説明

流動体の充填方法及び装置

【課題】飲料を充填する容器内の残留酸素を低減する。
【解決手段】無菌の容器1を予熱し、この予熱した容器内に無菌の液化不活性ガスgを滴下し、液化不活性ガスの入った容器内に無菌の飲料Zを充填し、しかる後に容器を密封する。容器のヘッドスペースY内の酸素量と充填した飲料の溶存酸素量の双方を低減することができ、飲料の長期保存が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煎茶等の流動体を容器に充填する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボトル等の容器に飲料等の流動体を充填した後、口部をキャップ等の蓋で密封すると、流動体の表面と蓋との間のヘッドスペース内に空気が閉じ込められる。この空気に含まれる酸素は流動体を酸化し、変質、劣化をもたらす。従来この酸素を除去し賞味期限を長くするため飲料にビタミンC等の酸化防止剤を添加している。
【0003】
また、ビールの充填においては、ヘッドスペース内の空気を排除するために、容器内に液体窒素を滴下した後にビールを充填するという方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、飲料をプラスチックボトル内に充填した後に、ヘッドスペース内に液体窒素を滴下することでヘッドスペース内の残存空気量を減らすという方法が提案されている(例えば、特許文献2,3,4参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−244791号公報
【特許文献2】特開2001−31010号公報
【特許文献3】特開2003−81301号公報
【特許文献4】特開2006−137463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した酸化防止剤を添加することで飲料やヘッドスペースの空気に含まれる酸素を低減する方法は、飲料の味、香り、品質等を損なうおそれがあるので、飲料に多量に添加するのは望ましいことではなく、また、飲料の種類によっては使用することができない場合がある。
【0007】
また、ビールの充填に際し予め液体窒素を容器内に滴下する方法は、液体窒素を滴下しない場合に比べて容器のヘッドスペース内の酸素濃度を低減することができるのであるが、充填されたビール中の溶存酸素はあまり低減することができないという問題がある。
【0008】
また、飲料を容器内に充填した後に、容器のヘッドスペース内に液体窒素を滴下する方法は、窒素ガスが容器外に逃げやすく、外気がヘッドスペース内に侵入しやすくなるという問題がある。ことに、自動充填装置で容器を高速で走行させつつ充填する場合は、ヘッドスペース内から窒素ガスがヘッドスペース外に吸い出されやすく、外気がさらに侵入しやすくなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。
【0010】
すなわち、請求項1に係る発明は、容器(1)を予熱し、この予熱した容器(1)内に液化不活性ガス(g)を滴下し、液化不活性ガス(g)の入った容器(1)内に流動体(Z)を充填し、しかる後に容器(1)を密封することを特徴とする流動体の充填方法である。
【0011】
密封時期を調整することで、容器の内圧を大気圧と同程度にすることができ、あるいは内圧を大気圧以上に高めることも可能である。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の流動体の充填方法において、容器(1)を加熱して殺菌処理し、この殺菌処理時の余熱を上記予熱の熱として利用することを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の流動体の充填方法において、容器(1)の予熱を温水リンスまたはホットエアにより行うことを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の流動体の充填方法において、温水リンス時の温水(e)の残水が容器(1)内に存在する状態で液化不活性ガス(g)を滴下することを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載の流動体の充填方法において、容器(1)の予熱温度が50℃〜80℃であることを特徴とする。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項1に記載の流動体の充填方法において、液化不活性ガス(g)が液体窒素であることを特徴とする。
【0017】
液体窒素の場合、その供給量は流動体(Z)の500mlについて望ましくは0.1g〜10gであり、より望ましくは0.5g〜2.0gである。
【0018】
請求項7に係る発明は、請求項1に記載の流動体の充填方法において、容器(1)が可撓壁を有するプラスチック製ボトルであり、液化不活性ガス(g)が気化したガス(h)により内圧が大気圧以上に高められたことを特徴とする。
【0019】
請求項8に係る発明は、請求項1に記載の流動体の充填方法において、30℃〜95℃に加熱した流動体(Z)を容器(1)内に充填することを特徴とする。
【0020】
請求項9に係る発明は、請求項1に記載の流動体の充填方法において、流動体(Z)が茶飲料であることを特徴とする。
【0021】
茶飲料の充填時の温度は、望ましくは20℃〜60℃であり、より望ましくは35℃〜50℃である。
【0022】
請求項10に係る発明は、請求項1に記載の流動体の充填方法において、無菌雰囲気下で、無菌の予熱した容器(1)に対し、無菌の液化不活性ガス(g)の滴下と、無菌の流動体(Z)の充填と、密封とを順次行うことを特徴とする。
【0023】
また、請求項11に係る発明は、容器(1)を所定の搬送路に沿って搬送する搬送手段(23等)を有し、この搬送路に沿って、容器(1)を予熱する予熱手段(40)と、予熱した容器(1)内に液化不活性ガス(g)を供給する液化不活性ガス供給手段(4)と、液化不活性ガス(g)の入った容器(1)内に流動体(Z)を充填する流動体充填手段(57)と、上記流動体(Z)を充填した容器(1)を密封する密封手段(59)とが順に配置されたことを特徴とする流動体の充填装置である。
【0024】
請求項12に係る発明は、請求項11に記載の流動体の充填装置において、容器の予熱手段が温水リンス手段またはエアブロー手段であることを特徴とする。
【0025】
請求項13に係る発明は、請求項11に記載の流動体の充填装置において、搬送手段(23等)の搬送路が複数個のホイール(23,24,25)を接続することにより円弧の連続となって延びていることを特徴とする。
【0026】
請求項14に係る発明は、請求項11に記載の流動体の充填装置において、搬送路の上流側に容器(1)の殺菌装置が設けられ、この搬送路が殺菌装置内での容器(1)の搬送路に連結されたことを特徴とする。
【0027】
請求項15に係る発明は、請求項14に記載の流動体の充填装置において、殺菌装置内に温水リンス手段(40)またはエアブロー手段(41)が設けられ、この温水リンス手段(40)またはエアブロー手段(41)が容器(1)の予熱手段を兼ねることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
請求項1〜15に係る発明によれば、容器(1)のヘッドスペース(Y)内の酸素量と充填した流動体(Z)の溶存酸素量の双方を格段に低減することができ、従って流動体(Z)の長期保存が可能となる。
【0029】
ことに、温水リンスにより容器(1)を昇温・残水させた状態にして、液体窒素を素早く滴下し、50℃前後の流動体(Z)を充填し、ヘッドスペース(Y)内を窒素ガスにより発泡置換した状態のまま、キャップ等により密封すると、少量の液体窒素で最大の酸素低減効果を得ることができる。
【0030】
請求項10〜15に係る発明によれば、液化不活性ガス(g)は空の容器(1)内に供給するので、容器(1)を走行させても口部(1a)からの不活性ガス(h)の吸出し量は僅かであり、従って、流動体(Z)を充填した際のヘッドスペース(Y)内の空気を不活性ガス(h)で十分置換することができる。また、ヘッドスペース(Y)内の酸素量と充填した流動体(Z)の酸素量の双方が格段に低減した長期保存が可能な製品を高速で製造することができる。
【0031】
請求項7に係る発明によれば、早めに容器(1)を密封したり、液化不活性ガス(g)の滴下量を増やしたりすることで、ガス(h)による容器(1)の内圧を高め、容器(1)の座屈強度を増大することが可能である。
【0032】
請求項13,15に係る発明によれば、充填装置をコンパクト化し、設置スペースを低減することができる。
【0033】
請求項14,15に係る発明によれば、殺菌処理した直後の容器に速やかに流動体を充填することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の最良の形態について図面に基づいて説明する。
【0035】
この実施の形態において、流動体を充填する容器は、PET(ポリエチレンテレフタレート)で出来たパリソンをブロー成形することにより得られるプラスチック製ボトルが使用される。また、容器であるボトルに充填する流動体は、煎茶とされる。
【0036】
この充填方法による流動体の充填に先立ち、容器について図1に示すような殺菌処理が行われる。最初にこの殺菌方法から説明する。
【0037】
図1(A)に示すように、ボトル1の口部1aからボトル1の内部へノズル2を挿入し、そのノズル2の先端から加熱した無菌空気である熱風aを送り込んでボトル1を予備加熱する。ノズル2をボトル1内に挿入することにより、熱風aをボトル1内に確実に送り込むことができる。ノズル2の挿入量は熱風aの流量、口部1aの口径等に応じて適宜変更可能である。ノズル2から吐出する熱風aの風量は望ましくは0.1〜0.5m3/分、より望ましくは0.2〜0.3m3/分である。この予備加熱の工程は場合により省略することができる。
【0038】
このノズル2の外周には、ボトル1の口部1aの口縁を覆う傘状の案内体2aが取り付けられる。図1(A)に示すように、ノズル2の先端からボトル1内に吹き込まれた熱風aはボトル1内を巡った後、口部1aから吹き出し、この案内体2aに案内されつつ口部1aの外周に接触し口部1aを外側からも加熱する。この案内体2aに代え又は案内体2aと共にボトル1の口部1aの外周にノズルを設置し、このノズルから熱風を口部1aに吹き付けて口部1aをその外側から加熱するようにしてもよい。ノズル2からの熱風aのみで口部1aを十分に加熱できるときは、案内体2aや口部1aの外周に配置するノズルを省略してもよい。この予備加熱により、ボトル1の内面の温度が40℃〜75℃、好ましくは55℃〜65℃に上昇する。
【0039】
予備加熱したボトル1は、図1(B)に示すミスト供給工程へと送る。ミスト供給工程では、過酸化水素のミストbをノズル3からボトル1の内部に導入し、ボトル1の内面を殺菌する。
【0040】
過酸化水素のミストbは、公知のミスト生成装置により生成することができる。図示しないが、生成装置は、殺菌剤である過酸化水素の水溶液を滴状にして供給する二流体スプレーである過酸化水素供給部と、この過酸化水素供給部から供給された過酸化水素の噴霧をその沸点以上の非分解温度以下に加熱して気化させる気化部とを備える。
【0041】
過酸化水素供給部が過酸化水素の水溶液と圧縮空気を導入して過酸化水素の水溶液を気化部内に噴霧すると、気化部はヒータで過酸化水素の噴霧を加熱し気化させる。気化した過酸化水素のガスはノズル3からボトル1の口部1aに向って噴出する。気化した過酸化水素は、ノズル3を出てボトル1の近傍に至る間に沸点以下の温度まで降下することにより、一部が凝縮し液化する。これにより、過酸化水素の気液混合体である微細なミストbが生成される。この過酸化水素の微細なミストbがノズル3から上記予備加熱したボトル1の内部に吹き込まれ、ボトル1の内面の全面にムラなく均一に付着する。ボトル1の内面に付着したミストbは結露し、高濃度の過酸化水素となって、ボトル1の内面を速やかに殺菌する。
【0042】
例えば、上記気化部はモル分率約0.22mol%(約35重量%)の過酸化水素溶液をその沸点である約121℃以上に加熱して過酸化水素を気化させる。この気化した過酸化水素のガスがノズル3から噴出すると、沸点以下の温度まで降下して気液混合体のミストbとなる。このミストbがボトル1の内面に付着し結露すると、モル分率約0.60mol%(約74重量%)という高濃度の過酸化水素溶液となってボトル1の内面に付着する。これにより、ボトル1の内面は迅速かつ適正に殺菌されることになる。
【0043】
上記ボトル1の予備加熱はボトル1の内面で結露する過酸化水素溶液をより高濃度に保持するうえで役立つ。容量500mlのボトル1本に対する過酸化水素ミストの付着量は、35重量%過酸化水素溶液に換算して5μl〜100μlの範囲であるのが好ましい。ミストの吹き込み時間はボトル1本に対して0.1秒〜1秒の範囲が好ましい。
【0044】
図1(A)に示すように、ボトル1の外面にもその内面に吹き付けた上記過酸化水素のミストbと同様なミストbをボトル1の胴体の回りに配置したノズル(図示せず)から吹き付けてボトル1の外面を殺菌する。この殺菌は上記図1(A)に示した予備加熱工程において予備加熱と並行して行っているが、同図(B)に示す工程等で行うこともできるし、所望の段階で独立して行うこともできる。
【0045】
内部に過酸化水素のミストbを吹き込んだボトル1は、図1(C)に示すように、ミスト排出工程へと送る。ミスト排出工程では、無菌空気を加熱することにより生成した熱風cをノズル7からボトル1内に吹き込む。ノズル7はボトル1外に出したままでもよいが、望ましくはボトル1内に挿入した状態で熱風cを吹き込む。この熱風cによりボトル1は内面から加熱され、過酸化水素のミストbによる殺菌効果が高められ、ボトル1の壁内への過酸化水素の浸透が抑制され、過酸化水素がボトル1の内面に浮かび易くなる。また、ボトル1の内部に漂っているミストbが熱風cによりボトル1外へ排出される。上述したようにミストbをボトル1内に吹き込むと、ほとんど瞬時にボトル1の内面がミストbにより殺菌されるので、ミストbの吹き込みの直後に熱風cをボトル1内に吹き込みボトル1の内部空間に漂っているミストbをボトル1外に排出しても殺菌効果は損なわれない。むしろ余分なミストbを早期に排出することにより、ボトル1の壁の肉厚内への過酸化水素の過剰な浸透を抑え、後の洗浄工程を短時間で終えることができる。
【0046】
なお、熱風cは必要に応じて常温の無菌空気とすることも可能である。また、この図1(C)に示すミスト排出工程は場合により省略することも可能である。
【0047】
上述したようにミストbの吹き込みの直後に熱風cを吹き込むのが過酸化水素の残留を低減するうえで望ましいが、過酸化水素をボトル1内に吹き込んだ状態を所定時間保持することにより殺菌効果を高めるようにしてもよい。この時間内において、ボトル1の内面に残留した微量の過酸化水素がボトル1の内面を殺菌することになる。この所定の保持時間はボトル1をミスト供給工程からミスト排出工程まで搬送する時間を加減することにより調整することができる。過酸化水素のミストbの導入後、熱風cの吹き込みを開始するまでの保持時間は1.0〜10秒の範囲が好ましい。熱風cの吹き込み時間は例えば1秒〜20秒程度である。
【0048】
また、ボトル1の内面に付着した菌は高濃度で凝縮した過酸化水素の皮膜やPET内に取り込まれた過酸化水素の粒子により速やかに殺菌される。
【0049】
無菌水の蒸気を導入したボトル1は、図1(D)に示すように過酸化水素排出工程で洗浄を行い、残留過酸化水素を容器外に排出する。
【0050】
過酸化水素抽出工程から過酸化水素排出工程に移行する際は、望ましくはボトル1を上下反転させ、口部1aを下向きにする。この下向きになった口部1aからボトル1の内部にノズル9を挿入し、ノズル9から無菌水である洗浄液eを送り込む。洗浄液eはボトル1内に充満しボトル1の内面に接触した後に口部1aから流出する。これにより、過酸化水素抽出工程でボトル1の内面に形成され、余剰の過酸化水素を抽出した無菌水の皮膜が洗浄液eにより洗い流される。
【0051】
過酸化水素排出工程で用いる無菌水の洗浄液eは常温でもよいが、加熱して温水とした方が洗浄効率を高めるうえで望ましい。この洗浄液eの温度は40℃〜80℃の範囲が望ましい。上述した過酸化水素抽出工程においてボトル1への過酸化水素の浸透が抑制され、またボトル1から過酸化水素が抽出されているので、この洗浄は短時間で完了可能である。例えば500mlのボトルであれば3秒間程度で完了することが可能である。この結果、過酸化水素排出工程の洗浄で使用する無菌水eの量が低減し、ひいては無菌装置全体での無菌水の使用量も低減する。
【0052】
上記洗浄で用いる無菌水は、フィルタで異物を除去した水を例えば130℃に加熱し、約70℃程度まで冷却することにより得ることができる。
【0053】
過酸化水素排出工程での洗浄を終えたボトル1は、図1(E)に示すようにエアブロー工程に送り、ボトル1の内面に付着した洗浄液eの液滴を除去する。具体的には、下向きになった口部1aにノズル10を対向させ、このノズルからボトル1の内部に無菌空気からなる熱風fを吹き込むことによりボトル1の内面に付着した水滴を吹き飛ばして除去する。
【0054】
なお、上記図1(D)の洗浄を省略し、図1(E)のエアブロー工程を過酸化水素排出工程として無菌水の皮膜を無菌空気の導入により除去するようにしてもよい。あるいは、上記図1(D)の過酸化水素排出工程の洗浄液eによる洗浄を無菌空気によるエアリンスで代替してもよい。無菌水の皮膜は過酸化水素を抽出し取り込んでいるので、無菌空気のブローのみによってもこの皮膜を除去することができ、余剰の過酸化水素をボトル1外に速やかに排出することができる。あるいは、図1(D)の洗浄までに止め、図1(E)のエアブロー工程を省略することも可能である。
【0055】
なお、上記図1(A)〜(E)の工程は無菌雰囲気下で行われる。無菌雰囲気は図1(A)〜(E)の工程をチャンバーで覆い、チャンバー内部を陽圧の無菌エアで満たすことにより形成することができる。
【0056】
次に、流動体である煎茶を上記殺菌処理されたボトル1内に充填する方法について説明する。
【0057】
図2(I)に示すように、ボトル1内に口部1aから無菌の温水dを注入することによりボトル1を予熱する。この予熱温度は望ましくは50℃〜80℃であり、より望ましくは60℃〜75℃である。この予熱は図1(D)の温水による洗浄工程(温水リンス工程)で代替し、この洗浄後に次の液体窒素の供給工程を行うようにしてもよい。
【0058】
この予熱は温水dに代えて熱風を用いることも可能である。この場合は、図1(E)の熱風による乾燥工程(エアブロー工程)で代替し、この乾燥後に次の液体窒素の供給工程を行うようにしてもよい。
【0059】
図2(II)に示すように、ボトル1内に口部1aから液化不活性ガスである液体窒素を供給する。
【0060】
符号4は液体窒素の吐出ノズルを示す。この吐出ノズル4がボトル1の口部1aに臨み、ボトル1の口部1aを通して液体窒素gをボトル1内に滴状に吐出する。図示しないが、液体窒素gの供給源からこの吐出ノズル4に至る導管にはタイマーで制御される電磁弁が設けられ、この電磁弁の開閉動作により吐出ノズル4から液体窒素gが一定量ずつ吐出される。例えば、吐出ノズル内径を0.65インチとし、電磁弁を50ミリ秒間だけ開けることで0.1gの液体窒素を吐出するようにし、この開閉動作を1回、5回、10回、20回行うことで、液体窒素gをボトル1内にそれぞれ0.1g、0.5g、1g、2g供給することができる。液体窒素gの供給量は、ボトル1の容積が500mlの場合、望ましくは0.1〜10g、より望ましくは0.1g〜2gである。
【0061】
吐出される液体窒素gは予めフィルタ等により除塵され、除菌されている。無菌の液体窒素gは、窒素を液体の状態から一旦気体の状態にし、除菌フィルタ(例えば0.22μm)を通過させた後に、再び冷却することによって得ることができる。
【0062】
ボトル1は上述したように予熱しているので、液体窒素gのボトル1内での気化が促進され、ボトル1内の残留酸素の更なる低減化が可能となる。
【0063】
また、予熱工程が図2(I)に示した温水リンスにより行われる場合は、温水dの残水がボトル1内に存在する状態で液体窒素gを滴下すると、液体窒素gのボトル1内での気化がさらに促進され、ボトル1内の残留酸素の更なる低減化が可能となる。
【0064】
液体窒素供給工程を経たボトル1は、図2(III)に示すように、流動体充填工程へと送り、口部1aから加熱した流動体である煎茶Zを充填する。
【0065】
符号5は煎茶Zの充填ノズルを示す。この充填ノズル5がボトル1の口部1aに臨み、ボトル1の口部1aを通して煎茶Zをボトル1内に吐出する。図示しないが、煎茶Zの供給源からこの充填ノズル5に至る導管にはタイマーで制御される電磁弁が設けられ、この電磁弁の開閉動作により充填ノズル5から煎茶Zが所定量吐出される。煎茶Zは供給源等において予め加熱されている。
【0066】
充填液である煎茶Zの加熱温度は、いわゆるホットパック充填をする場合は、望ましくは80℃〜95℃である。この温度が高いほど、液体窒素の気化効率が高まる。この実施の形態のようにボトル1を予め殺菌したアセプティック(無菌)充填の場合は、ボトル1の肉厚を薄くすることができ、そのためボトルの強度が比較的低くなるので、煎茶Zの加熱温度は、望ましくは35℃〜50℃が最適である。煎茶Zの充填中、液体窒素gが窒素ガスhとなり、或いは窒素ガスhの気泡iとなってボトル1内に溜まった煎茶Z内を上昇し、口部1aからボトル1外に吹き出る。この窒素ガスhの流れにより、ボトル1内の空気がボトル1外に排出される。
【0067】
煎茶Zが所望量充填されたボトル1は、図2(IV)に示す発泡工程に置いて所定時間保持する。ボトル1は充填すべき煎茶Zの量が例えば500mlであれば、口部1aにおいて煎茶の液面Zaと口部1aの先端との間にヘッドスペースYが生じるように、多目の容積を有するように形成される。上記所定時間中に、窒素ガスhにより膨らんだ煎茶Zの細かい泡粒jがこのヘッドスペースY内で充満し、ヘッドスペースY内の空気を口部1aからボトル1外へ排出する。この発泡工程を終えた段階で、ヘッドスペースY内と煎茶Z内の双方における酸素量は液体窒素gを供給しない場合に比べ、60%〜95%低減可能である。
【0068】
発泡工程を終えたボトル1は、図2(V)に示す密封工程に送り、蓋(6)となるキャップ6で口部1aを閉じて密封する。キャップ6はボトル1と同様な殺菌処理により予め殺菌処理されている。
【0069】
図2(IV)に示すように、ボトル1の口部1aには雄ネジ筒が設けられ、この雄ネジ筒に螺合する雌ネジ筒がキャップ6に設けられる。キャップ6が口部1aにネジ締めされることにより、ボトル1内には窒素ガスhが閉じ込められ、ボトル1の内圧が高まり、これにより、ボトル1の可撓壁が補強され、ボトル1の座屈等に対する物理的強度が向上する。もちろん、キャップ6を締め付けるまでの時間を調整することにより、内圧を大気圧まで低下させることも可能である。
【0070】
また、液体窒素は−196℃である為、気化に数秒間を必要とする。したがって、液体窒素gの滴下からキャップ6による密封まで所定時間だけボトル1を開放状態に保持するのが望ましい。例えば、28mmφのキャップを用いて、ヘッドスペースYの容量を25mlとしたボトル1にキャッピングする場合、キャップ6をボトル1の口部1aに本巻締めすることなく望ましくは0.1秒〜5秒間、より望ましくは1.5秒以上の、キャップを口部1aに載せただけか、あるいは半回転させた程度の仮巻締め工程を設けることにより、ヘッドスペース内の空気をほぼ完全に窒素ガスに置換することが可能である。
【0071】
以上のように、予めボトル1を殺菌処理し、この殺菌処理されたボトル1を予熱した上でボトル1内に液体窒素gを滴下し、煎茶Zを充填することから、ボトル1を無菌状態のまま内容液の劣化に影響を及ぼす酸素を排除することができ、したがって煎茶Zの品質を高度に長期間常温のままで保持することが可能となる。
【0072】
なお、上記図2(I)〜(V)の工程は無菌雰囲気下で行われる。無菌雰囲気は図2(I)〜(V)の工程をチャンバーで覆い、チャンバー内部を陽圧の無菌エアで満たすことにより形成することができる。
【0073】
次に、上述した殺菌方法及び充填方法を実施するための無菌充填装置の一例について、図3に基づいて説明する。
【0074】
図3に示すように、この無菌充填装置は、上記ボトル1を所定の搬送路に沿って搬送する手段を有する。
【0075】
搬送手段は、複数の各種ホイール11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28を次々と隣接するごとく水平に配置し、各ホイール11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28の周りに鋏状のグリッパー(図示せず)を所定のピッチで多数配置することにより、構成される。
【0076】
もちろん、これらのホイール11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28は適宜追加削除が可能である。
【0077】
隣り合うホイールは互いに反対方向に同じ周速度で回転し、各ホイール11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28の外周でグリッパーが各ホイール11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28と同じ周速度で旋回する。
【0078】
搬送手段の搬送路は、各種ホイール11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28を接続することにより円弧の連続となって延び、この円弧の連続線上を多数のボトル1が所定の間隔で走行する。
【0079】
これにより、ボトル1は上流側のホイールのグリッパーにより把持されてホイールと共に旋回し、下流側のホイールに到達するとそのホイールのグリッパーに掴み替えられ、以後下流側のホイールへと一定速度で順次送られる。
【0080】
グリッパーは、図示しないが、ボトル1の胴体から突出する口部1aをその外側から挟む一対の挟み片を有する。一対の挟み片は引張スプリングにより常時閉じ方向に引っ張られる。一対の挟み片はボトル1の口部1aを常時把持しようとし、グリッパーで掴まれたボトル1は宙吊り状態となる。各ホイール11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28の内方にはグリッパーの挟み片を開状態又は閉状態に切り換えるための図示しないカムが配置される。各ホイール11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28が回転してグリッパーが隣り合うホイールのグリッパーと対向すると、一旦双方のグリッパーがボトル1の口部1aを把持し、その後上流側のグリッパーの挟み片が開いてボトル1を解放し、下流側のグリッパーの挟み片が閉じたままでボトル1を搬送する。以後同様な操作が行われることにより、ボトル1が下流側のホイールへと一列で搬送される。
【0081】
図3に示すように、上記搬送路に沿って、ボトル1を予備加熱する手段36と、予備加熱したボトル1内に過酸化水素のミストbを導入し(図1(B)参照)、ボトル1の内面を殺菌する手段37と、内面が殺菌されたボトル1内に熱風cを吹き込んで(図1(C)参照)、ボトル1を加熱するとともに、ボトル1外にミストbを排出する手段38と、ミストbを吹き込んだボトル1内を洗浄液e(図1(D)参照)で洗浄し過酸化水素をボトル1外に排出する過酸化水素排出手段40と、洗浄後に無菌の熱風f(図1(E)参照)をボトル1内に吹き込みボトル1内から水滴を除去するエアブロー手段41とが順に配置される。また、ボトル1の外面を過酸化水素のミストaで殺菌する外面殺菌手段42も上記搬送路に沿って設けられる。この実施の形態では外面殺菌手段42は上記予備加熱手段36と同じ箇所に設けられる。過酸化水素排出手段40とエアブロー手段41のいずれか一方は省略することも可能である。
【0082】
予備加熱手段36と外面殺菌手段42は第一のホイール14の外周に沿うように配置され、この第一のホイール14に接する第二のホイール15の外周に沿うようにボトル内面殺菌手段37が配置される。両ホイール14,15の回りは内部が陽圧の無菌空気で満たされた無菌チャンバー43で囲まれる。もちろん、各ホイール14,15ごとに無菌チャンバーで囲むことも可能である。
【0083】
予備加熱手段36等が設けられる第一のホイール14の上流側には複数個の導入ホイール11,12,13の列が接続され、最上流の導入ホイール11にはスクリュー44が接続される。これら導入ホイール11,12,13及びスクリュー44も無菌チャンバー45で囲まれる。図示しないブロー成形機等で成形されたボトル1がスクリュー44により一定ピッチで無菌チャンバー45内に導入されると、最上流の導入ホイール11のグリッパーにより口部1aを把持され、順次下流側の導入ホイール12,13のグリッパーを経て第一のホイール14のグリッパーに受け渡される。
【0084】
予備加熱手段36は、第一のホイール14の外周に沿って湾曲する熱風供給箱46を有する。この熱風供給箱46には図示しないがブロア、HEPAフィルタ及び電熱器が接続される。ブロアから引き込まれた空気がHEPAフィルタで浄化され、電熱器で所定温度まで加熱され、熱風となって熱風供給箱46内に送られる。第一のホイール14の旋回軸14aにはボトル1の口部1aを掴むグリッパーのほか熱風aを分配するための図示しないマニホルドが旋回可能に取り付けられ、第一のホイール14と一体で旋回するようになっている。また、各グリッパーの上方にノズル2が上下方向にスライド可能に、かつ第一のホイール14と共に旋回可能に配置される。ノズル2のスライド動作は、図示しないエアシリンダ装置又は旋回軸14aを取り巻くように配置される円筒カムにより行うことができる。各ノズル2にはマニホルドから伸びるフレキシブルホース製の分岐管が接続される。
【0085】
熱風供給箱46内の熱風aは旋回軸14aの中空部を通ってマニホルド、分岐管を経てノズル2に至る。第一のホイール14へとボトル1が導入されると、ボトル1と共に走行するノズル2が降下しボトル1内に侵入して熱風aを吹き込む。熱風aは図1(A)に示したように流れてボトル1全体を予備加熱する。熱風aの吹き込みは第一のホイール14が第二のホイール15に接する箇所までの間において行われる。この箇所にボトル1が接近すると、ノズル2がボトル1外へと上昇し熱風aの吹き込みを止める。
【0086】
予備加熱手段36は、ボトル1の口部1aをボトル1の胴体とは別に加熱する口部加熱手段を必要に応じて備える。この口部加熱手段は具体的には、ノズル2の外周に取り付けられる傘状の案内体2aであり、ノズル2がボトル1内に挿入されると同時にこの案内体2aがボトル1の口部1aの口縁を覆う。図1(A)に示したように、ノズル2の先端からボトル1内に吹き込まれた熱風aはボトル1内を巡った後口部1aから吹き出し、案内体2aに案内されつつ口部1aの外周に接触し口部1aを外側から加熱する。
【0087】
外面殺菌手段42は、図示しないミスト生成装置と、ボトル1の搬送路を所定長さで覆うトンネル状の囲い47とを有する。
【0088】
トンネル状の囲い47は、第一のホイール14が上記最下流の導入ホイール13に接する箇所から第二のホイール15に接する箇所へと円弧状に延びている。囲い47の天板には、旋回軸14aを中心点として円弧状に湾曲する溝が形成され、この溝内をグリッパーとノズル2とが通過し、各グリッパーにより把持されたボトル1が囲い47内を通過する。
【0089】
この囲い47の中には、図示しないが過酸化水素のミストを噴出するノズルと、ボトル1の搬送方向に逆行する向きに突出するバッフル部とが設けられる。
【0090】
外面殺菌用のノズルは囲い47内においてボトル1の搬送路の上流側に集中して配置され、ミスト生成装置から過酸化水素のミストbを供給される。ミスト生成装置は上述したミスト生成装置と同様の構成のものが使用される。ノズルから吹き出た過酸化水素のミストbは囲い47内に充満し、囲い47内を通過するボトル1の外面の全面に皮膜となってムラなく付着する。ミストbはボトル1の外面に付着して凝結し高濃度の過酸化水素となってボトル1の外面を適正に殺菌する。
【0091】
ボトル内面殺菌手段37は第二のホイール15が上記第一のホイール14と接する箇所から第三のホイール16に接する箇所に至るまでの搬送路上に設けられる。第二のホイール15の外周におけるグリッパーの真上に位置するように、ボトル内面殺菌手段37としてのミスト生成装置がグリッパーのピッチと同じピッチの間隔で複数台取り付けられ、各ミスト生成装置のノズル3がグリッパーに保持されたボトル1の口部1aに対向する。各ミスト生成装置で生成された過酸化水素のミストbは、各ノズル3の下方を走行するボトル1内に口部1aから吹き込まれ、ボトル1の内面の全面にムラなく付着する。ミストbはボトル1の内面に付着して凝結し、高濃度の過酸化水素となってボトル1の内面を速やかに殺菌する。
【0092】
ミスト排出手段38は、第三のホイール16が上記第二のホイール15と接する箇所から第四のホイール17に接する箇所に至るまでの搬送路上に設けられる。第三のホイール16の回りと第四のホイール17の回りは、それぞれ内部が陽圧の無菌空気で満たされた無菌チャンバー51,52で囲まれる。
【0093】
ミスト排出手段38は、第三のホイール16の各グリッパーの真上でグリッパーと共に旋回するノズル7を備える。ノズル7は上記ボトル内面殺菌手段37と同様な機構によって上下動可能であり、また、上記ボトル内面殺菌手段37と同様にして加熱した無菌空気である熱風cを供給される。ノズル7は上記ボトル内面殺菌手段37によりミストbが吹き込まれたボトル1がグリッパーに掴まれた状態で到来すると、ボトル1内に侵入して熱風cを吹き込む。熱風は図1(C)に示したように流れてボトル1の全体を加熱するとともに、ボトル1外にミストbを排出する。熱風cの吹き込みは第三のホイール16が第四のホイール17に接する箇所までの間において行われる。第四のホイール17に接する箇所にボトル1が接近すると、ノズル7がボトル1外へと上昇し熱風cの吹き込みを止める。
【0094】
上記ボトル内面殺菌手段37によりミストbを吹き込まれたボトル1は、このミスト排出手段38に至るまでの搬送路上において内部がミストbで充満した状態に一定時間保持されるが、この一定時間内にボトル1の内面に付着し凝結した高濃度の過酸化水素がボトル1の内面をより効果的に殺菌する。
【0095】
第四のホイール17は、例えば殺菌装置の始動当初に生じる殺菌不良のボトル1を回収するために設けられる。殺菌不良のボトル1の到来を知らせる信号が図示しない制御部から発せられると、第三のホイール16のグリッパーから第四のホイール17のグリッパーがボトル1を受け取って搬送路外に排出する。正常に殺菌されたボトル1は第三のホイール16の搬送路から第四のホイール17を素通りして次の第五のホイール18における搬送路へと向う。
【0096】
第五のホイール18及び第六のホイール19の回りは、第六のホイール19に接する第七のホイール20の周りと共に、内部が陽圧の無菌空気で満たされた無菌チャンバー53で囲まれる。
【0097】
過酸化水素排出手段40は、第六のホイール19が上記第五のホイール18に接する箇所から第七のホイール20に接する箇所に至るまでの搬送路上に設けられる。
【0098】
この第六のホイール19の外周にも上記グリッパーと同様なグリッパーが所定のピッチで配置されるが、これらのグリッパーは図示しない水平枢軸を介して第六のホイール19側に支持される。また、第六のホイール19の旋回軸19aを中心にして円弧状に湾曲する図示しないカムに各グリッパーが接触するようになっており、第六のホイール19の旋回によりグリッパーが第五のホイール18との接点からボトル1を受け取って進行すると、カムの案内により上下反転し、従って、ボトル1も上下反転してその口部1aが下向きとなる。
【0099】
過酸化水素排出手段40は、各グリッパーの真下にグリッパーと共に旋回運動するノズル9を備える。各ノズル9は各グリッパーの真上において上記予備加熱手段36と同様な機構によって上下動しボトル1内に出入り可能である。また、過酸化水素排出手段40は上記予備加熱手段36と同様な機構によって無菌水である洗浄液eをマニホルド、中空管等からノズル9に供給するようになっている。無菌水は常温でもよいが洗浄効果を高めるため望ましくは所定の温度まで予め加熱された温水とされる。ノズル9から吹き出た洗浄液eはボトル1内に流入した後、口部1aから流れ出る。過酸化水素排出手段40の下方にはこのボトル1外に流出する洗浄液eを受けるための樋部材(図示せず)が設けられる。
【0100】
グリッパーにより逆さまに保持されたボトル1が到来すると、ノズル9がボトル1内に侵入し洗浄液eを噴出する。噴き出した洗浄液eはボトル1の内面から残留した過酸化水素を無菌水の皮膜ごと洗い流し、ボトル1の下方に流れ落ちる。流れ落ちた洗浄液eは樋部材に受け止められ回収される。洗浄液eの注入は第六のホイール19が第七のホイール20に接する箇所の手前までの間において行われる。この第七のホイール20の手前の箇所にボトル1が接近すると、洗浄液eの注入が停止される。ボトル1内は過酸化水素抽出手段40により洗浄され、過酸化水素が容器外に排出される。
【0101】
エアブロー手段41は、第六のホイール19における搬送路上において、上記過酸化水素の容器外排出が終了した箇所から第六のホイール19が第七のホイール20に接する箇所までの間に配置される。エアブロー手段41は、第六のホイール19のグリッパーにより下向きに保持されたボトル1内に無菌空気からなる熱風fを吹き込むためのノズル10を備える。これらのノズル10はグリッパーに固定される。
【0102】
各ノズル10には上記予備加熱手段47と同様にマニホルド等を介して無菌空気の熱風fが供給される。無菌空気は必要に応じて常温で使用される。ノズル10は上記過酸化水素排出が終了したボトル1がグリッパーに掴まれた状態で到来すると、ボトル1の口部1aからボトル1内に熱風fを吹き込む。熱風fは図1(F)に示したように流れてボトル1全体を加熱するとともに、ボトル1内面に付着した無菌水を吹き飛ばし、さらに必要であれば乾燥させる。これにより、過酸化水素の除去が促進され、ボトル1内での過酸化水素の残留が更に低減する。熱風fの吹き込みは第六のホイール19が第七のホイール20に接する手前の箇所までの間において行われる。第七のホイール20に接する箇所にボトル1が接近すると、グリッパーがカムに接することにより元の正立状態に復帰し、第七のホイール20のグリッパーに把持される。
【0103】
上記過酸化水素の容器外排出等が行われる無菌チャンバー53に接して、無菌処理されたボトル1内への煎茶の充填が行われる無菌チャンバー56が設けられる。
【0104】
この無菌チャンバー56内には上記第七のホイール20に連結される各種ホイール21,22,23の列が配置され、所定のホイール23に接するように煎茶Zの充填機57が設置される。ボトル1は各種ホイール21,22,23のグリッパーに把持されて搬送されつつ充填機57で煎茶Zを充填された後、次の無菌チャンバー58内に移動する。
【0105】
ホイール23における充填機57よりも上流側には、液体窒素の供給手段として吐出ノズル4(図2(II)参照)が配置される。この吐出ノズル4から所望量の液体窒素gがグリッパーで把持されたボトル1の口部1aに向かって滴状に噴射される。
【0106】
ここで、図2(I)の予熱工程は上記第六のホイール19において過酸化水素抽出手段40又はエアブロー手段41において温水又は熱風の供給によりすでに行われている。すなわち、殺菌装置内の温水リンス手段がボトル1の予熱手段を兼ねている。したがって、液体窒素gの滴下はボトル1がまだ温かいうちに行われる。第六のホイール19の過酸化水素抽出手段40又はエアブロー手段41は液体窒素gを滴下する位置に近い例えばホイール21,22の回りに移設してもよいし、あるいは同様な予熱手段を別途設けてもよい。また、液体窒素gを滴下する際は、ボトル1内には過酸化水素抽出手段40による温水リンスの残水が存在する状態であるのが、液体窒素gのガス化を促進するうえで望ましい。
【0107】
充填機57は充填手段として図2(III)に示した充填ノズル5を備える。この充填ノズル5はボトル1の走行に同期的に走行しつつ煎茶Zを口部1aからボトル1内に充填する。煎茶Zは充填機57内で所望の温度まで加熱されている。図2(III)に示したように、加熱された煎茶Zの充填により、ボトル1内からは揮発した窒素ガスhが口部1aから噴出し、ボトル1内に溜まった煎茶Z内では窒素ガスhが泡iとなって口部1aへと上昇する。これらの窒素ガスhによりボトル1内から空気が排出される。
【0108】
次の無菌チャンバー58内には、各種ホイール24,25,26,27,28の列が配置され、所定のホイール25に対して打栓機59が設置される。
【0109】
煎茶Zが充填されたボトル1は、ホイール23,24上の符号29で示す搬送路を経て打栓機59に至るが、この搬送路29において図2(IV)に示した発泡工程が実行される。すなわち、ボトル1がこの搬送路29を走行する間に、窒素ガスhにより膨らんだ煎茶の細かい泡jがボトル1のヘッドスペースY内で充満し、ヘッドスペースY内の空気を口部1aからボトル1外へ排出する。
【0110】
煎茶Zが充填されたボトル1が無菌チャンバー58内に搬入され、打栓機59に到達すると、ホイール25においてグリッパーに把持されたボトル1の口部1aに打栓機59により図2(V)に示したようにキャップ6が被せられ密封される。
【0111】
キャップ6で密封されたボトル1は、リジェクト用のホイール27を経由して搬出用のホイール28から無菌チャンバー58外に搬出され出荷される。一方、充填、キャッピング等に支障のあるボトル1はリジェクト用のホイール27から別経路で無菌チャンバー58外に搬出され回収される。
【0112】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施の形態では、容器としてボトルを使用したが、本発明はボトル以外の形態であるカップ状の容器、パウチ、スパウト付きパウチ等の容器についても適用可能である。プラスチック製の容器以外の例えばガラス製、金属製の容器についても適用可能である。液化不活性ガスは液体窒素以外のガスを用いることも可能である。また、充填する流動体を飲料である煎茶としたが、それ以外の抹茶、紅茶、ウーロン茶等の茶飲料、ジュース、機能性飲料、酸化劣化の著しい飲料、飲料以外の流動体の充填にも適用可能である。さらに、本発明においては上記殺菌方法以外の他の殺菌方法を利用して容器を殺菌することも可能である。
【実施例1】
【0113】
液体窒素を滴下する前に、ボトルを温水リンスした場合としない場合のボトル内酸素濃度を比較したところ、表1と表2の結果を得た。
【0114】
ボトルは上記殺菌方法により殺菌処理した容量500mlのPET製ボトルを用い、このボトル内を68℃に加熱した温水でリンスした。そして、一部のボトルについて、ボトル内面温度が65℃程度の時に液体窒素を滴下した。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
表1に示すように、温水リンスを行った後、液体窒素1.0gを滴下した場合は、ボトル内酸素濃度は2.3%となり、これは表2に示すようにボトル内の酸素低減効果は90%であることが確認された。一方、温水リンスをしない場合は、表1に示すようにボトル内酸素濃度は5.7%となり、表2に示すようにボトル内の酸素低減効果は74%に止まることが確認された。
【0118】
また、表2中、液体窒素滴下量が1.0gの欄において、温水リンスを行った場合はボトル内に水が1〜2cc程度残留しており、その状態で液体窒素を滴下すると、ボトル内酸素低減効果は90%になる。これに対し、温水リンスを行わない場合、すなわちボトル内が乾いた状態で液体窒素を滴下すると、ボトル内酸素低減効果は74%になる。これにより、液体窒素の滴下はボトル内が温水で濡れた状態にある場合に行うのが、ボトル内酸素低減効果を高めるうえで望ましいということができる。
【0119】
なお、ボトル内酸素濃度は、ボトルのサンプル作成直後、ボトルを30回振った後に、非破壊検査測定機 (Presens製Fibox3)を用いて測定した。表1,2中の値はそれぞれボトル3個についての平均値である。
【実施例2】
【0120】
実施例1で使用したボトルと同様な複数個のボトルを用意し、各ボトルに表3の条件A、B、C、D、Fで液体窒素を入れた後に加熱した煎茶を充填し、ヘッドスペース内で発泡させた。泡はヘッドスペースから溢れるまで発生させた。また、他のボトルには表3の条件E、G、Hで液体窒素を入れることなく加熱した煎茶を充填した。液体窒素を入れない場合は、泡立ちは生じなかった。
【0121】
【表3】

【0122】
この結果は表4、表5に示すとおりである。
【0123】
【表4】

【0124】
表4は所定温度の煎茶を充填した場合における液体窒素の滴下量とヘッドスペース内及び煎茶内の酸素量との関係を表したもので、図4の棒グラフに示される。
【0125】
【表5】

【0126】
表5は所定量の液体窒素を滴下した場合における充填温度とヘッドスペース内及び煎茶内の酸素量との関係を表したもので、図5の棒グラフに示される。
【0127】
上記表3、表4及び図4から次の点が明らかになった。
【0128】
25℃の煎茶を充填する場合、液体窒素の供給量を0.1gから2.0gへと増加するに連れてヘッドスペース内の酸素量と煎茶内の酸素量が共に減少する。液体窒素1.0gの場合(条件C)は、液体窒素を入れない場合(条件E)に比べ全酸素量の約60%を除くことができ、液体窒素2.0gの場合(条件D)は、約80%を除くことができた。ただし、液体窒素が2.0gを越えると、煎茶がボトルの口部から噴き出す現象が認められた。
【0129】
また、上記表3、表5及び図5から次の点が明らかになった。
【0130】
液体窒素の供給量を0.5gにした場合、充填する煎茶の温度を25℃から50℃へと上げるとヘッドスペース内の酸素量と煎茶内の酸素量が共に顕著に減少する。煎茶の温度が50℃の場合(条件F)は、液体窒素を入れない場合(条件H)に比べ全酸素量の約90%を除くことができた。液体窒素を入れないで煎茶の温度をさらに70℃まで高めて充填した場合(条件G)は、ヘッドスペース内の酸素量が条件Hの場合よりも低減したが、煎茶内の酸素量は低減することができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】容器の殺菌方法の一例を表す説明図である。
【図2】本発明に係る充填方法の一実施形態を表す説明図である。
【図3】本発明に係る充填方法を実施するための装置の平面図である。
【図4】表4のデータの棒グラフである。
【図5】表5のデータの棒グラフである。
【符号の説明】
【0132】
1…ボトル
1a…ボトルの口部
6…キャップ
23,24,25…ホイール
56,58…無菌チャンバー
g…液体窒素
h…窒素ガス
j…煎茶の泡
Y…ヘッドスペース
Z…煎茶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を予熱し、この予熱した容器内に液化不活性ガスを滴下し、液化不活性ガスの入った容器内に流動体を充填し、しかる後に容器を密封することを特徴とする流動体の充填方法。
【請求項2】
請求項1に記載の流動体の充填方法において、容器を加熱して殺菌処理し、この殺菌処理時の余熱を上記予熱の熱として利用することを特徴とする流動体の充填方法。
【請求項3】
請求項1に記載の流動体の充填方法において、容器の予熱を温水リンスまたはホットエアにより行うことを特徴とする流動体の充填方法。
【請求項4】
請求項3に記載の流動体の充填方法において、温水リンス時の温水の残水が容器内に存在する状態で液化不活性ガスを滴下することを特徴とする流動体の充填方法。
【請求項5】
請求項1に記載の流動体の充填方法において、容器の予熱温度が50℃〜80℃であることを特徴とする流動体の充填方法。
【請求項6】
請求項1に記載の流動体の充填方法において、液化不活性ガスが液体窒素であることを特徴とする流動体の充填方法。
【請求項7】
請求項1に記載の流動体の充填方法において、容器が可撓壁を有するプラスチック製ボトルであり、液化不活性ガスが気化したガスにより内圧が大気圧以上に高められたことを特徴とする流動体の充填方法。
【請求項8】
請求項1に記載の流動体の充填方法において、30℃〜95℃に加熱した流動体を容器内に充填することを特徴とする流動体の充填方法。
【請求項9】
請求項1に記載の流動体の充填方法において、流動体が茶飲料であることを特徴とする流動体の充填方法。
【請求項10】
請求項1に記載の流動体の充填方法において、無菌雰囲気下で、無菌の予熱した容器に対し、無菌の液化不活性ガスの滴下と、無菌の流動体の充填と、密封とを順次行うことを特徴とする流動体の充填方法。
【請求項11】
容器を所定の搬送路に沿って搬送する搬送手段を有し、この搬送路に沿って、容器を予熱する予熱手段と、予熱した容器内に液化不活性ガスを供給する液化不活性ガス供給手段と、液化不活性ガスの入った容器内に流動体を充填する流動体充填手段と、上記流動体を充填した容器を密封する密封手段とが順に配置されたことを特徴とする流動体の充填装置。
【請求項12】
請求項11に記載の流動体の充填装置において、容器の予熱手段が温水リンス手段またはエアブロー手段であることを特徴とする流動体の充填装置。
【請求項13】
請求項11に記載の流動体の充填装置において、搬送手段の搬送路が複数個のホイールを接続することにより円弧の連続となって延びていることを特徴とする流動体の充填装置。
【請求項14】
請求項11に記載の流動体の充填装置において、搬送路の上流側に容器の殺菌装置が設けられ、この搬送路が殺菌装置内での容器の搬送路に連結されたことを特徴とする流動体の充填装置。
【請求項15】
請求項14に記載の流動体の充填装置において、殺菌装置内に温水リンス手段またはエアブロー手段が設けられ、この温水リンス手段またはエアブロー手段が容器の予熱手段を兼ねることを特徴とする流動体の充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−155941(P2008−155941A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345830(P2006−345830)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】