説明

流体移送システムの2つのパイプ部分を接続および切断構成

【課題】従来技術によるタイプのもので、従来技術にあるような主要な欠点がない接続および切断構成を提案する。
【解決手段】本発明は、流体移送システムの2つのパイプ部分を接続および切断する構成に関する。この構成において、各部分(2、3)は、流体フローの断面を閉じる位置と、流体フローの断面を開く位置との間で、旋回軸の周りで旋回可能なように部分内に取り付けられたディスク(5、6)が設けられたちょう形弁として構成され、旋回軸は、パイプ軸に対して垂直方向に互いに平行に延在する。この構成は、ディスク(5、6)の旋回軸(36)が、部分(2、3)の軸に対して偏心して配設されることにより、部分(2、3)の接続時、閉位置にあるディスク(5、6)間で画定される空間を低減する。本発明は、液化天然ガスを移送するために有益である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体移送システムの2つのパイプ部分を接続および切断するモジュールの構成に関し、2つのパイプ部分の各々は、パイプラインの端部要素を構成し、流体フローの断面を閉じる位置と、流体フロー断面を開く位置との間で、パイプ部分内でピボット軸の周りを旋回するように取り付けられたディスクと、旋回を制御するための外部デバイスとが設けられたちょう形弁の形で構成され、ピボット軸は、パイプの軸に垂直方向に互いに平行に延在する。
【背景技術】
【0002】
このタイプの接続モジュールの構成はすでに公知となっており、この接続モジュールの構成により、2つのステーション間で、一方向または他方向に流体を供給し受け入れるためのそれぞれのパイプラインを接続することが可能であり、2つのステーションの一方は、固定ステーションであり、他方は、可動ステーションであり得る。
【0003】
また、公知の接続モジュールの構成に、緊急切断デバイスを設けることも公知となっており、この緊急切断デバイスにより、ドリフトや事故の極限状態、例えば、火災時に、可動パイプ部分を固定パイプ部分から距離を置いて配置することにより、パイプラインに流体を封じ込めたまま、接続モジュールにダメージを与えないようにしたり、パイプがこじ開けられたりしないようにすることができる。
【0004】
公知のモジュール構成において、2つのパイプ部分のディスクのピボット軸は、パイプ部分が接続されると、パイプ部分の軸方向に互いに間隔を置いて設けられているため、開位置と閉位置との間での旋回運動を実行することができる。
公知のモジュール構成には、ディスクが閉位置にあるとき、ディスクの間に、流体が充填される比較的大きな空間を形成するという欠点がある。緊急切断の際に、ディスク間の空間内に充填されていた流体が、周辺環境へ流出してしまう。
【0005】
このような流体が流出してしまう事態は、移送する流体が人と環境に危険なものや、火災の危険を伴うものである場合、非常に深刻である。これは、特に、例えば、積み込みまたは積み下ろしターミナルと液化ガスタンカとの間で液化天然ガス(LNG)を移送する場合である。
【0006】
【特許文献1】フランス特許第2580367号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述したタイプのもので、前述した主要な欠点がない接続および切断モジュールを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明による接続および切断モジュールは、ディスクのピボット軸が、パイプ部分の軸に対して中心からずらされて配設されることにより、パイプ部分がパイプ接続状態にあるとき、閉位置にあるディスク間に画定された空間を低減することを特徴とする。
【0009】
本発明の1つの特徴によれば、ピボット軸は、パイプ部分の軸に対して垂直方向に、この軸に対して対称的にずらされることを特徴とする。
【0010】
本発明のもう1つの特徴によれば、前述した2つのディスク間の空間は、閉位置にあるとき、ゼロであることを特徴とする。
【0011】
本発明のさらなる別の特徴によれば、前述した2つのディスクは、開位置にあるとき互いに接触することにより、運動学的な遊びをなくし、したがって、流体フローの不安定性により誘発される可能性があるディスクの振動や揺れを防止することを特徴とする。
【0012】
本発明のさらなる別の特徴によれば、ディスクのピボット軸は、ディスクが旋回可能に取り付けられるパイプ部分の流体フロー断面の外側に配設されることを特徴とする。
【0013】
本発明のさらなる別の特徴によれば、ディスクの周囲にタブが取り付けられ、ピボット軸が、タブの自由端に配設されることを特徴とする。
【0014】
本発明のさらなる別の特徴によれば、旋回できるように、ディスクに、関節式アームを有するデバイスが関連付けられ、アームの一方の自由端は、ディスクに対して関節式に連結されるのに対して、他方のアームの自由端は、パイプ部分の壁に対して関節式に連結されることを特徴とする。
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1から図4は、2つのステーション間で液化天然ガスなどの流体を移送するためのシステムの、接続されるパイプラインの2つの端部分を接続および切断するためのモジュールのひとつの形態を示す。
ステーションの一方は、液化ガスタンカであり、他方は、積み込みまたは積み下ろしターミナルであり得る。
【0017】
図面では、接続および切断モジュールを符号1で示し、上述した2つのステーションのパイプラインの端部でそれぞれ取り付けられた2つのパイプ部分2、3を含む接続および切断モジュールの構成のみを示す。
各パイプ部分2,3は、ちょう形弁の形態で製造され、パイプ部分2,3内に取り付けられる円形ディスク5、6を有し、その結果として、流体フロー断面は円形である。
【0018】
各ディスク5および6は、パイプ部分2、3の内部で旋回するように取り付けられ、図1および図2に示す流体フロー断面を閉じる位置と、図3に示す流体フロー断面を開く位置との間にある軸X、X’の周りで旋回するように構成される。
【0019】
各パイプ部分2、3または弁は、概して円筒状の形状を呈しており、他方のパイプ部分2、3に隣接した端部に、パイプ部分2、3の平坦な前面9に環状カラー8が設けられる。
2つのパイプ部分2、3が軸方向に配列されてリング12により接続状態にあるときが図2および図3の略図的に示されている。
緊急切断デバイスの相補形のV字状の溝に係合されるようにされた外部切頭円錐輪郭10とアセンブリをなすように、2つのカラーの外周面が構成される。この緊急切断デバイスは公知のものであり、特許文献1に記載されているのでさらに詳細な説明をしない。
【0020】
本実施形態を理解するためには、例えば、パイプ部分2,3の接続時、図2に示すような接続位置に2つのパイプ部分2,3を動かないようにするとともに、緊急切断時、図4の矢印で示すように分離されて、2つのパイプ部分2,3のカラー8を解除することにより、図4にも示すように分離できるようにする2つのリング部分13、14からリング12が構成されることが示されていれば十分である。
【0021】
2つのリング部分13、14は、パイプ部分3に接続されたままであることに留意されたい。
切断デバイスに関するさらなる詳細に関しては、特許文献1を参照されたい。
また、この緊急切断デバイスは、2つのリング部分13および14を組み立てるための2つの円形要素15および16しか図1に示されていないことにも留意されたい。
【0022】
本実施形態の本質的な特徴によれば、閉位置にある各ディスク5、6の外部前面18が、パイプ部分2,3のカラー8の平坦な外周面9と整列されるため、2つの表面18は、2つのパイプ部分2および3の接続時、互いに接触した状態にある。
【0023】
ディスク5および6が閉位置から図3に示す開位置に旋回できることは、それらのピボット軸の適切な構成により達成される。
【0024】
本実施形態の別の重要な特徴によれば、2つのディスク5および6は、開位置においても互いに接触する。
この構成により、運動学的な遊びを阻止することができ、流体フローの不安定性により誘発される可能性があるディスクの振動や揺れを防止できる。
【0025】
2つの特徴を作るために、ディスク5の軸Xとディスク6の軸X’は、一方では、パイプ部分2,3の軸Y−Yの方向に互いからずらされ、他方では、この軸Y−Yに対して対称的に中心からずらされる。
この差は、両方の場合においてほぼ同じである。
このようにして、2つのディスク5および6は、閉位置において互いに接触状態にあり、図3に示す開位置に達するように、両方がそれらの軸の周りを同期して旋回でき、この開位置において、2つのディスク5および6は、これらの表面の一部分で接触した状態のまま、パイプ部分2,3の軸Y−Yに対して平行な方向に配向される。
したがって、各ディスク5および6は、4分の1回転の旋回運動を行う。
【0026】
各ディスク5および6のピボット軸は、軸方向に配列されたシャフト21およびシャフトスタブ22を動作させることにより具体化される。
シャフト21は、ディスク5および6の外周付近の高い位置に、ディスク5および6の背面から突出する固定タブ23に回転可能に固定して接続され、さらにパイプ部分2,3の外部管状端部24に回転可能に取り付けられる。
このシャフトの自由外端部25は、回転可能なように構成される。
シャフト端部22は、パイプ部分2,3の本体の符号27で示す一端部に設置され、端部28は、ディスクの背面上に外周付近の下方に設けられたタブ30に自由に回転できるように受け入れられる。
【0027】
パイプ部分2および3が、平坦な前面9上に、適切な環状レセスに配設された環状ガスケット32を保持することに留意されたい。
このガスケット32は、金属製、プラスチック製、または複合材料から作られる。
【0028】
図1から図3は、緊急切断デバイスのリング12のV字状溝にある切頭円錐外周面にカラー8が係合することにより接続状態にあるモジュール1を表す。
図4は、緊急切断後の2つのパイプ部分2および3を示す。
上記に示すように、2つのパイプ部分2および3の切断は、リング12を開くことにより、すなわち、2つのリング部分13および14を外向きに半径方向の運動をすることにより生じる。
【0029】
図5から図7は、本発明に係る接続および切断モジュール1の他の実施形態を示す。
本実施形態において、ディスク5および6のピボット軸は、パイプ部分2および3の流体フロー断面の外側に位置する。
このため、外部方向に延在するタブ34が、ディスク5および6の外周の背面上に設けられる。
このタブ34の他方の自由端部には、ディスク5および6のピボット軸を構成する軸36が設置される。
【0030】
各ディスク5および6の動作は、2つの関節式アームによって行われる。
すなわち、符号42で示す関節式の軸によって、ディスク5および6の背面上に関節式に連結された第1のアーム41と、符号44で示す軸によって、パイプ部分2および3の本体に関節式に連結された第2のアーム43によって行われる。
符号45は、第1のアーム41と第2のアーム43とを互いに関節式に連結する軸である。
アーム41,43の関節の軸45は、ディスク5および6のピボット軸36に対して平行に配設されることは言うまでもない。
図6に示すように、ディスクおよび6を開位置に向けて旋回をする間、2つのアーム41,43は折り畳むことができる。そのために、パイプ部分2,3には、2つのアーム41,43を互いに折り畳んで収容できる横方向の隆起部47が設けられる。
【0031】
ディスク5および6の開閉動作を行うために、各セクションには、動作シャフトを通すための管状端部分49が設けられ、管状端部分49から外部に露出した動作シャフトの制御端部を符号50で示す。
動作シャフトは、背面上の関節の軸44を中心に第2のアーム43を回転操作する。
【0032】
ディスク5および6の閉位置において、関節式の2つのアーム41および43が直線的に配列されることで、ディスク5および6にかかる応力を軽減し、2つのアーム41および43が閉位置をロックする支柱(支承部材)となることにも留意されたい。
【0033】
図5から図7に示す本発明に係る接続および切断モジュール1の他の実施形態は既述した実施の形態と同様に、パイプ部分2,3の流体フローの断面が完全に自由であることにより、ガスまたは液体により押されて、パイプラインを移動するプランジャ要素を用いてパイプラインのスクレーピングが可能となり、可動パイプラインに保持された流体を空にすることができるという利点がある。
【0034】
本発明にあっては、閉位置にあるとき、2つのディスク5,6間に形成される空間が実質的にゼロになるため、緊急切断時において、図5に示すディスク5,6の閉鎖後、周辺環境に流出する流体がないという既述した先の実施形態と共通した利点がある。その結果、環境を汚染する危険性がなくなる。
したがって、本発明に係る接続および切断モジュール1は、環境に有害な流体、例えば、液化天然ガスなどの移送に特に適している。
本発明の別の利点は、接続および切断モジュール1が軽量なことである。
本発明のさらなる利点は、開位置にあるディスク5,6が折畳まれたアーム41,43により不動状態に支持されるため、流体フローの不安定性により誘発される可能性のあるディスク5,6の振動や揺れが防止されることである。
なお、図3に示した実施形態の場合、開位置においてディスク5,6は互いにパイプ部分2,3の軸Y−Yに対して平行で、かつ互いの対向面が平らになっている。
図6,7に示した実施形態の場合、開位置においてディスク5,6は、互いにパイプ部分2,3の軸Y−Yに対して平行で、かつパイプ部分2,3の隣り合う隆起部47のゾーンでパイプ内周面から突出することなく平らになっている。
【0035】
上述した実施形態に多数の修正がなされてよいことは言うまでもない。
したがって、図5〜7に示した実施形態において、ディスク5,6の関節の軸を正反対に配置することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】略図的に示され、図2の線I−Iに沿って切り取られた接続および切断モジュールの軸断面図である。
【図2】図1の線II−IIの方向に切り取った図1によるモジュールの断面図であり、ディスクが閉位置にある構成を示す。
【図3】図2に類似した図であり、開位置のディスクを示す。
【図4】緊急切断後の図2によるモジュールの図である。
【図5】本発明に係る接続および切断モジュールの軸断面図であり、閉位置にあるディスクを示す。
【図6】図5に類似した図であり、開位置にあるディスクを示す。
【図7】図6の線VII−VIIに沿って切り取った断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 接続および切断モジュール
2、3 パイプ部分
5、6 ディスク
8 カラー
9 外周面
10 外部切頭円錐輪郭
12 リング
13、14 リング部分
15、16 円形要素
18 外部前面
21 シャフト
22 シャフトスタブ
23 固定タブ
24 外部管状端部
25 自由外端部
28 端部
30 タブ
32 環状ガスケット
34 タブ
36 ピボット軸
41 第1のアーム
43 第2のアーム
44 関節
47 隆起部
49 管状端部分
50 制御端部
X、X’、Y 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体移送システムの2つのパイプ部分の各々が、パイプラインの端部要素を構成し、流体フローの円形断面を閉じる位置と、前記流体フローの円形断面を開く位置との間で、前記パイプ部分内でピボット軸の周りを旋回するように取り付けられた2つの円形ディスクがちょう形弁の形態で構成され、パイプの軸に垂直方向に互いに平行に延在し、前記パイプ部分(2、3)が接続状態にあるとき、閉位置にある前記両円形ディスク(5、6)間の空間がゼロとなる、前記2つのパイプ部分の接続および切断構成であって、
閉位置にある前記両円形ディスク(5、6)間の空間をゼロとなるように、各円形ディスク(5、6)の各ピボット軸(X、X’、36)が、パイプ部分(2、3)の軸(Y−Y)に対して中心からずれた位置に軸支されてることを特徴とする、
構成。
【請求項2】
前記2つのディスク(5、6)間の空間が、閉位置にあるとき、ゼロであることを特徴とする、請求項1に記載の構成。
【請求項3】
前記2つの円形ディスク(5、6)が、開位置にあるとき、前記2つの円形ディスク(5、6)が、互いに接触するように軸支されることにより、運動学的な遊びを防止し、流体フローの不安定性により誘発される可能性がある前記ディスク(5、6)の振動や揺れを防止することを特徴とする、請求項2に記載の構成。
【請求項4】
前記円形ディスク(5、6)のピボット軸(36)が、前記円形ディスクが旋回可能に取り付けられる前記パイプ部分(2、3)の流体フロー断面の外側に配設されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の構成。
【請求項5】
前記円形ディスク(5、6)の周囲にタブ(34)が取り付けられ、前記ピボット軸(36)が、前記タブ(34)の自由端に配設されることを特徴とする、請求項4に記載の構成。
【請求項6】
旋回できるように、前記円形ディスク(5、6)に、関節式アーム(41、43)を有するデバイスが関連付けられ、前記アームの一方(41)の自由端は、円形ディスクに対して関節式に連結されるのに対して、他方のアーム(43)の自由端は、前記パイプ部分の壁に対して(44)で関節式に連結されることを特徴とする、請求項1または5に記載の構成。
【請求項7】
前記パイプ部分(2、3)が、フラップの開位置において前記関節式アーム(41、43)を収容するための横方向の隆起部(47)を有することを特徴とする、請求項6に記載の構成。
【請求項8】
前記関節式アーム(41、43)が、前記円形ディスク(5、6)が閉位置にあるとき、支持位置にあることを特徴とする、請求項6または7に記載の構成。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−74697(P2009−74697A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323934(P2008−323934)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【分割の表示】特願2003−510859(P2003−510859)の分割
【原出願日】平成14年7月2日(2002.7.2)
【出願人】(503126924)ソシエテ ユーロピエンヌ デ・アンジェニリ メカニク − ユーロディム (4)
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE EUROPEENNE D’INGENIERIE MECANIQUE − EURODIM
【住所又は居所原語表記】21, avenue Edouard Belin 92566 Rueil Malmaison France
【出願人】(597022355)ケイエスビー エス.エイ. (1)
【氏名又は名称原語表記】KSB S.A.
【住所又は居所原語表記】4 Allee des Barbanniers, 92230 Gennevilliers, France
【Fターム(参考)】