説明

流体状スルホポリエステル配合物及びそれから製造された製品

接着剤及びパーソナルケア製品の配合物に有用な、分枝状スルホポリエステル混合物。分枝状スルホポリエステル混合物には、I)分枝状水分散性ポリエステル65〜95重量%;及びII)アルコール5〜35重量%が含まれる。分枝状スルホポリエステル混合物は室温で注入性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
2004年9月16日付で先に出願された、米国特許出願第60/610,497号に対する利益を主張し、その全開示を引用により本明細書に組み入れる。
【0002】
本発明は、25℃より高い温度で実質的に流体状(fluid)の、スルホポリエステル及びアルコールを有する組成物に関する。より詳しくは、本発明は、スルホポリエステル65〜95重量%及びアルコール5〜35重量%を有する配合組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
スルホポリエステルは当業者には周知である。一般に、スルホポリエステルは水散逸性(water−dissipatable)であり、本質的に、次の成分から誘導される:A)少なくとも1種のジカルボン酸;B)少なくとも1種のジオールであって、そのジオールの少なくとも20モル%が化学式H(OCH2CH2nOH(式中、nは2〜約20の整数である)を有するエチレングリコールを含むジオール;及びC)芳香族核に結合した−SO3M基(式中、Mは水素又はアルカリ金属塩、Na+、Li+、K+、Mg++、Ca++、Cu++、Fe++、Fe+++又はこれらの組合せである)を含む少なくとも1種の二官能性ジカルボン酸スルホモノマー。ポリエステルのスルホモノマー成分は、構成成分A〜Cの合計モル数の約8モル%〜約45モル%を構成する。そのような水散逸性ポリエステルは、Shieldsらに発行された特許文献1;Kiblerらに発行された特許文献2及び特許文献3の中に更に詳細に記載されており、それらの開示の全てを引用により本明細書に組み入れる。水散逸性スルホポリエステルは分枝状でも線状でもよい。
【0004】
そのようなスルホポリエステルは、パーソナルケア用途、接着剤配合物、被覆剤及び、好ましくは約80℃より低い温度で、水中に溶解、分散又は、さもなければ散逸させることができる他の製品などの領域で、広範な利用が見出されている。例えば、1973年5月22日にCharles Kiblerに発行された特許文献4には、グリコール成分又は残基、ジカルボン酸成分又は残基及び2官能性モノマー成分を有するスルホポリエステルが開示されている。当業者なら、本明細書及び添付された請求項で用いられる「残基(residue)」又は「成分(component)」なる用語が、特定の反応の枠組み又は、その結果の配合もしくは化学製品における化学種(chemical species)からもたらされる生成物である部分(moiety)を指し、その部分がその化学種から実際に得られるものであるかどうかに拘わらないことを、理解されたい。従って、例えば、ポリエステルのエチレングリコール残基は、ポリエステル中の1つ又はそれ以上の−OCH2CH2O−繰り返し単位を指し、エチレングリコールがそのポリエステルに使用されているか否かに拘わらない。更に特許文献5には、一成分がアニオン性固定用(fixative)ポリマーであるヘアスタイル用組成物が開示されている。好ましい固定用ポリマーは、Eastman Chemical Companyから商品名“AQ1045”、“AQ1350”及び“AQ14000”として上市されているスルホポリエステルである。
【0005】
上記のスルホポリエステルに伴う問題は、そのガラス転移温度Tgが約10℃より低いという、比較的低いことである。Tgより低い温度では、ポリマーは硬くガラス状であるが、Tgより高い温度は、柔軟でゴム状の又は粘着性の材料への転換をもたらす。便利な製品形態、例えばペレット又は錠剤は、通常、Tgが周囲温度よりそれほど低くないときにのみ、実質的に非晶質のポリマーで見受けられる。製品包装の観点から、周囲温度は、通常の室温の25℃から風土的に極端な状態の50℃までとして定義できる。従って、固体のスルホポリエステルを水性配合物に添加するとき、それは先ず、極低温粉砕により、又はポリマーをそのTgより低く冷凍し、次いで物理的な力を用いて小片に破壊することにより、小片に破砕しなければならない。粉砕され又は破砕された小片は、次いで、それらが大きな塊にならないようにするため、Tgより低温に保持しなければならない。接着剤用途に関しては、典型的には、固体のスルホポリエステルは、ブロックやスラブなどの固体の形態で、150℃より高温に加熱されているホットメルト接着剤配合物に添加する。スルホポリエステルはこの温度で十分に軟化するので、その接着剤の他の成分と配合することができる。
【0006】
上記のスルホポリエステルに伴うもう1つの問題は、ある種の用途、例えば化粧品、ヘアスタイル用組成物又はパーソナルケア製品などに関しては、スルホポリエステルが水性分散液に製造されることである。典型的には、そのような配合物は、スルホポリエステル0.5〜15重量%及び相当量の水を含んでいる。時間の経過につれて、スルホポリエステルは加水分解し、スルホポリエステルの濃度が低下する。更にその分散液中に存在する高濃度の水が輸送費用を加算する。
【0007】
【特許文献1】米国特許第3,546,008号明細書
【特許文献2】米国特許第3,779,993号明細書
【特許文献3】米国特許第5,543,488号明細書
【特許文献4】米国特許第3,734,874号明細書
【特許文献5】米国特許第6,346,234号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、室温で、加熱することなく、注ぐことができる水分散性又は水散逸性の分枝状スルホポリエステルに対する需要は存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
簡単にいえば、本発明の流体状スルホポリエステルは:I)分枝状水分散性ポリエステル65〜95重量%;及びII)アルコール5〜35重量%を有する混合物である。
【0010】
本発明の別の側面は、流体状スルホポリエステル0.5〜80重量%を組み込んだ接着剤配合物である。
【0011】
本発明の更に別の側面は、本発明の注入性(pourable)分枝状スルホポリエステルを含む、ヘアスタイル用組成物などのパーソナルケア製品である。
【0012】
本発明のこれら及びその他の目的及び利点は、以下の記載を考慮すれば、当業者にはより明らかになろう。発明の概念は、ここに開示された構成に限定されるものとして斟酌すべきではなく、その代わりに添付された請求項の範囲により斟酌すべきであることはいうまでもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
様々な用途、例えば接着剤組成物及びパーソナルケア製品などに使用できる、注入性水分散性分枝状スルホポリエステル組成物は、以下の成分を混合することにより製造できることが意外にも見出された:
I.以下の反応生成物の残基又は部分から製造された、分枝状水分散性ポリエステル65〜95重量%:
(A)スルホモノマーではない、少なくとも1種の二官能性ジカルボン酸;
(B)芳香環に結合した少なくとも1つのスルホネート基を含む、少なくとも1種の二官能性スルホモノマーであって、その官能基がヒドロキシル、カルボキシル又はアミノであるスルホモノマーの残基を、全ての酸、ヒドロキシル及びアミノ当量の合計に基づいて、2〜30モル%;
(C)以下を含む、少なくとも1種のジオール又はジオールとジアミンの混合物:
(i)化学式 H(−OCH2CH2−)nOH及びHRN[−(CH2CH2O−)]nNHRを有するジオール又はジアミンを、ジオール部分又はジオールとジアミン部分の合計モル%に基づいて、0.1〜85モル%(前記式中、nは2〜20であり、Rは水素又はC1〜C6アルキルであるが、前記部分のモル%はnの値に反比例するものとする);
(ii)化学式 H(−OCH2CH2−)nOHを有するポリエチレングリコール部分を、ジオール部分又はジオールとジアミンの部分の合計モル%に基づいて、0.1〜15モル%(前記式中、nは2〜500であるが、前記部分のモル%はnの値に反比例するものとする);及び
(iii)グリコール及びグリコールと2つの−NRH基を有するジアミンとの混合物で、グリコールが2つの−C(R12OH基を含む混合物よりなる群から選ばれた、ジオール成分又はジオールとジアミノとの混合物を0〜99モル%より多い量(前記式中、反応体中のR1は水素原子、炭素原子1〜5のアルキル又は炭素原子6〜10のアリール基である);
(D)1つの−C(R−)2−OH基を有するヒドロキシカルボン酸、1つの−NRHを有するアミノカルボン酸、1つの−C(R−)2−OH基と1つの−NRH基とを有するアミノアルカノール及び前記二官能性反応体の混合物(ここで前記反応体中のRは水素又は炭素数1〜6のアルキル基である)よりなる群から選ばれた二官能性モノマー反応体を0〜40モル%;並びに
(E)ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ及びそれらの混合物から選ばれる、少なくとも3つの官能基を含む「多官能性」又は「分枝誘導性」反応体を0.1〜40モル%;並びに
II.アルコール5〜35重量%。
【0014】
本発明の成分(I)であるポリエステルは、酸の当量(100モル%)及びジオールの当量又はジオールとジアミンの当量(100モル%)を実質的に等モルの割合で含んでおり、モノマー単位の部分に結合した基の少なくとも20重量%はエステル結合である。その成分(I)であるポリエステルのインヘレント粘度は、フェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量部)溶液中、25℃、溶媒100mL中ポリマー0.5gの濃度で測定して、少なくとも0.1dL/gであり、ガラス転移温度Tgは20℃以下である。
【0015】
或いは、本発明の成分(I)は、以下を含む2種の異なるポリエステルの配合物であることができる。
(A)以下の反応生成物の残基又は部分で製造された、線状水分散性ポリエステル組成物20〜80重量%;
(1)スルホモノマーではない、少なくとも1種の二官能性ジカルボン酸;
(2)芳香環に結合した少なくとも1つのスルホネート基を含む少なくとも1種の二官能性スルホモノマーであって、その官能基がヒドロキシル、カルボキシル又はアミノであるスルホモノマーの残基を、全ての酸、ヒドロキシル及びアミノ当量の合計に基づいて、4〜25モル%;
(3)以下を含む、少なくとも1種のジオール又はジオールとジアミンの混合物:
(i)化学式 H(−OCH2CH2−)nOH及びHRN[−(CH2CH2O−)]nNHRを有するジオール又はジアミンを、ジオール部分又はジオールとジアミンの部分の合計モル%に基づいて、少なくとも15モル%(前記式中、nは2〜20であり、Rは水素又はC1〜C6アルキルであるが、前記部分のモル%はnの値に反比例するものとする);
(ii)化学式 H(−OCH2CH2−)nOHを有するポリエチレングリコール部分を、ジオール部分又はジオールとジアミンの部分の合計モル%に基づいて、0.1〜15モル%(前記式中、nは2〜500であるが、前記部分のモル%はnの値に反比例するものとする);及び
(4)ヒドロキシカルボン酸、アミノカルボン酸及びアミノアルカノールから選ばれる二官能性モノマー反応体の部分0〜40モル%;
ここで、成分(I)は、酸の当量(100モル%)及びジオール又はジオールとジアミンの当量(100モル%)を実質的に等モルの割合で含んでおり、モノマー単位の部分に結合した基の少なくとも20重量%はエステル結合であり、且つ、フェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量部)溶液中、25℃、溶媒100mL中ポリマー0.25gの濃度で測定したそのポリエステルのインヘレント粘度が少なくとも0.1dL/gであり、そして
(B)以下の反応生成物の残基又は部分で製造された分枝状水分散性ポリエステル20〜80重量%;
(1)スルホモノマーではない、少なくとも1種の二官能性ジカルボン酸;
(2)芳香環に結合した少なくとも1つのスルホン酸塩の基を含む少なくとも1種の二官能性スルホモノマーであって、その官能基がヒドロキシル、カルボキシル又はアミノであるスルホモノマーを、全ての酸、ヒドロキシル及びアミノ当量の合計に基づいて、1〜20モル%;
(3)グリコール又はグリコールと2つの−NRH基を有するジアミンの混合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の二官能反応体であって、そのグリコールが2つの−C(R12OH基(式中、反応体中のRは水素原子又は炭素数1〜6のアルキルであり、且つ反応体中のR1は水素原子、炭素数1〜5のアルキル又は炭素原子6〜10のアリール基である)を含み;
(4)1つの−C(R−)2−OH基を有するヒドロキシカルボン酸、1つの−NRHを有するアミノカルボン酸、1つの−C(R−)2−OH基と1つの−NRH基とを有するアミノアルコール又は前記二官能性反応体の混合物(ここで反応体中のRは水素又は炭素数1〜6のアルキル基である)よりなる群から選ばれる二官能性反応体を0〜40モル%;及び
(5)ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ及びそれらの混合物から選ばれる少なくとも3つの官能基を含む「多官能性」又は「分枝誘導性(branch−including)」反応体を0.1〜40モル%;
ここで、記述された全てのモル%は、酸基、ヒドロキシル基及びアミノ基を含む全ての反応体の合計に基づいて、200モル%に等しく、且つそのポリマーは、ヒドロキシル基及びアミノ基含有反応体(100モル%)に対して、酸基含有反応体(酸100モル%)の割合で含んでいる。
【0016】
本発明の成分(I)である分枝状スルホネート含有水分散性ポリエステルは、スルホモノマーではない1種もしくはそれ以上のジカルボン酸及び1種もしくはそれ以上のジオール又は1種もしくはそれ以上のジオールと1種もしくはそれ以上のジアミンとの、交互繰り返しの残基、又は部分を有するポリエステルアミドを含むポリエステルを含み、そのモル%は、ジカルボン酸残基100モル%及びジオール又はジオールとジアミンとの残基100モル%で、合計200モル%に基づくものである。或いは、そのポリエステルは、混合官能性を有するモノマー類、例えばヒドロキシカルボン酸、アミノカルボン酸及び/又はアミノアルカノールなどの残基を含むことができる。
【0017】
使用する適当な二官能性ジカルボン酸モノマーの具体例には、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸又はこれらの酸の2種もしくはそれ以上の混合物が含まれる。好ましい適当な二官能性ジカルボン酸の具体例には、コハク酸;グルタル酸;アジピン酸;アゼライン酸;セバシン酸;フマル酸;マレイン酸;イタコン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸;1,3−シクロヘキサンジカルボン酸;フタル酸;テレフタル酸;及びイソフタル酸が含まれる。ポリエステルのジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用いると、他の酸の1種を少なくとも5モル%使用するときに卓越した結果が達成される。それらの酸の対応する酸無水物、エステル及び酸クロリドの使用が、「ジカルボン酸」なる用語に含まれることはいうまでもない。
【0018】
二官能性スルホモノマー残基又は反応体は、好ましくは金属スルホネートの基を含むジカルボン酸もしくはそのエステル、金属スルホネートの基を含むグリコール、又は金属スルホネートの基を含むヒドロキシ酸であって、−SO3Mは芳香族の核に結合しており、そこでのMは水素、NH4+又はLi+、Na+、K+、Mg++、Ca++、Cu++、Ni++、Fe++及びFe+++のイオン群から選ばれる金属イオンである。
【0019】
金属スルホネートの基−SO3Mが結合することのできる芳香族核には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ジフェニル、オキシジフェニル、スルホニルジフェニル及びメチレンジフェニルが含まれる。
【0020】
反応体中に、必要に応じて存在する非金属スルホネートのカチオン部分は、水中、25℃でのイオン化定数10-3〜10-10、好ましくは10-5〜10-8を有する、脂肪族、脂環式又は芳香族塩基性化合物でありうる、窒素含有塩基から誘導された窒素塩基カチオンであることができる。特に好ましい窒素含有塩基は、入手容易性、コスト及び有用性により、アンモニア、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、モルホリン及びピペリジンである。そのような窒素含有塩基及び、それらから誘導されたカチオンは、米国特許第4,304,901号明細書に記載されており、その開示の全てを引用により本明細書に組み入れる。
【0021】
二官能性スルホモノマー残基又は反応体は、酸当量の合計に基づいて、4〜12モル%、より好ましくは6〜10モル%、最も好ましくは8モル%の濃度で存在することが好ましい。
【0022】
好ましいジオールの具体例には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びそれらの混合物が含まれる。その好ましいジオールの濃度は10〜80モル%であるが、より好ましくは20〜80モル%である。
【0023】
(C)(ii)及び(3)(i)の部分は、特にnが10〜30であるとき、その好ましい高軟化点によって、好ましくは1〜5モル%の濃度である。グリコール成分(C)及び(B)(3)の残りの部位は、脂肪族グリコール、脂環式グリコール及びアリールグリコールを含むことができる。これらのグリコールの具体例には、ネオペンチルグリコール;エチレングリコール;プロピレングリコール;1,3−プロパンジオール;2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール;2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール;2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール;2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール;1,3−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール;チオジエタノール;1,2−シクロヘキサンジメタノール;1,3−シクロヘキサンジメタノール;1,4−シクロヘキサンジメタノール;2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール;p−キシレンジオール及びネオペンチルグリコールが含まれる。2種又はそれ以上の上記のグリコールからコポリマーを製造することができる。好ましいグリコールには、入手容易性、コスト及び有用性により、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及びシクロヘキサンジメタノールが含まれる。
【0024】
ポリエステル中に存在する(C)(iii)部分の量は、所望の低いTgと所望の高軟化点との間の好ましいバランスにより、好ましくは少量から99モル%まで、より好ましくは20〜80モル%、更に好ましくは30〜70モル%である。
【0025】
成分(D)、(A)(4)及び(B)(4)に関しては、有利な二官能性成分には、5−アミノペンタノール−1,4−アミノメチルシクロヘキサンメタノール、5−アミノ−2−エチルペンタノール−1,2−(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)−1−アミノエタン、3−アミノ−2,2−ジメチルプロパノール及びヒドロキシエチルアミンが含まれる。一般に、これらのアミノアルコールには、炭素数2〜20、1つの−NRH基及び1つの−CR2−OH基が含まれる。
【0026】
アミノカルボン酸である有利な二官能性モノマー成分には、芳香族、脂肪族、ヘテロ環式並びに成分(D)、(A)(4)及び(B)(4)に関する他のタイプが含まれ、そしてラクタム類が含まれる。具体例には、6−アミノカプロン酸、カプロラクタムとして知られるそのラクタム、ω−アミノウンデカン酸、3−アミノ−2−ジメチルプロピオン酸、4−(β−アミノエチル)安息香酸、2−(β−アミノプロピル)安息香酸、4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸及び2−(β−アミノプロピル)シクロヘキサンカルボン酸が含まれる。一般に、これらの化合物は炭素原子2〜20を含有する。しかしながら、これらの部分である、成分(D)、(A)(4)及び(B)(4)はあまり好ましいわけではないが、それらは存在することができる。これらの部分の濃度は、好ましくは0〜20モル%、より好ましくは10モル%より少ないのがよい。
【0027】
ポリエステル配合物における成分(A)である好ましい水分散性線状ポリエステルは、イソフタル酸残基75〜90モル%及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸モノマー残基10〜25モル%である二酸モノマー残基;並びに、ジエチレングリコールモノマー残基45〜100モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール0〜55モル%のジオールモノマー残基を含有する。
【0028】
ポリエステル配合物における成分(A)の、より好ましい水分散性線状ポリエステルは、インヘレント粘度0.1〜0.6、好ましくは0.2〜0.5を有し、Tg範囲25℃〜88℃、好ましくは29℃〜55℃を有している。ポリエステル配合物の成分(B)の、関連する分枝状水分散性ポリエステルは米国特許第5,218,042号明細書に記載されており、その開示の全てを引用により本明細書に組み入れる。
【0029】
成分(A)の分散性線状ポリエステル組成物は、成分(B)の分枝状水分散性ポリエステルと、200℃、好ましくは225℃より高い温度で、少なくとも1時間配合する。ポリエステル配合組成物において、2種のポリエステルの相対的な量は、ポリエステル(A)20〜80重量%及びポリエステル(B)20〜80重量%で変動する。
【0030】
ここに記載した水分散性ポリエステルは、フェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量部)溶液中、25℃、溶媒100mL中ポリマー0.25gの濃度で測定したインヘレント粘度が少なくとも0.1dL/g、好ましくは0.2〜0.5dL/gを有している。
【0031】
本発明に従った、本ポリエステル混合物の成分Iの好ましいTgは、10℃より低く、より好ましくは4℃〜−20℃で変わることができ、最も好ましくは、Tgは4℃〜−13℃である。
【0032】
そのような分枝状スルホポリエステルは、前記特許文献3にもっと詳しく記載されており、その開示の全てを引用により本明細書に組み入れる。
【0033】
スルホポリエステル混合物の第二の成分(II)はアルコールである。そのアルコールは炭素数1〜9を有することができ、そして炭素数2〜6を有する1つ又はそれ以上の部分で置換されていてもよい、線状、分枝状、環状及び芳香族のアルコールを含むことができる。望ましくは、そのアルコールは200℃より低い沸点を有するのがよい。好ましくは、アルコールは、炭素数1〜4を有する線状又は分枝状アルコールであり、最も好ましくは、アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びそれらの混合物から選ばれる。
【0034】
前記注入性混合物中に存在するアルコールの量は、5〜35重量%、好ましくは5〜30重量%である。ここで表現される前記成分、部分又は化合物の範囲は、更にそれらの間の全範囲を含んでおり、且つ表現される範囲は記載の簡潔さのためのものであることは、当業者なら理解されるであろう。
【0035】
本発明の、注入性水分散性分枝状スルホポリエステル組成物は、アルコール及びスルホポリエステルの混合物を、加熱して、攪拌することにより又は別様に掻き回すことにより製造することができる。その混合物は、攪拌しながら少なくとも60℃に、それが非常に液体又は均一になるまで加熱する。注入性ポリエステルが製造できる最高温度はアルコールの沸点である。
【0036】
有利には、注入性分枝状スルホポリエステル混合物は、室温、即ち20℃〜50℃、より好ましくは25℃〜45℃の温度で、液体の配合物中に組み入れることができる。このことは、室温で液体である接着剤配合物又は、そこでの基材(substrate)への接着が望まれる、室温で基材に液体として適用する任意のタイプの被覆剤を含んでいる。そのような被覆剤には、毛髪、皮膚又は爪への接着が望まれる、パーソナルケア製品及び化粧品が含まれる。
【0037】
本発明の利点は、注入性分枝状スルホポリエステルが、実質的に水の存在なしに製造できることである。ここで用いる用語「実質的に水の存在なしに」とは、室温で注入性にするため、30重量%より少ない水しかその混合物に加えなくてもよいことを意味する。好ましくは、室温で注入性にするために20重量%より少ない水しかその混合物に加えなくてもよく、より好ましくは、10重量%より少ない水しかその混合物に加えなくてもよく、最も好ましくは、室温で注入性にするために0.5重量%より少ない水しかその混合物に加えなくてもよい。
【0038】
有利には、本発明の分枝状スルホポリエステルの注入性の形体は、不織布集成体(assembly)(ポリプロピレン不織布など)、紙製品(紙及び板紙など)並びに木材パルプを含む多くの基材のための接着剤として適している。本発明に従った接着剤組成物は、溶媒中の液体として、又は水溶液として、0.5〜80重量%濃度(残りは溶媒もしくは水又はそれらの混合物)で適用することができる。望ましくは、本発明の注入性分枝状スルホポリエステルは、接着剤組成物の0.5〜35重量%を構成する。
【0039】
界面活性剤及びその他の添加剤も接着剤組成物の分散性を促進するために存在することができる。溶液として適用するとき、接着剤組成物は、一般に、慣用の方法、例えば押出コーティング、噴霧コーティング、ロールコーティング、刷毛塗り、浸漬コーティングなどによって適用される。
【0040】
本発明に従った接着剤組成物は、Hansenらに2003年11月4日に発行された米国特許第6,642,304号明細書;Georgeらに発行された米国特許第6,162,890号明細書;及びSpadaらに2001年9月25日に発行された米国特許第6,293,037号明細書に記載されているように、ホットメルト接着剤として、又は感圧接着剤として使用することができるが、これらの開示の全てを引用により本明細書に組み入れる。本発明の注入性スルホポリエステルが感圧接着剤として使用する場合において、注入性スルホポリエステルは、当業者には公知である乳化剤として使用することができ、0.5〜15重量%の量で存在することができる。
【0041】
本発明の接着剤組成物は、好ましくは架橋していないのがよく、それはそのことがスルホポリエステルの水分散性を損なうからである。しかしながら、それらは、強度と耐熱性を改善するため、ある程度までジイソシアネートで架橋されていてもよいが、このことはあまり好ましいものではない。
【0042】
本発明に従う接着剤組成物は、更に安定剤を0.1〜0.5重量%含有することができる。適当な安定剤は酸化防止タイプを含んでおり、一般に、立体障害フェノール(sterically hindered phenol)、又は硫黄置換もしくはリン置換フェノールを含む。特に有用な酸化防止剤は、ペンタエリスリトールテトラキス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステルである“Irganox1010”(Ciba−Geigy,Hawthorne,N.Y.製)である。
【0043】
更なる添加剤、例えばUV光吸収剤、成核剤、着色料、顔料、溶媒及び充填剤などが、接着剤分野の当業者には公知であるように、必要とされる少量で存在することができる。
【0044】
粘着付与剤もまたそのポリエステル組成物に添加してもよい。粘着付与剤は、典型的には、炭化水素樹脂、合成ポリテルペン、機能性ポリマー及びロジンエステルよりなる群の少なくとも1つから選択される。炭化水素樹脂は米国特許第3,850,858号明細書に開示され、機能性ポリマー、例えばスチレン−無水マレイン酸コポリマーなどは、この技術分野では周知である。米国特許第3,701,760号明細書に従って製造される炭化水素樹脂、ポリテルペン及びロジンエステルは、単独で又は組合せて使用することができる。これらの粘着付与性樹脂は、好ましくは少なくとも100℃、特に好ましくは120℃の軟化温度を有しているが、接着剤組成物の10重量%〜50重量%、好ましくは25重量%〜40重量%の量で用いることができる。適当な樹脂並びにロジンエステルは、例えば、ダイマーと共に、テルペン炭化水素、例えばアロオシメン、カレン、異性化ピネン、ピネン、ジペンテン、テルピネン、テルピノレン、リモネン、テレビン、テルペン溜分(terpene cut of fraction)及びその他種々のテルペン類を含む、脂環式、単環式及び二環式モノテルペン及びそれらの混合物の重合及び/又は共重合により得られる、より高次のポリマーを含む高分子樹脂用物質などのテルペンポリマーである。購入できるテルペン系の樹脂には、Arizona Chemical製の“Zonarez”テルペンのBシリーズ及び7000シリーズが含まれる。Arizona Chemical製の“Zonatac”樹脂などの、酸価が5より高いロジンエステルもまた含まれる。特に有用な物質は、硫酸化テルペン(sulfate terpene)の混合物を含み、且つピネン、リモネン又はジペンテンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のその他のテルペンを少なくとも20%含むテルペンの混合物である。
【0045】
本発明の注入性スルホポリエステルはまた、前記の注入性分枝状スルホポリエステル混合物0.5〜50重量%、好ましくは0.5〜15重量%を含むヘアスタイル用組成物に用いることができ、そのポリマーは、ケラチン性繊維に適用されて乾燥された後、ガラス転移温度(Tg)が+10℃より低く、次のように定義される剥離プロフィール(detachment profile)を有するスタイル形成性物質を提供する:a)最大剥離力Fmaxが1Nより大、及びb)ガラス転移温度Tgが−15℃より低いとき、ガラス表面と接触して置かれたスタイル形成物質の分離エネルギーEs(m/g)が300μJより小。
【0046】
ここで用いる、Fmaxは、伸び計(extensometer)で測定する、互いに対向して置かれた、2つの硬く、不活性で且つ非吸収性の基材(A)及び(B)の、それぞれ、38mm2の表面を引き剥がすのに必要な最大の引張力を意味する。前記両表面は、その組成物を用いて、53/cμg/mm2の割合で予め被覆されている(ここで“c”はその組成物中の乾燥物濃度(the dry matter concentration)(組成物g当りのg数)、即ち組成物の合計量に対する組成物中の乾燥物の量の比である)。前記両表面は22℃、50%RHで24時間乾燥する。次いで、両表面に3Nの圧縮力を20秒間掛け、最後に20mm/分の速度で30秒間張力を掛ける。
【0047】
本明細書で使用するEs(m/g)は、互いに対向して置かれた、2つの硬く、不活性で且つ非吸収性の基材(C)及び(D)の、それぞれ、38mm2の表面の「分離」を引き起こすために、伸び計によって供給されるエネルギーを示し;それらの基材の一方は研磨ガラスで構成し、他方の基材は上記で定義された基材(A)及び(B)と同じ性質のものである。これらの基材は、前記組成物を用いて、53/cμg/mm2の割合で被覆された表面を有している(ここで“c”は上記定義の通りである)。基材(C)及び(D)の2つの表面には、引き続いて、3Nの圧縮力を20秒間掛け、最後に張力を20mm/分の速度で30秒間掛ける。
【0048】
固体で、硬く、不活性で且つ非吸収性の基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、金属合金からなる群、そしてより好ましくはガラスから選択することができる。
【0049】
本発明に従った組成物は、化粧品では汎用の、その他の成分、特に防腐剤、香料、UVフィルター及び活性ヘアケア剤を含むことができる。当業者なら、本発明に従った組成物における構成成分及びその量を、そのスタイル特性に悪影響を及ぼさないように如何に選ぶかを承知していることはいうまでもない。
【0050】
本発明に従った組成物は、その髪への適用に適した先行技術から公知の任意の形態、特に揮発性組成物、ムース、ゲル又はローションの形態で提供することができる。
【0051】
適当な、化粧料として許容できるビヒクルは、選択された適用法に合わせられる。ビヒクルは、好ましくは添加剤、例えばゲル化剤、起泡剤及びシリコーンなどをそれに加えることができる適当な溶媒を含む。
【0052】
当業者なら、本発明に従った組成物における、ビヒクルの構成成分などの付加的な構成成分及びその量を、そのスタイル特性に悪影響を及ぼさないように、如何に選ぶかを承知していることはいうまでもない。特に当業者は、スタイル形成性物質のTgが+10℃より低く、前記のような剥離プロフィールが重んじられることを保証する。
【0053】
1つの態様に従えば、本発明組成物は、ポンプによるか又は、この技術分野では周知である加圧エアゾール組成物であるかのいずれかで蒸発性(vaporizable)である。望ましくは、本発明に従う蒸発性組成物は、本発明に従った少なくとも1種の固定用ポリマー及び、水、炭素数1〜4のアルコール又は水性アルコール混合物から選ばれる適当な溶媒を含む溶液又は分散液である。
【実施例】
【0054】
本発明は、提供された以下の具体的な実施例によりもっと詳細に詳説される。これらの実施例は、例証となる態様であって、本発明を限定しようとするものではなく、むしろ添付した請求項の範囲及び内容の中で広く解釈されるべきであるということはいうまでもない。以下の例中の全ての部及び%は、別段の記述がない限り、重量基準である。
【0055】
例1〜3(実施例)
分枝状スルホポリエステル(前記特許文献3で教示されているように、Eastman Chemical Companyから商品名“AQ1045”、“AQ1350”及び“AQ1950”として入手できる)は、冷凍し、約1in(2.54cm)より小さい平均粒径を有する小片に破砕して、使用までドライアイス上で冷却保持した。本発明に従った注入性分枝状スルホポリエステルは、指定された分枝状スルホポリエステル200.0g及び無水エタノール56.4gを、櫂型攪拌機及び冷却管を装着した500mL混合容器に添加することにより製造した。
【0056】
前記成分は、攪拌しながら下表Iに指定された温度に加熱した。指定された合計時間の後、それぞれのスルホポリエステルはエタノール中に分散し、均一な液体を形成した。これらの混合物は、半透明で、室温で2週間後にも均一のままであった。この混合物に添加した成分の重量に基づいて、これらの混合物はスルホポリエステル固形分を78重量%含んでいる。
【0057】
前記注入性スルホポリエステル混合物の粘度は、25℃、45℃及び60℃で、且つ剪断速度範囲1.0〜400rad/秒で測定した。剪断速度の範囲についての粘度範囲は表Iに示す。混合物は少し剪断粘度低下性(shear-thinning)がある。それぞれの粘度範囲についての低めの粘度は、試験した最大の剪断速度で得られた。1000Pより低い粘度を有する試料は容易に注入性であるが、一方、2000Pより高い粘度を有する試料は、注入性はあるがゆっくりとした注入性である。
【0058】
【表1】

【0059】
例4及び5(実施例)
分枝状スルホポリエステル“AQ1350”を冷凍し、約1in(2.54cm)より小さい平均粒径を有する小片に破砕して、使用までドライアイス上で冷却保持した。本発明に従った注入性分枝状スルホポリエステルは、“AQ1350”200.0g及び、エタノール80.0g(実施例4)又は133.3g(実施例5)を、櫂型攪拌機及び冷却管を装着した500mL混合容器に添加することにより製造した。
【0060】
前記成分をそれぞれ、攪拌しながら75℃に加熱した。合計混合時間30分後、両実施例4及び5の“AQ1350”はエタノール中に分散し、均一な透明液体を形成した。その混合物に添加された成分の重量に基づいて、これらの混合物は固形分71重量%(実施例4)及び固形分60重量%(実施例5)を含んでいる。
【0061】
その試料は一夜放置された。エタノールの層が均一な混合物の上に浮いているのが観察された。実施例4のエタノール上層は、実施例5のそれより少なかった。実施例4の試料は、その粘度を測定する前に直ちに攪拌された。その結果を下表IIに示す。実施例5のエタノール上層はデカントされた。その上層が除かれた実施例5の固形分%が測定され、78.5重量%であった。これは試料を、減圧炉を用い100℃の温度で一夜加熱することによって、揮発成分を除去する前及び後に、その試料を重量測定により計量することにより測定した。
例6(実施例)
上記実施例4の手順に従い、分枝状スルホポリエステル“AQ1350”200.0g及び、メタノール56.4gが、櫂型攪拌機及び冷却管を装着した500mL容器に充填された。
【0062】
前記成分は攪拌しながら66℃に加熱した。合計混合時間1時間後、“AQ1350”はメタノール中に分散し、均一な透明混合物を形成した。この注入性の混合物は、1週間後も均一なままであった。この混合物に添加した成分の重量に基づいて、混合物はスルホポリエステル固形分78重量%を含んでいた。剪断速度範囲1.0〜400rad/秒にわたる混合物の粘度は表IIに示するが、エタノール56.4g中の“AQ1350”(実施例2)と比較した。実施例6の粘度は、この温度におけるメタノールの揮発が不正確な結果の原因となるので、60℃では測定しなかった。
【0063】
例7(実施例)
上記実施例4の手順に従い、分枝状スルホポリエステル“AQ1350”200.0g及びイソプロパノール80.0gを、櫂型攪拌機及び冷却管を装着した500mL容器に充填した。
【0064】
前記成分は攪拌しながら76℃に加熱した。合計混合時間30分後、“AQ1350”はイソプロパノール中に分散し、均一で不透明な混合物を形成した。この混合物に添加した成分の重量に基づいて、注入性混合物はスルホポリエステル固形分71重量%を含んでいた。数日放置後、少量の液体がイソプロパノール−スルホポリエステル混合物の上に浮いていた。この液体は測定して約3gであった。攪拌の直後、剪断速度範囲1.0〜400rad/秒にわたって混合物の粘度を測定した。剪断速度の範囲に対する粘度の範囲は表IIに示す。混合物は少し剪断粘度低下性があり、それぞれの範囲についての低めの粘度は、試験した最大の剪断速度で得られた。結果は実施例4と比較した。
【0065】
【表2】

【0066】
表IIに示された粘度の結果に基づけば、メタノール及びエタノールが分枝状スルホポリエステルの注入性の形態を製造するために好ましいアルコールである。
【0067】
例8(比較例)
米国特許第6,162,890号明細書及び第5,709,940号明細書で教示された線状スルホポリエステル(Eastman Chemical Companyから商品名“AQ2350”として入手できる)を冷凍し、次いで、約1in(2.54cm)より小さい平均粒径を有する小片に破砕して、使用までドライアイス上で冷却保持した。この線状スルホポリエステル200.0g及び無水エタノール80.0gを、櫂型攪拌機及び冷却管を装着した500mL混合容器に充填した。
【0068】
前記成分は攪拌しながら68℃に加熱した。1時間後“AQ2350”がエタノール中に分散しなかったので、温度を78℃まで高めた。合計混合時間3時間後、液体相及び分離した固体相がその容器中にまだ存在していたが、この固体相は幾らか軟化していた。室温に冷却した後、混合物は、2層、液体相と固体不透明層とを有していた。固体層は室温で注入性ではなかった。
【0069】
例9(比較例)
比較例8の線状スルホポリエステル200.0gを、櫂型攪拌機及び冷却管を装着した500mL混合容器に充填した。この容器に、水10g及びエタノール90.0gを添加した。
【0070】
前記成分は攪拌しながら78℃に加熱した。攪拌時間30分後、“AQ2350”がその液体に分散しないことが明らかになった。“AQ2350”が分散するまでの時間にわたり、追加の水130.0g及びエタノール50.0gを徐々に添加した。合計混合時間は2時間であった。この混合物に添加した成分の重量に基づいて、最終的な混合物は固形分42重量%を含んでいた。室温に冷却した後、粘稠な混合物は濁りを帯びていた。4週間放置後、この混合物は、分散液からの固形物のわずかな分離を示した。
【0071】
例10(比較例)
ペレット化線状スルホポリエステル(米国特許第6,007,794号明細書に教示され、且つEastman Chemical Companyから商品名“AQ48”として入手できる)200.0g及び無水エタノール133.3gを、櫂型攪拌機及び冷却管を装着した500mL混合容器に充填した。
【0072】
前記成分は攪拌しながら75℃に加熱した。攪拌時間45分後、“AQ 48”ペレットが容器の周りに固まり、“AQ48”がその液体に分散しないことが明らかになった。追加のエタノールを添加し、次いで水を、“AQ48”が分散するまで徐々に添加した。合計混合時間は2.9時間であった。最終的な混合物中の水の量は250gであった。最終的な混合物中のエタノールの量は200gであった。この混合物に添加した成分の重量に基づいて、最終的な混合物は固形分31重量%を含んでいた。室温に冷却した後、混合物は濁りを帯びていた。5週間放置後、その分散液からの固形物のわずかな沈殿の証拠があった。
【0073】
比較例11
上記実施例4の手順に従い、分枝状スルホポリエステル“AQ1350”200.0g、無水エタノール80.0g及び水120gを、櫂型攪拌機及び冷却管を装着した500mL容器に充填した。
【0074】
前記成分は攪拌しながら60℃に加熱した。合計混合時間1時間後、“AQ1350”はエタノール−水配合物中に溶解し、透明な均一の混合物を形成した。7週間放置後も、混合物は透明のままであった。混合物に添加した成分の重量に基づいて、最終的な混合物は固形分50重量%、エタノール20重量%及び水30重量%を含んでいた。
【0075】
前記スルホポリエステル溶液の粘度は、25℃、45℃及び60℃で、且つ剪断速度範囲1.0〜400rad/秒で測定した。1.0rad/秒での粘度を下表IIIに示す。実施例2の粘度を比較のために示した。
【0076】
【表3】

【0077】
表IIIにおけるデータは、比較例11の試料が、室温、1.0rad/秒において、実施例2の試料より高い粘度を有していることを示している。低めの粘度が注入性を改善するために望ましい。比較例11の粘度は、45℃及び60℃のより高い温度ではより低いが、実施例2の組成物は、それがより高い固形分を有し、且つ本発明のその注入性の混合物中には、水を極めて少ししか含んでいないか又は全く含んでいないので、スルホポリエステルの加水分解が心配ないため好ましい。
【0078】
例12(実施例)
この実施例の目的は、実施例4のスルホポリエステル−エタノール混合物は、水で希釈でき、比較例11の試料の外観に近似した、均一で透明な混合物が得られることを示すことである。
【0079】
室温で、実施例4の試料13.44gを小瓶に計量した。水6.04gを加え、最終的な“AQ1350”スルホポリエステルの濃度50重量%、エタノール20重量%及び水30重量%を達成した。この試料はスパーテルで混合した。気泡を消失させるため一夜放置後、試料は比較例11の試料と同様の外観及び粘度を有していた。4週間後、分離も沈殿も存在しなかった。
【0080】
例13(比較例)
分枝状スルホポリエステル“AQ1350”を冷凍し、次いで約1in(2.54cm)より小さい平均粒径を有する小片に破砕して、使用までドライアイス上で冷却保持した。“AQ1350”200.0g及び水100.0gが、櫂型攪拌機及び冷却管を装着した500mL混合容器に充填した。
【0081】
前記成分は攪拌しながら75℃に加熱した。45分後、“AQ1350”は完全に溶解したように見えたが、混合物は極めて粘稠であった。追加の水を徐々に添加し、温度を85℃まで高めた。合計混合時間3時間後、混合物は、熱いまま、即ち85℃に近い温度で混合容器から注ぎ出した。容器から取り出されている間に、混合物は幾らか冷やされて、容器から取り出すのを困難にするほど極めて粘稠になった。最終的な混合物の水の合計量は156.9gであった。試料は均一で且つ半透明に見えた。粘度は、25℃、45℃、60℃及び85℃で、且つ剪断速度範囲1.0〜400rad/秒で測定した。剪断速度の範囲についての粘度の範囲を表IVに示す。この混合物は非常に剪断粘度低下性があり;即ち、それぞれの温度についての低めの粘度は、試験された最大の剪断速度、400rad/秒で得られた。
【0082】
【表4】

【0083】
この試料は、アルコール中の分枝状スルホポリエステル分散液が、水中の分散液に比較して本当に独特のものであることを示している。アルコール中では遥かに高い固形分の含有が達成でき、室温又はその近傍で注入性の製品を提供する。
【0084】
本発明を詳細に記載してきたが、当業者なら、ここに開示され記載された本発明の範囲及び精神から離れることなく、本発明の様々な側面に対して修正がなされうることを理解されたい。従って、本発明の範囲が、詳説され記載された具体的な態様に限定されるということは意図しておらず、本発明の範囲は添付された請求項及びその均等物により限定されることが意図される。更に、ここに提供された全ての特許、特許出願、刊行物及び引用文献は、その全てが、本発明の実施に適切ないずれの開示についても、引用によってここに組み入れるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
I.分枝状水分散性ポリエステル65〜95重量%;及び
II.アルコール5〜35重量%
を含んでなり、温度20℃〜50℃で注入性である、分枝状スルホポリエステル混合物。
【請求項2】
前記成分Iが:
(A)スルホモノマーではない、少なくとも1種の二官能性ジカルボン酸;
(B)芳香環に結合した少なくとも1つのスルホネート基を含む少なくとも1種の二官能性スルホモノマーであって、その官能基がヒドロキシル、カルボキシル又はアミノであるスルホモノマーの残基を、全ての酸、ヒドロキシル及びアミノ当量の合計に基づいて、2〜30モル%;
(C)(i)化学式 H(−OCH2CH2−)nOH及びHRN[−(CH2CH2O−)]nNHRを有するジオール又はジアミンを、ジオール部分又はジオールとジアミン部分の合計モル%に基づいて、0.1〜85モル%(前記式中、nは2〜20であり、Rは水素又はC1〜C6アルキルであるが、前記部分のモル%はnの値に反比例するものとする);
(ii)化学式 H(−OCH2CH2−)nOHを有するポリエチレングリコール部分を、ジオール部分又はジオールとジアミンの部分の合計モル%に基づいて、0.1〜15モル%(前記式中、nは2〜500であるが、前記部分のモル%はnの値に反比例するものとする);及び
(iii)グリコール及びグリコールと2つの−NRH基を有するジアミンとの混合物で、グリコールが2つの−C(R12OH基を含む混合物よりなる群から選ばれた、ジオール成分又はジオールとジアミノとの混合物を0〜99モル%より多い量(前記式中、反応体中のR1は水素原子、炭素原子1〜5のアルキル又は炭素原子6〜10のアリール基である);
を含む、少なくとも1種のジオール又はジオールとジアミンとの混合物;
(D)1つの−C(R−)2−OH基を有するヒドロキシカルボン酸、1つの−NRHを有するアミノカルボン酸、1つの−C(R−)2−OH基と1つの−NRH基とを有するアミノアルカノール及び前記二官能性反応体の混合物(ここで前記反応体中のRは水素又は炭素数1〜6のアルキル基である)よりなる群から選ばれた二官能性モノマー反応体を0〜40モル%;並びに
(E)ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ及びそれらの混合物から選ばれる、少なくとも3つの官能基を含む「多官能性」又は「分枝誘導性」反応体を0.1〜40モル%;
の反応生成物の残基又は部分を含む注入性スルホポリエステルであって、
前記成分(I)が酸当量100モル%及び、ジオール又はジオールとジアミンの当量100モル%を含み、モノマー単位の部分に結合する基の少なくとも20重量%がエステル結合であり、且つ、フェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量部)溶液中、25℃、溶媒100mL中ポリマー0.5gの濃度で測定したポリエステルのインヘレント粘度が、少なくとも0.1dL/gで、ガラス転移温度Tgが20℃以下である請求項1に記載の注入性スルホポリエステル混合物。
【請求項3】
前記成分IIが炭素数1〜9のアルコールである請求項1に記載の注入性スルホポリエステル混合物。
【請求項4】
前記アルコールが線状、分枝状、環状及び芳香族アルコールよりなる群から選ばれる請求項3に記載の注入性スルホポリエステル混合物。
【請求項5】
前記アルコールが炭素数2〜6の1つ又はそれ以上の部分で置換されたものである請求項4に記載の注入性スルホポリエステル混合物。
【請求項6】
前記成分IIがメタノール、エタノール及びイソプロパノールよりなる群から選ばれる請求項1に記載の注入性スルホポリエステル混合物。
【請求項7】
前記成分I(A)がジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートである請求項1に記載の注入性スルホポリエステル混合物。
【請求項8】
請求項1の注入性分枝状スルホポリエステルを0.5〜80重量%含む接着剤組成物。
【請求項9】
前記注入性分枝状スルホポリエステルが0.5〜35重量%の量で存在する請求項8に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
前記注入性分枝状スルホポリエステルの成分IIが炭素数1〜9のアルコールである請求項8に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
前記アルコールが線状、分枝状、環状及び芳香族アルコールよりなる群から選ばれる請求項10に記載の接着剤組成物。
【請求項12】
前記アルコールがメタノール、エタノール及びイソプロパノールよりなる群から選ばれる請求項10に記載の接着剤組成物。
【請求項13】
可塑剤、粘着付与剤、樹脂、エラストマー、低分子量ポリオレフィン及びそれらの混合物よりなる群から選ばれる付加的成分を更に含む請求項8に記載の接着剤組成物。
【請求項14】
請求項1の注入性分枝状スルホポリエステルを0.5〜50重量%含むパーソナルケア製品。
【請求項15】
分枝状スルホポリエステルの量が0.5〜15重量%である請求項14に記載のパーソナルケア製品。
【請求項16】
前記注入性分枝状スルホポリエステルの成分IIが炭素数1〜9のアルコールである請求項14に記載のパーソナルケア製品。
【請求項17】
前記アルコールが線状、分枝状、環状及び芳香族アルコールよりなる群から選ばれる請求項14に記載のパーソナルケア製品。
【請求項18】
前記アルコールがメタノール、エタノール及びイソプロパノールよりなる群から選ばれる請求項14に記載のパーソナルケア製品。
【請求項19】
防腐剤、香料、UVフィルター及び活性ヘアケア剤を更に含む請求項14に記載のパーソナルケア製品。
【請求項20】
ヘア固定剤を含む請求項13に記載のパーソナルケア製品。

【公表番号】特表2008−513581(P2008−513581A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532519(P2007−532519)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/033243
【国際公開番号】WO2006/034070
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】