説明

流動性をもつ粒状材料

【課題】 袋物への詰め物は、適度な柔らかさと弾力性があり、変形した部分がゆっくりと戻る復元性等など感触が良く快適感があること及びバクテリアや細菌等による悪臭の発生がないことが必要である。また遠赤外線やマイナスイオンによる新陳代謝の促進や自律神経調整などの生理活性化機能も保有することが要求されている。これら複数の機能を備えた袋物の詰め物材料を開発する。
【解決手段】 微小発泡ポリスチレンビーズに脱臭、吸湿、抗菌効果のある木炭、竹炭粉末や燐酸チタニュウム系化合物、もしくは遠赤外線やマイナスイオン等を発生させるセラミックス類の無機質微細粉末、あるいは冷却、放熱、殺菌効果のある金属微粉末をコーティングしたのち、潤滑剤を再度表面にコーティングした粒状材料を袋物の詰め物として利用することにより、流動性、弾力性、復元性等の快適性を損なわず、衛生性や生理活性化機能を保持した袋物が製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋物への詰め物として機能性素材を表面コーティングした発泡ポリスチレンビーズに潤滑剤をコーティング、被覆したものを使用する事に関するものである。
【技術背景】
【0002】
袋物はぬいぐるみ、人形、枕、玩具などの製造用に供され、詰め物としては低反発性ウレタン、そば殻、糸屑、藁、天然繊維の綿、ポリエステル繊維の綿、ウール、羽毛及び各種の円筒状プラスチック加工物、発泡ポリスチレンビーズ、等が利用されている。
【0003】
詰め物としては適度な柔らかさと弾力性を持ち、滑らかに動く流動性と、一度力を加えて変形した部分がゆっくり戻る復元力等により感触性が良く快適感が得られる事及びバクテリヤや細菌による悪臭の発生がなく抗菌性がある事等が要求される。また枕の場合は適度な冷却、放熱効果があり安眠し易い事も必要である。
【0004】
また袋物も遠赤外線やマイナスイオンによる体内の血流の改善、新陳代謝の促進や自律神経の調整効果等の生理活性化機能を付加することも要求されている。
【0005】
従来の詰め物の中でも粒径1mm〜2mm程度の微小発泡ポリスチレンのビーズは適度なやわらかさと弾力性、流動性が優れ、摩擦音もないため、袋物への詰め物として優れていることから枕の詰め物として使用されている。
【0006】
また,袋物への詰め物として、適度な復元性や弾力性と流動性を兼ね備える目的でポリスチレンビーズと綿を混合させ、かつ、バクテリヤや細菌等の発生防止のため炭酸カルシュウムを加える方法が考案されている。(特許文献1参照)
【0007】
袋物の枕にはそば殻、糸屑、藁、天然繊維やポリエステル繊維の綿、ウール、羽毛等が使用されているが、これらは水分が多くなるとダニやカビが増殖し、悪臭が発生するので衛生面で好ましくない。
このため、檜チップや備長炭や竹炭、活性炭等を入れる事で、臭いを消したり、通気性の改善を図っている例があり、そば殻に竹炭や松脂を添加したものを不織布層の間に充填したり(特許文献2参照)、5〜15mm程度に破砕調整した竹炭を通気性のある内袋に入れたもの(特許文献3参照)、粒状活性炭と中空部を備えたビーズを袋物に詰めたもの(特許文献4参照)、活性炭を内包した袋を配したもの(特許文献5参照)などがあるが、ゴツゴツした感触があり流動性や復元性に欠ける点は否めない。
【0008】
木炭の機能性を保持しながら、流動性や復元性等の改善のため、木片をカール状に加工し、所要の大きさに破砕した木炭粒を混合し、これを枕の詰め物とする事で解決を図る方式が発明されている。(特許文献6参照)
固体を使いながら適度な弾力性の確保と木炭や木品チップの機能性効能を追求しているが、発泡ポリスチレンビーズによって得られる流動特性や弾力性等とは異質の感触特性である。
【0009】
枕に冷却、放熱効果を付与するには、保冷用媒体を枕内部に入れたり(特許文献7,特許文献8参照)枕の袋物にアルミ凝着膜箔を形成させたもの(特許文献9参照)やセラミックスの粉砕物とエラストマーの混練体の放熱性シートを枕に貼り付けたもの、(特許文献10参照)体温より低い温度を持つハブ草種子を詰め物として使用することで放熱をするタイプ等が提案されている。(特許文献11参照)
【0010】
また、動植物の育成光線といわれる4〜14ミクロンの遠赤外線波長を発生させる備長炭や竹炭、蛇門石、閃光ひん石、やガーネットやジルコニュウム、ランタンなどを含む天然鉱物類、トルマリン鉱石等は体内の新陳代謝を高め疲労回復や自律神経の調整効果等がある事から生理活性化素材として利用されている。
【0011】
これらの物質はマイナスイオンも発生させるので疲労回復やリラクゼーション等の効果があり、生理活性化効果の増幅も期待できるが、これらの物質は木炭やセラミックス類と同様に固体であるため、そのままでは使用が困難である。
【0012】
前述のような粉砕物を内袋に入れる方法のほか、微粉末にしたセラミックス類などの機能性素材や燐酸チタニュウム系化合物など消臭、抗菌作用を有する化合物を繊維組織内に練りこんだり(特許文献12参照)、不織布や繊維に塗布、含浸さ加工して袋物の生地やカバーとして使用しているものが多い。(特許文献13、14、15、16、17参照)
【0013】
袋物の詰め物にこれらの機能性素材を含有させたり、塗着させたりする方法も開発されている。詰め物としてポリウレタンやゴム発泡体に天然石の粉などを混合添加する方法(特許文献17参照)や竹炭粉末を混入した合成樹脂成型体を作り、枕の詰め物とする方法がある(特許文献18参照)。
【0014】
詰め物の発泡体にこれらの素材粉末を塗着させる方法も提案されており、合成樹脂球体にトルマリン粉末を付着させる方法(特許文献19参照)、吸着剤として使用される繊維植物系多孔質粒状体にセラミックス粉末を塗着させる方法(特許文献20参照)等があるが、いずれも遠赤外線やマイナスイオンを発生させるための機能性向上の手段に重きが置かれており、詰め物としての弾力性、復元性、流動性等の感触性の向上や快適性を発揮させる事を目的としたものではない。
【0015】
【特許文献1】 特許第3612667号
【特許文献2】 特許公開2003−135237
【特許文献3】 特許公開2001−327383
【特許文献4】 特開平10−145
【特許文献5】 実用新案第3092041号
【特許文献6】 特許第3078249号
【特許文献7】 特許公開2001−212168
【特許文献8】 実用新案第3050776号
【特許文献9】 実用新案第3091979号
【特許文献10】 実用新案第3097184号
【特許文献11】 実用新案第3111106号
【特許文献12】 特許公開2002−194667
【特許文献13】 特許公開2002−88647
【特許文献14】 特許公開2003−112381
【特許文献15】 特許公開2003−410
【特許文献16】 特許第2906689号
【特許文献17】 特許公開2002−308712
【特許文献18】 特許公開平8−73639
【特許文献19】 特許公開平9−52957
【特許文献20】 特許公開2002−58732
【特許文献21】 特許公開2004−89419
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
袋物には適度な弾力性、復元性に加え、柔らかさ、触り心地等の感触特性の良さに加え、悪臭発生防止効果,抗菌効果等の衛生性が高く、生理活性を高める等の機能性効果を持つことも要求されている。また袋物のうち、枕には適度な放熱、冷却効果等があり安眠しやすいことも必要である。
【0017】
本発明は袋物の詰め物として最適な微小ポリスチレンビーズに抗菌性、生理活性性等の機能性を同時に付加するものである。これまでの機能性を付加した詰め物は流動性、復元性等の優れた感触性を有しているものはなく、それぞれ以下のような課題を有している。
【0018】
袋物の弾力性、復元性等の感触特性の良さは詰め物に綿やポリスチレンビーズ、蕎、麦殻等を使用して達成できるが、腐敗防止力、抗菌力や生理活性化機能を有していない。
【0019】
腐敗防止のためには水分吸湿性や有害有機化合物の吸着機能を有する木炭、竹炭等を細かく砕いたり、裁断した炭を内袋に入れて詰め物として混入しているが、流動性、復元性や感触特性が損なわれることになる。
【0020】
また生理活性化機能を有するセラミックス類も砕いた細粒体を混入させる方式では同様に流動性、復元性や感触特性が損なわれる。このため、これら物質を微粉末にして繊維やシートに織り込んだり、練り込んだ生地で袋物を縫製したり、カバーとして使用することで目的を達成している。
【0021】
このような特殊布地を生産する場合、生産ロットは一定規模以上必要であり、大量生産には向くが、小ロット、多品種生産方式ではなくコストも割高になる。
【0022】
生理活性機能をもつ詰め物として多孔質粒状物質に微粉末にしたセラミックス類を塗着させる方法は多孔質粒状物質に機能性材料を塗着させる事を主眼としている為、弾力性、流動性、復元性などに欠けており、袋物に必要な基本的な要件である感触特性、快適性を満足させるものでない。
【0023】
枕に冷却、放熱効果を付与するには保冷用媒体を枕の中に入れたり、放熱性の金属箔、シートを枕の袋物に貼り付けることによって可能になるが、枕としての感触特性などを満足させるものでなくまた、生理活性化機能も有していない。
【0024】
一方、発泡ポリスチレンビーズは一般的にはステアリン酸亜鉛がコーティングの潤滑剤として使用されているため、元々潤滑性を有しており、微細な発泡ポリスチレンビーズは流動性を持っており袋物の詰め物として適している。
【0025】
発泡ポリスチレンビーズに竹炭微粉末や機能性セラミックス微粉末、燐酸チタニア系化合物などをコーティングした場合、前述の詰め物としての復元性、弾力性や衛生性、生理活性化機能などは有するが、ビーズの流動性が悪くなり、また摩擦によりカサカサという耳障りな摩擦音が発生する。このため、詰め物としての快適性が損なわれる。
【0026】
また発泡ポリスチレンビーズに銅、銀等の金属微粉末をコーティングした場合も詰め物としての復元性、弾力性や衛生性と冷却性、放熱性等は有するが、前述同様に詰め物としての流動性が悪くなる。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は袋物の詰め物としての特性と機能性付加という相反する課題を同時に解決させようとするものである。発泡ポリスチレンビーズに天然鉱石、セラミックス、竹炭、活性炭等の無機質微粉末または銅、銀等の金属微粉末をアクリル酸共重合エマルション等の合成樹脂系バインダーを用いてコーティングした後にステアリン酸亜鉛等の重金属塩やビスアミド系コーティング組成物等の潤滑剤を再度コーティングしてなる流動性を持つ粒状材料を袋物の詰め物として使用することにより枕としての感触特性、快適性を損わずに、抗菌、消臭等の衛生性向上や放熱、冷却効果や生理活性化等の機能も付加できる。
【0028】
また発泡ポリスチレンビーズに燐酸チタニア系化合物などバインダー効果と抗菌、消臭等の機能性効果を併せ持つセラミックス系組成物をコーティングした後にステアリン酸亜鉛等の重金属塩やビスアミド系コーティング組成物等の潤滑剤を再度コーティングしてなる粒状材料を用いても良い。
【0029】
前記発泡ポリスチレンビーズの平均粒径2mm以下のものを詰め物として使用する事で復元性、流動性、弾力性などの感触特性が優れたものになる。
【0030】
また、潤滑剤は上記の他、天然鉱油系潤滑油、合成潤滑油および、パラフィンワックス、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤を使用してもよい。
【発明の効果】
【0031】
この発明によれば、粒径1mm〜2mm程度の発泡ポリスチレンビーズに機能性素材と潤滑材をコーティングした流動性粒状材料(60%)とポリエステル綿(40%)を袋物の詰め物として使用し枕を製造したところ、弾力性と滑らかな流動性、復元性があり且つ脱臭効果を付与することができた。
【0032】
本コーティングビーズは多品種少量生産が可能である。そのため、脱臭、放熱、殺菌、生理活性化等付加すべき機能をもつ流動性粒状材料を製造し、詰め物として単独または混合使用することにより、色々の機能を備えた枕が製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下本発明に係る実施の形態として袋物の詰め物としての発泡ポリスチレンビーズに竹炭微粉末と潤滑材をコーティングした実施例を述べる。
【0034】
図1は流動性をもつ粒状材料であり、1は発泡ポリスチレンビーズであり、2は機能性微粉末のコーティング層で3は潤滑剤コーティング層である。
【0035】
発泡ポリスチレンビーズは発泡倍率30〜100倍のものを用いたが、流動性、弾力性を考慮して300倍程度までのものを選択できる。
【0036】
コーティングする機能性素材として脱臭効率が高い竹炭微粉末を用いた。ニーズにより遠赤外線放射効果を求める場合やマイナスイオン発生効果を求める場合は各々のそれらの特徴を有するセラミックス、天然鉱石粉末などを利用する。また放熱効果を期待する場合はコーティング素材として銅微粉末を使用しても良い。
【0037】
竹炭粉末は平均粒径10ミクロンのものを使用した。粉砕を細かくすると、摩擦抵抗は減小し、表面積も拡大し脱臭効果も増加するが、粉砕コストが高くなり、微粉末のコーティングも難しくなるため、費用と効果を考慮して上記の細かさに設定した。また、ポリスチレンビーズとの混合比は重量比でビーズ1部に対し竹炭0.2部とした。この割合は脱臭効果も発揮でき、詰め物としての重量感も最適であった為である。枕の脱臭や遠赤外線機能効果等の機能を重視する場合、詰物重量と等重量程度までコーティングは可能である。
【0038】
次に、コーティングするバインダーは一般的に使用されているアクリル酸共重合エマルションを塗布剤とした。塗布剤0.1Kgに竹炭微分末0.2Kg,積水化成製の「エスレンビーズ」発泡倍率45−60倍、中心粒系0.6−1.2mmのもの1Kg混合し温度摂氏40度で乾燥して接着させた。
【0039】
本ビーズはそのままでは摩擦抵抗が高いため、ビーズの表面障害防止のため使用されているステアリン酸亜鉛0.5部を潤滑剤としてコーティングした。コーティング方法は前述同様の方法とした。
【0040】
ステアリン酸亜鉛は重金属塩であり、環境対策からコーティング潤滑剤としてビスアミドと帯電防止剤とを一定比率で含むコーティング潤滑剤も提案されている。液体潤滑油を含めいずれの方法でも摩擦係数を減少させる事が出来るがコーティングする素材、粒度により摩擦特性が異なるので、その物質にあったコーティング用の潤滑剤を選択する必要がある。
【0041】
潤滑剤をコーティングした時、カサカサという擦擦音は消え、ほぼ元のポリスチレンビースを詰め物とした時の流動性、復元性、弾力性を得る事が出来た。
【0042】
流動性の評価は図2のロート型ガラス製の流動性測定装置にポリスチレンビーズを50mL入れ、その落下時間により評価した。
【表1】

【0043】
上記のステアリン酸亜鉛を潤滑剤としてコーティングしたものと未処理のものを50倍倍率の顕微鏡写真で観察した結果、明らかに潤滑剤処理のコーティングビーズは表面が滑らかになっており流動性の改善が見られる。
図3 潤滑剤未処理のコーティングビーズの顕微鏡写真
図4 ステアリン酸亜鉛を潤滑剤としてコーティングしたビーズの顕微鏡写真
【0044】
次に、悪臭発生物質の減少率を測定したところ下記の結果が得られた。
消臭性性能試験方法
(社)繊維評価技術協議会 消臭加工繊維製品認証基準の検知管方式
5リットルのポリエチレンパックに検査対象ガス100ppmを封入し、竹炭コーティングポリスチレンビーズを10cmの面積に敷き詰め、温度20℃で安定化させた後2時間後のガスの減少率を検知管で測定した。
(減少率 % )
アンモニア 80%
酢酸 95.6%
硫化水素 98.8%以上
イソ吉草酸 97.3%
ノネナール 94.3%
アセトアルデヒド 87.5%
ピリジン 90%
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】 流動性を持つ粒状材
【図2】 流動性測定装置
【図3】 潤滑剤未処理のコーティングビーズの顕微鏡写真
【図4】 ステアリン酸亜鉛を潤滑剤としてコーィングしたビーズの顕微鏡写真
【符号の説明】
【0046】
1 発泡ポリスチレンビーズ
2 機能性微粉末等のコーティング層
3 潤滑剤コーティング層
4 ガラス製容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡ポリスチレンビーズに天然鉱石、セラミックス、竹炭、活性炭等の無機質微粉末、または銅、銀等の金属微粉末をアクリル酸共重合エマルション等の合成樹脂系バインダーを用いてコーティングした後、ステアリン酸亜鉛等の重金属塩やビスアミド系コーティング組成物等の潤滑剤を再度コーティングしてなる流動性を持つ粒状材料。
【請求項2】
発泡ポリスチレンビーズに燐酸チタニュウム系化合物などバインダー効果と抗菌消臭等の機能性効果を併せ持つセラミックス系組成物をコーティングした後、ステアリン酸亜鉛等の重金属塩やビスアミド系コーティング組成物等の潤滑剤を再度コーティングしてなる流動性を持つ粒状材料。
【請求項3】
前記発泡ポリスチレンビーズの平均粒径は、2mm以下である請求項1及び請求項2記載の粒状材料。
【請求項4】
潤滑剤は上記の他、天然鉱油系潤滑油、合成潤滑油および、パラフィンワックス、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤である請求項1及び請求項2記載の流動性を持つ粒状材料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−106974(P2007−106974A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322803(P2005−322803)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(501421764)有限会社リューデックコーポレーション (1)
【出願人】(505412694)有限会社ビーンズコーポレーション (1)
【Fターム(参考)】