説明

流動性媒体への超音波導入方法とその装置

本発明は、ソノトロードを用いて流動性媒体内に超音波を導入する装置及び方法に関する。ここで、流動性媒体はソノトロードとは直接接触することはない。開示は、以下のステップからなる方法である。フィルム(8)をソノトロード(4)の上に、ソノトロード(4)に押しつけられるフィルム(8)による接触力が常に、フィルム(8)が対応する周波数と振幅でのソノトロード(4)の上昇動作に追随することが出来る大きとなるように、配置する。フィルム(8)を介して超音波力を媒体(2)に適用し、摩耗現象をフィルム(8)に転嫁させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソノトロードを使用した、流動性媒体への超音波導入方法とその装置に関する。ここでは、流動性媒体は、直接ソノトロードと接触していない。
【0002】
対応するエネルギーが、流動性媒体へ導入される時、超音波にさらされる領域は、局所的に集中した高圧・高温現象を伴ったキャビテーションを引き起こす。また、その現象は、ソノトロードが直接処理中の媒体と接触した場合、ソノトロードの物質から分離していく微粒子が生じる。従来のほとんどのソノトロードは、表面が金属製であり、微細粒子と金属イオンが、処理中の物質に進入することができる。このことは、食物や薬物のような超音波で処理される多くの物質にとっては、たいへん望ましくないことである。ソノトロード物質の摩耗もまた、不利な点である。なぜなら、摩耗することで表面粗度が増し、続いてソノトロード内に微小な裂け目を形成してしまうからである。だから、ソノトロードは、程度の差はあるが、頻繁に交換しなければならない。ドイツ特許公開公報第102 43 837号では、流動性媒体がソノトロードに直接接触しないように、別の液体をその間に入れることによって、超音波を媒体へ伝達する方法を提案している。それによって、液体は、高圧下におかれ、処理される媒体から壁によって分離される。この目的を達成するために、転嫁媒液は、容器の壁面に設けられたソノトロードと共に、加圧容器に保持されなければならない。このような方法で、ソノトロードから分離した粒子は、処理すべき媒体へ進入することができなくなる。しかし、キャビテーションは、まだ液体内で起こっており、フローセルとソノトロードの振動する壁の摩耗が引き起こされてしまう。
【0003】
ドイツ特許公開公報第40 41 365号では、多結晶ダイヤモンドで作られた保護被膜を、ソノトロードの振動端に設けることで、キャビテーションによる摩耗を低減させる方法を提案している。しかし、この手段を利用すると、ソノトロードのコストが大きく増加してしまう。
【0004】
したがって、本発明は、重要かつ負担の少ない方法で、ソノトロード上の自己誘導摩耗を低減する、前述の形の方法とその装置を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【0005】
この目的は、本発明の請求項1、請求項7の特徴に従って、解決される。有利な実施例は、従属請求項で列挙される。
【0006】
それにより、以下の工程段階が行われる。
・フォイルがソノトロードに対して押圧されることによる押圧力が、対応する周波数及び振幅でのソノトロードのストローク動作に該フォイルが常に追随することが出来る大きさとなるように、フォイルをソノトロードに設ける。
・前記フォイルを介して超音波エネルギーを媒体中に導入し、摩耗現象をフォイルに移動させるようにする。
【0007】
好適な別の方法では、押圧力は、ソノトロードに面した反対側の面に作用している圧力に比して、ソノトロードに面している側の圧力を低減させることにより、フォイルに適用する。または、湾曲したソノトロードの場合には、フォイル上に張力を生じさせることによって、フォイルをソノトロードの外側上に配置させる。
【0008】
好適な別の方法によると、フォイルは、ソノトロードに面している側は液体で濡れている。例えば、油、人工樹脂、シリコーン化合物のような液体である。
【0009】
フォイルがソノトロード上を、連続的、または不連続的に動くことは有利なことである。
【0010】
この方法で、摩耗現象は、ソノトロードからフォイルへと有利に移動する。この方法は、食品加工産業や製薬産業、化学産業、その他超音波を利用している他分野において、異なる液体を混合・乳化したり、汚水スラッジを扱ったりする際に、使用することが出来る。攻撃的な媒体を使用する際は、フォイルがソノトロードを化学反応から保護する上で、付加的な利点がある。
【0011】
この方法を実行するのに適した装置は、柔軟性のあるフォイルがソノトロードと媒体の間に配置されるように、有利に構成される。即ち、フォイルが直接ソノトロードと接触するかまたは、100ミクロンまでの間隙でソノトロード上に間接的に配置され、装置の運転中、ソノトロード上にフォイルにより及ぼされる押圧力は、張力によりもたらされ、その押圧力は、装置の運転中、フォイルが常に直接的、非直接的にソノトロードと接触し、ソノトロードの動きに追随するように構成される。前述の100ミクロンまでの隙間中に、液体物質を配置することが出来る。
【0012】
押圧力は、超音波によって処理すべき媒体内で適切な静的または動的な圧力を維持することで容易に実現することが出来る。だから、ソノトロードが振動している時であっても、フォイルは、ソノトロードを常に押圧している。加えて、押圧力は、付加的手段によって支えることが出来る。例えば、ソノトロードと面しているフォイルの面上に低減された圧力を働かせる手段や、または、湾曲したソノトロードの場合は、張力装置でソノトロード上でフォイルを緊張させる手段などである。すなわち、張力が、フォイルに適用されるのである。
【0013】
本発明の好適な実施の形態によると、この装置は、フォイルが、ソノトロードを保持したアセンブリとフローセルの間で張力をかけられるように、構築することができる。
【0014】
この装置はまた、フォイルが、板状のソノトロード上で張力をかけられるように構築することが出来る。この板状のソノトロードは、超音波エネルギーにさらされた流動体を含んだ開放容器中に浸かっている。
【0015】
別の変化型によると、この装置はまた、超音波タンクとして、タンクの外側に取り付けられた圧電発振器と共に構築することが出来る。その時、フォイルは、超音波タンクの内壁に取り付けられ、低減された圧力によって振動する表面に対して押圧される。
【0016】
フォイルを進めるために、この装置には移動装置が設けられている。これによって、フォイルを継続的に、または供給ロールと受領ロール間の区間において進める。
【0017】
このフォイルは、金属またはプラスチックで作ることが出来、厚さは5〜200μmの間である。フォイルとソノトロード間の密接な接触を確実にするため、ソノトロードに面しているフォイルの面上が、液体、油、人工樹脂、シリコーンによって、さらに濡れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の詳細を、好適な実施例を参照して説明する。対応している図面の説明は、以下の通りである。
【0019】
図1は、ブロックソノトロードを伴った本発明に係わる装置を図式化した図である。
【0020】
図2は、ソノトロードとして曲げ発振器を伴った型式の装置を図式化した図である。
【0021】
図3は、ソノトロードとして平面発振器を伴った、本発明に係わる装置を図式化した図である。
【0022】
図4は、本発明によるフォイルを伴った超音波タンクを図式化した図である。
【0023】
図5は、導波路発振器ソノトロードを有する、本発明を図式化した図である。
【0024】
図1では、流動性媒体2に対して超音波処理をする装置を示している。ソノトロード4を伴った超音波振動子3は、ブロックソノトロードとしてここでは用いられる。またこの超音波振動子3は、フランジ接続5を通じて、装置1としっかり接続され、更に、シール6によって装置1の内部空間に対して密閉される。装置1の底面は、フローセル7と接続されており、それによって、薄いフォイル8(できれば5μm〜200μmの範囲で、例えば50μmとする)は、装置1とフローセル7の間に設置されている。だから、フォイル8は、ソノトロード4の端面と直接接触し、フローセル7に対して装置1内の空間を、外部に対してフローセル7を、シール9によって、密閉している。
【0025】
超音波にさらされる媒体2(できれば液体で、例えば水とする)は、入り口と出口10、11を介して、フローセル7を通って送り出される。フォイル8は、フローセル7内の圧力を増加させることによって、ソノトロード4の端面に対して圧力をかけられる。更に、低減された圧力が、連結部12を介して装置1内で発生し、また、ソノトロード4と装置1のハウジング間にある小さな隙間13(例えば0.1ミリメートルとする)を超えて、ソノトロード4の端面に向かって、フォイル8を引っ張る。低減された圧力によって作り出された力は、常にフォイル8とソノトロード4間の接続が維持できるように、ソノトロード4の端面のフォイル8に作用する加速力より大きくなければならない。この手順は、耐裂性液体、又は、液体フィルムを、媒体2に面する反対側のフォイル面上に塗布することによって助成される。
【0026】
装置1の稼働中、キャビテーション場は、ソノトロード4とフォイル8によって、フローセル7内にて発生する。キャビテーションによる摩耗は、その際、単独でフォイル8を対象にする。作り出された機械振幅(ここでは例えば100μmとする)の規模及びフォイル8の特性によるが、フォイル8は数分間の実用的な寿命を達成することが出来る。フォイル8の移動装置14によって、フォイルへの超音波照射時間は、常に実用的な寿命時間よりも少なくすることが出来る。
【0027】
図2では、曲げ発振器として使用されたソノトロード4を伴った装置1の一種を示している。
【0028】
図3では、開放された処理容器15を伴った超音波処理システムを示している。超音波振動子3によって、振動がソノトロード4内に導入される。この振動は、ソノトロード4の端面を通じて、液体媒体2内に伝わる。
【0029】
キャビテーションによる、ソノトロード4の端面の摩耗をなくすために、媒体2がソノトロード4の端面に接続しないように、薄いフォイル8が移動装置14によって導入される。フォイル8は、できれば薄さ5μm〜200μmの範囲で、例えば50μmとする。移動装置14による張力は、フォイル8が、ソノトロード4の端面に対して常に圧力をかけるくらいの大きさでなければならない。運転中、この圧力は、振動ソノトロード4によってフォイル8に適用される加速力よりも、常に大きくなければならない。
【0030】
図4では、超音波タンクと組み合わされた発明を示している。超音波タンクの構造は、周知のものであり、十分に説明されている。
【0031】
この装置は、実際のタンク16と、そのタンク16の外側に取り付けられた、ソノトロードのように作動する圧電発振器17からなる。キャビテーションによる摩耗現象を抑えるために、薄いフォイル18を、タンク16内に導入する。フォイル18は、できれば薄さ5μm〜200μmの範囲で、例えば50μmとする。
【0032】
フォイル18は、カバー19によって、適所に保持されている。このカバー19は、フォイル18とタンク16間の空間を同時にシールする。フォイル18は、接続部20を通じて低減された圧力を適用することによって、タンク16に向けて引っ張られる。
【0033】
図5では、導波路発振器と連動し、また、開放された処理容器15内に配置された発明を示している。振動は、導波路発振器として用いられた超音波振動子21の外面上に、励起される。振動は、この外面を通じて、液体2へと伝達される。
【0034】
キャビテーションによる、超音波振動子21の外面上の摩耗を防止するために、液体2が超音波振動子21の外面に接続しないように、薄いフォイル8が、移動装置14を通じて、導入される。フォイル8は、できれば薄さ5μm〜200μmの範囲で、例えば50μmとする。フォイル8は、圧力をフォイル8に適用することのできる装置22によって、超音波振動子21の周囲に位置している。だから、液体2は、超音波振動子21の外面に接触することが出来ず、屈曲点でさえも接触することができない。移動装置14によってもたらされる張力は、超音波振動子21の外面に対して、フォイル8を、常に押圧するくらいの大きさでなければならない。運転中、この圧力は、超音波振動子21の振動外面によってフォイル8上にもたらされる加速力よりも、常に大きくなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、ブロックソノトロードを伴った本発明に係わる装置を図式化した図である。
【図2】図2は、ソノトロードとして曲げ発振器を伴った型式の装置を図式化した図である。
【図3】図3は、ソノトロードとして平面発振器を伴った、本発明に係わる装置を図式化した図である。
【図4】図4は、本発明によるフォイルを伴った超音波タンクを図式化した図である。
【図5】図5は、導波路発振器ソノトロードを有する、本発明を図式化した図である。
【符号の説明】
【0036】
1……(ソノトロードを設けるための)装置
2……流動性媒体
3……超音波振動子
4……ソノトロード
5……フランジ接続
6……シール
7……フローセル
8……フォイル
9……シール
10……(超音波により処理されるべき媒体の)入り口
11……(超音波により処理されるべき媒体の)出口
12……低減された圧力を生成する接続部
13……隙間
14……移動装置
15……処理容器
16……タンク
17……圧電発振器
18……フォイル
19……カバー
20……低減された圧力を生成する接続部
21……超音波振動子
22……(押圧力をフォイルに適用する)装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソノトロードを介して流動性媒体内に超音波を導入する方法であって、該流動性媒体は前記ソノトロードと直接接触することはなく、
前記方法は、以下の処理ステップを有する、
−フォイルが前記ソノトロードに対して押圧されることによる押圧力が、対応する周波数及び振幅での前記ソノトロードのストローク動作に該フォイルが常に追随することが出来る大きさとなるように、前記フォイルを前記ソノトロードに設け、
−前記フォイルを介して超音波エネルギーを前記媒体中に導入し、摩耗現象を前記フォイルに移動させるようにする。
【請求項2】
前記フォイルの押圧力は、前記ソノトロードに面した側を、低減された圧力とすることで生成される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
加えて、前記フォイルのソノトロードが面した側の反対側に、過圧力を作用させる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記フォイルの押圧力は、該フォイルの上に張力を生じさせることにより作用させる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ソノトロードに面した前記フォイルの側は、液体で濡れている、請求項1ないし4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記フォイルは前記ソノトロードの上を、連続的にまたは非連続的に移動する、請求項1ないし5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ソノトロード(4、16,21)を介して流動性媒体(2)内に超音波を導入する装置であって、該流動性媒体(2)は前記ソノトロード(4,16,21)と直接接触することはなく、
前記装置は、
自己誘発摩耗からソノトロード(4,16,21)を保護するために、フォイル(8,18)を前記ソノトロード(4,16,21)と前記媒体(2)の間に、該フォイル(8,18)が直接ソノトロード(4,16,21)と接触するか、該ソノトロード(4,16,21)上に100ミクロンまでの隙間を介して間接的に配置し、
前記ソノトロード(4,16,21)上に前記フォイル(8,18)により及ぼされる押圧力を張力で支持し、該押圧力は、前記装置の運転中は、該フォイル(8、18)が前記ソノトロード(4,16,21)と直接または間接に常に接触し、ストローク動作に追従できるような大きさに常に維持される、
ことを特徴とする、装置。
【請求項8】
前記フォイル(8)は、前記ソノトロード(4)を保持する装置(1)とフローセル(7)の間に設けられている、請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記フォイル(18)は、超音波タンク(16)の内壁に対して押圧されていることを特徴とする、請求項7記載の装置。
【請求項10】
前記フォイル(8)は前記ソノトロード(21)の周囲に配置され、緊張装置(22)により保持されている、請求項7記載の装置
【請求項11】
低減された圧力が、前記ソノトロード(4,16)に向いた前記フォイル(8,18)の側の後ろに形成されたスペースに適用される、請求項7ないし9のうち、いずれか1項記載の装置。
【請求項12】
前記流動性媒体(2)は過圧力下にある、請求項7ないし11のうち、いずれか1項記載の装置。
【請求項13】
前記装置には、フォイル(8)を連続的または非連続的に進める移動装置(14)が設けられている、請求項7ないし12のうち、いずれか1項記載の装置。
【請求項14】
前記フォイル(8,18)の前記ソノトロード(4,16,21)に面した側は、液体で濡れている、請求項7ないし13のうち、いずれか1項記載の装置。
【請求項15】
前記液体は、油である、請求項14記載の装置。
【請求項16】
前記液体は、人工的な樹脂である、請求項14記載の装置。
【請求項17】
前記液体は、シリコン化合物である、請求項15記載の装置。
【請求項18】
前記フォイル(8,18)は、金属フォイルである、請求項7ないし17のうち、いずれか1項記載の装置。
【請求項19】
前記フォイル(8,18)は、プラスチィクフォイルである、請求項7ないし17のうち、いずれか1項記載の装置。
【請求項20】
前記フォイル(8,18)の厚さは、5から200ミクロンの間である、請求項7ないし19のうち、いずれか1項記載の装置。
【請求項21】
液体物質が、前記100ミクロンまでの隙間の中に配置されている、請求項7記載の装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2008−500160(P2008−500160A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513749(P2007−513749)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005324
【国際公開番号】WO2005/115602
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(505186809)ドクター ヒールシャー ゲーエムベーハー (4)
【Fターム(参考)】