋼からつくられた0.5mm〜2mmの直径を持つロッド61を、たとえば絶縁性のガラス、ポリエチレンまたはTeflon(商標)からつくられた絶縁性鞘62中に挿入し、そしてロッドの直線部をそれが溶液と接触するように繰り出すことによって製造される。平面の円盤状電極がこのようにして得られる。溶液と接触するロッドの端は、たとえばダイヤモンドペーストで研磨されることができる。
【0105】
連続した壁を持つ空洞63は、分析されるべきサンプルを毛細管作用によって充填された電気化学マイクロ電池を生成することを可能にする。
【0106】
ロッド61によって形成された作用電極60は、ポテンシオスタットの作用電極の出口に接続される。この接続は、直接ロッドにまたはロッドがはめ込まれる金属片になされ、また自動化された装置に適合するように設計されることができる。
【0107】
対向電極65は、たとえば白金のシート、金細片、ITO(インジウムスズ酸化物)で被覆されたプラスチック支持体、またはケイ素板であることができる。
【0108】
反応媒体は、分析されるべき化学種を含有する、たとえばLi、ClOイオンまたはPBSに基づいたイオン性溶液であることができる。
【0109】
電極60の端は、対向電極61と接触させられそして数十マイクロアンペアの電流が加えられる。電圧が次に測定される。
【0110】
この装置は、同じように、低電圧方式で使用されることができる。
【0111】
この場合には、電圧が2電極間に印加されそしてこの電圧によって発生された電流が分析される。
【0112】
前のように、ロッドが作用電極として使用され、金細片が対向電極として使用され、また空洞が電気化学マイクロ電池として使用される。それから、ロッドからなる作用電極で起きる反応が研究される。
【0113】
この装置は、作用電極と対向電極との間に常に同じ間隔を持つことを可能にする。
【0114】
スリーブ62は、絶縁性の性質のものであるか、あるいは図12に示されたように伝導性の性質でかつ絶縁性材料67、たとえば堅い絶縁性のTeflon(商標)の層66で被覆されているものであることができる。
【実施例7】
【0115】
ロッドを補助電極(対向電極)として使用する方法
この構成では、ロッドの機能は対向電極およびマイクロ電池としての役割をすることになる。直径数百μmの重合体のマイクロスポットを金属表面上に製造することを、これは可能にする。
【0116】
ロッドは、ステンレス鋼からまたは金属、たとえば白金、金若しくは銀で被覆されたステンレス鋼からつくられる。スリーブはステンレス鋼からつくられ、多分その内部については金属で被覆されおよびその外部はTeflon(商標)で被覆される。スリーブは、絶縁性材料からなることもできる。
【0117】
ロッドと、考慮中のこの実施例では作用電極の役割をする金細片との間に、たとえばポテンシオスタットまたは電圧発生器を使用して、約2Vの電圧が印加される。
【0118】
空洞はたとえばピロールを含有するイオン性溶液を充填され、そしてロッドは次にクロムおよび金で被覆されたスライドガラスと接触し、このようにして電気化学マイクロ電池を形成する。電位がそれから、2電極間に印加される。金で被覆されたスライドの表面上にこのようにして生成された重合体(ポリピロール)の合成のための電流および電荷が記録される。数個のスポットが、このようにして同じ表面上に製造されることができる。
【0119】
減衰系は、ロッドおよび金細片を損傷しないことを可能にする。金細片は、ロッドの端の「柔らかい」Teflon(商標)の層によっても保護される。
【0120】
空洞の内側を金属、たとえば白金で被覆することは、重合体の電気化学的合成を改善することを可能にすることができる。
【実施例8】
【0121】
堆積物の合成
図13および14に示されたように、316Lステンレス鋼(外科用品質)からつくられたロッド71およびTeflon(商標)からつくられたスリーブ72を含む受取り装置70が、たとえば利用される。
【0122】
Teflon(商標)スリーブ72は、空洞73を画定するようにロッド71の端の下に突き出す。
【0123】
この空洞73は、たとえば約260μmの直径および約100μmの深さを持ち、重合されるべき溶液74を受取ることを可能にする。
【0124】
ステンレス鋼のロッド71は、対向電極の役割をする。
【0125】
図15に示されたように、重合されるべき溶液74は、作用電極の役割をする、金の層で被覆された基体75の上に堆積される。
【0126】
ロッド71および基体75は、ポテンシオスタット76に接続される。
【0127】
堆積物の合成は、電気パルスをロッド71を通して加えることによって、電気スポット作成(electrospotting)法によって実施される。
【0128】
Teflon(商標)スリーブ72は、対向電極を作用電極から絶縁することを可能にし、空洞73は電気化学電池を形成し、その中で電気パルスが溶液の重合を引き起こす。
【0129】
受取り装置70は、当該受取り装置を重合されるべき溶液中に浸漬することによって約50nlの液滴を捕捉し、そして作用電極の上までのその輸送を確保することも可能にする。
【0130】
ロッド71は、その中で自重の作用下に垂直に滑ることができる支持構造(表されていない)の上に置かれる。該動きは、自動化された装置によって制御されるモーター駆動のねじジャッキによって付与される。
【0131】
電気スポット作成の条件(電位、時間)は、ピロールのおよびピロールODNの堆積物を得るように最適化される。重合の間、ポテンシオスタット76によって加えられた電荷は、クロノアンペログラム(電流−時間曲線)の形で記録される。
【0132】
堆積物がつくられた後、標識された相補的なODNを用いて、ODNを含有するスポットを実証するためにハイブリダイゼ−ション(雑種形成)が実施される。検出は、この場合、画像取得のための白黒のCCDカメラを備えた蛍光顕微鏡を使用して実施される。蛍光強度は、灰色のレベルとして表現される。
【実施例9】
【0133】
伝導性表面の酸化還元マップ作成を実施する方法
この実施例は、金属表面、たとえば鋼鉄シートを特性解析し、そしてその酸化状態の2次元のマップ作成を実施するために本発明に従う受取り装置を使用する方法に関する。
【0134】
この場合に使用される受取り装置は、前の実施例に使用されたものと実質的に同じである。
【0135】
その親水性の端、すなわち空洞底面に、銀の層が電気化学反応によって加えられる。
【0136】
銀で被覆された電極と金属シートとの間の残留電位を測定するのに使用される電解液は、たとえば100mMのKClである。受取り装置および電解質は、マップ作成されるべき表面の第1の点に堆積され、そして金属シートと受取り装置との間の電位差の値が記録される。受取り装置は、それからすすぎ洗いされ、乾燥されそして電解液を再び充填され、その後、マップ作成されるべき表面の第2の点への堆積が続く。
【0137】
この方法は、鋼鉄の在りうる酸化点を検出することを可能にする。金属シートの各種の処理が、したがって容易に検討されそして比較されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の装置の端部の特定の実施態様を概略図としておよび部分的に表す図
【図2】本発明の装置の端部の特定の実施態様を概略図としておよび部分的に表す図
【図3】本発明の装置の端部の特定の実施態様を概略図としておよび部分的に表す図
【図4】本発明の装置の端部の特定の実施態様を概略図としておよび部分的に表す図
【図5】本発明の装置の端部の特定の実施態様を概略図としておよび部分的に表す図
【図6】本発明の装置の端部の特定の実施態様を概略図としておよび部分的に表す図
【図7】本発明の装置の端部の特定の実施態様を概略図としておよび部分的に表す図
【図8】減衰器を持つ受取り装置の実施態様を概略図としておよび部分的に表す図
【図9】減衰器を持つ受取り装置の実施態様を概略図としておよび部分的に表す図
【図10】本発明に従う対向電極の支持体を概略図としておよび部分的に表す図
【図11】本発明の実施の2の例に従う指示電極を概略図としておよび部分的に表す図
【図12】本発明の実施の2の例に従う指示電極を概略図としておよび部分的に表す図
【図13】本発明の実施の他の例を示す図
【図14】本発明の実施の他の例を示す図
【図15】本発明の実施の他の例を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学電池内の電極、特に対向電極または作用電極を形成するように構成された流体状サンプルを受取る装置(1、15、20、30、35、60)であって、該装置が、開口を介して外部に開いている少なくとも1の空洞(3、16、23、39、63)を持つ端部を含み、当該空洞が底面を備え、当該端部が当該流体中に浸漬されそして次にそこから出てきたときに当該空洞が当該流体の一部を毛細管作用によって保持するように、空洞開口に隣接した第1の電気絶縁性疎水性帯域(8、17b、25、38、62、67)および該第1帯域に隣接しかつ空洞の底面を少なくとも部分的に覆う第2の電気伝導性親水性帯域(4、5、19、22、37、61、66)を、当該端部が呈していて、該端部が該流体に浸漬されそして次にそれから取出されるときに該空洞は毛管作用により該流体の一部を保持するところの、上記の装置。
【請求項2】
疎水的性質が疎水性コーティングによって付与され、当該疎水性コーティングが特に当該端部に、少なくとも当該開口の周辺に堆積されている、請求項1に記載された装置。
【請求項3】
疎水性帯域が、空洞内に、任意的にその底面まで、底面を完全には覆うことなく拡がっているおよび/または装置の外壁(10)上に拡がっている、請求項2に記載された装置。
【請求項4】
親水性帯域が、金属性または非金属性の電気伝導性材料からつくられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載された装置。
【請求項5】
端部が、電気伝導性材料からつくられているおよび/または電気伝導性材料のコーティングで被覆されている本体を含み、空洞がこの本体によって少なくとも部分的に形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載された装置。
【請求項6】
空洞が以下の特徴
−当該空洞が、0.1ピコリットル〜1μl、および特には1〜50nlの範囲の流体状サンプルの体積を保持するのに十分な容積を持つ、
−当該空洞が、5μm〜200μmの深さを持つ、
−空洞の深さ/開口直径比が、0.01〜1、たとえば0.1〜1の範囲であることができる、
−空洞が、円形または多角形の横断面を持つことができる、および
−空洞が、実質的に円柱状若しくは円錐状の形を持ち、または円錐状底面によって拡げられた円柱状壁を持つことができる、
の少なくとも1を持っている、請求項1〜5のいずれか1項に記載された装置。
【請求項7】
当該装置がロッドを含み、該ロッドが、ロッドの端を超えて伸びる突出部を持つスリーブを端部の側面上に備えている、請求項1〜6のいずれか1項に記載された装置。
【請求項8】
当該スリーブが、疎水性材料からつくられている、請求項7に記載された装置。
【請求項9】
当該スリーブが、伝導性材料からつくられ、かつ突出部の少なくとも端が疎水性材料、好ましくは電気絶縁性材料の層で被覆されている、請求項7に記載された装置。
【請求項10】
当該装置がその端部を介して、固形基体上の堆積帯域と接触したときに当該装置に影響を与えるかもしれない衝撃を低減する減衰要素を含んでいる、請求項1〜9のいずれか1項に記載された装置。
【請求項11】
当該減衰要素がばねである、請求項10に記載された装置。
【請求項12】
当該装置がロッドを含んでいる、請求項1〜11のいずれか1項に記載された装置。
【請求項13】
当該ロッドが、弾性変形をする能力がある材料からつくられている、請求項12に記載された装置。
【請求項14】
当該ロッドが、減衰要素の役割を果たすSの形をした少なくとも1の部分を含んでいる、請求項13に記載された装置。
【請求項15】
当該ロッドが、基体との接触を衝撃減衰するために他の部分内に滑り込む、請求項11に記載された装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載された装置を使用して、流体状サンプルを採取しそして輸送する方法において、該方法が、
a)当該空洞を含む端部を、採取されるべき流体を収納する容器中に浸漬し、そして次にそこからそれを取り出すこと、および
b)当該端部を固形基体と接触させること
からなる段階を含む、上記方法。
【請求項17】
基体上の堆積物として一滴の流体状サンプルを残すように、端部がその後、基体から離される、請求項16に記載された方法。
【請求項18】
当該基体上にマトリックスアレイの形に堆積物を形成するように、同一のまたは異なった複数の流体状サンプルを固形基体上に堆積するために必要な回数で段階a)およびb)が繰り返される、請求項16〜17のいずれか1項に記載された方法。
【請求項19】
流体状サンプルが、基体上に堆積されるべき生物学的分子または物質を含有する、請求項16〜18のいずれか1項に記載された方法。
【請求項20】
当該流体が、電解質および任意的に他の懸濁している化合物を含有する、請求項16〜19のいずれか1項に記載された方法。
【請求項21】
採取された溶液または懸濁物の電気化学タイプの分析が実施される、請求項20に記載された方法。
【請求項22】
サンプルを介した当該端部と当該基体との間の電位の測定が実施される、請求項20に記載された方法。
【請求項23】
装置が伝導性材料からつくられた本体を含み、および当該端部が絶縁性コーティングを備え、および当該基体が伝導性材料からつくられ、そして段階b)の後で、流体状サンプルを介して当該端部と当該基体との間に電流が通される、請求項20に記載された方法。
【請求項24】
当該流体が、酸化によって電解重合可能である単量体を含有し、そして当該本体と基体との間に電流が通されて、当該基体を重合体生成に要求される電位に導く、請求項21に記載された方法。
【請求項25】
電気化学電池を形成する方法において、該方法が以下の段階
−開口を介して外部に開いている少なくとも1の空洞を持つ端部を含む受取り装置であって、該空洞が底面を備えており、この端部が空洞開口に隣接した第1の電気絶縁性疎水性帯域および該第1帯域に隣接しかつ空洞の底面を少なくとも部分的に覆う第2の電気伝導性親水性帯域を呈する、上記の受取り装置を用意すること、
−少なくとも1の伝導性帯域を持つ受取り表面、特に基体を用意すること、
−流体状サンプルを受取り装置によって採取すること、および
−受取り装置の端部を受取り表面の伝導性帯域に接触させ、ここで第1の疎水性帯域が、第2の伝導性親水性帯域を受取り表面の伝導性帯域から電気絶縁するように構成されていること
を含む、上記の方法。
【請求項26】
−開口を介して外部に開いている少なくとも1の空洞を持つ端部を含む受取り装置であって、該空洞が底面を備えており、この端部が空洞開口に隣接した第1の電気絶縁性疎水性帯域および該第1帯域に隣接しかつ空洞の底面を少なくとも部分的に覆う第2の電気伝導性親水性帯域を呈する、上記の受取り装置を用意すること、
−少なくとも1の伝導性帯域を持つ受取り表面、特に基体を用意すること、
−流体状サンプルを受取り装置によって採取すること、
−受取り装置の端部を受取り表面の伝導性帯域に接触させ、ここで第1の疎水性帯域が、第2の伝導性親水性帯域を受取り表面の伝導性帯域から電気絶縁するように構成されていること、および
−受取り装置の親水性帯域と基体の伝導性帯域との間に電流を通すことまたは受取り装置の伝導性帯域と受取り支持体の伝導性帯域との間の電気的パラメータ、たとえば電位差を測定すること
の段階を含む方法。
【請求項27】
−受取り装置の空洞内に収納された物質を重合するために、受取り装置の親水性帯域と基体の伝導性帯域との間に電流、特にパルス状電流を通すこと
の段階を含む、請求項26に記載された方法。
【請求項28】
−受取り装置の伝導性帯域と伝導性表面、たとえば鋼鉄シートとの間の電気的パラメータ、特に電位差を測定すること、および
−得られた測定値を使用して、物理的または化学的特性、たとえば酸化状態に関するマップ作成を伝導性表面について実施するために、前の段階を繰り返すこと
の段階を含む、請求項26に記載された方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−513324(P2007−513324A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538913(P2006−538913)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050587
【国際公開番号】WO2005/049210
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(502142323)コミサリア、ア、レネルジ、アトミク (195)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【出願人】(506159091)
【Fターム(参考)】