流体用ヒータ及び流体加熱装置
【課題】部品点数の減少、コスト低減を図ることができるとともに、コンパクトで耐圧性の高いケーシング構造及び信頼性の高いシール構造を有する流体用ヒータを提供する。
【解決手段】ケーシング1にフッ素樹脂被覆されたカートリッジヒータHが貫通装備されて成る流体用ヒータにおいて、ケーシング1が、カートリッジヒータHを内装するフッ素樹脂製のケース本体4と、これの両端部の夫々にシール部Sを伴って装着されるフッ素樹脂製の蓋本体5と、この蓋本体5に形成された流体出し入れ用の流体給排部31と、ケース本体4の両端に外嵌されて蓋本体5に螺合されるフッ素樹脂製のユニオンナット6とを備え、ユニオンナット6の蓋本体5への締付けにより、ケース本体4と蓋本体5との間に形成されるシール部Sを密着させるとともに、一対の蓋本体5のうちの少なくとも一方には、カートリッジヒータHの導出部34を形成する。
【解決手段】ケーシング1にフッ素樹脂被覆されたカートリッジヒータHが貫通装備されて成る流体用ヒータにおいて、ケーシング1が、カートリッジヒータHを内装するフッ素樹脂製のケース本体4と、これの両端部の夫々にシール部Sを伴って装着されるフッ素樹脂製の蓋本体5と、この蓋本体5に形成された流体出し入れ用の流体給排部31と、ケース本体4の両端に外嵌されて蓋本体5に螺合されるフッ素樹脂製のユニオンナット6とを備え、ユニオンナット6の蓋本体5への締付けにより、ケース本体4と蓋本体5との間に形成されるシール部Sを密着させるとともに、一対の蓋本体5のうちの少なくとも一方には、カートリッジヒータHの導出部34を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超純水等の高純度液や各種薬液等の流体用ヒータ及び流体加熱装置に係り、詳しくは、半導体製造装置や液晶装置、化学薬品製造装置、食品生産ライン等で扱われる流体の配管等に好適に用いられる流体用ヒータ、並びにその流体用ヒータの複数を組合せて成る流体を加熱する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の流体用ヒータは、ケーシングを貫通してそのケーシング内部に通されたヒータにより、ケーシングの内部を通る流体を加熱自在に構成されて成るものがある。例えば、外面が金属溶出の少ない特殊なステンレス鋼等の金属材で覆われた金属製棒状ヒータを、クリーンな合成樹脂材で成る両端が閉塞された円筒状のケーシングに貫通装備することによって構成され、ケーシングの両端部に振分けて設けられた流体入口及び流体出口を用いてケーシング内に流体を流すことにより、ケーシング内を通る、或いは貯留される流体を棒状ヒータによって加熱することができる。
【0003】
上述のような流体用ヒータを構成するためのケーシングには、流体の漏洩についての厳しい要求がある。つまり、内部を通る流体の入口と出口からの漏洩防止に加えて、ケーシングにおける棒状ヒータの貫通箇所も漏洩防止の対象となるからであり、漏洩防止対策を施す箇所が多いからである。従って、棒状ヒータが貫通装備される流体用ヒータにおいては、液漏れの無いケーシングを生産性の良い状態で形成することが課題であり、そのケーシングの構成に関しては、特許文献1において開示されたものを踏襲することが考えられる。
【0004】
特許文献1には、円筒状のケーシング内に熱交換チューブを貫通させて成る熱交換器が示されている。その構造を説明すると、図21、図22に示すように、熱交換チューブ80が通されるケーシング81を、ある程度の内圧に耐えられるよう充分なシール性が確保されるために、ケーシング81の本体を構成するシェル82の外周に複数本のタイロッドや通しボルト等の金属製締結部材83をその長手方向に沿うよう互いに平行に配する。そして、金属製締結部材83の両端部をシェル82の両端部に配される蓋部材84に挿通して、蓋部材84から突出する金属製締結部材83の両端の雄ねじ部にナット85を締め込むことにより、シェル82の両端部と蓋部材84との突き合せ面間が密着状にシールされ、これによりケーシング81が密封状に構成される。また、シェル82の両端部と蓋部材84との突き合せ面間には、シール部材であるOリング86が介在されている。
【0005】
しかるに、シェル82の両端部と蓋部材84とを複数本のタイロッドや通しボルト等の金属製締結部材83とナット85との締め込みによってシールする上記の構造では、シールするための部品点数が多く、コストアップ、ケーシング構造の大型化を招くばかりか、金属製締結部材83は、硫酸雰囲気などに晒される場所に配置された場合、腐食しやすく、また金属汚染が避けられないため、近年、とくに半導体業界では使用制限の要求が高い。
【0006】
また、金属製締結部材83の締付けの緩みに対して、金属製締結部材83を定期的に増締めする必要があるが、通常金属製締結部材83は複数本、少なくとも4本以上であるため、各金属製締結部材83の増締め度合いにばらつきが生じ易く、このばらつきにより蓋部材84やシェル82の変形を招くおそれがあった。蓋部材84やシェル82の変形が生じると、シェル82の端部と蓋部材84との間にねじれや歪みが生じるため、局部的な応力集中が生じてクリープの進行を助長する問題がある。また、金属製締結部材83の金属製タイロッドと金属製タイロッドシースとの中心軸が一致せず、両者が擦れ合って摺動抵抗が増大し、かつ、金属粉を含む摩耗粉の発生原因となるという問題もあった。さらに、シェル82や蓋部材84の変形が生じた場合、これらの部材交換が必要となるが、これらの部材は通常切削品であり、比較的高価でもあるため、ケーシング構造の交換を行って内部デバイス(熱交換チューブ80)を継続利用するという再利用が難しい構造でもあった。
【0007】
シェル82の両端部と蓋部材84との突き合せ面間にシール部材としてOリング86を介在させる接続構造を流体用ヒータに適用した場合には、Oリング86を使用するため、耐蝕性や使用温度範囲に制限がある。例えば、Oリング86に接する空間には、高温の薬液を連通させることができない。また、Oリング86の発塵による汚染が問題となることもある。したがって、近年、半導体業界ではこのようなOリング86の使用制限の要求が高い。
【0008】
また、この種の流体用ヒータが、薬液の加熱等に使用された場合、そのシェル82や蓋部材84等の構成部材には耐腐食性に優れるPTFEやPFA等のフッ素樹脂が使用されることが多いが、フッ素樹脂は、潤滑性が高いため、シェル82と蓋部材84との間の接続部が配管の震動や熱の影響でクリープし、これによりタイロッドや通しボルト等金属製締結部材83の緩みが発生し、シェル82の両端の接続部から流体漏れが発生する問題があった。
【0009】
シェル82と蓋部材84との間のケーシング接続構造としては、その他に、ネジシールや溶接が採用されることがあるが、あまり効果的ではない。すなわち、単なるネジによる接続シール構造では、高いシール性を得ることができず、耐圧性が十分でなく、かつ、クリープによる漏れが生じ易い。また溶接は、一般的に熟練技術を必要とし、容易な作業ではないため、生産効率が低いとともに、現場作業性が悪く、現場での保守・点検が困難であるという問題がある。さらに溶接は、仕様変更によるヒータ交換等の内部部品の交換が実質的にできなくなるとか、リサイクルやリユースに適さないといった側面もある。
【特許文献1】特開平10−160362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような諸問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、タイロッドや通しボルト等の金属製締結部材、及びOリングを用いることなく、部品点数の減少、コスト低減を図ることができるとともに、コンパクトで耐圧性の高いケーシング構造及び信頼性の高いシール構造を有する流体用ヒータを提供することにある。また、本発明の他の目的は、流体用ヒータを複数用いることにより、大流量の流体等を配管経路中において昇温又は加熱し得る流体加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、流体用ヒータにおいて、チューブ材から成るケース本体4、及びこのケース本体4の両端部の夫々を塞ぐべくそれら端部毎に着脱自在に取付けられる蓋部fから成るケーシング1と、少なくとも一方の前記蓋部fを貫通して前記ケース本体4の内部に通されるヒータHとを有するとともに、前記ケース本体4の内部空間に対する流体給排部30,31が前記蓋部fに少なくとも計2箇所形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の流体用ヒータにおいて、前記チューブ材が可撓性を有した合成樹脂製であり、
前記蓋部fは、前記ケース本体4の端部を受け入れる受口部8及びこの受口部8内に設けられた少なくとも一箇所のシール面10を有する蓋本体5と、前記ケース本体4の端部に外嵌された状態で前記蓋本体5の受口部側端部に外嵌螺合自在なユニオンナット6と、前記ユニオンナット6の前記蓋本体5への螺進による締付けにより前記ケース本体4をこれの外側から押圧し、この押圧作用によって前記ケース本体4の端部と前記蓋本体5のシール面10とが密着することで形成される少なくとも一箇所のシール部Sと、から構成され、
少なくとも一方の前記蓋部fの蓋本体5には前記ヒータHを貫通する導出部34が形成されるとともに、前記流体給排部30,31は、前記ケーシング1の内部における前記ヒータHの外部となる流路部分2を通る流体を出し入れするためのものとして前記蓋本体5に形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の流体用ヒータにおいて、前記ヒータHにおける発熱部40が、前記流路部分2を形成する前記ケーシング1の内部にのみ配されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に記載の流体用ヒータにおいて、前記シール部Sが、前記蓋本体5の軸線方向の外方に向けて漸次拡径するテーパ面を前記受口部8の入口より内奥に形成することで成るシール面10と、前記ケース本体4の端部にこれを断面山形状に拡径膨出させるように圧入されたインナーリング15における前記ケース本体4の端部から突出した突出部17の先端に形成したテーパ面からなる突出端面22との密着により形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項2〜4の何れか一項に記載の流体用ヒータにおいて、前記シール部Sが、前記蓋本体5の受口部8の入口に、前記蓋本体5の軸線に対して交差するテーパ面により構成されたシール面11と、前記ケース本体4の端部にこれを断面山形状に拡径膨出させるように圧入されたインナーリング15の圧入部の斜面部に形成された内向きテーパ面20との間に前記ケース本体4の端部を傾斜状態で挟持自在に構成することによって形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項4又は5に記載の流体用ヒータにおいて、前記シール部Sが、前記蓋本体5の受口部8の内奥の前記シール面10よりも径方向外方に前記蓋本体5の軸線と平行に形成された環状溝部13に、前記ケース本体4の端部に圧入されたインナーリング15の突出部の先端に形成された円筒部24を嵌入自在に構成することによって形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の流体用ヒータにおいて、前記ケース本体4の一端部に取付けられる蓋部fと、他端部に取付けられる蓋部fとが互いに同一であることを特徴とするものである。
【0018】
請求項8に係る発明は、請求項1〜7の何れか一項に記載の流体用ヒータにおいて、前記ケース本体4及び前記蓋部fがフッ素樹脂によって形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項9に係る発明は、請求項1〜8の何れか一項に記載の流体用ヒータにおいて、前記ヒータHは、フッ素樹脂材によって被覆されたカートリッジヒータ39であることを特徴とするものである。
【0020】
請求項10に係る発明は、請求項1〜8の何れか一項に記載の流体用ヒータにおいて、前記ヒータHは、フッ素樹脂材によって被覆されたランプヒータ53であることを特徴とするものである。
【0021】
請求項11に係る発明は、請求項1〜8の何れか一項に記載の流体用ヒータにおいて、前記ヒータHは、フッ素樹脂材によって被覆されたヒータ線40を螺旋状に巻回して成るコイルヒータであることを特徴とする。
【0022】
請求項12に係る発明は、流体加熱装置において、請求項1〜11の何れか一項に記載の流体用ヒータAの複数を組合せて、それらいずれの流体用ヒータAにおいても流体が前記ケーシング1内部を通過自在となるように、各々の前記流体給排部30,31を連通接続して成ることを特徴とするものである。
【0023】
請求項13に係る発明は、請求項12に記載の流体加熱装置において、前記蓋部fを、これに前記ケース本体4の複数が着脱自在に取付けられるものに構成することにより、前記流体用ヒータAの複数を、それらいずれのケーシング1内部にも流体が通過自在となるように組合せて成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明によれば、ヒータが通されるケーシングが、チューブ材とその両端夫々に装備される着脱自在な蓋部から構成されるので、従来のようにタイロッドや通しボルト等の金属製締結部材及びOリングを用いることなく、部品点数を少なくして、安価で、かつ、コンパクトで耐圧性の高いケーシング構造、並びに信頼性の高いシール構造の流体用ヒータを得ることができる。そして、両端の夫々に蓋部を着脱自在に装備され、流体が流れる又は貯留する部分であるケース本体はチューブ材で構成されているから、チューブ材の長さを変更するだけの簡単な手段により、容量変更に容易に対応することが可能になる。例えば、400ccの容量を有するケーシングを600cc用に変更するには、長さが約2分の3倍のケース本体に付換えるだけで良く、容量変化や加熱温度変化に柔軟に対応できる便利な流体用ヒータを提供することができる。なお、ヒータとしては、請求項9のように、フッ素樹脂材によって被覆された棒状ヒータやスパイラル状ヒータ等の長尺状ヒータ、請求項10のように、フッ素樹脂材によって被覆されたランプヒータ、或いは石英管ヒータを用いることができる。
【0025】
請求項2の発明によれば、ユニオンナットを蓋本体の一端部に締め付けるだけの簡単な操作でケース本体の端部と蓋本体のシール面とを密着させるシール部を介して確実に密封することができる。従って、従来のようにタイロッドや通しボルト等の金属製締結部材及びOリングを用いることなく、部品点数を少なくして、安価で、かつ、コンパクトで耐圧性の高いケーシング構造及び信頼性の高いシール構造の流体用ヒータを得ることができる。
【0026】
流体用ヒータは、従来のケーシング接続構造のようにタイロッドや通しボルトを使用しない耐圧シール構造で、かつ、スリムなケーシング構造にすることができ、また単一のユニオンナットによる増締めによりシール性を均一に確保することが可能である。すなわち、ケース本体の両端部の蓋本体との接続部を単一のユニオンナットでシールするだけで、タイロッドや通しボルトに比べて信頼性の高いシール構造が得られ、しかもスリムなケーシングでもって流体用ヒータの小型化、コンパクト化を図ることができる。また、ユニオンナットの増締めによりシール性をその都度確保することが可能であって、ネジシールやOリングシールと比較しても長期にわたり信頼性の高いものとなる。さらに、単一のユニオンナットを増締めするという簡単な手段で足りるため、溶着による接続構造と異なり現場施工が容易であり、現場での保守・点検も容易に行える。
【0027】
流体に接する箇所(接液部)であるケース本体と蓋本体とには金属材やゴムOリングが使用されていないので、メタル溶出や金属摩耗粉発生の問題を解消できる。ユニオンナットの締め付けによればケース本体の端部の外側全周を均等に押圧することができるため、ケース本体や蓋本体の不慮の変形を招くようなことが無くなる。従って、これら部材のクリープや交換の問題を解消できる。ユニオンナットの締付けを緩めることによりケース本体の端部から蓋本体を簡単に取り外すことができるため、ケース本体内に滞留する滞留物がある場合には、その除去が容易に行える。
【0028】
また、この流体用ヒータは、ユニオンナットの締付けによるだけでケース本体に内圧が加わっても十分気密を保つことができて流体漏れを防止できるので、従来のようにOリングを使用しなくて済むとともに、請求項8のように、ケーシングの全ての構成部材をフッ素樹脂で成形することで、高温、腐蝕性の強い薬液にもよく対応でき、耐薬品性雰囲気への適用、設置が可能となり、流体用ヒータとしての用途範囲を拡大できる。
【0029】
請求項3の発明によれば、次のような作用効果が得られる。例えば、蓋本体の導出部を含むケーシングのほぼ全域に亘って発熱部が装備されている構造のヒータを用いると、ケーシングの内部のみならず蓋本体の導出部も加熱されることになり、無駄な発熱が生じて都合が悪い。これに対して、請求項3で規定される範囲に発熱部を配置する構成を採れば、ケーシングとヒータとで形成される加熱室(ケーシングの内部空間)における流体への有効な加熱作用を発揮しながら、蓋本体の導出部を無駄に加熱することが無く、合理的、経済的な流体用ヒータにできる利点がある。
【0030】
請求項4〜6の発明によれば、ユニオンナットの締め付けによってケース本体と蓋本体との間が良好にシールされる機能が、ケース本体の端部が拡張された状態で外嵌圧入されるインナーリングを用いることでより強化されるものとなり、長期に亘って液漏れの心配がなく信頼性に優れるケーシングを有する流体用ヒータの提供が可能となる。
【0031】
請求項7の発明によれば、ケース本体の各端部に取付けられる計二個の蓋部が互いに同じものであるから、蓋部としては1種類のパーツで済み、組付け時に組み間違いが発生しないとともに、部品管理上も有利になる等、コストや生産性に優れる流体用ヒータとして提供することができる。
【0032】
請求項11の発明によれば、ヒータ線を螺旋状に巻回して成るコイルヒータを用いているので、ケーシング内におけるヒータ線の長さを無理なく長くすることができて、加熱効率が向上する流体用ヒータを提供できる。また、請求項9及び10の発明でも同様であるが、ヒータ線がフッ素樹脂材で被覆されているから、流体が直接にヒータ線等に触れることが無いようにガードされて悪影響が殆ど及ばないようになり、ヒータとしての耐久性が向上可能となる利点もある。
【0033】
請求項12の発明によれば、複数の流体用ヒータを並列接続して大なる流量に対処したり、直列接続して加熱温度をより高くするといった使い方、或いは、流体配管系における複数の経路が集約されるターミナルとして用いるといった種々の用途が可能となり、より便利に用いることが可能となる流体加熱装置を提供することができる。
【0034】
請求項13の発明によれば、複数の流体用ヒータを接続するには、それら片側あたり一個の蓋部で、即ち、計二個の蓋部を用いれば足りるものとなり、請求項12の発明のものに比べて、構造の簡素化、部品点数の削減、小型化を可能としながら、請求項12の発明による前記作用効果が得られる合理化された流体加熱装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本発明による流体用ヒータ及び流体加熱装置の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1〜図5は実施例1による流体用ヒータやシール構造に関する各種の図であり、図6は実施例2による流体用ヒータの構造を示す図である。図7〜図13、及び図16〜図20は、実施例3〜10による流体用ヒータ、流体加熱装置、並びに接続構造を示す各種の図であり、図14,15は各種のヒータを示す参考図である。
【0036】
〔実施例1〕
実施例1による流体用ヒータAは、図1〜図3に示すように、ケーシング1を貫通してそのケーシング1の内部に通された棒状ヒータ(ヒータの一例)Hにより、ケーシング1の内部を通る流体が加熱自在に構成された縦型のものであり、例えば、半導体製造装置における洗浄用超純水の配管系統に縦向き姿勢で組み込まれて使用される(インラインヒータ)。つまり、流体用ヒータAは、チューブ材から成るケース本体4、及びこのケース本体4の両端部の夫々を塞ぐべくそれら端部毎に着脱自在に取付けられる蓋部fから成るケーシング1と、両蓋部f,fを貫通してケース本体4の内部に通される棒状ヒータHとを有するとともに、各蓋部fにはケース本体4の内部空間2に対する流体給排部30,31が形成されている。
【0037】
ケース本体4は、耐熱性、耐薬品性に優れるPFAやPTFE等のフッ素樹脂や導電性物質を含有する帯電防止フッ素樹脂等の合成樹脂製のチューブ材から成り、設定される内容量から求まる所定長さに切断して用いられる。このケース本体4の両端部には、それぞれ、同じくフッ素樹脂等の合成樹脂からなる蓋本体5が挿入され、フッ素樹脂等合成樹脂製のユニオンナット6の締め付けを介して接続される。つまり、蓋部fは、蓋本体5とユニオンナット6とを有して構成されている。
【0038】
実施例1においては、上下の蓋部f、即ち蓋本体5、ユニオンナット6、及びインナーリング15(後述)は互いに同じ部品である。これらの部品のうち、構造の複雑な蓋本体5について下側の蓋本体5で説明すると、胴壁部7と、この胴壁部7の上端(一端)に開放する受口部8、及び胴壁部7の下端(他端)を閉塞する底壁部9とを有する形に形成される。そして、図4に示すように、蓋本体5の受口部8の内部には、第1〜3のシール面10〜12が設けられる。第1のシール面10は、蓋本体5の受口部8の入口より内奥に、蓋本体5の軸線Cに対して交差状、つまり軸線C方向の外方に向けて漸次拡径するテーパ面により構成される。第2のシール面11は、受口部8の入口に、前記軸線Cに対して交差状、つまり軸線C方向の外方に向けて漸次拡径するテーパ面により構成される。第3のシール面12は、蓋本体5の受口部8の内奥において第1のシール面10よりも径方向外方に軸線Cと平行に形成された環状溝部13により構成される。蓋本体5の受口部8の外周には雄ねじ14が形成されている。
【0039】
一方、ケース本体4の一端部及び他端部にはそれぞれフッ素樹脂等合成樹脂製のインナーリング15を圧入状態で内嵌する。このインナーリング15は、図4に示すように、ケース本体4の端部に圧入されて該端部を断面山形状に拡径膨出させる断面算盤玉形状の圧入部16と、この圧入部16に連設されてケース本体4の端部に突出する突出部17とを有するスリーブ形状に形成されている。断面山形状の圧入部16はこれの一斜面部に外向きテーパ面18を、他斜面部に第2のシール面11との間でケース本体4の端部を傾斜状態に挟持して第2のシール部21を形成する内向きテーパ面20をそれぞれ形成している。突出部17の先端には第1のシール面10に密着状に当接して第1のシール部19を形成するテーパ面からなる突出端面22、及び環状溝部13に嵌入して第3のシール部23を形成する円筒部24を形成してなる。このインナーリング15の内径はケース本体4の内径と同一か略同一に設定して、流体が滞留することなく円滑に流動するようにしている。
【0040】
ユニオンナット6は、図4に示すように、その内周に蓋本体5の雄ねじ14に螺合自在な雌ねじ25が形成され、かつ、一端部に環状鍔部26が内向きに張り出されているともに、該環状鍔部26の内周面の軸方向内端に鋭角、又は直角の押圧エッジ部26aが設けられて構成されている。
【0041】
そして、インナーリング15の圧入されたケース本体4の端部を蓋本体5の受口部8に挿入し、ケース本体4の端部の外周に予め遊嵌させてあるユニオンナット6の雌ねじ25を、蓋本体5の雄ねじ14に螺合させて締め付ける。この締付けに伴いユニオンナット6の押圧エッジ部26aがケース本体4の拡径部27の拡径付け根部に当接してインナーリング15を軸方向から押圧することになる。これにより、図4に示すように、インナーリング15の突出端面22が蓋本体5の第1のシール面10に対し押し付けられて第1のシール部19を形成するとともに、インナーリング15の内向きテーパ面20と蓋本体5の第2のシール面11との間でケース本体4の端部を傾斜状態に挟持して第2のシール部21を形成する。さらに、インナーリング15の円筒部24が環状溝部13に圧入されて第3のシール部23を形成するようになる。これら第1〜3のシール部19,21,23(いずれも=S)により、信頼性の高いシール機能を発揮することができる。液圧に対しては、7kg/cm2 程度の耐圧があり、通常の液供給ライン(4kg/cm2 )からの液に対して十分な耐圧性がある。
【0042】
図3に示すように、ケース本体4の下側の蓋部fの蓋本体5には、流体用ヒータHの加熱対象となる流体の導入用配管28aが接続される導入側接続部29aが、上側の蓋部fの蓋本体5には、流体用ヒータHによって加熱された流体の導出用配管28bが接続される導出側接続部29bがそれぞれ装備される。すなわち、他の配管が接続される箇所である接続部29a,29bは、下側の蓋本体5の胴壁部7に流体供給側の流体給排部(インレットポート)30が、上側の蓋本体5の胴壁部7に流体排出側の流体給排部(アウトレットポート)31がそれぞれ形成されている。供給側の流体給排部30には、加熱対象となる流体の導入用配管28aの端部が、排出側の流体給排部31には、被加熱流体の導出用配管28bの端部が、それぞれフッ素樹脂等の合成樹脂製のユニオンナット32、フッ素樹脂等の合成樹脂製のインナーリング33を介して接続されて、加熱対象流体が供給側の流体給排部30、ケース本体4内の加熱室(ケーシング1の内部における棒状ヒータHの外部となる流路部分の一例)2、排出側の流体給排部31の順に流通すべく構成されている。
【0043】
供給側の流体給排部30及び排出側の流体給排部31の各内部構造は蓋本体5の受口8の内部構造と同一に構成し(但し、径は異なる)、また流体の導入用配管28a及び導出用配管28bの各端部には、ケース本体4の端部のインナーリング15と同様の断面形状のインナーリング33を圧入してあって、供給側の流体給排部30及び排出側の流体給排部31に対する導入用配管28a及び導出用配管28bの各端部の接続構造は、ケース本体4の端部の蓋本体5の受口8に対する接続構造と同様であるため、その詳細な説明は省略する。ただし、この供給側の流体給排部30及び排出側の流体給排部31に対する流体の導入用配管28a及び導出用配管28bの各端部の接続構造としては、そのほかに、供給側の流体給排部30及び排出側の流体給排部31に対し流体の導入用配管28a及び導出用配管28bの各端部を直接溶着したり、ねじ接続したりする等の手段を採用することもできる。つまり、他の配管との接続部29a,29bは溶着、ねじ接続等の接続手段でも良い。
【0044】
次に、ケーシング1の内部に配されるヒータHについて説明する。この例では、上下の蓋本体5,5を貫通して装備される棒状ヒータHは、フッ素樹脂材によって被覆されたカートリッジヒータを使用している。即ち、図1〜図3に示すように、カートリッジヒータ39は、外周がステンレス等の金属材で覆われた発熱部40と一対のリード線r,rとを備えた公知の市販品であり、図示しないが発熱部40の内部にはニクロム線や誘導コイル等の熱源が収容されている。そして、リード線r部分を含めて発熱部40にはフッ素樹脂製のチューブ材を適宜の長さに切断して成る外装チューブ51が圧入状態で外嵌装備(被覆)してあり、それによってケーシング1内部における棒状ヒータHの接液部(流体が接する箇所)はフッ素樹脂のみの状態となるように構成してある。
【0045】
上述のフッ素樹脂コーティングされたカートリッジヒータで成る棒状ヒータHは、その両端部が上下の蓋本体5の底壁部9から突出する導出部(「ヒータの導出部」の一例)34に形成された取出口34aから外部に取出されており、いわゆる両端貫通状態でケーシング1に配備されている。蓋本体5における棒状ヒータHの導出部34には、フッ素樹脂等の合成樹脂製のユニオンナット35を外嵌して、このユニオンナット35を、締付けリング(フェルール)36を介して導出部34に螺着させて締付けるヒータ接続部HSにより、棒状ヒータHの外装チューブ51と導出部34との間の隙間を密封してある。また、カートリッジヒータに石英管を外嵌し、その石英管にフッ素樹脂製のチューブ材を外嵌して被覆する構造でも良い。
【0046】
ヒータ接続部HSは、図3に示すように、円筒形状に形成された導出部34の取出口34aに棒状ヒータHを差込んで外装チューブ51の端部が導出部34から僅かに外部に露出する状態としてから、導出部34と外装チューブ51の外周面上に挿嵌したユニオンナット35とを螺合して、導出部34と外装チューブ51の外周面上に挿嵌した締付けリング36との対向面を圧接する方向に締付け、導出部34と外装チューブ51の端部とを気密状態に連通接続する。なお、外装チューブ51の両端部内には、詰め物52を充填しても良い。詰め物52は、比較的硬度があって断熱性も有する材料のものが望ましい。また、ヒータHは、円筒棒状のシーズヒータに厚さ0.3〜1.2mmのフッ素樹脂やPEEKのライニングで完全密着されたものでも良い。
【0047】
なお、上述のヒータ接続部HSを構成する各要素34,35,36は、強酸や強アルカリ等の薬液を輸送するために耐薬品性、耐熱性、耐圧性に優れた樹脂材で構成され、例えば、PTFE又はPFA等の合成樹脂で導出部34と締付けリング36とを夫々形成し、PFA又はPP等の合成樹脂で締付けユニオンナット35を形成している。
【0048】
ユニオンナット35の内側周面には、導出部34の外周に形成された雌ネジ部34nに螺合自在な雌ネジ部35nが形成されているとともに、中心部には棒状ヒータHの最大径を有する外装チューブ51の外径寸法よりも僅かに大きい内径を持つ挿通孔35bが形成されている。そして、挿通孔35bの内側周縁部には、締付けリング36の下端面と当接する段部35cが形成されている。
【0049】
締付けリング36は、その中心部に棒状ヒータHの外径寸法よりも若干小径の挿通孔36aを形成し、その一側端面に棒状ヒータHを差込む方向に向けて小径となる円錐形のテーパ面36bを形成してある。そして、テーパ面36bは、導出部34に形成されたテーパ面34bと合致する形状寸法に形成されている。
【0050】
棒状ヒータHがケーシング1に挿通された組付け状態においては、図1、図3に示すように、発熱部40が上下の底壁部9,9の間の範囲内に収まるよう、外装チューブ51を長めに形成してあるのが望ましい。つまり、棒状ヒータHにおける発熱部40は、流路部分である加熱室2を形成するケーシング1の内部(蓋本体5の導出部34に挿通される部分よりもケース本体4内部側)にのみ配されている。このフッ素樹脂管を持つフッ素管ヒータを用いれば、流体用ヒータAにおける流体と接する箇所、即ち接液部は全てフッ素樹脂となり、不純物の析出が全く起きないクリーンなものにできるという利点がある。また、次に記すような作用効果もある。
【0051】
例えば、図示は省略するが、外装チューブ51のほぼ全域に亘って発熱部40が装備されている構造の棒状ヒータを用いると、ケーシング1の内部2のみならずヒータ接続部HSも加熱されることになり、フッ素樹脂製の導出部34やユニオンナット35が熱で変形するおそれがある等、無駄な発熱が生じて都合が悪い。これに対して、上述のような範囲に発熱部40を配置する構成を採れば、ケーシング1と棒状ヒータHとで形成される加熱室2における流体への有効な加熱作用を発揮しながら、ヒータ接続部HSを無駄に加熱することが無く、合理的、経済的な流体用ヒータAにできる利点がある。一方、発熱部40が加熱室2内に収まらない場合でも、例えばヒータHの表面温度をモニタするセンサ(例:サーモスタット)を設けて、一定以上の温度上昇が生じないようにすることも可能である。以上のように構成された流体用ヒータAは、ケーシング1の内部2を通過する流体、例えば半導体製造装置等に用いられる洗浄用の超純水や薬液等を、その流れ移動を妨げることなく棒状ヒータHで加熱することができる。尚、蓋本体5は、PFAやPTFE等のフッ素樹脂でも良いし、石英であっても良い。
【0052】
〔シール部の他の実施例〕
ケース本体4の端部と蓋本体5の受口部8との間に形成されるシール部としては、図4に示す構造のように第1,2のシール部19,21のほかに、インナーリング15の円筒部24と蓋本体5の環状溝部13とによる第3のシール部23を付加することで、シール性能をより一層確実に向上させることができるが、必ずしもその構成に限定されるものではない。
【0053】
その他に、例えば、図5に示すように、第1,2のシール部19,21(S)だけを形成して、第3のシール部23(S)を省略するもの、すなわち蓋本体5の内奥に環状溝部13を設けず、またインナーリング15に円筒部24を設けないものであってもよい。この場合、蓋本体5の内奥に設ける第1のシール面10は、軸線Cに対して第2のシール面11とは逆向きの交差状、つまり軸線C方向の外方に向けて漸次縮径するテーパ面により構成している。このテーパ面どうしがユニオンナット6の螺進によって圧接されれば、そこが第3のシール部になり得る。この場合でも、蓋本体5は、PFAやPTFE等のフッ素樹脂でも良いし、石英であっても良い。
【0054】
〔実施例2〕
実施例2による流体用ヒータAは、図1〜図3等に示す実施例1のものの棒状ヒータHが、ランプヒータによって構成されるものに代わる以外は同じである。即ち、図6に示すように、棒状ヒータHは、フッ素樹脂材によって被覆されたランプヒータ53であり、実施例1による流体用ヒータHのカートリッジヒータ39がランプヒータ53に置き換えられたものである。ランプヒータ53は、図6に示すように、例えば、ガラス管54内にタングステン製フィラメント55が収容されハロゲンランプで構成されており、ガラス管54の両端に1本ずつ取り出されるリード線rを含めて石英管56に挿入され、その石英管56が接着剤等による密着層57を介してフッ素樹脂製のチューブ材51内に挿入されることで棒状ヒータHに構成されている。つまり、ランプヒータ53は、三層から成るカバー管部58によって被覆されている。尚、収縮フッ素樹脂チューブを用いれば、密着層57を省略することが可能である。
【0055】
この場合は、ランプヒータ53が発熱部39に相当し、実施例1の流体用ヒータと同様に、発熱部39は、流路部分2を形成するケーシング1の内部にのみ配されており、導出部34には及ばない構成となっている。三層構造のカバー管部58には十分な強度、剛性があるので、ヒータ接続部HSを構成する導出部34において締付けられる端部には、図3に示すような詰め物52を設けなくても良いものとなっている。
【0056】
〔実施例3〕
実施例3による流体用ヒータAは、棒状ヒータHとして石英管ヒータを用いたものであり、それ以外は実施例1による流体用ヒータAと同じである。即ち、実施例3による流体用ヒータAにおいては、図7、図8に示すように、ケース本体4の内部には、石英管3を用いた棒状ヒータ(石英管ヒータ)Hが通されており、この棒状ヒータHの両端部は、上下の蓋本体5の底壁部9から突出する導出部34に形成された取出口34aから外部に取出されており、いわゆる両端貫通状態で配備されている。蓋本体5における棒状ヒータHの導出部34には、フッ素樹脂等の合成樹脂製のユニオンナット35を外嵌して、このユニオンナット35を、フェルール36と抜止めリング37とを介して導出部34に螺着させて締め付ける石英管接続部SSにより、棒状ヒータHの石英管3と導出部34との間の隙間を密封してある。
【0057】
石英管接続部SSは、図8に示すように、円筒形状に形成された導出部34の取出口34aに棒状ヒータHを差込んで石英管3の端部が導出部34から僅かに外部に露出する状態としてから、導出部34と石英管3の外周面上に挿嵌したユニオンナット35とを螺合して、導出部34と石英管3の外周溝3mに嵌着された抜止めリング5と石英管3の外周面上に挿嵌した締付けリング6との対向面を圧接する方向に締付け、導出部34と石英管3の端部とを気密状態に連通接続する。導出部34の外周には、ユニオンナット35の内周に形成された雌ネジ部35nに螺合自在な雄ネジ部34nが形成されている。
【0058】
なお、上述の石英管接続部SSを構成する各要素34,35,36,37は、例えば、強酸や強アルカリ等の薬液を輸送するために耐薬品性、耐熱性、耐圧性に優れた樹脂材で構成され、PTFE又はPFA等の合成樹脂で導出部34と締付けリング36とを夫々形成し、PFA又はPP等の合成樹脂で締付けユニオンナット35と、抜止めリング37とを夫々形成している。
【0059】
ユニオンナット35の内側周面には、導出部34の外周に形成された雌ネジ部34nに螺合自在な雌ネジ部35nが形成されているとともに、中心部には棒状ヒータHの最大径を有する金属カバー38の外径寸法よりも僅かに大きい内径を持つ挿通孔35bが形成されている。そして、挿通孔35bの内側周縁部には、抜止めリング37の下端面と当接する段部35cが形成されている。
【0060】
抜止めリング37には、石英管3の外周面上に刻設した周溝3mに合致する形状寸法の中心孔37aと、一端側を径方向に切断する分割溝37bと、他端側の外周部を部分的に切り欠いて成る連結部37cとが形成されている。この形状構成は、抜止めリング37を石英管3を通過させてから周溝3mに嵌装するための工夫であり、連結部37cを材料弾性に抗して若干撓ませ、石英管3の外径寸法よりも若干大径となるように中心孔37aを径方向に拡径変形させることで可能となる。
【0061】
締付けリング36は、同締付けリング36の中心部に石英管3の外径寸法よりも若干小径の挿通孔36aに形成し、同締付けリング36の一側端面に石英管3を差込む方向に向けて小径となる円錐形のテーパ面36bを形成し、同テーパ面36bを導出部34に形成されたテーパ面34bと合致する形状寸法に形成してある。
【0062】
石英管ヒータHは、図7,11及び図14に示すように、ニクロム線や誘導コイル等で成る発熱部(発熱体)40を内装する筒状の石英管3と、その両端部を覆う一対の金属カバー38と、金属カバー38から突設される導通端子(図示省略)を覆う硝子カバー41とを有して構成されている。各硝子カバー41からは、導通端子に導通接続される導線rが取出される。棒状ヒータHがケーシング1に挿通された組付け状態においては、発熱部40が上下の底壁部9,9の間の範囲内に収まるよう、電極棒40a等を用いて石英管3の端部から中央よりに離れて位置させてある。つまり、棒状ヒータHの発熱部40は、蓋本体5の導出部34に挿通される部分よりもケース本体4内部側に形成されている。
【0063】
例えば、図示は省略するが、石英管3のほぼ全域に亘って発熱体40が装備されている構造の棒状ヒータを用いると、ケーシング1の内部2のみならず石英管接続部SSも加熱されることになり、無駄な発熱が生じて都合が悪い。これに対して、上述のような範囲に発熱部40を配置する構成を採れば、ケーシング1と石英管3とで形成される加熱室2における流体への有効な加熱作用を発揮しながら、石英管接続部SSを無駄に加熱することが無く、合理的、経済的な流体用ヒータAにできる利点がある。
【0064】
〔実施例4〕
実施例4による流体用ヒータAは、図9に示すように、棒状ヒータHが下側の蓋部fの蓋本体5のみを貫通し、上側の蓋部fの蓋本体5はフッ素樹脂チューブ59の上端部を嵌合支持する片貫通構造のものである。実施例1による流体用ヒータAとの違いは、上側の蓋本体5にはヒータ接続部HSが無く、代わりに嵌合凹部5Aが形成されるとともに、棒状ヒータHとしては、図15に示すように、リード線rの取り出し側にのみ詰め物52が装備された状態の、外装チューブ51で被覆されたカートリッジヒータHを用いている点である。嵌合凹部5Aは、流体が滞らないように、棒状ヒータHの外径よりも大きな内径を有しており、箇所横側方に突出した複数の支持突起5aによって位置決めされる構成とするのが望ましい。
【0065】
図15に示す棒状ヒータHは、カートリッジヒータ39を先端が閉塞された筒状でフッ素樹脂製のチューブ59で被覆して成るものであり、カートリッジヒータ39自体は図1〜図3に示す実施例1のものと同じである。フッ素樹脂チューブ59の閉塞側端部59A側においては、カートリッジヒータ39を端からやや離れて存在する設定としてあり、やはり発熱部40が、流路部分2を形成するケーシング1の内部にのみ配される構成となっている。棒状ヒータHのケーシング1への組付け状態では、フッ素樹脂チューブ59先端の閉塞側端部59Aが上側の蓋本体5の嵌合凹部5Aに嵌入されており、ケーシング1の径方向には動かないように位置決めされる構造となっている。それ以外の構造は、基本的には実施例1による流体用ヒータAと同じである。この場合は、上下の蓋本体5,5、即ち蓋部f,fは互いに異なる部品となる。
【0066】
この片貫通構造の流体用ヒータAにおいては、上側の蓋本体5には棒状ヒータHが貫通しないので、そこからの流体漏洩のおそれが皆無になるとともに、上方には棒状ヒータHが出っ張らず、その分のコンパクト化が可能になる。また、リード線r,rが下側に集約されるので、電気配線の取り回しがシンプル化される利点もある。なお、この片端子型の棒状ヒータHを上側の蓋本体5にのみ貫通させて倒立姿勢でケーシング1に装備させる、という使い方も可能である。
【0067】
〔実施例5〕
実施例5による流体用ヒータAは、実施例4と同様な片側貫通型のものであるが、棒状ヒータH、及び下側の蓋本体5の導出部34におけるシール構造は異なるものとなっている。即ち、図10に示すように、下側の蓋部fにおけるヒータ接続部HSは、ユニオンナット35を導出部34に外嵌螺合させることで棒状ヒータHをシール状態で下蓋本体5に支持する基本構造は同じであるが、シール構造は大きく異なる。まず、棒状ヒータHの先端部61については、フッ素樹脂製の外装チューブ51の先端内に同じくフッ素樹脂製の円ブロック62を詰めて(圧入内嵌して)融着一体化することで閉塞する構成とされている。そして、棒状ヒータHの長さは、前記先端部61が上側の蓋本体5の底壁部9からは明確に離れて位置する状態に設定されている。
【0068】
そして、下蓋本体5のシール構造は、図10、図11に示すように、導出部34は、外周部に雄ネジ部34nが形成された環状の外筒部34Aと、この外筒部34Aより明確に小さい環状突起である環状の内筒部34Bと、軸線Cに対する径方向でこれら外筒部34Aと内筒部34Bとの間に形成される環状溝34Cとから形成されている。外筒部34Aの内周側における先端部には漸次拡径するテーパ状の入口シール部63が形成され、内筒部34Bの内周側における先端部にも漸次拡径するテーパ状の内奥シール部64が形成されている。
【0069】
カートリッジヒータ39に外嵌装着されるフッ素樹脂製の外装チューブ51の下端部には、導出部34と嵌合してシール部T1〜T3を形成するための環状シール部65が一体的に装備されている。環状シール部65は、入口シール部63に当接するテーパ面66aが上端側に形成された膨出部66と、導出部34の環状溝34Cに嵌り込むよう、テーパ面66aに連続して形成される環状突起68、及び内筒部34Bが嵌り込み自在な第二の環状溝69を有した嵌合凸部67とを有するPFA等のフッ素樹脂製(外装チューブ51と同じ材料が望ましい)のものに構成されている。
【0070】
環状シール部65は、上端側ほど小径となるテーパ状の内周面65aを有しており、外装チューブ51の外周部に圧入し、かつ、融着されており、それによって外装チューブ51との間がシールされる状態で、特に、環状シール部65の上端部がより確実にシールされる状態で一体化されている。嵌合凸部67には、環状溝69を設けるための上端内筒部70が形成されており、この上端内筒部70の内周に相当する内周面65a上端部が、外装チューブ51に最もきつく外嵌される構成となっている。また、その上端内筒部70の存在により、組付け状態においては、外装チューブ51の外周面と導出部34の内周面との間には径方向に明確な隙間kが形成されるようにしてある。
【0071】
ユニオンナット35の内向き鍔部35Tは、膨出部66の外径端部66cを下方から押上げるためのものであり、その内径部35tは、内周の雌ねじ部35nを導出部34の雄ね時部34nに螺合させての締付け状態では、環状シール部65の膨出部66の段差外周部66bと殆ど隙間なく(極僅かな隙間を伴って)嵌合する状態に設定されている。尚、優れたシール状態を得るには、環状突起68の径方向厚みを環状溝34Cの径方向間隔よりもある程度大きい値として、圧入状態で嵌合する構造が望ましい。
【0072】
以上のような構造により、ユニオンナット35を導出部34に螺合させて、環状シール部65を(棒状ヒータHを)押上げて導出部34に嵌合させた組付け状態では、入口シール部63とテーパ面66aとが強く当接されて第1のシール部T1が形成されるとともに、環状突起68が環状溝34Cに嵌り込んで強く圧接され、内外周の二箇所に第2のシール部T2を形成する。この場合、環状溝34Cは環状突起68の突出量よりも深いので、これら両者34C、68は上下方向には当接せず、代わりに内筒部34Bと第二の環状溝69とが嵌合し、これらのテーパ面どうしが当接して第3のシール部T3を形成する。つまり、これら第1〜第3の三箇所のシール部T1〜T3の存在により、導出部34と環状シール部65とが、即ち蓋本体5と棒状ヒータHの外装チューブ51とが完全なまでにシールされる状態を得ることができる。
【0073】
従って、ケーシング1内に取込まれて加熱対象となる流体が、例えば、毒性を有する薬液であるとか、強透過性薬液等の漏れると困るものであっても、棒状ヒータHの支持部である導出部34からの漏洩も無く、信頼性及び耐久性に優れる流体用ヒータAとして提供することができている。また、外装チューブ51と導出部34とには明確な隙間kがあるので、薬液等の流体が滞ってしまうおそれが無く、クリーンな状態に保てるとともに、棒状ヒータAに強い曲げ力が作用した場合には、近接配置されている内向き鍔部35Tの内径部35tと膨出部66の段差外周部66bとが当接して支えあう作用が生じて、実質的に導出部34と外装チューブ51との嵌合長が増大し、安定支持できる作用が期待できる利点もある。さらに、ユニオンナット35を緩めて外すことにより、面倒な蓋部fの分解を伴うことなく棒状ヒータHを簡単に取り出すことができるので、棒状ヒータHの故障や仕様変更にも容易に対応できる便利さ、即ち良好なメンテナンス性も備えている。
【0074】
次に、この実施例5による流体用ヒータHにおける上記ヒータ接続部HSの変形例を、図面は省略するが幾つか述べる。その1は、環状シール部65の内周面65aがテーパ面ではなく、一定径のものとされた状態で外装チューブ51に外嵌圧入され、かつ、融着一体化された構成を持つヒータHを用いた構造であり、この構造を有する流体用ヒータでも良い。その2は、削り出しや成形により、予め環状シール部65と外装チューブ51とが一体のものとして形成されたヒータHを用いる構造であり、この構造を有する流体用ヒータでも良い。その3は、環状シール部65を用いずに外装チューブ51をそのまま導出部34に圧入内嵌し(図3参考)、導出部34の下端部において外装チューブ51と導出部34とを溶着一体化した構造であり、この構造を有する流体用ヒータでも良い。その1及びその2の流体用ヒータでは、ユニオンナット35の操作により、ヒータHが簡単に着脱できる良好なメンテナンス性を有しており、その3の流体用ヒータでは、導出部34を完全にシールすることができ、かつ、最も廉価に構成できるという利点がある。
【0075】
〔実施例6〕
実施例6は、上述した流体用ヒータAの複数を並列に接続して成る流体加熱装置Bである。すなわち、実施例5による流体加熱装置Bは、図12に示すように、実施例1の流体用ヒータAにおける一方の蓋部fの蓋本体5として、流体給排部30(又は31)が二箇所形成されているものを2個用いて並列に接続して成るものである。図12において左側に描かれた流体用ヒータAは、下側の蓋本体5に流体給排部30が2箇所形成されたものであり、右側に描かれた流体用ヒータAは、上側の蓋本体5に流体給排部31が2箇所形成されたものである。
【0076】
左側で下側の蓋本体5の右側の流体給排部30と、右側で下側の蓋本体5の流体給排部30とが接続部Rによって連通接続され、左側で下側の蓋本体5の左側の流体給排部30が、加熱対象となる流体の入口IN(入口集合部)の役割を担うとともに、左側で上側の蓋本体5の流体給排部31と、右側で上側の蓋本体5の左側の流体給排部31とが接続部Rによって連通接続され、右側で上側の蓋本体5の右側の流体給排部31が、加熱された流体の出口OUT(出口集合部)の役割を担う構成とされている。接続部Rとしては、例えば図12に示すように、一対のユニオンナット32,32とフッ素樹脂等の合成樹脂製の中継チューブ60等からなる管継手構造のものを採ることができるが、これには限定されない。例えば、蓋本体から配管部を突出形成しておき、その配管部の端部どうしを突き合わせて融着させることで蓋本体どうしを一体的に接続することもできる。
【0077】
導入用配管28aから入口INに供給されてきた流体は、供給側の各流体給排部30や左右の下蓋本体5の内部を通って二箇所の加熱室(流路部分)2,2の下端部内に分かれて取込まれ、各ケーシング1内において各棒状ヒータHによって加熱されながら上昇移動する。そして、各流体用ヒータA,Aにおいて加熱されて各上側蓋本体5部分に上昇移動した流体は、排出側の各流体給排部31や上側の蓋本体5内を通って出口OUTから導出用配管28bに取出されて行くのである。この流体用ヒータの並列接続による流体加熱装置Bは、大流量の流体を加熱昇温させるに好適な装置であり、その規模は流体用ヒータA,Aの接続個数により、簡単に選択設定することができる便利なものである。
【0078】
例えば3個以上の流体用ヒータAを並列接続するには、二箇所の流体給排部30(又は31)を有する蓋本体5が上下に備えられた流体用ヒータを新たに用いることで実施することができる。このように並列接続した流体加熱装置によれば、装置内に貯留した流体を一定温度まで加熱した後に送り出し供給することができるので、貯留タンク等の液槽を設ける必要がなく、コンパクトかつ低コストとなる。また、流量は少ないが加熱温度を高くする場合等には、複数の流体用ヒータAを直列接続して成る流体加熱装置Bが好適であり、さらには、並列接続と直列接続とを組み合わせることも可能である。
【0079】
〔実施例7〕
実施例7は、フッ素樹脂材によって被覆されたヒータ線を螺旋状に巻回して成るコイルヒータHを用いて成る流体用ヒータAである。即ち、図16に示すように、実施例7によるコイルヒータHは、発熱体であるヒータ線40がPFA等のフッ素樹脂チューブ71に挿入されて成るヒータ要素72を、螺旋状に巻回して構成されており、各蓋部fのヒータ要素接続部YSを通って外部に取り出されている。両端のリード線r,rには、図示しない電力供給用の制御装置が接続される。尚、ヒータ要素接続部YSは、図3等に示すヒータ接続部HSと同じ構造である。
【0080】
但し、ヒータ要素72は、図16における部分的に拡大した図のように、底壁部9に至る手前(ケーシング1の内部側)の位置におけるフッ素樹脂チューブ71内において、ヒータ線40にリード線rを導通接続(ハンダ付け、カシメその他による)する接続部73を設けてあり、ヒータ要素接続部YS、即ち、導出部34へのヒータ線40からの熱伝導が回避されるようにしてある。前記接続部73は各蓋部f毎に形成されている。このコイルヒータHの採用により、ケーシング1内におけるヒータ線40の長さを大幅に長くすることができるので、より高温に加熱したり、加熱効率を向上できる利点が得られる。
【0081】
〔実施例8〕
実施例8は、フッ素樹脂材によって被覆されたヒータ線を二重巻き螺旋に形成して成るコイルヒータHを用いた流体用ヒータAであり、図16に示す螺旋状ヒータ要素の内側に小径の螺旋状ヒータ要素が配置されたような構成である。即ち、図17に示すように、実施例8によるコイルヒータHは、ヒータ線40がPFA等のフッ素樹脂チューブ71に挿入されて成るヒータ要素72を、外側螺旋部74と内側螺旋部75とを有する二重巻き螺旋形状に形成して成る。
【0082】
外側螺旋部74の終端側が内側螺旋部75の始端側に連続する折返し部76の反対側においては、内側螺旋部75の終端部のヒータ要素72が折り返されており、内側螺旋部75の内側中心を貫いて折返し部76を通り抜ける直線部77に形成されるとともに、一方の蓋部fのヒータ要素接続部YSを通って外部に取り出されている。また、外側螺旋部74の始端側は他方の蓋部fのヒータ要素接続部YSを通って外部に取り出される。この実施例8においても、コイルヒータHの両端部には、導出部34へのヒータ線40からの熱伝導を回避するための接続部73(図16に示すものと同構造)が設けられている。この二重巻きコイルヒータHの採用により、ケーシング1内におけるヒータ線40の長さをより一層大幅に長くすることができるので、より一層高温に加熱したり、より加熱効率を向上できる利点が得られる。
【0083】
〔実施例9〕
実施例9は、フッ素樹脂材によって被覆されたヒータ線を螺旋状に巻回して成るコイルヒータHの中にパージガスを通すようにしたコイルヒータHを用いて成る流体用ヒータAである。即ち、図18に示すように、ヒータ線40がPFA等のフッ素樹脂チューブ71に挿入されて成るヒータ要素72を、ケーシング1内において螺旋状に巻回して構成されており、各蓋部fのヒータ要素接続部YSを通って外部に取り出されている。ヒータ要素72は、フッ素樹脂チューブ71内においてヒータ線40を螺旋状に巻回して構成されており、その両端部に蓋部fと同様の構成を適用することにより、フッ素樹脂チューブ71にパージ用の排気ガスを通す構成が採用されている。
【0084】
図18と、図18のN部分を拡大した図19とに示すように、ヒータ線40の螺旋巻きにより、フッ素樹脂チューブ71内には明確な通路空間が形成されており、その通路空間に窒素ガス等の不活性ガスを通して、そのフッ素樹脂チューブ71の内部をパージする手段が採られており、その一例について以下に説明する。実施例9による流体用ヒータAは、半導体製造装置の基板処理装置における強透過性薬液の加熱装置として用いられるものであり、図18に示すように、導入用配管28aには、ポンプ90及び供給管90aを介して薬液貯留タンク91が接続され、導出用配管28bから出た加熱後の薬液は、開閉弁92及び導出管92aを介して処理チャンバ93内の被処理基板94へと供給されるようになっている。
【0085】
また、フッ素樹脂チューブ71の一方の端部には、一方の第2蓋部f2の導入側接続部129a及びガス供給路128aを介してパージ用の排気ガス供給手段95が接続され、他方の端部には、他方の第2蓋部f2の導入側接続部129a及びガス排出路128bを介して排気手段96が接続される。尚、この第2蓋部f2の構成部品は、図3等に示す蓋部fの構成部品に付した番号(符号)に百を上乗せした番号を付す(例:蓋本体5→105)ものとし、図3等に示す蓋部fと同じ機能部分の説明は基本的に割愛するものとする。
【0086】
ヒータ要素72の各端部には、ケーシング1の蓋部fと全く同様の構成を有する第2蓋部f2が装備されており、それら第2蓋部f2の構造を、図19を用いて一方のもので間単に説明する。即ち、フッ素樹脂チューブ71の端部は、蓋本体105の受け口部108に、インナーリング115を伴って内嵌されてユニオンナット106で締付け装着されており、ヒータ線40は、ヒータ要素接続部YSと同構造を有するヒータ線接続部CSを介して外部に取り出される。そして、フッ素樹脂チューブ71の内部空間71Sは、蓋本体105に形成された流体給排部130を有する導入側接続部129aを介して前述の排気ガス供給手段95に接続されている。
【0087】
薬液貯留タンク91からケーシング1の内部空間2に供給される強透過性薬液としては、高濃度(約50%以上の濃度)のフッ化水素水や高濃度(約70%以上の濃度)硝酸水が挙げられる。また、排気ガス供給手段95からケーシング1の内部空間2に供給されるパージ用の排気ガスは、窒素ガス等の不活性ガス、或いは浄化された空気が挙げられる。排気手段96は、排気ガス供給手段95として、浄化された空気を吸うべく導入用配管128aをクリーンルーム等に接続する構成を採る場合には、排気ブロワや換気扇、エジェクタ等から構成され、排気ガス供給手段95が送風機等の駆動送風手段を伴っていて排気ガス圧が十分ある場合には、単なる排気管で構成することも可能である。
【0088】
また、ヒータ線40の両端には制御装置97から電力供給用の配線98,98が接続されるとともに、フッ素樹脂チューブ71の第2蓋部f2から出た後の箇所(直後が望ましい)に配された温度計等の温度検出手段99の検出情報が信号線99aを介して制御装置97に入力される構成となっている。これにより、コイルヒータHによる加熱後の薬液温度が設定値に維持されるフィードバック制御が可能となっている。
【0089】
このように、流体用ヒータAを薬液加熱装置として用いた場合には次のような作用効果がある。高濃度のフッ化水素水等の強透過性薬液は、液状での浸透性が強いとともに、ガス状態において極めて強い浸透性を示す。そのため、ヒータ線40を被覆するチューブ71が耐薬品性に富むフッ素樹脂製のものであっても、そのフッ素樹脂チューブ71を強透過性薬液がガス状態で内から外に透過する可能性がある。即ち、透過ガスとなった強透過性薬液が金属製のヒータ線40の表面において再液化すると、ヒータ線40が腐食されて、短期間で破損に至るという問題がある。このような強透過性薬液は、高温(たとえば、50℃以上)になるほど浸透性が強くなるため、強透過性薬液を高温に加熱して用いる場合には、前述の問題点がより顕著になる。
【0090】
しかしながら、図18,19に示すような付属設備を伴う構成の流体用ヒータAとすれば、コイルヒータHを内部に有する状態に設けられたケーシング1の内部空間2には、排気ガス供給手段95から浄化空気や不活性ガス等が供給されるとともに、排気手段96によって排出されることによる掃気作用が生じるので、フッ素樹脂チューブ71をその外部(内部空間2)を通る強透過性薬液のガス(透過ガス)が通過して発熱手段であるヒータ線40に至ったとしても、この透過ガスは、排気ガス供給手段95から導入される新鮮なガスによって置換されるようになる。従って、透過ガスがヒータ線40の表面で再液化することを防止できることとなり、再液化した強透過性薬液によってヒータ線40が侵されることを防止できる。その結果、コイルヒータHとしての破損を防ぐことができるので、強透過性薬液に対する耐久性に優れ、耐久寿命の長い強透過性薬液用の流体用ヒータAとして提供することができる。
【0091】
尚、図18に仮想線で示すように、本実施例9においても、ヒータ線40をケーシング1の内部空間2において完結させてリード線rに導通接続する接続部73(図16や図17の拡大図参照)を設けた構成とすることが、ヒータ要素接続部YS、即ち導出部34の過熱を防止する点で望ましい。この場合、図示は省略するが、第2蓋部f2内には、コイル状のヒータ線40に代って直線状のリード線rが配設され、そのリード線rがヒータ線接続部CSを通って外部に取り出されるようになる。
【0092】
〔実施例10〕
実施例10は、三つの流体用ヒータAが片側あたり一個の集合蓋部F(f)で連結一体化されて成る流体加熱装置Bである。即ち、実施例10による流体加熱装置Bは、図20に示すように、集合蓋部Fは、横長形状の蓋本体5から筒状の受口部8が三箇所立設されるとともに、各受け口部8毎に形成される蓋内空間8aどうしを連通接続する計二箇所の連結路8b、及び流体給排部30,31を形成するための一箇所の給排路8cとが形成されて成る単一の部品に構成されている。
【0093】
つまり、集合蓋部Fは、図3等に示す蓋部fに、ケース本体4の複数が着脱自在に取付けられるように、受口部8が三箇所形成されているものであり、当然ながら導出部34も三箇所に形成されている。つまり、図12等に示される蓋部fの三個と中継チューブ60の二個とを合体させたようなものである。この場合のコイルヒータHは、両端がリード線rに導通接続されるヒータ線40をフッ素樹脂チューブ71で被覆して成るヒータ要素72が用いられている。尚、図20に示す流体加熱装置Bおいては、図16に示す修体様ヒータAと同じ部品には同じ符号を付すものとする。
【0094】
この集合蓋部Fを用いれば、図12に示す流体加熱装置に比べて、部品点数の削減やそれによるコストダウンを可能としながら、図12に示す流体加熱装置の有する作用及び効果と同等の作用効果を発揮できる利点がある。この図20に示すいわば三個一型の流体加熱装置Bは、各集合蓋部Fに設けられた流体給排部30,31を用いて、三箇所のケーシング1が並列に接続される並列型に構成されている。尚、図示は省略するが、連結路8bを適宜に遮断することにより、三箇所のケーシング1が直列に接続される直列型の流体加熱装置とすることも可能である。次に、多数の流体用ヒータAを接続して成る流体加熱装置Bの構造例を「その他の実施例」として幾つか述べる。
【0095】
〔その他の実施例〕
図13(A)に示すように、流体用ヒータAを前後左右に複数列並列に連結して成るものである。一例として、図13(A)においては、左右に4列で前後に2列の計8個の流体用ヒータAを並列に接続連結して成る流体加熱装置Bの平面図を示してある。この場合、蓋部fの蓋本体5としては、流体給排部31(又は30)が二箇所形成されたものと、三箇所形成されたものとが必要であり、右端で前側に位置する流体用ヒータAの下側蓋本体5に入口INを設けて導入用配管28aが接続連結されるとともに、左端で後側に位置する流体用ヒータAの上側蓋本体5に出口OUTを設けて導出用配管28bが接続連結されている。
【0096】
なお、図13(A)に仮想線で示すように、左端で前側に位置する流体用ヒータAの上側の蓋部fの蓋本体5にも、出口OUTを設けて導出用配管28bを接続連結しても良い。また、図示しないが、導入用配管28aを2箇所設ける構成も可能である。なお、接続部Rが多数存在しているので、例えば、前後中間において左右に4組並ぶ接続部Rのうちの中央2組のものを省略することは可能である。即ち、全ての蓋本体5に流体が行き渡る構造であれば良く、隣合う蓋本体5どうしの全箇所を接続連結しなければならないことはない。
【0097】
図13(B)に示すように、流体用ヒータA,Aを1個の流体ヒータ当りの周囲に6個の流体用ヒータを配したもの、いわゆる星型に配列された流体加熱装置Bも可能である。このような形状の流体加熱装置Bは、円筒状の空間が設置スペースとして空いているような場合に有効である。この場合、流体用ヒータAは円形の蓋本体5を有し、中央の流体用ヒータAのみが上下の蓋部fの蓋本体5のそれぞれに6箇所の流体給排部31(又は30)が形成されており、入口IN、出口OUTが装備される二個の流体用ヒータAを除く残りのヒータAにおいては、各蓋本体5のそれぞれには1箇所ずつの流体給排部31(又は30)が形成されるものとなっている。
【0098】
流体用ヒータAを2個以上並列接続して成る流体加熱装置Bは、以上述べた構成に限られるものではなく、種々の組み合わせが可能であり、例えば縦横(前後左右)に5個ずつ並べた25個の流体用ヒータAから成るヒータ群を上下に直列に接続して、計50個の流体用ヒータAで構成される流体加熱装置Bも可能である。即ち、単位時間当たりの流量が大なる流体の場合には、複数の流体用ヒータAを並列接続して成る流体加熱装置Bが好都合であり、単位時間当たりの流量は少ないが高い温度に加熱したい場合には、複数の流体用ヒータAを直列接続して成る流体加熱装置Bが好都合である。このように、流体加熱装置Bとしては扁平形状や立体的な形状、或いは高い昇温が可能なものなど、流体用ヒータAの組み合わせ方によって如何様にも仕様設定が可能であり、ユーザーの希望に応じたあらゆる構成の流体加熱装置を構築できるという優れた特徴を有している。
【0099】
以上述べた流体用ヒータAや流体加熱装置Bにおいては、入口INや出口OUTに開閉弁を装備する等して、ケーシング1内に取込まれる流体を一旦ケーシング1の内部2において貯留させた状態で棒状ヒータHで加熱し、十分に、或いは所定温度にまで昇温されてから、その加熱後の流体を出口OUTから排出する、という使い方も可能である。また、ケーシング1の内部の温度を測定するセンサ等の温度検出手段、開閉弁の駆動開閉機構、制御装置等を設けて、種々の温度域で取込まれる流体を、設定温度に昇温されてからケーシング1外に排出されるよう自動的に制御される「自動流体加熱制御装置」を構築することも可能である。
【0100】
例えば、本発明による流体用ヒータ又は流体加熱装置を、大気圧より高圧の超純水をケーシングの入口からケーシング内に導入し、超純水をケーシング内の下部又は上下部に設置した棒状ヒータで加熱し、一定温度まで加熱後にケーシング内上部に貯留した超純水をケーシング上部の出口より排出するように構成された超純水加熱装置として用いることが可能である。このような構成とすれば、装置内に貯留した超純水を一定温度まで加熱した後、超純水の圧力(大気圧より高圧)により高温超純水を送給することができるので、別途の貯留タンクや不活性ガス導入配管の敷設などの超純水を送給するための設備が不要となり、設備コスト及び運転コストが低減できる、といった作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】実施例1による流体用ヒータの正面図
【図2】図1の流体用ヒータの底面図
【図3】図1のケーシング端部の構造を示す要部の拡大断面図
【図4】図1のケーシング端部と蓋部との接続構造を示す半欠截拡大断面図
【図5】シール部の別構造を示す半欠截断面図
【図6】実施例2による流体用ヒータの要部を示す断面正面図
【図7】実施例3による流体用ヒータの全体正面図
【図8】図7の流体用ヒータのの要部を示す断面正面図
【図9】実施例4による流体用ヒータを示す断面正面図
【図10】実施例5による流体用ヒータを示す断面正面図
【図11】図10の下蓋部のシール構造を示す半欠截断面図
【図12】実施例6による流体加熱装置を示す断面正面図
【図13】(A),(B)は共に流体加熱装置の別構造を示す平面図
【図14】石英管を用いた棒状ヒータの外観図
【図15】実施例4の流体用ヒータに用いる棒状ヒータの断面図
【図16】実施例7による流体用ヒータを示す断面正面図
【図17】実施例8による流体用ヒータを示す断面正面図
【図18】実施例9による流体用ヒータを示す断面正面図
【図19】図18のN部分の構造を示す拡大断面図
【図20】実施例10による流体加熱装置を示す一部切欠きの正面図
【図21】従来の流体用ヒータを示す正面図
【図22】図21の流体用ヒータの断面図
【符号の説明】
【0102】
1 ケーシング
2 流路部分
4 ケース本体
5 蓋本体
6 ユニオンナット
8 受口部
10,11 シール面
13 環状溝部
15 インナーリング
17 突出部
20 内向きテーパ面
22 突出端面
24 円筒部
30,31 流体給排部
34 導出部
39 カートリッジヒータ
40 発熱部、ヒータ線
53 ランプヒータ
f 蓋部
A 流体用ヒータ
B 流体加熱装置
H ヒータ
S シール部
【技術分野】
【0001】
本発明は、超純水等の高純度液や各種薬液等の流体用ヒータ及び流体加熱装置に係り、詳しくは、半導体製造装置や液晶装置、化学薬品製造装置、食品生産ライン等で扱われる流体の配管等に好適に用いられる流体用ヒータ、並びにその流体用ヒータの複数を組合せて成る流体を加熱する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の流体用ヒータは、ケーシングを貫通してそのケーシング内部に通されたヒータにより、ケーシングの内部を通る流体を加熱自在に構成されて成るものがある。例えば、外面が金属溶出の少ない特殊なステンレス鋼等の金属材で覆われた金属製棒状ヒータを、クリーンな合成樹脂材で成る両端が閉塞された円筒状のケーシングに貫通装備することによって構成され、ケーシングの両端部に振分けて設けられた流体入口及び流体出口を用いてケーシング内に流体を流すことにより、ケーシング内を通る、或いは貯留される流体を棒状ヒータによって加熱することができる。
【0003】
上述のような流体用ヒータを構成するためのケーシングには、流体の漏洩についての厳しい要求がある。つまり、内部を通る流体の入口と出口からの漏洩防止に加えて、ケーシングにおける棒状ヒータの貫通箇所も漏洩防止の対象となるからであり、漏洩防止対策を施す箇所が多いからである。従って、棒状ヒータが貫通装備される流体用ヒータにおいては、液漏れの無いケーシングを生産性の良い状態で形成することが課題であり、そのケーシングの構成に関しては、特許文献1において開示されたものを踏襲することが考えられる。
【0004】
特許文献1には、円筒状のケーシング内に熱交換チューブを貫通させて成る熱交換器が示されている。その構造を説明すると、図21、図22に示すように、熱交換チューブ80が通されるケーシング81を、ある程度の内圧に耐えられるよう充分なシール性が確保されるために、ケーシング81の本体を構成するシェル82の外周に複数本のタイロッドや通しボルト等の金属製締結部材83をその長手方向に沿うよう互いに平行に配する。そして、金属製締結部材83の両端部をシェル82の両端部に配される蓋部材84に挿通して、蓋部材84から突出する金属製締結部材83の両端の雄ねじ部にナット85を締め込むことにより、シェル82の両端部と蓋部材84との突き合せ面間が密着状にシールされ、これによりケーシング81が密封状に構成される。また、シェル82の両端部と蓋部材84との突き合せ面間には、シール部材であるOリング86が介在されている。
【0005】
しかるに、シェル82の両端部と蓋部材84とを複数本のタイロッドや通しボルト等の金属製締結部材83とナット85との締め込みによってシールする上記の構造では、シールするための部品点数が多く、コストアップ、ケーシング構造の大型化を招くばかりか、金属製締結部材83は、硫酸雰囲気などに晒される場所に配置された場合、腐食しやすく、また金属汚染が避けられないため、近年、とくに半導体業界では使用制限の要求が高い。
【0006】
また、金属製締結部材83の締付けの緩みに対して、金属製締結部材83を定期的に増締めする必要があるが、通常金属製締結部材83は複数本、少なくとも4本以上であるため、各金属製締結部材83の増締め度合いにばらつきが生じ易く、このばらつきにより蓋部材84やシェル82の変形を招くおそれがあった。蓋部材84やシェル82の変形が生じると、シェル82の端部と蓋部材84との間にねじれや歪みが生じるため、局部的な応力集中が生じてクリープの進行を助長する問題がある。また、金属製締結部材83の金属製タイロッドと金属製タイロッドシースとの中心軸が一致せず、両者が擦れ合って摺動抵抗が増大し、かつ、金属粉を含む摩耗粉の発生原因となるという問題もあった。さらに、シェル82や蓋部材84の変形が生じた場合、これらの部材交換が必要となるが、これらの部材は通常切削品であり、比較的高価でもあるため、ケーシング構造の交換を行って内部デバイス(熱交換チューブ80)を継続利用するという再利用が難しい構造でもあった。
【0007】
シェル82の両端部と蓋部材84との突き合せ面間にシール部材としてOリング86を介在させる接続構造を流体用ヒータに適用した場合には、Oリング86を使用するため、耐蝕性や使用温度範囲に制限がある。例えば、Oリング86に接する空間には、高温の薬液を連通させることができない。また、Oリング86の発塵による汚染が問題となることもある。したがって、近年、半導体業界ではこのようなOリング86の使用制限の要求が高い。
【0008】
また、この種の流体用ヒータが、薬液の加熱等に使用された場合、そのシェル82や蓋部材84等の構成部材には耐腐食性に優れるPTFEやPFA等のフッ素樹脂が使用されることが多いが、フッ素樹脂は、潤滑性が高いため、シェル82と蓋部材84との間の接続部が配管の震動や熱の影響でクリープし、これによりタイロッドや通しボルト等金属製締結部材83の緩みが発生し、シェル82の両端の接続部から流体漏れが発生する問題があった。
【0009】
シェル82と蓋部材84との間のケーシング接続構造としては、その他に、ネジシールや溶接が採用されることがあるが、あまり効果的ではない。すなわち、単なるネジによる接続シール構造では、高いシール性を得ることができず、耐圧性が十分でなく、かつ、クリープによる漏れが生じ易い。また溶接は、一般的に熟練技術を必要とし、容易な作業ではないため、生産効率が低いとともに、現場作業性が悪く、現場での保守・点検が困難であるという問題がある。さらに溶接は、仕様変更によるヒータ交換等の内部部品の交換が実質的にできなくなるとか、リサイクルやリユースに適さないといった側面もある。
【特許文献1】特開平10−160362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような諸問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、タイロッドや通しボルト等の金属製締結部材、及びOリングを用いることなく、部品点数の減少、コスト低減を図ることができるとともに、コンパクトで耐圧性の高いケーシング構造及び信頼性の高いシール構造を有する流体用ヒータを提供することにある。また、本発明の他の目的は、流体用ヒータを複数用いることにより、大流量の流体等を配管経路中において昇温又は加熱し得る流体加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、流体用ヒータにおいて、チューブ材から成るケース本体4、及びこのケース本体4の両端部の夫々を塞ぐべくそれら端部毎に着脱自在に取付けられる蓋部fから成るケーシング1と、少なくとも一方の前記蓋部fを貫通して前記ケース本体4の内部に通されるヒータHとを有するとともに、前記ケース本体4の内部空間に対する流体給排部30,31が前記蓋部fに少なくとも計2箇所形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の流体用ヒータにおいて、前記チューブ材が可撓性を有した合成樹脂製であり、
前記蓋部fは、前記ケース本体4の端部を受け入れる受口部8及びこの受口部8内に設けられた少なくとも一箇所のシール面10を有する蓋本体5と、前記ケース本体4の端部に外嵌された状態で前記蓋本体5の受口部側端部に外嵌螺合自在なユニオンナット6と、前記ユニオンナット6の前記蓋本体5への螺進による締付けにより前記ケース本体4をこれの外側から押圧し、この押圧作用によって前記ケース本体4の端部と前記蓋本体5のシール面10とが密着することで形成される少なくとも一箇所のシール部Sと、から構成され、
少なくとも一方の前記蓋部fの蓋本体5には前記ヒータHを貫通する導出部34が形成されるとともに、前記流体給排部30,31は、前記ケーシング1の内部における前記ヒータHの外部となる流路部分2を通る流体を出し入れするためのものとして前記蓋本体5に形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の流体用ヒータにおいて、前記ヒータHにおける発熱部40が、前記流路部分2を形成する前記ケーシング1の内部にのみ配されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に記載の流体用ヒータにおいて、前記シール部Sが、前記蓋本体5の軸線方向の外方に向けて漸次拡径するテーパ面を前記受口部8の入口より内奥に形成することで成るシール面10と、前記ケース本体4の端部にこれを断面山形状に拡径膨出させるように圧入されたインナーリング15における前記ケース本体4の端部から突出した突出部17の先端に形成したテーパ面からなる突出端面22との密着により形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項2〜4の何れか一項に記載の流体用ヒータにおいて、前記シール部Sが、前記蓋本体5の受口部8の入口に、前記蓋本体5の軸線に対して交差するテーパ面により構成されたシール面11と、前記ケース本体4の端部にこれを断面山形状に拡径膨出させるように圧入されたインナーリング15の圧入部の斜面部に形成された内向きテーパ面20との間に前記ケース本体4の端部を傾斜状態で挟持自在に構成することによって形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項4又は5に記載の流体用ヒータにおいて、前記シール部Sが、前記蓋本体5の受口部8の内奥の前記シール面10よりも径方向外方に前記蓋本体5の軸線と平行に形成された環状溝部13に、前記ケース本体4の端部に圧入されたインナーリング15の突出部の先端に形成された円筒部24を嵌入自在に構成することによって形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の流体用ヒータにおいて、前記ケース本体4の一端部に取付けられる蓋部fと、他端部に取付けられる蓋部fとが互いに同一であることを特徴とするものである。
【0018】
請求項8に係る発明は、請求項1〜7の何れか一項に記載の流体用ヒータにおいて、前記ケース本体4及び前記蓋部fがフッ素樹脂によって形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項9に係る発明は、請求項1〜8の何れか一項に記載の流体用ヒータにおいて、前記ヒータHは、フッ素樹脂材によって被覆されたカートリッジヒータ39であることを特徴とするものである。
【0020】
請求項10に係る発明は、請求項1〜8の何れか一項に記載の流体用ヒータにおいて、前記ヒータHは、フッ素樹脂材によって被覆されたランプヒータ53であることを特徴とするものである。
【0021】
請求項11に係る発明は、請求項1〜8の何れか一項に記載の流体用ヒータにおいて、前記ヒータHは、フッ素樹脂材によって被覆されたヒータ線40を螺旋状に巻回して成るコイルヒータであることを特徴とする。
【0022】
請求項12に係る発明は、流体加熱装置において、請求項1〜11の何れか一項に記載の流体用ヒータAの複数を組合せて、それらいずれの流体用ヒータAにおいても流体が前記ケーシング1内部を通過自在となるように、各々の前記流体給排部30,31を連通接続して成ることを特徴とするものである。
【0023】
請求項13に係る発明は、請求項12に記載の流体加熱装置において、前記蓋部fを、これに前記ケース本体4の複数が着脱自在に取付けられるものに構成することにより、前記流体用ヒータAの複数を、それらいずれのケーシング1内部にも流体が通過自在となるように組合せて成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明によれば、ヒータが通されるケーシングが、チューブ材とその両端夫々に装備される着脱自在な蓋部から構成されるので、従来のようにタイロッドや通しボルト等の金属製締結部材及びOリングを用いることなく、部品点数を少なくして、安価で、かつ、コンパクトで耐圧性の高いケーシング構造、並びに信頼性の高いシール構造の流体用ヒータを得ることができる。そして、両端の夫々に蓋部を着脱自在に装備され、流体が流れる又は貯留する部分であるケース本体はチューブ材で構成されているから、チューブ材の長さを変更するだけの簡単な手段により、容量変更に容易に対応することが可能になる。例えば、400ccの容量を有するケーシングを600cc用に変更するには、長さが約2分の3倍のケース本体に付換えるだけで良く、容量変化や加熱温度変化に柔軟に対応できる便利な流体用ヒータを提供することができる。なお、ヒータとしては、請求項9のように、フッ素樹脂材によって被覆された棒状ヒータやスパイラル状ヒータ等の長尺状ヒータ、請求項10のように、フッ素樹脂材によって被覆されたランプヒータ、或いは石英管ヒータを用いることができる。
【0025】
請求項2の発明によれば、ユニオンナットを蓋本体の一端部に締め付けるだけの簡単な操作でケース本体の端部と蓋本体のシール面とを密着させるシール部を介して確実に密封することができる。従って、従来のようにタイロッドや通しボルト等の金属製締結部材及びOリングを用いることなく、部品点数を少なくして、安価で、かつ、コンパクトで耐圧性の高いケーシング構造及び信頼性の高いシール構造の流体用ヒータを得ることができる。
【0026】
流体用ヒータは、従来のケーシング接続構造のようにタイロッドや通しボルトを使用しない耐圧シール構造で、かつ、スリムなケーシング構造にすることができ、また単一のユニオンナットによる増締めによりシール性を均一に確保することが可能である。すなわち、ケース本体の両端部の蓋本体との接続部を単一のユニオンナットでシールするだけで、タイロッドや通しボルトに比べて信頼性の高いシール構造が得られ、しかもスリムなケーシングでもって流体用ヒータの小型化、コンパクト化を図ることができる。また、ユニオンナットの増締めによりシール性をその都度確保することが可能であって、ネジシールやOリングシールと比較しても長期にわたり信頼性の高いものとなる。さらに、単一のユニオンナットを増締めするという簡単な手段で足りるため、溶着による接続構造と異なり現場施工が容易であり、現場での保守・点検も容易に行える。
【0027】
流体に接する箇所(接液部)であるケース本体と蓋本体とには金属材やゴムOリングが使用されていないので、メタル溶出や金属摩耗粉発生の問題を解消できる。ユニオンナットの締め付けによればケース本体の端部の外側全周を均等に押圧することができるため、ケース本体や蓋本体の不慮の変形を招くようなことが無くなる。従って、これら部材のクリープや交換の問題を解消できる。ユニオンナットの締付けを緩めることによりケース本体の端部から蓋本体を簡単に取り外すことができるため、ケース本体内に滞留する滞留物がある場合には、その除去が容易に行える。
【0028】
また、この流体用ヒータは、ユニオンナットの締付けによるだけでケース本体に内圧が加わっても十分気密を保つことができて流体漏れを防止できるので、従来のようにOリングを使用しなくて済むとともに、請求項8のように、ケーシングの全ての構成部材をフッ素樹脂で成形することで、高温、腐蝕性の強い薬液にもよく対応でき、耐薬品性雰囲気への適用、設置が可能となり、流体用ヒータとしての用途範囲を拡大できる。
【0029】
請求項3の発明によれば、次のような作用効果が得られる。例えば、蓋本体の導出部を含むケーシングのほぼ全域に亘って発熱部が装備されている構造のヒータを用いると、ケーシングの内部のみならず蓋本体の導出部も加熱されることになり、無駄な発熱が生じて都合が悪い。これに対して、請求項3で規定される範囲に発熱部を配置する構成を採れば、ケーシングとヒータとで形成される加熱室(ケーシングの内部空間)における流体への有効な加熱作用を発揮しながら、蓋本体の導出部を無駄に加熱することが無く、合理的、経済的な流体用ヒータにできる利点がある。
【0030】
請求項4〜6の発明によれば、ユニオンナットの締め付けによってケース本体と蓋本体との間が良好にシールされる機能が、ケース本体の端部が拡張された状態で外嵌圧入されるインナーリングを用いることでより強化されるものとなり、長期に亘って液漏れの心配がなく信頼性に優れるケーシングを有する流体用ヒータの提供が可能となる。
【0031】
請求項7の発明によれば、ケース本体の各端部に取付けられる計二個の蓋部が互いに同じものであるから、蓋部としては1種類のパーツで済み、組付け時に組み間違いが発生しないとともに、部品管理上も有利になる等、コストや生産性に優れる流体用ヒータとして提供することができる。
【0032】
請求項11の発明によれば、ヒータ線を螺旋状に巻回して成るコイルヒータを用いているので、ケーシング内におけるヒータ線の長さを無理なく長くすることができて、加熱効率が向上する流体用ヒータを提供できる。また、請求項9及び10の発明でも同様であるが、ヒータ線がフッ素樹脂材で被覆されているから、流体が直接にヒータ線等に触れることが無いようにガードされて悪影響が殆ど及ばないようになり、ヒータとしての耐久性が向上可能となる利点もある。
【0033】
請求項12の発明によれば、複数の流体用ヒータを並列接続して大なる流量に対処したり、直列接続して加熱温度をより高くするといった使い方、或いは、流体配管系における複数の経路が集約されるターミナルとして用いるといった種々の用途が可能となり、より便利に用いることが可能となる流体加熱装置を提供することができる。
【0034】
請求項13の発明によれば、複数の流体用ヒータを接続するには、それら片側あたり一個の蓋部で、即ち、計二個の蓋部を用いれば足りるものとなり、請求項12の発明のものに比べて、構造の簡素化、部品点数の削減、小型化を可能としながら、請求項12の発明による前記作用効果が得られる合理化された流体加熱装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本発明による流体用ヒータ及び流体加熱装置の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1〜図5は実施例1による流体用ヒータやシール構造に関する各種の図であり、図6は実施例2による流体用ヒータの構造を示す図である。図7〜図13、及び図16〜図20は、実施例3〜10による流体用ヒータ、流体加熱装置、並びに接続構造を示す各種の図であり、図14,15は各種のヒータを示す参考図である。
【0036】
〔実施例1〕
実施例1による流体用ヒータAは、図1〜図3に示すように、ケーシング1を貫通してそのケーシング1の内部に通された棒状ヒータ(ヒータの一例)Hにより、ケーシング1の内部を通る流体が加熱自在に構成された縦型のものであり、例えば、半導体製造装置における洗浄用超純水の配管系統に縦向き姿勢で組み込まれて使用される(インラインヒータ)。つまり、流体用ヒータAは、チューブ材から成るケース本体4、及びこのケース本体4の両端部の夫々を塞ぐべくそれら端部毎に着脱自在に取付けられる蓋部fから成るケーシング1と、両蓋部f,fを貫通してケース本体4の内部に通される棒状ヒータHとを有するとともに、各蓋部fにはケース本体4の内部空間2に対する流体給排部30,31が形成されている。
【0037】
ケース本体4は、耐熱性、耐薬品性に優れるPFAやPTFE等のフッ素樹脂や導電性物質を含有する帯電防止フッ素樹脂等の合成樹脂製のチューブ材から成り、設定される内容量から求まる所定長さに切断して用いられる。このケース本体4の両端部には、それぞれ、同じくフッ素樹脂等の合成樹脂からなる蓋本体5が挿入され、フッ素樹脂等合成樹脂製のユニオンナット6の締め付けを介して接続される。つまり、蓋部fは、蓋本体5とユニオンナット6とを有して構成されている。
【0038】
実施例1においては、上下の蓋部f、即ち蓋本体5、ユニオンナット6、及びインナーリング15(後述)は互いに同じ部品である。これらの部品のうち、構造の複雑な蓋本体5について下側の蓋本体5で説明すると、胴壁部7と、この胴壁部7の上端(一端)に開放する受口部8、及び胴壁部7の下端(他端)を閉塞する底壁部9とを有する形に形成される。そして、図4に示すように、蓋本体5の受口部8の内部には、第1〜3のシール面10〜12が設けられる。第1のシール面10は、蓋本体5の受口部8の入口より内奥に、蓋本体5の軸線Cに対して交差状、つまり軸線C方向の外方に向けて漸次拡径するテーパ面により構成される。第2のシール面11は、受口部8の入口に、前記軸線Cに対して交差状、つまり軸線C方向の外方に向けて漸次拡径するテーパ面により構成される。第3のシール面12は、蓋本体5の受口部8の内奥において第1のシール面10よりも径方向外方に軸線Cと平行に形成された環状溝部13により構成される。蓋本体5の受口部8の外周には雄ねじ14が形成されている。
【0039】
一方、ケース本体4の一端部及び他端部にはそれぞれフッ素樹脂等合成樹脂製のインナーリング15を圧入状態で内嵌する。このインナーリング15は、図4に示すように、ケース本体4の端部に圧入されて該端部を断面山形状に拡径膨出させる断面算盤玉形状の圧入部16と、この圧入部16に連設されてケース本体4の端部に突出する突出部17とを有するスリーブ形状に形成されている。断面山形状の圧入部16はこれの一斜面部に外向きテーパ面18を、他斜面部に第2のシール面11との間でケース本体4の端部を傾斜状態に挟持して第2のシール部21を形成する内向きテーパ面20をそれぞれ形成している。突出部17の先端には第1のシール面10に密着状に当接して第1のシール部19を形成するテーパ面からなる突出端面22、及び環状溝部13に嵌入して第3のシール部23を形成する円筒部24を形成してなる。このインナーリング15の内径はケース本体4の内径と同一か略同一に設定して、流体が滞留することなく円滑に流動するようにしている。
【0040】
ユニオンナット6は、図4に示すように、その内周に蓋本体5の雄ねじ14に螺合自在な雌ねじ25が形成され、かつ、一端部に環状鍔部26が内向きに張り出されているともに、該環状鍔部26の内周面の軸方向内端に鋭角、又は直角の押圧エッジ部26aが設けられて構成されている。
【0041】
そして、インナーリング15の圧入されたケース本体4の端部を蓋本体5の受口部8に挿入し、ケース本体4の端部の外周に予め遊嵌させてあるユニオンナット6の雌ねじ25を、蓋本体5の雄ねじ14に螺合させて締め付ける。この締付けに伴いユニオンナット6の押圧エッジ部26aがケース本体4の拡径部27の拡径付け根部に当接してインナーリング15を軸方向から押圧することになる。これにより、図4に示すように、インナーリング15の突出端面22が蓋本体5の第1のシール面10に対し押し付けられて第1のシール部19を形成するとともに、インナーリング15の内向きテーパ面20と蓋本体5の第2のシール面11との間でケース本体4の端部を傾斜状態に挟持して第2のシール部21を形成する。さらに、インナーリング15の円筒部24が環状溝部13に圧入されて第3のシール部23を形成するようになる。これら第1〜3のシール部19,21,23(いずれも=S)により、信頼性の高いシール機能を発揮することができる。液圧に対しては、7kg/cm2 程度の耐圧があり、通常の液供給ライン(4kg/cm2 )からの液に対して十分な耐圧性がある。
【0042】
図3に示すように、ケース本体4の下側の蓋部fの蓋本体5には、流体用ヒータHの加熱対象となる流体の導入用配管28aが接続される導入側接続部29aが、上側の蓋部fの蓋本体5には、流体用ヒータHによって加熱された流体の導出用配管28bが接続される導出側接続部29bがそれぞれ装備される。すなわち、他の配管が接続される箇所である接続部29a,29bは、下側の蓋本体5の胴壁部7に流体供給側の流体給排部(インレットポート)30が、上側の蓋本体5の胴壁部7に流体排出側の流体給排部(アウトレットポート)31がそれぞれ形成されている。供給側の流体給排部30には、加熱対象となる流体の導入用配管28aの端部が、排出側の流体給排部31には、被加熱流体の導出用配管28bの端部が、それぞれフッ素樹脂等の合成樹脂製のユニオンナット32、フッ素樹脂等の合成樹脂製のインナーリング33を介して接続されて、加熱対象流体が供給側の流体給排部30、ケース本体4内の加熱室(ケーシング1の内部における棒状ヒータHの外部となる流路部分の一例)2、排出側の流体給排部31の順に流通すべく構成されている。
【0043】
供給側の流体給排部30及び排出側の流体給排部31の各内部構造は蓋本体5の受口8の内部構造と同一に構成し(但し、径は異なる)、また流体の導入用配管28a及び導出用配管28bの各端部には、ケース本体4の端部のインナーリング15と同様の断面形状のインナーリング33を圧入してあって、供給側の流体給排部30及び排出側の流体給排部31に対する導入用配管28a及び導出用配管28bの各端部の接続構造は、ケース本体4の端部の蓋本体5の受口8に対する接続構造と同様であるため、その詳細な説明は省略する。ただし、この供給側の流体給排部30及び排出側の流体給排部31に対する流体の導入用配管28a及び導出用配管28bの各端部の接続構造としては、そのほかに、供給側の流体給排部30及び排出側の流体給排部31に対し流体の導入用配管28a及び導出用配管28bの各端部を直接溶着したり、ねじ接続したりする等の手段を採用することもできる。つまり、他の配管との接続部29a,29bは溶着、ねじ接続等の接続手段でも良い。
【0044】
次に、ケーシング1の内部に配されるヒータHについて説明する。この例では、上下の蓋本体5,5を貫通して装備される棒状ヒータHは、フッ素樹脂材によって被覆されたカートリッジヒータを使用している。即ち、図1〜図3に示すように、カートリッジヒータ39は、外周がステンレス等の金属材で覆われた発熱部40と一対のリード線r,rとを備えた公知の市販品であり、図示しないが発熱部40の内部にはニクロム線や誘導コイル等の熱源が収容されている。そして、リード線r部分を含めて発熱部40にはフッ素樹脂製のチューブ材を適宜の長さに切断して成る外装チューブ51が圧入状態で外嵌装備(被覆)してあり、それによってケーシング1内部における棒状ヒータHの接液部(流体が接する箇所)はフッ素樹脂のみの状態となるように構成してある。
【0045】
上述のフッ素樹脂コーティングされたカートリッジヒータで成る棒状ヒータHは、その両端部が上下の蓋本体5の底壁部9から突出する導出部(「ヒータの導出部」の一例)34に形成された取出口34aから外部に取出されており、いわゆる両端貫通状態でケーシング1に配備されている。蓋本体5における棒状ヒータHの導出部34には、フッ素樹脂等の合成樹脂製のユニオンナット35を外嵌して、このユニオンナット35を、締付けリング(フェルール)36を介して導出部34に螺着させて締付けるヒータ接続部HSにより、棒状ヒータHの外装チューブ51と導出部34との間の隙間を密封してある。また、カートリッジヒータに石英管を外嵌し、その石英管にフッ素樹脂製のチューブ材を外嵌して被覆する構造でも良い。
【0046】
ヒータ接続部HSは、図3に示すように、円筒形状に形成された導出部34の取出口34aに棒状ヒータHを差込んで外装チューブ51の端部が導出部34から僅かに外部に露出する状態としてから、導出部34と外装チューブ51の外周面上に挿嵌したユニオンナット35とを螺合して、導出部34と外装チューブ51の外周面上に挿嵌した締付けリング36との対向面を圧接する方向に締付け、導出部34と外装チューブ51の端部とを気密状態に連通接続する。なお、外装チューブ51の両端部内には、詰め物52を充填しても良い。詰め物52は、比較的硬度があって断熱性も有する材料のものが望ましい。また、ヒータHは、円筒棒状のシーズヒータに厚さ0.3〜1.2mmのフッ素樹脂やPEEKのライニングで完全密着されたものでも良い。
【0047】
なお、上述のヒータ接続部HSを構成する各要素34,35,36は、強酸や強アルカリ等の薬液を輸送するために耐薬品性、耐熱性、耐圧性に優れた樹脂材で構成され、例えば、PTFE又はPFA等の合成樹脂で導出部34と締付けリング36とを夫々形成し、PFA又はPP等の合成樹脂で締付けユニオンナット35を形成している。
【0048】
ユニオンナット35の内側周面には、導出部34の外周に形成された雌ネジ部34nに螺合自在な雌ネジ部35nが形成されているとともに、中心部には棒状ヒータHの最大径を有する外装チューブ51の外径寸法よりも僅かに大きい内径を持つ挿通孔35bが形成されている。そして、挿通孔35bの内側周縁部には、締付けリング36の下端面と当接する段部35cが形成されている。
【0049】
締付けリング36は、その中心部に棒状ヒータHの外径寸法よりも若干小径の挿通孔36aを形成し、その一側端面に棒状ヒータHを差込む方向に向けて小径となる円錐形のテーパ面36bを形成してある。そして、テーパ面36bは、導出部34に形成されたテーパ面34bと合致する形状寸法に形成されている。
【0050】
棒状ヒータHがケーシング1に挿通された組付け状態においては、図1、図3に示すように、発熱部40が上下の底壁部9,9の間の範囲内に収まるよう、外装チューブ51を長めに形成してあるのが望ましい。つまり、棒状ヒータHにおける発熱部40は、流路部分である加熱室2を形成するケーシング1の内部(蓋本体5の導出部34に挿通される部分よりもケース本体4内部側)にのみ配されている。このフッ素樹脂管を持つフッ素管ヒータを用いれば、流体用ヒータAにおける流体と接する箇所、即ち接液部は全てフッ素樹脂となり、不純物の析出が全く起きないクリーンなものにできるという利点がある。また、次に記すような作用効果もある。
【0051】
例えば、図示は省略するが、外装チューブ51のほぼ全域に亘って発熱部40が装備されている構造の棒状ヒータを用いると、ケーシング1の内部2のみならずヒータ接続部HSも加熱されることになり、フッ素樹脂製の導出部34やユニオンナット35が熱で変形するおそれがある等、無駄な発熱が生じて都合が悪い。これに対して、上述のような範囲に発熱部40を配置する構成を採れば、ケーシング1と棒状ヒータHとで形成される加熱室2における流体への有効な加熱作用を発揮しながら、ヒータ接続部HSを無駄に加熱することが無く、合理的、経済的な流体用ヒータAにできる利点がある。一方、発熱部40が加熱室2内に収まらない場合でも、例えばヒータHの表面温度をモニタするセンサ(例:サーモスタット)を設けて、一定以上の温度上昇が生じないようにすることも可能である。以上のように構成された流体用ヒータAは、ケーシング1の内部2を通過する流体、例えば半導体製造装置等に用いられる洗浄用の超純水や薬液等を、その流れ移動を妨げることなく棒状ヒータHで加熱することができる。尚、蓋本体5は、PFAやPTFE等のフッ素樹脂でも良いし、石英であっても良い。
【0052】
〔シール部の他の実施例〕
ケース本体4の端部と蓋本体5の受口部8との間に形成されるシール部としては、図4に示す構造のように第1,2のシール部19,21のほかに、インナーリング15の円筒部24と蓋本体5の環状溝部13とによる第3のシール部23を付加することで、シール性能をより一層確実に向上させることができるが、必ずしもその構成に限定されるものではない。
【0053】
その他に、例えば、図5に示すように、第1,2のシール部19,21(S)だけを形成して、第3のシール部23(S)を省略するもの、すなわち蓋本体5の内奥に環状溝部13を設けず、またインナーリング15に円筒部24を設けないものであってもよい。この場合、蓋本体5の内奥に設ける第1のシール面10は、軸線Cに対して第2のシール面11とは逆向きの交差状、つまり軸線C方向の外方に向けて漸次縮径するテーパ面により構成している。このテーパ面どうしがユニオンナット6の螺進によって圧接されれば、そこが第3のシール部になり得る。この場合でも、蓋本体5は、PFAやPTFE等のフッ素樹脂でも良いし、石英であっても良い。
【0054】
〔実施例2〕
実施例2による流体用ヒータAは、図1〜図3等に示す実施例1のものの棒状ヒータHが、ランプヒータによって構成されるものに代わる以外は同じである。即ち、図6に示すように、棒状ヒータHは、フッ素樹脂材によって被覆されたランプヒータ53であり、実施例1による流体用ヒータHのカートリッジヒータ39がランプヒータ53に置き換えられたものである。ランプヒータ53は、図6に示すように、例えば、ガラス管54内にタングステン製フィラメント55が収容されハロゲンランプで構成されており、ガラス管54の両端に1本ずつ取り出されるリード線rを含めて石英管56に挿入され、その石英管56が接着剤等による密着層57を介してフッ素樹脂製のチューブ材51内に挿入されることで棒状ヒータHに構成されている。つまり、ランプヒータ53は、三層から成るカバー管部58によって被覆されている。尚、収縮フッ素樹脂チューブを用いれば、密着層57を省略することが可能である。
【0055】
この場合は、ランプヒータ53が発熱部39に相当し、実施例1の流体用ヒータと同様に、発熱部39は、流路部分2を形成するケーシング1の内部にのみ配されており、導出部34には及ばない構成となっている。三層構造のカバー管部58には十分な強度、剛性があるので、ヒータ接続部HSを構成する導出部34において締付けられる端部には、図3に示すような詰め物52を設けなくても良いものとなっている。
【0056】
〔実施例3〕
実施例3による流体用ヒータAは、棒状ヒータHとして石英管ヒータを用いたものであり、それ以外は実施例1による流体用ヒータAと同じである。即ち、実施例3による流体用ヒータAにおいては、図7、図8に示すように、ケース本体4の内部には、石英管3を用いた棒状ヒータ(石英管ヒータ)Hが通されており、この棒状ヒータHの両端部は、上下の蓋本体5の底壁部9から突出する導出部34に形成された取出口34aから外部に取出されており、いわゆる両端貫通状態で配備されている。蓋本体5における棒状ヒータHの導出部34には、フッ素樹脂等の合成樹脂製のユニオンナット35を外嵌して、このユニオンナット35を、フェルール36と抜止めリング37とを介して導出部34に螺着させて締め付ける石英管接続部SSにより、棒状ヒータHの石英管3と導出部34との間の隙間を密封してある。
【0057】
石英管接続部SSは、図8に示すように、円筒形状に形成された導出部34の取出口34aに棒状ヒータHを差込んで石英管3の端部が導出部34から僅かに外部に露出する状態としてから、導出部34と石英管3の外周面上に挿嵌したユニオンナット35とを螺合して、導出部34と石英管3の外周溝3mに嵌着された抜止めリング5と石英管3の外周面上に挿嵌した締付けリング6との対向面を圧接する方向に締付け、導出部34と石英管3の端部とを気密状態に連通接続する。導出部34の外周には、ユニオンナット35の内周に形成された雌ネジ部35nに螺合自在な雄ネジ部34nが形成されている。
【0058】
なお、上述の石英管接続部SSを構成する各要素34,35,36,37は、例えば、強酸や強アルカリ等の薬液を輸送するために耐薬品性、耐熱性、耐圧性に優れた樹脂材で構成され、PTFE又はPFA等の合成樹脂で導出部34と締付けリング36とを夫々形成し、PFA又はPP等の合成樹脂で締付けユニオンナット35と、抜止めリング37とを夫々形成している。
【0059】
ユニオンナット35の内側周面には、導出部34の外周に形成された雌ネジ部34nに螺合自在な雌ネジ部35nが形成されているとともに、中心部には棒状ヒータHの最大径を有する金属カバー38の外径寸法よりも僅かに大きい内径を持つ挿通孔35bが形成されている。そして、挿通孔35bの内側周縁部には、抜止めリング37の下端面と当接する段部35cが形成されている。
【0060】
抜止めリング37には、石英管3の外周面上に刻設した周溝3mに合致する形状寸法の中心孔37aと、一端側を径方向に切断する分割溝37bと、他端側の外周部を部分的に切り欠いて成る連結部37cとが形成されている。この形状構成は、抜止めリング37を石英管3を通過させてから周溝3mに嵌装するための工夫であり、連結部37cを材料弾性に抗して若干撓ませ、石英管3の外径寸法よりも若干大径となるように中心孔37aを径方向に拡径変形させることで可能となる。
【0061】
締付けリング36は、同締付けリング36の中心部に石英管3の外径寸法よりも若干小径の挿通孔36aに形成し、同締付けリング36の一側端面に石英管3を差込む方向に向けて小径となる円錐形のテーパ面36bを形成し、同テーパ面36bを導出部34に形成されたテーパ面34bと合致する形状寸法に形成してある。
【0062】
石英管ヒータHは、図7,11及び図14に示すように、ニクロム線や誘導コイル等で成る発熱部(発熱体)40を内装する筒状の石英管3と、その両端部を覆う一対の金属カバー38と、金属カバー38から突設される導通端子(図示省略)を覆う硝子カバー41とを有して構成されている。各硝子カバー41からは、導通端子に導通接続される導線rが取出される。棒状ヒータHがケーシング1に挿通された組付け状態においては、発熱部40が上下の底壁部9,9の間の範囲内に収まるよう、電極棒40a等を用いて石英管3の端部から中央よりに離れて位置させてある。つまり、棒状ヒータHの発熱部40は、蓋本体5の導出部34に挿通される部分よりもケース本体4内部側に形成されている。
【0063】
例えば、図示は省略するが、石英管3のほぼ全域に亘って発熱体40が装備されている構造の棒状ヒータを用いると、ケーシング1の内部2のみならず石英管接続部SSも加熱されることになり、無駄な発熱が生じて都合が悪い。これに対して、上述のような範囲に発熱部40を配置する構成を採れば、ケーシング1と石英管3とで形成される加熱室2における流体への有効な加熱作用を発揮しながら、石英管接続部SSを無駄に加熱することが無く、合理的、経済的な流体用ヒータAにできる利点がある。
【0064】
〔実施例4〕
実施例4による流体用ヒータAは、図9に示すように、棒状ヒータHが下側の蓋部fの蓋本体5のみを貫通し、上側の蓋部fの蓋本体5はフッ素樹脂チューブ59の上端部を嵌合支持する片貫通構造のものである。実施例1による流体用ヒータAとの違いは、上側の蓋本体5にはヒータ接続部HSが無く、代わりに嵌合凹部5Aが形成されるとともに、棒状ヒータHとしては、図15に示すように、リード線rの取り出し側にのみ詰め物52が装備された状態の、外装チューブ51で被覆されたカートリッジヒータHを用いている点である。嵌合凹部5Aは、流体が滞らないように、棒状ヒータHの外径よりも大きな内径を有しており、箇所横側方に突出した複数の支持突起5aによって位置決めされる構成とするのが望ましい。
【0065】
図15に示す棒状ヒータHは、カートリッジヒータ39を先端が閉塞された筒状でフッ素樹脂製のチューブ59で被覆して成るものであり、カートリッジヒータ39自体は図1〜図3に示す実施例1のものと同じである。フッ素樹脂チューブ59の閉塞側端部59A側においては、カートリッジヒータ39を端からやや離れて存在する設定としてあり、やはり発熱部40が、流路部分2を形成するケーシング1の内部にのみ配される構成となっている。棒状ヒータHのケーシング1への組付け状態では、フッ素樹脂チューブ59先端の閉塞側端部59Aが上側の蓋本体5の嵌合凹部5Aに嵌入されており、ケーシング1の径方向には動かないように位置決めされる構造となっている。それ以外の構造は、基本的には実施例1による流体用ヒータAと同じである。この場合は、上下の蓋本体5,5、即ち蓋部f,fは互いに異なる部品となる。
【0066】
この片貫通構造の流体用ヒータAにおいては、上側の蓋本体5には棒状ヒータHが貫通しないので、そこからの流体漏洩のおそれが皆無になるとともに、上方には棒状ヒータHが出っ張らず、その分のコンパクト化が可能になる。また、リード線r,rが下側に集約されるので、電気配線の取り回しがシンプル化される利点もある。なお、この片端子型の棒状ヒータHを上側の蓋本体5にのみ貫通させて倒立姿勢でケーシング1に装備させる、という使い方も可能である。
【0067】
〔実施例5〕
実施例5による流体用ヒータAは、実施例4と同様な片側貫通型のものであるが、棒状ヒータH、及び下側の蓋本体5の導出部34におけるシール構造は異なるものとなっている。即ち、図10に示すように、下側の蓋部fにおけるヒータ接続部HSは、ユニオンナット35を導出部34に外嵌螺合させることで棒状ヒータHをシール状態で下蓋本体5に支持する基本構造は同じであるが、シール構造は大きく異なる。まず、棒状ヒータHの先端部61については、フッ素樹脂製の外装チューブ51の先端内に同じくフッ素樹脂製の円ブロック62を詰めて(圧入内嵌して)融着一体化することで閉塞する構成とされている。そして、棒状ヒータHの長さは、前記先端部61が上側の蓋本体5の底壁部9からは明確に離れて位置する状態に設定されている。
【0068】
そして、下蓋本体5のシール構造は、図10、図11に示すように、導出部34は、外周部に雄ネジ部34nが形成された環状の外筒部34Aと、この外筒部34Aより明確に小さい環状突起である環状の内筒部34Bと、軸線Cに対する径方向でこれら外筒部34Aと内筒部34Bとの間に形成される環状溝34Cとから形成されている。外筒部34Aの内周側における先端部には漸次拡径するテーパ状の入口シール部63が形成され、内筒部34Bの内周側における先端部にも漸次拡径するテーパ状の内奥シール部64が形成されている。
【0069】
カートリッジヒータ39に外嵌装着されるフッ素樹脂製の外装チューブ51の下端部には、導出部34と嵌合してシール部T1〜T3を形成するための環状シール部65が一体的に装備されている。環状シール部65は、入口シール部63に当接するテーパ面66aが上端側に形成された膨出部66と、導出部34の環状溝34Cに嵌り込むよう、テーパ面66aに連続して形成される環状突起68、及び内筒部34Bが嵌り込み自在な第二の環状溝69を有した嵌合凸部67とを有するPFA等のフッ素樹脂製(外装チューブ51と同じ材料が望ましい)のものに構成されている。
【0070】
環状シール部65は、上端側ほど小径となるテーパ状の内周面65aを有しており、外装チューブ51の外周部に圧入し、かつ、融着されており、それによって外装チューブ51との間がシールされる状態で、特に、環状シール部65の上端部がより確実にシールされる状態で一体化されている。嵌合凸部67には、環状溝69を設けるための上端内筒部70が形成されており、この上端内筒部70の内周に相当する内周面65a上端部が、外装チューブ51に最もきつく外嵌される構成となっている。また、その上端内筒部70の存在により、組付け状態においては、外装チューブ51の外周面と導出部34の内周面との間には径方向に明確な隙間kが形成されるようにしてある。
【0071】
ユニオンナット35の内向き鍔部35Tは、膨出部66の外径端部66cを下方から押上げるためのものであり、その内径部35tは、内周の雌ねじ部35nを導出部34の雄ね時部34nに螺合させての締付け状態では、環状シール部65の膨出部66の段差外周部66bと殆ど隙間なく(極僅かな隙間を伴って)嵌合する状態に設定されている。尚、優れたシール状態を得るには、環状突起68の径方向厚みを環状溝34Cの径方向間隔よりもある程度大きい値として、圧入状態で嵌合する構造が望ましい。
【0072】
以上のような構造により、ユニオンナット35を導出部34に螺合させて、環状シール部65を(棒状ヒータHを)押上げて導出部34に嵌合させた組付け状態では、入口シール部63とテーパ面66aとが強く当接されて第1のシール部T1が形成されるとともに、環状突起68が環状溝34Cに嵌り込んで強く圧接され、内外周の二箇所に第2のシール部T2を形成する。この場合、環状溝34Cは環状突起68の突出量よりも深いので、これら両者34C、68は上下方向には当接せず、代わりに内筒部34Bと第二の環状溝69とが嵌合し、これらのテーパ面どうしが当接して第3のシール部T3を形成する。つまり、これら第1〜第3の三箇所のシール部T1〜T3の存在により、導出部34と環状シール部65とが、即ち蓋本体5と棒状ヒータHの外装チューブ51とが完全なまでにシールされる状態を得ることができる。
【0073】
従って、ケーシング1内に取込まれて加熱対象となる流体が、例えば、毒性を有する薬液であるとか、強透過性薬液等の漏れると困るものであっても、棒状ヒータHの支持部である導出部34からの漏洩も無く、信頼性及び耐久性に優れる流体用ヒータAとして提供することができている。また、外装チューブ51と導出部34とには明確な隙間kがあるので、薬液等の流体が滞ってしまうおそれが無く、クリーンな状態に保てるとともに、棒状ヒータAに強い曲げ力が作用した場合には、近接配置されている内向き鍔部35Tの内径部35tと膨出部66の段差外周部66bとが当接して支えあう作用が生じて、実質的に導出部34と外装チューブ51との嵌合長が増大し、安定支持できる作用が期待できる利点もある。さらに、ユニオンナット35を緩めて外すことにより、面倒な蓋部fの分解を伴うことなく棒状ヒータHを簡単に取り出すことができるので、棒状ヒータHの故障や仕様変更にも容易に対応できる便利さ、即ち良好なメンテナンス性も備えている。
【0074】
次に、この実施例5による流体用ヒータHにおける上記ヒータ接続部HSの変形例を、図面は省略するが幾つか述べる。その1は、環状シール部65の内周面65aがテーパ面ではなく、一定径のものとされた状態で外装チューブ51に外嵌圧入され、かつ、融着一体化された構成を持つヒータHを用いた構造であり、この構造を有する流体用ヒータでも良い。その2は、削り出しや成形により、予め環状シール部65と外装チューブ51とが一体のものとして形成されたヒータHを用いる構造であり、この構造を有する流体用ヒータでも良い。その3は、環状シール部65を用いずに外装チューブ51をそのまま導出部34に圧入内嵌し(図3参考)、導出部34の下端部において外装チューブ51と導出部34とを溶着一体化した構造であり、この構造を有する流体用ヒータでも良い。その1及びその2の流体用ヒータでは、ユニオンナット35の操作により、ヒータHが簡単に着脱できる良好なメンテナンス性を有しており、その3の流体用ヒータでは、導出部34を完全にシールすることができ、かつ、最も廉価に構成できるという利点がある。
【0075】
〔実施例6〕
実施例6は、上述した流体用ヒータAの複数を並列に接続して成る流体加熱装置Bである。すなわち、実施例5による流体加熱装置Bは、図12に示すように、実施例1の流体用ヒータAにおける一方の蓋部fの蓋本体5として、流体給排部30(又は31)が二箇所形成されているものを2個用いて並列に接続して成るものである。図12において左側に描かれた流体用ヒータAは、下側の蓋本体5に流体給排部30が2箇所形成されたものであり、右側に描かれた流体用ヒータAは、上側の蓋本体5に流体給排部31が2箇所形成されたものである。
【0076】
左側で下側の蓋本体5の右側の流体給排部30と、右側で下側の蓋本体5の流体給排部30とが接続部Rによって連通接続され、左側で下側の蓋本体5の左側の流体給排部30が、加熱対象となる流体の入口IN(入口集合部)の役割を担うとともに、左側で上側の蓋本体5の流体給排部31と、右側で上側の蓋本体5の左側の流体給排部31とが接続部Rによって連通接続され、右側で上側の蓋本体5の右側の流体給排部31が、加熱された流体の出口OUT(出口集合部)の役割を担う構成とされている。接続部Rとしては、例えば図12に示すように、一対のユニオンナット32,32とフッ素樹脂等の合成樹脂製の中継チューブ60等からなる管継手構造のものを採ることができるが、これには限定されない。例えば、蓋本体から配管部を突出形成しておき、その配管部の端部どうしを突き合わせて融着させることで蓋本体どうしを一体的に接続することもできる。
【0077】
導入用配管28aから入口INに供給されてきた流体は、供給側の各流体給排部30や左右の下蓋本体5の内部を通って二箇所の加熱室(流路部分)2,2の下端部内に分かれて取込まれ、各ケーシング1内において各棒状ヒータHによって加熱されながら上昇移動する。そして、各流体用ヒータA,Aにおいて加熱されて各上側蓋本体5部分に上昇移動した流体は、排出側の各流体給排部31や上側の蓋本体5内を通って出口OUTから導出用配管28bに取出されて行くのである。この流体用ヒータの並列接続による流体加熱装置Bは、大流量の流体を加熱昇温させるに好適な装置であり、その規模は流体用ヒータA,Aの接続個数により、簡単に選択設定することができる便利なものである。
【0078】
例えば3個以上の流体用ヒータAを並列接続するには、二箇所の流体給排部30(又は31)を有する蓋本体5が上下に備えられた流体用ヒータを新たに用いることで実施することができる。このように並列接続した流体加熱装置によれば、装置内に貯留した流体を一定温度まで加熱した後に送り出し供給することができるので、貯留タンク等の液槽を設ける必要がなく、コンパクトかつ低コストとなる。また、流量は少ないが加熱温度を高くする場合等には、複数の流体用ヒータAを直列接続して成る流体加熱装置Bが好適であり、さらには、並列接続と直列接続とを組み合わせることも可能である。
【0079】
〔実施例7〕
実施例7は、フッ素樹脂材によって被覆されたヒータ線を螺旋状に巻回して成るコイルヒータHを用いて成る流体用ヒータAである。即ち、図16に示すように、実施例7によるコイルヒータHは、発熱体であるヒータ線40がPFA等のフッ素樹脂チューブ71に挿入されて成るヒータ要素72を、螺旋状に巻回して構成されており、各蓋部fのヒータ要素接続部YSを通って外部に取り出されている。両端のリード線r,rには、図示しない電力供給用の制御装置が接続される。尚、ヒータ要素接続部YSは、図3等に示すヒータ接続部HSと同じ構造である。
【0080】
但し、ヒータ要素72は、図16における部分的に拡大した図のように、底壁部9に至る手前(ケーシング1の内部側)の位置におけるフッ素樹脂チューブ71内において、ヒータ線40にリード線rを導通接続(ハンダ付け、カシメその他による)する接続部73を設けてあり、ヒータ要素接続部YS、即ち、導出部34へのヒータ線40からの熱伝導が回避されるようにしてある。前記接続部73は各蓋部f毎に形成されている。このコイルヒータHの採用により、ケーシング1内におけるヒータ線40の長さを大幅に長くすることができるので、より高温に加熱したり、加熱効率を向上できる利点が得られる。
【0081】
〔実施例8〕
実施例8は、フッ素樹脂材によって被覆されたヒータ線を二重巻き螺旋に形成して成るコイルヒータHを用いた流体用ヒータAであり、図16に示す螺旋状ヒータ要素の内側に小径の螺旋状ヒータ要素が配置されたような構成である。即ち、図17に示すように、実施例8によるコイルヒータHは、ヒータ線40がPFA等のフッ素樹脂チューブ71に挿入されて成るヒータ要素72を、外側螺旋部74と内側螺旋部75とを有する二重巻き螺旋形状に形成して成る。
【0082】
外側螺旋部74の終端側が内側螺旋部75の始端側に連続する折返し部76の反対側においては、内側螺旋部75の終端部のヒータ要素72が折り返されており、内側螺旋部75の内側中心を貫いて折返し部76を通り抜ける直線部77に形成されるとともに、一方の蓋部fのヒータ要素接続部YSを通って外部に取り出されている。また、外側螺旋部74の始端側は他方の蓋部fのヒータ要素接続部YSを通って外部に取り出される。この実施例8においても、コイルヒータHの両端部には、導出部34へのヒータ線40からの熱伝導を回避するための接続部73(図16に示すものと同構造)が設けられている。この二重巻きコイルヒータHの採用により、ケーシング1内におけるヒータ線40の長さをより一層大幅に長くすることができるので、より一層高温に加熱したり、より加熱効率を向上できる利点が得られる。
【0083】
〔実施例9〕
実施例9は、フッ素樹脂材によって被覆されたヒータ線を螺旋状に巻回して成るコイルヒータHの中にパージガスを通すようにしたコイルヒータHを用いて成る流体用ヒータAである。即ち、図18に示すように、ヒータ線40がPFA等のフッ素樹脂チューブ71に挿入されて成るヒータ要素72を、ケーシング1内において螺旋状に巻回して構成されており、各蓋部fのヒータ要素接続部YSを通って外部に取り出されている。ヒータ要素72は、フッ素樹脂チューブ71内においてヒータ線40を螺旋状に巻回して構成されており、その両端部に蓋部fと同様の構成を適用することにより、フッ素樹脂チューブ71にパージ用の排気ガスを通す構成が採用されている。
【0084】
図18と、図18のN部分を拡大した図19とに示すように、ヒータ線40の螺旋巻きにより、フッ素樹脂チューブ71内には明確な通路空間が形成されており、その通路空間に窒素ガス等の不活性ガスを通して、そのフッ素樹脂チューブ71の内部をパージする手段が採られており、その一例について以下に説明する。実施例9による流体用ヒータAは、半導体製造装置の基板処理装置における強透過性薬液の加熱装置として用いられるものであり、図18に示すように、導入用配管28aには、ポンプ90及び供給管90aを介して薬液貯留タンク91が接続され、導出用配管28bから出た加熱後の薬液は、開閉弁92及び導出管92aを介して処理チャンバ93内の被処理基板94へと供給されるようになっている。
【0085】
また、フッ素樹脂チューブ71の一方の端部には、一方の第2蓋部f2の導入側接続部129a及びガス供給路128aを介してパージ用の排気ガス供給手段95が接続され、他方の端部には、他方の第2蓋部f2の導入側接続部129a及びガス排出路128bを介して排気手段96が接続される。尚、この第2蓋部f2の構成部品は、図3等に示す蓋部fの構成部品に付した番号(符号)に百を上乗せした番号を付す(例:蓋本体5→105)ものとし、図3等に示す蓋部fと同じ機能部分の説明は基本的に割愛するものとする。
【0086】
ヒータ要素72の各端部には、ケーシング1の蓋部fと全く同様の構成を有する第2蓋部f2が装備されており、それら第2蓋部f2の構造を、図19を用いて一方のもので間単に説明する。即ち、フッ素樹脂チューブ71の端部は、蓋本体105の受け口部108に、インナーリング115を伴って内嵌されてユニオンナット106で締付け装着されており、ヒータ線40は、ヒータ要素接続部YSと同構造を有するヒータ線接続部CSを介して外部に取り出される。そして、フッ素樹脂チューブ71の内部空間71Sは、蓋本体105に形成された流体給排部130を有する導入側接続部129aを介して前述の排気ガス供給手段95に接続されている。
【0087】
薬液貯留タンク91からケーシング1の内部空間2に供給される強透過性薬液としては、高濃度(約50%以上の濃度)のフッ化水素水や高濃度(約70%以上の濃度)硝酸水が挙げられる。また、排気ガス供給手段95からケーシング1の内部空間2に供給されるパージ用の排気ガスは、窒素ガス等の不活性ガス、或いは浄化された空気が挙げられる。排気手段96は、排気ガス供給手段95として、浄化された空気を吸うべく導入用配管128aをクリーンルーム等に接続する構成を採る場合には、排気ブロワや換気扇、エジェクタ等から構成され、排気ガス供給手段95が送風機等の駆動送風手段を伴っていて排気ガス圧が十分ある場合には、単なる排気管で構成することも可能である。
【0088】
また、ヒータ線40の両端には制御装置97から電力供給用の配線98,98が接続されるとともに、フッ素樹脂チューブ71の第2蓋部f2から出た後の箇所(直後が望ましい)に配された温度計等の温度検出手段99の検出情報が信号線99aを介して制御装置97に入力される構成となっている。これにより、コイルヒータHによる加熱後の薬液温度が設定値に維持されるフィードバック制御が可能となっている。
【0089】
このように、流体用ヒータAを薬液加熱装置として用いた場合には次のような作用効果がある。高濃度のフッ化水素水等の強透過性薬液は、液状での浸透性が強いとともに、ガス状態において極めて強い浸透性を示す。そのため、ヒータ線40を被覆するチューブ71が耐薬品性に富むフッ素樹脂製のものであっても、そのフッ素樹脂チューブ71を強透過性薬液がガス状態で内から外に透過する可能性がある。即ち、透過ガスとなった強透過性薬液が金属製のヒータ線40の表面において再液化すると、ヒータ線40が腐食されて、短期間で破損に至るという問題がある。このような強透過性薬液は、高温(たとえば、50℃以上)になるほど浸透性が強くなるため、強透過性薬液を高温に加熱して用いる場合には、前述の問題点がより顕著になる。
【0090】
しかしながら、図18,19に示すような付属設備を伴う構成の流体用ヒータAとすれば、コイルヒータHを内部に有する状態に設けられたケーシング1の内部空間2には、排気ガス供給手段95から浄化空気や不活性ガス等が供給されるとともに、排気手段96によって排出されることによる掃気作用が生じるので、フッ素樹脂チューブ71をその外部(内部空間2)を通る強透過性薬液のガス(透過ガス)が通過して発熱手段であるヒータ線40に至ったとしても、この透過ガスは、排気ガス供給手段95から導入される新鮮なガスによって置換されるようになる。従って、透過ガスがヒータ線40の表面で再液化することを防止できることとなり、再液化した強透過性薬液によってヒータ線40が侵されることを防止できる。その結果、コイルヒータHとしての破損を防ぐことができるので、強透過性薬液に対する耐久性に優れ、耐久寿命の長い強透過性薬液用の流体用ヒータAとして提供することができる。
【0091】
尚、図18に仮想線で示すように、本実施例9においても、ヒータ線40をケーシング1の内部空間2において完結させてリード線rに導通接続する接続部73(図16や図17の拡大図参照)を設けた構成とすることが、ヒータ要素接続部YS、即ち導出部34の過熱を防止する点で望ましい。この場合、図示は省略するが、第2蓋部f2内には、コイル状のヒータ線40に代って直線状のリード線rが配設され、そのリード線rがヒータ線接続部CSを通って外部に取り出されるようになる。
【0092】
〔実施例10〕
実施例10は、三つの流体用ヒータAが片側あたり一個の集合蓋部F(f)で連結一体化されて成る流体加熱装置Bである。即ち、実施例10による流体加熱装置Bは、図20に示すように、集合蓋部Fは、横長形状の蓋本体5から筒状の受口部8が三箇所立設されるとともに、各受け口部8毎に形成される蓋内空間8aどうしを連通接続する計二箇所の連結路8b、及び流体給排部30,31を形成するための一箇所の給排路8cとが形成されて成る単一の部品に構成されている。
【0093】
つまり、集合蓋部Fは、図3等に示す蓋部fに、ケース本体4の複数が着脱自在に取付けられるように、受口部8が三箇所形成されているものであり、当然ながら導出部34も三箇所に形成されている。つまり、図12等に示される蓋部fの三個と中継チューブ60の二個とを合体させたようなものである。この場合のコイルヒータHは、両端がリード線rに導通接続されるヒータ線40をフッ素樹脂チューブ71で被覆して成るヒータ要素72が用いられている。尚、図20に示す流体加熱装置Bおいては、図16に示す修体様ヒータAと同じ部品には同じ符号を付すものとする。
【0094】
この集合蓋部Fを用いれば、図12に示す流体加熱装置に比べて、部品点数の削減やそれによるコストダウンを可能としながら、図12に示す流体加熱装置の有する作用及び効果と同等の作用効果を発揮できる利点がある。この図20に示すいわば三個一型の流体加熱装置Bは、各集合蓋部Fに設けられた流体給排部30,31を用いて、三箇所のケーシング1が並列に接続される並列型に構成されている。尚、図示は省略するが、連結路8bを適宜に遮断することにより、三箇所のケーシング1が直列に接続される直列型の流体加熱装置とすることも可能である。次に、多数の流体用ヒータAを接続して成る流体加熱装置Bの構造例を「その他の実施例」として幾つか述べる。
【0095】
〔その他の実施例〕
図13(A)に示すように、流体用ヒータAを前後左右に複数列並列に連結して成るものである。一例として、図13(A)においては、左右に4列で前後に2列の計8個の流体用ヒータAを並列に接続連結して成る流体加熱装置Bの平面図を示してある。この場合、蓋部fの蓋本体5としては、流体給排部31(又は30)が二箇所形成されたものと、三箇所形成されたものとが必要であり、右端で前側に位置する流体用ヒータAの下側蓋本体5に入口INを設けて導入用配管28aが接続連結されるとともに、左端で後側に位置する流体用ヒータAの上側蓋本体5に出口OUTを設けて導出用配管28bが接続連結されている。
【0096】
なお、図13(A)に仮想線で示すように、左端で前側に位置する流体用ヒータAの上側の蓋部fの蓋本体5にも、出口OUTを設けて導出用配管28bを接続連結しても良い。また、図示しないが、導入用配管28aを2箇所設ける構成も可能である。なお、接続部Rが多数存在しているので、例えば、前後中間において左右に4組並ぶ接続部Rのうちの中央2組のものを省略することは可能である。即ち、全ての蓋本体5に流体が行き渡る構造であれば良く、隣合う蓋本体5どうしの全箇所を接続連結しなければならないことはない。
【0097】
図13(B)に示すように、流体用ヒータA,Aを1個の流体ヒータ当りの周囲に6個の流体用ヒータを配したもの、いわゆる星型に配列された流体加熱装置Bも可能である。このような形状の流体加熱装置Bは、円筒状の空間が設置スペースとして空いているような場合に有効である。この場合、流体用ヒータAは円形の蓋本体5を有し、中央の流体用ヒータAのみが上下の蓋部fの蓋本体5のそれぞれに6箇所の流体給排部31(又は30)が形成されており、入口IN、出口OUTが装備される二個の流体用ヒータAを除く残りのヒータAにおいては、各蓋本体5のそれぞれには1箇所ずつの流体給排部31(又は30)が形成されるものとなっている。
【0098】
流体用ヒータAを2個以上並列接続して成る流体加熱装置Bは、以上述べた構成に限られるものではなく、種々の組み合わせが可能であり、例えば縦横(前後左右)に5個ずつ並べた25個の流体用ヒータAから成るヒータ群を上下に直列に接続して、計50個の流体用ヒータAで構成される流体加熱装置Bも可能である。即ち、単位時間当たりの流量が大なる流体の場合には、複数の流体用ヒータAを並列接続して成る流体加熱装置Bが好都合であり、単位時間当たりの流量は少ないが高い温度に加熱したい場合には、複数の流体用ヒータAを直列接続して成る流体加熱装置Bが好都合である。このように、流体加熱装置Bとしては扁平形状や立体的な形状、或いは高い昇温が可能なものなど、流体用ヒータAの組み合わせ方によって如何様にも仕様設定が可能であり、ユーザーの希望に応じたあらゆる構成の流体加熱装置を構築できるという優れた特徴を有している。
【0099】
以上述べた流体用ヒータAや流体加熱装置Bにおいては、入口INや出口OUTに開閉弁を装備する等して、ケーシング1内に取込まれる流体を一旦ケーシング1の内部2において貯留させた状態で棒状ヒータHで加熱し、十分に、或いは所定温度にまで昇温されてから、その加熱後の流体を出口OUTから排出する、という使い方も可能である。また、ケーシング1の内部の温度を測定するセンサ等の温度検出手段、開閉弁の駆動開閉機構、制御装置等を設けて、種々の温度域で取込まれる流体を、設定温度に昇温されてからケーシング1外に排出されるよう自動的に制御される「自動流体加熱制御装置」を構築することも可能である。
【0100】
例えば、本発明による流体用ヒータ又は流体加熱装置を、大気圧より高圧の超純水をケーシングの入口からケーシング内に導入し、超純水をケーシング内の下部又は上下部に設置した棒状ヒータで加熱し、一定温度まで加熱後にケーシング内上部に貯留した超純水をケーシング上部の出口より排出するように構成された超純水加熱装置として用いることが可能である。このような構成とすれば、装置内に貯留した超純水を一定温度まで加熱した後、超純水の圧力(大気圧より高圧)により高温超純水を送給することができるので、別途の貯留タンクや不活性ガス導入配管の敷設などの超純水を送給するための設備が不要となり、設備コスト及び運転コストが低減できる、といった作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】実施例1による流体用ヒータの正面図
【図2】図1の流体用ヒータの底面図
【図3】図1のケーシング端部の構造を示す要部の拡大断面図
【図4】図1のケーシング端部と蓋部との接続構造を示す半欠截拡大断面図
【図5】シール部の別構造を示す半欠截断面図
【図6】実施例2による流体用ヒータの要部を示す断面正面図
【図7】実施例3による流体用ヒータの全体正面図
【図8】図7の流体用ヒータのの要部を示す断面正面図
【図9】実施例4による流体用ヒータを示す断面正面図
【図10】実施例5による流体用ヒータを示す断面正面図
【図11】図10の下蓋部のシール構造を示す半欠截断面図
【図12】実施例6による流体加熱装置を示す断面正面図
【図13】(A),(B)は共に流体加熱装置の別構造を示す平面図
【図14】石英管を用いた棒状ヒータの外観図
【図15】実施例4の流体用ヒータに用いる棒状ヒータの断面図
【図16】実施例7による流体用ヒータを示す断面正面図
【図17】実施例8による流体用ヒータを示す断面正面図
【図18】実施例9による流体用ヒータを示す断面正面図
【図19】図18のN部分の構造を示す拡大断面図
【図20】実施例10による流体加熱装置を示す一部切欠きの正面図
【図21】従来の流体用ヒータを示す正面図
【図22】図21の流体用ヒータの断面図
【符号の説明】
【0102】
1 ケーシング
2 流路部分
4 ケース本体
5 蓋本体
6 ユニオンナット
8 受口部
10,11 シール面
13 環状溝部
15 インナーリング
17 突出部
20 内向きテーパ面
22 突出端面
24 円筒部
30,31 流体給排部
34 導出部
39 カートリッジヒータ
40 発熱部、ヒータ線
53 ランプヒータ
f 蓋部
A 流体用ヒータ
B 流体加熱装置
H ヒータ
S シール部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ材から成るケース本体、及びこのケース本体の両端部の夫々を塞ぐべくそれら端部毎に着脱自在に取付けられる蓋部から成るケーシングと、少なくとも一方の前記蓋部を貫通して前記ケース本体の内部に通されるヒータとを有するとともに、前記ケース本体の内部空間に対する流体給排部が前記蓋部に少なくとも計2箇所形成されている流体用ヒータ。
【請求項2】
前記チューブ材が可撓性を有した合成樹脂製であり、
前記蓋部は、前記ケース本体の端部を受け入れる受口部及びこの受口部内に設けられた少なくとも一箇所のシール面を有する合成樹脂製の蓋本体と、前記ケース本体の端部に外嵌された状態で前記蓋本体の受口部側端部に外嵌螺合自在なユニオンナットと、前記ユニオンナットの前記蓋本体への螺進による締付けにより前記ケース本体をこれの外側から押圧し、この押圧作用によって前記ケース本体の端部と前記蓋本体のシール面とが密着することで形成される少なくとも一箇所のシール部と、から構成され、
少なくとも一方の前記蓋部の蓋本体には前記ヒータを貫通する導出部が形成されるとともに、前記流体給排部は、前記ケーシングの内部における前記ヒータの外部となる流路部分を通る流体を出し入れするためのものとして前記蓋本体に形成されている請求項1に記載の流体用ヒータ。
【請求項3】
前記ヒータにおける発熱部が、前記流路部分を形成する前記ケーシングの内部にのみ配されている請求項2に記載の流体用ヒータ。
【請求項4】
前記シール部が、前記蓋本体の軸線方向の外方に向けて漸次拡径するテーパ面を前記受口部の入口より内奥に形成することで成るシール面と、前記ケース本体の端部にこれを断面山形状に拡径膨出させるように圧入されたインナーリングにおける前記ケース本体の端部から突出した突出部の先端に形成したテーパ面からなる突出端面との密着により形成されている請求項2又は3に記載の流体用ヒータ。
【請求項5】
前記シール部が、前記蓋本体の受口部の入口に、前記蓋本体の軸線に対して交差するテーパ面により構成されたシール面と、前記ケース本体の端部にこれを断面山形状に拡径膨出させるように圧入されたインナーリングの圧入部の斜面部に形成された内向きテーパ面と、の間に前記ケース本体の端部を傾斜状態で挟持自在に構成することによって形成されている請求項2〜4の何れか一項に記載の流体用ヒータ。
【請求項6】
前記シール部が、前記蓋本体の受口部の内奥の前記シール面よりも径方向外方に前記蓋本体の軸線と平行に形成された環状溝部に、前記ケース本体の端部に圧入されたインナーリングの突出部の先端に形成された円筒部を嵌入自在に構成することによって形成されている請求項4又は5に記載の流体用ヒータ。
【請求項7】
前記ケース本体の一端部に取付けられる蓋部と、他端部に取付けられる蓋部とが互いに同一である請求項1〜6の何れか一項に記載の流体用ヒータ。
【請求項8】
前記ケース本体及び前記蓋部がフッ素樹脂によって形成されている請求項1〜7の何れか一項に記載の流体用ヒータ。
【請求項9】
前記ヒータは、フッ素樹脂材によって被覆されたカートリッジヒータである請求項1〜8の何れか一項に記載の流体用ヒータ。
【請求項10】
前記ヒータは、フッ素樹脂材によって被覆されたランプヒータである請求項1〜8の何れか一項に記載の流体用ヒータ。
【請求項11】
前記ヒータは、フッ素樹脂材によって被覆されたヒータ線を螺旋状に巻回して成るコイルヒータである請求項1〜8の何れか一項に記載の流体用ヒータ。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載の流体用ヒータの複数を組合せて、それらいずれの流体用ヒータにおいても流体が前記ケーシング内部を通過自在となるように、各々の前記流体給排部を連通接続して成る流体加熱装置。
【請求項13】
前記蓋部を、これに前記ケース本体の複数が着脱自在に取付けられるものに構成することにより、前記流体用ヒータの複数を、それらいずれのケーシング内部にも流体が通過自在となるように組合せて成る請求項12に記載の流体加熱装置。
【請求項1】
チューブ材から成るケース本体、及びこのケース本体の両端部の夫々を塞ぐべくそれら端部毎に着脱自在に取付けられる蓋部から成るケーシングと、少なくとも一方の前記蓋部を貫通して前記ケース本体の内部に通されるヒータとを有するとともに、前記ケース本体の内部空間に対する流体給排部が前記蓋部に少なくとも計2箇所形成されている流体用ヒータ。
【請求項2】
前記チューブ材が可撓性を有した合成樹脂製であり、
前記蓋部は、前記ケース本体の端部を受け入れる受口部及びこの受口部内に設けられた少なくとも一箇所のシール面を有する合成樹脂製の蓋本体と、前記ケース本体の端部に外嵌された状態で前記蓋本体の受口部側端部に外嵌螺合自在なユニオンナットと、前記ユニオンナットの前記蓋本体への螺進による締付けにより前記ケース本体をこれの外側から押圧し、この押圧作用によって前記ケース本体の端部と前記蓋本体のシール面とが密着することで形成される少なくとも一箇所のシール部と、から構成され、
少なくとも一方の前記蓋部の蓋本体には前記ヒータを貫通する導出部が形成されるとともに、前記流体給排部は、前記ケーシングの内部における前記ヒータの外部となる流路部分を通る流体を出し入れするためのものとして前記蓋本体に形成されている請求項1に記載の流体用ヒータ。
【請求項3】
前記ヒータにおける発熱部が、前記流路部分を形成する前記ケーシングの内部にのみ配されている請求項2に記載の流体用ヒータ。
【請求項4】
前記シール部が、前記蓋本体の軸線方向の外方に向けて漸次拡径するテーパ面を前記受口部の入口より内奥に形成することで成るシール面と、前記ケース本体の端部にこれを断面山形状に拡径膨出させるように圧入されたインナーリングにおける前記ケース本体の端部から突出した突出部の先端に形成したテーパ面からなる突出端面との密着により形成されている請求項2又は3に記載の流体用ヒータ。
【請求項5】
前記シール部が、前記蓋本体の受口部の入口に、前記蓋本体の軸線に対して交差するテーパ面により構成されたシール面と、前記ケース本体の端部にこれを断面山形状に拡径膨出させるように圧入されたインナーリングの圧入部の斜面部に形成された内向きテーパ面と、の間に前記ケース本体の端部を傾斜状態で挟持自在に構成することによって形成されている請求項2〜4の何れか一項に記載の流体用ヒータ。
【請求項6】
前記シール部が、前記蓋本体の受口部の内奥の前記シール面よりも径方向外方に前記蓋本体の軸線と平行に形成された環状溝部に、前記ケース本体の端部に圧入されたインナーリングの突出部の先端に形成された円筒部を嵌入自在に構成することによって形成されている請求項4又は5に記載の流体用ヒータ。
【請求項7】
前記ケース本体の一端部に取付けられる蓋部と、他端部に取付けられる蓋部とが互いに同一である請求項1〜6の何れか一項に記載の流体用ヒータ。
【請求項8】
前記ケース本体及び前記蓋部がフッ素樹脂によって形成されている請求項1〜7の何れか一項に記載の流体用ヒータ。
【請求項9】
前記ヒータは、フッ素樹脂材によって被覆されたカートリッジヒータである請求項1〜8の何れか一項に記載の流体用ヒータ。
【請求項10】
前記ヒータは、フッ素樹脂材によって被覆されたランプヒータである請求項1〜8の何れか一項に記載の流体用ヒータ。
【請求項11】
前記ヒータは、フッ素樹脂材によって被覆されたヒータ線を螺旋状に巻回して成るコイルヒータである請求項1〜8の何れか一項に記載の流体用ヒータ。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載の流体用ヒータの複数を組合せて、それらいずれの流体用ヒータにおいても流体が前記ケーシング内部を通過自在となるように、各々の前記流体給排部を連通接続して成る流体加熱装置。
【請求項13】
前記蓋部を、これに前記ケース本体の複数が着脱自在に取付けられるものに構成することにより、前記流体用ヒータの複数を、それらいずれのケーシング内部にも流体が通過自在となるように組合せて成る請求項12に記載の流体加熱装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図11】
【図12】
【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
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【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2006−153419(P2006−153419A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16378(P2005−16378)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(000229737)日本ピラー工業株式会社 (337)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(000229737)日本ピラー工業株式会社 (337)
【Fターム(参考)】
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