説明

流動層乾燥装置

【課題】流動層乾燥装置において、乾燥効率の向上を可能とする。
【解決手段】中空形状をなす乾燥容器101と、乾燥容器101の一端側に原炭を投入する原炭投入口102と、乾燥容器101の他端側から原炭が加熱乾燥した乾燥炭を排出する乾燥炭排出口103と、乾燥容器101の下部に流動化ガスを供給することで原炭と共に流動層Sを形成する流動化ガス供給口104と、乾燥容器101の一端側における原炭投入口102より上方から流動化ガス及び発生蒸気を排出するガス排出口105と、流動層Sの原炭を加熱する伝熱管106とを設け、制御装置125は、第1温度センサ121が検出した流動層Sの温度に基づいてガス排出ライン113の流量調整弁114の開度を調整することで、乾燥容器101内の圧力を変更して露点温度を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動化ガスにより被乾燥物を流動させながら乾燥させる流動層乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、石炭ガス化複合発電設備は、石炭をガス化し、コンバインドサイクル発電と組み合わせることにより、従来型の石炭火力に比べてさらなる高効率化・高環境性を目指した発電設備である。この石炭ガス化複合発電設備は、資源量が豊富な石炭を利用可能であることも大きなメリットであり、適用炭種を拡大することにより、さらにメリットが大きくなることが知られている。
【0003】
従来の石炭ガス化複合発電設備は、一般的に、給炭装置、乾燥装置、石炭ガス化炉、ガス精製装置、ガスタービン設備、蒸気タービン設備、排熱回収ボイラ、ガス浄化装置などを有している。従って、石炭が乾燥されてから粉砕され、石炭ガス化炉に対して、微粉炭として供給されると共に、空気が取り込まれ、この石炭ガス化炉で石炭が燃焼ガス化されて生成ガス(可燃性ガス)が生成される。そして、この生成ガスがガス精製されてからガスタービン設備に供給されることで燃焼して高温・高圧の燃焼ガスを生成し、タービンを駆動する。タービンを駆動した後の排気ガスは、排熱回収ボイラで熱エネルギが回収され、蒸気を生成して蒸気タービン設備に供給され、タービンを駆動する。これにより発電が行なわれる。一方、熱エネルギが回収された排気ガスは、ガス浄化装置で有害物質が除去された後、煙突を介して大気へ放出される。
【0004】
ところで、このような石炭ガス化複合発電設備にて使用する石炭は、瀝青炭や無煙炭のように高い発熱量を有する高品位の石炭(高品位炭)だけでなく、亜瀝青炭や褐炭のように比較的低い発熱量を有する低品位の石炭(低品位炭)がある。この低品位炭は、持ち込まれる水分量が多く、この水分により発電効率が低下してしまう。そのため、低品位炭の場合には、上述した乾燥装置により石炭を乾燥して水分を除去してから粉砕して石炭ガス化炉に供給する必要がある。
【0005】
このような石炭を乾燥する乾燥装置としては、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された流動層乾燥機の制御方法及び装置は、熱源である排ガスを熱源兼流動化気体として流動層乾燥機に導入して湿潤原料を乾燥させ、その下部に導入されるガスの一部をバイパスさせて排ガス出口の近傍に導入するものであって、流動層の安定化のためにFBD導入ガス量を一定値に設定すると共に処理量及び乾燥度を設定し、排ガス系統及び循環系統の結露防止のためにFBD出口排ガス相対湿度を設定し、更に、熱源の排ガス温度を測定し、その変動に応じて各制御量としてのFBD導入ガス温度、バイパス排ガス量、循環排ガス量、熱源の排ガス量を演算して制御するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−253251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1の流動層乾燥機の制御方法及び装置では、流動化気体として流動層乾燥機に導入して湿潤原料を乾燥させる熱源としての排ガス温度を測定し、その変動に応じて流動層乾燥機導入ガス温度、バイパス排ガス量、循環排ガス量、熱源の排ガス量を制御している。ところが、流動層乾燥機は、内部に投入される湿潤原料や乾燥機本体の熱容量が大きいことから応答時間が長くなり、排ガスの温度や量を調整しても、流動層乾燥機内の温度を早期に変更することはできず、常に安定した運転を続行して目標とする処理量及び乾燥度を維持することが困難となる。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、乾燥効率の向上を可能とする流動層乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の流動層乾燥装置は、中空形状をなす乾燥容器と、該乾燥容器の一端側に湿潤原料を投入する湿潤原料投入部と、前記乾燥容器の他端側から湿潤原料が加熱乾燥した乾燥物を排出する乾燥物排出部と、前記乾燥容器の下部に流動化ガスを供給することで湿潤原料と共に流動層を形成する流動化ガス供給部と、前記乾燥容器の一端側における前記湿潤原料投入部より上方から流動化ガス及び発生蒸気を排出するガス排出部と、前記流動層の湿潤原料を加熱する加熱部と、前記乾燥容器内の露点温度を変更する露点温度変更装置と、前記流動層の温度を検出する流動層温度検出センサと、該流動層温度検出センサの検出結果に基づいて前記露点温度変更装置を制御する制御装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0010】
従って、湿潤原料投入部から湿潤原料が乾燥容器内に投入されると共に、流動化ガス供給部から流動化ガスが乾燥容器の下部に供給されると、湿潤原料が流動化ガスにより流動することで流動層が形成され、この流動層の湿潤原料が加熱部により加熱されることで乾燥して乾燥物となり、この乾燥物が乾燥物排出部から外部に排出される一方、流動化ガスと湿潤原料が乾燥することで発生した蒸気がガス排出部から外部に排出される。このとき、流動層温度検出センサは流動層の温度を検出しており、制御装置は、流動層の温度が変動すると、露点温度変更装置を制御して乾燥容器内の露点温度を変更する。すると、乾燥容器内における湿潤原料の乾燥度合が一定となり、常に安定した湿潤原料の乾燥処理を行うことが可能となり、乾燥効率の向上を可能とすることができる。
【0011】
本発明の流動層乾燥装置では、前記露点温度変更装置は、前記乾燥容器内の圧力を変更する減圧装置であって、前記制御装置は、前記流動層の温度に基づいて前記減圧装置を制御することを特徴としている。
【0012】
従って、流動層の温度は、乾燥容器内における水蒸気分圧に依存する露点温度により決定されるものであるから、流動層の温度に基づいて乾燥容器内の圧力を変更することで、流動層の温度と乾燥容器内の露点温度との偏差を所定値に維持することが可能となり、常に安定した湿潤原料の乾燥処理を行うことができる。
【0013】
本発明の流動層乾燥装置では、前記制御装置は、前記流動層の温度が低下したときに前記減圧装置を制御して前記乾燥容器内の圧力を低下させることを特徴としている。
【0014】
従って、流動層の温度が低下したら乾燥容器内の圧力を低下させることで、容易に流動層の温度と乾燥容器内の露点温度との偏差を所定値に維持することができる。
【0015】
本発明の流動層乾燥装置では、前記流動化ガス供給部は、前記乾燥容器の下部に流動化ガスとしての水蒸気及び非凝縮性ガスを供給可能であり、前記露点温度変更装置は、前記流動化ガス供給部を制御して前記乾燥容器内の水蒸気濃度を調整する装置であって、前記制御装置は、前記流動層の温度に基づいて前記水蒸気濃度調整装置を制御することを特徴としている。
【0016】
従って、流動層の温度は、乾燥容器内における水蒸気分圧に依存する水蒸気の露点温度により決定されるものであるから、流動層の温度に基づいて乾燥容器内の水蒸気濃度を調整することで、流動層の温度と乾燥容器内の露点温度との偏差を所定値に維持することが可能となり、常に安定した湿潤原料の乾燥処理を行うことができる。
【0017】
本発明の流動層乾燥装置では、前記制御装置は、前記流動層の温度が低下したときに、前記水蒸気濃度調整装置を制御して前記乾燥容器内の水蒸気濃度を低下させることを特徴としている。
【0018】
従って、流動層の温度が低下したときに乾燥容器内の水蒸気濃度を低下させることで、容易に流動層の温度と乾燥容器内の露点温度との偏差を所定値に維持することができる。
【0019】
本発明の流動層乾燥装置では、前記制御装置は、前記流動層の温度が低下したときに、非凝縮性ガスの供給量を増加させることを特徴としている。
【0020】
従って、流動層の温度が低下したときに非凝縮性ガスの供給量を増加させることで、乾燥容器内の流動化ガス量が増加することとなり、湿潤原料の流動化を促進することが可能となり、乾燥効率の向上を可能とすることができる。
【0021】
本発明の流動層乾燥装置では、前記制御装置は、前記流動層の温度が低下したときに、水蒸気の供給量を減少させる一方、非凝縮性ガスの供給量を増加させることで、流動化ガス量を一定に維持することを特徴としている。
【0022】
従って、流動層の温度が低下したときに水蒸気の供給量を減少させる一方、非凝縮性ガスの供給量を増加させることで、乾燥容器内の流動化ガス量が一定量に維持されることとなり、乾燥容器に作用する圧力が過大となることはなく、安全性を向上することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の流動層乾燥装置によれば、乾燥容器内の露点温度を変更する露点温度変更装置と、流動層の温度を検出する流動層温度検出センサと、流動層温度検出センサの検出結果に基づいて露点温度変更装置を制御する制御装置を設けるので、乾燥容器内における湿潤原料の乾燥度合が一定となり、常に安定した湿潤原料の乾燥処理を行うことが可能となり、乾燥効率の向上を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る流動層乾燥装置が適用された石炭ガス化複合発電設備の概略構成図である。
【図2】図2は、実施例1の流動層乾燥装置の概略図である。
【図3】図3は、容器内圧力に対する露点温度を表すグラフである。
【図4】図4は、本発明の実施例2に係る流動層乾燥装置の概略図である。
【図5】図5は、乾燥容器内の水蒸気濃度に対する露点温度を表すグラフである。
【図6】図6は、本発明の実施例3に係る流動層乾燥装置の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る流動層乾燥装置の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の実施例1に係る流動層乾燥装置が適用された石炭ガス化複合発電設備の概略構成図、図2は、実施例1の流動層乾燥装置の概略図、図3は、容器内圧力に対する露点温度を表すグラフである。
【0027】
実施例1の石炭ガス化複合発電設備(IGCC:Integrated Coal Gasification Combined Cycle)は、空気を酸化剤としてガス化炉で石炭ガスを生成する空気燃焼方式を採用し、ガス精製装置で精製した後の石炭ガスを燃料ガスとしてガスタービン設備に供給して発電を行っている。即ち、本実施例の石炭ガス化複合発電設備は、空気燃焼方式(空気吹き)の発電設備である。この場合、ガス化炉に供給する湿潤原料として低品位炭を使用している。
【0028】
実施例1において、図1に示すように、石炭ガス化複合発電設備10は、給炭装置11、流動層乾燥装置12、微粉炭機(ミル)13、石炭ガス化炉14、チャー回収装置15、ガス精製装置16、ガスタービン設備17、蒸気タービン設備18、発電機19、排熱回収ボイラ(HRSG:Heat Recovery Steam Generator)20を有している。
【0029】
給炭装置11は、原炭バンカ21と、石炭供給機22と、クラッシャ23とを有している。原炭バンカ21は、低品位炭を貯留可能であって、所定量の低品位炭を石炭供給機22に投下することができる。石炭供給機22は、原炭バンカ21から投下された低品位炭をコンベアなどにより搬送し、クラッシャ23に投下することができる。このクラッシャ23は、投下された低品位炭を所定の大きさに破砕することができる。
【0030】
流動層乾燥装置12は、給炭装置11により投入された低品位炭に対して乾燥用蒸気(過熱蒸気)を供給することで、この低品位炭を流動させながら加熱乾燥するものであり、低品位炭が含有する水分を除去することができる。そして、この流動層乾燥装置12は、下部から取り出された乾燥済の低品位炭を冷却する冷却器31が設けられ、乾燥冷却済の乾燥炭が乾燥炭バンカ32に貯留される。また、流動層乾燥装置12は、上部から取り出された蒸気から乾燥炭の粒子を分離する乾燥炭サイクロン33と乾燥炭電気集塵機34が設けられ、蒸気から分離された乾燥炭の粒子が乾燥炭バンカ32に貯留される。なお、乾燥炭電気集塵機34で乾燥炭が分離された蒸気は、蒸気圧縮機35で圧縮されてから流動層乾燥装置12に乾燥用蒸気として供給される。
【0031】
微粉炭機13は、石炭粉砕機であって、流動層乾燥装置12により乾燥された低品位炭(乾燥炭)を細かい粒子状に粉砕して微粉炭を製造するものである。即ち、微粉炭機13は、乾燥炭バンカ32に貯留された乾燥炭が石炭供給機36により投下され、この乾燥炭)を所定粒径以下の低品位炭、つまり、微粉炭とするものである。そして、微粉炭機13で粉砕後の微粉炭は、微粉炭バグフィルタ37a,37bにより搬送用ガスから分離され、微粉炭供給ホッパ38a,38bに貯留される。
【0032】
石炭ガス化炉14は、微粉炭機13で処理された微粉炭が供給可能であると共に、チャー回収装置15で回収されたチャー(石炭の未燃分)が戻されてリサイクル可能となっている。
【0033】
即ち、石炭ガス化炉14は、ガスタービン設備17(圧縮機61)から圧縮空気供給ライン41が接続されており、このガスタービン設備17で圧縮された圧縮空気が供給可能となっている。空気分離装置42は、大気中の空気から窒素と酸素を分離生成するものであり、第1窒素供給ライン43が石炭ガス化炉14に接続され、この第1窒素供給ライン43に微粉炭供給ホッパ38a,38bからの給炭ライン44a,44bが接続されている。また、第2窒素供給ライン45も石炭ガス化炉14に接続され、この第2窒素供給ライン45にチャー回収装置15からのチャー戻しライン46が接続されている。更に、酸素供給ライン47は、圧縮空気供給ライン41に接続されている。この場合、窒素は、石炭やチャーの搬送用ガスとして利用され、酸素は、酸化剤として利用される。
【0034】
石炭ガス化炉14は、例えば、噴流床形式のガス化炉であって、内部に供給された石炭、チャー、空気(酸素)、またはガス化剤としての水蒸気を燃焼・ガス化すると共に、二酸化炭素を主成分とする可燃性ガス(生成ガス、石炭ガス)が発生し、この可燃性ガスをガス化剤としてガス化反応が起こる。なお、石炭ガス化炉14は、微粉炭の混入した異物を除去する異物除去装置48が設けられている。この場合、石炭ガス化炉14は噴流床ガス化炉に限らず、流動床ガス化炉や固定床ガス化炉としてもよい。そして、この石炭ガス化炉14は、チャー回収装置15に向けて可燃性ガスのガス生成ライン49が設けられており、チャーを含む可燃性ガスが排出可能となっている。この場合、ガス生成ライン49にガス冷却器を設けることで、可燃性ガスを所定温度まで冷却してからチャー回収装置15に供給するとよい。
【0035】
チャー回収装置15は、集塵装置51と供給ホッパ52とを有している。この場合、集塵装置51は、1つまたは複数のバグフィルタやサイクロンにより構成され、石炭ガス化炉14で生成された可燃性ガスに含有するチャーを分離することができる。そして、チャーが分離された可燃性ガスは、ガス排出ライン53を通してガス精製装置16に送られる。ホッパ52は、集塵装置51で可燃性ガスから分離されたチャーを貯留するものである。なお、集塵装置51と供給ホッパ52との間にビンを配置し、このビンに複数の供給ホッパ52を接続するように構成してもよい。そして、供給ホッパ52からのチャー戻しライン46が第2窒素供給ライン45に接続されている。
【0036】
ガス精製装置16は、チャー回収装置15によりチャーが分離された可燃性ガスに対して、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物を取り除くことで、ガス精製を行うものである。そして、ガス精製装置16は、可燃性ガスを精製して燃料ガスを製造し、これをガスタービン設備17に供給する。なお、このガス精製装置16では、チャーが分離された可燃性ガス中にはまだ硫黄分(HS)が含まれているため、アミン吸収液によって除去することで、硫黄分を最終的には石膏として回収し、有効利用する。
【0037】
ガスタービン設備17は、圧縮機61、燃焼器62、タービン63を有しており、圧縮機61とタービン63は、回転軸64により連結されている。燃焼器62は、圧縮機61から圧縮空気供給ライン65が接続されると共に、ガス精製装置16から燃料ガス供給ライン66が接続され、タービン63に燃焼ガス供給ライン67が接続されている。また、ガスタービン設備17は、圧縮機61から石炭ガス化炉14に延びる圧縮空気供給ライン41が設けられており、中途部に昇圧機68が設けられている。従って、燃焼器62では、圧縮機61から供給された圧縮空気とガス精製装置16から供給された燃料ガスとを混合して燃焼し、タービン63にて、発生した燃焼ガスにより回転軸64を回転することで発電機19を駆動することができる。
【0038】
蒸気タービン設備18は、ガスタービン設備17における回転軸64に連結されるタービン69を有しており、発電機19は、この回転軸64の基端部に連結されている。排熱回収ボイラ20は、ガスタービン設備17(タービン63)からの排ガスライン70に設けられており、空気と高温の排ガスとの間で熱交換を行うことで、蒸気を生成するものである。そのため、排熱回収ボイラ20は、蒸気タービン設備18のタービン69との間に蒸気供給ライン71が設けられると共に、蒸気回収ライン72が設けられ、蒸気回収ライン72に復水器73が設けられている。従って、蒸気タービン設備18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気によりタービン69が駆動し、回転軸64を回転することで発電機19を駆動することができる。
【0039】
そして、排熱回収ボイラ20で熱が回収された排ガスは、ガス浄化装置74により有害物質を除去され、浄化された排ガスは、煙突75から大気へ放出される。
【0040】
ここで、実施例1の石炭ガス化複合発電設備10の作動について説明する。
【0041】
実施例1の石炭ガス化複合発電設備10において、給炭装置11にて、原炭(低品位炭)が原炭バンカ21に貯留されており、この原炭バンカ21の低品位炭が石炭供給機22によりクラッシャ23に投下され、ここで所定の大きさに破砕される。そして、破砕された低品位炭は、流動層乾燥装置12により加熱乾燥された後、冷却器31により冷却され、乾燥炭バンカ32に貯留される。また、流動層乾燥装置12の上部から取り出された蒸気は、乾燥炭サイクロン33及び乾燥炭電気集塵機34により乾燥炭の粒子が分離され、蒸気圧縮機35で圧縮されてから流動層乾燥装置12に乾燥用蒸気として戻される。一方、蒸気から分離された乾燥炭の粒子は、乾燥炭バンカ32に貯留される。
【0042】
乾燥炭バンカ32に貯留される乾燥炭は、石炭供給機36により微粉炭機13に投入され、ここで、細かい粒子状に粉砕されて微粉炭が製造され、微粉炭バグフィルタ37a,37bを介して微粉炭供給ホッパ38a,38bに貯留される。この微粉炭供給ホッパ38a,38bに貯留される微粉炭は、空気分離装置42から供給される窒素により第1窒素供給ライン43を通して石炭ガス化炉14に供給される。また、後述するチャー回収装置15で回収されたチャーが、空気分離装置42から供給される窒素により第2窒素供給ライン45を通して石炭ガス化炉14に供給される。更に、後述するガスタービン設備17から抽気された圧縮空気が昇圧機68で昇圧された後、空気分離装置42から供給される酸素と共に圧縮空気供給ライン41を通して石炭ガス化炉14に供給される。
【0043】
石炭ガス化炉14では、供給された微粉炭及びチャーが圧縮空気(酸素)により燃焼し、微粉炭及びチャーがガス化することで、二酸化炭素を主成分とする可燃性ガス(石炭ガス)を生成することができる。そして、この可燃性ガスは、石炭ガス化炉14からガス生成ライン49を通して排出され、チャー回収装置15に送られる。
【0044】
このチャー回収装置15にて、可燃性ガスは、まず、集塵装置51に供給されることで、ここで可燃性ガスからこのガスに含有するチャーが分離される。そして、チャーが分離された可燃性ガスは、ガス排出ライン53を通してガス精製装置16に送られる。一方、可燃性ガスから分離した微粒チャーは、ホッパ52に堆積され、チャー戻しライン46を通して石炭ガス化炉14に戻されてリサイクルされる。
【0045】
チャー回収装置15によりチャーが分離された可燃性ガスは、ガス精製装置16にて、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物が取り除かれてガス精製され、燃料ガスが製造される。そして、ガスタービン設備17では、圧縮機61が圧縮空気を生成して燃焼器62に供給すると、この燃焼器62は、圧縮機61から供給される圧縮空気と、ガス精製装置16から供給される燃料ガスとを混合し、燃焼することで燃焼ガスを生成し、この燃焼ガスによりタービン63を駆動することで、回転軸64を介して発電機19を駆動し、発電を行うことができる。
【0046】
そして、ガスタービン設備17におけるタービン63から排出された排気ガスは、排熱回収ボイラ20にて、空気と熱交換を行うことで蒸気を生成し、この生成した蒸気を蒸気タービン設備18に供給する。蒸気タービン設備18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気によりタービン69を駆動することで、回転軸64を介して発電機19を駆動し、発電を行うことができる。
【0047】
その後、ガス浄化装置74では、排熱回収ボイラ20から排出された排気ガスの有害物質が除去され、浄化された排ガスが煙突75から大気へ放出される。
【0048】
以下、上述した石炭ガス化複合発電設備10における流動層乾燥装置12について詳細に説明する。
【0049】
流動層乾燥装置12は、図2に示すように、乾燥容器101と、原炭投入口(湿潤原料投入部)102と、乾燥炭排出口(乾燥物排出部)103と、流動化ガス供給口(流動化ガス供給部)104と、ガス排出口(ガス排出部)105と、伝熱管(加熱部)106とを有している。
【0050】
乾燥容器101は、中空箱型形状をなしており、一端側に原炭を投入する原炭投入口102が形成される一方、他端側に原炭を加熱乾燥した乾燥物を排出する乾燥炭排出口103が形成されている。また、乾燥容器101は、下部に底板から所定距離をあけて複数の開口を有する分散板107が設けられており、この底板に乾燥容器101内に流動化ガス(過熱水蒸気)を供給する流動化ガス供給口104が形成されている。この場合、流動化ガス供給口104を乾燥容器101の長手方向に複数設けたが、1つであってもよい。更に、乾燥容器101は、乾燥炭排出口103側の上部に流動化ガス及び発生蒸気を排出するガス排出口105が形成されている。
【0051】
この乾燥容器101は、原炭投入口102から原炭が供給されると共に、流動化ガス供給口104から分散板107を通して流動化ガスが供給されることで、この分散板107の上方に所定厚さの流動層Sが形成されると共に、この流動層Sの上方にフリーボード部Fが形成される。そして、外部から乾燥容器101を貫通して流動層S内を循環する伝熱管106が配置されており、この伝熱管106内を流れる過熱蒸気により原炭を加熱して乾燥することができる。
【0052】
この乾燥容器101は、各流動化ガス供給口104に対して流動化ガス供給ライン111が設けられており、この流動化ガス供給ライン111に流量調整弁112が装着されている。また、乾燥容器101は、ガス排出口105に対してガス排出ライン113が設けられており、このガス排出ライン113に流量調整弁114及びファン115が装着されている。更に、乾燥容器101は、流動層S内に伝熱管106が配置されているが、この伝熱管106における過熱蒸気の供給側に流量調整弁116が装着されている。
【0053】
また、乾燥容器101は、流動層Sの温度を検出する第1温度センサ(流動層温度検出センサ)121が設けられると共に、フリーボード部Fの温度を検出する第2温度センサ122が設けられている。更に、乾燥容器101は、乾燥容器101の圧力を検出する圧力センサ123が設けられている。
【0054】
制御装置125は、第1温度センサ121が検出した流動層Sの温度T1と、第2温度センサ122が検出したフリーボード部Fの温度T2と、圧力センサ123が検出した乾燥容器101の圧力Pが入力される。また、制御装置125は、流量調整弁112の開度を調整することで、流動化ガス供給ライン111を通して各流動化ガス供給口104から乾燥容器101内に供給される流動化ガス供給量を調整することができる。また、制御装置125は、流量調整弁114の開度を調整したり、ファン115の回転数を調整したりすることで、乾燥容器101内からガス排出口105を通してガス排出ライン113に排出される蒸気量(流動化ガス量+発生蒸気量)を調整することができる。更に、制御装置125は、流量調整弁116の開度を調整することで、伝熱管106を流れる過熱蒸気量を調整して流動層Sの加熱量を調整することができる。
【0055】
そして、本実施例では、流動層Sにおける温度の変動に応じて、乾燥容器101内の圧力を調整することで、この乾燥容器101内の露点温度を変更している。この場合、乾燥容器101内の露点温度を変更する露点温度変更装置として減圧装置を用いており、具体的には、ガス排出ライン113に設けられた流量調整弁114を適用している。即ち、流量調整弁112を所定開度に設定することで、流動化ガス供給ライン111を通して所定量の流動化ガスを供給する一方、ファン115を所定回転数で回転すると共に、流量調整弁114を所定開度に設定することで、乾燥容器101内における所定量の蒸気を排出しているとき、乾燥容器101内の圧力(全圧)は、所定圧力に維持される。
【0056】
この運転状態で、流量調整弁114の開度を大きくすると、乾燥容器101内から排出される蒸気量が増加することから、乾燥容器101内の圧力を減圧することができる。一方、前述した運転状態で、流量調整弁114の開度を小さくすると、乾燥容器101内から排出される蒸気量が減少することから、乾燥容器101内の圧力を増圧することができる。なお、ここでは、流量調整弁114の開度を調整することで、乾燥容器101内の圧力を調整するようにしたが、流量調整弁114の開度を一定またはなくし、ファン115の回転数を調整することで、乾燥容器101内の圧力を調整するようにしてもよい。
【0057】
そして、乾燥容器101内における圧力を増減すると、この乾燥容器101内の露点温度を上下することができる。この場合、流動層Sの温度は、乾燥容器101内における水蒸気分圧に依存する水蒸気の露点温度により決定されるものであるから、流動層Sの温度に基づいて乾燥容器101内の圧力を変更することで、流動層Sの温度と乾燥容器内の露点温度との偏差を所定値に維持することが可能となり、流動層Sの原炭に対して常に一定の加熱度合を付与することが可能となる。
【0058】
具体的に、制御装置125は、第1温度検出センサ121の検出結果に基づいて流量調整弁114の開度を調整することで、乾燥容器101内の圧力を調整し、この乾燥容器101内の露点温度を変更する。即ち、制御装置125は、流動層Sの温度が低下したときに、流量調整弁114の開度を大きくし、乾燥容器101内の圧力を低下させる。
【0059】
ここで、実施例1の流動層乾燥装置12の作動について説明する。
【0060】
流動層乾燥装置12において、乾燥容器101に対して、原炭投入口102から原炭が供給されると共に、流動化ガス供給口104から分散板107を通して流動化ガスが供給されることで、この分散板107の上方に所定厚さの流動層Sが形成される。原炭は、流動化ガスにより流動層Sを乾燥炭排出口103側に移動し、このとき、伝熱管106から熱を受けることで加熱されて乾燥される。この場合、原炭は、原炭投入口102から乾燥炭排出口103まで移動する間に、伝熱管106からの熱により加熱乾燥される。具体的に、原炭は、原炭投入口102から投入された直後は予熱状態にあり、水分はほとんど蒸発せず、予熱領域を超えて乾燥領域に入ると、水分蒸発が始まり、徐々に増加してその蒸発量が最大となり、乾燥炭排出口103に近づくにつれて減少する。
【0061】
そして、原炭が乾燥された乾燥炭は、乾燥炭排出口103から外部に排出され、流動層Sで原炭が加熱乾燥されることで発生した蒸気は、流動化ガスと共に上昇してガス排出口105から外部に排出される。
【0062】
このとき、図2及び図3に示すように、制御装置125は、流量調整弁112を所定開度に設定することで、流動化ガス供給ライン111を通して所定量の流動化ガスを供給する。一方、制御装置125は、ファン115を所定回転数で回転すると共に、流量調整弁114を所定開度に設定することで、乾燥容器101内における所定量の蒸気を排出する。このような流動層乾燥装置12の運転状態で、乾燥容器101内における流動層Sの温度T1は、110℃、圧力(全圧)は、100kPaに維持される。この場合、乾燥容器101内における流動層Sの温度T1に対して、乾燥容器101内における露点温度との偏差Taが設定されるように、乾燥容器101内の圧力Pと流動層Sの温度T1との交点Aが決められることで、原炭における十分な加熱乾燥量が確保される。
【0063】
この流動層乾燥装置12の運転状態で、原炭の供給量が増加したり、原炭の含水量が増加したりすると、流動層Sの温度T1が低下してしまう。このとき、制御装置125は、例えば、流動層Sの温度T1が110℃から105℃に低下したことを検出すると、流量調整弁114の開度を大きくする。すると、乾燥容器101内から排出される蒸気量が増加することから、乾燥容器101内の圧力が減圧され、この乾燥容器101内の露点温度が低下する。この場合、流動層Sの温度T1が低下しても、乾燥容器101内における流動層Sの温度T1に対して、上述した運転状態における偏差Taと同様の乾燥容器101内における露点温度との偏差Tbが設定されるように、乾燥容器101内の圧力Pと流動層Sの温度T1との交点Bが決められることで、原炭における十分な加熱乾燥量が確保される。
【0064】
つまり、制御装置125は、偏差Ta=Tbとなるような乾燥容器101内の圧力Pを設定し、このような乾燥容器101内の圧力Pとなるように流量制御弁114の開度を調整する。この流動層Sの温度T1と露点温度と圧力Pとの関係は、流動層乾燥装置12の形態に応じて予めマップ化しておくことが望ましい。
【0065】
そして、流動層Sにおける原炭の加熱乾燥が進み、流動層Sの温度T1が上昇してきたら、制御装置125は、前述とは逆に、流量調整弁114の開度を小さくしていき、乾燥容器101内における温度T1と露点温度との所定偏差を確保する。
【0066】
このように実施例1の流動層乾燥装置にあっては、中空箱型形状をなす乾燥容器101と、乾燥容器101の一端側に原炭を投入する原炭投入口102と、乾燥容器101の他端側から原炭が加熱乾燥した乾燥炭を排出する乾燥炭排出口103と、乾燥容器101の下部に流動化ガスを供給することで原炭と共に流動層Sを形成する流動化ガス供給口104と、乾燥容器101の一端側における原炭投入口102より上方から流動化ガス及び発生蒸気を排出するガス排出口105と、流動層Sの原炭を加熱する伝熱管106とを設け、制御装置125は、第1温度センサ121が検出した流動層Sの温度T1に基づいてガス排出ライン113の流量調整弁114の開度を調整することで、乾燥容器101内の圧力Pを変更して露点温度を変更している。
【0067】
従って、原炭投入口102から原炭が乾燥容器101内に投入されると共に、流動化ガス供給口104から流動化ガスが乾燥容器101の下部から分散板107を通して供給されると、原炭が流動化ガスにより流動することで流動層Sが形成され、この流動層Sの原炭が流動化ガスにより移動するとき、伝熱管106により加熱されることで乾燥して乾燥炭となり、この乾燥炭が乾燥炭排出口103から外部に排出される一方、流動化ガスと原炭が乾燥することで発生した蒸気がガス排出口105から外部に排出される。このとき、制御装置125は、流動層Sの温度T1が変動すると、流量調整弁114の開度を調整し、乾燥容器101内の圧力Pを調整して露点温度を変更する。すると、乾燥容器101内における原炭の乾燥度合が一定となり、常に安定した原炭の乾燥処理を行うことが可能となり、乾燥効率の向上を可能とすることができる。
【0068】
この場合、制御装置125は、流動層Sの温度T1に基づいて流量調整弁114の開度を調整して乾燥容器101内の圧力Pを調整することで、露点温度を変更している。具体的に、制御装置125は、流動層Sの温度T1が低下したときに流量調整弁114の開度を大きくして乾燥容器101内の圧力Pを低下させている。
【0069】
従って、流動層Sの温度は、乾燥容器101内における水蒸気分圧に依存する露点温度により決定されるものであるから、流動層Sの温度T1に基づいて乾燥容器101内の圧力Pを変更することで、流動層Sの温度T1と乾燥容器101内の露点温度との偏差を所定値に維持することが可能となり、常に安定した原炭の乾燥処理を行うことができる。
【実施例2】
【0070】
図4は、本発明の実施例2に係る流動層乾燥装置の概略図、図5は、乾燥容器内の水蒸気濃度に対する露点温度を表すグラフである。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0071】
実施例2において、図4に示すように、流動層乾燥装置12は、乾燥容器101と、原炭投入口102と、乾燥炭排出口103と、流動化ガス供給口104と、ガス排出口105と、伝熱管106とを有している。
【0072】
この乾燥容器101は、各流動化ガス供給口104に対して流動化ガス供給ライン111が設けられている。そして、水蒸気供給ライン131が設けられて流量調整弁132が装着されると共に、非凝縮性ガス供給ライン133が設けられて流量調整弁134が装着されており、この2つのライン131,133が合流することで、流動化ガス供給ライン111を形成している。また、水蒸気供給ライン131と非凝縮性ガス供給ライン133は、各流量調整弁132,134より上流側に位置して、水蒸気供給量と非凝縮性ガス供給量を計測する流量計135,136が装着されている。なお、ここで、非凝縮性ガスとは、例えば、燃焼排ガス、アルゴンガス、窒素ガスなどである。
【0073】
また、乾燥容器101は、ガス排出口105に対してガス排出ライン113が設けられ、流量計137が装着されている。また、伝熱管106における過熱蒸気の供給側に流量調整弁116が装着されている。また、乾燥容器101は、流動層Sの温度を検出する第1温度センサ121が設けられると共に、フリーボード部Fの温度を検出する第2温度センサ122が設けられている。
【0074】
制御装置125は、第1温度センサ121が検出した流動層Sの温度T1と、第2温度センサ122が検出したフリーボード部Fの温度T2が入力される。また、制御装置125は、流量調整弁132の開度を調整することで、水蒸気供給ライン131及び流動化ガス供給ライン111を通して各流動化ガス供給口104から乾燥容器101内に供給される過熱水蒸気の供給量を調整することができる。また、制御装置125は、流量調整弁134の開度を調整することで、非凝縮性ガス供給ライン133及び流動化ガス供給ライン111を通して各流動化ガス供給口104から乾燥容器101内に供給される非凝縮性ガスの供給量を調整することができる。
【0075】
そして、本実施例では、流動層Sにおける温度の変動に応じて、乾燥容器101内の水蒸気濃度を調整することで、この乾燥容器101内の露点温度を変更している。この場合、乾燥容器101内の露点温度を変更する露点温度変更装置として水蒸気濃度調整装置を用いており、具体的には、非凝縮性ガス供給ライン133に設けられた流量調整弁134を適用している。即ち、水蒸気供給ライン131に設けられた流量調整弁132を所定開度に設定することで、流動化ガス供給ライン111を通して所定量の過熱水蒸気を供給する一方、非凝縮性ガス供給ライン133に設けられた流量調整弁134を閉止することで、乾燥容器101内における水蒸気濃度を100%に維持している。
【0076】
この運転状態で、流量調整弁134を所定開度だけ開放すると、乾燥容器101内に非凝縮性ガスが供給されることから、乾燥容器101内の水蒸気濃度を低下させることができる。なお、乾燥容器101内では、原炭の乾燥により蒸気が発生することから、この発生蒸気量を考慮して乾燥容器101内への非凝縮性ガス量を調整することが望ましい。つまり、流動層Sにおける温度の変動に応じて、乾燥容器101から排出される水蒸気濃度を調整することで、この乾燥容器101内の露点温度を変更するとよい。
【0077】
また、ここでは、流量調整弁134の開度を調整することで、乾燥容器101内に非凝縮性ガスを供給して水蒸気濃度を調整するようにしたが、このとき、水蒸気供給ライン131に設けられた流量調整弁132の開度を小さくして過熱水蒸気量を減少させるとよい。即ち、非凝縮性ガスの増加量と過熱水蒸気の減少量とを同じとすることで、乾燥容器101内への流動化ガスの供給量を一定に維持するとよい。また、乾燥容器101内での原炭の流動化が不十分である場合、非凝縮性ガス供給ライン133からの非凝縮性ガスの供給量を増加させるとき、水蒸気供給ライン131からの過熱水蒸気量を減少させずに、または、過熱水蒸気の減少量を非凝縮性ガスの増加量より少なくし、全体の流動化ガス量を増加させるようにしてもよい。
【0078】
そして、乾燥容器101内における水蒸気濃度を増減すると、この乾燥容器101内の露点温度を上下することができる。この場合、流動層Sの温度は、乾燥容器101内における水蒸気分圧に依存する水蒸気の露点温度により決定されるものであるから、流動層Sの温度に基づいて乾燥容器101内の水蒸気濃度を変更することで、流動層Sの温度と乾燥容器101内の露点温度との偏差を所定値に維持することが可能となり、流動層Sの原炭に対して常に一定の加熱度合を付与することが可能となる。
【0079】
具体的に、制御装置125は、第1温度検出センサ121の検出結果に基づいて流量調整弁132,134の開度を調整することで、乾燥容器101内の水蒸気濃度を調整し、この乾燥容器101内の露点温度を変更する。即ち、制御装置125は、流動層Sの温度が低下したときに、流量調整弁134の開度を大きくし、乾燥容器101内に非凝縮性ガスを供給して水蒸気濃度を低下させる。
【0080】
ここで、実施例2の流動層乾燥装置12の作動について説明する。
【0081】
流動層乾燥装置12において、乾燥容器101に対して、原炭投入口102から原炭が供給されると共に、流動化ガス供給口104から分散板107を通して流動化ガスが供給されることで、この分散板107の上方に所定厚さの流動層Sが形成される。原炭は、流動化ガスにより流動層Sを乾燥炭排出口103側に移動し、このとき、伝熱管106から熱を受けることで加熱されて乾燥される。この場合、原炭は、原炭投入口102から乾燥炭排出口103まで移動する間に、伝熱管106からの熱により加熱乾燥される。具体的に、原炭は、原炭投入口102から投入された直後は予熱状態にあり、水分はほとんど蒸発せず、予熱領域を超えて乾燥領域に入ると、水分蒸発が始まり、徐々に増加してその蒸発量が最大となり、乾燥炭排出口103に近づくにつれて減少する。
【0082】
そして、原炭が乾燥された乾燥炭は、乾燥炭排出口103から外部に排出され、流動層Sで原炭が加熱乾燥されることで発生した蒸気は、流動化ガスと共に上昇してガス排出口105から外部に排出される。
【0083】
このとき、図4及び図5に示すように、制御装置125は、流量調整弁132を所定開度に設定することで、水蒸気供給ライン131から流動化ガス供給ライン111を通して所定量の過熱水蒸気(流動化ガス)を供給すると、ガス排出ライン113から所定量の蒸気が押し出されて排出される。このような流動層乾燥装置12の運転状態で、乾燥容器101内における流動層Sの温度T1は、110℃、圧力(全圧)は、100kPaに維持される。この場合、乾燥容器101内における流動層Sの温度T1に対して、乾燥容器101内における露点温度との偏差Tcが設定されるように、乾燥容器101内の水蒸気濃度Cと流動層Sの温度T1との交点Cが決められることで、原炭における十分な加熱乾燥量が確保される。
【0084】
この流動層乾燥装置12の運転状態で、原炭の供給量が増加したり、原炭の含水量が増加したりすると、流動層Sの温度T1が低下してしまう。このとき、制御装置125は、例えば、流動層Sの温度T1が110℃から105℃に低下したことを検出すると、流量調整弁134の開度を大きくすると共に、流量調整弁132の開度を小さくする。すると、乾燥容器101内への非凝縮ガス量が増加する一方、過熱水蒸気量が減少することから、乾燥容器101内の水蒸気濃度が低下し、この乾燥容器101内の露点温度が低下する。この場合、流動層Sの温度T1が低下しても、乾燥容器101内における流動層Sの温度T1に対して、上述した運転状態における偏差Tcと同様の乾燥容器101内における露点温度との偏差Tdが設定されるように、乾燥容器101内(出口)の水蒸気濃度Cと流動層Sの温度T1との交点Dが決められることで、原炭における十分な加熱乾燥量が確保される。
【0085】
つまり、制御装置125は、偏差Tc=Tdとなるような乾燥容器101内(出口)の水蒸気濃度Cを設定し、このような乾燥容器101内の水蒸気濃度Cとなるように流量制御弁132,134の開度を調整する。この流動層Sの温度T1と露点温度と水蒸気濃度Cとの関係は、流動層乾燥装置12の形態に応じて予めマップ化しておくことが望ましい。また、各流量計135,136,137の計測結果に基づいて乾燥容器101内での発生蒸気量を算出し、乾燥容器101内、つまり、ガス排出ライン113における水蒸気濃度を求め、制御装置125は、この水蒸気濃度に基づいてフィードバック制御を行ってもよい。
【0086】
そして、流動層Sにおける原炭の加熱乾燥が進み、流動層Sの温度T1が上昇してきたら、制御装置125は、前述とは逆に、流量調整弁132の開度を大きくする一方、流量調整弁134の開度を小さくしていき、乾燥容器101内における温度T1と露点温度との所定偏差を確保する。
【0087】
このように実施例2の流動層乾燥装置にあっては、乾燥容器101の下部に水蒸気供給ライン131を設けて流量調整弁132を装着すると共に、非凝縮性ガス供給ライン133を設けて流量調整弁134を装着し、制御装置125は、第1温度センサ121が検出した流動層Sの温度に基づいて流量調整弁132,134の開度を調整することで、乾燥容器101内の水蒸気濃度Cを変更して露点温度を変更している。
【0088】
従って、制御装置125は、流動層Sの温度T1が変動すると、流量調整弁132,134の開度を調整し、乾燥容器101内の水蒸気濃度Cを調整して露点温度を変更する。すると、乾燥容器101内における原炭の乾燥度合が一定となり、常に安定した原炭の乾燥処理を行うことが可能となり、乾燥効率の向上を可能とすることができる。
【0089】
この場合、制御装置125は、流動層Sの温度T1に基づいて流量調整弁132,134の開度を調整して乾燥容器101内の水蒸気濃度Cを調整することで、露点温度を変更している。具体的に、制御装置125は、流動層Sの温度T1が低下したときに流量調整弁134の開度を大きくして乾燥容器101内の水蒸気濃度Cを低下させている。
【0090】
従って、流動層Sの温度は、乾燥容器101内における水蒸気分圧に依存する水蒸気の露点温度により決定されるものであるから、流動層Sの温度に基づいて乾燥容器101内の水蒸気濃度を調整することで、流動層Sの温度T1と乾燥容器101内の露点温度との偏差を所定値に維持することが可能となり、常に安定した原炭の乾燥処理を行うことができる。
【0091】
また、実施例2の流動層乾燥装置では、制御装置125は、流動層Sの温度が低下したときに、流量調整弁134の開度を大きくして非凝縮性ガスの供給量を増加させている。従って、乾燥容器101内の流動化ガス量が増加することとなり、原炭の流動化を促進することが可能となり、乾燥効率の向上を可能とすることができる。
【0092】
また、実施例2の流動層乾燥装置では、制御装置125は、流動層Sの温度が低下したときに、流量調整弁132の開度を小さくして過熱水蒸気の供給量を減少させる一方、流量調整弁134の開度を大きくして非凝縮性ガスの供給量を増加させることで、流動化ガス量を一定に維持している。従って、乾燥容器101内の流動化ガス量が一定量に維持されることとなり、乾燥容器101に作用する圧力が過大となることはなく、安全性を向上することができる。
【実施例3】
【0093】
図6は、本発明の実施例3に係る流動層乾燥装置の概略側面図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0094】
実施例3は、実施例1と実施例2を組み合わせた実施例であり、図6に示すように、乾燥容器101は、流動化ガス供給口104に対して流動化ガス供給ライン111が設けられ、この流動化ガス供給ライン111に水蒸気供給ライン131が接続されて流量調整弁132が装着されると共に、非凝縮性ガス供給ライン133が接続されて流量調整弁134が装着されている。また、乾燥容器101は、ガス排出口105に対してガス排出ライン113が設けられて流量調整弁114及びファン115が装着されている。
【0095】
そして、制御装置125は、第1温度検出センサ121の検出結果に基づいて流量調整弁114の開度を調整することで、乾燥容器101内の圧力を調整し、この乾燥容器101内の露点温度を変更する。即ち、制御装置125は、流動層Sの温度が低下したときに、流量調整弁114の開度を大きくし、乾燥容器101内の圧力を低下させる。また、制御装置125は、第1温度検出センサ121の検出結果に基づいて流量調整弁132,134の開度を調整することで、乾燥容器101内の水蒸気濃度を調整し、この乾燥容器101内の露点温度を変更する。即ち、制御装置125は、流動層Sの温度が低下したときに、流量調整弁134の開度を大きくして非凝縮性ガスを供給する一方、流量調整弁132の開度を小さくし、乾燥容器101内における水蒸気濃度を低下させる。
【0096】
この場合、制御装置125は、流動層Sの温度に基づいて、乾燥容器101内の圧力を調整して露点温度を変更してもよいし、乾燥容器101内の水蒸気濃度を調整して露点温度を変更してもよく、同時に行ってもよい。
【0097】
なお、上述した各実施例では、湿潤原料として低品位炭を使用したが、高品位炭であっても適用可能であり、また、石炭に限らず、再生可能な生物由来の有機性資源として使用されるバイオマスであってもよく、例えば、間伐材、廃材木、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ及びこれらを原料としたリサイクル燃料(ペレットやチップ)などを使用することも可能である。
【符号の説明】
【0098】
11 給炭装置
12 流動層乾燥装置
13 微粉炭機
14 石炭ガス化炉
15 チャー回収装置
16 ガス精製装置
17 ガスタービン設備
18 蒸気タービン設備
19 発電機
20 排熱回収ボイラ
101 乾燥容器
102 原炭投入口(湿潤原料投入部)
103 乾燥炭排出口(乾燥物排出部)
104 流動化ガス供給口(流動化ガス供給部)
105 ガス排出口(ガス排出部)
106 伝熱管(加熱部)
111 流動化ガス供給ライン
112 流量調整弁
113 ガス排出ライン
114 流量調整弁(露点温度変更装置、減圧装置)
115 ファン
121 第1温度センサ(流動層温度検出センサ)
122 第2温度センサ
123 圧力センサ
125 制御装置
131 水蒸気供給ライン
132 流量調整弁(露点温度変更装置、水蒸気濃度調整装置)
133 非凝縮性ガス供給ライン
134 流量調整弁(露点温度変更装置、水蒸気濃度調整装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空形状をなす乾燥容器と、
該乾燥容器の一端側に湿潤原料を投入する湿潤原料投入部と、
前記乾燥容器の他端側から湿潤原料が加熱乾燥した乾燥物を排出する乾燥物排出部と、
前記乾燥容器の下部に流動化ガスを供給することで湿潤原料と共に流動層を形成する流動化ガス供給部と、
前記乾燥容器の一端側における前記湿潤原料投入部より上方から流動化ガス及び発生蒸気を排出するガス排出部と、
前記流動層の湿潤原料を加熱する加熱部と、
前記乾燥容器内の露点温度を変更する露点温度変更装置と、
前記流動層の温度を検出する流動層温度検出センサと、
該流動層温度検出センサの検出結果に基づいて前記露点温度変更装置を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする流動層乾燥装置。
【請求項2】
前記露点温度変更装置は、前記乾燥容器内の圧力を変更する減圧装置であって、前記制御装置は、前記流動層の温度に基づいて前記減圧装置を制御することを特徴とする請求項1に記載の流動層乾燥装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記流動層の温度が低下したときに前記減圧装置を制御して前記乾燥容器内の圧力を低下させることを特徴とする請求項2に記載の流動層乾燥装置。
【請求項4】
前記流動化ガス供給部は、前記乾燥容器の下部に流動化ガスとしての水蒸気及び非凝縮性ガスを供給可能であり、前記露点温度変更装置は、前記流動化ガス供給部を制御して前記乾燥容器内の水蒸気濃度を調整する装置であって、前記制御装置は、前記流動層の温度に基づいて前記水蒸気濃度調整装置を制御することを特徴とする請求項1に記載の流動層乾燥装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記流動層の温度が低下したときに、前記水蒸気濃度調整装置を制御して前記乾燥容器内の水蒸気濃度を低下させることを特徴とする請求項4に記載の流動層乾燥装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記流動層の温度が低下したときに、非凝縮性ガスの供給量を増加させることを特徴とする請求項5に記載の流動層乾燥装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記流動層の温度が低下したときに、水蒸気の供給量を減少させる一方、非凝縮性ガスの供給量を増加させることで、流動化ガス量を一定に維持することを特徴とする請求項5に記載の流動層乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−197976(P2012−197976A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62246(P2011−62246)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】