説明

流動性乳製品封入物を含有する食品ゲルの調製

本発明は、種々の形態をとる流動性乳製品封入物を含むゲルで構成される食品を製造する方法、及び該方法により得られる食品に関する。本発明は、0.89と0.91の間の水分活性(Aw)を有する流動性乳製品を製造する方法、及び該方法により得られる該製品にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性乳製品封入物(fluid dairy product inclusions)を含むゲルから構成される食品を調製する方法、及び該方法により得ることができる食品に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、特に流動性乳製品の滴下及び/又は同時押出法による栄養的用途のためのポリマーでのコーティングは、例えば、出願WO00/25597号により既知である。また、出願WO03/001919号は、通常の同時押出法により、植物タンパク質及び親水コロイドで本質的に構成される材料でコーティングされた畜肉ベース及び/又は乳製品ベースから構成される食品の調製を記載している。
【0003】
しかし、これらの技術では、種々の形態をとる流動性乳製品封入物を得ることは可能でない。コーティングされる製品の流動性のために、通常は、球状(ヨーグルトビーズ)から細長い形態(ソーセージ型)にわたる形態を有するコーティングされた食品が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、種々の形態をとる流動性乳製品封入物を含むゲルから構成される食品を調製することを目的とした。
【0005】
本発明者らは、流動性乳製品を成型し、凍結し、型から取り出し、次いでこのようにして得られた凍結された形態をプレゲル中に入れ、放置してその場で(in situ)解凍させることにより、このような封入物を得ることが可能であることに着眼した。
【0006】
しかし、その場での解凍中に凍結された形態から液体が浸出することにより(離液現象)問題が生じる。この現象は、乳清にくぼみを形成し、これは乳製品の見栄え上も消費者の口内での知覚上も好ましくない。
【0007】
本発明者らは、0.89〜0.91の水分活性(Aw)を有する流動性乳製品を使用することで、この離液現象が防止可能であることに注目した。所望のAwを得るために、該流動性乳製品は、通常、10%〜12%のタンパク質、44%〜50%の炭水化物、及び0.9%〜1.4%のミネラルを含む65%〜75%の固形分を有するべきである。この範囲は、用いる炭水化物及びタンパク質の品質により変動し得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の主題は、種々の形態をとる1又は複数の流動性乳製品封入物を含むゲルから構成される食品を調製する方法であり、該方法は:
(a)水溶液中に少なくとも1つのゲル化剤を含むプレゲルを調製し;
(b)0.89〜0.91の水分活性(Aw)を有する流動性乳製品を調製する工程;
(c)工程(b)で得られた乳製品を成型し、凍結し、次いで型から取り出し;
(d)工程(c)で得られた乳製品をプレゲルに混合し(incorporate);
(e)工程(d)で得られた製品をゲル化する
工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を行うために用い得るゲル化剤は、農産食品産業で通常用いられるものである。非限定的な例としては、ゼラチン、カラギーナン、ペクチン、ジェランガム、又はアルジネートタイプのゲル化剤が挙げられる。
【0010】
親水コロイドのゲル化化合物、例えば、キサンタン−カロブ又はキサンタン−コンニャクのガムも使用し得る。ゲル化剤の溶液には、糖類、着香料、着色料、汁、ピューレ又はクーリ(coulis)などの形態の果実抽出物も添加し得る。
【0011】
初めの溶液中のゲル化剤の濃度は、本発明の本質的な特徴ではなく、所望する最終生成物のテクスチャに依存し、よって、使用するゲル化剤によって当業者が選択可能であり、適切であれば、溶液中に他の成分が存在する。
【0012】
本発明の目的のために、用語「プレゲル」は、水に溶解した1又は複数のゲル化剤を本質的に含む混合物を意味することを意図する。このプレゲルは、凍結封入物が入れられると、凍結封入物の周囲に層を直ちに形成し、そのことにより、封入物のプレゲル中での正しい配置が可能になる。
【0013】
本発明を実施するために、直径0.5インチのシリンダーからなるスピンドルを用いるStable Micro Systems、Surrey、英国により販売されるTAXT2硬度計を用いて、0.2mm/sのスピンドル下降により15mmにて測定して、200〜300グラムの貫入抵抗強度を有する流動性乳製品が好ましく用いられる。
【0014】
これは、特に、発酵又は非発酵で半流動又はペースト状の乳製品を包含する。非限定的な例としては、攪拌ヨーグルト(stirred yoghurt)及び「フロマージュフレ」が挙げられる。
【0015】
特に有利には、流動性乳製品は発酵乳製品である。
【0016】
しかし、上記で定義した方法の実施に必要である流動性乳製品の水分活性(Aw)は、細菌の成長とは両立できず、よって発酵とは両立しない。
【0017】
この問題を解決するために、本発明は、0.89と0.91の間の水分活性(Aw)を有する発酵乳製品を調製する方法を提供する。
【0018】
この方法は、次の工程を含む:
(b1)1の水分活性(Aw)を有し、かつ7%〜10%のタンパク質及び2%〜13%の脂質を含む28%〜38%の固形分;好ましくは、7.5%〜9.5%のタンパク質及び6%〜13%の脂質を含む33%〜38%の固形分;特に好ましくは、8%〜9%のタンパク質及び11%〜13%の脂質を含む35.5%〜37.5%の固形分を有し;かつ4.85以下のpHを有する発酵乳製品を調製し;
(b2)95%以上の固形分を有し、かつ1.05ショ糖等量を超えるAw低下能力(Aw-lowering capacity)及び0.32〜0.5ショ糖等量の甘味能力を有する粉末の配合物を調製し;
(b3)工程(b1)で得られた発酵乳製品と工程(b2)で得られた粉末の配合物とを、40:60〜55:45の範囲の割合により混合する。
【0019】
有利には、工程(b1)で定義される発酵乳製品は、47%〜78%のスキムミルク、40%の脂質を含む4.5%〜33%のクリーム、5%〜10%の乳タンパク濃縮物、10%〜15.5%の乳糖、及び0.03%のヨーグルト種(yoghurt ferment)を含む混合物;好ましくは、49%〜60%のスキムミルク、40%の脂質を含む15%〜33%のクリーム、6%〜9%の乳タンパク濃縮物、12%〜15%の乳糖、及び0.03%のヨーグルト種を含む混合物;特に好ましくは、50%〜53%のスキムミルク、40%の脂質を含む29%〜31%のクリーム、7%〜8%の乳タンパク濃縮物、13%〜14%の乳糖、及び0.03%のヨーグルト種を含む混合物の、pH4.8までの通常の発酵により得ることが可能である。
【0020】
有利には、工程(b2)で定義される粉末の配合物が、32%〜38%の乾燥グルコースシロップ、pH4.3の4%〜6%のヨーグルト粉末を含む37%〜41%のヨーグルト粉末、18%〜22%の液体グルコースシロップ、及び2%〜6%のアミロース含有粉砂糖;より有利には、34%〜38%の乾燥グルコースシロップ、pH4.3の4%〜6%のヨーグルト粉末を含む38.5%〜39.5%のヨーグルト粉末、19.5%〜20.5%の液体グルコースシロップ、3.5%〜4.5%のアミロース含有粉砂糖;特に有利には、37%の乾燥グルコースシロップ、pH4.3の4%〜6%のヨーグルト粉末を含む39%のヨーグルト粉末、20%の液体グルコースシロップ、及び4%のアミロース含有粉砂糖を含む。
【0021】
非限定的な例として、上記で定義される粉末の配合物に使用可能なヨーグルト粉末、液体グルコースシロップ、及び乾燥グルコースシロップは、それぞれ1.2、0.8、及び1.3のAw低下能力を有し得る。
【0022】
また、本発明の主題は、上で定義される方法により得ることが可能な、0.89と0.91の間の水分活性(Aw)及び4.85以下のpHを有する発酵乳製品である。
【0023】
この発酵乳製品は、続いて、本発明による封入方法を行うことにより、ゲル中に含まれ得る。
【0024】
また、本発明の主題は、本発明による封入方法により得ることが可能な、1又は複数の流動性乳製品封入物を含むゲルから構成される食品である。
【0025】
本発明による食品は、有利には、30%〜60%(重量)の流動性乳製品封入物を含む。
【0026】
本発明による食品は、例えば、型から取り出し可能なゲルを含む透明なポットの形態(100〜150g又は20〜50g)、あるいは、ゲルを型に入れて、その完全性を保護する硬性パッケージングに包装する前に型から取り出すことにより得られる、一口分(10〜25g)である。
【0027】
これらの食品は、離液、封入物の変形、又はゲルの分解の現象のいずれも示さずに、4〜6週間冷蔵保存し得る。28日後、これらの食品は、通常、約104CFU/gの生きたラクトバシラス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)及び108CFU/gを超える生きたストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)を含む。
【実施例】
【0028】
本発明は、次の例示的な実施態様により説明されるが、これらは例示であり限定するものではない。
【0029】
実施例1:低水分活性の発酵乳製品の調製
ヨーグルトの調製
【表1】

【0030】
乳糖を完全に溶かすために、40℃で調合物を再水和する。
【0031】
ヨーグルトの生成方法:
1‐95℃で6分間低温殺菌し、200barで均質化する;
2‐pH4.8が得られるまで発酵する;
3‐滑らかで、粒のない光沢のあるテクスチャを得るために、4000rpmの3リングを備える1段階からなるIKA (登録商標) Labor‐Pilot2000/4動力学スムージングミキサー(Werke GmbH & Co. KG)を用いてスムージングする;
4‐4℃に冷却する。
【0032】
このようにして得られたヨーグルトは、次の特性:固形分36.5%、脂質12%、及びタンパク質8.4%を有する。
【0033】
粉末の配合物の調製
次の粉末のプレミックスを調製する:
【表2】

【0034】
ゲルに含め得る発酵乳製品の調製
ヨーグルトと粉末の配合物との50/50混合物を、遊星歯車式ミキサーを用いて、最高速で20分間、低温条件下で調製する。
【0035】
得られた乳製品は、AquaLab (登録商標) Aw-メータ(Decagon Devices, Inc.)を用いて測定して0.9±0.01の水分活性(Aw)、及びpH4.8±0.05を有し;100g当たり、10.9gのタンパク質、6.2gの脂肪、47.6gの炭水化物、及び327mgのカルシウムを含み、かつ290kCal/100gのエネルギー価を有する。この乳製品は、>108の生きた種を含む。
【0036】
発酵乳製品の成型及び凍結
得られた発酵乳製品を型に分配し、次に−18℃で凍結する。
【0037】
実施例2:発酵乳製品封入物を含むゲルから構成される食品の調製
プレゲルの生成
ゲル組成物の3つの例を以下の表に示す。
【0038】
【表3】

【0039】
【表4】

【0040】
【表5】

【0041】
プレゲルを調製するために、成分を低温条件下で混合する。組成物を徐々に(約10分間で)90℃まで加熱し、90℃で30秒間加熱し、次いで周囲温度で攪拌しながら60℃まで冷却する。
【0042】
発酵乳製品の封入
ゲル化の前に、上述のようにして得られたプレゲルを、冷やした型に移し入れる。
【0043】
実施例1のようにして得られた凍結発酵乳製品を型から取り出し、このようにして得られた封入物を60℃でプレゲルに入れ、プレゲル中に沈める。
【0044】
凍結封入物と60℃のプレゲルとの間における4℃での熱交換により、乳製品封入物が入れられたときに、乳製品封入物の周囲にゲルの層が直ちに形成され(よって、封入物がプレゲル中に正しく配置される)、該封入物のその場での解凍が可能になる。
【0045】
最終生成物は、冷蔵(4℃)条件下で貯蔵される。
【0046】
最終生成物のパッケージング:
発酵乳製品封入物を含むゲルから構成される最終生成物は、2つの形態に包装され得る。
‐型から取り出し可能なゲルを含む透明なポット:最終生成物は、パッケージング容器内にあり(100〜150g)、この中でゲル及び封入物のセッティングがなされる。
‐一口分:最終生成物は、型の中でゲルをセッティングさせ、次に、その完全性を保護する硬性容器中へのパッケージング(10〜25g)の前に型から取り出すことで得られる、一口分の形態である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水溶液中に少なくとも1つのゲル化剤を含むプレゲルを調製し;
(b)0.89と0.91の間の水分活性(Aw)を有する流動性乳製品を調製し;
(c)工程(b)で得られた乳製品を成型し、凍結し、次いで型から取り出し;
(d)工程(c)で得られた乳製品を前記プレゲルに混合し;
(e)工程(d)で得られた生成物をゲル化する
工程を含む、種々の形態をとる1又は複数の流動性乳製品封入物を含むゲルから構成される食品を調製する方法。
【請求項2】
流動性乳製品が発酵乳製品であり、かつ:
(b1)1の水分活性(Aw)、並びに7%〜10%のタンパク質及び2%〜13%の脂質を含む28%〜38%の固形分を有し、かつpHが4.85以下の発酵乳製品を調製し;
(b2)95%以上の固形分を有し、かつ1.05ショ糖等量を超えるAw低下能力及び0.32〜0.5ショ糖等量の甘味能力を有する粉末の配合物を調製し;
(b3)工程(b1)で得られた発酵乳製品と工程(b2)で得られた粉末の配合物とを、40:60〜55:45の範囲の割合により混合する
工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法の工程(b)で定義される流動性乳製品を調製する方法。
【請求項3】
工程(b1)が、47%〜78%のスキムミルク、40%の脂質を含む4.5%〜33%のクリーム、5%〜10%の乳タンパク濃縮物、10%〜15.5%の乳糖、及び0.03%のヨーグルト種を含む混合物の、pH4.8までの発酵により行われることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b2)で定義された粉末の配合物が、32%〜38%の乾燥グルコースシロップ、pH4.3の4%〜6%のヨーグルト粉末を含む37%〜41%のヨーグルト粉末、18%〜22%の液体グルコースシロップ、及び2%〜6%のアミロース含有粉砂糖を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
請求項2〜4いずれか1項に記載の方法により得ることができる、0.89と0.91の間の水分活性(Aw)及び4.85以下のpHを有する発酵乳製品。
【請求項6】
工程(b)が、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法を実行することにより行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1又は6に記載の方法により得ることができる食品。
【請求項8】
30%〜60%の乳製品封入物を含むことを特徴とする請求項7に記載の食品。

【公表番号】特表2009−535047(P2009−535047A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508416(P2009−508416)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【国際出願番号】PCT/FR2007/000727
【国際公開番号】WO2007/125208
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(507394503)
【氏名又は名称原語表記】COMPAGNIE GERVAIS DANONE
【住所又は居所原語表記】17,Bd Haussmann,F−75009 Paris,FRANCE
【Fターム(参考)】